横浜マンション不等沈下の真実

 横井技術士事務所
技術士 横井和夫


 福岡でのマンション不等沈下問題で、このほどやっと事業者であるJR九州他関係者が、やっと支持クイの長さが足らなかったことを認めました。何年か前の横浜マンション不等沈下問題、そして最近の福岡博多駅前陥没事件と同じ轍です。どれも平成に入ってからの事故。特に横浜や今回のマンションはいずれもバブル崩壊後に施工された物件。これはどういうことかというと、一つは事業者が過度の利益追求主義に陥ったこと、二つ目は事業者が事業物件の地盤を全く理解していない、あるいは理解しようとしていなかったことの現れです。その結果としての組織的手抜きの横行です。つまり簡単に言えば、事前の地盤調査を無視した結果です。
 全体として言えるのは建設業界の質的劣化です。トップにいる役所(福岡市)や不動産屋(JR九州や三井不動産など)、施工業者の頭が悪いのは分かっているが、そもそも基礎を含め建物全体の安定性に責任を持つのは建築士である。そのため建築士は設計から施工に至るまで絶対的な権限を持っている。それを担保するものが建築士法で、これにより建築士は業務独占権を持っている。横浜ララバイ事件を見ても、最近の建築士は最早施工業者の下請けと化し、只の図面屋に堕した感がある。今回の事件も建築士が施工業者とつるんでいい加減なことをしたのだろう。
 なお建築士が全く法規を理解していない例もある。宅造法では斜面先端から30°の線内には建物を建ててはならないことになっているが、これは盛土についてであって地山には適用されない。それを混同するアホな建築士が世の中にはいる。
(20/07/23)

  レオパレスの手抜き工事がトップの指示だったことが判明。どっちみちこんなことだと思っていた。これだけでなく昨年のアパマン爆発事件も経営トップが絡んでいるはずだ。それよりひどいのはボーイング737MAXのコンピューターソフト問題。昨年のインドネシア航空他の墜落事故を受けて昨年末までにソフト交換するはずだったのに三カ月以上たってもなにもしていなかった。
 同機については中国始め各国が発注を予定していた。トランプは来年大統領選を睨んでボーイングや関連労組の票を当て込み圧力をかけたのだろう。ボーイングはトランプの意向を慮って納期を守った。そのツケが今回のエチオピア航空事故だ。トランプこそ大量殺人犯なのである。それに気が付かない人は世界に未だ大勢いる。その代表が我が日本国総理大臣のアベ晋三である。
(19/03/19)

 景気のいいときと悪いときにマンションを買ってはならない、というのは不動産買いの鉄則だ。何故なら、景気の良しあしに関わらず販売業者は利益を上げなくてはならない。そうすると、景気の悪いときは人や材料は余っても仕事がないから手を抜く。逆に景気の良いときは、仕事は次から次へとくるが、人や材料が足りないから手を抜く。
 今回のレオパレス施工不良騒ぎは後者の典型である。三年ほど前の三井不動産横浜マンション不良基礎騒ぎもそうだ。つまりマンションなどの不動産取引は景気が安定しているときが一番信用できる。それが何故できなくなったかというと、80年代バブルに始まる景気対策の失敗が原因だ。この結果政府の経済政策に一貫性がなくなった。それに加えて外人投資家はじめ、物言う株主が増えて、どの企業も見かけの利益を出さなくならなくなったのが多い。ゴーンの日産も似たようなものだ。
(19/02/08)

羽田滑走路液状化対策工事で手抜きが発覚。なんとなく前にあった三井不動産横浜LaLaのデータ改竄事件によく似ている。工法は滑走路の下に注入管を挿入し、薬液を注入して改良塊を造成するというものである。筆者が知らないということは、割合最近に工法認定を受けたのだろう。ところが滑走路の下にコンクリート片や古タイヤがあり、注入管の打設が出来なくなった。そこで設計どおり注入管を挿入たことにし、薬液量を捏造したと言うものである。
 この工法25年程前に耳にしたコンパクショングラウト(CG工法)と似ているといえば似ている。CGはアメリカのデンバーエンジニアリングという中小企業が開発したもので、日本では三信建設が導入して専用実施権を持っていたが、あまり流行らなかったようだ。今回の工法は東亜建設が独自開発ということだから、これとは別のものと思われる。
 この問題は横浜LaLaの場合と同様、工法選定のミスが原因である。こういうミスが何故起こるかと言うと、次の二つに大別される。
1)事業者・施工業者が工法優先で、地盤の特殊性を考慮しなかった。業者の言うことを鵜呑みにしたということだ。その背景にバックマージンの可能性も考えられる。
2)地盤調査は行っていたが、そのデータに具体的な障害物が記載されていなかった。そのため障害物は無いか、無視できると判断した。
 筆者はこれらの内、1)が優先され、その理由付けに2)が利用されたと考えている。羽田の埋立地は元々がゴミ捨て場で、何が埋まっているか判らないと思うのが常識。そもそもが地盤に適した工法ではなかったのだ。地盤の特性を考慮せず、工法ありきで失敗した例は横浜LaLa始め、数年前の倉敷シールド破壊事件とか、東電福島第一の凍結工法とか、色々ある。
 いや、事前の地盤調査結果からこう判断した、と言い逃れしたいだろうが、事前の調査ボーリングは垂直で、障害物に当たってもすり抜けていったり、オペレーターが場所を移動したりする・・彼らだって生活が懸かっているから、何時までも余計物に付き合ってはいられない。だから記録に残らない。おまけに調ボーリングなど1haに一本の割合でしかやらないのだから、そんなもので何が判るというのだ。 こういうのを鵜呑みにするほうがどうかしているのである。羽田という特殊な地盤に対する認識が不足していたに過ぎない。
 今回は羽田のゴミの埋立地という特殊な地盤で生じた事件だが、日本には他に色々施工障害物を抱える地盤がある。例えば、北海道・東北・九州などの第四紀火山地帯での溶岩や火山倣出物の転石とか、やはり第四紀扇状地の湧水とか転石とかである。地質調査業協会とか応用地質学会など、このような特殊地盤を総括し、地盤)調査法を含めた対応法(マニュアル)を社会に示すべきだろう。他人事ではないのである。
(16/05/07)

   やっと見つけた例の横浜傾斜マンション(パークシテイララ)・・・・写真中央の赤印。敷地に近接して北と西には多摩丘陵が迫っており、地盤はまあデリケート。支持層2m位の落差はあって当然。むしろ少ないくらいだ。設計者はその点を認識していたのでしょうか?

