新潟県中越地震関連
出来れば長野県知事に読んでほしいですね。次は長野県ですよ!


安定計算はどうなるんだろう?

 今度の地震では非常に沢山の斜面崩壊が発生しました。災害復旧の目玉として、今後斜面復旧対策工事の発注が続くでしょう。それを期待している人も多いと思います。斜面復旧対策工事の設計につきものは・・・信用するかどうかは別にして・・・「安定計算」である。とにかくこれをやらないことには工事費が出てこないから、本省協議も出来ないし、会計検査にも耐えられない。
 さて、ここで問題は、安定計算の条件を、従来通りのやり方でやって良いかどうか?です。今回の災害の特徴は
 @夏以来の台風の通過(地震直前にも台風23号があった)で、山地の地下水位は十分上昇していた。
 A本震後も余震が継続し、余震期間中にも降雨があった。
 つまり、雨と地震が同時に重なってきた状態なのだ。では、我が国の斜面安定対策に使われている諸規準で、雨と地震を同時に考慮するような規準はあったでしょうか。私も最近、こういう仕事はやっていないので、もしかしたら間違っているかもしれませんが、ざっと思いつくままを並べると次のようなものです。

規準 地下水位 地震力
貯水池周辺の地すべり調査と対策 常時満水位 規定なし。将来の課題としている
道路土工(盛土) 規定無し 重要構造物周辺のみ
同(切土、地すべり) 規定無し 規定無し
宅地造成規制法 規定無し 規定無し
宅地防災マニュアル 規定無し 規定あり

 仮に「集中豪雨で地下水位が急上昇した時を考慮せよ」という規定を作っても、それと地震を同時に考慮するケースは先ず無いと思われる。しかし、今回は、ほぼそれに近い現象が起こったと考えられる。これに対する反応は概ね次の様な2パターンが考えられる。
 (1)今回のようなケースは偶然が重なったもので、極めて珍しいものである。従って、現行基準を変更する必要はない。
 (2)実際に発生したのだから今後も発生する可能性がある。従って、現行基準を見直すべきである。
(1)は財務省とか経済産業省及びその系列業界、(2)は国交省とその傘下の業界あたりから聞こえてきそう声である。私はどちらかというと(2)に近い。その根拠は
 @日本列島が地震活動期に入っていること。おそらく今後半世紀ぐらいは続く。
 A地球温暖化により、降水量が増える。要するに、これまでの異常気象が、異常気象でなくなる。
 というわけで、今の内から対策を採っておいた方が、後で慌てるよりはましだろうと思うのである。
 さて、問題の安定計算であるが、地震力は現行の静的震度法で別に構わないと思うが、降雨と間隙水圧の関係をどう評価するか、という問題は残る。例えば、B級道路の改良法面の設計や、金にせこい急傾斜地対策で、一々タンクモデルやFEM浸透流解析をするわけにも行かないだろう。無論ソフト産業の経営努力で、解析ソフトの無料ダウンロードも可能になる時代がくるかもしれませんが(チョット甘いか)、使い方が判っている技術屋の育成はそう簡単ではない。下手すると、とんでもない計算結果が世の中にうろうろするケースが考えられる。現在でも、それに類する現象が見られるのである。だから、計算法は、FEMのようにモデルによって答えが変わる(おそれがある)手法より、誰がやっても同じ答えが出る方法が望ましい。ここを上手く切り抜ける手法の開発が要求されることになる。例えば、安定解析式(有効応力法)の分子に、疑似間隙水圧係数A´を導入してσ´=σ-u=σ-A´σ=(1-A´)σと表し、A´を土被り・土質・降雨量(とりあえずは累計降雨量で構わないと思う。降雨パターンを考慮すると話がややこしくなるので、私が考えているB級計算には合わない)の関数として表されれば、計算屋としては非常に有り難い。ソフト屋だって、既存ソフトを少し書き換えれば良いだけ。降雨実験装置も充実してきているから、実験式ぐらいは直ぐに作れそうな気がする。なお、ダムや電力のように、A級計算を狙っている方は、今まで通り不毛の計算をコンピューターで格闘しておいてください。土質屋さん、水屋さん、頑張ってよ!。
 今後の国交省の動きに注目したい。


