ソウルテクノマート謎の上下動と低周波振動

横井技術士事務所


 現代の謎と思われたこの事件、原因はビル内にあったフィットネスクラブでの集団跳躍運動(要するにエアロビ) の所為と発表。実は数年前大阪でも同じような現象があった。大阪市福島区のある高層マンションで、ある時期から原因不明の振動が始まった。不安に感じた住民の訴えで調べてみると・・・誰が調べたか知らないが・・・、次のようなことが判った。このマンションから数q先に大阪ドーム球場がある。ドームでは夏になるとロックコンサートが行われる。このとき興奮した観客が手を叩いてジャンプする。ジャンプの時に地盤が振動する。この振動が低周波振動となって外部に伝わる。これがマンションの振動の原因となった。
 この現象が発生するには幾つかの条件が重なり合うことが必要である。
1)地盤の固有周期が低いことと、基礎が振動を伝えやすい構造になっていること
 大阪ドームの地盤は西大阪の典型的軟弱地盤であり、地下30〜40m位まで、軟弱な沖積層が堆積している。つまり、地盤の固有周期は十分低い。 又、ドーム球場はスタンドは支持層までクイを打っているが、グランドはそのままで、地表の振動が直接地盤に伝わる構造になっている。ここに音楽に合わせたジャンプが加わると、1〜0.1HZ前後の低周波振動が発生、地盤に伝達される。これはロックコンサートでもフイットネスクラブでも同じである。
2)発振源との距離
 低周波振動の特徴は(1)エネルギーがなかなか減衰しないため、遠距離まで到達する、(2)波長が長いため(波長が数10〜100数mに達する)発振源の近くや、小さい建物では、例え低周波振動に見舞われていても、全く感知されない。むしろ、発振源から数qくらい離れた遠距離で発生することが多い。理論的には波長λの(2n+1)/4倍の位置に発生する筈。つまり、場所によって振動が発生したりしなくなったりするのだ。
3)建物の固有振動数との関係
 仮に建物が上で挙げた位置にあっても、建物の大きさが低周波振動の波長より著しく小さかったり、建物の固有周期が振動のそれと著しく異なっておれば、波は建物を透過してしまうので、事実上低周波振動は建物に影響を及ぼさない。建物の大きさや固有周期が振動のそれに近かった場合に影響がでてくる。

 ところがフィットネスクラブは同じビル内にあった。従って、大阪ドームの例とは似ているが違っている。大阪ドームの場合、観客数は数万人の規模になる。彼等が発生したエネルギーは、確かに遠くのビルを揺るがすレベルになったかもしれない。しかしソウルの例はフイットネスクラブである。同時に数万人規模のエアロビなど何処でやるのでしょうか?通常のフイットネスクラブなどせいぜい数10から100数10人程度。これでは、とてもじゃないが低周波振動を起こせるエネルギーはない。
 では何が原因でしょうか?もう少し考えてみましょう。
1)建物の基礎に問題があった。 
 東京・大阪の下町など海岸地帯には新しい軟弱地盤が発達し、高速道路が縦横に走っている。その多くは連続高架橋で、上は自動車が走り回るから橋桁は常に振動している。この振動は橋脚に伝わり、更に基礎を介して地盤に伝わる。支持地盤の剛性が十分大きければ、上からの振動は地盤が吸収してしまうので問題はない。しかし地盤が軟弱であれば、地盤は逆に共振してもの凄く大きな振動を発生することがある。筆者は昔、仕事で京都府舞鶴市東舞鶴のある旅館に、暫く泊まっていたことがある。すると夜中に地震じゃないかと思われるような振動に見舞われる。何故かと良く見ていると、この旅館は国道29号の橋のたもとにある。この辺りは所謂溺れ谷で軟弱地盤である。大きな振動が発生するのは、決まって前の国道を大型トラックが通るとき。この橋は古くて(現在では立て替えられているが)基礎など、おそらく木クイか何かのいい加減なものだったのだろう。基礎構造が不十分な場合、上部からの振動が増幅される例である。
 この例に従えば、テクノマートビルの基礎も同じようないい加減なものだった、ということになる。しかし地上39Fのビルの基礎が、舞鶴の中古橋と同じだったとは考えられない。もしそうだとすると、異常振動以前に不等沈下を生じて、今頃はひっくり返っているはずだ。
2)エアロビによる空気圧振動。
 集団でエアロビをやると、その振動により床が撓み、室内空気が振動を起こすケースである。これも日本の例だが、40年程前、奈良県香芝町のある地区で低周波振動公害が発生した。その後、京都大学防災研究所の小林芳正助教授(当時)らの調査で、近くを通る西名阪道路香芝高架橋の空気圧振動によるものと判明した。本高架橋は、道路公団として近畿で最初のPC橋。強度が大きいから、従来のRCスラブに比べ桁を薄くしたり支間距離を大きく取れる。要するに経済性に優れている。しかし、桁を薄くすると撓みが大きくなる。更に、当時は今と違って橋脚はアメリカ式の薄い壁構造だった。この結果、上を自動車が通るたびに、桁と壁に挟まれた空間内の空気が圧縮・膨張を繰り返し、これが地盤に伝わって低周波振動公害を発生させた。これが空気圧振動である。この原因は、高架橋の構造設計に当たり、強度を優先し撓みを軽視した結果と考えられる。
 ソウルテクノマートでも、エアロビで床が撓むと、結果として室内に空気圧振動が発生する。これが壁や柱に伝わって、低周波振動を発生したと考えられる。梁の撓みは、曲げ剛性EIの逆数に比例する。ここで、Eは梁材のヤング率、Iは断面二次モーメントである。Eは材料を決めれば一定である。Iは梁の断面(例えば円形の場合は直径、正方形の場合は片長)の4乗に比例する。つまり断面を少し小さくしただけで、撓みはもの凄く大きくなる。仮に1F当たり、床の厚さを5p減らせば、50Fで2.5m浮かせられるから、1F分儲けられる。10pなら2F分だ。そこでビルのオーナーが、床を薄くする事を要求したとすれば、低周波振動の発生は十分考えられる。強度は鉄筋を増やすなり、高強度コンクリートを使えばクリアーできる。
 ということで、今回の振動は、エアロビによる空気圧振動の可能性が一番高いと考えられます。

