地震雲批判(2)

自分だけの思いこみだけではダメと思って、念のためインターネットで「地震雲」サイトを覗いてみた。はっきり言ってでたらめのデパートだな。当初はこのサイトに出ているデータを検討してみようと思ったのだが、少し見ただけでその気もなくなるほどのデタラメの行進。いい加減にこの手の連中は国家権力を使ってでも弾圧すべきだろう。百害あって一利なし。


  昨日、風呂上がりに何気なくTVのスウイッチを入れたら(もちろん遠隔ですよ)、ミノモンタが出てきて何やら地震雲の特集をやっている。先日発表された地震確率分布の延長だろう。あの画は非常に問題が多い。あれは今後地震を体感する確率の分布を表したものだが、見ただけでは地震が発生する確率の分布と勘違いしてしまう。それはともかく、地震雲がとうとうTVのゴールデンタイムまで押し寄せてきたか、となると黙ってはおられない。従って、ここで再度地震雲を批判する。(.5/03/26)


1、竜巻雲について

 冒頭に挙げた、某TV番組で紹介された「地震雲」の話題とは次のようなものだった。
(1)最近の地震雲の例として、竜巻状の雲の写真が2種類紹介された。但し、何時何処で誰が撮影したものかの説明は無かったと記憶している。
(2)これに関連して、岩石の破壊で電磁波が発生する理論と、岩石破壊実験が紹介される。破壊に伴って電磁波が発生している例が示される。電磁波ではなく、単なる電流と思われるが、測定システムの詳しい説明がないので、これ以上のことは云えない。なお、岩石の破壊に伴って電流が発生するという実験は確か1950年代にあったと思う。珍しい実験ではない。
(3)次いで、断層の周りで岩石が破壊すると、そこから電磁波が飛び出して、上空に「地震雲」を作る、というモデルが示される。
(4)画面は東京都内のある研究施設に移り、実際に地震雲を作る実験が紹介される。まず電磁波発生装置(というより落雷放電装置)の下にドライアイスを置く。ドライアイスから2酸化炭素の蒸気が湧いている。そこへ上の電極に通電すると、なんと2酸化炭素の蒸気は電極に向けて竜巻状に立ち上るではないか。これを上下反転させて見ると、電極(断層)から上空に向かって竜巻状の雲が立ち上っているように見える。
(5)その他、電磁波が発生すると、TV画面が乱れたり、電気も通していないのに蛍光灯が発光するなどの現象が紹介され、ゲスト一同「・・ああ怖い」となってメデタシメデタシ終わり。
 賢明な読者は、この一連の実験が子供だましの手品であることは直ぐに判るでしょう。
(1)まず、ドライアイスから分離したCO2ガスの一部はイオン化していると考えられる。CO2だからマイナスに帯電している。放電装置にプラスの電圧を加えると、当然、イオン化したガス雲は電極に吸い寄せられ(上下反転すると、電極から立ち上る)竜巻状になる。電極をマイナスに帯電させると斥力が働くので、ガス雲は周りに拡散し、渦を巻くように見えるかも知れない。何れにせよ、電極の側でなにか異常な現象が起こったように見える。
 さて、これを現実世界に引き戻してみよう。地上での電磁波発生源は断層だけではない。ざっと考えただけでも次のようなものがある。
(1)米軍通信施設(いわゆる「象の檻」、全国に数カ所ある。これは強力な電波発生源)。自衛隊通信基地。
(2)TV電波塔、携帯電波塔、高圧送電線、気象台レーダー。
(3)山梨リニア実験線。新幹線でも列車が通過する周囲には、低周波の渦電流が発生しているはず。
(4)都会の電流発生源。例えば高層ビルのエレベーター、パソコンショップ。
         等
 要するに我が国は全体として、電磁波のエネルギーレベルが高いのである。さて上記の電波源から発生する電磁波エネルギーのレベルは、地下深部での岩石破壊で生じるそれより、遙かに大きいことは容易に推察される。例えば(1)の「象の檻」の側では、何もしなくても100ワットの電球に灯りがつく位だから、20ワットの蛍光灯しかともせない地震電磁波エネルギーより遙かに強力なのである。又東京や大阪等の大都市では、24時間電波が発振されている。であれば、「象の檻」や東京・大阪の上空には常に竜巻雲が出来ていなければならない。しかし、そんな話は聞いたことがない。ひょっとすると、常時出来ているのかもしれない。そうなら竜巻雲は地震とは何の関係も無い、ということになる。

