地質調査の真実

技術士(応用理学)横井和夫


 今月7日、東北新幹線内で起こった薬品漏れ事故。発生後暫くして警察は硫酸の可能性を示唆したが、はっきりとは特定しなかった。筆者は早くからこれは硫酸で、用途は地質調査なら、金属資源か地熱関連と予測していた。
 このほど、薬品は硫酸 硝酸と甚だ曖昧な表現。硫酸、硝酸が別々の容器に入っていたのなら、それが同時に漏れることはない。但しこれが混合液なら話は早い。硫酸と硝酸の混合液は「王水」といって、唯一金を溶かすことができる液体。但し自然界には存在しない。この点から、この地質調査会社の狙いは、ずばり「金」鉱床の調査です。東北地方は昔から金鉱床が多かった。日本で最初に金が発見されたのも東北岩手黄金沢。十和田から八甲田、更には陸奥市まで、金の埋蔵地には事欠かない。昔は金の精錬には水銀を使っていたが、近代以後は王水を使う。
 旧い」鉱山の殆どは閉山してしまったが、かといって鉱脈が無くなったわけではない。鉱脈が深くなって採掘コストがあがったのと、円高で採算が取れなくなったから、ヤマを閉めただけだ。採掘技術も進歩してきているし、このところの円安で採算が取れそうになったから、夢よもう一度、ということになったのかもしれない。
 さてこの地質調査の発注者だが、根拠はないが察するに、元は経産省の鉱山局辺り。元請けはメタコンだが何処の誰かはこれまでの報道では分からない。国家プロジェクトの可能性もある。関連会社の名前が一切上がってこないのは、どこかからストップが掛かっているのだろう。ばれると株価が大変動だから。非鉄株を細かく追いかけていくと、わかるかもしれない。
(23/10/26)

 東北新幹線車内で起きた薬品漏れ事件。最初この事件を見たとき、液体に触ったら火傷したとか、煙が出たとか言うので、多分液体は硫酸か消散のような薬品だろうと思った。この種の薬品は化学実験や分析などの試薬として用いられることもあるが、列車の行く先は東京。硫酸や消酸など幾らでも手に入る。敢えて新幹線で運ばなければならない理由はない。
 トイレで爆発したというから、硫化水素を作ろうとしたのか、とも思ったがその後、この液体の所有者が地質調査会社勤務の会社員という。さて、そうなら筆者と同業者だが、筆者らが関係する建設・防災・環境などの一般民生分野での地質調査で、硫酸などの劇毒物を使う手法は殆ど聞いたことがない。硫酸を使うとすれば、金属鉱床とか地熱などの資源関係者と思われる。
 金属資源関係をフイールドとする会社はそう多くはないので、何処の会社かは直ぐにわかる。今頃ネットの世界では、何処の会社かという情報が飛び交っているだろう。なお、ある専門家という人物が、メデイアの質問に対し、一般の地質調査でも薄めた塩酸を持って歩くことはある、と説明していた。これは石灰岩とチャートの区別、カルサイト脈と石英脈をフイールドで区別するためと思はれるが、この程度は肉眼か手触りで区別出来なくては、一人前の地質屋とは言えない。
 一方メタコン関係の地質調査・・・特に金や銅などの場合、硫酸や硝酸を持ち歩くことはあり得る。特に、液体を持っていた男性が乗車したのが「七戸十和田」ということだから、「黒鉱」関連か、或いは地熱関連の可能性がある。地熱開発もメタコンの縄張りだ。又地熱開発では排水に重鉱物(=有害物質)が含有されることがあり、事前にその有無を調査しておく必要がある。
 さて面妖なのは、この液体が何で、何の目的で持っていたのを解明するのになんでこんなに時間が掛かったのかだ。こんなことは液体を持っていた本人を尋問し、所属会社に問い合わせれば直ぐに分かることだ。やり方が下手すぎる。その原因は、今の警察が科学というものに無知というか、基本的な知識すら持ち合わせていないことである。硫酸かどうかは科捜研の手を煩わせる必要はない。何処かの高校の化学の教師で十分だ。それとも十和田周辺で、警察にも云えない極秘の国家プロジェクトでも進行しているのか?マサカ、そんなわけない。そんな極秘プロジェクト関係者が、新幹線普通車に乗って移動するわけはないだろう。それより、いくら規定内であっても濃硫酸という危険物を、新幹線で運ばせるという会社のセンスにもあきれる。日本の地質調査会社が、みんなこんな非常識な会社ではありません。それと運んでいた社員の不用心さにもあきれる。危険物を運んでいるという意識が無い。40台というが、40にもなれば部下を教育指導する立場。40にもなって何をやっているんだ、と云いたい。これが今の日本の現実だ。
(23/10/11)