似非科学・・・特に地震天体起源説や地震雲説・・・を追放すべし。


 世の中には似非科学というものがある。これは、自然現象を、物理法則を無視して恣意的に解釈し、大衆心理を誤った方向に導こうとする運動である。地球科学はその性質上、似非科学の食い物にされやすい。最近流行の地球科学関連似非科学には次の二つが挙げられる。
     1)地震天体起源説
     2)地震雲
 筆者は基本的には誰が何を云おうと、それが人畜無害である限り、あれこれ云わないことをモットーとしている。しかし、最近の、この二つの動きは看過出来ないものがある。ここでは、この二つが如何にインチキであるかを論証する。

1、地震天体起源説
 これは、地震を発生させるエネルギーが、地球内部からのものではなく、地球外遙か遠くの天体からの影響によるものだとする説である。この説によれば、現在地震予知理論が根拠を置くプレートテクトニクス理論はひっくり返り、現在の地質学者や地震学者の多くは失業しなくてはならない。地質学者や地震学者は能力の割には数が多すぎるので、リストラが必要だろうが、それはこの問題の本質ではない。地震が地球内部エネルギーによるものではなく、地球外天体によるものとする説は昔からあり、かつてはオウム真理教が、次に例の白装束集団も唱えていた。最近では”イシカミ”とかいうカルト集団が同じようなことを云っている。豊田商事が振り込め詐欺に変身したのと同じで、詐欺師の世界に終わりはないのである。彼らのやり方で共通しているのは次のような点である。
 1)基本的に終末説に立つ。将来の破滅を持ち出して、人の恐怖心を煽る。オウムの例では死後の世界、イシカミは地震。
 2)一般人では理解不能な占星術や宗教教典(全てオカルト)などを持ち出して、如何にもそれらしいストーリーを作る。最近は特定の科学理論を活用することも多い。
 3)助かりたければこうしなさいと、救済法を奨める。最も単純な方法はサークルに入って、サークル誌を購読させる。以後次第に集金法はエスカレートする。

 カルトにとって、一般大衆を騙し、金品を巻き上げるのに一番便利な方法が似非科学であり(オウムや白装束が当にそれ)、更にそれに最もつけ込まれやすい分野が地球科学、特に地震関連分野なのである。従って、地球科学分野従事者は、常にこれらカルト(詐欺)集団に巻き込まれないよう注意しなければならない。
 先ず、地震が宇宙的規模のエネルギーで起こるなら、その影響は地球だけでなく、月や火星にも及ぶはずである。火星の質量は地球の1/2.6、月のそれは1/6にすぎない。地球に地震を起こすだけのエネルギーを持つ力だから、火星や月にはもっと大きな影響を与えて当然である。月など、とっくの昔に木っ端微塵になっていて当然ではないだろうか。これまでの地球上での観測結果から、地震と断層は密接な関係を持っていることが判っている。地震は断層上で起こり、断層は地震によって成長する。地震を起こす力が全宇宙規模のものだったら、月や火星にも断層があって当然である。しかし、月や火星には断層は存在しない(火星には数1000万年前に活動を停止した火山があるから、それに伴って断層の痕跡があるかも知れないが、現在では活動していない)。それどころか、地震すら起こっていない。現在、太陽系惑星で断層の存在が確認されているのは、地球と金星だけである。水星も可能性はあるが、これは水星探査衛星の結果を見なくてはならない。
 又、そのような大きな力なら、人工衛星軌道に影響を及ぼしても不思議ではない。人工衛星軌道が影響を受ければ、GPS画像にずれが生じるはずである。中越地震やスマトラ地震の前後でGPS画像がずれただろうか?もし、そんなことが起こればマスコミが黙っているはずがない。しかし、未だにその様な報道が無いところを見ると、人工衛星は何の影響も受けなかったに違いない。つまり、宇宙間力などは働いていないのだ。
 地震天体起源説論者(ズバリ、イシカミ教徒とその一派、それに汚染されている一部のアホ、タワケ。この中には地質屋も居るかもしれない)は、自説を展開する前に、何故火星や月に断層がないのか?人工衛星軌道が影響をうけないのか?といった疑問に答えなければならない。もっとも、このような連中に断層が理解出来るとは思わないが。

