アジア・太平洋の将来

技術士   横井和夫


 今年2月はミャンマーで軍事クーデターが起こり、”国軍”と称する軍閥が権力を握ってから、丁度2年になります。何故このクーデターがあっさり成功したのか、謎は残りますが、一つは当時発足したばかりのバイデン政権が、ミャンマー情勢に関心がなかったことがあげられます。ミャンマーどころか、アジアそのものにも関心が無かったともいえる。
 クーデターが発生する前に、空母の一隻でも派遣すればクーデターの発生は防げたかもしれないし、仮に発生しても、アウンサンスー・チー女史の救出には成功できただろう。そうすれば、その後ミャンマー情勢はかなり違ったものになったはずだ。
 さてクーデターの中心となったミャンマー”国軍”とは何者か?名前だけか見ると、ミャンマー国の軍隊のように見えるが、実態は”国軍”と称する軍閥と見たほうが良い。その中心が、ビルマ中央平原を縄張りとし、ミャンマー最大の民族であるビルマ族である。
 元々ミャンマーは他民族国家である。19世紀末、ミャンマーを植民地としたイギリスは、部族間対立を利用して、間接支配を行ってきた。20世紀になると、みゃんま0にも独立機運が高まってきた。その中心となったのがビルマ族である。
 昭和17年、日本軍はミャンマーに侵攻し、殆ど抵抗のないままミャンマーを占領した。それは、それ以前にミャンマーに潜行していた日本軍情報員がビルマ族と連絡をつけ、イギリス軍の後方攪乱をやっていたからである。この時ビルマ族のリーダーだったのが、アウンサンスーチー女史の父親であるアウンサン将軍だった。
 ところが日本軍はミャンマーの独立を認めるどころか、軍政を敷いた。この結果ビルマ族は日本軍に見切りをつけ、イギリス軍に寝返った。イギリスはそれ以前からもビルマ族と対立する周辺部族に軍事援助を行い、日本軍の後方を脅かす様になった。この結果起こったのがインパール作戦である。
 戦後、アウンサン将軍を中心とする政権が出来たが、親英派に傾いたアウンサン政権に対し、民族派のネウイン将軍がクーデターを起こし、ビルマ族中心の軍事独裁政権が誕生した。戦後ミャンマー独特の社会主義政権はここから始まる。この政権はおおよそ70年近く続いたが、今世紀始めに民主化に移行。やれやれと思った矢先に1年前のクーデターである。
 何故こうなったのか?一つはロヒンギャ問題である。もう一つがアメリカがオバマ政権以来アジア・太平洋問題への関心が薄れたことである。ロヒンギャ問題は、単なる少数民族問題ではなく、背後にバングラデシュの様なイスラム勢力があり、民族間対立というより宗教対立の要素もある。
 もう一つ、ブッシュ政権以来、アメリカの外交的関心が中東にシフトし、南アジアへの関心が薄くなったこと。これに比例して、中国の存在が大きくなった。中国にとってミャンマーは一帯一路の重要中継点である。アメリカの存在感がなくなれば、当然中国の存在が大きくなる。それにも拘わらず、バイデンはこの2年間、南アジアには何ら手を打ってこなかった。その付けが今来ているのである。
(23/03/28)

