阪高大和川線(大阪版新国立)の怪

横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫


 

 本日阪高大和川線のWebSiteを見てみたら、出るは出るは設計ミスのオンパレード。ひょっとしてこれ筆者の阪高批判記事を見て(あの記事をアップしたとたんHPのアクセス数が5割り増えた)、阪高・大阪府・カジマが潰しにかかったのではあるまいか?当に中国政府並みの情報操作・言論弾圧だ。なお云っておきますが、ワタクシ年はとっても骨はあるので、阪高・大阪府・カジマのような骨なしナマコ野郎など束に懸かってきても、太刀打ち出来ませんよ。
 カジマが何故あの工区にいきなり凍結工法を持ち込んだのか?建前上は地盤沈下対策というが、地盤沈下対策に凍結工法を使った例はない。それ以前に地盤沈下対策と凍結工法にはなんの関係もない。阪高やカジマは嘘をついているのである。これまで云っているように、あの地区でDW工法で地下水位低下を行なっても地盤沈下は生じない。
 思うに、その前にカジマは東電福島第一原発止水工に凍結工法を押し付けた。ところが案に相違して凍結が上手くいかない。当然購入した設備は余る。これは税法上課税対象になる。そこで課税逃れのために何処か良い物件はないかと探してたら、大和川線常盤工区がひっかったというわけだ。皆さん一般ピープルはよくしらないと思いますが、こんなことはゼネコンの世界では当たり前。阪高常盤工区はもってこいの場所だったのだ。一番ダメなのは、そういうメカニズムも判らないで、役所やゼネコン情報を垂れ流すマスコミ、特にネット版マスコミでしょう。
(15/08/13)

一番の問題は「常盤工区」での地盤掘削や地下水位低下工法で、地盤沈下が生じるかである。下図は「常盤工区」周辺での地形概念図であるが、本工区は紛れもない洪積段丘の上。地盤沈下に関与する軟弱地盤であるMa13粘土層は分布しないのである(Ma12・11粘土層は分布するが、これの認定は大変難しい)。いずれも過圧密粘土4であり、少々の地下水位低下では地盤沈下は生じない。


図1

 更に工法的に地盤沈下が避けられないかどうかを検討してみよう。
(開削トンネル案について)
1)下図の図2は開削トンネル一般図である。トンネルそのものは矩形のボックスである。両側に連壁を入れ、切り張り・腹起こしで支保工を行い、連壁内部の土を掘削し、逆巻きでボックス躯体を築造する。ボックス築造後は埋め戻す。その間掘削残土を何処かに仮置きしておかなければならないのはいうまでもない(これはタダではありません)。
2)掘削面の下に被圧滞水層があり、被圧水圧が上の掘り残し土の荷重を上回れば土の盤膨れ(パイピング)が生じ、重大事故を発生することがある。これを避けるため深井戸(DW)を掘って被圧水圧を低下させる。これはよく行なわれる工法で不思議ではない。問題はこの結果周辺の地下水位が低下し、地盤沈下を生じるおそれがある。そのため凍結工法に切り替え、追加工費を大阪府に請求したことが今回訴訟の原因というわけだ。果たしてそうでしょうか?
3)大阪府・施工業者はDW工法により、周辺地下水が低下し、地盤沈下を生じると主張する。これは次の2点で反論・否定できる。
(1)DWの目的は掘削面下の被圧滞水層の水圧を下げることである。従ってDWは通常掘削敷内に設置される。連壁を対象滞水層より下まで根入れし周辺地盤と遮断しておけば、周辺地盤の有効応力は地下水をくみ上げても変化しない。従って、地盤沈下は起こりえない。
(2)連壁の根入れが浅く、周辺地盤の有効応力分布に影響を与えたとしても、当該区間の地盤は洪積地盤であり、十分過圧密だから地盤沈下など生じない。生じても短期間の弾性沈下のようなもので、工事が終わって復水すれば元に戻る。
(3)そもそもパイピング防止に凍結工法を使う理由がわからない。

   
図2  図 3

(シールドトンネル案について)
 図3は当工区の工法比較図である。図を見るとおりシールド工法も一応考えていたようだ。ところが何故か”工費の点から現計画をを踏襲”と言うことになって、開削トンネル案が採用された。まるっきり新国立競技場騒ぎそのものだ。
1)図3を見るとシールドトンネルでも連壁が入ることになっている。発進立抗なら判るがそれは立抗部分に限られる。一方その場合は図2と同様、山留め工の画が入っても良いはずだが、それがない。ということはシールド区間全体に連壁を適用しようということか?しかしシールドに連壁を併用する話などきいたことがない。従ってこの連壁は不必要である。
2)シールド工法は単体なら確かに開削やボックスに比べ割高になるが、その代わり山留め工や埋め戻し工のような二次的手間が不必要である。今では泥土圧工法などを使うので、地盤沈下対策のDWなど不必要である。泥土圧方式の場合、掘削土には添加物が含まれないから、そのまま埋め立て土に使える。
3)それにも拘わらず、阪高・大阪府は開削案に拘った。何故か?

