スマトラ地震津波関連

平成16年暮れから17年にかけての最大のニュースは、何といってもスマトラ沖地震と津波災害です。先ず最初に思い出したのが、以前読んだ事のある「石垣島の人魚伝説」です。その後、TVなどで予兆現象が断片的に報道されるようになりました。その多くは地震発生後、津波到達以前のものです。これらは後に述べるように低周波振動、つまり古典力学で説明が可能です。今のところ報道されていませんが、地震発生前の予兆現象もあるはずです。それは最早古典力学では説明出来ず、量子力学の世界になるでしょう。


スマトラ地震津波関連(1) 八重山諸島の津波伝説

 2004年スマトラ沖地震津波が起こったとき、これぐらい大きい地震と津波なら、顕著な動物予兆があってもおかしく無いとは思っていた。ところがなかなかその情報がない。年を越してやっと、動物園jから動物がいなくなったとか、2〜3日前から鳥が何処かへ飛んで行ったというような現象が報道されだした。やや古い話ですが、我が国沖縄県八重山諸島には、明和8年(1771)の「八重山地震津波」に関する伝説が残っています。その幾つかを紹介します。

 なお、このコーナーは未完成です。理由は高槻市中央図書館が正月の5日まで休館だから。図書館が開館してネタ本(石垣島の民話)が手に入れば順次補強していきます。

1/6に開館したので見に行くと、ネタ本がありません。誰かが借りだしたのでしょう。あんなマニアックな本を読むのは、高槻広しといえどオレだけかと思っていたら、さにあらず。結構民話好きの人間も居るということです。そう言えば大阪10区の民主党衆院議員も確か童話作家だったなあ。

2/18に野暮用で市役所に行き、ついでに図書館(市役所の隣)を見に行くと、やっとネタ本(琉球の伝承文化を歩く1「八重山・石垣島の伝説・昔話1 三弥井書店平成12年」がありました。


1、石垣島白保の漁師の話
 明和の頃、白保部落に三人の漁師がいて、白保から三里ほど離れたヌバリというところに出て漁をしていると、「魚でもない、蛸でもない、烏賊でもない」妙な生き物が網に懸かった。頭は人間の様で、胴体は魚のようである。こんな生き物は見たことがない、解体して調べて見ようということになって、刀を持って近寄ると、その生き物は「えーんえーん」と泣き出したので、漁師達は人間かも判らないと思って殺すのを中止した。するとその生き物は泣きながら「私は人魚というものです。私を殺してはなりません。私は海の神の使いで海のことはなんでも知っています。私を逃がしてくれると、いいことを教えましょう」というので、その生き物を再び海に放った。すると、人魚は波に漂いながら、こういった。「実は何月何日津波が来ます。東の方から津波が押し寄せますから、あなた方三人には教えておきます」。
「有り難う。それで貴方の云うことは当たるのですか」と聞いたら、「私は海の神様の使いですから、私の云うことに嘘はありません」と言うので人魚を放してやった。
そして、明日津波がやってくるという日に、この三人は馬に乗ってやって来て「明日、何時頃に津波がやってくるぞ。これは海の神様の使いの人魚から聞いた話だから本当に来るぞ」と白保の人達に告げたが、白保の人達は
「そんなことがあるものか。この世に津波というものがあるものか」といって、三人の云うことを馬鹿にして聞かずにいたが、本当にその日の何時頃に津波がやって来て、白保の人達はみんな流され、生き残ったのは三人の漁師達だけだった。彼らは流失した白保村に入る時に、ピッチントカチラを立てて入ったので、以来道普請をするときには、ピッチントカチラを立てるようになった。
 

