ロシア人とユダヤ人


 ガザではなく、ヨルダン川西岸地域でもエスカレートするイスラエル入植者によるパレスチナ人への暴力行為、前にブリンケンが非難したが、今度はバイデンが暴力行為に及んだ4人のイスラエル入植者を制裁対象にした。しかしネタニヤフはそんなこと無視してパレスチナへの攻勢を強める。秋の大統領選でトランプは勝つと見込んでいるのか?それともかねて昵懇nプーチンと示し合わせて、米大統領選に干渉しようというのか?
 さてこの入植者とは一体何者か?入植者というからには元々居た連中ではない。90年代始めの東欧・ソ連崩壊で、俄かに高まったのが個別民族主義。これに応じて東欧・ロシアを中心にネオナチ運動が生まれ、それに伴い反ユダヤ主義が復活した。戦後45年間、東欧・ソ連地域を支配していた社会主義は、原則としてあらゆる差別を否定する。しかしこれは建前であって、人間の深層心理の中には何らかの差別意識というものがあるものだ。ヨーロッパ人の場合、それの最も際立たものが反ユダヤ主義である。そのため各地で反ユダヤ運動が始まった。これに危機感を感じたイスラエル政府は90年代後半からイスラエル帰還運動をを始めた。
 その結果、イスラエルの人口が急増してしまった。急増した新イスラエル人を何処に住まわせるか。西部の海岸地帯は戦後移住してきた第一次帰還者で一杯。新たな移住者を迎え入れる余地はない。そこで始めたのがヨルダン川西岸地区の7パレスチナ自治領への入植である。これは97年のオスロ合意で国際法違反とされ、一旦入植は停止されたが、イスラエルのラビン首相がユダヤ教正統派の若者によって暗殺されたため再び不穏となり、又元に戻ってしまった。更に極右ユダヤ教正統派をバックとする現在のネタニヤフ政権下で、あたかもイスラエル政府の許可を得たかのように某弱不尽に振舞う様になったのである。「もしトラ」になれば、更にエスカレートするだろう。
 さてこのようなイスラエルが強硬姿勢を」とるのは、周辺アラブ諸国に対する圧倒的な軍事力の差がある。そしてその軍事力を支えているのが年間60億ドルに上るアメリカの軍事援助。そしてこれはアメリカの軍事援助の反武運以上っ占める。なお日本はアメリカの軍事援助の恩恵は受けていない。むしろ逆に吉の提供や、役立たずの中古兵器の買い取りでアメリカを軍事援助しているようなものだ。
 それはさておき、面白い情報がある。それは今年始めガザ侵攻が本格化した時のアメリカの世論調査結果である。これによると、」アメリカ国民の約7割がイスラエルの軍事侵攻に賛成。党派別では共和党支持者は8割強、民主党支持者は6割程度が賛成。世代別で見ると、賛成者は65才以上の高齢者の85%だが、40~50才代は60%程度に落ち、更に20~30才代のいわゆるZ世代では、これが20%代に落ち込んでしまう。
 では10年後ではどうなるだろうか?アメリカで物を言うのは議会である。今85才以上の高齢議員はあらかた居なくなる。40~50才代も少なくなる。今のZ世代が議会に進出するようになる。20年後では更にこの傾向は強くなる。議会の多数はイスラエルやユダヤ人問題にあまり関心のないZ世代議員が多数を占めることになる。そうなれば、そうなればイスラエルに対する過度な軍事支援が疑問視されるのは当然だ。アメリカお軍事支援が滞ればどうなるか?ウクライナは大国で人口にも資源にも恵まれているが、イスラエルはそのどちらもない。今のうちからアラブと妥協する道を選び、国家の存続を諮ることが賢明な生き方である。
(24/02/06)

