国際思想いろいろ

 


 なんとなく中途半端な結論で終わったG20サミット。ここで注目されたのが、インド大統領が国名をバーラタにしようと提案。バーラタとは何者かというと、インド叙事詩で有名なマハーバーラタのバーラタということらしい。マハーはヒンズー語で「大きい」「偉大な」という意味だからさしずめ「大バーラタ」となる。バーラタとはアーリア族侵攻前の先住民の一部族の名前らしい。ということは、他にも沢山部族があったわけで、それらがみんな我も我もと言い出すと、収拾がつかなくなる。
 日本は明治維新後も国名を古代の地域名に過ぎなかった「大和」に戻すことはなく、当時国際的に通用していた「日本ーJapan」を国号に採用し無事に統一と国際化を達成した。もし「大和」としたらどうなっていたか?バラバラになっていたかもしれないのだ。
 当時の日本はそれぞれが半独立した藩王国の集合体。今のインドは連邦制だが、古くは日本と同じ藩王国が乱立していた。王国によって、人種・言語・宗教・風俗も異なる。それをとりあえずくっつけたのは、なんとイギリスだったのだ。イギリスはインド植民地後、全国にイギリスの法律を適用し、軍隊もイギリスの統制下に置いた。そしてみんなそれに倣った但しそれは何もインドの近代化を手助けするわけではなく、そうしたほうが植民地支配に好都合だったからに過ぎない。日本だって朝鮮・台湾を領有化した後、巨額の投資を行ったが、それだってイギリスと同じ魂胆だったから。その延長線上に現在のインド民主主義がある。バーラタに戻すことはインド民主主義を破壊することになりかねない。又、国名を古代の一部族に戻すことは、他部族(地域)の反発を招き、最後はインド分裂の始まりになりかねない。
(23/09/12)

殆ど話題にもならなかったアメリカ=バイデン主催の「民主主義サミット」。約150カ国を集め、ロシア非難決議は賛同国は6割しかなく、強権主義、権威主義に対する民主主義の勝利を謳う筈の共同声明も出せない有様。反対派は主にグローバルサウスと呼ばれる、南半球の発展途上国。何故か?ほんの30年から半世紀程前まで、これら強権主義、権威主義国家を支援していたのが、実はアメリカだったからである。1963年、南米チリで始めて左派政権が誕生したが、直ぐにクーデターで軍部ピノチェト政権が誕生した。これを裏で画策し、支援したのがアメリカのニクソン政権だった。ピノチェト政権の腐敗、人権無視は既にあきらかである。
 これら古い強権主義国家に共通するのは、腐敗・汚職、政治不安、そして暴力と人権無視だ。指導者(権力者)が揃いも揃って、欲は深いが頭の中は空っぽ、迷信深いのも特徴。これらが姿を変えて現れたのが、グローバルサウス諸国だ。
 今回の民主主義サミットについて、ウガンダの大統領の息子というのが、「世界人口の15%しかない国は力を失った。これからは85%の人口が世界をリードする」と云った。但しこれには大変な認識の間違いがある。85%の人口とは、グローバルサウスを始めとする途上国を指すのだろうが、GDPでいえば日米欧といった古い先進国が、相変わらず60%以上を占めているのだ。
 グローバルサウスの北側先進国に対する”売り”は、その人口と豊富な地下資源である。人口はその国経済が発展段階にある時は、経済発展に貢献する。しかし生活水準が一定以上に達すると、それを維持することが困難になり、不足分は社会的な負担となる。この負担を社会が引き受けられなくなると、その国には失業者が溢れ、社会不安の原因となる。中国の歴史を見ればよく分かる。
 地下資源が物を言ったのは、せいぜい20世紀末まで。エネルギー分野では、先進国は再生エネルギーへの転換が進み、従来型の化石資源依存度は低くなる。グローバルサウスに多い、産油国ではいずれ石油天然ガスは邪魔者になるだろう。その他の鉱物資源でも同様なことが考えられる。例えばレアメタルやレアアースには代替品とか、IT技術のパラダイム転換などが。量子コンピューターの進歩は、従来の巨大スパーコンピューターを駆逐し、消費電力の大幅削減や必要資源量を画期的に減らすだろう。
 それ以上に既に先進国と、グローバルサウスとの勝負は既についている。それは人口の移動形態である。つまり移民の問題だ。現在問題になっている移民問題は、南から北への人口移動である。合法、違法に拘わらず移民の発生源は、例外なく南半球である。そしてここで発生した移民は例外なく北へ向かう。例えば中南米からはアメリカ、カナダへ。中東、アフリカからはヨーロッパへ。しかし移民発生国の友好国である中国、ロシアには向かわない。中国、ロシアは移民が来るどころか、逆に国民や資本が逃げ出している。何故か?グローバルサウスの国民にとって、母国は魅力的ではないからだ。古い価値観に捉われ、ひたすら私欲を肥やすしか関心のない指導者が支配する”新しい国”より、彼らと対立する”古い欧米”のほうが、安全で魅力的だからだ。
 その逆の流れが出来れば、グローバルサウスの繁栄は永続的になるが、上に挙げた腐敗・汚職・人権問題がなくならない限りそうはならないだろう。従って現在の繁栄は一過性のものに終わるだろう。ざっと5年か長くて10年ぐらいか。そのころには、最大の支援者である中国も、どうなっているかわからないからだ。
(23/04/03)

