福岡博多駅前陥没事故の真実

横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫


 2年半前に起こった博多駅前陥没事故対策工事がやっと終わって、これから本体工事とiいう報道。2年半も一体何をやっていたのかね?ズバリ言えばこの工事、ヘタクソの一言だ。既に事故の経緯はよく知られているので省略するが、根本的原因は発注者である福岡市、受注者である大成建設、中間に介在する技術検討委員会の無能・無責任である。
 この事故の原因は極めて単純である。要するに事前に容易に想定される問題に対し、何もしなかっただけである。事故後委員会のメンバーだった東北工大の教師・・・・九州の工事に何故仙台の人間が口を出すのか?九州には人がいないのか?・・・が「あんなに地盤が複雑とは思わなかった」などと愚にもつかない言い訳をしていたが、地盤が複雑でよく分からないのなら、分かるまで地盤調査をやればよい。第一陥没地点はシールド区間(沖積層)とNATM区間(花崗岩)との丁度境界付近だから、実際はよく分かっていたのである。つまり彼は嘘をついていたのである。
 こういう際どい場所で異種の工法を接続しようとすれば、対応策としては既に述べているとおり、
1、接続立て坑
2、地盤安定化工法
 が挙げられる。
 1、が最もオーソドックスな工法だが、これには交通規制や地下埋設物の関係で警察や関係省庁、事業者と色々面倒な協議を重ねなくてはならない。それが嫌でこれを見送ったのではないかという疑いがある。しかしそんな面倒事案解決のために福岡市長や福岡県知事がいるのだ。こいつらは行政の長として何の役にも立っていない。
 次にやってくるのが2、である。主施工業者大成は、事故前にパイプルーフ打設を委員会に申請しOKを得たので、それを開始した時に事故が発生した。前面の地山が透水性の高い沖積砂質土だから多分アンブレラ工法を考えていたのではないかと思われる。
 アンブレラ工法とは先行ボーリングでモルタルを撹拌混合し、その後に鋼管を挿入し支保工を築造するものである。問題は地山の透水性で、これが大き過ぎるとモルタルが流出し、鋼管の間がスカスカになって土砂が流出する。福岡地盤の特殊性を考えれば、補助工法として予め止水工を行い、その上でアンブレラを施工すべきだったろう。止水工としてはやっぱりウレタンだ。但しウレタン注入は環境面での制約がある。その点を考えれば、やっぱり凍結工法の採用がスタンダードな対応と考えられる。
 この程度のことは何も特殊なことではない。どの工法も既に成熟しており、まともなトンネル屋なら誰でも考えることである。それが何故採用されなかったのが面妖。特に大成建設が付いていながら何故凍結を奨めなかったのかが不思議だ。大成といえば凍結、凍結といえば大成というのは業界の常識だからだ。
 補助工法を使えば当然工事費は上昇するが、その点を補うのが委員会の役割だ。おそらく福岡市が補助工法を嫌って委員会に対し、これでやれると見栄を切ったのではあるまいか。要するに委員会など、技術を指導するどころか・・・当然その能力もない・・・単に事業者の責任逃れの隠れ蓑になっている。
 しかしこんなことを許しているのは、文明国では日本だけ。あんな事故を起こしてその復旧に莫大なコストが懸かる。外国では納税者から当然訴訟を起こされる。下手すると委員会メンバーは刑務所行きだ。日本もそうすればよいのである。そうすれば、みんなもっと真剣になるだろう。
 なお事故後、ネットや一部のメデイアで”事故後約一週間で陥没孔の埋め戻しが終了し交通が回復した。これこそ日本が世界に誇る技術だ”という通説が流布した。こんなバカな話はない。陥没を起こさないで施工できれば自慢になるが、あんな大恥かいて自慢するなど、馬鹿もいい加減いせよといいたい。こんな身内に甘い体質だから戦争に負けたのだ。そのたいしつは今のアベ政権で収まるどころかますます肥大している。その内又大敗北するだろう。
(19/07/14)