 平成27年、我々の業界で一番話題になったのは、三井不動産横浜LaLaクイ施工データ捏造事件。その後始末が業界主導で、やれ現場主任者を常駐させるとか、書類の提出を厳密化するとかの上辺だけの対策。こういうことしか考えられないのは法文系人物の悪い癖。法律や規則の条文さえ改めれば問題は解決」すると思い込んでおる。これは儒教朱子学の教え。しかしこれで中国はは国を滅ぼした。
 これを避けるには言行一致の陽明学に拠らねばならない。陽明学的にこの問題を考えれば、もっと綿密なボーリング調査が必要なのだが、そうするとコストが懸かると、官僚は目先の利益のことしか考えない。だから言葉だけの朱子学に逃げ込む、楽だから。従って何時まで経っても同じ失敗を繰り返し、業界の信頼をなくしていくのである。ボーリング調査など安いものだが、その価値とコストとのバランスが判らないのが、日本の朱子学的土木建築業なのである。
(15/12/31)

横浜LaLaクイ打ちデータ儀装事件を受けて、国土交通省がクイ打ち不正が見つかった場合の支持層確認方法の指針を発表。要約すると
1)支持層が平らで、他のクイの施工記録から不正記録クイの支持層の深さを確認できる。
2)地盤調査の記録から支持層の深さを確認できる。
3)データ不正クイについて施工段階で発注者が立ち会ってチェックした記録がある。
 以上が満足されておれば、ボーリング等で支持層を確認する必要はない。
 一体この指針は何を云いたいのでしょうか?筆者には住民から行政に質問があったときの、言い逃れ方法を示しただけとしか思えない。おそらく事件発覚後、各自治体に問い合わせが殺到し、それに対応出来なくて慌てて国に対応指針を求めたのでしょう。
 この指針の問題点は全て不確実性を含んでいるということです。まず1)ですが、「支持層が平らで・・・」とあるが、日本のどこに支持層が平らなところがあるでしょうか?そもそも支持層が平らかどうかをどうやって確認するのか?この指針は始めから、原因」と結果をゴッチャにしているのです。これは非現実且つ非科学的前提である。横浜の件は支持層が平らでないのを平らと勘違い」したから起こったのです。2)でも支持層の深さが確認できるのはボーリング地点だけである。これを敷地全体に拡張しようとすれば、1)の非科学的前提に基づかなければならないので、これ自身、非現実且つ非科学的である。3)に至っては全くナンセンス。こんな記録幾らでも捏造・改竄出来る。ちょいと酒飲ませばそれで終わりだ。
 上記の指針など、ワタクシの目ではせいぜい中学生レベルの低級B作品。こんな低レベルの説明で、果たして住民は納得出来るでしょうか?。こういう指針が出てきた背景には、現在の地方自治体の土木・建築関連技術の劣化がある*。
 原因はバブル崩壊後の公共事業抑制で、どの自治体も土木・建築関係職員の採用を手控えた。それに輪をかけたのがコイズミ内閣の経世会潰し作戦。これで地方の建設関連業は1/3まで減少した。それに比例して自治体の技術系職員も減った。それを後ろで旗を振っていたのが竹中平蔵の効率主義経済、それと石原慎太郎の地方潰し東京・大都市中心思想。これには堀江や橋しただって同調している。
 その結果どうなったか、と言うと自治体の力量が低下したため、地方では業者の言いなりになったり、東北太平洋地震復興事業では、自治体が設計書を組めなくなったので工事発注が遅れ、事業そのものに混乱が出る始末。
 つまり横浜傾斜マンションを作った張本人は、コイズミ純一郎と竹中平蔵、それと石原慎太郎の三人である。しかし横浜LaLa住民の皆さんは、この三人を支持したのではあるまいか?だったら黙ってあきらめなさい。
*実はこんな文系的いい加減手法ではなく、地球物理学を利用した科学的方法があります。それは速度検層とトモグラフィ法です。これには上で上げた、いい加減な判断が入る余地がありません。しかし少々費用が懸かる。
(15/11/26)

 又横浜LaIa問題に移ります。先日日本建設業協会が本件事故については、最終責任は元請にあると表明しました。昭和50年代までの在来工法の時代なら尤もな意見なのだが、その後世の中の状況は変った。60年代以降、建築は性能保障の世界になった。これは建築構造物をT来る場合、(財)国土開発技術センターの認証を受けた工法であれば、一々設計しなくて良い、施工業者が一定期間中は保障する、という制度である。これは基礎工事にも適用される。
 具体的に横浜LaIaのケースで見てみます。筆者は在来工法での施工と思っていたのだが、あるネット情報では、そうではなく、旭化成建材が特許を取得した工法が採用されていた。旭化成が三井不動産にプッシュして、この工法を指定したなら、その結果は全て旭化成建材の責任になる。一方旭化成建材が三井建設にアプローチしてクイ工事を受注したなら、三井建設にも一半の責任は生じる。
 一番の問題は、クイ長の変化即ち支持層の変化を誰がどの時点で把握すべきかが、建築基準法でもなんでも曖昧。具体的には設計者の判断とか、行政指導に拠るのだが、そのどちらも無知無能であることが問題なのである。どのケースでも旭化成建材が受注したとき、性能保障制度なのだから、支持層の確認を発注者に要求すべきなのである。それをやっていなかった。従ってり旭化成建材の責任は免れない。これが性能保障制度なのである。しかしこれも各業界が国に要求してそうなったのだから、文句は云えない。
 なお、旭化成建材特許の、この工法。結構怪しい部分があって、私なら絶対に採用しません。第一クイ先端寝固めコンクリートなど信用出来ますか?クイ先端支持機構を全く判ってない。いい加減もいいところだ。落第。
(15/11/24)