 さてこの事件の顛末どうなるのでしょうか?大阪の場合、おそらくロックコンサート取りやめでカタを付けたでしょう。しかし、ソウルの場合、フィットネスクラブ側にも生活が懸かっているから、簡単に止めるわけにいかない。今後相当の訴訟闘争が発生するでしょう。他人に採ってはどうでも良いが。
 なお、昨今の電力不足に便乗して、様々な発電アイテムが紹介されています。その中にジャンプ発電というものがあった。これは床に圧電素子を埋め込み、コンサートやイベントでのジャンプで電気を発生させようというもの。アイデアとしてはあまりたいしたものではない。しかし、これを本気でやると、大阪ドームやソウルのような低周波公害を発生しかねないことに注意。
(11/07/21、22)

 ソウルテクノマートの異常振動について、韓国当局はいまだに原因不明の立場を崩していない。バカバカしくって話しにならない。原因は現代建設の手抜き工事に決まっているじゃないですか。今頃、現代がイー政権周辺に金を払って事件のもみ消しを計っているのです。イー政権はこれで次の選挙資金が入るからよしよし。しかし、いずれイーも政権を離れなくてはならない。その時、彼の両手に手錠が架かるだろう。
 韓国は日本政権の不安定さを憂うかもしれないが、韓国の現政権もいずれは良くて刑務所行き、下手すれば飛び込み自殺なんだから、まともに付き合う必要もない。
(11/07/06)

 この問題について、韓国側の見方は、建物の構造の問題、地盤沈下などの可能性を指摘していますが、ある教授は他の建物に被害が出ていないから、地盤沈下説を一蹴しています。しかし、これこそ可笑しい。例えば地下水過剰揚水による地盤沈下は、広域的に影響を及ぼす。地盤沈下量は、建物規模とは無関係に、地下水位低下量と圧密沈下層の厚さに比例する。しかし、構造物荷重による地盤沈下は、概ねその構造物の直下かその周辺に止まる。又、沈下量も構造物荷重に比例する。ソウルテクノマート周辺にあるビルに、これまで何もなかったと云って地盤沈下説を否定出来る根拠にはならない。
(11/07/06)

 ソウル高層ビル(テクノマートプライム棟)で、吐き気をもよおす様な上下振動が発生。地震による長周期振動の場合は水平動になるが、上下動というのが面妖。下部構造に問題があるのではないかという見方もある。
 ソウルの場合、基盤に花崗岩があるから、これに基礎グイを打設すれば問題はない筈。にも拘わらず上下動振動が発生したことは、基礎クイが岩盤に達していないか、基礎クイが途中で破断しているかである。両方とも可能性はあります。つまり人為ミスで謎でも何でもないのだ。韓国製品の場合よくあります。
(追記)このビル地上39Fで、屋上にプールがあることから制振工法を採っており、コンピューターが誤作動を起こしたとも思いましたが、実はこのビル、地震計が設置されていなかった。と言うことでこの可能性は消え去り、元に戻って、基礎や建物骨組み構造の破損・破断の可能性が濃厚になりました。別の情報によれば、去年の冬から振動が始まっていたらしい。揺れが段々大きくなってきているから、このビルは間もなく潰れるでしょう。早ければここ1週間か10日以内。揺れが始まったときから、各階床・壁にAE センサーを設置して観測しておれば、破壊が何処から発生し、何時潰れるかを予測する事は可能です。
(11/07/05)


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