  2023年も大勢の有名人が無くなりました。その中で特に大きな名前はアメリカの政治・経済学者ヘンリー・キッシンジャーでしょう。筆者は彼が未だ生きていたのかとビックリたのと同時に、やっとあの世に行ってくれたかという思いをした。キッシンジャーといえば、なんといってもベトナム戦争とその終結を目指した米中国交回復である。この衝撃位驚いた我が国首相田中角栄はアメリカに無断で中国に跳び日中国交回復を果たした。今でも角栄の衣鉢を継ぐ自民党内茂木派、二階派が外交では親中とみなされる所以である。
 1964年、実質的にリンドン・ジョンソンが始めたベトナム戦争は2年も経つと行き詰まりを見せ、国防長官は元クライスラー会長のマクナマラに交替した。彼は戦争が行き詰まったのは無駄な作戦が多く、軍事力が有効に使われていないと考え、に市場原理を持ち込んだ。つまりある作戦に擁した費用(コストC)とそれによる戦果(パフォーマンスP)との比(P/C)を最大化するべきとした。最近誰でも口にするコスパというのはこれに由来する。
 しかしマクナマラのビジネス手法は、市場原理が働く資本主義社会では通用したが、市場原理を無視する民族解放闘争では全く機能せず、さらにベトナムの泥沼化が進んだ。1972年大統領選で勝利したニクソンが国務長官に起用されたのが、キッシンジャーである。かれはマクナマラ戦法を改め、アメリカの利益を最大化する路を進めた。それはマクナマラ戦略が個々の作戦の積み重ねで最終勝利を得るという旧式戦略だったのに対し、一気に決着をつけるという革新的なものだた。それは北ベトナムの背後にあるのは中国である。中国を戦争からきりはなすことが重要である。そのためには、ベトナムを犠牲にしてでも中国と和解すべきである。
 この方法で確かにアメリカはベトナム戦争の「泥沼から灰出ることができた。そのあと何が起こったか?とりあえずは中国やベトナムの近代化には貢献したが、一方で今のような中国の軍事大国化も招いたのである。その理由は、戦略の方向性をあまりにアメリカ一遍同に置いたからである。
 さて、今のウクライナ戦争。戦争が始まった1922年の夏ごろ、キッシンジャーはウクライナはロシアに勝利できないとして、南部4州のロシア併合を認め、その上でウクライナのNATO加盟を認めるという案を出した。この時期はウクライナ側の反撃も活性化しロシアのこうげきも鈍化しだしたときである。このタイミングでこんな話をすれば、ウクライナの足を引っ張るだけである。紀伊死因ジャーは政治的にはアメリカ共和党に軸足を置く。これでウクライナ支援に否定的な共和党を勢いづかせるのは言うまでもない。
 最近欧米でとみに流行るのがウクライナ不利報道。今年6月から始まった反転攻勢は行き詰まり、戦線は膠着。これではウクライナを支援しても無駄ではないか、それならいっそウクライナを犠牲にしてロシアと妥協したほうが得だというはっそうである。これはかつてベトナムを犠牲にして中国と妥協したキシンジャーのやりかたそのものである。或いはこれこそがイザヤ・ベンダソンの云うユダヤ人の生き残り手法か。
(23/12/30)

 バイデンの説得にも拘わらず、ネタニヤフは聞く持耳たず戦争継続を主張。一方ロシアでは2年ぶりに国民対話と大記者会見が実施された。そこでプーチンは戦争目的は変わらないとし、戦争継続を訴える。さて両者に共通するものは何か?ユダヤ人(特にイスラエルに住むユダヤ人とロシア人に共通するのは第一に、強烈な選民意識。次に周囲から圧迫されているという被害者意識である。この両者が永年の間に双方の民族的トラウマとなった。
1、選民意識;ロシア人の選民意識はキリスト教受容の過程にあると考えられる。10世紀末、キーウ公ウラジミールがギリシアからキリスト教を受け入れた。次いで翌年、モスクワ大公妃オリガが洗礼を受けた。これがロシア人がキリスト教を受け入れた最初とされる。