ヌバリとは図の「星野」集落
の北の「野原崎」の沖合らしい。

2、白保の人魚の話

 白保に半年は稲を作り、半年は山で木材を切り出し、更にそれを筏に組んで海上を村まで運ぶ人達がいた。この人達が、ある晩網を引き上げると体の半分下は魚で、上が人間という魚がかかっていた。その魚が「私は竜宮の神です。私を放してくだされば、海の災難のことを教えます」と喋ったので、「魚が喋るなんて気味が悪い、捨てろ」といって、その魚を海に放つと、「明日の朝、津波が来るから避難して下さい」と云った。それを聞いた人達は驚いて「逃げるのもいいが村には妻子達もいるので、このことを知らさねば」と早馬を遣わしたところ、その人達が「カラ岳」の近くの高い処まできた時、東の海が南の方に引いていくのが見えた。「これは危険だ」だと感じ、白保には行かず引き返した。すると朝の八時頃、津波がきて、全てを押し流した。


3、人魚と津波
 私の父方の祖父(宮良家)は、白保で牧場から逃げた馬が、作物を荒らさないように見回りの仕事をしていましたが、その日の朝も早くから畑の見回りをやっていると、津波がやって来たので、その辺りで一番高いユナムリイに逃げたので助かったと、宮良家では伝えられています。
 母方の祖父(多宇家)は明和の地震の折り、ヌバリの前のフファナンの浜で網を張っていると、網にジュゴンが巻かれてきたので「これは大事だ」とジュゴンを捕ろうとすると、ジュゴンが「私は実は竜宮から、こっちよ使いに参りましたがよ、不幸にしてあなた方の網にかかってしまいましたが、私はどうしても竜宮に帰らにゃいけんが、一つ私を放して竜宮まで行かしてもらうよう、お願いします」と話しますので、
「ああ、それじゃよかろう」ということで、放したら「ああ、本当に有り難う。帰る事が出来ます。この恩返しに来る四月の二十四日ーか日にちは忘れたがー大海から津波が押し寄せてきますから、山に登って大津波から逃れてください」と、ジュゴンが話したらしい。
「そうですか、ありがとう」と多宇家の人が云ったのを聞いて、ジュゴンもまた「ありがとう。竜宮へ帰ります」と云って、分かれて、多宇家の人は山に逃れて助かった、と聞いております。


4、津波とウス石
 ある家で、父親はその晩牧場に泊まっていた。家で7・8才になる子が、いきなり「父のところに行く」と言い出した。母親は「暗くなったし、大きな川も潮が満ちている。今からいけば溺れて死んでしまうよ」と止めたが、その子は聞かず、どんどん歩き出した。村はずれまできて、髪の毛を掴んで引き戻しても、その子はそれをふりほどいて行ってしまった。母親は磯部のウス石というところまで、子供を追いかけてきたが連れ戻す事が出来ず「行って溺れてしまいなさい」と諦めて帰ってしまった。その子は無事に父親のいる牧場まできたので、津波から助かったが、村に戻った母親「や親類のものは、皆津波に呑み込まれてしまった。 

