宇宙と地球科学の話題

技術士(応用理学) 横井和夫


 これはつくばの防災科研に設置された超大型の断層模擬実験装置。簡単に言えば、超大型一面剪断試験機。上の反力梁と試験ピースの間に並べられているのは垂直応力用ジャッキ。これで試験体に垂直応力を加える。左横の赤いシリンダーは水平応力用ジャッキ。これで試験体を水平方向に剪断する。この時2枚の試験体の境界(断層に見立てる)周辺での挙動を調べようとしたいのだろう。
 色々突っ込みどころもあるが、それはおいといて、同じやるなら研究者が観察できるとような窓とか、あるいは試験体に温度センサーや電位差計をとりつけて、力学だけでなく別の面からのアプローチが可能にしたほうが良い。
(23/09/15)

 これは日本の海洋開発研究機構が日本近海で採掘に成功したニッケル濃集層の一部。黒い部分がニッケル等のレアメタルを濃集している部分。採掘池は小笠原南方の、海台と呼ばれる海底面が隆起した地形の頂部。海山ではありません。海台の頂部にこのような濃集層が分布しているらしい。
 海台はプレートの湧き出し口に出来た玄武岩プリュームで、これがプレートに乗って移動する。小笠原では「小笠原海台」と呼ばれる海台が日本海溝でフィリピン海プレートに衝突する。この様子はGoogleEarthでも見ることができます。海台の上には海底火山が一列に並んでいるのが特徴的です。今回採取できたニッケル濃集層はそこからもたらされたものでしょうか?
(23/07/17)

 先日、ネットニュースで月の裏側に大量の「グラナイト」が見つかった、という報道。「グラナイト」とは何者かというと花崗岩のことだ。通常花崗岩は英語ではグラニットと呼ぶ。いつから「グラナイト」になったのか?
 「グラナイト」といえば、昔々学生時代、古生物学の講義で、岩石・鉱物・化石の命名法について、岩石・鉱物は語尾にギリシャ語の石(アイト)を付けて、〇〇アイトと命名するのが国際基準だ。だったらグラニットはグラナイトか、と市川浩一郎先生が冗談めかして話していたのが思い出された。それはどうでもよいが、月の裏側で発見された花崗岩もどきの岩石は、本当に花崗岩か?これには近代地質学における永い永い歴史がある。
 花崗岩の成因説には、古くは「変成説」と「火成説」の二つがあった。前者はヨーロッパ特に北欧で発展し有力な説となっていた。これは既存の堆積岩が造構運動で中のケイ酸塩物質が絞りだされ、それが結晶して花崗岩になるというもの。北欧には先カンブリア紀の片麻岩が広く分布する。これは堆積岩の構造を留めているものが多いので、堆積岩ー(変成作用)ー片麻岩ー花崗岩というプロセスが思い浮かぶのか?「変成論」者の代表がスウェーデンのエスコラだが、岩石学の講義で習っても、ペダンテイック過ぎて、さっぱりわからなかった。
 これに対するのが20世紀に入って、岩石実験結果を基にアメリカのボーエンが主張したのが「火成論」である。変成論者も玄武岩などの火山岩がマグマ由来は認めていたが、マグマは玄武岩マグマ一種で、これの結晶分化の過程で様々な岩石に分かれる。安山岩も花崗岩もその一つである、と主張する。
 一方火成論者は玄武岩マグマ以外に花崗岩マグマがあり、これが花崗岩の素だと主張する。その後地質調査の規模が全世界的に広がるとともに、大陸地殻と海洋近くの差、更にはプレート論の発展で、両者の並存が常識となっている。
 問題は花崗岩をあまりよく見たことがない者が、見かけだけ或いは鉱物組成だけで、何でも花崗岩にしてしまうことである。花崗岩には花崗岩マグマ由来の”ホンモノ”の花崗岩と、玄武岩の結晶分化の過程で出来た”花崗岩もどき”がある。前者はバソリスと呼ばれる巨大岩体やプルートンと呼ばれる貫入岩体を作る。完晶質で粒径も揃い、何よりも周辺岩体との接触が貫入で熱変質を与えている。
 後者は少し難しい。玄武岩マグマが出来ると、鉄やマグネシウムのような重い物質は下に沈み、蛇紋岩や橄欖岩、閃緑岩などの超苦鉄質~苦鉄質岩を、ケイ素アルミニウムなどの軽い物質は上昇して花崗岩もどきの硅長質岩石を作る。岩相は少し訓練しなければ見分けられない。日本では舞鶴構造帯とか飛騨外縁帯などのプレート沈み込み帯に異地性ブロックとしてみられる。ブロックといっても大きいものは直径が数100m以上数㎞に及ぶものもあるから、独立岩体と見間違うのも止むを得ない。周辺の岩石とは堆積接触、つまり熱変質や断層を伴わないことが特徴である。
 さて問題の月の裏側の”花崗岩もどき”だが、現在の宇宙論では、月はおよそ35億年前に地球から分離した天体と考えられている。その組成は主に玄武岩である。これはおよそ75年前、アポロ13号が月から持ち帰った岩石からも証明されている。
 ということで、筆者は今回見つかった月の裏側の”花崗岩もどき”グラナイトも、玄武岩の結晶分化の結果の可能性の方が高いと考えている。但し”グラナイト”が見つかった火口周辺では、温度が周囲より10゜C高いという情報もある。この熱源がウランなどの放射性物質の懐変熱か、35億年前の噴火の残熱かで、別の結論になるかもしれない。
(23/07/19)