 ペロシは二日深夜に台湾に到着。一泊し四日には韓国を経由して日本にやってきた。その間、中国は何もせず、日本にいた四日に数発のミサイルを発射し、台湾周囲で海上訓練をやっただけ。目の前をアメリカNO3が通るのを黙って見過ごすことはできないが、出来ることはせいぜいこの程度だ。
 さてこの海上訓練を見ると、現在の中国の台湾解放作戦の一端が垣間見られる。筆者はこれまで、軍事解放は対岸の福建省を根拠地に、空軍で台湾海峡の制空権を握り、福建省から台湾南西部海岸へ陸・海軍による強行上陸作戦を実施するものと思っていた。ところが今回の中国海軍の海上演習は、台湾島を取り囲むように5箇所の海域で同時に行われている。これは台湾島の海上補給線を断ち切り、孤立させ、台湾世論を分断し自滅を誘う兵糧攻め。中国古来の「戦わずして勝つ」戦法である。この作戦の前提は72年の米中共同声明にある「一つの中国」論である。これがある限り、アメリカは台湾戦争に直接武力介入できない。今のウクライナがNATO 未加盟だから軍事介入できないのと同じである。従って出来るのは軍事支援だけ。しかしそれも中国が台湾を海上封鎖してしまえば不可能になる。
 従って台湾防衛のポイントは、この封鎖網を如何に何処で断ち切り、台湾への補給線を確保するかである。無論可能である。例えばフィリピンから日本本土を連ねる第一列島線沿いに米艦隊を配置して、中国艦隊を逆包囲する。その上で、大陸から中国艦隊への補給路を台湾空軍で断ち切る。台湾への補給はグアムから米海軍の護衛で行う。ウクライナへの海上補給はボスフォラス海峡がネックになるが、西太平洋にはそんな制約はない。又中国の軍事侵攻が本格化した段階で、台湾が一方的に独立宣言したらどうなるか?アメリカは直ちに承認して軍事介入に踏み切る可能性もある。
(22/08/05)

 今夕、アメリカ下院議長のペロシが、台湾を電撃訪問するという予想。さてこれで何が起こるか? 米中緊張は一時的に最高度に高まり、両国間で非難の応酬が続くだろうが、そのうち収まり元に戻るだろう。
 理由は緊張が高まったその先に何が待っているか?の見極めだ。勿論台湾武力解放か、そこまで行かなくても、台湾海峡の中国による実効支配だ。現実には米中双方ともそれは望んでいない。但し、アメリカは10月には中間選挙、中国も同じころ全人代が、今月には北載河会議がある。だからどっちも弱気は見せられないという事情はある。だからといってそれは戦争を始めてよいという理由にはならない。
 第一中国軍は未だ台湾全面軍事解放を完遂出来る水準ではなく、その準備もできていない。今の中国軍は、下士官兵から士官将校まで、みんな一人っ子だ。ウクライナにおけるロシア軍の損耗を見れば、軍事行動には躊躇する。なぜなら今の習政権は、強権的であるが、本質的にポピュリズム政権だからだ。
 中国が極超音速ミサイルでアメリカ空母一隻を撃沈するとする。しかし同時に中国は保有する空母三隻を一度に失うだろう。まともな頭を持って居ればそれ位の計算は直ぐに出来る。もしそうなれば、中国では習近平の求心力は一挙に縮小低下。下手をすれば共産党独裁体制も崩壊する。ポイントはバイデンが正確冷静に事態を把握し、アメリカの力を信頼できるかどうかだ。肝心なところで、誤ったメッセージを出したり、判断を誤るのが、この政権の悪い癖だ。
(22/08/02)

 スリランカ経済がとうとう破綻状態。外貨準備も底をつき、ガソリンも自前で輸入出来ないから、社会経済活動はストップ。文明以前の石器生活に戻らなくてはならない。その原因は中国からの巨額の借款。日本や西側からの投資は、返済能力や資金の透明度等厳しいチェックを受けるが、中国はそんなことはない。中国政府の認可さえとれば、あとはやりたい放題。現地の有力者にわいろをばらまいて、ついでに中国共産党幹部にもばらまいて、プロジェクトをものにする。資金は民間からの高利の借入。
 果たしてスリランカは何を担保に払えなくなる程の巨額の借金をしたのか?それは中国資本で作った港湾の、99年使用権の中国への譲渡。スリランカはこれを渡せば借金は返さなくても構わない、と勘違いしたのか?ところが中国はそうではなかった。借金も変えせというわけだ。
 さてこの結果はどうなるのか?考えられるのは次の3ケースです。
1、借金は棒引きにしてやるが、その代わり港湾とその周辺地域を中国施政権地区にする。19世紀から20世紀に掛けて欧米列強がよく使った帝国主義的手法です。
2、スリランカ政府に中国人スタッフを送り込み、実質的に中国支配下に置く。かつての満州国モデルです。
3、おとなしくあきらめる。あり得ませんが、その代わり借金をどこかの国に肩代わりさせる手もある。
 ソロモン群島始め、今中国が虎視眈々と狙っている、南太平洋諸国もいずれこうなる運命がまちかまえています。
(22/06/23)