 一昨年起こった福岡博多駅前陥没事故が、責任不「在のまま有耶無耶で終結。根拠は事故調査委員会の「事前に地盤の複雑な変化を予測することは不可能だった」という答申。これを真に受ける人は、よっぽどのお人よし世間知らず。
 そもそも委員会というものは何のために設置されるのか?昭和40~50年代頃から、公共事業でやたら委員会が出来るようになった。それはその頃から、公共事業に対する住民訴訟が増大しだしたことと、会計検査院が公共事業に目を付けだしたからである。つまり委員会とは住民訴訟・会検逃れの便法なのである。
 というわけで委員会答申(報告書)は事業者の言い分丸呑みが当たり前。事業者もこっちの言い分を聞いてくれそうなメンバーばかり集める。つまり委員会に名を借りた八百長である。
 問題の福岡市地下鉄工事では、事前の技術検討委員会にも、福岡の地盤に経験のある地元の地質技術者は一人も含まれず、地盤関係ではなんと東北の土質屋だけだ。アホの土質屋にトンネルの何が解る?。こんなシロートアホ集団が事前に地盤が把握できなかったなどというのは片腹痛いのである。まあ、福岡市交通局技術の低劣さを見せつけた工事といってよいだろう。
 なお、福岡市はこの委員会報告で一件落着と思っているだろうが、この先会計検査がある。安心するのはまだ早い。
(17/12/20)

 昨日ネットをみていると、永年謎とされてきたギザのピラミッドに使われた石材運搬法について、ある研究者が新説を発表したとある。新説の内容は説にもならない馬鹿話なので忘れてしまった。こういう妄説というか謎が残るのは、文系の考古学者が地質学に無知なため、数千年前の状況と今の状況を混同することが原因である。
 ギザのピラミッドが作られた5000年前は,カイロはナイル川河口の三角州でギザ台地のすぐ側まで海だったのだ。そう考えれば問題の解決は早い。謎とされるモーゼの出エジプトも、地質学的には大した話ではない。あんなものはただの汐の満ち引きなのである。その証拠は、グーグルアースを見れば誰でも見つけられる。中学理科か高校地学のレベル。
 ついでに言えば、イギリスのストーンヘンジの巨岩は誰が運んだか、という謎も大したことではない。氷河が運んでくれたのだ。
 このように従来謎とされてきたことも、その原因は考古学者の想像力不足であることが多い。福岡博多駅前陥没事故も、福岡市、大成建設、技術検討委員会に連なる土木屋の想像力不足が根本原因である。
(17/03/31)

 福岡博多陥没事故について、政府の有識者会合が事故原因の概要を発表した。筆者は常々有識者と云うものが何者か?有識者ではなく無識者ではないか、と疑問を持っていた。この疑問は、今回もあながち的外れではなかったようだ。
 報道によると、有識者達の結論は1、ボーリング調査の結果、岩盤内に風化部や割れ目があり、強度は一定ではなかった。2、そこに強大な水圧が加わって崩壊に至った。しかし、このような疑問が沸く。
1、岩盤、特に花崗岩の中に割れ目があったり、それに伴って風化が進み、強度が一定しないのは当たり前で、そんなことは誰でも知っている。ましてこの地点は、花崗岩斜面が急激に高度を下げているところで、風化が不規則に進んでいるのは当然。それとも九州や関東の土木屋や地質屋は、そんな初歩的なことも知らないのか?
2、過大な水圧というが、現地は沖積平野の真ん中であり、地下水位は広域的には大きな変化はありえない。水圧は地下水面から岩盤上面までの高低差で決まる。つまり地下水位がGL-3.0m、岩盤上面がGL-15mなら、岩盤上面に作用する水圧は、U=15.0-3.0=12.0*1.0=12.0t/㎡それ以上にはなりえない。つまり、水圧上限値は判っていたのだから、それに対する対策も採れていたはずだ。つまり予測がつかなかったというのは、言い訳にならない。
 そもそも有識者会合指摘の根拠となるボーリング調査は何処でおこなったのか?陥没地点の岩盤は既に失われているから、そこでボーリングしたところで、何も出てこない。従ってこれは陥没地点とは別地点で行なったものになる。そこで得られたデータが陥没地点の地盤を反映したものとはいえず、これは根拠にならない。また、岩盤強度の「不均質性や地下水は、別に特異でもなんでもない。
 NATM区間が博多駅から発進したとすれば、陥没地点までの間に、幾らでもそういう場所に遭遇したはずである。その区間では何もなく、何故シールド接合地点で陥没を起こしたのか?が問題なのである。有識者会合はこの点について何も触れていない。
 一番の問題は、この有識者会合が事故が生じた福岡でなく、東京で行われていることである。座長は首都大、地盤工学屋は東北工大。みんな九州や福岡の地盤の素人だ。こんな素人の与太話を聞いて何の役に立つのか?役に立つとすれば、福岡市や大成の書いた筋書き通りに踊ってくれることだろう。
 筆者が主張する最初シールド切羽にトラブルが生じて、それがNATM区間に伝達したとすれば、接続計画そのものに問題が生じ、福岡市の責任は免れない。その点、岩盤の割れ目と地下水に責任を転嫁しておけば、誰も傷つかずに済む。この際素人を使った方が得だ。というのは昔から使い古された手。
(17/01/23)