 昨日BSフジプライムニュース。テーマはマンション建築の監査問題。これは横浜LaLaのくい打ち工事を受けてのことであるのは顕かである。ゲストスピーカーは弁護士と建築評論家。カウンターは旧建設省出身の国交副大臣。
 弁護士曰く、マンション建築監査のトラブルは建築確認が民間審査になってから激増している、理由として監査機関と業者との癒着が挙げられる、とする。従ってこの制度は廃止し、行政の役割を強化すべきである。建築評論家は、現行制度の欠点は認めつつ、行政介入には慎重で、第三者機関に拠るべきだとする。カウンターの副大臣は現行制度は行政簡素化・民営化という政府政策に沿った者で、変更する必要はないと木で鼻くくった回答。
 さて三者の言い分を比べてみよう。弁護士の意見は尤もに見えるが、行政だってすぐに業者と癒着する。例えばつい最近東大阪市建築部長(建築の天皇)が収賄で逮捕されたばっかりだ。行政権限を強化すれば、あちこちに建築天皇をつくることになる。
 建築評論家の意見は合理的で尤もだが、第三者機関をどのような手続きで作るか?メンバーや運営はどうするか?従来に比べ監査効率が低下する、など課題は多い。下手をすると、単に行政の隠れ蓑に利用されるおそれがある。
 副大臣は、自分が現役の時に、今の制度作りに係わりあったのだろう。だから幾ら矛盾が出てもはいそうですか、とはいえないのだ。木っ端役人とはそういうものだ。それと民間監査機関は態のよい役人OBの受け皿。つまり副大臣の選挙票田。これを廃止すれば自分の選挙にかかわる。
 では筆者の意見はどうかと言うと、今の建築業界で起こっている問題の原因の大半は、設計・監理・施工三業務の境界が曖昧だからである。戦後アメリカから建築士制度が持ち込まれ、それに基づいて、今の建設業法が出来た。そこではこれら三者の分離が謳われている。しかしいつの間にか段々とその境界が曖昧になってしまった。何時ごろかというと、やっぱり50年代不況か。弱小資本の設計屋やコンサルのゼネコン下請け化が進んだ。その後、バブル崩壊後の90年代。市場主義経済がこの世界にも及んできて、コストパフォーマンスの悪いベテラン技術者がリストラされ、経験未熟人間が重要ポストに付くようになった。以上が建設三業務境界を曖昧にした根本原因である。
 従って最良の対策は原点に返ること。つまり三業務の境界を厳格化し、互いに牽制させることである。例えば、アメリカでは設計会社は管理業務には入札出来ない。施工会社は飽くまで施工のみで、設計変更は設計者の承諾なしではできない。そのそれぞれに弁護士がついて法的安定性を担保する、と言うような制度である。実現には大変な抵抗があるでしょうな。だから誰もやりたがらない。
 なお、建築事業全体を虎と例えると、この番組で問題にされた監査などは虎の尻尾。問題は頭である。頭を作るのは設計。この設計がだらしないから今度のような問題をつくったのだ。横浜LaLaの場合一部の地区で、発注したクイが必要寸法に足らなかったために起こっただけだ。必要寸法は設計者の判断で決められる。設計者の判断を左右するものは事前の地盤調査(ボーリング)データである。これが十分な密度であれば、今回のような問題はおこらなかった。何故起こったかと言うと、設計者の頭に地盤の変化に対する認識不足、そこにはたいした技術も経験もないのに、ボーリングなどなくても現場でやれるという傲慢・過信があったのである。
 今の建築基礎構造設計基準ではボーリング計画は地質学にはシロートで地盤(地質)調査の経験もない建築屋に任されている。これが問題であって、これが今回のような事故をまねいたのである。今後ボーリング調査についても、土木・建築業務と地質・地盤調査業務を区別し、法律上の規制を設ける必要がある。
 なお副大臣は「今横浜市が三井建設に対し、現状での安全性を検討させている。明日にもその結果が出る」と発言。これが本当なら、横浜市や国交省の役人の頭の中身を疑いたくなる。事業者は既に全面建て替えを表明している。今更潰す建物の安全性を検討して何になるのか?もし安全だという結果が出れば、建て替え案を撤回させるのか?そもそも建築基礎構造設計基準では、直接基礎については許容沈下量をしめしているが、クイ基礎にはそれがない。つまり、クイ基礎では不等沈下そのものを認めていないのである。ところが現実には4pの不等沈下量が現れている。これだけでアウトである。ややこしい構造計算など必要ではない。このようにやらなくてもよいことを民間企業に押し付け、自分の手柄のように自慢するのが、木っ端役人のとりえである。
(15/11/14)