地震屋に地震のあとのことを聞くのは酷・・・・応用地質学会よしっかりしろ
 今度の地震でもそうなんだが、地震が起きるとマスコミに引っ張り出されるのは地震屋。彼らに地震のことを聞くのは構わないのだが、中には断層や二次災害のことまで質問するのがいる。地震屋は波を読むのが精一杯で、断層やその後のことを考える余裕などあるはずもない。だから、出てくる答えは教科書(それも中学生レベルの)的な紋切り型の答えしか返ってこない。
 要するに人選を誤っているのである。応用の問題を解くのに、基礎の人間を引っ張ってきても仕方がない。地震のメカニズムと、それを踏まえた今後の予測は地震屋のテリトリーである。これは誰も文句は言わない。地震が落ち着いたあとの復旧や、将来を見越した都市計画は、むしろ土木屋・建築屋の世界。問題はその中間の二次災害の防止、応急復旧や災害支援。これは地質屋、特に応用地質の世界なのだ。その辺りの位置づけがキチンと出来ていないから、我が国の災害対策は何時までたってもピント外れ・トンチンカンで進歩がない。
 実はこれを感じたのは阪神大震災の時。マスコミに登場するのは、地震屋か建築屋。地質屋はお呼びでない。おかしいでしょう。何故か?を考えていると、地質関連学会で法人格を持っているのがなかったからだ。あの当時、地質学会では、法人化するかどうかで揉めていたし(法人化に反対する、地団研崩れのアホが居るんだから付き合い切れない)、応用地質学会は法人化寸前まで行っていたのに、地震で後回しになった。それから10年。応用地質学会は、会員は基本的に法人化賛成、各支部の位置付けをどうするか、というテクニカルな問題が残っていただけだ。それを今までほったらかしていたのは何事だ。マスコミにしてみれば、法人格を持たない・・・要するに任意団体・・・に取材に来るわけがない、ということを10年前、応用地質学会関西支部幹事として痛感したのである。
 この問題の解決は応用地質学の将来にとって、もの凄く大事なことなのだ。これから先の学問はマスコミを抜きには考えられない。マスコミを味方に付けることによって新たな展望が開ける。


1、神戸の幸運は新潟の不運

 10年前の阪神淡路大震災が起こった時、一番最初に思ったことは「この地震は運が良かった」。
1、地震発生時刻が午前5時過ぎと、夜明け前の早朝だったため、交通機関が動いて居らず、家庭も火の気のない時間帯だったから直後の火災が発生していない。最初の火災が確認されたのは7時ごろではなかったか。それと地震災害ではないが、夜明け前だったから紫外線の勢力が強く、プラズマ発光現象(地震光)が確認された。これには阪高から落っこちたトラック運転手の証言がある。実はこれが、かねてから私が考えていた電磁波による地震予知技術の可能性を証明したのである。一部の地震屋や地物屋(*1)もやっと、この点に注目し出したようだが、私より10年は遅れている。

2、前年の平成年6年は、関西地方は記録的な干天続きで、山地の地下水位は十分低下していたと考えられる。だから、地震直後でも、六甲での山地災害は大きなものは発生していない。1週間後の低気圧による降雨で、山地崩壊が発生しだした。降雨が例年どおりだったら、地震に斜面崩壊が組み合わさるから、初期被害はもっと拡大したはず。