 観光潜水艇「タイタン」の救出が絶望視されています。クルーは5人。パイロットが一人であとの4人はパキスタン人親子等のリッチ。パイロットは気の毒だが、後の4人はどうせ生きていてもろくなことはしないだろうからどうでもよい。運営のオーシャンゲート社は当然保険に入っているだろうから、経営に問題は無いと云いたいだろうが、そうはいかない。何故なら、「タイタン」の製造に拘わったエンジニアからは、「タイタンには安全上の欠陥があり、その改善をオーナーに求めたが、拒否された」という証言が出ている。これを基に遺族からは、多分天文学的損害賠償を求められるだろうし、保険会社からも保険金支払いを拒否される可能性がある。更に刑事訴追の可能性も考えられる。
 オーシャンゲート社というのは90年代冷戦構造崩壊とともに、雨後の竹の子の様に出来たベンチャービジネスの一つだろう。この手の企業に共通するのは、短期利益優先で長期的なリスクに目をつぶることである。それで上手くいくこともあるが、逆のケースもある。今回のタイタン事件はその一つ。我が国で今風力発電やメガソーラー計画が、地元の反対で頓挫しているケースが多いのもその一例である。
 オーシャンゲートは深海ビジネスに乗り出したが、その逆が宇宙ビジネスである。宇宙ビジネスと深海ビジネスの安全上の違いは、宇宙の場合は打ち上げ時と帰還時(大気圏再突入)に最もリスクが高く、その間軌道上に乗っている間はリスクは低い。無論宇宙デブリの衝突とか不測の事態はあるが、それでも地上との交信は可能だし、地上からの遠隔操作も出来る。
 一方深海はその逆で、潜水の開始、引き上げ時は何の問題もないが、問題は深海潜水中である。数1000mの深海では、事実上地上との交信は不可能である。パイロットはジャイロと深度計だけで、自分の位置を決めて操作しなくてはならない。VLF通信帯を使えば別だが、これは今のところ米軍が独占している。日本国内にも何か所かある「象の檻」と呼ばれる施設がそれである。運営側はこれを自前で設置しなくてはならない。
 同じような事故は今後宇宙でも起きるかもしれない。それでもめげず更にビジネスを追及するか、あまりの負担に耐えかねてビジネスそのものが消えてしまうか、の分かれ目だ。H3ロケットの打ち上げ失敗を見ても、宇宙にしろ深海にしろ、これを「ビジネスに結びつけるには、まだまだ越えなけれなならないハードルがある、ということだ。
 なお極地ビジネスには、他に南極とヒマラヤがある。南極は規制が厳しいので、一般人が危険に遭遇するチャンスは殆どないが、ヒマラヤは別だ。エベレストには毎年2000人位が都庁を目指すが、登頂出来るのはその内の1割り程度。サウスコルの先の所謂デスゾーンでは、今も100人程度の遭難者が出ている。極地はやっぱり極地なのである。
(23/06/23)