 三井不動産横浜LaLaの問題で、三井住友建設の社長が事件発生以来一ヶ月もたってから記者会見。「ボーリングが足らなかったのじゃないか」という記者の質問に対し、「ボーリングは暫定的なもので、ミスかどうかではない」と反論。それだけでなく「下請けに裏切られた。云ってくれればよかった」と見え透いた、後付言い訳。
 このオッサン何か勘違いしているのではあるまいか?暫定的なボーリングという意味が判らない。通常、クイ長はボーリングで決める。暫定的なボーリングと言うものはありえない。それとも、このオッサン、ボーリングなど適当にやっておけばよい、あとは現場でやっつける、という昔ながらの情報とデータを軽視し、3K(勘と経験と気合)に頼る昔ながらの土建屋上がりではなかろうか。何せ当初、只のクイの打ち止め管理を地盤調査と言い張った会社だ。地盤調査とクイの打ち止めの区別も出来ないのである。
 おそらくこのオッサン、近代土木、現代基礎工学には全く無知の素人だろう。同じような昨年の住友不動産事故では、熊谷組は自己の認識不足を認めている。それが出来るかどうかが、会社の格を決めるのだ。
 こんなのが社長をやっている会社など、いずれその内何処かで、同じようなことをする。いや、既に何処かでやっていただろう。所詮炭鉱の下請け上がりだ。要するに、三井住友株は売り,、社長はクビ。とっくに売りまくられているだろうが。
 今は旭化成建材ばかりに目を奪われているが、三井建設施工の建物も、調査の対象に含めるべきである。住友建設も例外とは考え難い。なお、事件が発覚してから三井建設が採った、クイの確認調査にあきれてしまった。あんな原始的な方法しか思いつかない点で、この会社の技術レベルが判る。一昨年の倉敷日鉱jxシールド崩壊事故を起こしたカジマと同程度だ。ドッチも30点落第。
(15/11/12)

 旭化成建材の社長が管理体制の不備を認め、改善すると発表した。ではどういう改善をするのか?言葉だけで何にも出来ていないのが実情だろう。ワタクシが旭化成建材に助言できるとすれば、お前達は施工の能力がないのだから、さっさと施工から出て行け、そしてメーカーに徹せよ、と云うことだ。これは他の業種にもいえるだろう。
 さて問題の現場担当者。元々は土木建築にはシロートで、15〜6年前に旭化成建材に就職。それからくい打ち工事を覚え、その後派遣となった。こういうのって多いのだ。全く異業種からやってきて、見よう見まねで何とかやる。しかし基本が出来ていないから、危なくて仕方がない。昔はそういうのも会社が教育してきたが、ある時期からそんな悠長なことは出来なくなった。。
 それはバブル崩壊に伴う価格破壊、次はコイズミ改革と渉する価値破壊。この結果古い人間(職人)は右往左往。経験のない業種に参入することになる。今回の事件は、その一断面にすぎない。諸悪の根源は、アホのコイズミ純一郎、それをおだてた竹中平蔵、それとオリックス宮内ら民営化委員会メンバーである。
(15/11/02)

 例の横浜傾斜マンション元請けの三井建設が、実際の地盤調査(ボーリング)位置が予定より2mずれていたと発表。それがどうした、と言うのが我々実務者の実感。そもそもボーリング位置を今更どうやって確認したのか?調査報告書の記載と指示図面が違っていたと云いたいのだろうが、計画と実施が異なるのは当たり前。問題は、では本来の位置でなら、地盤の状況を正確に把握できたかどうかである。それどころか10年以上も前のボーリング指示図面が今まで残っていたというのも疑問である。こんなもの用事が済めばさっさと捨てる。つまりこれも三井建設の嘘ではないか?
 要するに事前のボーリングをいい加減に済ませたか、仮にボーリング報告書で支持層の不陸が指摘されていても、それを無視したかのどちらかである。
 それと筆者が前々から疑問に思っていたのが、建物の沈下が築後10年近く経って顕かになったことである。現在言われている事実を合わせると、クイ先端と支持層との間に2mの隙間があり、その間をコンクリートで充填したのではないかということである。これ自身は見方によればペデスタルクイとなり、コンクリート充填部の先端が支持層に到達しておれば、沈下量はコンクリートの弾性圧縮だけになるから、そんなものは建物の築造過程で、殆ど吸収されてしまい、長期的な影響は考えられない。
 ところが現実には10年近く経ってから現れている。これは所謂圧密沈下という現象を考えなくては説明できない。つまりコンクリート置換部分の更に下に、圧密を生じる地層があったということだ。施工者はクイの予定深度まで掘削した。しかし支持層は現れない。更に2m掘削したが、やはり現れない。2mの予掘り部分にコンクリートを投入して、とりあえず一件落着。
 三井建設はそういう地層の存在を見逃していたのだ。ボーリング位置が2mずれていたというのは、何の言い訳にもならない。設計者はこういう地層の存在を把握する義務がある。さてこの顛末、末端の独断でやったのか、それとも上位業者が関与していたか、が問われるのである。
 三井不動産も三井建設も、事前の地盤調査結果をさっさと公表すべきではないか?何故出さないのか?出せない事情でもあるのか?まあこの物件、裏に色々事情がありそうだが。
(15/10/28)

 連日の横浜三井不動産マンション報道だが、ここに出てくる専門家達の話を聞くと、その幼稚さにあきれ果てる。例えば今日の4chワイドショーに出てきた一級建築士だが、例の施工監理者の「クイの継ぎ足しには一ヶ月懸かるといわれ・・・」という説明に対し、クイの継ぎ足しなど現場で出来る、とアホな解説。そんなことなど誰でも判る。このオッサンは問題の本質をまるで判っていない。問題は継ぎ足しが出来るクイがあるかどうかなのである。
 一般ピープルはコンクリートクイなど既製品だから幾らでも在庫があると思っているだろうが、あれは工事毎の特注品で、ユニクロの安物と同じではない。
 つまり現場ごとに,、注文に応じてメーカーが設計して製造する。だから例え2m足らなくても継ぎクイは別設計になる。これは構造力学的には結構ややこしい話。又旭化成の製品だからACパイル。只型枠にコンクリートを流し込めばよいと言うものではない。強度が出るまで高温高圧状態で長期間の養生が必要である。旭の現場管理者が言う、継ぎクイに一ヶ月懸かるというのはあながち嘘ではない。おまけに今の時代、どのメーカーも在庫など作らない。メーカーに在庫があるなどと思っている人は、世間から30年以上遅れている。
 結論が何かと言うと、事前の地盤調査つまりボーリングが足りないのだ。それは事業者や設計者の頭が足りないと同義である。要するに想像力が欠如しているのである。特に今時の一級建築士はそうだ。想像力は知的好奇心と経験によって培われる。マニュアルと言うものは、その両者を阻害する障壁である。だからマニュアルで育ったアホは、何時まで経ってもアホのままだ。
(15/10/22)

