高槻の混在岩

横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫


 高槻市芥川町のある民家の生け垣で、写真のような岩石を見つけました。この岩石は非常に難しい(珍しいという意味ではない)岩石で、簡単には説明出来ません。この岩石は種類の異なる様々なブロックが、雑多に集合して出来た岩石です。こういう岩石を混在岩(メランジ或いはオリストストローム)と呼びます。なお、縦に入っている筋は、採石場でこの岩石を採掘するときに入ったくさびの跡。採石場で採れた石だから、原価は殆どタダ。運搬費が懸かっただけ。


 下の図は上の写真を判りやすく模式化したものです。


 まず岩石の中身を見てみましょう。右上に灰色の大きなブロックがありますが(Ss)、これはグレイワッケという砂岩の一種です。これは大陸棚縁辺の大陸斜面で、海底地すべりで出来る岩石です。昔で云う地向斜帯、現代ではプレート沈み込み帯に特徴的に見られる岩石です。
 中央の白色ブロック(ls)は石灰岩です。その廻りに雲の様に群がっている小ブロックも殆どが石灰岩です。この小ブロックは褶曲しているように変形しています。中央ブロックの右下端に、やや緑色がかった小さなブロックI(ba)が張り付いているのが見えます。他にも似たような小さなカケラが幾つか見られます。これらは所謂緑色岩(玄武岩の溶岩)です。
 これらの岩石はどれも海底下で、海洋プレートの拡大に伴って形成されるものです。プレート沸き出し口から玄武岩が噴出し、それが海底火山を作る。火山の成長に伴って火口から玄武岩溶岩が噴き出したり、頂部の水深が浅くなると石灰分が沈着し、石灰岩が出来るようになる。これらがなにかの拍子に崩壊すると、山体はバラバラになり、それが再び集積すると、この様な混在岩が形成されるわけです。
 又。この岩石の左下端から右下にかけて、薄い線(f)が入り、これで上部のブロックが下部のブロックに対し、右下にずれているのが判ります。これは断層です。おそらく海底地すべりで出来たものでしょう。
 さてこれらのブロックをつなぎ止めている接着剤(基質)は何で出来ているのでしょうか?。通常のメランジやオリストストロームなら、これは泥岩のケースが多いのですが、ここではこれは暗紫色の物体。これは玄武岩質の凝灰岩(火山灰)です。つまり、元々の海底火山が崩壊したり、崩壊ブロックが集積したのは、かつて海底火山活動が活発だった場所と云うことになります。
 筆者はそれをかつての海膨ではないかと考えています。海膨は海底火山活動が活発で、そこには玄武岩質の火山灰が厚く堆積していると考えられます。海底火山が崩壊すれば、玄武岩の溶岩や石灰岩のカケラが共存していても不思議ではない。