構造地質学の講義です。これはスイスアルプスのある露頭。画面中央に水平に赤線が引いてあります。赤線の下の地層(A層)には右下に傾斜する構造が見えますが、上の地層(B層)にはそれがない。両者は全く別物となります。この時この構造の解釈には次の二つがあります。
1)A層の年代がB層より古い場合:A層の堆積とB層の形成間に大きなタイムギャップがあること、A層の地層が大きく傾斜していることから、これは「傾斜不整合」と呼ばれます。B層形成前におおきな地殻変動があったことを示します。赤線はその不整合面を表す。
2)B層の年代がA層より古い場合:見かけ上、上位の地層が上に重なるのだから「地層累重の法則」に反する。この場合は、別のところにあった古い地層が新しい地層の上に乗り上げた結果と考えられます。これを低角度衝上断層(ナップ)と呼びます。赤線はその断層面です。
 この露頭では放射年代測定等により、A層は古第三紀の堆積岩、B層はペルム紀の火山岩と確定されています。従って、回答は赤線は「ナップ」となります。
 なおこのようなことが分かってきたのは、やはりプレート論の発展、放射年代測定や、放散虫化石年代層序の進歩が大きい。
(23/05/29)



二つの銀河が衝突する映像。右下の銀河の中心部で約6000年前に超新星爆発が起こりました。右下の四角の中心の、周りより光っている部分が超新星です。
(22/08/18)


 サハラ砂漠で発見された火星由来の「火星隕石」。何故火星由来といえるのかよくわかりませんがそうなんでしょう。この岩石は一様なものではなく、灰白色の基質の中に点々と様々な鉱物や岩石の破片が含まれています。岩石が何かは写真からだけではわかりません。灰白色の基質はおそらく二酸化ケイ素が高温で溶けて固まったガラスでしょう。つまりガラス固化体です。
 地球上のガラス固化体は中部アフリカコンゴの、「オクロ天然原子炉」が有名ですが、日本でも兵庫県は三田市の山中に小さなブロックがあります。
 それはともかく、このような火山性角礫岩があるということは、火星でも数10億年昔に活発な火山活動があったということを意味します。では火星を作る岩石が何故宇宙に飛び出して隕石になったのでしょうか?それはその爆発がとてつもなく大きかったことと、火星の重力が小さかったためでしょう。
(22/08/09)


 三重県から産廃土処分について操業停止を受けた三重県萱島の橄欖岩採石場。廃土処分については、行政意図業者で勝手にやってくれればよいので、筆者が興味を持つのは、この橄欖岩が何者かである。
 紀伊半島中東部、鳥羽地域の秩父累帯南帯に幾つか蛇紋岩体が分布する。これをマグマからの固体貫入という人もいるが、筆者は異地成のブロックと考えている。この手の怪しい岩体は他にもあって、例えば舞鶴構造体中の大江山蛇紋岩。或いは日本アルプス黒部、欅平から祖母谷温泉にかけて分布する「名剣岩体」など。
(22/06/24)

 これは凍結期の諏訪湖に見られる「窯穴」という現象。湖面の氷の表面に、こういう穴が何か所か、ぽっかり空くらしい。筆者はこういうものがあるとは今まで知らなかった。今回、調査の結果湖底から沸く高温のメタンの所為らしい。それも湖底の泥土からではなく。地下深部に由来する。そうなると面白い。
 諏訪湖地下に天然ガス田があるということになる。丁度諏訪湖はフォッサマグナの西端にある。フオッサマグナには中新世以降の堆積物が厚く・・・場所によっては数1000m以上堆積している。つまり窯穴を作るメタンは、フオッサマグナの中新統に由来するのだ。
 つまり中部地方から関東平野にかけてのフオッサマグナ地帯には、メタンガスだけでなくシェールオイルやシェールガスが賦存している可能性が考えられる。自前のガス田を持つということは、武器と同じぐらい安全保障や外交で有利に働く。期待できますねえ。只問題はその意義を理解している政治家が、今の日本にどれだけいるか、だ。
(22/06/16)