(その他の工法)
 どうしても阪高や大阪府がボックス型に拘るなら、筆者なら牽引式か推進式にする。要するに大断面のフロンテジャッキングである。フロンテで連壁をやった例は聞いたことはない。この形式でも切り羽の安定が心配だろうが、先に何度も云っているように、この区間は洪積地盤であり、元々自立性は高い。どうしても不安なら凍結を併用すればよいだろう。それでも開削式よりズーット安いはずである。

 以上の検討から、現計画(開削トンネル)が有利といえる点は一つもないことが判った。止水に凍結を使って予算をオーバーしたのは、事業者(阪高と大阪府)がただアホで、そこを海千山千のゼネコンにつけこまれただけの結果である(或いはゼネコンもアホだったか?)。図1(全体計画)を見ると、地下部分の大部分はシールドなのに、この区間だけが取ってつけたように開削になっている。開削にした理由も実はよく判らない。有利な部分は何一つない。想像するにおそらく地元対策ではあるまいか。泉北のこの地域は少々ややこしい地域だ。何がややこしいかと言うと、かつての同和勢力が強い地域なのである。全てをシールドにし、なおかつ大深度法を適用すると地元に落ちる金がなくなる。地元業者も、明かり工事なら大手ゼネコンの下請けに入れるが、トンネルでは指をくわえてみているだけだ。これではイカンと、同和系市会議員や府会議員、中には国会議員もいる。これは自民党から公明・維新まで広がっている。これらが何とかしろと大阪府や阪高にねじ込んだのではあるまいか?例えば、掘削残土処理など一番の同和利権だ。これこそ”新国立競技場”騒ぎとそっくりなのだ。
 その生贄になったのが東京本社の日本シビックという中堅コンサル。運が悪かったのだ。しかし訴訟にまで立ち上がった勇気はたいしたもの。ワタクシがこれまで籍を置いていた会社にそんな骨のあるのはいなかった。弱小コンサルは、こういう理不尽役所や悪質ゼネコンに対してドンドン訴訟を起こし、悪党をやっつけるべきである。そしてそれとシロウトコンサルは、河内・泉州という、ややこしい地域の公共事業には手出ししないこと。
(15/08/11)

今日朝刊を見ていたら、阪神高速大和川線の完成が3年遅れるという記事。この問題よく判らないことが多い。そこでYaphoo/jpを見てみると、原告の日本シビックの言い分は大体わかってきた。ところが、被告の大阪府とか建設主体の阪高とかカジマの言い分がわからない。
 ワタクシの感じとしては
1)問題区間の40m開削トンネルの必然性が判らない。そのままシールドでやれば良い。問題になったのは縦抗用のケーソンで、これは本線と別線との接合用。しかしトンネルの接合に縦抗は必ずしも必要ではない。シールドの地中接合など幾らでもやっているので工法的に問題はない*。従って連続ケーソンは不必要。
2)開削区間で被圧地下水対策でDW工法をやると、地下水位低下で地盤沈下を起こすというが、本当か?カジマのシロウトがMa13とMa12、Ma11とを勘違いしているのではないか?それを大阪府のアホ役人が鵜呑みにして操られていだけの可能性が大。
3)そもそも開削(常盤)工区は泉北台地(洪積段丘)の北端にあり、地盤沈下に関係するMa13粘土層は出現しない(筆者は今から45年ほど昔、阪高松原線の地質調査をやっているからよく判る)。ところがその下に分布するMa12粘土層は大阪湾に向けて急速に暑さ4を増し、見かけ上Ma13に酷似するようになる。このため勘違いしたのだろう**。要するに物知らずのシロウトがごちゃごちゃにしてしまった例だ。言い換えれば、カジマの過大請求の可能性だってある。要するに、カジマなんて三流会社に下駄を預けた祟りだ。
*普通はここに凍結工法を使う。大阪府やカジマは、凍結工法の使い方をしらないのではないか。
**東京からやってきた人間は、何でもかんでも関東流で解釈しようとする傾向がある。だから沖積層と洪積層を混同してしまうのである。なお、この区別は結構難しく、プロでなければ無理。
(5/08/08)