再生エネルギーの不都合な真実


技術士(応用理学)横井和夫


 どうもこのところ再生エネルギーの分が悪い。福島県はメガソーラー禁止条例を作るし、各地でメガソーラー反対運動も起きている。それに輪を懸けたのが、自民秋本と日本風力発電という会社との贈収賄事件。クリーンのはずの再エネ業界もやっぱりダーテイだった。
 何故こういうことになるかというと、今の日本の経済学の主流が、何でも数字に変換してしまう数量価値説に捉われているからである。そしてこの終了を端的な価値として表すものが、カネである。今の再エネ事業の堕落は全てをカネの価値に変換する発想の延焼線上にある。数値主義に捉われると、投資価値の評価基準値を極大化しようとする意識が強まり、ネガテイブな影響を無視するようになるかである。これこそが「失敗の本質」の一つ、「根拠なき楽観視」の原因になる。
 そもそも日本という国は、再生エネルギー開発に不向きな国なのである。日本という国は再生エネルギーの諸要素(水力、ソーラー、地熱、風力)の全てが揃っている。しかしそれぞれの量が少ない、中途半端なのである。原資が中途半端なら、得られる結果も中途半端なものにならざるを得ない。
 地理的にはユーラシア大陸の東端の島弧であり、プレートが衝突する変動帯である。気候的には中緯度温暖モンスーン地帯で雨の多い湿潤気候。国土の大部分は山岳地で、しかも大部分が森林や緑地に覆われる。地形が複雑だから河は多いが、大陸のような大河はない。降った雨は直ぐに海に流出する。
 つまり太陽光発電をするには日射量が少なく、風力発電には風力が不足する。地形が複雑で、河川勾配がきついから大陸の湯女巨大ダムは作れない。地熱にしても、地熱分布も複雑で当たり外れが大きく、火山性熱源に頼るから不純物も多い。環境対策にコストが掛かる。
 一方オランダやデンマークなどは国土が兵站で、水力は不適。火山がないから地熱の駄目。一方北海からの季節風があるのと、国土が兵站だから、大規模風力発電が可能である。スペインは内陸に乾燥地帯があり、大西洋からの季節風もあるから、ソーラーや風力に向いている。
 元々再エネ資源が乏しい国に、大規模開発が可能な国で開発された手法・・・例えば大型の洋上発電、メガソーラー、・・・を用いようとすれば、何かを犠牲にしなければならない。日本ではそれが先祖代々受け継いできた自然環境なのである。その矛盾に利権が発生するのは当然だ。「日本風力発電」事件は起きてしかるべき事件だったのである。
 再生エネルギーを進める官庁や、参入を図る再エネ業者は、いいところばかり見ているのではなく、ネガテイブな要素も見極めなくてはならない。それが足らないから、逆風が吹くのだ。
(23/10/02)

