学力テストの比較民俗学

 OECDの成人向け学力テストで日本がNO1。それに比べ哀れなのが韓国。ユースでは常に上位常連だが、成人レベルでは最下位。韓国人のトップでも、日本の平均点に及ばない。
 韓国政府はこの原因を「今の40〜50代は高等教育を受けていないから」と言い訳するが、それは通らない。何故なら、受験者は世代別・学歴別に均等割りされているからである。
 最大の原因は韓国の、科挙儒教的教育システムにある。韓国は李氏朝鮮の時代に中国から科挙の制を取り入れた。科挙に合格すると進士となり、本人だけでなく一家・一族の富貴が約束された。そのため極端に幼児・少年期教育が盛んとなった。その教育も科挙合格すを目的とする、いびつなものになった。それが今や、サムスン入社試験に変わっただけである。この様な合目的試験では、試験に合格すると、その後勉強しなくなる。成人試験で韓国が合格点を採れなくなったのは、この所為である。
 日本でも平安貴族は官吏登用試験に合格するまでは必死で勉強するが、通ってしまえば、あとは藤原氏とのコネを作ることだけが重要で、結果詩歌管弦と権力抗争に明け暮れ、最後は武士に政権を奪われることになった。
 ところが、日本人の中にもこの問題が理解出来ず、韓国の後追いをしようとするアホがいる。その一人が大阪の橋した徹であり、もう一人が元文部科学大臣中山斎彬である。
(13/10/09)

 今大阪では、全国一斉学力テストで、大阪府の成績が振るわなかったため、知事が頭に来て、やれ”クソ教育委員会とか、教育非常事態とか”暴言・妄言を吐き、それに反発する市長が出たりして、突然の学テバトルが発生しています。どっちもどっちで殆どメクソとハナクソの争いにしか見えないのですが、本人同士は真剣そのもの。一方、文部(=文部科学ー科学)省は、その公式報告書上で学力に地域差はない、と結論づけています。本当でしょうか?その根拠は各府県別平均正答率をたった4段階のヒストグラムで表したものに過ぎません。その中の細かい差は、その乱暴なヒストグラムの中に包含され、表には出てこないようになっている。これは典型的な役人の誤魔化しテクニック。大阪のハナクソ知事は多分、この役人の誤魔化しに引っかかっただけでしょう。しかし、社会的には結構インパクトもあるので、無視も出来ない。そこでこの内容をもう少し詳しく調べてみました。そうすると予期した以上に面白い結果が出てきました。

1、検討方法

 平成20年度全国一斉学力調査結果については文部省公式報告書がインターネットで公開されており、そこには掲載の都道府県別平均正答率も記載されている。元の表は単に都道府県名と正答率を並べてあるだけだから、これだけ見ても全体の傾向はなかなか把握し難い。そこで、これを正答率の高い順に並べ替え、更に視覚的に把握しやすいように、各都道府県を地域別に次のカテゴリーで区分し、それぞれを色分けして表示するものとした。

地域 都道府県
北海道 北海道
東北 青森、秋田、岩手、山形、宮城、福島
北陸、信越 新潟、富山、石川、福井、長野
関東 栃木、群馬、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨
中部、東海 静岡、愛知、岐阜、三重
近畿 滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
中国、四国 岡山、広島、鳥取、島根、山口、香川、愛媛、徳島、高知
九州、沖縄 福岡、長崎、佐賀、大分、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄

 大雑把にいえば、北海道を除く北・東日本が黄色、橙色などの寒色系、西・南日本が緑、青色の寒色系で表されている思えばよい。

2、検討結果
2−1、小学校
  小学校の教科別平均正答率の府県別順位を下表に示す。

1)一見して北海道を除く北・東日本勢が成績上位を占めることが判る。全47都道府県×4教科=188ケースの内、ベスト5、10、上位半分(24都道府県)の中で北・東日本勢、西・南日本勢が占める割合を示したものが次の表である。

北・東日本 西・南日本 備考
ベスト5 19(95) 1(5) 20(100) 5×4=20ケース
ベスト10 27(67.5) 13(32.5) 40(100) 10×4=40ケース
上位半分 55(57.3) 41(42.7) 96(100) 24×4=96ケース