 小惑星探査機ハヤブサ2が小惑星「りゅうぐう」から持ち帰った岩石片から複数のアミノ酸が検出されたという報道。これを聞いて思い出したのは、今から半世紀以上前、筆者が未だ大阪市立大学理学部三回生だった時、教室のセミナーで、市原優子先生が六甲の花崗岩から有機物を検出したと報告したこと。教室の全員が「まさか、何かの間違いだろう」と信用しない。しかし優子先生は「分析には自信があります!」と云って譲らない。この時筆者はなんとなく「これが本当なら、生命の起源を書き直す大発見かもしれない」という気がした。つまり地球外生命の可能性だ。
 それから20年位経つと、花崗岩や火山岩から有機物が検出されるのは当たり前になって、国際学会まで出来た。30年程前か、スウェーデンのある地質学者が「スウェーデンにも油田がある」と言い出して*、一般から資金を集めて・・・さすがに発想がバカバカしすぎて政府の補助金は貰えなかったのだろう・・・数1000mかのボーリングをやった処、石油は出なかったが、僅かな有機成分が得られた、という報道があった。
 「りゅうぐう」からのアミノ酸は、これまでの人に信用されなかったり、馬鹿にされたりした先人の苦労を補うものになるだろう。
*スウェーデンの大部分を作るのは、当時誰も有機物が含まれるとは考えなかった先カンブリア紀の花崗岩や片麻岩。
(22/06/07)


 NASAの宇宙探査車サービアランスが撮影した火星の岩盤露頭。この露頭を構成する岩石を巡って、堆積岩説と火成岩の冷却構造説が侃々諤々だったらしい。なんとなく19世紀はじめ、イギリスの近代地質学揺籃期に起こった、玄武岩の水成岩説vs火成岩説の論争を思い起こします。
 結論は、200年前のイギリスと同様、火成岩冷却構造説で決着がついたらしい。但し写真をよく見ると、この露頭は上下2層に分かれ、上部には水平構造が顕著だが、その下は全体として向かって左傾斜だが、複雑な褶曲構造を伴う。こういうのは地質学的にはいわゆる「傾斜不整合」で、その間に何らかの変動があったことを意味する。地球なら、直ぐナントカ変動と名前がついてしまう。
(22/02/03)


 これはNASAの火星探査車がサンプル採取に成功した火星の岩石。画面を拡大してよく見ると分かりますが、表面に定方向に配列した筋状の構造が発達しています。この種の特徴を持つ岩石は、地球上では「結晶片岩」と呼ばれます。
 結晶片岩は既存の岩石(原岩)が低温高圧の力を受けたときに出来る広域変成岩です。所謂変動帯と呼ばれる場所に作られます。原岩が砂岩や泥岩などの砕屑岩であれば、それはプレートとプレートとの衝突場の可能性が大きい。
 もしこの岩石の原岩が砕屑岩なら、火星にもプレートテクトニクスがあって、海洋プレートつまり大洋があったことになります。なお表面に青色の鉱物が析出していますがこれは何でしょう?緑泥石のような変質鉱物なら、熱水活動があったことが推測されます。つまり火星にも温泉があったことになる。となれば火星にも生命があった、あるいは今も生存している可能性があります。
 この岩石が地球に持ち帰られれば、放射年代が測定でき、生命の痕跡も見つかるもしれないので、火星だけでなく地球の形成に関しても貴重なデータが得られるでしょう。興味尽きませんねえ。
(21/09/04)


 これはオーストラリア東方で発見された8番目の大陸と云われるジーランデイア・・・赤線で囲まれた領域。中央を斜めに走る線がアルパイン断層で、東の太平洋プレートと西のオーストラリアプレートとの境界断層。これを境にジーランデイア大陸は北と南に二分され、見かけ上北の部分が北東にずれているから、この断層は右ズレ活断層と考えられます。
 果たしてジーランデイアが大陸と云えるか?大陸と云えるかどうかは地質学的には結構ややこしいハードルがある。例えば今のニュージランドに花崗岩質基盤が分布するか、安山岩質の火山活動があるか、地震の発生機構はどうか、とかである。
 実は日本近海にも大陸の候補地がある。それは小笠原諸島の東側である。
(21/08/22)