 衆院秋本議員逮捕で、再エネ業界にとんだ逆風。こういう政府肝いりの大型事業には、何らかの利権が絡むのは当たり前だ。ことの発端は、洋上風力発電3事業の認可で、、三菱商事グループが三件とも格安売電価格で落札したこと。これに危機感を感じた「日本風力発電」という会社が、トップの知人である秋本にン千万かを渡し、落札基準見直しのための国会質問を依頼したこと。 
 これの問題にはまず1、国会議員と業者との癒着が挙げられるが、次に2、他者を寄せ付けない格安受注が、本当にエネルギー安定供給に資するか、という点がある。1、は司法の問題だが、2、は経済や技術の問題である。
1)、三菱商事Gの落札価格がどの程度の格安価格かは知らないが、他社が始めから諦めるというのなら相当の値引きだろう。値引き額が社会通念を越えるものなら、ダンピング受注の疑いがあり、その場合は独禁法違反となる。
2)、安値で受注しても、それが何時まで続くかが問題だ。受注はしたが施工には未だ入っていない。入札があったのは、昨年だが、それから、資材費・人件費は馬鹿上がりしている。本当に落札価格で設備が供給・稼働できるのか?また、最初は初期投資で赤字覚悟としても、長期的にはどうかわからない。途中で運営会社が倒産したり、いきなり値上げを通告されたときの対策が、契約上キチンと執れているのか? ある時、採算が執れませんと、運営会社が倒産してしまう可能性だってある。下手するととんでもないバッタモノを掴んでしまったかもしれないのだ。
 そもそも、政府が力を入れて推奨する大型事業には必ず利権が付きまとう。制度設計上、利権が生まれる構造になっているのである。その理由は、政府補助金が末端に届くまでに、幾つものポイントを通らなければならず、その都度諸経費と称する通関税を獲られるからだ。
 今後発生が予想される事業にグリーン環境事業がある。この原資にあてられるのが、来年度から始まるグリーン環境税。国民一人当たり年1000円獲られる。人口1億3千万人とすると、何もしなくても1300億円が林野庁に入る。それは林野庁の外郭団体を通して、自治体経由で森林組合なんかにばらまかれる。
 この予算に飛びつかない馬鹿はいない。結果として莫大な利権が森林業界に注ぎ込まれることになる。その一部が自民党農水族に還流する。「子供家庭庁」予算も、大部分は福祉介護団体や関連企業に消えていく。その一部の行き先は自民党厚生族というわけだ。従って、末端の施設や介護士は相変わらず、人手不足と安月給、過重労働に悩まされることになる。
(23/09/10)

 セメンテーションが済んで落ち着きを取り戻した、三井石油開発北海道欄越町調査孔。水蒸気でよく分からなかった掘削設備の全貌が出てきました。おそらくこの地点から撤退を余儀なくされるでしょう。
 櫓の高さから、掘削深度は1000m級かそれ以上を狙っていたと思われます。それがたった300mで終わったのだから、掘削請負業者はたまったもんじゃない。何処の会社が請け負ったかしらないが、おそらく経費の清算を巡って揉めるでしょう。下手すりゃ裁判沙汰だ。海外なら、こういう事業には発注者・受注者双方に必ず弁護士がついて、交渉は全てレターで行われるが、日本には残念ながらそういう習慣がない。なんでもナアナアで済ませてきたのが揉め事の始まり。
(23/08/29)


 三井石油開発欄越町調査孔は注水工事でやっと噴気が止まったとされます。霧でよくわからないが、確かに水蒸気は立ち上っていない。本当に注水の効果があったのか、それとも単に水蒸気圧が下がっただけなのか、本当のところは分からないが、まずはめでたしめでたし。
 しかし欄越地区での今後の地熱開発は、まず殆ど無理。三井は撤退を余儀なくされるでしょう。それと今度の一件は、単に噴気だけでなく高濃度のヒ素が検出されたことで、他の地熱開発にも影響を及ぼす。地熱屋にとって頭が痛い話だ。実は、日本の地熱開発では、何らかの有害物質を伴うことは、関係者では常識だった。それを無害の夢のエネルギーだとかなんとか持ち上げた、経産省やマスコミの責任の方が大きい。
(23/08/20)

相変わらず水蒸気を上げる北海道欄越町の地熱調査井。事業者の三井石油開発は、水を注入して孔内を冷却しセメントを注入する、としていますが大丈夫でしょうか?
1、この水蒸気は地下のマグマで地下水が加熱されたもので、地上から小さい孔で、少々水を入れたところで直ちに冷却するとは考えられない。
2、高圧で注水すると、湧水区間が300mと浅いこと、地山の岩盤は空隙の多い火山岩ということから、注水が別の経路を作って、別のところから水蒸気が噴き出すおそれがある。
3、注入した水自身がそのまま蒸発してしまう。耐熱泥水でも使えば別だが。
 等の問題点が考えられ、絶対大丈夫とは言い切れない。事業者も、地元住民も、その点は理解しておいた方が良い。
(23/08/12)

