カントー橋崩落・・・・これもリストラのやりすぎか

 これはベトナム向け日本のODAで建設途中のカントー橋。先日(09/27)、突然桁は崩壊しました。この橋は、中央に斜張橋があり、その前後に高架橋が接続するという形式を採っています。施工は大成・鹿島・新日鐵JV。設計・施工管理は日本工営・長大JV。100%日本製です。田中真紀子が外務大臣をクビになって、後任が川口順子。その時に発表されたのが、ODAのアンタイドローン廃止。つまり、国連援助でも政府間援助でも、日本政府が資金を出している事業は、日本企業のひも付きだということ。日本保守派が目の敵にしている対中ODAでも、計画・受注するのは日本企業だから、無料で中国に金をくれてやっているわけではない。ODA予算はちゃんと日本企業に(そして自民党に)、還流するシステムが出来上がっているのです。つまり対外ODAは、国内GDPを押し上げる要素となっている(かつての地方公共事業が、形を変えて海外にばらまかれていると思えばよい)。それを判っていない連中が多すぎる。このカントー橋も、そういうシステムの中で建設されているのでしょう。
 さて、それは別にして最初見た写真では、何となく斜張橋の主塔から張り出している桁で落下したように見えたので、ケーブルが切れたのか、と思ったのだが、上の写真では高架部の桁の落下です。高架部は現場打ちPC橋。原因はコンクリートの強度が発現する前に、何らかの原因でサポートが倒壊し、それにつれて桁が落下したのでしょう。この種の事故は、日本でもかつて幾らでもあったので、別に珍しくはありませんが、特徴的なのは、数スパンが同時に落下していることです。一番手前はよく判らないが、ここも落下しているとすると、3スパンが同時に落下している。これは、なかなか珍しい。前日から雨が降っていたから、などという報道もあったが、それは関係は無いだろう。写真を見るとおり、地面に水が溜まっている様子はない。地下水位が上昇すると、支持力が低下する地盤も無くはないが、3スパンが同時に低下するような状態は考えがたい。PC橋だから、3スパン同時に緊張を懸けたのかもしれない。その時に何処か一カ所で、力のバランスが崩れるとそれが次々と伝播し、全体の倒壊に繋がる。橋脚が真っ直ぐ立っているから、倒壊の原因は上部工の施工にあると考えたほうが良いでしょう。何故こういう事故が発生したかと言うと、リストラのやりすぎで、施工JVの中に、PC工事が出来るベテランが減ってしまっているからではないでしょうか?人災か?
 なお、この種の事故は、国内ならJVがあちこちに手を回して、有耶無耶にしてしまう(少なくとも責任は上には行かないようにする)ケースが多いが、現地はベトナムだ。社会主義国家だから、そんな甘い話しでは済まない。損害復旧はJV負担。死傷者が出ているから、JVの中から逮捕者が出る可能性はあります。

 07/10/31テレ朝報道ステーションでこの事故が取り上げられています。他のテレビ局はことの重大性に拘わらず知らん顔。政府も外務省も知らん顔。こんなことだから、東シナ海で中国が天然ガス開発をはじめても、後からあたふた大慌てして、国際的に大恥をかかなくてはならないのです。さて、テレビを見ていると、崩壊前のカントー橋高架部の映像がありました。それを見ていると、橋桁は単純桁。3スパンを一体で作るものではない。事故原因は支保工(アナウンサ−や古館がシホウコウと発音していたのが気になりましたが)の強度不足ということらしい。映像では支保工は1スパンあたり中央一基のみ。日本でそんなことやってますかね。施工だけでなく、支保工設計まで遡って追求される可能性が出てきます。事故の半年ほど前に、日本の施工監理員から「支保工の強度が不足している」という報告書が出ているが、それが無視されているというのがテレ朝取材の目玉。果たして、設計管理JVはこれをどう解決するのか?又、仮設設計は施工JVの責任だが、設計コンサルタントもこれをチェックする義務がある。果たして責任の行方は如何に。これを誤ると、東南アジア全体へのODA戦略が狂ってくるのだ。
(07/11/05)


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