(   )%

2)成績上位を占めるのは北陸・東北勢である。ちなみに秋田・青森・福井・富山・石川の5県でベスト5、20ケースの内実に17ケース(85%)を占めている。特に秋田県が全科目でトップを占めている。何故、こんなことが出来るのだろうか?まさかカンニングしているのではないでしょうねえ?西日本勢でベスト10に入っているのは京都、香川、広島が常連で、たまに鳥取が入っている程度。つまり、成績上位県は殆ど常連で占められているということだ。なお、西日本でも常連県はどちらかというと、発展途上県イメージがある(これは大阪府民の偏見)。
3)ついでに悪い方も見ておこう。次の表はワースト10、20の分布である。

北・東日本 西・南日本 備考
ワースト20 17(21.3) 63(78.7) 80(100) 20×4=80ケース
ワースト10 4(10) 36(90) 40(100) 10×4=40ケース
北・東日本の4ケースは全て北海道

(   )%

西日本勢の劣勢は顕かである。なお、大阪府がワースト10に入っているのは3ケースに過ぎない。大阪府より成績が悪い県は他にもいくらでもあるのだ。東北勢は全般に成績上位に食い込んでいるが、宮城県だけがそれについていけず、下位にランクされる。この理由については後で考察する。
4)北海道・沖縄の2道県が全教科でワースト1、2を占めている。これは東北・北陸5県が成績上位を独占しているのと同様、単なる偶然ではなく何らかの要因があるように思われる。
5)特に九州勢が成績下位グループに多いことが目立つ。、
 
2−2、中学校
 中学校の平均正答率分布は下表のとおりである。

1)パターンは一見小学校とよく似ているように見えますが、よく見ると成績トップグループでは東日本勢がやや少なくなる。小学校に比べ地域間の差がやや小さくなっているように見える。
小学校と同様、東日本、西日本別に成績分布を下表にまとめた。

北・東日本 西・南日本 備考
ベスト5 16(80) 4(20) 20(100)
ベスト10 22(55) 18(45) 40(100)
上位半分 35(36.5) 61(63.5) 96(100)
ワースト20 27(33.8) 53(66.2) 80(100)
ワースト10 10(25) 30(75) 40(100)

(    )%

2)成績トップを小学校のときのメンバーが占めるのは変わらないが、占有率は低下している。、東西を比較すると、全体として東日本勢の優位は変わらないが、ベスト10では大差がなくなり、上位半分では東西が逆転している。又、小学校での順位から変化が見られる。
3)全体として小学校に比べ地域間差が小さくなっている。この傾向は数学で顕著である。数学の平均正答率分布を見てみよう。

数学A 数学B
北・東日本 西・南日本 北・東日本 西・南日本
ベスト5 3(60) 2(40) 4(80) 1(20) 各5ケース
ベスト10 4(40) 6(60) 6(60) 4(40) 各10ケース
上位半分 8(33.3) 16(66.7) 9(37.5) 15(62.5) 各24ケース
ワースト20 10(50) 10(50) 9(45) 11(5) 各20ケース
ワースト10 5(50) 5(50) 3(30) 7(70) 各10ケース

(    )%

 東西の差は更に縮まり、数学Aのベスト10及び上位半分では東西が逆転している。

3、考察
 テストで良い成績を採れるかどうかは、要するに如何に勉強をしているかどうかの差である。但しその勉強は何でも良いというわけではない。テストに合わせた勉強でなくてはならない。テストに合わない勉強を幾らしたところで、成績向上には繋がらない。例えば、将棋の勉強は非常に高度な知的学習だが、将棋の棋譜がテストの問題に出ることはないので、これは成績向上には繋がらない。学力テストは大きく
     (1)到達度を調べる
     (2)生徒をふるい落とす
 の二つのタイプに分かれる。(1)は通常の小中高等学校で行われる、定期試験である。公立の場合、問題は教科書の範囲内(つまり学習指導要領内)から出されるのが原則。(2)は私立小中高や公立でも一部の受験校で行われるものである。これは学習指導要領に縛られないので、教科書の範囲を逸脱する問題が出ることも不思議ではない。今回の学力テストは文部省主催で且つ国公立校を対象にしているからタイプは(1)で、問題の範囲も学習指導要領の枠内におさまっていることは当然である。このタイプの試験で好成績を挙げるコツは、定型的画一的問題を反復学習することである。生徒の性格として、真面目で几帳面、ねばり強いタイプが向いている。落ち着きが無く、何事にも飽きっぽくて、授業中もしょっちゅうキョロキョロしているようなタイプはこの種の試験に向かない。
 そもそも明治以来の日本の教育の目的は官僚の養成にある。学力テストはその人間が官僚に向くかどうかを調べることを目的としている。官僚に向く人間とは、広く浅い知識を有し、画一的定型的問題を短時間に効率よく解く能力を有している人間のことである。それを調べるテストの問題は、自ずから出題範囲を満遍なく網羅し、深い洞察を必要としないものになるだろう。