 東京でIPEFやQUAD会議をやっている隙を狙って、中国の王毅が太平洋諸国を歴訪し、太平洋版一帯一路というべき共同経済投資計画をぶちあげた。ところがその中に安全保障に関する項目があり、これを不安視する国が出て、敢え無く合意は反故になった。
 具体的にはソロモン諸島との条約案の中に、安全保護条項というものがあって、「中国人に危機が及んだ場合、現地政府の要請で中国が軍事介入出来る」という内容。これが事前に漏れたため、ミクロネシア連邦が中国との条約締結に反対した。
 この手の条約は、19世紀の帝国主義時代に使い古された手法。例えば工作員(第5列ともいう)を潜入させ、これに対中国人暴行・・・住宅への放火等・・・を行わせ、現地政府に治安回復を要求する。それにもたもたしていると、沖にはちゃんと中国艦船が待機しているという具合だ。もちろんこれから中国軍が上陸して、島全体を占領してしまう。日本だって昭和初期には中国侵略のため、この手を使っている。そんなことも知らないで、中国から上手い話を持ち掛けられ、賄賂を受け取って国を売ってしまう愚か者が、このソロモンの首相だ。
 つまりこの経済協力条約は、最終的には中部太平洋地域での中国のプレゼンスを確立するため準備と考えられる。では何のためにそんなことをするのか?色々な見方が」ありますが、筆者はその中で、古くからの太平洋2分割計画が最も大きいと考えています。これは80年代に中国の海軍高官がアメリカの太平洋艦隊司令長官に対し、「日付変更線を境に、太平洋を米中で東西に2分割しようではないか」と冗談交じり云ったことが始まりだ。無論、アメリカ側は無視したが、中国側は本気だったのである。
 その手始めとして、ポリネシア、メラネシア海域を中国よりにまとめ、南はアメリカ、オーストラリアを分断し、北はアメリカ、日本・韓国・台湾を分断する。そのためには島嶼各国と友好同盟関係を作る必要がある。まず経済通商関係を作り、その後相互防衛条約を結ぶ。ただそれだけでは十分ではない。島嶼地域に中国軍を配置し、島嶼各国ににらみを利かせると同時に、アメリカとその同盟国を牽制する。
 実はこれは太平洋戦争当時、日本がやったこととそっくりなのである。所謂「不沈空母」戦術である。島嶼に航空基地を置いて、それにより米海軍の動きを牽制する。結果はどうだったか。確かに航空基地のある島は沈まない。しかし移動もできない。補給路を米軍にズタズタにされた結果、不沈空母は孤立し、最期は玉砕しかなかった。
 今中國がしようとしていることは、旧日本海軍がやった失敗の焼き直しである。中部太平洋海域は中国本土よりは遠い。一方島嶼各国は燃料始め殆どの生活物資を輸入に頼っている。近年の人口増で水すら不足するケースも出始めている。そこに大量の中国人が入ってきたら、それだけでも生活は影響を受け、反中感情が高まるのは当たり前。まして中国がアメリカと無用な対立・・・例えば台湾問題・・・を起こし、その煽りで中国からの補給路が途絶すれば、島嶼各国は死活の瀬戸際に追い込まれる。アメリカは決して中国軍基地を攻撃したりはしない。但し島を包囲して出入りを閉ざす。その結果、島嶼各国の島々に駐屯した中国軍兵士を待っているのは、餓死か玉砕である。無論、島民もその道ずれになる。
 その他宇宙基地を作ろうとしているとか、海底資源確保のためとか色々意見がありますが、どれも大したことはない。宇宙基地だけなら二国間協議だけで十分で、あんな広い海域は必要ではない。海底資源とは何か?マンガンやニッケルの鉱脈があると思っている人がいるらしいが、それはマンガン団塊を鉱脈と勘違いしたのだろう。マンガン団塊など幾ら片間っているところでも、何1000mもの深海底で、甲子園球場の何10倍もの広さに一つあるかどうかの話だ。こんなのを採取するなど夢物語。ヒマラヤやカラコルムの付加体で探したほうが未だマシだろう。
 キリバスの近くに小さな島があって、今島の隅から隅までに達する2000m程の滑走路がある。これを中国が狙っているらしい。ある元防衛研究所のコメンテーターが「いずれ300mに拡張するでしょう」といっていたが、拡張は出来ません。南太平洋の島嶼は太平洋プレートの湧き出し口に出来た海山が、プレートに乗って移動してきたもの。海山の頂部が波浪浸食で平坦化したもの。その周囲は急斜面となって深海底に落ち込む。その深さは概ね6000m。仮に海山斜面の傾斜を45゜とすると、1000m拡張しようとすれば、末端での水深は約1000mに達する。1000mの埋め立てとかクイなど施工不可能。南太平洋の海は南シナ海のようなヤワな海とは違うのだ。
 つまり南太平洋海域の過度な進出は、将来中国経済を蝕むだけの効果しかもたらさない、というのが結論である。これはアフリカその他に進出を試みているロシア=プーチン政権にとっても同じことが言える。
(22/06/01)

