丸森町の採石場崩壊事故

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横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫


 これは丸森町とは関係ありませんが、業者が法規制を無視して勝手なことをやって、公共財に損害を与えるという点では同じようなものです。

 愛知県豊田市の土砂採掘場。切羽が国道まで迫ってきたので、国交省は業者を刑事告訴するとまで息巻く。何故こんなことになるかというと、生産(経産省)と規制(国交省)との間に対立はあっても共通認識がなかったからである。
 共通認識とは何かというと、環境保全であったり、地域防災であるところが。経産側はどちらも無関係を主張する。結局責任を押し付けられるのは国交省側だ。
 対策も違う。国交省側では斜面をアンカーで補強して下の平地の有効活用を考えるだろうし、経産側は産廃処分場とか他の用途に使おうとするだろう。バックにいる業界の利権が違うのである。
(14/09/22)

 9月
5日には「日本リスクコントロール」のサイトにあった「丸森町事故」の記事が今日見てみると消えてなくなっていました。この会社、警察・検察OBが作っている利権会社あのアホの佐々淳行まで役員に名を連ねていた。怪しい反共カルトという噂もある。事件が大きくなるとやばくなると見て、ネット会社に圧力を掛けてもみ消しを図ったのでしょうか?事件があればもみ消し、なければでっち上げる。そしてマスコミには正義漢面する。これが彼ら法務・検察・警察OBの醜い実態です。
 さて、私もほんの僅かなネット記事を見たばっかりに、とんでもない闇世界に踏み込むかもしれません。しかし、あの砕石場の切羽で死んだ作業員の無念は誰かが晴らさなければならないのです。
(14/09/07)


 2001年9月4日、宮城県丸森町の㈱日本リスクコントロール社所有の砕石場で斜面の崩壊が生じ、作業員1名が死亡するという事故が発生しました。下の図は幾つかのWEB映像から、崩壊の状況を抜きだしたものです。
 丸森町は宮城県といっても、阿武隈川の右岸にあり、地形的には阿武隈山地の北端部にあり、地質的には阿武隈変成帯の一部に位置する。採掘の対象は阿武隈帯の花崗岩や花崗片麻岩でしょう
 図ー1、2は上空からの映像。砕石場は基盤山地斜面を半円形に切り込んでいる。山頂から10mぐらいの間は褐色帯で、これは基盤岩の風化帯と考えられます。その下は基盤岩。塊状の花崗岩体です。この種の岩盤の安定性は、岩石の強度よりも、掘削面と割れ目系との関係で決まってきます。割れ目は垂直に入る系統と、それに交差する水平方向の系統が目立ちます。特に斜面崩壊に寄与するような流れ盤系のものは、この写真だけでは不明です。崩壊は掘削部の最奥部の切羽で生じている。ここでは図に破線で示したように、左上から右下に入る割れ目と、左下から右上に入る割れ目が崩壊クサビを作っているように見える。この種の割れ目の交差部では、割れ目が発達し、岩盤強度が全体として低下します。図ー2ではクサビを作る割れ目がより鮮明に見えています。


図ー1


図ー2

 図ー3は崩壊部正面を上空から撮った映像です。削岩機の正面に図の左上から右下に伸びる垂直の壁があります。これが図ー1の右側の割れ目です。作業員がこの壁を掘削しようとして削岩機を入れたところ、上で述べた崩壊クサビを利用して、左側の岩塊が崩落したのでしょう。
 写真左に壁が20m近くに渉って垂直の壁が立っています。この壁はこの地域の岩盤の割れ目の一つを現しています。またこれに交差している割れ目は概ね水平で、流れ盤的なものは見られません。つまり地山岩盤は、崩壊クサビなどの岩塊を不安定化させる要素さえなければ、十分自立できるだけの強度を持っているといえます。


図ー3

 つまり問題は掘削底面が、クサビを作る割れ目の交差部に接していたということです。それまでも小さな割れ目は幾らでもあったが、たまたま掘削高が小さかったため大崩壊に至らなかった。それで安心して掘り進んだところ、限界高さまで達してしまったのでしょう。

 この事故で注目すべきは次の2点です。
1)この施工は法規に照らして合法的であったかどうか?鉱山保安監督局の責任はどうか?
2)事業会社はどんな会社か?