 今度は大量のヒ素が検出されて大慌ての、三井石油開発北海道欄越町地熱調査井。日本の火山性地下水でヒ素が検出されるのは珍しいことではない。問題はメデイアが地熱開発を、無公害の再生エネルギー資源と勘違いして、それを世間に拡散してきたことだ。
 地熱開発は間違いなく周辺の自然環境に影響を与える。なぜかというと、日本の火山はインドネシアやフィリピンに比べ、老朽化が進み岩石から不純物質をとりこんでいる。だから医療効果が高い。 又不純物質に中には、ヒ素だけでなく、ガリウムやバナジウムなどの希土類元素も含まれる。これらは有害物質であるが、一方でレアアースとして半導体生産に欠かせない。地熱開発では事前に環境調査のいっかんとして、試掘が行われ、地熱や熱水の賦存状態を調べるだけでなく、このような有害物質の有無の調査も重要な目的である。有害物質の有無・量によって対策の仕方、費用を算出し、採算性を検討する。
 今回の調査で、欄越町地点は十分な熱量はあることは分かった。一方で有害物質除去に相当の費用が掛かりそうだ。又地元の承諾を得ることも簡単ではなさそうだ、ということは分かった。
          ・・・・・・・・・(23/07/07)

   

 その後の調査で、白い物質は「石英」と発表があった。石英というのは少し言い過ぎで、多分二酸化ケイ素の結晶が見つかったからでしょう。二酸化ケイ素とは、即ちシリカ(=火山ガラス)です。デーサイト質の火山活動では極普遍的な物質で、何処にでもある。
 この調査井が掘削しているのは羊蹄山を含む阿寒・洞爺火山帯。シリカが含まれていて当然。ということは、当たり前すぎて面白くない。

 北海道蘭越町での地熱調査井で生じた水蒸気の噴出。背後のボーリング設備から推すと、1000m級の掘削を狙っていたと思われる。地熱開発を期待するなら、これぐらいの噴気は当たり前で、何事もなく無事掘削できるようでは、開発に足る地熱は無いということだ。北海道はまだまだ地熱に余裕があるということで有難い話だ。しかし最終処分場立地へのハードルが高くなる。
 インドネシアじゃこんなのはまだ甘く、地熱井から数100゜Cの熱風が噴き出す(高温乾燥岩体)。河川水や葉っぱの白濁は炭酸カルシウムか硫酸カルシウム。噴気で蒸気圧が急低下し溶解度が低下したためでしょう。
 ではこのような噴気を止める方法はあるか?似たようなものに湧水がある。昔仙台のあるボーリング屋の社長が、脇にもう一本掘れば間違いなく止まると云っていた。騙されたと思ってやってみますかあ?
(23/07/01)