3、人魚と津波 4、磯部のウス石

 これらの話のうち三つまでに共通しているのは、人魚が地震の予知媒体として現れていることである。また、もう一つは子供が媒体担っている。人魚とは何かであるが、一般にはジュゴン(マナテ)とされる。話によっては、人魚ではなく、ズバリ、ジュゴンと呼んでいるものもある。従って、ジュゴン(マナテ)の行動を詳細に観察しておけば、地震予知に繋がることが期待されるのです。地震や津波を予知出来るのはマナテに限らないはずだ、という疑問はもっともです。私もそう思います。上の民話は、地震の前には普段獲れなかった獲物がかかる、ということを意味しています。例えば、深海魚がトロールの網に懸かるとか。逆に普段獲れる獲物が捕れなくなるという現象も予想されます。この場合は、普段の漁場がさっぱり魚がいなくなるということになります。それを今回確認出来れば有り難かったのですが、殆どの漁師は津波の犠牲になっているため、生きた情報が殆ど得られないことが残念です。
 地震の前に獲物が変わるというのは、水温の変化や、それに伴う潮流の変化で、ある程度説明可能でしょう。しかし、それだけでは動物行動は説明出来ない。今回の地震報道をTVで見て不思議に感じたのは、津波被災地では魚やイルカなどの海洋生物の死骸が、殆ど打ち上げられていなかったということです。いくら事前に潮流が変化したとしても、津波が発生した海域全てに影響するには相当の長期間が必要な筈だから、地震発生直前にこのような変化が発生することは考えられない。あったとしても、震源域を含む狭い範囲に限られる。一方、津波の影響域は概ね海面下30mの範囲とされます。つまり津波とは、海面下約30mの範囲の水塊が、回転しながら高速で移動する現象です。従って、回遊魚やイルカなどの比較的浅い水域で活動する生物が津波に巻き込まれ、その死骸が陸上に打ち上げられても不思議ではない。それが全く見当たらないということは、これらの生物は津波が来る前に、もっと深い水域に潜って難を逃れたと考えられます。では何故津波を感じられたのでしょうか。一つには振動が挙げられます。津波の回転域と、その下の静穏域との境界に、低周波振動の発生が予想されます。海洋生物はこの信号をキャッチして深海に潜ったという説です。
 一方、陸上では冒頭に挙げた動物予兆現象が発生しています。面白いのは、タイで日本人観光客を乗せた象が、象使いの制止を無視して、高所へ高所へと走り、結果として日本人が助かったというエピソードです。もし、津波に伴って低周波振動が発生したとすると、それは水の弾性波速度で伝達するから、陸地には津波より早く到達する。低周波振動はエネルギーがなかなか減衰しないので、内陸まで到達する。波長が長いから、通常の建物なら透過するので、人間は気付かない。しかし、象や鳥のような生物はその信号をキャッチ出来るという説である。この振動は縦波に似た性質と思われる(横波は水中を伝わらない)。そうするとこれは上下方向には揺れるが、水平方向への指向性がない。従って、象はその振動が何処から(どの方向から)来たか判らないから、象が山に向かって(海とは反対に)逃げたという現象が説明できない。
 もう一つ私が興味を持っているのは、「臭い」である。確か、昨年のノーベル医学生理学賞の対象は、臭いの伝達機構の解明だったと思う。これには、従来分子説と波動説とがあったが、波動説が裏付けられた(と思った)。人間は5感を持っているが、その内もっとも早く退化したのが嗅覚である。特にこれは、いわゆる先進国の文明人で著しい。津波が発生すると、海面からしぶきが、おそらく数100m以上の高さに巻き上げられ、数qぐらい外側には広がるのではないだろうか。その時、海水のしぶきから発生された臭い(いわゆる潮の臭い)が、波動として伝わると考える。遙か離れた陸地では、これは極めて微弱な情報になるので、人間は気付かない。しかし、人間の数100〜1000倍ぐらいの嗅覚を持つ生物なら、これを海のものだとかぎ分けられるだろう。津波は陸地に高速で接近するから、ドップラー効果で臭いの周波数が変化する(具体的にはよく判らないが、理論的にはそうなる)。波から発生する低周波震動と臭いの察知を組み合わせた結果、動物達は海から何か得体の知れないものがやってくると認識し、その反対側に逃げようとする。これだと象や鳥が、津波の前に山の方へ逃げたという現象が上手く説明出来ます。
 もし現象がこの通りだとすると、津波予報には難しい観測よりは、海岸沿いに動物園(小規模でよい)を並べて、そこで動物の動きを観察した方が有功だ、ということになる。植物も何らかの反応を示すことが予想されるので、植物園を併設し、動物と植物の両方から攻めればより効果的と考えられる。



スマトラ地震津波関連(2) 津波は渦を巻いてやってくる?


