イタリア ラクイラ地震の震源

 とうとうイタリアの地震予知判定会は、業務上過失致死容疑で起訴されることになった。容疑は、以前から微少地震があったにも拘わらず、退避勧告を行わなかったため被害を拡大したことらしい。さてこの地震被害、最大の犯人はどの家も耐震構造になっていなかったことだ。町中が中世或いはローマ以来の煉瓦建築。市或いは国がもっと地震対策に真面目なら、被害は少なくて済んだかもしれない。いや、イタリア人に真面目を要求する事自体無理だろう。この話しの背後には、キリスト教以前のローマ或いはゲルマン起源の異教信仰がかいま見られる。又、この手の話しの背景は結構難しく、哲学的意味を持つケースもある。
 ヨーロッパ中近世史を特徴付けるものに、悪魔と反悪魔信仰がある。これらの信仰は、キリスト教以前のギリシア・ローマ文明が起源と考えられる。ローマによるキリスト教支配下により、これらの原始的信仰は表から姿を消したが、逆に人々の深層心理に深く根ざすことになった。映画「ゴッドファーザー」で繰り返されたイタリア人の祭りは、古いローマの祝祭に起源を持つものだろう。ヒトラーによるナチズムも、この種の原始信仰を起源とすることは顕かである。この原始信仰の特徴が、悪魔と魔術師である。人間と悪魔の関係を明らかにするのは難しいが、一般的には次ぎの様な図式が考えられる。
       人間ー魔術師ー悪魔
 さてそれぞれをつなぎ止めるバーは契約である。人間は魔術師と契約し、魔術師は悪魔と契約する。契約が上手く行けば、それぞれは莫大な利益が得られる。逆は逆である。ヨーロッパ中近世で、魔術師の役割を担ったのは、学者・医者・技術者・芸術家である。彼等は悪魔と契約を結び、優れた作品を作ったり未来を予測する方法を編み出した。しかし、それが失敗したとき彼等はどうなったか?悪魔の手先と見なされ、魔女裁判の対象となり、火刑となったのである。魔術師ガリレオはかろうじて助かったが、その前後に火あぶりになった魔術師の数は数えきれないだろう・・・なお、筆者自身、自分を魔術師と考えているので、アホな悪魔は近寄ってこないように。さて、地震学者(魔術師)を告発した検察官は何者か?キリスト教以降に発生した異端審問官の流れだろう。つまり、今のイタリアで残っているのは、中世以来の悪魔信仰なのである。
(11/05/26)

 イタリアで昨年起こったラクイラ地震が予知出来なかったとして、地震判定会メンバーに警察捜査の手が入ったらしい。日本でこんな事やったら、刑務所は地震学者だらけになってしまう。毎回毎回失敗しているから。ブラジルでは、井戸を掘って水が出ないと、業者とコンサルは逮捕されるらしい。なかなか、外国は厳しい。日本なんて天国みたいなものだ。
 地震予知研究もいい加減、事業仕分けの対象にした方がよいだろう。
(10/06/05)


 09/04/06 イタリア ラクイアの近くでM=6.3の地震が発生しました。これで明らかになったのは、イタリアの土木・建築のいい加減さ。決して真似をしてはいけません。第二次コイズミ内閣で石原ノブテルが国交大臣になった。その時の最大の関心事は、道路公団民営化。ノブテルが正義の味方、対する藤井総裁が悪代官の代表という図式。その時、サンプロで、ノブテルがイタリアに行った時の思いで話しとして、「イタリアの高速道路はこんなに安く出来るのに、日本の高速道路はなんでこんなに高いんだ」と語った。勿論聞き役はマスコミ芸者の田原総一郎。今回の地震で判ったのは、イタリアという国の、国家的手抜き工事。此処まで手抜きすれば、安くは出来る。

09/04/06 イタリア ラクイアの近くでM=6.3の地震が発生しました。震源は右の図赤印(USGS)で、ローマの東方約50q、震源深さは D=10qとされます。
 場所はアペニン山脈のほぼ中央。かつてハンニバルがローマを伺った場所の近くでしょう。
震源付近の地形です。アペニン山脈軸に斜交する、北東ー南西方向のリニアメントが、多数発達することが判ります。しかし、震源近く、目立った地質構造は見られません。
 もう少し近寄ってみましょう。震源の西約20qに、北北東ー南南西方向の、非常にはっきりしたリニアメントが見えます(黒線でマーク)。これは活断層と見て構わないように思えます。しかし、これと震源位置とは随分離れています。低角度のスラスト(ナップ)だとう人がいるかもしれません。しかし、そういう人は、学生向けの初級教科書をかじっただけの人です。深さを10q、水平距離を20qとすると、このナップの傾斜角は約25゜になります。このような低角度の断層が地表面で、このように直線のトレースをつくるわけが無いからです。
 震源を含む南半部には、北東落ちの見事なケスタが発達します。しかし、これは地震とは関係はありません。それとも、何処かの国と同じように、未知の活断層があったのでしょうか?
 そういえば、去年11月のパキスタン西部地震の震源も、地形から見られるリニアメントとは随分離れた場所でした。震源解析の問題でしょうか?
震源地付近に発達するケスタ。地層に平行に地表面地形が形成されていることが判ります。地層を作る白い岩石はおそらく凝灰岩でしょう。
 震源の北に見られる湖はダム湖です。左の写真はこのダム湖を作っている堰堤です。この堰堤はおそらくフィルタイプ。アースフィルかロックフィルかまでは判りません。しかし、堰堤の勾配が1:1.0位しかない。日本ならこの3倍の勾配を採る。
 イタリアは地震国らしいが、そんな国で、こんな急勾配のフィルダムを作って良いのでしょうか?おそらく地震時の検討はやっていないと思います。地震国で、ダムの設計に地震時の検討を省略すれば、手抜きです。この辺りにも、イタリア人らしいいい加減さが伺えます。
 このダムは、今度の地震で大丈夫だったのでしょうか?
地震後、倒壊した建物の写真です(毎日新聞04/07朝刊)。これを見る限り、耐震設計を施した形跡は伺えません。第一、壁にも梁にもまるっきり鉄筋が見られない。こんなに手を抜けば、そりゃ安く出来る。
 こういう点にもイタリア人らしい、いい加減さが見られます。

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