3、新潟の不幸は地震の前に何度の降雨が続き、ただでさえ地下水位が上昇しているときに、地震が作用したこと。つまり、被害は地震による直接の震害に、土砂災害が組み合わさったため、被害が拡大したこと。だから、今後現地に調査に行かれる人・・・特に若い技術者は、震害と土砂災害を混同しないよう、被害の性格を慎重に見極めることを期待します。なお、調査(地すべり調査を兼ねるのは当たり前だろうが)に入るときは、予め対策案を数案程度イメージしておくこと。それがプロのたしなみ。被害の状況・スケールは今までのマスコミ報道でイメージ出来る。

 何といっても道路が問題!神戸の時も問題になったが、今回はそれ以上。神戸は渋滞が問題になったのだが、新潟では土砂Kずれ・・・要するに地すべり・・・で道路が潰れている。渋滞は停滞車両を片づければ何とかなるが、地すべりの場合、道路に被ってきた土砂を撤去すると、その背後から又崩れてくるおそれがある。道路の復旧計画を建てられないことが問題。

*1;誰のことかは云いません


2、新潟の幸運は神戸の不運
 
今度の地震でも新幹線に被害が出ました。しかし、両者は質的に相当違っています。新潟の場合は、200q/hで走向して列車が脱線した。これは不幸かも判らない。しかし、高架橋はTV映像で見る限り、無傷です。神戸では、地震が始発前だったので、車両・人的被害はありませんでしたが、高架橋は見るも無惨な状態になりました。
 この違いは何でしょう。実は、東海道・山陽新幹線と東北・上越新幹線では耐震設計基準が変わったのです。今を去る30年ほど前、仙台転勤で、在来線で高崎か何処かの駅で、上越の高架橋工事をやっているのをみた。その時の印象は、「やたら柱が太いなあ」だった。
 私の岳父(つまりかみさんの父親)は、元国鉄の橋梁屋だったのだが、ある時「・・・東海道なんかマッチ箱みたいなもんや。大きい地震がきたらイチコロや・・・」と宣わったことがあった。自分で作っておいて、マッチ箱やイチコロもないと思うが、見る人が見るとそうなんだろう。
 問題は揺れなんで、今東海道や山陽は鉄板補強をしているが、これで強度は持つだろうが、揺れをカバーする事は出来ない。今のところ、質量を付加するか、免震構造に持っていくかしかないだろう。
 
なお、200q/hで走向している列車が1000ガルもの加速度を受けて脱線だけで済んだというのは、驚異的な安全性であり、もっと自信を持って良いと思う。国際競争力は十分ある。これに免震構造を組み合わせると、海外の地震国へも十分売り込み可能。

 但し、8両編成で、乗客が150人そこそこじゃ赤字だね。



3、防災都市の構築に向けて(その1)
 これは、今回の新潟県中越地震に対して書いたものではありません。今を去る10年前、阪神淡路大震災の後、大阪のある民間研究団体が、役所向けに提言集を出すので、何か書いてくれと謂われ、震災後の調査の過程で暖めていたものを文章化したものです。そして、今回の新潟県中越地震にも当てはまるものが多く見られたので改めて、hpに掲載する事にしました。