 日本で初のIPEF及びQUAD会合が開かれました。IPEFとは何者か?インド太平洋経済協力協定というから、経済問題について、何らかの具体的な結果が出せる枠組み出なければならない。それが最も具体的に表れるのが関税問題だ。ところがこの協定、関税には一切触れず、公正な取引だとか、サプライチェーンの構築だとか、なにか抽象的な事柄ばかり。そんなものは、とっくに解決しておかなければならないことだ。
 しかし注目すべきは、どちらにもインドが参加していること。インドのこの地域における重要性を、アメリカがやっと認めたわけだ。この会議、一見すると太平洋地域の国々が、インドをやっと招いた印象だが、実態はむしろインドのほうが参加したかったのではないか、と思われる。
 今のインドの地政学的位置はかなり微妙である。まず北に宿敵中国が控えている。インドに接するネパールは近年、中国寄りを強めている。隣のパキスタンは、インドと対立し、中国との関係が深い。今年の初め、パキスタン西部で中国人を狙ったテロが発生しました。ということは、パキスタンには国民が見逃せないほどの中国人がやってきているということだ。
 又これも近接するスリランカでは、経済不況で住民の暴動が発生した。原因は中国による過剰投資で債務不履行に陥ったこと。この債務は主に中国資本によるものだが、仮にデフォルトとなると、中国が債務履行を迫って、軍事力を行使するかもしれない。
 又これも海を隔てたミャンマーでは、中国が軍事政権と組んで、中国雲南省からベンガル湾に達する鉄道を計画している。これが完成すると、中国本土からアフリカ・中東までアメリカに邪魔されない「海のシルクロード」が完成する。つまり現在インドの周辺では、北はヒマラヤ・カラコルム、南はベンガル湾からインド洋・アラビア海に至る海のシルクロードで、中国によるインド包囲網が着々とつくられているのだ。
 こうなったというのも、インドが永年、非同盟・中立という中途半端外交路線に安住し、中国への警戒を怠っていたからである。もモデイもやっとその点に気づいた。だから何らかの経済・外交同盟をつくりたい。しかし従来の中立路線から、なかなか自分では言い出せない。それは国内に反欧米の反対派も多いからである。IPEF、QUADは西側諸国がインドを招いたというより、インドにとって渡りに船のようなもの。
 但しインド商人だからしたたかで、日本の様に自分を安売りしない。ここで切るのがロシアカード。ウクライナ戦争での国連対ロ非難決議には棄権したり、経済制裁には反対したり、おまけにロシアから原油を安値で買い叩いたり、やることが一々、アメリカやNATOの勘に触ることばかり。
 その理由に挙げられるのが、これまでのロシアからの軍事支援。インドは従来武器をロシアから購入してきた。その腐れ縁でロシアを見捨てられないのだ、という説。しかしウクライナ戦争のこれまでの経過を見れば、如何にロシア製武器がお粗末で頼りにならないのは直ぐにわかる。普通ならロシア製は止めて欧米製に切り替えるのが当たり前。かつて第四次中東戦争の後、エジプトはソ連製戦車の無能ぶりにあきれて、アメリカ製に切り替えた。それでもロシア製に拘るなら、その背後に、インド(今のモデイ政権)とロシア=プーチンとの間に何らかの腐れ縁・・・つまり汚職、腐敗、利権・・・があるに違いない、と誰でも思うのである。そういえば、IPEFの参加条件として、人権・汚職排除というのがあったが、主にアジア諸国の反対で消されてしまった。インドも反対派だっただろう。
(22/05/24)