 連日の横浜三井不動産マンション報道だが、ここに出てくる専門家達の話を聞くと、その幼稚さにあきれ果てる。例えば今日の4chワイドショーに出てきた一級建築士だが、例の施工監理者の「クイの継ぎ足しには一ヶ月懸かるといわれ・・・」という説明に対し、クイの継ぎ足しなど現場で出来る、とアホな解説。そんなことなど誰でも判る。このオッサンは問題の本質をまるで判っていない。問題は継ぎ足しが出来るクイがあるかどうかなのである。
 一般ピープルはコンクリートクイなど既製品だから幾らでも在庫があると思っているだろうが、あれは工事毎の特注品で、ユニクロの安物と同じではない。
 つまり現場ごとに,、注文に応じてメーカーが設計して製造する。だから例え2m足らなくても継ぎクイは別設計になる。これは構造力学的には結構ややこしい話。又旭化成の製品だからACパイル。只型枠にコンクリートを流し込めばよいと言うものではない。強度が出るまで高温高圧状態で長期間の養生が必要である。旭の現場管理者が言う、継ぎクイに一ヶ月懸かるというのはあながち嘘ではない。おまけに今の時代、どのメーカーも在庫など作らない。メーカーに在庫があるなどと思っている人は、世間から30年以上遅れている。
 結論が何かと言うと、事前の地盤調査つまりボーリングが足りないのだ。それは事業者や設計者の頭が足りないと同義である。要するに想像力が欠如しているのである。特に今時の一級建築士はそうだ。アホは何時まで経っても、アホのままだ。想像力はマニュアルだけでは養えない。旺盛な知的好奇心と経験である。
(15/10/22)

 昨日NHK夜7時半のクロ現。テーマはやっぱり横浜三井不動産マンション問題。中身的には新味なものはなく、解説もシロウトじみて大したことはなかったが、ここで興味を引いたのは、一次下請けである日立ハイテクノロジーの扱い。
 テロップを使って説明した基礎工事の流れでは、三井住友建設(元請)→日立ハイテク(一次下請け)→旭化成建材(二次下請け)と図示していたが、いざ説明となると解説員は日立ハイテクは・・・わざと・・・すっ飛ばし、その前後だけに的を絞る。日立ハイテクが何をしていたかは全く無視。これは他のマスコミでも同じである。何故日立ハイテクだけをお目こぼしするのか?現NHK会長籾井の前職は日本ユニシス会長。この会社は日立や東芝など半導体メーカーの共同出資で出来た。その縁で籾井と日立ハイテクにも、浅からぬ関係があったことが想像できる。この会社の周辺を探ると、籾井にも疑いが懸かる。その辺を編集が忖度して、日立ハイテクを飛ばせ、と指示したのか?
 この会社が中間の工事費中抜き用ダミーであることは、明らかである。中抜きの経費は発注額の2%ぐらいが相場。マンション1戸価格を約3500万円とすると、基礎部分は約1000万円。下請けは7掛けとして700万。その2%、約14万円が日立ハイテクを通じて中抜きされていることになる つまり住民は約10数万円高い買い物をさせられているわけだ。これが35年ローンとすると、金利合わせれば返済額はその倍くらいになるから、30万円くらい余計に払わなければならない勘定。
 又全戸数を200戸とすると、トータルで3000万くらいが何処かに消えたのだ。なおこの計算は、かなり甘く見積もったケースである。しかも基礎工だけだ。他の部分を含めると数億は行くだろう。これぐらいの大規模開発なら、それ位消えても不思議ではない。よくあるのが、地権者に税金隠しの裏金を廻すケース。
 バブル崩壊後よく起こった事件に、投資詐欺がある。地方の高齢者が、数千万とか数億とかを騙し取られる事件だ。なんでこんな大金を田舎の年寄りが持っているのか不思議だったが、こんな手口でデベロッパーから廻った裏金が、詐欺師に還流すると思えば納得する。その金も本はと云えば、一般消費者の血と汗の結果だ。なおこんなやり方も、マイナンバー制の下では無駄な努力。
(15/10/21)

 とうとうマンションの脇で地盤調査が始まりましたが、この調査、何を目的としているのでしょうか?この種の問題は大きく、1)支持層位置は判っているが、クイの先端が不確かな場合、2)クイ先端位置は判っているが、支持層位置が不確かな場合、3)そのどちらも不確かな場合、の3ケースがあり、それぞれのケースで使うべき手法が異なります。実施主体が何処か(三井住友か、旭化成建材か、それとも日立ハイテク)は知りませんが、どれもこの種の問題解決に詳しいとは思えません。
 調査の手法としてサウンデイングを使うということだが、考え方としては、上記の2)のケースを想定していると考えられる。しかしいささか安易な対応だ。
 まず本地点の支持層だが、2万年前のウルム氷期の海水準低下でこの辺り一帯は谷となり、それを埋めるように河川成の砂礫層が溜まった。これが本地点の支持層である。その後地球気温は急速に温暖化し海水面が上昇、それにつれて沼沢地となり有機質の泥土や砂が堆積した。約1.3万年前に再び氷期が訪れたためこれに伴う河川成物質が堆積した。その後1万年前以後の温暖化で再び海水面が急上昇し、現在の地形を形成した。この下には海成の泥土からなる所謂軟弱沖積層が堆積する。これが所謂溺れ谷である。
 よくTV報道では、堅固な支持層と軟弱な地層の境界を強調する画面が出るが、実際の地盤構成はそんな単純なものではなく、中間に複雑な地層が介在しているのである。このような地盤にサウンデイングのような単純な手法を適用しても、中間層中の砂層や固い粘土層をひっかければとんでもない誤判断を起こす危険がある。
 それを防ぐには何箇所かボーリングをやって、土質とN値分布を取得し、サウンデイングとのリファランスうをとるべきである。何事も急がば廻れだ。
(15/10/20)