 この時のキリスト教はギリシア正教だった。実はこの当時、西方キリスト教社会は大変な危機的状態にあった。東方ビザンチン帝国では、シリア・アナトリアの大部分はイスラム勢力に奪われ、ビザンチン帝国はバルカン半島と、黒海・地中海の沿岸部だけ。西方カトリック世界でも北アフリカ、イベリア半島やイタリア南部の島嶼地帯はイスラム勢力下になった。ここにロシア・キーウ大公国がキリスト教化すれば、西方のカトリックへの大きな対抗勢力になるし、教勢も拡大できる。願ったりかなったり。
 一般に宗教に限らず、ある集団が他から圧迫されると、返って結束を強める。宗教やイデオロギー集団はより教義主張を強め過激化する。この時期、ロシアーキーウ地域が受け入れたキリスト教は、そのよな尖鋭化したキリスト教だったのである。
 その次が15世紀に発生した「モスクワ第三のローマ」論である。1453年東ローマ帝国は滅びるが、黒海東南にロザリンドという東ローマの植民都市王国があった。ここの国王は東ローマ皇帝の血を引いていたので、我こそはローマの後継者と主張した。ある時王国の王女ソフイアがローマ(イタリア)を訪れた。丁度その時、モスクワ大公イワン三世も嫁とりにローマを訪れていた。イワンはソフイアを連れてモスクワに戻り、2人は結婚した。そしてイワンは妻がローマ帝国の後継者であるから、自分も後継者という奇妙な理屈を持ち出した。そして彼の孫に当たるiイワン四世(雷帝)は、「第一のイタリアのロ^マは堕落した。ダニのローマは滅びた。モスクワこそ第三のローマと」としてロシアこそローマ帝国の正当な後継者、自らを皇帝(ツアーリ)と名乗った。つまりロシア人こそ神に選ばれた民族であると宣言したのである。これがロシア人選民思想の始まりである。」
 ユダヤ人の選民思想の起源は、旧約聖書「創世記」にあると思われる。つまり神エホバが作った最初の人間アダムとイヴが人類の祖とされるからである。そしてその直系の子孫がユダヤ人というわけだ。
 さてここでよく分からないことがある。アダムとイヴが楽園を追放されて数100年後、神は息子のイサクとカインに貢物を要求した。この時、兄のカインは自分で作った作物を差し出したところ、神は怒ってカインを追放した。アダムの子孫は羊とそれから執れるもの以外、得てはならないのである。
 追放されたカインはそこで神を信じない人々と出会い、度量衡や貨幣を発明してぼろ儲けした。さてこの神を信じいない人達はだれが作ったのか?以前これを知り合いの自称クリスチャンに聞いたら何も答えなかった。
 それはともかく旧約の創世記は、むしろ後世につくられたナラテイブだろう。これは各地の神話伝説でも穴時である。日本でも古事記・日本書紀は天武・持統期にへんさんされたもの。その中の神代紀は持統天皇の神格化のために作られたものと云われる。
 そう考えれば、旧約の創世記はユダヤ人の選民意識を正当化するための創作と考えたほうが良い。では何故選民意識が必要だったのか?それはバビロン捕囚を始めとする他民族の圧迫から、ユダヤ人のアイデンテイテイーを守るためだろう。


2、被害者意識;今年の国民対話でプーチンは対ウクライナ戦争の意義を①ウクライナの非ナチ化、②ウクライナの非軍事化、③NATOの拡大阻止の三点を挙げている。これらのうち最も重要な点は③NATOの拡大阻止ということはいうまでもない。これで伺えるのはロシアの対西欧不信と恐怖心である。その原因とされるのは19世紀始めのナポレオン率いるフランス軍の侵攻、20世紀に入ってからの対ドイツ戦争。
 これによってロシア人の対西欧不信が始まった様に思っている人が多いようだが、実態はもっと複雑である。筆者は被害者意識のベースに「絶望」があるのではないかと考える。
 「絶望」の始まりはロシアの持つ圧倒的な広さだろう。何処までも続く原野の中では、人は方向感覚がなくなり、自分のいる場所が特定出来なくなる。そしてグルグル廻っている内に元の場所に戻ってしまう。リングワンデリグという現象である。それを繰り返しているうちに、人は何をやっても無駄だという絶望感に襲われる。スターリンとプーチンの区別が出来なくなるのだ。