 中国青海省の炭鉱で落盤事故が起こりました。画面右下に重機が動いていますが、これは救援用の掘削機など。このあたりが落盤地点と思われます。元々露天掘りでやっていたが、掘削範囲が大きくなりすぎたので坑道掘削に切り替えたのでしょう。よくある話です。中国では炭鉱の落盤事故がよく起こりますが、坑道の補強・支保に問題があるのでしょう。落盤地点背後の崖面にほぼ垂直に立った黒い帯が見えますが、おそらくこれが炭層と思われます。非常に急な構造で、付加体或いは内陸変動帯。
 昔、市川浩一郎先生の構造地質学の講義で、中国大陸は巨大安定陸塊が幾つかあって、それぞれの境界に厚く陸成の地層が堆積している。これを中国人は陸向斜と呼んでいる。だったら、海に堆積する地向斜は海向斜か?なんて馬鹿な話をしていました。この炭鉱地帯はその陸向斜に相当するのでしょう。
(21/08/19)

 これは「はやぶさ2」が持ち帰った「りゅうぐう」表面の岩石サンプル。どんな岩石か、写真だけではわかりません。常識的には地球上の岩石では橄欖岩ー輝岩の系列に属する超塩基性岩ではないかと思われます。もし玄武岩だったりすると大問題。小惑星にも火山活動があったことになる。
 これを拡大してよく見ると、小さい白い斑晶が見えます。これは何でしょう?斜長石の結晶でしょうか?これらの鉱物の組み合わせが分かれば地質-温度圧力計を使って、この岩石が出来た温度ー圧力環境が推定できます。
(20/12/25)

 これは最近発表されたテチス海西部の古地図。パンゲアがほぼ分裂初期の段階なので、ジュラ紀末から白亜紀初。図の中央は古アドリア大陸と呼ばれる大陸地塊。一つのマイクロプレート。これの左端の緑の部分(陸地)が現在のイタリア半島の東半分に相当する。ジュラ紀末からこの大陸が北上し、白亜紀から古第三紀にかけてヨーロッパに衝突した。
 イタリア半島は中央のアペニン山脈で地形上東西二つに分かれるが、地質的にも分かれる。マカロニウェスタンはイタリアで撮影されたが、筆者が気にかかっていたのが、しばしば画面に激しい褶曲構造の露頭が現れる。これはプレート合体部に出来る付加体の特徴。つまり撮影現場が大規模な地殻変動帯ということを意味する。ハリウッドウエスタンの舞台はテキサス周辺であることが多いが、あの辺りは安定陸隗で褶曲構造は形成されない。
 この図面で何故マカロニウェスタンに褶曲構造が現れるのかが分かった。マカロニウェスタンはプレートの衝突現場で撮影されたのである。
(20/10/24)

 ’20ノーベル物理学賞三人の一人ペンローズというのはあのペンローズのことか?天文ファンでブラックホール好きなら誰でも知っている名前で、ブラックホールの解説書ならいつも出てくる天才だ。彼が未だノーベル賞を取っていなかった方が驚きだ。
 それはともかく筆者が問題にするのは、ノーベル賞に対するマスコミの反応である。今年は日本人受賞者はなかった。そうするとマスコミの扱いは途端に冷淡になる。特にひどいのはテレビ、中でも民放はノーベル賞の”ノ”の字も出てこない。日本人ノーベル賞が出ると天地がひっくり返らんばかりの大騒ぎをするくせにだ。これはオリンピックにも通じる。日本人がメダルを取った競技、あるいは取れそうな競技は熱心に中継するがそうでない競技はあっさりスルーする。
 つまりノーベル賞もオリンピックも日本人の頭の中では、単なる国威発揚アイテムになってしまっているのである。石原慎太郎は東京オリンピック誘致に当たって、オリンピックは国威発揚であると言い切った。国威発揚は一種の政治的行為である。つまり現代日本・・・少なくともマスコミの世界・・・ではノーベル賞に通じる学問研究も、オリンピックに通じるスポーツも全て政治に直結する。政治的効果のある分野は厚遇され、そうでない分野は切り捨てられる。
 何故かというと現代では経済も政治に組み込まれているから、経済効果のない行為は生産性がない、と判定されるからである。かくて学問もスポーツもそしてやがて芸術も政治的ツールとなり堕落するだろう。なおこういう社会的行為を全て政治の従属物とする考えは今に始まったわけではない。古くはナチスドイツ、その前にはスターリン時代のボリシェヴィキソ連がそうだった。そして両方とも滅亡した。
(20/10/09)