これらの写真はスリランカのリゾート地、カルタラを襲った津波の衛星画像(05/01/11毎日新聞夕刊)。画像が悪いのは、新聞写真をそのまま使っているからです。
 上は押し波で、上から三つの渦が見られる。渦の直径は100数10m以上になる。時計回りなのは場所が北半球だからか?
 上の写真を見ると、写真右上には樹木の多い地域があり、それと海岸との間は疎林で住宅が多い。この一帯が別荘地帯だったと思われます。
 樹木の多い地域は陰影から想像すると、海岸段丘のような微高地のように思われます。それが下の地域との明暗を分けることになります。

 下は引き波の跡。微高地の下の住宅地がそっくり流されているのが判ります。渦は反時計回りに変わっている。渦の中心は写真中央上に小さいのが二つ、下に大きいのが二つ見られます。
 
 
 

 では、こういう渦はどうして出来るのでしょうか。幾つかメカニズムを仮定して可能かどうか考えてみます。
1)海底地形が複雑で水流がそれにつれてスピンする。
 狭い海峡で、海底地形も複雑な溝状になっていれば、水流はそれにつれてスピンが懸かり渦をまくようになる。鳴門や来島海峡の渦潮の例です。タイのプーケット島やスマトラ西海岸の海岸線は複雑なので、その可能性はないとは云えない。しかし、スリランカの海岸線は単調だし、当該地は上の写真を見る通り直線状の海岸なので、海底地形は渦を作るほど複雑とは思えない。・・・・・・×
2)津波が海岸にぶつかったところで乱流が生じ、渦が発生する。
 これも現実にはよく見られる現象です。波が直進して障害物に衝突すると、障害物から反力が発生し、波力との合力で水塊に回転モーメントが生じ、それにより渦が発生すると考えるものです。このためには、障害物(陸地)は反力を発生させるだけの剛性を持つ必要があります。津波のエネルギーは強大だから、反力を発生させるためには陸地は相当の剛性が必要です。海岸線には、堅個な岩盤が累々と続くような情景が当然必要でしょう。しかし、実態はどうかというと、海岸線は単純きわまりない第四紀の軟弱海岸線です。津波は渦を作るどころか、そのまま直進して当たり前でしょう。・・・・・×
 1)、2)は、渦が陸地近くになってから形成されたものという考えに基づいていますが、何れも妥当性に欠けるという結論です。そうであれば、渦の原因は元々津波の中にあったと考えるべきでしょう。先に述べたように、水塊の中に回転運動があり、それが陸上近くの水深の浅い部分で海面に現れたと考えられるのでは無いでしょうか。そうであれば、津波の先端か底面付近で、低周波振動が発生している可能性は高い思います。何処か、本四の橋辺りで観測してみたいものです。

 広帯域地震計(普通の地震計じゃ駄目。周波数特性値の幅が大きいワイドバンド対応型地震計。大阪市大にあるのでも使えそう)で長時間(数分程度)観測し、周波数解析すれば、何か低周波の振動が現れるかもしれない。

スリランカ政府は津波の後、海岸線から100m以内の建築を禁止するという方針を打ち出しましたが、これが誤りであることは明かです。津波に対する規制は、海岸からの距離ではなく、海抜で決定されるべきです。どちらを採用するかで、地域開発計画は大幅に変わります。


スマトラ地震津波(3) 津波の先に縦波がやってくる?