 13世紀半ばロシア、ウクライナはモンゴルの侵攻を受け、それから200数10年間に渉って異民族支配を受けた。200年以上も唯々諾々と異民族支配を受け入れるとは、根底に逆らっても無駄だという「絶望」意識があったのだろう。16世紀末にモンゴル支配が終わっても、周囲は敵だらけ。ボリスゴドノフの死でリューリック朝が終わりロマノフ朝が誕生するまでの巣10年間、モスクワはポーランドの占領されたままだった。
 ピョートル大帝が出てロシアは本格的に領土拡張に踏み出すが、それでも北西はスウェーデン、西はポーランド・リトワニア連合王国、南はウクライナ、カフカス地帯はオスマントルコ帝国に囲まれている。これらを排除し領土にするのに200年近く」掛かっている。その間ズーッと戦争の連続だ。
 そしてそれが周囲に対する被害者意識につながる。過度の被害者意識は、被害を加えていると思われる相手に攻撃的になる。いわゆる無差別殺人がこれである。相手にやられる前にやってしまおう、というわけだ。プーチンは当に相手(ウクライナ)にやられる(ウクライナのNATO加盟)前にやってしまおうと考えたのである。
 ユダヤ人の被害者意識は永年に渉るユダヤ人差別によるもの、とされる。しかしユダヤ人差別はヨーロッパ特有の現象でアジアやアフリカでは行われていない。それも中近世以降である。ある番組で「アラブによる圧迫で」などと云ったのがいたが、これはとんでもない間違い。アラブがユダヤ人を圧迫したことは一度もない。ユダヤ人をパレスチナから追放したのはローマである。追放されたユダヤ人はペルシャやアフリカなど各地に散らばったが、ユダヤ人を差別したのはヨーロッパキリスト教社会だけである。
 何故差別を受けたか?これには2種類がある。一つは職業差別、もう一つは居住地差別である。中近世のヨーロッパでは手を使う職業・・・つまり職人・・・はキリスト教徒に独占されていた。彼らはギルドを作って汎ヨーロッパ的に活動し、その力は国王も及ばなかった。その結果異教徒であるユダタ人はまともな職業につけず、医師・教師・金融などを営むようになった。これらのうち前2者は誰でも出来るものではない。そこで金融業がメインになる。
 金融業といっても実態は路地裏の質屋に毛が生えたようなもの。しかし庶民にとっては必要不可欠な民間金融である。しかし19世紀に入ると、西欧で資本主義が発展強大化する。金融業に資金が集中するようになり、遂には大資本家や財閥を形成するようになる。そしてこれらを支配していたのがユダヤ人だったのである。
 だったらユダヤ人の金銭感覚は鋭い物だったはずだ。しかしそうだろうか?彼らは目先の利子の計算とか、何処の誰にカネを貸したかとうい短期的利益には強いかもしれないが長期的利益はあまり強くないようだ。例えば今回のガザ侵攻では、連日莫大な量の爆弾を落しガザの街を破壊しつくした。その理由はハマスが潜んでいると考えられるトンネルを破壊するためだとされる。ところが侵攻後ネタニヤフはこれからも永い戦いが続く、これからはトンネルを一つ一つ潰していくという。トンネルが空爆で破壊されていれば、永いトンネル内総統選は必要ないし、第一実行もできない。つまりあの空爆でもハマスの籠るトンネルは破壊できなかったわけだ。事実イスラエル軍の公開するトンネルは殆ど傷一つついていない。ということはあの空前の空爆はみんな無駄だったということだ。そして落した爆弾の大部分は、ユダヤ人の影響が大きいアメリカの援助によるもの。両者で無駄の造り合いをやっていた。こんな無駄なことをする民族が金銭や経済感覚が鋭いとは到底思えない。親のすねをかじるドラ息子である。