2、地震雲に対する総括的批判
 地震雲形成モデルは、前回批判したラドンガス説にせよ、今回の電磁波説にせよ、何れも断層周辺の岩石が地下深部で破壊することにより、大気圏に異常が発生する、ことを前提としている。そうなら、地震雲は、まず断層の直上に表れるはずである。ところが、これまで報告されている地震雲は、殆ど全てが震源地域とは全くかけ離れた所で目撃されている。北海道の地震が東京や埼玉で現れたり、今回の玄海地震でも、翌日ネットを開くと「地震雲サイト」というのがあって、それを見ると3/20の日付で場所は茨城だ。九州の地震が何で茨城で見えるのだ?又、タイミングもバラバラで前日というのもあれば、一ヶ月前といういうのもある。全く法則性というものがない。これでは到底学問とは云えず、学問的批判の対象にもならない。
 ズバリ言って、現在世間に出回っている地震雲は概ね次の三者である。
     (1)偶然
     (2)錯覚
     (3)ねつ造(合成写真)
(1)(2)は未だ可愛げがあって許せるが、怪しからんのが(3)である。冒頭に紹介した某TV番組で表れた、竜巻雲写真は・・・瞬間しか放映していないので、細部の検討は無理だが・・・私の印象では合成写真である。竜巻の形状があまりに整い、輪郭が明瞭過ぎる。竜巻の上空に通常の雲が映っているのだが、竜巻の軸と雲の流れる方向が斜交している。つまり、竜巻には斜めに強い風が当たっている筈だが、それにも拘わらず、竜巻の輪郭が全く崩れていない。2枚あって、内1枚には、雲の影のような陰影部が空に映っている。雲の影が地面に映るのは判るが、空に雲の影が映る訳がない。はっきり言って、でっち上げということである。その内問題になるでしょう。
(追記)
1、この間、ネットを見ていると、「地震雲」というサイトがあったので、開いて見た。すると、地震雲と言っても沢山種類があるようですな。竜巻雲、笠雲、筋雲他。地震雲の発生原因にはいろんな説があるが、大体共通するのは、地下から何か粒子か波がやってきて気流に影響を与えて雲を作るというものだ。粒子や波が何者か判っていないが、地震発生のメカニズムは、地下深部の岩盤の破壊ということで一致しているだろう。であれば地震雲を作るメカニズムもそんな多くはあるはずがない。何故、こんなに沢山の種類が出来るのか、一度地震雲論者の説明を伺いたい。

2、学者の責任
 こういう種類の問題が世間に広まるのには、学者が大きく責任を持つ。この手の問題で、特にマスコミが注目するのにオーパーツがある。筆者自身この手の話しは嫌いじゃないから、昔から興味を持っているが、それをそのまま信用するほど馬鹿じゃない。一見現代科学で説明出来ないように見えるところをどう解明していくかが、謎解きのおもしろさなのである。
 地震雲に関して、我が国の学者の対応は概ね次の2種類に分別されよう。@学問の本筋に関わらないから無視する(たこつぼ学者の典型)、Aこれが時流だからそれに棹さす(タレントを目指す)。
 私の考えでは何れも間違いです。地震雲については、私は全く信用していないが、世の中には真面目に信用している人間、半信半疑の人間が居ることも事実だ。しかし、マスコミやネットに頻繁に登場するようになると、学会でも無視出来ないはずである。オーパーツについては、アメリカなどでは、専門の学者がキチンとした調査を行った上で批判論文を作成し、それを出版しているのである。こういう点については、日本の学者は極めて無責任である。
@ネットなどで公表されている地震雲(と称されるもの)を照査する。
Aその中で明確に地震と関連づけられるもののみを取り出す。
Bその上で地震雲発生メカニズムを考える。
C実験等により確認する。
というのが、学問的にあり得べき順序だろう。ところが、現実には@Aが省略されて、いきなりBCに飛び込んでいる。順序を間違えているのだ。学力の低下は小中学校だけではない。大学・大学院に押し寄せている。


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