’14年御岳噴火災害

本気で火山や地震を予知をしたければ、まず気象庁火山・地震課の廃止解体が必要です。ついでに東大地震研の廃止・解体も必要です。


 横井技術士事務所
技術士 横井和夫


昨日火口周辺警報が出た宮城県蔵王火口湖の白濁。現象は小学校の理科の実験、石鹸水に息を吹き込むと白く濁るというヤツ。CaOに富む地下水に地下からCO2が供給されると白濁する。CaOは何処にでもある物質だからどうでも良いが、問題はCO2の供給源。深いところは間違いないが起源は謎。噴火の前触れかもしれないが、地震の前触れの可能性もある。
(15/04/14)

 昨年の御岳噴火に懲りて、今年度補正予算で火山対策予算を30億計上。やらないよりましだが、たった30億で何が出来るのでしょうか?薄味ばら撒きで結果はなにも出てこない。筆者に言わせれば1火山について30億ぐらいを突っ込まなくては駄目だ。それより、見てくれだけの調達予算より、まじめな火山学者を育てるための教育予算の充実のほうが重要なのである。
(15/01/07)

火山噴火予知連絡会が活動的火山の観測強化案をまとめましたが、これがまたお粗末で、相も変らぬ表面をなぞるだけの皮相的方法。主導するのは火山地質のイロハもしらない測地系地球物理屋。火山の内部に入ろうとしない。こんなことでは火山噴火予知など100年経っても無理だ。私自身の予知方法をいずれ提示します。
(14/11/29)

これが東京工大講師による御岳火口付近の赤外線撮影映像。本人はこれでマグマの上昇はない、といっているが 、こんな漫画に毛が生えたような画で何故そこまでいえるのでしょうか?マグマの上昇があるか無いかは、噴火前後、その後の地下の継続データが必要。
 そもそもこんな表面からなぞるだけの、子供じみた遊びをやっているから、火山噴火予知は何時まで経っても出来ないのだ。100年経っても無理だろう。
(14/10/19)

 火山活動は明らかに地殻の地熱活動の一つである。それを理解するには、火山がどういう経路を辿って活動してきたかを知らなくてはならない。その経過を表したものが「火山地質図」である。この火山地質図を作る学問が火山層序学という分野である。そして、将来の火山対策を考える上で、これは基本資料である。
 そこで今回御岳周辺の地質図は無いものかと思って探してみると、出てきました。下図は御岳の火山地質図(「日本の地質no5 中部地方」共出版;小林1986)です*。ただし素図はモノクロなのでわかりにくい。そこで色を塗って見ました。これは地質屋としては初歩的作業なので問題はありません。これに今回噴気を生じた場所を重ねてみました。
 地質図を見ると明らかなのは、御岳火山の活動は数ステージに分かれるが、どれも中央火口を中心とした活動です。今回の噴気もこの中に含まれており、従来の火山活動と整合的です。つまり御岳噴火は、当面現在の中央火口を中心に考えておいて構わないと考えられます。
 ではどういう対応が必要でしょうか?それが当面最も重要な課題です。



図-1

*何処のマスコミも政府発表も、この程度の資料すら明示していない。東北太平洋地震でも似たようなものだ。役人(あるいは役人的学者)が自己保身に奔って、本当のことを隠してしまったのだろう。

 図-2は図-1を基に描いた御嶽山の地質断面図です。断面方向は概ね北東ー南西方向。今回のガス噴出点位置はほぼ火口の中心部。カルデラ壁の直下にマグマが溜まっていると見て間違いないでしょう。



図-2


 
 本日昼の木曽御岳の噴火(朝日新聞)。れっきとした活火山だから噴火は当然。
 噴煙が白いのはこれが水蒸気だということ。
 
(14/09/27) 


   剣が峰山頂からの御岳火口。背後の窪地が中央火口で、ここから今回の噴煙が始まったことに注意。白いのは雪で灰ではありません。
   御岳火口斜面を下る登山パーテイー。白いのは雪で灰ではありません。今回の活動はパーテイー右上の沢の上の台地から始まったと見られます。
   何も無いときの御岳 