 今朝(05/01/13)のワイドショー(8ch)を見ると、興味ある映像が放映されていた。地震発生直後、日本人観光客がDVDで撮影したものです。
@先ず、海岸近くの海面が斑の帯状に、泥が沸き上がった様に茶灰色に変色し(沖合では見かけ上、異常無し)
A次に入江の所々で渦が沸き出し
B潮が引きだし
C30分後ぐらいに津波がやってきた。
 途中から見たので場所は正確には判りませんが、津波到達時間から推して、スマトラから300〜400q離れた地点、タイかマレーシアでしょう。海岸の地形は、単調な砂浜ではなく、断崖が連続するリアス式に近いものです。日本によく見られるタイプの海岸です。
 その後、津波の専門家に対するインタビューがあって、専門家曰く「海面が変色したのは、海面の上下動があって、それによって海底の砂や泥が吸い出されたものでしょう。津波が来る前に海面が上下するのは、地震発生直後によくある現象です」。大体、専門家の解説というのは、こういうのが多い。先ず、こういう現象はよくあるといって、自分は如何に多く経験を持っているかを、インタビュアーや視聴者にアピールし、その後ご託宣を宣う。しかし、何故そうなるかという解説は保留する。結局シロートには何も判らない。
 筆者はこれらの現象を、これまで述べてきた津波に伴う低周波振動で説明出来ると考えています。
1)海面の上下動
 専門家の云う海面の上下動は、当に縦波によるものである。これは津波域(海面下約30mの領域)とその下の静穏域との境界付近で、低周波振動が発生し、その振動は縦波に似た性質であるという筆者の予測を裏付けるものである。
2)海面の変色や渦の発生
 海面の変色は専門家の云うとおり、海面の上下動による海底物質の吸い出しでしょう。渦は撮影地の海底地形が複雑なため、海水の上下運動で乱流が発生したためと思われます。渦の直径は数〜10数m程度なので、スリランカのカルタラで現れた巨大渦潮とは全く規模が異なり、形成メカニズムも別と考えるのが妥当でしょう。
3)現象の発生時期
 海面の変色等の現象が、地震発生直後、津波到達の遙か以前に、300〜400qも離れた地点で発生したというのは、何か超常現象のように見えますが、全くそんなことはありません。津波の伝播速度は今回のスマトラ地震では720q/h。撮影地点への到達時間は約30分。一方水の弾性波速度は約1.4q/secだから、時速約5000q。撮影地点には、たった4分で到達します。
4)異常現象の発生場所
 このような現象は、何処でも起こったわけではないようです。少なくとも津波被害の大きかった、開けた海岸ではこのような現象は見られてはいません。筆者が、TV映像を見て最初にピンときた・・・・これは何処かでみたことがある・・・・のは、変色域のパターンが阪神大震災後の、「震度7の帯」の分布に非常によく似ているということです。
(1)先ず、津波の性質上、水深が概ね30m以上の海域では、このような現象は発生しないと考えられます。これは映像でも、沖合で異常が見られなかったことと対応します。
(2)このような現象が発生するのは、水深が30m以下で海岸地形が急峻な崖を作り、海底物質が軟弱な砂や泥で形成されている場所の海岸近くと考えられます。先ず縦波が進入すると、海底の崖に衝突します。この結果、波が反射し、入力波と重なります。反射波と入力波の位相が一致すると、波の振幅は増幅され、上下動が大きくなります。これによって海底物質が巻き上げられ、海面に変色域が現れます。いくら海面の上下動が大きくても、海底が岩盤で出来ておれば、このような現象は現れないでしょう。海岸地形が狭隘なリアス式であれば、上下動で乱流が生じ、渦が発生することは十分考えられます。
 このような現象は、いわゆる「フォーカシング」と呼ばれるもので、阪神大震災の折りに一部から指摘されたものです。大阪市大の中川教授なら泣いて喜びそうです。
(3)水深が30m以下であっても、海底地形がなだらかであれば、反射波の位相が大きくずれるので、このような現象は起こらないでしょう。