 一方資本主義が未発達だった東欧・ロシアでは、ユダヤ人は相変わらず社会の底辺にあったが、ここでも資本主義が浸透すると格差が生まれてくる。所得の低いキリスト教ととってユダヤ人はライバルになる。かくて東欧やロシア各地でユダヤ人排斥運動が産まれる。
 居住地差別といえば直ぐにゲットーを思い浮かべるが、あれは始めからあったものではない。世界で最初にゲットーが作られたたのは、19世紀末、ロシア領ポーランドのワルシャワだった。その後各地に作られていったが、多いのは東欧・ロシア。ゲットーは強制居住地だったが、元々ユダヤ人は宗教上の理由から、キリスト教徒と折り合いが悪、く次第に集団で生活するようになりユダヤ人街を作る。これが周囲のキリスト教徒から不気味に見られたとしても止むを得ない。なお経済的成功を収めたユダヤ人が多い西欧世界では、殆どそういうことはない。これが居住地差別の実態である。

3、ロシアとイスラエルの将来
 現在のロシアとイスラエルを動かしているエネルギーは、ロシアでは反西欧(NATO)主義、イスラエルでは反パレスチナ(イスラム)主義である。それらは過度の選民意識と脅迫観念、その反作用は他に対する攻撃性として現れる。
 前回まではその原因となる要素として、ロシアでは中世のモンゴル侵攻に始まる周辺異民族との抗争、イスラエルでは中世以降のヨーロッパでのユダヤ人差別を取り上げた。しかし素因としてこれらがあるとしても、実際にどうだったかは別問題である。
 ロシア人も始めからが反西欧だった訳ではない。それどころか、ロシアは常にヨーロッパになりたがっていた。ロシアが明確に反西欧的にになったのは19世紀に民族主義が高まってから。そして明確になったのは20世紀に入って革命以後、それもスターリン治政下の1930 年代以降である。それも長続きせず1990年東欧・ソ連崩壊までの60 数年だけだった。
 それが再び反西欧てきになったのは08年のチェチェン紛争で東欧の旧ソ連圏諸国がNATOに加盟しだしてから。決定的になったのは14年クリミア併合以降である。僅か10年か15年に過ぎない。イスラエルも似たようなものだ。紀元1世紀のユダヤ(独立)戦争で、パレスチナのユダヤ人はみんな追い出された。追い出されたユダヤ人の大部分が向かったのは、追い出した張本人のローマだった。ローマが滅び、ヨーロッパはゲルマン系諸民族が支配するようになる。彼らには元々ユダヤ人差別という概念がない。
 ガザに於けるイスラエル軍による”残虐行為”について、ユダヤ人やユダヤ系アメリカ人そして欧米人は、よく「永年の渉るユダヤ人に対する迫害の結果」と言い訳するが、実際の処ユダヤ人迫害が行われたのはヨーロッパとロシアだけで、それも中・近世では国家的なものではなく、街中のコミューン内でのトラブルに過ぎない。但し近所からは嫌われていたかもしれない。それは多くのユダヤ人が固まって居住するからで、周りのキリスト教徒からは不気味に見えたのだろう。また、今のネタニヤフの様に他と妥協しないのも原因だ。アラブの商人は値切るとまけるが、ユダヤ商人は決してまけない。組織的国家的迫害が行われだしたのは、19世紀後半のロシア・ポーランドと1936年以後のドイツ・フランスに過ぎない。
 現在のネタニヤフ政権はイスラエル史上最も強硬右派反パレスチナ政権だが、彼自身は大した定見もない日和見主義者。彼が見ているのは、シオニストと呼ばれる右派民族主義者やユダヤ教原理主義者。20世紀始め東欧に住んでいたユダヤ人の一部が、エルサレム郊外の「シオンの丘」の開拓をトルコ政府に申請して許可された。それで「シオンの丘」に移住した人達をシオニストと呼ぶ。