防災都市の構築に向けて(その1)
・・・・阪神大震災の教訓・・・・
               横井和夫
1,はじめに
 平成7年1月17日払暁、突然の地震に眼を醒まし、その日1日はTVに見入って自分の関係した構造物が話題になっていないかばかりを気にしていたが、翌日より伊丹〜宝塚方面の現地調査に入った。その間様々な情報が飛び交っていた。そのなかには必ずしも将来の参考になるとは云えないものもある。
 それはさておき、今回の震災を通じ、今後の都市計画に対し、筆者なりの構想が生まれたので、それを紹介してご批判を仰ぎたい。
2、一体何が問題か
 地震はいわば大地の気紛れで起こるようなものだから、これを防止する事は出来ない。従って、対応策は自衛的なものにならざるを得ず、その目的は市民の生命・財産の損失を防止あるいは極小化することである。そのための最も有効な手段として、地震予知があるが、直下型地震の予知は極めて困難だし、不可能だという意見もある。又、都市の構造を完全耐震性にする(*1)という考えもあるが、このためには膨大な資本と長い年月が必要である。都市の耐震化が完成するまで、地震が待ってくれる保障はない。
 従って、とりあえずは今持っている手段をー多少の補強・改良を組み合わせてー利用してしのがなくてはならない。
 この場合の対処には次のような場面が考えられる。
        (1)二次災害防止
        (2)避難・救援
        (3)復旧・援護
 問題はこれらの場面をいかにスムースに混乱なく乗り切っていくかである。
3、対応策の概念
 上記の場面を乗り切るための行動を大きく次の3フレームに分けて考えてみる。
        (1)判断、指示
        (2)初期対応
        (3)救援
(1)判断・指示
 今回の震災で大きく問題になったのは、危機管理の不備である。現代都市のように機能が複雑化し、住民の価値観も多様化している社会での突発災害対応では、的確な判断に基づく対処と避難誘導が不可欠であるが、その前提となるものは情報・通信システムの確保である。残念ながら神戸ではこれが全く機能しなかった。
 政府の対応の遅れが非難されたが、隣接する大阪はどうだったかというと、あまり自慢出来たものではない。 激震地区では情報・通信機能が麻痺しており、この点では東京・大阪も同じ距離にあったのである。この場合、中央政府は激震地区に直接情報を求めようとしても意味はない。これは情報システムだけでなく、行政機能も麻痺しているからである。むしろ、隣接する非被災都市がバックアップに入って、それを中継点として情報交換を行ったほうが良い。
 もう一つの方法として、広域監視システムの構築がある。光は電波より早いし、映像は電話やFAXより直接的である。これは人工衛星による監視もあるが、より簡単な方法として、隣接する各都市の超高層ビルの屋上や近隣の山頂に高感度カメラや超望遠カメラを設置して24時間体制で相互監視を行うことが考えられる。
(2)初期対応
 従来から地震時の初期対応として防火の重要性が指摘されてきた。しかし、神戸ではこれが、あってはならないことが起きてしまった。これに対しては、市街地の不燃化を促進することが原則であろうが、神戸では不燃性のマンションでも火災を起こしている例があり、完璧な対応とはいえない。不幸にして火災が発生した場合の対応として@個別消火(家屋、構造物単位)、A地域消火、B機動消火(工場、タンクヤード等)の3レベルが考えられるが、特に着目したいのは地域消火である。当日10時頃の映像では決定的に水圧が低下しており、継続的な消火活動が不可能になっていた様子が読みとれた。これは地震動により、水道本管が破損したためであろう。防火用水の不整備が指摘されているが、これの整備は既製の市街地では、そう一朝一夕に進むものではない。それに変わる手段を選択肢の中に含めても良い。これは次の救援とも関連するので、具体的にはそこで触れることにする。
(3)救援
 建前上は、救援活動の主役は各自治体である。しかし、現実的には行政も混乱しており、あてにならないことが判った。その理由は、我が国の縦割り行政組織が、地震のような同時多発的災害向きにできていないためである。これを補完する手段として横断的な組織の活用が挙げられる。今回注目されたのは、NGOのヴォランテイアの活躍である。しかし、彼らにも出来ることに限界がある(特に技術を要する場面)。我が国で横断的組織を持つものに企業がある。最近の企業、特に大企業は官僚化・空洞化が進んでいるが、それでも役所に比べれば横断的行動能力は高い。又、彼らはそれぞれの分野における技術を持っている。(*2)逆に企業の側も積極的に支援協力を申し入れても良かったと思われる。この場合の官業癒着は許されても良いのではないか。水を例にして具体的に考えてみよう。
 避難後のK基本的な生活必需品は、電気・ガス・水である。前2者はなんとか代用品がある。しかし、水だけはどうにもならない。水は飲用・医療用のように生命維持に必要であるばかりではなく、トイレ・洗濯のように衛生上も必要不可欠である。
 ところで京阪神地区の水道の多くは「水源地」→「幹線」→「支線」→「枝線」→「末端」という順序で供給されているが、これらの何処かがダメージを受けれると、その下流が供給不能になる。ダメージ点が上流であればあるほど影響は広がり、深刻化する。これは、通信・情報の途絶と同様、明治以来の中央集権政治の破綻を象徴しているように見える。
 