 ある日の某民放BSニュース番組。ゲストは民主党エネルギー問題PTのメンバー。年齢は30からせいぜい40台前半か?派閥は判らない。管グループの可能性もある。色々話しがあって、キャスターの「・・・太陽光発電については、発電の不安定性とか問題があるし、これによって新しい産業が産まれる、雇用も産まれる、と云っていたが、アメリカでは安い中国製品の所為で、アメリカ企業は倒産が相次ぎ、雇用は逆に失われているではないか!」という突っ込みに対し、何も具体的に答えず、棒を呑んだように、只「原発ゼロ」を繰り返すのみ。かつての共産党とか、全共闘と同じパターン。これだから民主党は支持を失うのである。
 今の民主党再生エネルギー政策は、全くかつての小渕ー宮沢景気刺激策とそっくりである。90年代後半、バブル崩壊の後遺症、それに竹中平蔵という、まやかし呪術師にたぶらかされた橋本龍太郎の思いつき行財政改革で、日本の景気は最悪状態。参院選敗北のあとを受けて立った小渕恵三は、宮沢喜一を財務相に登用し、景気回復を諮った。宮沢の作戦は、鉄やコンクリート、公共事業に重点投資し、その結果で周辺産業を刺激し景気浮揚を諮るという物だった。古くさい高度成長期の焼き直し、おーるどケインジズムである。しかし、一向に景気に火がつかない。何故かというと、実はその当時、鉄もセメントも、日本は国内では殆ど生産せず、韓国や中国から輸入していたのである。つまり、国民の税金を使って、韓国中国企業を儲けさせてきたのである。これじゃ景気が上がるわけがない。
 これと同じ轍を踏もうとしているのが、今の再生エネルギー、中でも太陽光発電である。実際、国内各メーカーは太陽光パネル投資を増大すると発表するが、新規工場は日本ではなく、中国での新設だ。これでは、日本国民の電気料金負担で、中国や韓国メーカーの儲け、中国人雇用に貢献しているだけである。又、日本の研究者がより発電効率の高い素子を開発しても、その生産は日本を素通りして、中国・韓国メーカーに移る。それどころか、そのノウハウもいずれは中韓によってパクラれる。
 また、誰も云わないが太陽光発電は、後10〜20年後には莫大なゴミを作る。素子や結線・躯体の劣化である。このゴミ処理については全く検討されていない。しかし、これに掛かる費用は日本人消費者の負担になる。放射性廃棄物は再処理してもしなくても、その残熱から再び発電することが出来る。ソーラーゴミは何の役にも立たない只の迷惑ゴミである。それどころか、素子や結線には発送電効率を上げるために、微量の元素が混じっている。所謂レアアースである。これの殆どは、発癌性の疑いがある有害物質であることを忘れてはならない。
 要するに太陽光発電とは、日本人は苦労だけして、いいところは中国人や韓国人に持っていかれ、残りの欲しくない部分だけ日本人に押しつける、片務事業なのだ。
(12/06/14)


 5月24日付けウオールストリートジャーナル日本語版に、「大失敗だったドイツの教訓に学ぶ」というコラムが載っている。著者は東京工科大学教授 尾崎弘行氏で、氏は前回にも太陽光発電強制買い取り価格42円/kwは高すぎる、述べている。枝野も「太陽光発電を普及するために、買い取り価格は高く設定している」と述べている。つまり、日本の太陽光買い取り価格は、政治的意図が働いた政治価格なのだ。本来自由競争であるべき買い取り価格に、何故政治的意図が働いたのか?今の民主党の最大支持者は京セラの稲森。そして今の京セラの主力商品がソーラーパネルなのだ。それとか在日の孫と、半韓半日の管との関係も疑われます。何せ二人で手を取りあって、やれ「電田構想だあー」とアホ踊りをやっていたのだから。何だか、コイズミとオリックス宮内ら、かつての竹中民営化委員会との関係に似ています。
 それはそうとして「ドイツの失敗」とは何でしょう。尾崎氏はドイツの例を引いて、原因は太陽光発電は大方の期待を裏切ったからだと結論しています。
1)ドイツは2020年までに、再生エネルギー比率を20%まで引き上げるというEUの目標の下に、2000〜2011年の間に1000億ユーロ(約10兆円)の太陽光発電コストを投じたのに、それに見合った成果が得られていない。
2)クリーンエネルギーに対する財政補助の60%が、太陽光発電に振り向けられているにも拘わらず、全発電量に対する比率はたった3%に過ぎない。
3)ドイツ政府は、当初太陽光発電事業による雇用効果を年37万人と見込んでいたが、電気料金値上げによるマイナス効果を考慮すると、年7万人に過ぎない。
 結果として、独紙シュピーゲルは「太陽光発電補助政策はドイツ環境政策の歴史で『最も高くつく誤り』と酷評しているらしい。何故、太陽光発電がコストに見合った成果を出せないか?それは太陽光発電の設備利用率が、他の発電方式に比べ際だって低いからである。まず、夜間は発電出来ない。昼間でも雨天・曇天では著しく発電量が低下する。冬季でも積雪地帯では発電出来ない。
 更に氏は手厳しい注文を付けている「太陽電池の在庫減らしのために税金を使われたのではたまらない。また全量買い取り制度という「公費」で儲ける電気事業者には、電力安定供給義務を課すべきだが、経営不安定なベンチャー企業にそのような責任を負うことは出来るだろうか」。
(12/05/30)