 11月初めに発生したコンピューターのトラブル(マイクロソフトかあるいは大成建設の陰謀ではないか、と疑っていますが)で、この件に関する10月以前のファイルが消えてしまったので、改めて作り直すことになりました。ここでは、この事故の発生原因を初めから考え直すことにします。
1、福岡市の地盤状況
 こういう問題は、まず当該地の地盤の性格を理解しなくては話にならない。しかし福岡市の説明やマスコミに流れている情報では、この理解が無視されていると思わざるを得ない。そのため、「福岡の地盤は難しい」などという低レベルの言い訳(福岡市)が出てくるのである。
 まず1万年前の福岡平野を想像してみよう。この時代の海水面は、世界的には今からー20~-30m付近にあった。つまり地下20~30m付近には広く平野が発達していたのである。ただしこの平野は一様ではなく、過去の氷河時代の浸食に取り残された基盤岩(主に花崗岩)からなる山や丘陵が頭を出していた。その後の温暖化で海水面は再び上昇し(縄文海進)、約6000年前には今から+6m付近まで上昇した。その後、2500年ほど前から始まった寒冷化で海水面はまた低下し(弥生小氷期)、現在の海水準に落ち着いた。その間、海面下には陸地からの土砂が堆積するが(所謂沖積層の形成)、福岡平野は陸地から海までの距離が短く、大きな川がないため、比較的粗粒の砂がまず堆積する。この砂は、粒径が揃っており、密度もN値が10未満のルーズなもので、わずかでも導水勾配が加われば、勘単に流動化してしまう性質のものである。その後海水面上昇速度が遅くなると、細粒で軟弱(N値1以下)シルト・粘土層が上に堆積するようになる。
 つまり福岡市の地盤構成は、大きくは1)上に軟弱なシルト層、その下に2)ルーズな砂層、更にその下に3)基盤の花崗岩が分布するという形になる。ただし問題は沖積層と花崗岩との境界は起伏に富んでおり、複雑に変化するという特徴がある。
2、崩壊の経緯
 本地下鉄工事は福岡市天神と博多駅を結ぶもので、天神側はシールド工法、博多駅側は山岳工法(NATM)で発進した。これはそれぞれの地盤構成を反映したもので、これは特に問題はない。つまり天神側工区は前述の沖積層地盤、博多側には花崗岩が施工基面の上部まで分布していたから山岳工法を採用したのだろう。そしてその両者の境界が今回の陥没地点だったというわけだ。事故当日NHK映像を見ると、(1)まず道路上に、二つ平行して円形の陥没が発生した。(2)それが瞬く間に連結し、更に駅側に向かって拡大し、最終的な陥没に発展した。
下の図Aは事故後福岡市が公開した事故現場の説明図である。残念ながらこれでは事故原因の説明にはなっていない。右の図Bは筆者がAを参考に描いた、陥没地点の地山想定図である。