1)この施工は法規に照らして合法的であったかどうか?
 砕石業は経済産業省の管轄にあり、「鉱山法」の規制を受けます。「鉱山法」は罰則を伴う法令で、土木の設計指針のようないい加減なものではありません。掘削斜面の勾配は、通常の鉱山では土砂は45°、岩盤では60°で高さ20mごとに10m幅のベンチ(小段)を設けることになっている。もし用地等の関係でこの規定に拠りがたいときは、掘削ベンチの上の壁はアンカーやケーブルボルト等で岩盤を補強固定しなければならない。
 図ー4は同じ丸森町の大規模砕石場だが、ここでは法令どおりベンチを切っているようだし、沈砂池も設けている。同じ宮城県でも、事業者によって大違いなのである。


図ー4


 さてこの規定で上に示した図を点検してみると、①斜面角度はほぼ垂直(図ー3参照)で60°の規制値を守っているようには見えない。②20mピッチのベンチ設置の規定も守られていない。③図ー3の垂直壁に明らかなように、岩盤補強は何もせずに下段掘削を行っている。これらはいずれも鉱山法に定められている保安規定に反するものである。つまり、この砕石場は日常的に違法操業を繰り返してきたのである。
 鉱山の安全を監督する役所が「鉱山保安監督局」である。これは主な鉱山地帯には設けられており、当然仙台にもある。監督職員は管内鉱山の採掘計画をチェックし、更に現地を視察して掘削状況が法令に違反していないかどうかを確認し、違反行為があればそれの是正勧告を行い、それにも従わないときは操業を停止させる権限をもっている。しかし、監督職員はその職務権限を正当に行使してこなかった疑いが残る。グーグルアースを見ると、丸森町内には他に今回事故現場と同様の小規模砕石場が多数あるようだ。そこでも今回と同様の違法操業を繰り返していると考えられる。つまり鉱山保安監督局はこのような違法操業を黙って見逃していたのだ。
2)事業会社はどんな会社か?
 この事故では死亡者が発生している。従って警察は業務上過失致死を視野に入れて捜査することになる(注;東電福島第一原発事故でも死亡者が出ているから、当然業務上過失致死は成立する。しかし高放射能のため現場検証が出来ないから、警察は立件を見送っているだけに過ぎない。いずれ時期が来れば、東京電力およびその経営者は逮捕立件される可能性は消えていない)。一般にこの種の事業では、実際の採掘は地元業者に委託し、事業者とはワンクッション置くことが普通である。しかし刑事事件特に本件のように人身事故に至った場合は下請け任せという言い訳は通用せず、事業者本人まで追及が及ぶことが通例である。
 そこで興味があるのが㈱日本リスクコントロールという会社である。こんな名前の会社はこれまで聞いたことがない。名前から言って、砕石とか土木建設事業に縁遠い会社であることは間違いない。そこでネットで調べてみると、会社はともかく、オーナーには酒井法子の逃亡を手助けしたとか、新興宗教に関係があるとか、妙な噂ばかりが出てくる。更に会社役員や監査役には法務・検察の錚々たるOBが名前を連ねている(かつて10chで正論をぶっていた河上元東京高検公判部長までが名前を連ねている。なお筆者はあるときこの元検に胡散臭いものを感じたので、それ以来彼が出演する番組は見ないことにした)。
 名前から見るとこの会社、企業が何か良からぬ団体からクレームを付けられたとき、そのクレームに対抗する手段を提供する会社のように見える。しかし今回の事故を見ると、むしろ企業が行政から指導や検査を受けたときに、企業側に立って行政に圧力を掛けるのが目的のような気がする。おそらくそうでしょう。そうでなければ、自分が経営している事業所を違法状態で放置しておくはずがないからです。法曹の堕落極まれり、だ。

 以上のことをまとめると、今回の崩壊事故は(1)事業者の営利主義、(2)監督官庁の無責任、(3)作業従事者の無知の3者が複合したお粗末な人災と言えます。ここで(3)作業従事者とは切羽作業員だけでなく、下請け会社の監督員、事業会社の技術担当者も含まれます。この無知を助長するのが未だに土木や砕石業界に残る3K・・・つまりカン・ケイケン・キアイ・・・です。これを追放・排斥しなければ、いくら基準や通達で綺麗ごとを並べても、同じ失敗を繰り返すでしょう。
(14/09/07)