 緊迫を高めるミャンマー情勢。昨日はアメリカ大使館に銃弾が打ち込まれたという情報もある。何かアメリカは軍事介入が可能な理由付けとタイミングを見はらかっているようだ。最近日本、特に東京と沖縄で増大している米軍の低空飛行。東京では、ビル街の中をすれすれでヘリが飛行している様子が見られている。こういう低空飛行は市民だけでなく、乗っている乗員にも大きな危険が及ぶ。もしビルに激突して乗員が死亡すれば議会から猛反発を受け政権は苦境に立たされる。只の遊びや通常任務ではなく、何らかの目的を持った訓練飛行と見た方が良い。しかもこれらの航空機は海兵隊の所属だ。
 アメリカ海兵隊は、大統領の命令一下、いつでも何処でも出動できるよう、24時間体制で訓練・待機を続けている。東京での低空飛行を何らかのミッションへの訓練と考えると、それは市街地突入作戦の訓練である。今アメリカがこれを実現しようと思えば、ミャンマー特にヤンゴンやネピドーでの作戦以外に考えられない。
 作戦目的は(1)アウンサンスーチー女史他拘束されている民主派議員の救出、(2)国軍幹部の殺害又は拉致。そしてもっと大きい目的は(3)中国(習近平)とロシア(プーチン)への警告・脅し。俺を舐めんなよ、なめるとてめえらもこういう目にあうぞ、というわけだ。
 かつてカーター政権の時だったか、核開発を広言していたリビアに対し、アメリカがいきなり爆撃を仕掛けた。イギリスの空軍基地を発進したF111爆撃機がリビアのカダフィ宮殿を空爆したのである。この時カダフィは砂漠に居て無事だったが、これで怯えてしまって核開発を諦め、すっかり大人しくなってしまった。その効果を狙って、ミャンマーをネタに反米非民主国家に対し断固たる姿勢を見せる可能性がある。トランプとは全く逆の価値観外交だ。
 さてかつてトランプに最も好意的で、対中国にも曖昧だったアベ政権のNO2だった菅義偉を、はたしてバイデン政権がどう評価しているのか見ものだ。日本人はよく分かっていないようだが、白人と云うのは執念深いのだ。
(21/03/28)