 横浜三井不動産事件でまたまた出てきた疑問が一次下請けの日立ハイテクノロジーという会社。この会社はこれまで一度も表に出てこない。この会社何者かと、ウエブサイトで調べてみると、半導体を使った計測センサーメーカー。クイ打ち工事とは何の関係もない。勿論経験もあるはずがない。こんな会社が何故ゼネコンの一次下請けに入れたのか?筆者の見るところ、この会社工事費用を横流しするためのダミーではないか?。これはバックマネーを上へ還流するため、よくある話。通常は設計事務所がやるのだが、最近の設計屋はそんな危ない橋は渡らなくなったのかもしれない。その代わり使われるのが日立ハイテクのようなシロウト。
 つまり三井住友が直接旭化成建材に工事費を渡すのではなく、中間にダミーを作ってそこに経費を発生させる。それを上・・・このケースでは三井不動産・・・に還流する。三井にとっては税金対策にもなる。還流された金は何処へ行くのか?大抵は用地買収や開発認可に手を貸した議員やヤクザさんへだ。こうなればこの事件、国交省ではなく、警察や検察のマターになる。それにしても、日立ハイテクなんておよそ場違いの会社が、何故クイ打ち工事なんかに手を出したのでしょうか?

 俄かに高まってきたのが、謎の現場監理員への疑い。どうもこれは旭化成建材の社員らしい。彼はかなり広く各現場を仕切っていたようだ。つまり旭にとって彼は有能な模範社員に見えたのかもしれない。そんな彼がデータを捏造したところで何のメリットがあるのか?それが判らないから、あまり深く考えてこなかったが、ここである人物を思い出した。
 それはワタクシが昔勤めていた会社に中途で入社してきた人物で、人当たりもよく口とマージャンが上手く、普通の地質屋とは一風変ったところがある人間だった。そこに当時の会社幹部はコロリと騙されたのである。ワタクシはハナからこいつは怪しいと睨んでいた。まもなく彼の学歴詐称がばれた。ところがそんな人間をを採用したとなれば、支店長以下幹部の責任になるからうやむや。そしてその後彼が阪神電鉄の仕事でボーリングデータを捏造したことがばれた。それ以外にもあちこちで似たようなことを繰り返したことが判って、とうとうクビ。
 あのオッサンが何故そんなことをしたのか判らないが、要するに面倒くさかったのか。ひょっとしたら一種の病気かもしれない。いわゆる先天性虚言症とか詐欺師という奴である。何故ならクビになっても、他所の会社で似たようなことをやっていたみたいだから、止められないのだ。結構これで儲けていたみたいだが。
 マジメにデータを取ったところで結果は同じ。給料も同じ。それだったら少々手抜きをしても構わないだろう、ということだ。将来どうなるか、なんて考えたこともない。旭の現場監理者もいざとなると「こんなことはみんなやっている。何処が悪いんだ!」と居直るかもしれない。こうなると、どの会社も落ち着いてはいられないはずだ。いずれこの問題は、犯罪心理学の対象になる。
(15/10/19)

 横浜三井不動産マンション騒ぎで、またまた出てきたのがクイ打ちデータの捏造疑惑。これまではボーリングデータの捏造かと思っていたが、そうではなかったのだ。業者側はまず電流計や記録システムの故障と云い、次に問題区間の施工は特定の監理者とオペレーターが受け持っていたと説明する。おまけに今度は担当者がインフルエンザで二日間休んでいたからデータが取れなかったと言い訳。これは全部嘘です。シロート騙しの浅薄言い訳。まず、電流計故障位置が何故問題箇所と一致するのか?電流計がそんなに都合よく故障するわけがない。これ自身業者側の説明が信用できない理由の一つである。
 次に特定の監理者、オペレーターが受け持っていたというのは事実だろう。普通土木工事の場合、施工箇所を区分けしてそこを下請けに任せる。通常オペレーターはクイを一本打設して幾ら、で請け負う。但し資材は元請供与だ。だからクイの長さを誤魔化しても、彼らの利益にはならない。誤魔化す理由がないのだ。
 ここで問題は電流計データの件だが、本当にこのオペレーターが改竄したものか?たかがオペレーターに他地点データが簡単に入手出来るるものか?そんなことをすればたちまち現場で噂になる。元請だって無視は出来ない。
 筆者が考えるに、電流計データはまともに取れていた。ところがその中の一部に支持層を示す信号がなかった。そこで元請(三井住友建設のこと)に報告したところ、このままでやれという指示が出たのではあるまいか?元データは廃棄され、何も分からなくなった。
 今のところ、業者側の作戦は、問題を機械の故障とか、オペレーターの誤魔化しのように、事実を矮小化しようとしているのはあきらかです。ワタクシの見るところ、本件犯人は元請の三井住友建設です。
 何故ここまでしなくてはならないか?三井住友にとって、この件の行方によっては、公共事業から締め出し(指名停止)を食う。何としてもこれは防がねばならない。
 三井不動産にとってのチョンボはこんな工事を三井住友建設のような二流会社に任せたことです。もうチョットマシな会社を選べばこんなことにはならなかったかもしれない。
 それにしても不思議なことは、この件の記者会見で、設計事務所が顔をみせないことです。一体全体、このマンション誰が設計したのでしょうか?通常、設計事務所が設計監理契約を結ぶ。クイの打ち止め確認も設計事務所の重要な仕事だ。それをゼネコンのそのまま下請け任せにしていたわけだ。職務怠慢、建築士法違反ものだ。これから伺えることは今時の一級建築士など、何の役にも立たないということだ。
(15/10/17)

