サンホセ鉱山救出作戦


 ボーリングにあまり詳しくない人達へ;サンホセ鉱山救出孔を掘削したアメリカ人が「どんな堅い岩でもほってやるぜ」とうそぶいていたので、堅い岩ほど掘りにくいと思っている人がいるかも知れません。しかし、これは間違いです。岩盤が堅いほど掘りやすく、一日当たり進行長も延びる。それは岩盤が堅ければ、孔壁の崩壊もなく、掘屑の量も少なくなる。安全でノーリツも上がる。岩盤が軟らかいと、孔壁が不安定になるので、崩壊しやすくなる。これを防ぐために、保孔菅を入れたり、セメンテーションをしたりと余計な作業が増える。これはトンネルでも同じことが云えます。
(10/10/24)


  
これはサンホセ鉱山事故当時の作業抗の状況です(10/18毎日新聞)。抗壁はゴツゴツしていますが、これはダイナマイトを使用した所為。日本のようにスムースブラステイングを使えば、もっと滑らかな抗壁になります。
  もっと重要な事は、無普請扁平断面で安定していること。これにロックボルトや吹きつけコンクリートのような補強工を摘要すれば、もっと大きな断面のトンネル掘削が可能になる。
 この写真を見て筆者の頭に閃いたのは、アンデス山脈横断トンネルです。
((10/10/18)

 サンホセ鉱山救出作戦の総工費が約16億円。意外に安かったなあというのが印象。世界に映像を発信し、その経済効果から見ると、16億円など屁みたいなもの。大統領支持率は上がるし、チリ政府は笑いが止まらない。33人に勲章を出したい位だろう。
 中国では炭坑の爆発や道路の落盤などの事故がひっきりなしに発生する。ここでわざと炭坑落盤事故を造り、それを政府と共産党が救出するなどという、ヤラセドラマが作られるかもしれませんねえ。
(10/10/15)


 チリ鉱山崩落事故で、坑道内部の映像がしばしば流されていますが、支保工も全くない無普請状態。水が出た形跡もないから、やりたい放題やってたみたいだ。鉱山なんてそんなものだといえばそのとおりだが、それでも日本ならもう少し丁寧にやってたと思う。地山がよっぽど良かったんでしょう。だから、救出孔の掘削も順調に進行。日本の地山じゃ、こうは簡単には行きませんよ。
 作業員を引き上げたのは中国製のクレーン。あの単純な巻き上げ装置。マスコミによっては、この中国製の性能が良かったなんてアホなことを云うのがいる(中国もそれを宣伝に使う可能性がある)。しかし、今の日本であんな原始的玩具を作るメーカーなどいない。日本メーカーが作るのは、東京スカイツリーのテッペンで動く、精度数pとか数oとかいうレベルのクレーンなのだ。
(10/10/14)


 サンホセ鉱山救出孔掘削に使われたボーリングマシン(ロイター)。中央斜めのシャフトが前後する事によって、スピンドルにスラストを加えるという珍しいフィード機構を採用しています。日本ではこのようなマシンは作っていないし(多分ベースが長くなるので、広いヤードが必要になるから、狭い日本では敬遠されたのだろう)、筆者も見たことがないので、後学の為にコピーを採っておきました。斜めの太い鋼管は、口元補強用のケーシングパイプ(CP)でしょう。日本なら先にCPを入れて置いてから、段落としして下段掘削になるのですが、文化の違いでしょうか。
(10/10/11)

 

 チリサンホセ鉱山の救出孔掘削は、今ある連絡孔をパイロットホールに使って下から上に切り広げるらしい。つまり、どうやらレイズドリルでやるみたいだ。筆者もこれは考えたのだが、切り広げに使うφ700oのクリスマスツリービットを、φ100o(実際にはφ380oに拡孔)の穴を使ってどうやって避難所まで搬入するのか、それが判らなくて黙っていました。一体どんな手を使うのか、興味深々です。クリスマスを一旦バラバラに分解して、連絡孔から搬入し、避難所で組み立てるのも手ですが、ベテランの機械工が必要です。
(10/08/30)


 ではレイズドリリングとはどういうものか。(株)鉱研工業の資料に従って説明してみましょう。まず小口径のパイロット孔(直径10pぐらい)を掘ります。下部坑道からリーミングビット(形からクリスマスツリービットと呼ばれる)を接続し、上部掘削機が回転しつつ引き上げることにより、大口径掘削を仕上げる。中間はステムロッドと云われる太めのパイプを使う。掘削ズリは掘削孔から下に排除される。基本的に掘削流体は使わない。



 これがレイズボーラーの一例。




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