2、地震雲
 地震雲を主張する人間は昔からいた。最近これが急に話題になったのは、某TV局がこれを取り上げて以来である。ズバリ、これも全く信用出来ない。地震雲というからには、その位置での地下の状態を反映しているはずである。つまり、地震雲が地震の予兆現象とすれば、地震発生地点の地下で何らかの異変が発生し、その結果が上空の気象現象として現れたものが地震雲である。雲であるからには、メカニズムがどうであれ、上空で何らかの凝固反応が起こっているはずだ。それにどれくらいの時間が懸かるかは問題だが、日本上空には偏西風が吹くので、地震雲も西から東に移動する。であれば、凝固反応が瞬間的に行われる場合でも、地震雲は地震発生地点の直上付近、凝固反応に数時間程度以上を要する場合は、地震発生地点の遙か東方でしか観測出来ないはずである。つまり、北海道、東北地方での地震に対応する雲は、本州東方沖海上でしか見えない。ところが、中には日本海上で発生した地震雲の後に北海道で地震が起こったのを予知現象としたり、東北での地震の前に東京で地震雲が見られたとする例が見られる。こんな馬鹿な話はない。当時、高層風は東から西に吹いていたのだろうか。地震雲関連サイト(2ch等)での書き込みを見ると、地震雲を見たというのは関東以北に多く、関西ではあまり見られないような気がする。地震雲は場所を選ぶのだろうか?それとも、これも振り込めサギ被害の分布と同じで、お人好しの単細胞が多い関東人が騙されやすく、歴史・文化の古い関西人は簡単に騙されないということの反映だろうか?
 地震雲の発生原因を、地下で発生したラドンガスが壊変を繰り返し、鉛となりこれが空気中に核となって雲を作る、という説を唱えた学者がいる。自然界に存在するラドン同位体の大部分はU系列のRn222とTh系列のRn220からなる。前者の半減期は3825日、後者のそれは54.5秒である。ラドンが地表から噴き出されたとする。空中での鉛の生産はこの段階から始まるが、壊変系列がウラン系列の場合、壊変は遅々として進まず、雲を作る程度になるまでに数年程度は要するだろう。一方、トリウム系列の場合は、殆ど瞬時で終わってしまう。地震雲が見られた、という時点から実際に地震が発生するまでの期間は、これまでの報告を見る限り、数日から数ヶ月である。時間オーダーが全く合わない。それと、地震雲の意味はあくまでその模様(パターン)なのである。地震雲パターンは細かい鱗状の連なりで、いわゆる鱗雲とどこがどう違うのかよく判らないが、ラドン起源の鉛とこのパターンがどういう関係を持つのか?それが説明出来なければ、ラドン〜鉛〜地震雲説は意味を持たない。なお、筆者はラドンが地震予知物質になることを否定しない。それどころか、ラドンの積極利用論者でもある。しかし、使い方を誤ってはならない。
 雲は大気中での温度、圧力、湿度のバランスと気流によって様々なパターンを作る。例えば、強い上昇気流は積乱雲を作り、層流は層雲を作ると云ったように。雲のパターンは、実は地層中に記録されている様々な堆積模様に似ているのである。積乱雲はさしずめ泥火山のようなプリュームに相当するだろう。地震雲は、リップルマークに似ている。このような模様は大気中の温度、圧力等物理条件に従って、ある種の複雑なサイクルに従って発生すると思われる。一方地震も長周期、短周期が組み合わさった複雑なサイクルで活動する。両者のサイクルが偶然一致したときに、それぞれに相関があるように見える。つまり、地震雲は単なる偶然の産物であり、更にいうなら錯覚にすぎない。
 もし、地震雲にどうしても拘りたければ、発生メカニズムを地電流との関係で考えた方が良いかも知れない。なお、インターネットを見ていると、地震雲の問題にもイシカミ教徒が入り込んできている。うっかりこの問題に踏み込むと、彼らの餌食になったり、イシカミ教徒と見なされるおそれがあるから、要注意!

3、他の予知現象
 かといって筆者は全ての予兆現象を否定しているわけではない。
1)ラドン
 ラドン特にウラン系列のRn222はその半減期の長さから見て、地下深部の情報を伝えていることが期待される。無論、そのような物質は他にもあるが、ラドンの有効性は不活性、つまり移動の過程が温度・圧力・物質交換に依存しないという特性である。この結果、ラドンそのものの濃度を測定すれば、地下の様子を伺えるということになる。昔と違って今ではラドン濃度の測定法を簡単になっているので、もっと積極的に利用すべきだろう。特に温泉ブームで掘削はしたものの、採算が合わなくて放棄されたような井戸を利用して観測することが考えられる。
2)地震光
 地震直前の発光現象で、平成7年兵庫県南部地震で、生存者により確認された。これは断層運動に伴うプラズマの発生である。プラズマの発生そのものが、断層周辺での量子効果である。プラズマに紫外線が当たると発光する(紫外線灯の原理)。太陽から照射される電磁波の内、紫外線の勢力が一番強い時間帯は夜明け前である。夜が明けると、可視光線や赤外線の勢力が強くなるので、発光現象があっても見えなくなる。だから、プラズマ発光現象を見ることが出来るのは、夜明け前の数時間に限られる。地震光の目撃例が少ないのはこのせいであろう。
3)動物の予知行動
 動物の脳は一種の量子コンピューターである。いわゆる動物の本能行動や、人間の第六感は、量子のトンネル効果と見てよい。我々はしばしば断層内で、元々の物質が全く異なった物質に変化していることを見ている。つまり、地震に伴って原子オーダーでの物質交換が行われているのである。これに伴って、何らかの量子効果が発生していると考えられる。これが人間や動物の脳に作用して、様々な予知行動を取らせているのではないか、と筆者は考えている。筆者HPのスマトラ地震津波関連で述べた、海岸に動物園や植物園を設置する、というのは決して冗談ではなく、それなりに物理的根拠を有しているのである。

 以上述べたことから、最近世間を騒がしている、地震天体起源説や地震雲というものは、タワケものの与太話か、そうでなければ日本に無用な混乱を起こそうという陰謀に基づくものである。こういう話に決して耳を傾けてはならないことを警告しておく。(05/02/25)

技術士(応用理学) 横井和夫


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