コートダジュールの地図模型

上の写真は衛星写真ではありません。北海道は富良野市のラベンダー資料館に展示されている南東フランスはコートダジュール半島の地図模型の一部です。コートダジュール半島の形は紀伊半島にそっくりで、最初これを見たとき、何で紀伊半島の地図模型が北海道にあるのか?不思議に思ったが、案内板を見て納得。かつて富良野市がこの地域からラベンダー栽培技術を導入した縁で姉妹都市になり、フランス側から地図模型を寄贈して貰ったらしい。そういう地図模型も、地質屋が見ると一変して色々な情報の提供者になる。この写真はかつて、ある専門学校で、私が活断層の講義の教材に使っていたものです。
 写真の位置は大体、ヨーロッパアルプスの西端部。まず、写真上半分に褶曲構造に伴うケスタ地形が見事に発達していることがわかります。シチュレ流の造山論では地向斜の発展段階後期に、ユウ地向斜に対する劣地向斜に発生するモラッセに対応するものでしょう。この種の褶曲構造はドイツのジュラ山地やアメリカのアパラチアが代表的なもので、ここもその延長と考えられます。中央の白い部分は撮影環境が室内だったため、フラッシュの影響も考えられますが(おまけにこの画面はコンピューターで若干の強調処理をしています)、やはり白い禿げ山の目立つ所で、石灰岩台地でしょうか。
 さて此処で注目していただきたいのは次の2点です。
1)写真右下に斜めに延びる直線状の崖(リニアメント)
 写真右下に東北東〜西南西方向に延びる直線状の崖があります。これを東に延長すると、丘陵地帯中の分離線になり、更に東に延長すると(これはこの地図模型ではなく、別の地図を見なければなりません)、実は北イタリア、ロンバルデア平野とアルプス山地との境界に連続します。この境界線は実に直線状です。一つのリニアメントと呼んでよいでしょう。位置から、このリニアメントはアルプス南縁断層に相当すると考えられます。中央構造線と云って良いでしょう。
2)このリニアメント上でA、Bの2箇所で河川の右オフセットが見られます。B点の西側の、丁度ダム湖の右上では河川争奪らしきものも見えます。
 以上の2点は、このリニアメントを活断層と認定して良いレベルのものです。では、地震はどうかというと、南東フランスは日本のような変動帯ではないので発生頻度は遙かに低いが、比較的浅い地震が全く無いわけではない(理科年表参照)。

 ただ、これだけなら暇人の暇つぶしなんですが、必ずしもそうではない。最近、熱核融合炉実証炉(ITER)の建設に関して、EUの主張が通って、本体が南フランスカダラッシュに建設されることになった。カダラッシュはマルセーユの北東、コートダジュール半島の西側の付け根の北方にあります。このリニアメントの直ぐ近くになる可能性があります。フランスはこの事実を認識した上でITER誘致を計画したのでしょうか?もっとも、日本の六ヶ所村もカダラッシュに比べ安全とは云えないので、どっちもどっちですが。(07/03)


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