4、地下水の活用
 これを一時的にも緩和する手段として地下水の活用があげられる。阪神地区だけでなく、日本の大都市の大部分は沖積低地に立地しているから(*3)、極端にいえば何処をほっても水は出るとも云える。一旦ある都市で地震が発生し、水道系統が壊滅したとする。問題は井戸を掘る能力であるが、京阪神地区を例にすると、これに対応する業界としては、大口径はゼネコン、中小口径は鑿井、グラウト、地質調査業を合わせると100以上にのぼるし、掘削地点の選点、技術指導に当たれる技術者は地質の技術士だけで100人以上にのぼる。
 もし、井戸が神戸の各地区に用意されておれば、初期消火やその後の生活用水の確保に関する問題はたちどころに解決されていたはずである。仮に井戸が用意されていなくても、被災後直ちに井戸の掘削がおこなわれておれば、その後の生活の不便さは相当緩和されていたであろう。
5、防災都市の構築に向けて
 防災都市構築の理念は、都市を鉄やコンクリートでガチガチに固める事だけではない。要は
     @地震の性質を正しく理解し
     A都市の環境を把握し、それを利用する形で、しなやかでタフな都市を創造することである。
 我々はその教訓を今回の震災で十分学んだはずである。
@地震の性質
 海溝型の地震と異なり、直下型地震は震源地域では爆発的な破壊を及ぼすが、それを離れると被害は激減する。例えば数都市で地域圏を構成している場合、その内の幾つかの都市が壊滅的打撃を受けたとしても、隣接都市は機能は維持できているから、直ちにバックアップ体制に入れる。これを中継点として情報収集、救援活動を行ったほうが、被災後の混乱を避け得ると考えられる。
A都市の環境
 これは、都市の地盤や活断層のような自然環境だけではなく、その都市が持つ企業力、在住する技術者集団の技術力のようなソフトを含めての環境である。但し、幾ら技術力があっても、行政がそれを有効に利用出来なければ意味はない。今回は地下水について利用法を述べたが、これを阻止する要因に地下水規制がある。おそらく他にもあるだろう。これらの規制は非常時には逆方向に作用することに注意すべきである。
 これらの問題を解決するためには、やはり
     @広域行政の推進(非常時に於ける縦割り行政の排除)
     A地方行政能力のアップ
     B民間技術力の活用
     C防災インフラの整備と規制緩和
 が必要であると云える。
 