   
A B

 図Aの「掘削予定」とされている部分が何か、よく分からなかったが、これをNATM区間の残りと解釈すれば、話は早い。一番最初に陥没が発生したのは、NATM予定区間の終端部で、同時にシールド区間の終端部でもある。ということは既にこの地点まで、シールドが来ていたことになる。又図Aでは地山の岩盤分布が全く無視されており、これでは地盤は一様だったと云う誤解を与えかねない。実際は図Bのように、上位の沖積層と下位の岩盤との2層構造で、しかもその境界は、かなり起伏に富んでいると考えられる。この点から、シールド到達位置での岩盤線は、かなり傾斜をもっていたはずである。ということはシールドの上半または天端付近には、沖積層が残っていた可能性がある。沖積層は既に述べているように粒径の揃ったルーズな砂だから、シールド天端を矢板ででも補強しない限り、ゆるみが発生する。
 又、NATM区間は一応岩盤ということになっているが、一言で岩盤と云っても風化やその他二次的な影響で、状態は相当変化する。岩盤の岩石が花崗岩だったら、その表面はマサ化する。これは沖積層と同様、粒径の揃った砂で、しかも水で飽和している。又風化帯(マサ化帯)は、通常厚さ数mから10数mぐらいはあるので、上図の掘削予定区間がソックリ風化帯に含まれていたとしても不思議ではない。
 ではこういう状態が長時間放置されていればどうなるか?地山のゆるみは時間とともに継続する。地下に何らかの空隙があれば、ゆるみ域の土砂はそれを伝って流出し、ゆるみ域は次第に成長する。これが地表まで達すると、最終的には陥没に発展する。つまりシールド天端付近のゆるみが成長して、最初の陥没を生じ、その影響がNATM側に伝わって、二次崩壊に繋がったと考えられる。この影響が具体的にどのようなものかは、これまで公開されている資料では分からない。シールド切羽の崩壊に伴い、NATM側の地山も同じように流動化した可能性もかんがえられる。
 さて、ここで一番の問題は、福岡市は、NATM側の問題のみを強調し、シールド側にはなんら言及していない。むしろここに問題の本質があるのではないか?

3、事故原因について 
 通常、建設工事事故は何らかの人為ミスによって生じるものである。施工中の突風で足場が崩れたりする自然災害もあるが、これは例外的なもの。人為ミスには次の3者がある。
1)計画ミス
2)設計ミス
3)施工ミス