 シオニストは当初問題にもされなかったが、1948年のイスラエル建国でその存在が認められた。彼らが力を持ち出したのは90年東欧・ソ連崩壊で生じた、ヨーロッパ・ロシア地域世界中のネオナチの発生と反ユダヤ主義の復興。これに危機感を感じたイスラエル政府は海外在住ユダヤ人の祖国基幹運動を始める。その結果生じたのがイスラエルの急激な人口増である。これを解決するためイスラエル政府はパレスチナ自治区であるヨルダン川西岸地区への入植を進めた。当然パレスチナ側の反発を招き、起きたのがインテイファーダと呼ばれる抵抗運動。イスラエル政府はこれをテロと決めつけ弾圧を強める。この弾圧を強く支持したのがシオニストだった。今のネタニヤフ政権はこのシオニズム運動の延長線上にある。
 以上述べたことから分かるのは、現在のロシアに於ける反西欧主義もイスラエルの反パレスチナ主義も、実はごく最近に起こったということだ。その起源は永く見積もっても100数年程度、厳密に見ればここ10年か15年のことに過ぎない。人類文明10000年の歴史から見ればほんの一コマなのである。ということはこのような対立も、いずれ直ぐに無くなってしまうということだ。ではそれが何時、どのようにしてだが、無論ここ,1、2年でどういうことではない。しかし20年か30年後には結果が出るだろう。
ロシアとイスラエルの将来はどうなるか? よく考えると、どちらもあまり明るい将来像は描けない。
1)考えられるロシアの将来
 現在のロシアが多くの矛盾とリスクを抱えている。しかしなお世界で大国で居られるのは核兵器もさることながら、豊富な資源である。これがあるから西側がいくら制裁を加えても最後は耐えられる。しかしそのロシアも避けられないリスクがある。それは(1)プーチンの死と(2)止まらない人口減少である。
(1)プーチンの死;現在のロシアが抱えている最大の困難はウクライナの頑強な抵抗である。プーチンもウクライナがここまで抵抗するとは思っていなかっただろう。この戦争はプーチンとその側近・・・たよえばパトリシェフやメドベージェフ・・・の思い込みと誤算から始まった。言い換えれば、プーチンのプーチンによるプーチンのための戦争と云ってよい。これを終わらせるのはプーチンだけだ。そしてそれが上手くいかないから、その代償として極端な国家統制が行われるようになった。その中心にいるのがプーチン大統領である。
 そのプーチンが突然いなくなったらどうなるか?プーチンは紛う型なき独裁者である。独裁者というものは、古今東西例外なく後継者を作らない。後継者候補を複数経てるがお互いに競争させ、場合によっては互いに殺し合いをさせたりする。つまり今のクレムリンの中は実はバラバラの利権集団の集合に過ぎない。それらをまとめているのはプーチンのカリスマに過ぎない。かつてスターリン時代、スターリンは絶対専制君主として振舞い、恐れるものは誰もいない状態」だった、筈だ。その中で自分こそはと思っていたのが秘密警察(CGPU)を握っていたベリア。しかしそNベリアはスターリンの市とともにフルシチョフらによって逮捕され、そのまま処刑された。フルシチョフらが政権をになったが、その根拠は共産党の絶対性である。共産党絶対の時代でこれである。今のロシアには絶対的に国家を指導できる政党は無い。そんなところに絶対君主がいなくなればどうなるか?残されたステークホルダー達は互いに誰も信用していない。となれば分裂と抗争しかない。クレムリンが分裂すれば、それは必然的に地方に向かう。昨年東京で、ロシアの民族独立派の集会が行われたが、なんと28もの共和国や自治領の代表が集まった。要するに今のロシア連邦を構成する共和国の内、なんと28もの共和国がロシアからの独立を望んでいるのであるプーチンの死と同時にこれらの独立志向エネルギーが噴出すれば、ロシアは、革命戦争以来の混乱に陥るだろう。
(2)止まらない人口減少;