 さて、津波発生と同時に低周波振動が発生し、それが様々な場面で自然現象に影響を与えるなら、以下の理由で、有功な津波予報手段と考えられます。
1)水の弾性波速度は地震波伝播速度より遅く、津波より早いので、互いに重なることなく情報として分離出来る。例えば南海地震の場合、震源を紀伊半島沖100qとすると、半島先端までの波の伝達時間は、地震波(P波初動)はVp=5.0q/secとすると約20秒、低周波振動は水の弾性波速度を1.4q/secとすると約70秒、津波は今回のスマトラ津波並みの720q/hとすると約500秒となり、明瞭に別々の情報として観測出来る。
2)振動の振幅と波長から波のエネルギーが計算出来るので、到達時間だけでなく津波の規模を予測出来る。津波の波高、海岸地形が判っておれば、津波高も予測可能でしょう。
3)現在、国がやっている津波ネットワークに比べ、遙かに安い経費で広域津波監視システムを構築出来る。これに必要な道具は広帯域地震計だけです。これは普通の地震計に比べれば数倍高いが、国の海洋津波センサーに比べれば問題にならないくらい安い。海洋津波センサーは設置費込みで1台3500万円(この間BS1でやっていた香港の時事弁論会で、中国人がこの値段を聞いて眼を剥いていた)ぐらいするが、これ1台で広帯域地震計を20台ぐらいは買える。また、設置も簡単(国のセンサーは海洋型だが、これは地上設置型)。つまり、沿岸部の自治体が互いに資金を出しあうレベルで実現可能なのである。無論、国のシステムともリンク可能に出来る。
 国がやっていることは、全国土防災或いは国際ネットワークづくりの一環で、ミクロな自治体なんか相手にしていない。その結果、余りにもワイドフォーカスになり、自治体レベルでの実用性に疑問が残る。しかし、市民防護の先端を担うのは自治体である。自治体はより細かい目で対応しなくてはならない。これまでの検討で、次の三つの方法を組み合わせれば、地元自治体でも可能で、且つ具体的な津波予報が可能と考えられます。
(1)動物(植物)の行動観察。
 動物園を持っている自治体は有利ですが、そうでないところは今後動物園の設置を考慮してはいかがでしょうか。民間の飼育場などに協力を求めるのも一法。これで収益を挙げられれば、それを監視システムの維持管理に使える。
(2)海面異常の監視。
 異常が発生しそうな海面に対しカメラを設置し、TVでモニターする。この種の現象は何処でも起こるものではなく、海岸地形と海底物質とが、ある一定の条件を満たしたところに限られると考えられます。東海ー南海地震を想定すると、関東・東海地方では房総半島先端、三浦・伊豆半島の海岸地帯、紀伊半島では鳥羽湾や白浜湾、四国では宿毛湾や宇和島海、穴場としては大阪湾の関空島や神戸・大阪ベイエリアが、モニタリングポストとして挙げられます。無論これ以外にも海岸線を細かく調べれば、有望監視点がみつかることは十分期待できます。
(3)広帯域地震計による津波振動の観測
 これの設置は技術的には何の問題もありません。問題は情報の伝達・交換です。国のネットワークは人工衛星と専用回線を繋ぐ複雑なものですが、そんなものを使う必要はない。インターネットを使えばタダです。又、波の解析ソフトを無料配布し情報をオープンにすれば、無料で監視員を雇っているのと同じ効果がある。要するにこのシステムの管理者は、情報の提供のみを行うのです。国がやっている中央集権的監視システムでは、情報を管理し、解析し、それを解釈するために、膨大な数の専任監視員やアナリストが必要になります。しかし、このシステムでは、システムに参加する人が全て、監視員であり、アナリストになる。専任者がいなければ、情報監視に抜けがあるのではないかという人がいるかも知れませんが、そういう人こそ時代遅れのアナクロというのです。PCを立ち上げて、ネットに接続すれば良いだけだから、常に誰かが見ている訳で、24時間体制の情報監視と同じです。ブロードバンドを用いれば、一つのPC画面で複数の監視点をモニター出来るから、データを相互チェック出来る。要するに、誰でも気象庁予報官になれると云うことです。同じ情報でも解釈に個人差はある。それは掲示板で意見交換出来るし、その中に専門家が割り込む事によって、議論の集約化が図れる。自治体はその様子を見ながら、決断を下せばよい。
 無論、こんなシステムを国がハイそうですか、と認めるわけがない。何故なら日立や三菱といった大資本が国のバックにいて、高い機械を買うようにネジを巻いているからです。ではどうすれば良いか。プロ野球改革と同じ、IT産業を引き込んで津波予報を民営化することです。ヤフーと組んで、広域監視システムを作るのも面白い。ビジネスとしてもプロ野球よりリスクは少ないと思う。孫さん!どうかね。


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