 これは何かと云えば、最近分かってきた地磁気変化分布。南米中東部から大西洋南部にかけて、地磁気低下の著しいゾーンがあることが分かります。私は以前から地磁気逆転はいきなり起こるのか、あるいは時間をかけてゆっくり起こるのか疑問だった。この地磁気低下は過去200年ぐらい前から起こっているようなので、その意味ではゆっくりだ。しかしそんなもの地質学的時間オーダーでは一瞬だ、と云われればその通り。
 ただし今回の研究結果は、地磁気逆転現象は地球全体が同時に起こるのではなく、ある場所から始まってそれが地球規模に広がっていくのではないか、という仮説を示唆する。これを支持する理論がプリュームテクトニクスである。
 図のような局所的地磁気低下は、その部分の地殻熱流量増大=地下温度上昇を意味する。こういう現象を作るのはマントルプリュームしかない。局所的地磁気減少は、その部分でのマントルプリュームが活発化していることを意味する。図ではそういう場所が南半球で少なくとも二か所あることが分かる。いずれは巨大な玄武岩の噴出が予想される。但し早くて数万年後。そういえば南米南部パタゴニア地方には、巨大な玄武岩台地が広がっている。
(20/06/05)

 地球が平面だ、という信念を証明しようとして打ち上げたが、失敗してしまったロケット。彼だけでなく、世の中には地球平面説を信じる人は多い。日本にもファンが多いラヴクラフトのクトウルフホラーにも、これに基づく作品がある。SFホラー小説にはもってこいの話題。
 ZOZOの前沢はン100億円を投じて宇宙に行きたい、その目的は地球が丸いことをこの目で確かめたいからだそうだ。地球が平面かどうかは、わざわざロケットに乗るまでもありません。関東なら江の島、関西なら紀伊大島のような海に突き出た高台から海を眺めれば、必ず水平線が湾曲して見える。JRならン1000円で見れる。これが地球が丸い証拠です。要するに、前沢の頭が悪いだけです。
 地球平面説と並んで多いのが、地球内部空洞説です。これもロストワールドなどのような19世紀古典SF文学を作った。これを唱えたのは他でもない19世紀後半の地球物理学者。何故彼らが地球内部空洞説を唱えたのか?それは続編
(20/02/24)

 旭化成特別フェロー吉野氏のノーベル化学賞が決って御同慶の至り。これで京大は又ハクが付いた。受賞理由はリチウムイオン電池の開発だ。これは今どこでも使われているが欠点は熱を持つということだ。誰でもPCを動かしてると底が熱くなるのを知っているが、これはリチウムイオンの発熱作用。熱を出すということはそれだけエネルギーを無駄遣いしているということなので、この分野にはまだまだ改良の余地があるということを意味している。
 リチウムは元素だから人工的に作ることはできない。だから天然物質から抽出するしかない。現在最もよく使われているのが、塩水からの抽出である。どういうわけかリチウムは高濃度塩水との相性が良くて、リチウム生産はこれを対象に陸地での塩湖開発がよく行われる。その一例がアタカマ砂漠のリチウム工場で見られる。このように大規模なリチウム開発は、大きな環境破壊を伴うことは知っておいた方が良い。
 又、リチウム利権を巡って国際紛争が発生することもある。かつて90代日本企業がボリヴィアでのリチウム開発を計画したところ、韓国(イーミョンバク政権)が横やりを入れてきて権利をもぎ取ってしまった。ところが韓国はそれをほったらかしにしていたので、ボリヴィア政府が怒って今揉めている最中だ。
 非常に塩分濃度が高い水があるところ、そこにはリチウムが眠っていると考えてよい。例えば有馬温泉中心部には高濃度塩水が湧出するが、これにも高濃度のリチウムが存在することはズーット昔から分かっていた。知らぬは持ち主の神戸市と兵庫県だけだ。
 なお、日本列島を取り巻く深い海、中でも海溝やトラフと云われる部分の深層海底水はリチウムを多く含む。見方を変えれば地震の巣が宝の山に化けるのだ。リチウム産業の今後の課題はノーベル賞でうかれているのではなく、開発時の環境負荷の低減、それと電池廃棄後処理法の確立だ。なお科学者という生物は今自分が対象としているものだけを考えて、その前後のことを考えない癖がある。核とプラスチックがその典型だ。おそらく太陽光発電パネルがその後を追うだろう。これらは人類に大きな恩恵を与えたが、今人類はその後始末に右往左往している。リチウムもその轍を踏まないように気を付けること。
(19/10/10)

