平成21年台風8・9号災害

台湾知本温泉のホテル倒壊
兵庫県福知川の護岸流失


台湾知本温泉のホテル倒壊

今回の台湾大水害で、法規を墨守するあまり、対応に柔軟さを欠いた馬政権への批判が高まっています。かつてハリケーンカトリーヌの時、カトリーヌが暴れ回って去るまで何もしなかったアメリカブッシュ政権とか、阪神大震災の当日朝、どうでも良い閣議を開いて状況把握を怠り、二日目まで何もしなかった我が国村山連立政権を思い出します。他人のことは馬鹿に出来ないのです。翻れば我が身のことだ。
09/08/14)

 これはテレビでも放映された衝撃映像なので、ご存じの方も多いでしょう。川沿いに建っている6階建てのホテルが、突如倒壊する光景です。台風だからといって、風で倒れた訳ではありません。ビルの基礎が水流で洗掘された結果です。原因としては、おそらく、ホテルの基礎は岩着していないか、基礎工事の欠陥が予測されます。
 台湾の地質構造は、日本特に西南日本外帯によく似ています。だから地形もよく似てくる。この温泉街は、川と山との境界部に発達してきたことが判ります。こういう山に接近した川では、下に岩盤はあるが河床との間に現世の河床堆積物が堆積する。これは一般には粗粒の砂礫層からなり、通常では十分な支持力を持っている。ところが、砂礫層というものは均質なものではない。直径が数pから数10pの礫から、数〜0.01oオーダーの細粒の砂迄、様々な粒径の粒子が混在している。つまり細粒の粒子が大径の礫の隙間を充填している。この異径粒子の混在が砂礫層の強い支持力をもたらしている。
 ところが水に対しては必ずしもそうではない(無論液状化を起こすような細粒の砂に比べれば、ズーット強い)。地層内を流れる地下水流速が、礫間を充填する砂の粒径から決まる限界流速を超えると、砂が洗い流され(パイピング)、地層はバランスを崩して崩壊する。
 写真を見る通り川沿いには護岸が連続し、河川水の陸地への浸透を防ぐようになっている。この事故は、護岸に何らかの欠陥があり、そこから河川水がホテル地下に浸透し、上に挙げた理由から、基礎地盤(おそらく砂礫層)にパイピングが生じた結果と考えられます。
 さて、本当の問題は何でしょうか?おそらく台湾でもそうだろうが、日本の構造物設計基準(建築でも土木でも)でも、基礎の設計に於いては、外力に対する安定検討は規定するが、地下流速に対する検討は無視されていることである。だから、基礎は荷重にさえ耐えられればよい、水に対しては護岸かなにかで対応すればそれで済む、という安易な考えがまかり通るのである。
 日本でも似たような物件は多い。今から30数年前、東海道本線(在来線)大井川橋梁が、折からの増水で流出した事故があった。この橋梁は明治時代の作品で、基礎はウェルを中途半端に沈めたもの。事故原因はウェル基礎地盤(現世の砂礫層)のパイピング。
 昭和30年代〜40年代前半以前、及び平成に入ってからでも規制緩和後に建てられた急流河川沿いのホテル・マンション、橋梁は水流に対する安定性を再確認したほうが良いだろう。
 福島市の北方に摺上川という川がある。福島県内ではいわゆる砂礫河川である。昔々東北新幹線の摺上川橋梁工事で、元々の設計では現世の砂礫層に支持させる直接基礎になっていた。砂礫だから支持力は十分あるからである。詳細設計時の地質調査で、この下に洪積世の砂礫層を見つけた。基礎はこれを支持層とするケーソン基礎が妥当と、旧国鉄に押しつけた。最初は抵抗していたが、1年後横を通ると云ったとおりのケーソンで施工していたよ。だからどんな雨が降っても、地震が来ても、あの橋梁は絶対大丈夫。
(09/08/10)
 

兵庫県福知川の護岸流失

 麻生が佐用町を視察して激甚災害指定に前向きポーズ。激甚災害とは復旧費用の9割を国が、1割を地元が負担する制度である。生半可な災害ではなかなか指定は受けられない。死者が数10人規模、一つか二つの街が壊滅するぐらいのレベルが必要。無論北朝鮮核攻撃は無条件でOKです。佐用町の場合、死者が20人(以上?)、家屋被害の状況から見て、県が動けば激甚指定は十分クリアー。では誰が指定するのでしょうか?実際は国交省地整と地方財務との交渉、要するに官僚同士のアウンの呼吸で決まるのだ。佐用町の場合、とっくに話は付いている。それと復旧費用はせいぜいン10億。こんな小規模災害、総理大臣が口を出す迄もない。目的は災害の選挙利用以外の何者でもない。
 最早政権交替は目前である。ここで兵庫12区が突出すると後がややこしくなるのではありませんか?
(09/08/23)

今度の洪水で、兵庫県民は洪水との共生をやらされた。共生に必要なコストは今のところ死者20人、数100億の被害総額。近畿の知事!何か言って見ろ。


 これは平成21年台風9号により、兵庫県宍粟市一宮福知で生じた、福知川橋梁流失事故地点。橋梁流失と言っても、右岸の護岸(道路兼用)が先に流失し、それに引きずられて橋梁も流失したのが実態です。おそらく、現在の流路が旧河道で、道路拡幅時に道路(護岸)センターを川側に寄せ、旧河道の一を埋め立て、その上に護岸を築造したのでしょう。その拡幅部が今回の豪雨で流失してしまったという訳です。実はこれとそっくりの事故が2年前広島県安佐で起こっています。・・・・と思っていましたが、実は少し違う。写真上の家屋の左に、幅数mの湾曲した空き地があります。これを下に延長すると、道路に繋がります。元々これが道路だったのでしょう。この道路を川側に付け替えたのが現道というわけです。つまり、流出したのは、拡幅部では無く、新設部と云った方が良いでしょう。・・・・又、福知川沿いでは別の箇所で、やはり川側に拡幅した道路盛土が流失しています。そもそも兵庫県や広島・岡山など中国筋のやることはせこいから、何でも小手先で済まそうとするわけだ。
 話しに聞くと、中国では川は龍の通り道だから、河川改修の場合でも河道変更のようなことはやらないらしい。これが中国四千年の知恵なのだ。その点日本人はビンボーたれだから、ちょっとした土地を欲しがって川を触りまくる。その結果龍神様の怒りに触れて、同じ失敗を何度も繰り返すのでしょう。
 もう一つの問題は教育です。日本の土木工学科は道路や河川の新設・改築の方法は教えるが、川の由来や維持管理の方法は知らん顔。だから設計時に災害対策を怠るのである。
(09/08/11)


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