太陽光発電の不都合な真実
 本日NHKウェブサイト「太陽光発電の不都合な真実」。メーカーに「20年間はメンテナンスは要らない」と云われて買ったが、10年も経たない内に発電量がガクッと落ちて、結局パネルを買い換える羽目に。NHKの調べによると、この種の被害が全国20%に達すると。原因はパネルの発熱で回路が切れて、電気が流れなくなること。回路が切れると更に熱が蓄積されるので、場合によっては火事になる危険もある。韓国や中国の安物パネルを使っている所為も考えられる。ソーラー発電で山火事でも起こしたら大変だ。
(この件について一言)
 現在のソーラーパネルの主流は半導体パネルである。半導体を作るには莫大な電気を消費するが・・・この点を環境主義者は判っていない・・・特に最終段階での仕上げには、上等の電気が必要である。上等の電気とは周波数が常に一定で、電圧のドリフトを起こさないことである。この電気を作るには、やはりコストが懸かる。日本の電気代は世界一高いが、逆に言えば世界最高級の電気であり、この最高級電気が日本のハイテク産業を支えてきたのである。又、我々日本人が、世界でも飛び抜けた便利生活を送れるのも、電気の質が最高級だからである。こういうと、またまた一番でなくてはならないんですか、2番じゃ駄目なんですか、というアホが出てくる。2番じゃ駄目なんだよ。
 一方中国・韓国は電気の質を落としている。だから製品を安く出来る。その結果がどうなるかというと、例えばソーラーパネルでは、半導体の材料不均質を起こし、発熱・断線の原因を作っている。電気の質の悪さの影響はこれだけでは留まらない。例えば中国・韓国は、今も新幹線の車軸やブレーキを国産化出来ない。この理由は中国・韓国の電気の質が悪いからである。つまり、切削器の回転数が一定しないのだ。昨年だか、ロシアの火星探査船が行方不明になった。これに対しロシア当局は、某国から輸入した安物の半導体が原因と発表した。某国とは何処か?間違いなく中国でしょう。韓国がいつまで経ってもロケットを打ち上げられないのも、北朝鮮テポドン3が2分で墜落したのも、安物半導体の所為かもしれない。北朝鮮は日本の経済制裁で、日本製半導体を導入できない。韓国はイーミョンバクにくっついたサムスン製バッタモン半導体を、使わなくてはならない。それに引き替え日本のH2Aは打ち上げ成功率が世界最高位に達している。何故ハヤブサがミッションを成功させられたのか?世界最高級微細加工技術を実現するために必要なのは、まず最高級の電気である。幾ら形だけ真似しても、中身が伴わなければ無意味なのである。外面だけ整形で美人にしても、性格が悪ければ、只のブスだ。
(12/04/25)

【暴露された風力発電・・・自然エネルギー発電のインチキ】
 筆者が常々疑問に思っていたのは、自然エネルギー発電の採算性です。自然エネルギー開発は既に国家事業になっており、国からの補助金も支出されている。ところが、その採算性については国(経済産業省)は一切公表していない。ここで採り上げるのは風力発電です。この事業についても実態は不明な部分が多い。しかし、最近NHKの調査により、やっとその一部が明らかになってきました。12/02/17NHKNewsWebでは、全国60箇所の自治体経営風力発電所の採算実態を報道しています。その結果は驚くべきもので、筆者の予想を遙かに超えるものでした。
 前年度発電量が計画発電量を満足したもの ・・・・全体の15%
 前年度発電量が計画発電量の2/3以下   ・・・・全体の50%
  前年度発電量が計画発電量の1/3以下   ・・・・全体の16%
 つまり殆ど役に立っていないということだ。要するに風が思ったように吹かないからです。だから発電が出来ない。日本のような温帯モンスーン地帯は元もと、風力利用は適さない。だから風力発電が失敗するのは当たり前です。その点は筆者が。それでも風力発電をやりたがる自治体や業者が後をたたない。08年に指摘しています下図は自治体発電所の分布だが、全体の半分近くが太平洋岸に、更に計画1/3未満発電所の大部分も太平洋岸にあることが判る。