 第四紀の時代指標の一つとなるはずのチバニアン指定が、俄かに怪しくなってきました。原因は模式地指定に異議を唱える団体が、模式地周辺の土地を買収し、審査委員の立ち入りを拒否したから。張本人は茨城大名誉教授の楡井 久。
 筆者は楡井の言い分が正しいかどうか評価する立場にないし、そもそも第四紀の細かい話には興味はない。但し以前、極地研ら研究グループは厄介なのを敵に回したといったことはある。それが的中したようだ。こうなることを研究グループは事前に予測できなかったのでしょうか?
 問題は楡井をプロジェクトから無視したことで、初めから、彼を研究グループに取り込んでおけば良かったのだ。「毒をもって毒を制する」である。かつて福田赳夫は政敵大平正芳を大蔵大臣に迎え、消費税問題を初めさせた。これぐらいの度量で接すれば楡井など簡単なものだ。地質屋など買収しようと思えば居酒屋の2、3軒で済む。赤坂のクラブなんぞに連れていけば、もう有頂天だ。
 ところが研究グループは楡井を外した理由は知らないが、あんなの中に入れたら面倒でたまらん、てなところではあるまいか。最近委員会などを仲間内同志で固めるケースが多い。典型が現在のアベ内閣である。閣僚・官邸をお友達・側近で固め、批判者は遠ざける。トップがこれだから、末端がそうなるのは仕方ないが、これこそが亡国の始まり。
(19/06/07)

 報道によれば、科学論文の引用回数が到頭、中国がアメリカに並び、日本はその1/3に留まるという結果が出た。それもここ数年習政権以来著しくなっている。中国の目的は一帯一路とそれにリンクする2025建設、更には1949中国解放100周年に向けて、世界支配を事実化することである。そのためには手段は択ばない。それに比べ日本の科学技術政策は目先だけで、目標も一貫性もないその場しのぎの成り行き任せ。あるのは文部官僚の天下り探しだけだ。
 論文数が少ないのは別に各研究者の研究能力が低下しているわけではない。問題は文部科学行政なのだ。ただでさえ年々減少する科学予算が「選択と集中」の名のもとに、特定の巨大科学に集中する結果、周辺の基礎研究に予算が回らなくなっている。これは必然的に研究者の層を薄くする。又、文部官僚は文系出身が多いせいかどうか知らないが、理系研究者の苦手な大量書類づくりを強制し、更にそれを複雑かつ難解にする。これではとてもじゃないが研究や論文を書く余裕がない、と某大阪市立大学名誉教授がぼやいていた。
 本当はマスコミがこういう研究の末端を取材し、問題点を取り上げるべきなのだが、アベの陰謀に囚われて、やれノーベル賞級だなどと綺麗ごとばかり取り上げる。これが最大の問題か。
(19/05/07)