三井不動産横浜マンション不等沈下問題で、マスコミによく登場するのが「地盤調査」という言葉。これをどうも間違った使い方をしている。「地盤調査」とは、ある事業・工事に先立って、対象地盤の物理的性状を明らかにする技術的行為である。これには高度な知識と経験が必要で、公共事業や民間事業でも大規模事業では、少なくとも応用理学(地質)又は建設(土質および基礎)部門の技術士の指導・管理の下に行なわなくてはならない。昨年の住友不動産物件、今回三井不動産物件はともに、広い敷地に数棟のマンションを建設するわけだから、十分大規模開発と云ってよい。それ以外のことはせいぜい真似事「地盤調査もどき」である。
 今回旭化成建材他は施工中に地盤調査を行なったと説明しているが、実はアースオーガーの電流量測定だけで、これは只のクイの打ち止め管理手法*、地盤調査でもなんでもない。地盤調査の手法には様々なものがあるが、市街地の一般建築工事では、標準貫入試験を伴うボーリング調査が主流である。今回の事故は本当の意味での「地盤調査」が不足していたのだ。
 旭化成建材が施工までやっていたのだから、クイはACパイルで施工法は中掘り又はプレボーリング工法と考えられる。これはアースオーがーで先行掘削し、クイを所定位置に設置させる工法である。通常の施工では、まずボーリングをやっている地点で試験グイを打つ。その地点では支持層の位置は分かっているから、その前後の電流量の変化との関係が分かる。それを目安に他地点の打ち止め管理を行なうのである**。なお、電流量と地盤支持力との間には、なんら物理的関係はない。只の目安なのだ。
 つまり旭化成建材は単に「地盤調査もどき」をやっていただけなのだ。
 さて何故今回のような事故が発生したか?それには次の3点が考えられる。
1、過度の成果主義
2、他業界からの参入
3、バーチャル地盤調査

1、過度の成果主義
 1990年代バブル崩壊とともに、この業界にも成果主義が蔓延し、吹き荒れたのがリストラの嵐。どこのコンサルでもゼネコンでも、経験ある中堅上の技術者が狙い打ちされた、その結果発生したのが技術継承の分断。残ったのは経験未熟のアホばかり。実際この辺りから建設事故が増えているのである。
2、他業界からの参入
 84年プラザ合意で急激な円高が始まった。そのため鉄鋼他輸出産業は、リストラの一環として工事部門の分社化を進めた。その結果土木・建築産業にもメーカー系列企業が増えたのである。彼らは従来ゼネコンの下請けでやってきた。そのため利益は確保できた。分社化の所為で自分で稼がなくてはならなくなった。その結果は談合とかろくでもないことの焼き直し。旭化成建材という会社もその一つである。
3、バーチャル地盤調査
 これが最大の問題である。80〜90年代にかけて、各地で都市地盤図というものが作成された。その先駆けは1967年出版の大阪地盤図で、これは素晴らしい成果なのだが、後は余り大したことはない。何故か?最初の「大阪地盤図」には故竹中先生始め、編纂者の理念があった。あとから出てきた地盤図は、只のボーリングデーの寄せ集め。理念もなにもあったもんじゃない。それどころか最近ではインターネットで、自社所有地盤情報を公開するサイトまである。
 最悪は地盤図とかこれらウェブサイトから近くの地盤情報を取得し、それで基礎の設計までやる手抜きである。しかも一部地方自治体ではそれで建築許可まで出すのまでいる。こうなると地盤調査は只の儀式でしかない。つまり地盤調査がバーチャルになってしまう。昨年の住友不動産も今回の三井不動産も似たようなことをやっていたのではないか?

*昔竹中工務店本店の工事課長と話したことがある。彼曰く「クイの打ち止めは電流量だけでやってるンや。あんなもの信用できるんか」。大阪は断層が発達して地層の変化が激しい。関東のように単純ではないのだ、といいたかったのだろう。現場技術者の正直な告白である。
(15/10/17)

 この問題、下請け会社がやったという情報。下請け会社とはなにものか?ボーリング屋か?彼らに自らデータを改竄する能力も意志もない・・・ワタシなら別だが、ワタシの場合は高くつきますよ。もし彼らがデータを改竄したとすれば、それは発注者であるゼネコンの圧力。ボーリング屋が自ら進んでデータを改竄するなどありえない。
 下請け会社とは旭化成の子会社の旭化成建材という会社と言うことが分かりました。そこで思い出した。今から45年程前丁度大阪万博の頃、旭化成が当時勤めていた東建地質調査という会社に、AHSパイルという自社ブランド新式既成クイの売り込みにやってきた。高温蒸気圧養生RCパイルで、PCパイル以上の強度があるという振れ込み。これは後にACパイルという名称で建築学会の標準工法の一つになっている。問題の旭化成建材は、AHSの製造販売部分が本体から分社したのだろう。分かると思うがたかがクイ屋、地盤にはシロウトなのだ。そのシロウトが見よう見真似で妙なことをしたのが身の破滅。
 しかし何故、三井不動産や三井建設はこんなシロウトに、みんな任せてしまったのか?それが問題なのである。一般の基礎工事は・・・・土木と建築でやや異なるが・・・工法・資材は事業主が選定する。但し実務は設計事務所(又は設計コンサルタント)が代行。ゼネコンはこれに基づいて資材の調達を行なう。クイ工事の場合、パイルメーカーは施工現場への納品までで、あとはゼネコンの責任になる。この物件のような大型工事なら、ゼネコンの下にライトとか横山基礎など基礎工事専門業者がサブコンとして入る。旭化成建材はこのステップを省略し、自らがゼネコンがやるべきことまでやってしまったのである。医療に例えて云うなら、医者が製薬メーカーの営業担当に注射までさせたということだ。無論この場合、メーカーだけでなく、それを放置した医師・看護師も罰せられる。
 何故そんなことをしてしまったのか?営業のフライングの可能性も考えられるが、会社トップからの強いプレッシャーがあった可能性も捨てきれない。注射打ちなど誰でも出来る、メーカーに任せておけば問題はない、とう驕りである。東洋ゴム試験データ改竄、VWシステム改竄事件と性質は同じ。
(15/10/15)