 ミャンマークーデター事件について一言。本日(21/02/06)朝、関西系ローカルテレビ番組(土曜朝10時6ch)で・・・あまり真面目に見てはおらず、隣室の音を聞いていただけ・・・聞き捨てならないことを言うアホがいた。
1、ミャンマーと海外との仲介をするのが日本の役割だ。……某評論家
,2、例え軍事政権でも、ミャンマー国民が幸せになるのが一番だ。・・・・・最近勲章も貰った大阪の某漫才師
1、について;今欧米諸国とミャンマー軍事政権との間に軋轢が生じている。これが進行すると対立となり、ミャンマー経済に悪影響を与える。それを防ぐためには日本が仲介役をかって出るべきだ。一見まともに見えるが、その本音は今ミャンマーに投資している日本企業を救済するため、というせこい発想。
 これは一時的な効果・・・と云っても日本のそれもミャンマーに投資している僅かな企業・・・の権益を短期的に守るだけの効果しかない。しかもミャンマーの軍事政権の存続を認めることになって、欧米・・・特にアメリカ・・・との関係長期的に見ればマイナス効果しかない。
 日本が欧米と足並みをそろえてミャンマー経済制裁に踏み切った時、ミャンマー進出日本企業が不利益を被るのではないか、というのが”某評論家”達の意見だが、そういう企業が海外進出をやっているのはミャンマーだけではない。ミャンマー工場が潰れても会社自体が潰れるわけではない。おまけに今は海外進出をやる時は、必ず海外損失保険に入ることが義務付けられている。これは1980年のイラン/イラク戦争以来だ。それよりうっかりミャンマー軍事政権にすり寄って、他国の顰蹙をかって不買運動をやられるリスクの方が国益を棄損する。
 1990年中国天安門事件の時、欧米各国は対中経済制裁に奔ったが、日本だけ「これでは中国を孤立化させる」と云って、制裁に同調しなかった。この時の内閣は竹下政権。この政権下で日本外務省は対中ODAをやっていた。これを陰で取り仕切っていたのが伊藤忠という商社。その会長が瀬島龍三だった。欧米と足並みをそろえて対中制裁に踏み切れば、伊藤忠は大損害。自民ー竹下利権も失われる。結果として残ったのは、日本の孤立と中国の覇権国家化。
2、について;これこそ最悪のコメント。当に「奴隷の幸福」、「乞食の満足」の典型だ。人はパンのみで生きるものにあらず、と云ったのはナザレのイエスだが、中国にも「渇しても盗泉の水は呑まず」という言葉もある。要するに、目先の富貴・利益ばかりを追求して、人間としてのプライドまで捨てるな、ということだ。
 上で云ったように、この番組でミャンマー状勢について語った”某評論家”達に欠けるのは”恥”の意識である。彼らは一度東京で、反軍政デモをやっている在日ミャンマー人の前で、同じ言葉を発すればよい。
(21/02/07)

 アウンサンスー・チー女史の最大のミスは、昨年のアメリカ大統領選直後、あるいは今年のアメリカ大統領就任式直後にバイデンに電話を入れなかったことだ。この電話でバイデンから支持の言質が得られれば、軍部もクーデターを諦めたかもしれない。無論スーチーの電話は盗聴されているだろうが、それこそ幸。スーチー政権とアメリカバイデン政権が密接に結びついていることをダイレクトに伝えられるのだから。
 それにしても不安なのは、アメリカの情報能力・・つまりCIA・・・の低下だ。昔なら軍部クーデターの情報を事前に掴んでいたはずだ。ことの始まりは90年代クリントン政権下でのCIA改革。これによってCIA予算が大幅に削られてしまった。この状態は続くブッシュ、オバマ政権下でも改善されず、更にトランプ政権下でズタズタにされた。
 自分の勘とFOXニュースしか信用しないトランプは、CIAの報告なんか相手にせず、ジョンウンは良い奴だと思い込んでいた。その挙句がポンペイオのようなゴマすりしか能のない人間をCIA長官にして更に国務長官にまでしてしまった。これではまともな国際情報は入ってこず、冷静な分析もできない。その裏で中国やロシアはやりたい放題だった。はたしてバイデンはこの負の遺産を清算できるでしょうか?
 
(21/02/06)