《こんな愚か者を頼りにしなければならない小泉外交のお粗末》

 愚か者とは、元タイ大使岡崎行彦のことである。この人物は、しばしばテレ朝のサンデープロジェクトに出演し、独自の安全保障論、外交感を披瀝しているが、どうも考え方がお粗末で、話にならないというのが筆者の感想である。TVでの紹介では、ブッシュ・小泉会談でのパイプ役や、現政府の安全保障に関する意見を述べたりしているらしいから、小泉内閣の影の外交顧問、対米フィクサーのような役割を勤めているのだろう。
 2003/12/28サンデープロジェクトで、元レバノン大使との対談が放映された。先ず田原総一郎が元大使に、レバノン国民がイラク戦争をどう受け取っているか、と言った意味の質問があった。元大使は「現在の小泉政権ほど、国家や国民を舐めている政権は無い」と述べた後、「レバノンにはキリスト教徒がおり、彼らは肯定的であるが、一般のアラブ系、イスラム教徒は否定的である」意味の説明を行った。なお彼がレバノン大統領に個人的に会おうとすると、日本の外務省から、「彼に会うな」という連絡が入ったと言われる。大統領は彼に対し「自衛隊派遣に反対はしないが、残念だ」と言ったらしい。総じてレバノンでは、民衆からトップまで、自衛隊派遣には否定的であると受け取られる。
 さて、これに対し岡崎がどういったかというと、「レバノンは現在シリアの事実上占領下にある。民衆もトップも、シリアの意向を無視した発言は出来ないでしょう」。つまり元大使が見てきたレバノン情勢は、シリアにコントロールされたものであり、正しいものではないと云いたいのだろう。これに対し元大使は、明確な反論が出来ず、岡崎は一本取ったつもりになったと思われる。これが、彼が愚かだという理由である。確かにレバノンは、シリアの占領状態にあるかもしれない。ではイラクはどうなのか。イラクは間違いなしの米英占領下にある。イラク統治評議会もアメリカの指導下にある。岡崎の論法に従えば、イラク(特にトップ)から出てくる情報は、全てアメリカのコントロール下にあり、信用出来ないことになる。つまり、元大使を返り討ちにしたつもりが、返り血を浴びてしまったのである。
 岡崎は、我が国の安全保障と経済繁栄の根本は、日米同盟(日米安保条約)にある、と主張する。まず、日英同盟30年間で、如何に日本が経済的に繁栄したか、大国になったかを例に挙げ、日米同盟はそれに替わるものだとする。そして、少なくともこれさえあれば「子供や孫までは安心だ」と述べた(その先は、これ以上彼の話を聞くと腹が立ってくるので、TVのスイッチを切ったので判らない)。ちょっと待って貰いたい。(1)日英同盟で確かに、日本は世界の一等国になったが、肝心の日英同盟は第一次大戦後、英国から一方的に破棄された。その結果、日本の外交は支離滅裂となり、国際的に孤立化し、挙げ句の果てに三国同盟にのめり込み、国を滅ぼしたのだ。日中戦争以降、ドイツへの急傾斜を主導したのは、陸軍省ではなく、外務省だったのだ。(2)子供や孫とは一体誰の子供や孫なのか。仮に岡崎のそれだとすると、彼は70才にはなっているだろうから、孫はもう10代だ。孫が一人前になるまで後10年位しかない。一人前になるまでは、面倒見るのは仕方が無いにしても、その後は孫に任せるべきだ。つまり岡崎のいう、日米同盟に基づく安全保障政策は、後10年ぐらいしか持たないあやふやなものなのだ。
 岡崎は日英同盟を、日本外交の最大の成功例と思っているらしいが、私はこれこそが最大の失敗作だったと思っている。この時代、交渉や世界政策の大綱はイギリスが考える。日本の外務官僚の最も重要な仕事は、イギリスがどう考えているかを探ることだったのである。この結果、日本の外務省には自分でものを考え、判断するプロの外交官が育たなくなった。仮に居たとしても、今回の元大使のように主流にはなれず、途中で放り出されることになったのだろう。対米追従外交に慣れきり、それ以外の選択肢を考えられなくなった、現在の外務省とそっくりなのである。
 岡崎の論法は、いわゆる良いとこ取り、都合の悪い部分に眼をつぶっているか、又は誤魔化す、たちの悪い役人のよく使う手である。それと日本では、日米同盟という言葉が、一人歩きしているが、肝心のアメリカはどうなのか。同盟とはそもそも当時国が対等の立場で盟約するものである。しかし、アメリカはかつて対等の同盟関係を何処の国とも結んだことがない。かつて、第二次大戦の時、ヨーロッパ反攻軍総司令官の地位を、アメリカが放さなかったのは有名な話し(結果として、アイゼンハウワーが総司令官になった)だし、NATOにしてもアメリカ主導が前提である。ブッシュドクトリン、つまりアメリカ単独行動主義は、アメリカ自身が対等の同盟関係を否定することを意味している。これを岡崎はどう説明するのだろうか。役人上がりだから、国民は騙せると思っているのだろう。この点も彼が、愚かである証拠の一つである。
 なお、蛇足ながら、日本の学者や評論家のレベルを計る上での、あるエピソードを最後に挙げておきます。現在各国で、イラク問題に関する報道や論評が行われているが、「最も反米報道の少ない国はイラクだ」、と云った学者か評論家がいたらしい。更にこういう馬鹿げた論文を掲載した雑誌があって、おまけに更にこれを真面目に論評する評論家がいた。何故馬鹿げているかというと、イラクで反米報道が少ないのは当たりだからだ。現在のイラクでは、放送も新聞も全て米軍の管理下にある。表だって反米報道など出来るわけがない。うっかり反米報道を流すと、紙の配給が貰えなくなる。かつて日本が占領下にあったとき、アメリカの悪口を書いた新聞や雑誌がありましたか。あの朝日新聞でさえ、占領軍を進駐軍と呼んでいたのだから。しかし、岡崎のような奸物は、表に出るインチキ報道を誇大にとりあげ、自己の誤った行動を正当化し、結果として日本を誤った方向に導くだろう。


RETURN