近鉄・オリックス合併は銀行不良債権処理の犠牲(背景にプロ野球機構の疑惑)


 この問題が発生してからかなり時間が経過している。その間に国会で超党派の議員連盟が出来るなど、政治問題化してきた。筆者はこの問題の当初から、これを背景で動かしているのは銀行で、問題の本質は近鉄本体の不良債権処理にあると考えていた。昨日(08/11)のTV報道で、オリックスとの仮調印を終えた近鉄球団社長と代表が、満面に笑みを浮かべて記者会見していたのを見て、これは予測より確信に変わったのである。何故、彼らはオリックスとの合併がそんなに嬉しかったのか。これでやっと近鉄本社へ帰れる、選手やファンなどどうでも良い、自分の首が繋がった、ヨカッタヨカッタである。筆者もかつてサラリーマンだったから、その気持ちは判らない訳ではないが、現状社会の雰囲気を考えれば、もう少し節度を持つべきだっただろう。
 この合併劇には次のような点が疑問として残る。
           1)何故近鉄は球団を売りたかったか?
           2)相手は何故オリックスで、ライブドアでは駄目なのか?
           3)何故1リーグ制なのか?
1、何故近鉄は球団を売りたかったか?
 要するに儲からないからである。それよりも、バブル崩壊後の銀行を取り巻く環境が変わったため、無視出来なくなったのである。バブル以前の企業会計では、経営者が、これは必要だ、と判断した事業は無条件で認められ、それによる損失は必要経費として損金扱いされた。近鉄側の発表では、バッファローズは毎年30〜40億円の赤字を出していた。これでも近鉄グループ全体の連結決算で吸収出来ておればそれでよかった。逆に赤字を出していても、グループ全体の利益圧縮、つまり節税や配当節約効果があったし、損失穴埋めに銀行は幾らでも金を貸す。銀行にとっても、利子収入が増えるから有り難い。つまり、かつては近鉄も銀行も、バッファローズが赤字であった方が良かったのだ。では、何故いきなり赤字は駄目になったのか?それがコイズミ改革、というより銀行のBIS規制の結果なのである。
 現在日本の株式市場を動かしているのは、外国人投資家である。彼らは、日本人投資家のように、将来の発展とか、これまでの付き合いとか、義理人情とか悠長なことは云わない。銀行や企業に対しても、則投資の分け前を要求する。又、監督官庁である金融庁は銀行に対しては早急の不良債権処理を、企業に対しては経営再建を求める。これを拒否すれば、銀行に対しては公的資金注入、企業に対しては経済再生法をちらつかせて脅しを掛けるのである。もう判っていると思うが、ことの本質はバッファローズの赤字体質問題ではない、近鉄本体の再建問題なのだ。
1)先ず、近鉄主力銀行に対し、金融庁から不良債権処理の加速が求められる。不良債権の大口融資先に近鉄本体があった。近鉄の経営も最近は苦しくなってきている、というのは既に新聞報道で囁かれている
2)銀行は、近鉄本体の経営状況を調査し、不採算部門の処理を要求する。その中にバッファローズがあった。年間30〜40億の赤字は、近鉄グループの中でも相当目立つ存在だったろう。これがダイエーのように、優勝か優勝に絡む成績で、本体の収益に貢献しておれば未だましだが、最近のバッファローズの成績では言い訳も出来ないのが現実。
3)近鉄がバッファローズの処理を拒否すれば、銀行は追加融資を拒否したり、既存融資分の貸し剥がしを強行する。銀行にも目前に迫った、大型合併を控えて何が何でも不良債権処理を急がなくてはならない事情があったのだろう。
4)近鉄にしても何時までも不採算処理を先延ばしに出来ない。株価が低迷すれば、投資家の不信を買い、場合によっては株主代表訴訟だ。従って、バッファローズの処分は、経営的にはやむを得ぬ判断ということになる。

ところで、ある評論家がTVで近鉄の判断を「泣いて馬謖を斬る」と表現していたが、これは明らかに用法として間違い。最近の評論家には、全く言葉の意味を知らぬのが多くて困る。


2、相手は何故オリックスで、ライブドアでは駄目なのか?
 実はこれがこの問題で最も解り難く、逆に何らかの疑惑が存在するのでは無いか、と憶測を呼ぶ原因になるのである。近鉄がバッファローズを手放したい理由はよく解るし、それに反対する理由もない。であれば相手は条件が合えば何処でも良い筈だ。第一、ライブドアはフランチャイズも含めて、一切を買い取ると云っている。パリーグも6球団を維持出来るし、プロ野球機構としても2リーグ制を維持出来るのだから、何も文句を差し挟む必要はない。又、近鉄側はオリックスとの合併話が面に出てきてから、いきなりライブドアが現れたように云っているが、事実はライブドアはもっと前から近鉄に接触を試みていたが、近鉄がそれを拒否していただけらしい。何故だ!ライブドアを拒否する何らかの理由があるのだろう。しかもライブドア外しに最も強硬なのは、プロ野球のドン渡辺恒夫だから、これはプロ野球界全体を巻き込んだ背景を持っているはずだ。
1)オリックスの会長は、名前は忘れたが金貸し上がりの三国人で、どうせろくな奴じゃない。しかし、いまではコイズミ内閣のナントカ審議会の委員である。大した出世だ。世にこういうのを「政商」と云う。政商行くところ疑惑あり。ナベツネも元共産党員ながら、宴会上手と下ネタで自民党幹部に取り入り、ジャーナリズムの経験もない(読売新聞政治部だが、与党担当政治部記者など、ジャーナリストとは云えない。政界芸者か与党女郎だ)のに、ジャーナリズム界のドンに成り上がった。これも現代版政商である。他の球団オーナーにも政商の臭いのするのが結構いる。例えば西武の堤とか、ロッテの某とか。
2)プロ野球機構どころか、各球団の経理、つまり財務諸表は一向に明らかにならない。経営の内容は実は判らないのだ。この場合、何か不透明な金の動きがあるのではないかと疑われても仕方がない。
3)おまけに30億とか60億とかいう、馬鹿高い参加料は必然的に経営を密室化する。お互いなあなあの談合体質になる。
4)そこへ、ライブドアという新参者が参入すると、これまで培ってきた利権構造、つまりこれまでの、でたらめ経営の実態が白日にさらされるのである。これが球界全体を挙げてのライブドア外しの真相ではないか。
 そこに何らかの金や利権が動いて居れば、スキャンダルになる。これが一番怖いのだろう。

 つまり、近鉄/オリックス合併劇は
1)コイズミ内閣の下での金融再編が発端で、選手・ファンはその犠牲になっただけ。
2)近鉄がオリックスに拘り、ライブドアを拒否するのは、プロ野球機構の談合体質を維持するのが目的で、球界の改革、近代化などとんでもない、というわけ。その背景には政商の暗躍と、何らかの疑惑が疑われる。