 
  始めて火星で何らかの振動を観測したNASAの火星探査船。果たして地(火)震かという話になる。筆者は随分前、火星探査船キュリオシテイーの映像で、火星表面の岩石に規則的な割れ目があることから、果たして星にもプレートがあったのか?と思ったことがある。残念ながらその時の記事は・・・PC内の何処かにあると思うが・・・何処に行ったのかわからない。
 プレートはともかく地下で振動があるということは、未だ火星にも熱活動が残っているということで、表面深く水がある可能性が高い。将来の人類の火星移住も夢ではない。
 このプロジェクトで進んでいるのはアメリカだが、最近中国が乗り出してきた。それに比べ我が日本は?
(19/04/24)
   上はこの程島根県津和野で発見された25億年前の岩石。岩石は飛騨片麻岩によく似た花崗片麻岩。今のところ日本最古とされる。おそらくは飛騨片麻岩の一部と思われます。
 山陰地方では従来飛騨-隠岐テレーンの南限が曖昧だった。この岩石の発見で、その南限と南の地質体との関係がより明確になることが期待されます。
 下は筆者が持っている隠岐片麻岩。岩石は黒雲母片状ホルンフェルス。原岩は海洋プレートが大陸プレートに沈み込むところに出来る”オリストストローム”と呼ばれる泥岩や砂岩を主とする雑多な岩石の集合体。暗色部が泥岩で、白っぽい帯は砂岩が石英に変化した部分。それらが最初低温高圧変成作用を受け、更に熱変質を受けたと考えられます。又全体に鉱化作用を受けているので、おそらく中新世の火山活動の影響も受けていたかもしれません。体積は元の状態から数分の一ぐらいまで圧縮されている。年代は分かりませんが、少なくともン憶年はいくでしょう。上の片麻岩が見つかるまでは、これが日本最古と考えられていた。
(19/03/30) 
 

    JAXAが打ち上げた「はやぶさ2」が無事朱惑星「りゅうぐう」に着陸しました。これで世間は日本の宇宙技術の高さを証明できた、と大喜びでしょう。しかし宇宙技術の高さを証明するだけなら、わざわざ小惑星まで行く必要はない。ハヤブサ2の意義はそれだけではない。
 我々が住んでいる地球は外側から、地殻、マントル、核からなっていることは、中学校の理科でも習っているはずです。地殻は普段我々が住んでいる場所だから、それを作っている物質(=岩石)はみんなよく見えるしおなじみです。
 マントル物質は一般に地下数10㎞以下に分布するから、普段見ることはできません。しかしアルプスやヒマラヤ、そして日本などの変動帯では、その中のメランジという部分、あるいは地下深部からの貫入岩の中に橄欖岩とか蛇紋岩という形で見ることができます。
 筆者は今から10数年前、岡山は倉敷方面を旅行したおり、倉敷の観光街のなかにある岩石・鉱物専門土産物屋の店頭で、トルマリンなる岩石をみた。本当にトルマリンかどうかは分からないが、その重さ質感からこれはマントル物質に間違いないと確信した。つまり、マントル物質は意外に近いところ(例えば倉敷の土産物屋、あるいは谷川岳)でもみられるのである。
 しかし核の物質は、残念ながら直接見ることはできない。地震波その他からおそらくこうだろうという予測はついてるが、実態ではない。ハヤブサ2が持ち帰るであろう「りゅうぐう」の岩石は、その核の物質、いかえれば地球の根本物質と考えられるのだ。
 こえの分析が進めば、従来n地震波解析の精度が上がり、更に日本のような変動帯での地殻構造解析の精度があがる。ひいては従来不明確だった部分の解明にもつながる。
 ハヤブサ2の打ち上げは、単にロケットの話ではなく、我々の足元の話にもつながっているのだ。
(19/02/22)

  東海沖のフィリピン海プレートアスペリテイ掘削のため出港する深海探査船「ちきゅう」。残念ながら今回の掘削・・・予定は海面下7000m・・・は岩盤状況が悪く掘削不能となりました。
 地山の変化が複雑なことと、孔壁崩壊が甚だしかったことが原因に挙げられています。岩盤状態はいわゆるザク層で、破砕された蛇紋岩か蛇紋岩化した玄武岩又は橄欖岩ではないかと想像される。破砕帯が高角の場合、垂直ボーリングではコア落失が多くなるのでうまくいかない。筆者が昔作った三重管チューブを使うとか、思い切って斜めボーリングというのも手だ。但しジャミングを食らうリスクは高く、その場合上手くドリルパイプを回収できなければ、ン千万がパーだ。
(19/02/09)