 再度御岳災害について。世間(=マスコミ)では今回の御岳災害を戦後最大の火山事故と称して、如何にも大噴火の印象を植え付けようとしていますが、活動規模としては全然たいしたことはない。溶岩の噴出も無ければ倣出物の量も100万tに過ぎない。
 規模は大したことは無いのに犠牲者が増えた。これは夏の広島安佐地区水害と同じである。何故増えたか?それは油断である。夏のゲリラ豪雨でも、昨年大被害をだした京都府福知山では、水に漬かったものの人的被害は出していない。それは昨年の経験が生かされていたからである。
 御岳の活動は、とりあえず今後収束に向かうだろう。しかし数年あるいは10数年後、今回と同様かそれ以上の活動が発生する可能性は大きい。この期間内に十分な観測体制を整え、対策を準備しておけば、将来の被害は最小限に抑えられるだろう。
 ところが、この数年あるいは10数年という数字は、人間が現実を忘れて油断するには十分な時間だ。要 するに我慢比べだ。そして誰が一番油断しやすいかというと、それは役人と政治家とマスコミである。役人の最終目的は、大過なく任期を努め退職金を受け取ることである。この行動原理には、危機感は邪魔でしかない。そして予算を握っているのは、学者・研究者ではなく、二流の役人なのである。かくして人間は同じ失敗を、飽きもせず繰り返すのである。
(14/10/06)


 これが火山性微動だと言って出てきたのが一つの地震計記録。確か地震計は8基あったはずだが、後の7基はどうしたのでしょうか?火山灰でダウンしてしまったのでしょうか?一体全体どんな設置の仕方をしていたのか?

 



 それはともかく、メデイアでは地震の振幅がどうのこうのという話でもちきりだが、そんなもので噴火が予知できるわけが無い。頻度は一つのヒントになる。これは明らかに減っている。あまり時間を置くと、火山活動がさらに活発になったり、雨が降ると(特に今週末から天候は悪化する)火山灰が泥流化する。つまり捜索活動は、火山活動や天候が落ち着いている今がチャンスである。
 それにしても腑に落ちないのが、気象庁や研究者(主に信州大や名古屋大)が御岳噴火をどのように考えていたかである。設置されていた観測機器から察すると、彼らはマグマ性噴火だけに注目し、水蒸気爆発に重きを置いていなかったか、両者をゴッチャにしてしまったように見える。この点は今後学会レベルでも十分検証されるべきである(うちの学会でも取り上げるかも判らない)。
 マグマ噴火は固体の上昇→周辺地盤の変形・破壊→溶岩の噴出というプロセスを辿るから、山体の変形や地震観測といった測地学的手法も採れるが、水蒸気爆発は地下のガス圧の上昇→地下の熱力学的平衡の破壊が原因だから、測地学的手法は意味を持たない。従って地下の温度・圧力の変化を観測しなければならない。これは測地学的手法のように地表面からだけでは判らない。地下に温度センサーやガス圧力計を埋設することになる*。御岳山の山体規模を考えると、それも地下数mではなく、少なくとも地下数100mとか1000数100mとかのオーダーの観測施設を最低でも5、6箇所は必要だ。ざっと10~20億円(ただしこれもネットでの話し。これに地元対策費だの役人の諸経費だの間接費を加えると、あっという間に倍ぐらいに膨れ上がる)。こんな話をすると、気象庁のへぼ役人はたちまち腰を抜かすから話はしたくなくなる。その結果、役人の退職金は安泰だが、火山付近住民の不安は絶えないという状況が産まれる。
*熱(地下温度)の測定は難しくないが、ガス圧測定は少々工夫が必要である。昔有馬温泉で炭酸ガス圧測定をやったことはあるが、今回は少し勝手が違う。逆にセンサーを始めテクノロジーが進歩しているのでこれを利用すると意外に簡単に出来るかもしれない。ただ今思案中。特許でも取るか。
(14/10/02)

 御岳ガス噴出事故でテレビに登場する専門家と称する人物が、異口同音に唱えるのが「水蒸気爆発は事前には予測出来ない」という言い訳。これは正しいようで正しくない。正しくは「あんな観測体制では予測出来ない」と言うべきである。
 火山噴火予知と地震予知とどちらが難しいかと言うと、地震の方が遥かに難しい。地震予知で今スタンダードと考えられているのがアスペリテイ理論だが、一つの活断層に一つのアスペリテイが付随しているわけではない。アスペリテイが幾つもあると、どのアスペリテイから破壊が始まるのか判らない。そこでここから始まったらどうか、とかこれとこれが連動したらどうなるか、とかの仮定を無限に繰り返して計算しなくてはならない。しかもその計算結果が必ず収束するという保障もないのである。
 