3)施工ミスは、計画・設計は妥当だったが、施工者が正規の施工手順をスルーしたり、設計仕様を満足しない材料を用いたりしたりして生じる事故である。例えば倉敷の水島JX日鉱シールドで、ゼネコンのカジマが強度の劣るセグメントを使用したりしたのも、このケースに当てはまる。国道112号八溝沢橋は、ゼネコンと役所が有耶無耶でやってしまったチョンボ。
2)設計ミスは設計者の計算間違いとか、設計基準の解釈を間違ったのを発注者も設計者も気が付かなかったとか、という低レベルのたぐいです。この種のミスは枚挙に暇はありませんが、ゼネコンがまともだと、施工段階でチェックされることもある。ただ最近はゼネコンのレベルも下がってきているので、間違った設計がそのまま通ってしまうケースも少なく」ありません。
1)計画ミスとは、地形・地質その他環境条件から不適当な計画を強引に推し進めて生じる事故である。今から10年ほど前の北海道豊浜トンネル崩落事故などその典型で、誰が見てもあんなところにトンネルを、といった箇所に、地元の要求・・・たかが民宿3軒だ・・・に抗しかねて、無理やり坑口を設定したから、あんな悲劇を招いてしまった。他にも、わざわざ断層に平行にトンネルルートを設定したとか、地元のオッちゃんがコワモテで、それが怖くて道路を山側にシフトしたところ、のり面が動いて対策工にン億円かかったとか、こういう例は多い。特に奈良県に多い。
 さて今回の博多陥没事故、上の三者の内、どれに該当するでしょうか?筆者は1)計画ミスの可能性大と考えます。そもそもこの工区は立坑方式を採用すべきであって、地中接合はいささか強引に過ぎたと考えられるからです。
(1)この工区では、シールドと山岳工法(NATM)との接合が計画されているが、そもそもこの両者は性格・形状も施工法も異なるので、接合工事は相当複雑になる。そんなことが狭い地下空間で無事に出来るか?十分な空間の確保が必要である。
(2)地質的には沖積層と岩盤とが接する箇所で、地下水も豊富である。又、岩盤も天端から十分な被りがあるとは言えない。
(3)トンネル方式では,天端付近の地山に不安定要素がある。地山補強補助工法が必要。特に地下水対策が重要である。
(4)立坑でも掘削高は20m前後である。小さくはないが在来工法で十分施工可能なレベルである。
 一方、本工事区間は博多駅前の目貫通りにあること、道路下には多数の地下埋設物があり、これの撤去・移設が困難であることを理由に、福岡市は敢えてトンネル工法を選んだと考えられる。しかし、これは理由としてはいささか弱い。接合区間はせいぜい20~30mである。この程度の範囲なら関係者の協力を得ることは難しいことではないだろう。大阪のJR東西線布設工事は国道1~2号にかけておおよそ2㎞にわたって、はるかに複雑な条件下を全て開削で施工している。
 補助工法としては、大成はパイプルーフを提案したらしいが、それを施工する前に陥没が発生した。タイミングを失したのである。どんな優れた工法もタイミングがずれれば役に立たない。それとあんな地山で、パイプルーフが実際上手く施工できるかも疑問だ。やるとすれば凍結だ。シールドが到達する前から凍結に懸っておれば、間違いなく施工できたかもしれない。
 高度成長期の昭和30年代~40年代にかけての土木・建築工事では、従来経験がなかった地域・地盤での工事が多く、各地で陥没や土砂崩壊、地盤沈下などを起こし、世間の顰蹙を買った。そこで、それらの批判をかわすためと、円高に伴う人件費を含むコストアップを吸収するため、昭50年代~60年代にかけて施工技術に大きな革新が行なわれた。それは良いのだが、かえってそれが、その後の施工技術に新しい問題を作ってしまった。それは、これさえあれば何でも出来る、という工法過信主義の発生である。例えばそのころ出来た工法に、「全地質適応型シールド」というのがある。これは一つのシールドマシンで、軟弱地盤から固い岩盤まで、なんでも掘ってしまうというものである。しかしこれはメーカーの売り宣伝で、その実態をよく見ると、地山毎に推進方法を変えなくてはならないとか、カッターも地山に適応したものに交換しなくてはならないとか、従来別個にあったものを、単に一つに寄せ集めたものに過ぎない。このマシンの性能をフルに発揮させようと思えば、従来より密な地質調査が必要なのである。ところが、アホな役人はメーカーの釣り広告に惑わされ、とんでもない事態を招いたことも少なからずあるのだ。水島シールド崩壊事故も、工法過信という点で似たようなものである。
 今回の博多陥没事故でも、果たして事業者や施工者の中に、地質調査は形だけで、あとは施工でやっていくという、工法過信の空気がなかったか?それが問題だ。要するに、みんなで地山を舐めてかかったのが、失敗の原因だ。
(16/12/28)


 福岡博多駅前陥没事故、ずばりいえば今のやり方では手の打ちようはない。まず修復後発生した路面沈下の問題です。福岡市はこの原因を埋め戻し土の強度不足と説明していますが、実態は地下水の挙動です。地下水を上手くコントロールできなければ、沈下は今後も継続し、対策を誤れば二次崩壊・・・つまり新たな陥没・・・の危険性もある。
 まず陥没地点下の地下水圧の状況を考えてみましょう。下図は埋め戻し後の陥没地点の状況を想像したものです。

1、最初の陥没によって地山の沖積層(軟弱なシルト層とルーズな砂層)の大部分はトンネル内に流出する。このとき左側のシールドがどの辺りまで来ていたのかは判りませんが、ひょっとすると図よりもっと右側、つまり陥没地点まで達していたかもしれません(この点は福岡市も大成も明らかにしていない)。
2、それはともかく、とにかく陥没孔は埋め戻してしまった。この材料は不透水性・・・つまり水を通さない・・・だから、その底面には自身の重量(W)と同じだけの間隙水圧(U)が発生する。これにより、埋め戻し土を支えるのである。
3、しかしその下の砂は空隙が多く、埋め戻し土の重量で水を排出する。その結果、様々な現象を生じる。この様子を示したものが下図である。

