平成18年台風13号から


上左の写真は、広島市安佐北区安佐町飯室で、台風13号による増水で生じた道路崩壊の空中写真です。河川の流線と、周囲の護岸との関係から、この川は本地点で左岸側に河道が付け替えられたことが推定されます。右の図は上下流の河道、道路の線形から推定した、付け替え前の旧河道の範囲、及び崩壊前の道路の形状です。太破線の範囲が旧河道、一点鎖線の範囲が崩壊前の道路と推定されます。これから推定されることは、崩壊地点は元もと、河川の攻撃斜面で、それを道路付け替えのために河道を人工的に移動させたことです。攻撃斜面部では、河川の洗掘により岩盤がえぐられ、深い凹部が形成され、そこにルーズな砂利や砂が堆積したと考えられます。一方河川付け替えに伴い、堤防が新たに築造され、その上に道路が走ることになります。堤防は盛土で、護岸は下流崩壊部に見られるように高さ2m程度の重力式護岸です。この程度の構造物では基礎は特に考慮されません。旧河道に堆積したルーズな土砂の上に、そのまま築造されたものと推定されます。無論、ルーズと言ってもφ材料だから、堤防荷重が直ぐ有効応力に転化されるので、堤防の安定にとっては問題はありません。しかし、水は別問題です。築堤下に浸透してきた水の流速が地盤の限界流速を超えれば、簡単にパイピングを起こし、堤防そのものが崩壊します。安易な河川の付け替えが河川災害の素因になっている可能性は既に平成16年新潟豪雨で指摘してあります。日本中にこのような箇所は掃いて捨てる程あります。今の内からやばいところは手を打って置いた方がようでしょう。なお、上の例での対策ですが、道路は大人しく、メタルで1スパンで飛ばした方が、後腐れがなくてよいと思います。但しS型橋になるので構造的にはちとややこしい。河川は蛇篭堰堤ではどうかと思います。蛇篭を雁行状に配置して、減勢工を兼用した、信玄積みのような古典的方法はいかがでしょうか?但しこれも必ず基礎は岩盤まで根入れすることが肝要。
(06/09/19)

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