大阪層群で温泉を掘るコツ       


 大阪層群はローリスク・ローコストで温泉を掘削するに適した地層と言えます。しかしこれは大阪平野中心部について云えるだけです。大阪層群の中には断層や撓曲と云った構造があり、その左右で岩盤の深さ(大阪層群の厚さ)が大きく変化することがあります。こういった大阪層群が特殊な構造を持っているところでは特別な配慮が必要です。
一例を挙げて説明しましょう。。下の図1は、大阪市とその周辺の地質図です。真ん中に南北に延びる水色の帯は上町台地を現します。ここは洪積層の上町累層が分布しています。その周囲の白色の部分は、いわゆる沖積層の分布する地域で、大阪を代表する軟弱地盤地帯です。この部分は様々なデータから大阪層群の厚さが1000数100m以上になることが判っているので、何も考えずに掘っても問題はありません。温泉屋にとって最も美味しい部分です。上町台地の左に南北に破線が入っています。これがいわゆる「上町断層」です。図2を見ると上町断層の右で、岩盤が盛り上がり、左(西)側と遠く離れた東側で大阪層群が厚くなっている様子がうかがえます。上町断層の西か、東側では遠く離れると従来通りのやり方で温泉が開発出来ますが、上町台地の上では大阪層群が数100mしかないので温度が確保出来ません。温泉を開発しようとすれば@何か温泉成分を期待する、A温泉成分が付いてきたとしても温度が低いから、常時加熱が必要、B大阪層群は諦めて、下の岩盤の地下水を狙う。というわけで、ハイリスク・ハイコストにならざるを得ません。

平面(図1) 断面(図2)

 このように、大阪層群であれば何処でも簡単に温泉が掘れる訳ではないのです。重要なことは、温泉を開発したい場所の地質構造がどういうものかを事前に十分調査しておくことです。これを怠ると後でとんでもないことになります。
 具体例を示しましょう。

大阪層群の撓曲の例・・・・
日根野撓曲
右の写真は大阪府南部久米田池の近くに現れた「日根野撓曲」の露頭です。大阪層群は全体として、右から左に傾斜しています。つまり、基盤岩は相対的に右側が隆起し、左側が沈降していることになります。大阪層群の厚さは左側の方が厚くなるので、温泉を掘るなら、写真の左側で、大阪層群の傾斜がほぼ水平になる位置を狙うのが有利と云えます。従って、その様な地点を中心にMT探査のような、構造調査を行って、大阪層群の厚さが少なくとも、1000m以上あることを確認して、掘削にかかることが賢明でしょう。
これは上の写真をコンピューターで画像処理したものです。黄色く光っている部分が粘土層。地層面に斜交する剪断面が、シャープに表れています。

 
 なお、滋賀県・奈良県・三重県のように、もともと大阪層群が薄い地域では大阪層群は諦めて、始めから岩盤内の断層の地下水を狙うことをお奨めします。但し、これは大阪層群と違って、何処でも温泉が出るというわけではありません。事前に相当絞り込む必要があります。そのためには、「断層」に対する理解を深めておくことが必要です。「断層と温泉」をクリック。


RETURN  NEXT  温泉と地質へ   TOPへ