1)埋め戻し直後には、埋め戻し土底面には初期間隙水圧u0が発生する。陥没地点地下が完全に密閉されておれば・・・非排水状態が保たれておれば・・・間隙水圧は変化せず、沈下は生じない(A)。
2)しかし崩壊土が底部あるいはトンネル内に残っておれば、これから水が排出され間隙水圧は低下する(B)。その結果空隙が縮小し、地盤内の沈下が生じる(S(t)).。
 先日の報道では、トンネル脇の立坑内水位が4mほど上昇していたといわれる。おそらく崩壊土砂の水が絞り出されてきたのだろう。路面沈下が指摘されたのはこの前後である。福岡市はこの地下水を排出するというが、そんなことをすれば、間隙水圧は更に低下するので、沈下は促進されるから逆効果である。立坑も埋め戻すほかはない。
3)この沈下は状況が保たれれば、ある値に収束するが、例えば何らかの拍子に間隙水圧が急降下するようなことがあれば、沈下は急速に進行し、地盤の破壊・・・つまり二次陥没・・・を生じることになる。
 では、どういう状態で間隙水圧が急降下するのでしょうか?最も危険なケースは、上の図のトンネル内崩壊土を撤去した時である。それとか、薬注か何かで削孔したときも要注意。水を汲みだせば沈下する。汲みださなければ工事は再開できない。つまりこの工事は今や完全に手詰まり、二進も三進もいかない状態だ。ではどうすればよいか?それは方針を転換し、トンネル工法は諦めて、開削工法に切り替えるべきである。
(16/11/29)

 路面がわずかばかり沈下しただけで、福岡市はまたまたシロート丸出しの大慌て。
1、まず・・・だれが言い出したのか知らないが・・・福岡市は、路面沈下の原因は下の砂層の沈下とする。しかし陥没原因は花崗岩の崩壊で、砂層のそれではない。崩壊土の大部分はトンネルを通じて流出してしまっている。つまり陥没孔の下には沈下に寄与するような砂層は殆ど残っていない。
2、テレビの報道画面を見ると、沈下部の路面は波打っている、つまり不等沈下を生じている。それも波長数mオーダーの短いものだ。埋め戻し土の下に砂層があったとしても、深さは少なくとも15mはある。こんな深さにある砂層が少々沈下したところで。地表面に、あのような不等沈下は発生しない。地下の比較的浅い部分・・・せいぜい数mまでの影響である。この理由として挙げられるのは、やはり埋め戻し土の不均質性である。
3、福岡市は埋め戻し土の下の砂層の補強を行うt言っているが、何のためにそんなことをするのか?そもそも、そんな砂層が存在するのか?それより重要なことは、今後この地点に地下駅を作らなくてはならないことだ。対策はそれを踏まえたものでなくてはならない。あくまでトンネル工法で突っ張るのか、それとも筆者が云うように、開削工法に切り替えるのか、いい加減に踏ん切りを付けなくてはならない時点だ。
 それに対し、福岡市の対応は常に後手後手、その場しのぎの場当たり、対マスコミ言い訳の連続。福島東電とそっくりだ。
(16/11/27)

 折角神業とまで世界に褒められた*福岡博多駅前陥没埋め戻しが、施工後たった10日で早くも7㎝の沈下が発生。こんなこと初めから分かっていたのだ。そもそもこの埋め戻し工事、ソイルセメントをダンプで陥没孔に放り込んだだけ。ソイルセメント盛土は、ダンプで撒きだした後、振動ローラーかタンパーで丁寧に転圧しなければ、強度は出てこない。
 福岡市はこれを特殊な土と言い張り、何も知らないマスコミはそれをそのまま鵜呑み報道。こんな土、特殊でもなんでもない。マサにセメントと、せいぜいベントナイトを混ぜただけだ。転圧も施工管理も何にもしていない。だからセメントの混入も均一ではない。従って一時的には強度は出たように見えるが、いずれ強度低下を起こし沈下するのは目に見えていた。しかしこんなに早く(沈下が)出てくるとは、筆者も思わなかった。よっぽど施工が下手だったのだろう。
 埋め戻しがどうであろうが、この後この場所に地下駅を7作らなくてはならない。今回の陥没事故で、今後の工事は福岡市ではなく、国土交通省が直接出張ってくるだろう。又、沈下の発覚で、担当も運輸局の鉄道屋ではなく、道路屋マターになるだろう。その場合、工法は、筆者がかねて言っているように、開削になるだろう。スタッフは福岡市も大成も、全員クビ・交代。ひょっとすると、ゼネコンも交代になるかもしれない。
 なおそうなると、”神業”のはずの埋め戻し工事はパー、埋め戻し土は産廃処理場行だ。
*サンケイなどベタ褒め。
(16/11/26)