斜面上直立擁壁築造法

横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫


 日本では少し山に入ると、急峻な山地が広がります。そこに道路を作ろうとすると、色々な困難が待ち受けます。例えば法面が切土であれ盛土であれ、収まらない。ではどうするかですが、下図は筆者がかつて経験した、その種問題へ対策工法の一例です。今から25年ほど前に作った画ですが、最近よく起こっている事故から見ると、日本の土木は25年前からほとんど進歩していないことが分かります。

 これらのうち、筆者がかつて設計した「鋼管ぐい擁壁について、設計と施工の要点を説明します。

計画

   当該地は兵庫県中部の山地で、基盤は「舞鶴構造帯」のジュラ紀堆積岩で、ホルンフェルス化している。全体に1:1.0程度の急斜面が発達する。
現道はこの斜面内をループ状に這い上がっている。
 計画はこの道路を2車線に拡幅するものである。当初計画では図のように谷側に張り出し、盛土は逆T擁壁で受けるものだった。
 ところがボーリングをやってみると、約6mに及ぶ崖錐堆積物が見つかった。これは地形から見て、斜面の遥か上方から下の川まで分布するものとみられる。
 図を見る通り、原計画では擁壁の安定は維持できません。しかし地形上の制約が大きいので、道路線形は原計画を維持し、構造物で対処するものとしました。
 

設計

    設計モデルとしては左図を採用。クイは土留めクイとしてSTKとした。

 
    構造の詳細。アンカーはSEEEEF50TAタイブルアンカーを採用。理由は特にない。単にワタクシがVSLが嫌いだっただけかもしれない。

施工

   ダウンザホールハンマーによる削孔と、
鋼管の建込み。
  RC擁壁の構築 
  アンカーの施工 

 ということで非常に簡便な設備で施工が可能だということが分かります。