まず、今回のテスト結果を検討したところ
1)小学校では大きく成績上位の地域(概ね北・東日本)と下位の地域(概ね西・南日本)に2分されるが、2)一方中学校では国語では小学校と似た傾向であるが、中学校では東西の格差は縮まり、特に数学では逆転するケースが出てくることが判った。
 そこでここでは、この原因について考察を進める。
1)何故東日本の小学校が成績上位なのか?
 東北・北陸地方が成績上位傾向があり、逆に北海道・沖縄や四国・九州が下位に来る。これは北・東日本の生徒がより勉強し、西・南日本は相対的に勉強していないということの反映に過ぎない。要するに東日本は真面目で、西日本は不真面目だということだ。
 成績上位グループでは秋田・青森・福井・富山・石川の5県がトップを占めることが注目される。幾つか考えられる原因を挙げてみよう。
(1)環境要因説
 これらの県はいずれも積雪地帯である。冬の間雪で外に出られないから家で勉強するしかない、だから必然的に学習効果がある。又、東北人・北陸人という言葉には自ずから、真面目でねばり強いというイメージがある。それに比べ西日本は雪が降らず、いつでも外で遊べるから相対的に勉強時間数が少なくなり好成績が採れない。しかし、負けずに雪国である北海道が低成績という現象を説明できない。又、今では外が雪でも、ゲームやテレビで室内で十分遊べる。従って、遊びに費やせる時間は西・南日本と遜色はない。それより、北陸・東北11県の内、何故この5県のみが上位を独占するのか?これは環境要因だけでは説明出来ない。
(2)先天的要因説
 (1)に似ているが、こういう性格が環境だけで決まるのではなく、先天的にあったと考える。例えば、上で挙げた様に東北人・北陸人という言葉には自ずから、真面目でねばり強い、一方関西人・九州人は性格があっさりしており粘りがない。或い東北人は縄文人で西日本人は弥生人と言うように。しかし、現代人類学の知識では、東北及び南九州が南方系(縄文人)で中間に北方弥生系が割り込んでいるという構造になっている。従って、これは成績分布とは矛盾する。又、成績が先天的資質によるものなら、小学校と中学校で成績分布が変化する(特に算数と数学)という現象を説明出来ない。
(3)教育システム説
 小学校レベルの成績は生徒個人の資質より、教師特に学校の教育(授業)システムに左右される要因が多いと考える見方である。小学生は中高生より頭は柔軟で素直である。ここに定型的画一的反復学習教育を持ち込めば、脳が柔軟なだけ、確実に成績は上がる。アベ内閣で文部省は従来の「ゆとり教育」を改め、新指導要領による学習を指導した。学力テスト問題はそれに基づくのは当たり前である。さて、地域の教育委員会が文部省流指導方針(脱「ゆとり教育」)を素直に受け入れ、それを各学校に指示し、各学校がそれに沿った授業を行ったとすれば、当然学テでは好成績を収める。東日本が西日本に比べ成績が優れ、その中でも東北・北陸が成績上位を占めたのは、この地域が中央に対し、より忠実であった証拠である。「辺境に忠誠心あり」の例だ。しかし、上記5県が成績上位を殆ど独占するのはむしろ異常である。揃って学力テストシフト授業を敷いた疑いがある。逆に西日本各県は脱「ゆとり教育」が遅れた。それが学力テスト結果に如実に現れた。何故、遅れたのか?古来日本では文明は西(アジア)からやってきた。仏教も鉄砲もキリスト教もそうである。西から来た文明は東に移るが、その逆はあまりない。つまり文明の点では古来西日本優位なのである。このため、西日本は中央(東)の云うことを真面目に聞かない、ズバリ云うと馬鹿にしているのである。この結果、脱「ゆとり教育」が遅れたと考えられる。なお、東北地方でも宮城県の成績は西日本並みである。宮城県は伊達62万石の末裔。東北6県の中では最もハイカラな県である。「ゆとり教育」は言い換えれば自由主義・個性重視教育である。社会全般では東日本より西日本の方がより自由主義的傾向が強い。これはいろんな例を挙げられる。例えばフーゾク・新商売は西日本由来のものが多い(今の仙台国分町フーゾクは大阪南や新宿歌舞伎町と変わらない)。東日本が保守的、西日本の方がよく言えば開放的、悪く云えば自分勝手であることに通じる。ハイカラな宮城県が西日本に似ていても不思議ではない。学力テスト結果は地域の民度に逆比例するのである。
 なお、日教組の影響があるかどうかは明確には判らない。但し沖縄県教組・北海道教組は日教組の中でも最も戦闘的な組織である。沖縄・北海道の成績が最下位を争うのは、その影響が無いとは云えない。
 