 今度は横浜の三井不動産のマンションで基礎クイの手抜き工事で、マンションが不等沈下を起こすと事件が発覚。横浜では昨年も住友不動産のマンションが同じような事故を起こしている。今回は地盤調査データを改竄しているだけ、性質が悪い*。この手の事件・事故は昭和30〜40年代にかけてはよくあったのである。50年代以降はめっきり減ったが、それが最近になって又増えてきた。それは技術の劣化といわざるを得ない。はっきり云って今頃こんな事故が起こるなど情けないとしかいいようがない。
 昔々、関東地方の某市で、ある会社が社員寮を新築するので、ある業者に設計・施工で工事を委託した。ところがその会社は設計能力が無かったので、ある技術士に基礎の設計を依頼した。業者側の資料に地盤調査データがなかったので、技術士は業者にボーリングするよう頼んだところ、業者は今は時間が無いので推定でやってくれ、ボーリングは後で必ずやる、と云って引き下がった。ところがその後、件の寮が不等沈下を起こして使い物にならなくなった。つまり業者はボーリングをやらず、推定のまま基礎工事をやってしまったのである。会社は業者と技術士を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こした。判決は業者と技術者に連帯して賠償せよと言うものだった。
 今回の事件で云えるのは、住友不動産も三井不動産もそれからゼネコン(住友物件では熊谷組、三井物件は三井住友)も、こういう過去の事例から何も学んでいないと言うことだ。また、この種の事故責任は、事業主・施工者に集中しやすいが、事業者の説明を安易に受け止める行政側の責任も結構あるのだ。何故そうなるかと言うと、一つは事業者も施工者も行政も地域の地盤に対する知識が乏しくなってきたこと、次にバブル崩壊後のリストラ強化で経験ある技術者がみんな退職し、あとはシロートに毛の生えたようなオボッチャンばっかりになったからである。
 この種の問題はこの2件だけか?とんでもない、ほかにも一杯あるはずだ。それと基礎が支持層に到達しなかった場合の問題は単に不等沈下だけではない。基礎が支持層に達している部分とそうでない部分は、地震時応答特性が異なってくるから、強い地震力が作用したとき、想定以上の変位や破壊、或いは倒壊が発生するおそれがある。
 ある時期からこの世界にも、成果主義が蔓延しだした。マンション業界は、現在最も競争の激しい分野。特に首都圏は厳しい。神戸の地震以来、壁とか構造とか地表部分のチェックは厳しくなった。あと利益を確保出来るのが、目に見えない基礎部分というわけ。バブル崩壊後の日本経済の低迷で、この分野にも外国資本の進出が著しくなり、短期利益を要求する外国人投資家の要求に耐え切れなくなったためだろう。
*三井住友建設は他所の地盤調査データを利用したといわれるから、この場合詐欺罪に問われるだろう。
(15/10/14)

 横浜の住友不動産マンションの不等沈下が、施工ミスじゃないか、と話題になっています。ワタクシは施工ミスもあるかも知れないが、設計ミスの可能性も大と見ています。事業主が住友不動産だから設計は日建設計か?日建設計はボーリングをケチるから、十分なボーリングをやっていない可能性がある。また地盤を頭で作ってしまう傾向がある。体質的に官僚的部分がある。つまり建物の設計を先にやって、基礎はそれに合わせ、地盤も合わせてしまうと云うことだ。
 東京湾沿岸地帯だから支持層は上部東京層の礫層を使うことが多い。偶々ある地点でボーリングをやって見ると、この礫層が見つかった。そこでこれが全域に均等に分布していると決めつけて、基礎の設計をやってしまった。つまり、ボーリングはチョコチョットだけやって、推定だけの図面を描き、後は施行時に確認せよという指示書だけを作っておく。そうなると、施工中になにが起こっても、その責任は施工業者に押しつけられ、自分達は安泰。これはワタクシが10数年前に携わった、テールアルメ倒壊事故と同じ構図である。
 ところがこの礫層の上面は結構起伏があって、狭くて深い谷が切れ込んでくることがある。そこにも同じ様な砂や砂礫が堆積するが、それは新しい沖積層。支持力は全然比べものにならない。しかし、機械オペレーターにはその違いを見分ける能力がない。問題のマンションは11Fと言うことだから、基礎はおそらくアースドリルを使った場所打ちクイ。これは最初から鉄筋長を決めておかねばならないから、状況が違ったからと云って、簡単にクイ長は変えられない。だからオペレーターがおかしいと思っても、それをゼネコンには言い出しにくい。ゼネコン担当者だって、出来れば有耶無耶で済ましたいだろう。現場での変更は無理なのだ。まして相手が日建設計なら尚更だ。
 それを防ぐには、事前に綿密なボーリング調査をやっていく以外に方法はない。優れた地質コンサルタントのアドバイスを受けることが重要だが、今はそれが少ない。学者、日本技術士会とかナントカ技術協会など役所のOB組織は、全く役に立たない。
 設計者の思いこみと、見かけの効率至上主義・・・設計の官僚化・・・が、この様な事故を産むのである。
(14/06/11)