(*1);これの1年程後、高槻に引っ越して来ました。我が家のあたりは淀川右岸の沖積平野で軟弱地盤地帯。近所で建築工事が良く行われていた。よく見ると、新築一戸建てで2Fだと4〜5mほどのねじ込みクイ(鋼管+スパイラルオーガー)、3Fだと、布基礎にして、やはり4〜5mほどをDJMで地盤固結をやっている。地下4〜5m辺りに沖積の中間砂層があり、低層住宅ではそれを支持層にしていると思われる。更地でスウェーデン式サウンデング(*4)をやっていた建て売り屋の下請けのオッサンに聞くと、そういうようなこと云っていた。我が家も築8年で今のところ不同沈下の気配もないので、おそらくねじ込みクイなのだろう。これは地震後、行政指導が強化されたためと思われ、一部自治体では確実に耐震化は進んでいると言える。但し、これも高槻市ではこうだ、と言えるだけで、他の自治体ではどうなっているか判らない。耐震化の程度がまだまだマダラなのだ。
(*2);これは10年前での話。以後空洞化は更に進んでいる。三菱自工や関電美浜事件・事故を見ると、いささか甘いような気がする。
(*3);「中越地方は沖積平野ではなく、第三紀の丘陵だ、簡単に水は手に入らない」と言われるでしょう。ご心配なく。被害の大きかった魚沼、小千谷地域は全国有数の(ひょっとすると全国一かもしれない)地すべり地帯である。従って、無数の集水井や水抜きボーリングがあり、夏の集中豪雨や台風の影響で、排水量も増えているはずである。とりあえずはこれを使えばよい。地すべり屋もたまには人の役にたつことをやりなさい。
(*4);今はスウェーデン式サウンデングは皆自動式になっているようですね。今を去る35年程前、ある団地の開発の件で、個人住宅の地盤調査をどうすれば良いか、という話があって、これの自動化を考えたことがあったが、馬鹿馬鹿しくなってその内辞めてしまった。こういう問題は、定常波探査で近似的にS波速度を求め、地盤種別を求めるやり方がスマートと思う。但し、これは動的問題なので、静的問題にどう反映させるかが課題。これは意外に難しい。

4、真に不謹慎ですが
 真に不謹慎ですが、中越地震の報道を聞いたり見たりしている内に、「永年の疑問が解けた」という気になって、思わず喜びの表情を浮かべてしまった。断層の中には、地形的特徴・・つまり空中写真判読から追いかけられるが、いざ現地で断層露頭を探すと、それらしいものが見当たらない、幾つか破砕帯が平行して並んでいてどれがメインなのか判らない、といったタイプのものがあります。昔の古い先生なら「それはお前の探し方が悪いんじゃ」と片づけるところです。下の写真は、淀川水系大戸川の北岸を走る「大戸川断層」の露頭です。
写真中央に断層粘土があり、これがメインのように見えますが、実はそう見えるように写真を撮っているだけで、これの周りに幅数10mに渉って似たような破砕帯が見られます。要するにはっきりした断層破砕帯というものはなく、全体がもやもやとしているのです。

古い写真が出てきました。画像の質が悪いのは写真が変質しているため。但し、元のネガは日本工営にやってしまったので手元にはありません。工営もJHに提出しているから保管していない。JHも会計検査が済めば用済みだからポイ捨て。つまりこの写真のもとは今や産業廃棄物として処分されているのです。

 何故、こういうタイプの断層が出来るのか、永年疑問でしたが、今回の中越地震でその疑問が解けたように感じました。平成16年新潟県中越地震は04年10月23日午後5時57分のM6.8を皮切りに、その後数分乃至数10分おきにM5〜6級の余震が継続し、更にそれが数日間継続した。本震のあとの余震の規模が、オーダーとしてそれほど変わらないということは、余震でも本震と同じような断層が形成されたということになる。そしてM5〜6級の地震は小さいとは云わないが、ビックリするほど大きなものではない。だから出来た断層も大したものではなく、破砕帯と岩盤部が繰り返すあいまい断層になる。しかし、地震が繰り返し起こると、小さい断層も次第に合わさって、一つの大きな断層破砕帯に収斂していくのでしょう。つまり、この種のあいまい断層は、出来たばっかりの若い断層(赤ちゃん断層)と言える、と私は思っている。赤ちゃんはその内、少年に更に大人に成長する。その過程が地震なのです。
 さて、私の経験では土木的には、この種の若い断層(あいまい断層)の方が、トンネルや切土なんかでトラブルの原因になることが多い。しかし、温泉を狙うにはこれの方が有利。従って、新潟県の被災地では、復興の目玉として温泉を開発することをお奨めいたします。何処で掘れば良いか、は少し難しい。逆断層型だからまともに行っては駄目。断層の何処かに引っ張りが働いているところがあるはず。そこを狙う。余震分布から考えることになる。
(04/10/25)


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