2)何故、中学校で成績逆転現象が起きるか?
 中学校レベルでも各県教育委員会は小学校と同様の指導方針を採るはずである。小学校で上位を占めた各県も同様であろう。しかしながら、結果は思うようには行っていない。現実には小学校で最強だった秋田県は順位を落とし、数学ベスト10 では西日本勢が半分を占めるようになっている。
 国語の成績は小学校と類似的だが、国語の問題のパターンはあまり多くはない。従って、定型的画一的反復学習教育により好成績を維持することは可能である。一方数学は算数に比べ問題が複雑になり、脳の各所を使わなくてはならない。この場合、脳の一部しか使わない画一反復学習に慣れてしまうと、複雑な問題には対応出来なくなる。これが東西で逆転現象が生じた原因と思われる。数学的能力はほぼ11才頃・・・小学校高学年頃・・・に決まると云われる。従って、この時期迄に脳の各所を使っておかないと脳が固まってしまうのである。それを避けるためには、教科書から外れた学習をすることだ。つまり、中学校レベルでは小学校レベルのやり方は通用しないということだ。この傾向は高校、大学で更に進む。小学校や中学校での成績など、将来的には何の意味も持たない、という証拠でもある。東北勢特に秋田青森はそういう変化が理解出来ず、従来の方針を中学校まで延長したため順位低下を招いたのだろう。要するに頭が悪いのである。文部省がやらなくてはならないのは、何故こういう逆転現象が起こるか?そのメカニズムの解明である。
 

 なお、全国一斉学力テストの原因になった4年前のOECD調査では、アメリカの順位は下から数えた方が早かった。それはアメリカの小中学校ではテスト用の学習をしていなかったからである。しかし、アメリカ大学・大学院で完全に逆転し、良いか悪いかは別として様々な点での開発能力は今もアメリカは世界を圧倒している。だから、小中学校レベルの成績など将来においては対して意味は無いのである。これに不必要に拘るのは、知事とか教育長の面子とか名誉欲に過ぎない。
(08/11/94)

 さて、なにが一番問題なのか?最大の問題は、文部省自身が学力テスの意味について、極めて曖昧且つ矛盾した態度を採ったことである。まず1)学テの目的を、学力到達度を総合的に捉え問題点を探り出すと云ったにも関わらず、全国一斉悉皆調査とした。上に挙げた目的のためだけなら、数%程度の抽出及び数年毎の隔年調査で十分である。2)学テ結果を学校序列化につなげない、と言いつつも、必然的に序列化に繋がる一斉悉皆調査とした。出来ないことをやれると言っているに等しい。3)情報の秘匿性を全く考慮していない。大阪の例を取り上げる迄もなく、巨額の国費を投下した以上、情報公開請求にさらされるのは当たり前である。その点に関するガードが全く出来ていない。それ以上に文部省自身が情報公開請求を期待していたのではないか、とも疑われる。
 文部省報告書では、他に様々な論点について分析しているが、殆どたいしたことはない。その内容は実にくだらないのである。この程度の結論を出すのに、70億円もの巨額の費用(全国悉皆調査)は必要ではない。この程度の結論を出すなら、全体の数%程度の抽出調査だけで、悉皆調査結果に対し99%以上の確率で同じ結果を得られる。これは統計学的にも顕かである。かつての国会質問で野党はこの点を質問したが、文部省は「サンプルが多いほど精度が高くなる」と非科学的回答。そのココロは”利権”である。全国学力テストを文部省が直営でやる訳がない。傘下の特殊法人が請け負う。特殊法人の下に受験産業がある。ここも文部官僚天下り先である。つまり、全国学力テストとは、実態は文部省OBの生活保障、天下り確保の手段に過ぎないのである。
 それを大阪の橋下ハナクソ知事は文部省の言い分を真に受けて、学テ絶対主義にのめり込んでしまった。これこそ文部官僚の良い餌食。この次は大阪府に文部省OBの天下りを送り込むだろう。その陰謀はハナクソに判るわけがない。橋下ハナクソがやるべき事は、この程度の結論ほしさに70億もの国費を投入する価値があるかどうか、その点について国に対し異議を唱えることである。