それに比べ火山は地域が限定されているから、それだけでも楽である。今回御岳で予知に失敗した原因には、次の2点が挙げられる。
1)やるべきことをやっていない
 これは前にも述べているが、観測体制がお粗末過ぎる。あんな大きな岩体に対して、傾斜計2基、地震計8台だけと言うのは、貧弱を通り越して無防備としか言いようが無い。
 それと観測手段が地球物理的手段に偏っている。火山の噴火・水蒸気の噴出という現象は地熱現象の一つであり、物理化学的には地殻内部の熱平衡の問題である。この平衡が破れたときに噴火・噴気が発生する。また、地熱現象の一環として、地殻内物質の放出がある。この2点に着目すれば、観測体制の中に地球熱学・地球化学的手法を取り込むべきで、それと地物的手法を組み合わせれば、別の判断が出来たと思われる。
2)何のための観測か?
 火山学の進歩・発展のための観測か?火山学者によっては、そうだと思っているのも居るかもしれない。しかし納税者はそうは思っていない。まず第一には入山者や観光客の安全確保が目的のはず。それなら、警告の出し方にも差があってしかるべきである。
 この点について、学者や役人になにか勘違いがあるのではないかと思われる。大事なことは、どのタイミングで入山規制をするかである。これまでの地震観測によれば、9/11に地震が急増しており、この段階で入山を規制すればよかった。別にそれで困る人間は誰もいない。これで収まれば解除すれば良いだけの話である。要するにこんなもの、道路の交通規制と同じレベルで考えればよいのである。現在気象庁が規制基準を作っているが、あれが諸悪の根源。火山にはそれぞれ個性があり、それを一律的に規制しようとするのが間違いの素。火山にホームドクターに置き、それの指示に従うようにすれば良いのだが、それがなかなか上手くいかない。
(14/09/30)


(早くも言い訳モード)
 何故か今回の御岳災害について、菅がいきなり「気象庁はできるだけのことをした」と気象庁擁護発言。ここにもアベ政権の政・官癒着構造が読み取れる。臨時国会が迫っているから、野党追及をかわすためのけん制だろう。
 本当でしょうかあ?御岳は山体規模から言えば、富士山に匹敵する活火山である。にもかかわらず、観測設備は傾斜計が2台と地震計が8基のみ。専従の観測員も研究員もいない。これでは菅が言うような「できる限り」どころか、「何もやっていない」のと同じである*。
 ここには次の二つの問題点が読みとれる。
1)研究のブランド化
 公務員定員削減法や不要不急予算削減政策のあおりで、どの火山も同じような観測体制を採れなくなった。そこで施策の重点化、予算の傾斜配分が行われる。当然大都市へ影響度やや観光客の大小で観測体制が異なってくる。首都圏や観光名所の北海道や九州には、予算が重点配分される。これがブランド化である。その点御岳は、大都市にも遠く、観光業でもメジャーではない中途半端ポジション。だから観測体制も「やってますよ」程度になってしまう。
2)火山専門家の減少
 ある時期から地質学の世界でも、火山学を専攻する学生が減ってしまった。その結果、研究者の数も減ることになる。何故火山屋が減ってしまったのか?ある時期から文部省科研費の配分が、地震中心に変わってしまったからである。
 その所為かどうか、今回の御岳騒動で判ったように、観測も傾斜計と地震計のような物理的手段に偏っている。これでは表面をなぞっているだけ・・・例えば血圧と脈と体温だけで癌を診断しようとするもの・・・で本質に迫っていない。せめて地熱や地下水成分・地中ガス圧や成分変化など地球化学的要素をスタンダードに組み込まなければならない。無論それらのデータを理解出来る研究者の養成が必要なのである。それをやっていないから今回のような事故を何回も繰り返す。これが上で述べたように「何もやっていない」ことに繋がるのである。
*後で、火山予知連絡会の会長も、観測体制の不備を認めている。
(14/09/29)