 だれが考えても、こんなところで風力発電など?だ。ところがそれでも発電所をつくってしまった。何故でしょう?そこにはからくりがあるのです。風力発電には国庫補助が出る。その根拠は「ふるさと創世予算」だ。竹下内閣時代に作られたこの予算は、実は消えていない。この予算の主管は経済産業省。役人は一旦掴んだ予算は絶対離さない。それどころか、予算の拡大を計る。自然エネルギー万々歳だ。申請が増えれば予算が増える。つまり、自治体がこれが「ふるさと創生」といえば通ってしまう。だからといって何でもかんでもOKというわけではない。この事業で採算が採れる、という根拠が必要である。その根拠となるのが、風力データ。果たして自治体が十分なレベルでデータを採っていたか、甚だ疑問である。風は目に見えないから、事業を狙っている商社やメーカーがデータの捏造・改竄などやるのは朝飯前。それやこれやで、政府補助金を当てに無駄な風力発電所を作ってしまったのである。
 なお、NHKは他に民間発電もあるから、必ずしも風力発電は無駄ではないようなことを云っているが、これは甘い。第一風の吹き方が自治体発電所と民間発電所で変わるわけがない。国庫補助は民間会社に対しても適用される。つまり、かなりの金が経済産業省を通して民間発電会社に流れていると見るべきである。そして、その効果は上の図と大して変わらず、無駄の積み上げなのだ。補助金あるところ利権あり、利権あるところ嘘と欺瞞ありだ。
 又、本事業に国庫補助が入っておれば・・・自治体だろうが民間だろうが・・・それは会計検査の対象になる。関係者は一度会検で震え上がった方がよい。但し、会計検査院がこの種再生可能エネルギー事業に甘い可能性はある。
(12/02/23)


風力発電タワー倒壊事故

                                   

 上の写真は先般青森県はむつ市で起きた風力発電タワーの倒壊写真です。新エネルギーという名の、まがいものの未来を象徴しているようです。それはそうとして、風力発電タワーがコンクリート製だとは今まで知りませんでした(関西には風力発電施設が少ないもんで)。基礎と本体との接合部で破壊しているから、これは基礎や基礎地盤の問題ではありません。このコンクリートの柱はRC造のように見える(PC鋼線らしきものが見えない)。タワーの外周に沢山の鉄筋が埋め込まれて(全て同じ場所で切断している)いますが、これは補強筋であって、構造筋ではない。構造筋と見られるのは、上の写真で何本か突出している細い線です。高さ70mに達する構造物を支えるには如何にも少ない。しかもすっぽ抜けているから基礎と剛結されていない(剛結されていれば、基礎の鉄筋やコンクリートがまくれあがるはずである)。この鉄筋は一体何の役割を果たしていたのでしょう?施工時に鉄筋の手抜きをしたのでしょうか?つまり、タワーはコンクリートだけで支えられていたということなのだ。RCの場合、鉄筋とコンクリートの応力分担比は15だから、簡単に言えば、鉄筋が無ければ、コンクリートには15倍の応力が懸かることになる。こういう柱に繰り返し荷重が加われば少しずつクラックが発生する。クラックが発生した部分での強度は0だから、これがある範囲まで広がれば、僅かな風力でも簡単に倒壊してしまう。
 風力発電タワーというものは、その性質から常に横方向の繰り返し荷重を受ける。つまり、常に曲げ荷重が不規則に作用する。曲げモーメントはタワー最下端で最大となる。RCなら曲げには耐えられない。つまり、構造としてはPCのような曲げに耐えられる構造とし、特に本体と基礎との接合部には十分な補強が必要である。設計ミスの疑いも残る。
 
(11/07/01)