 最近話題になっている言葉に「グローバルサウス」というのがある。主に南半球にある「発展途上国群を指すのだが、要するに北半球に偏在する先進国に対抗する勢力ということだ。この中にはアフリカ、中南米、そして太平洋諸国が含まれる。中でもアフリカや太平洋地域は、国は小さく経済力も政治力も大したことはないが、とにかく数が多いことと、近年この地域に中国やロシアの進出が著しく、北半球先進国も無視はできないということだ。
 では中国もロシアもグローバルサウスに進出して、どのような利益を得ようとするのか?それは主に資源確保と東西対立に伴う地政学的意味があるが、資源はそれほど大きな意味は持たない。そもそもロシアは世界一の資源大国であり、必要な資源の殆どを自国で生産できる。中国はロシアに比べ豊かではないが、金にあかせば幾らでも手に入る。ということは目的は、グローバルサウスをアメリカやヨーロッパから切り離し、自分の陣営に引き込もうということだ。つまり経済的利益より地政学的思惑が優先する。
 ではこの作戦、長期的に見て上手くいくでしょうか?一時的には中ロにプラスに働くだろうが、其のうち破綻し撤退せざるを得なくなる。サウス側だって何の見返りなしに中ロの進出を許すわけがない。そこには経済援助、武器援助といった援助取引がある。中にはスリランカのように、援助の罠にはまる間抜けもいるが、こういう情報は直ぐに伝わるのでどの国もそうとは限らない。仮に援助の罠にはめたところで、援助金は戻ってこないから、結局は赤字だ。
 かつてブレジネフソ連はアメリカに対抗するために、アフリカ始め各地に進出したが、債権がみんな焦げ付いてしまったために国内財政が破綻し、最後はソ連崩壊という惨めな結果に終わった。今グローバルサウスと呼ばれる国の大部分は、独裁制かそれに近い権威主義国家、もしくはそれを目指す国家である。指導者は中ロに秋波を送るが、国民はどうかわからない。
 ある国・地域が今後発展するかどうかを占う指標に人口動態がある。人口が増える国は今後成長し、増加しない国は成長の見込みが乏しい。現在の人口動態で重要なものは移民である。北半球先進国の多くは、固有民族人口は減少する傾向にある。それでも人口が増加する国がある。典型はアメリカだ。アメリカの人口増の原動力は移民である。それはEU諸国でも変わらない。そしてその移民の供給源は主に南半球からで、彼らが目指すのは合法・違法に拘わらずアメリカ、EUなどの民主主義国である。命がけでロシア・中国を目指す移民などいない。
 これが意味するのは何かグローバルサウスなど只のあだ花で、いずれ廃れてしまう。特にアフリカに顕著だが、彼ら特に指導者は独立以来永年の援助経済に慣れきってしまい、自分の持つ豊かな資源を有効に使うノウハウを学ばなかったからである。そのもとになるのは、やっぱり古くからの部族主義から抜け出せなかったからだ。これはアフリカかだけでなく、東南アジアや太平洋諸国にも通じる。グローバルサウスとは結局、北半球先進国の墓場になるだろう。
(23/02/28)

 ブラジルでルラ新政権が誕生すると、ボルソナロ支持者が道路を封鎖したり大統領府を占領するなど、やりたい放題の抗議活動。これは2年前のアメリカワシントンでのトランプ支持者による連邦議会占拠事件とそっくりである。また、」昨年末には、ドイツでライヒスビュルガーという右翼団体を中心とする集団のクーデター未遂事件が摘発された。
 これらの右翼的運動の背景には、新自由主義経済による所得格差とか、低賃金で働く移民で職を失った白人労働者の不満だとか、主に経済的側面が強調されてきた。つまり白人貧困層の反乱だ、と。
 しかしよくよく考えてみると、今迄の説明は実態を全く反映していないことがわかる。アメリカのトランプ支持者の多くは白人富裕層である。トランプ自身、多くの不動産を所有する富裕層である。第一フロリダにゴルフ場付き別荘を持つ貧困層などあるはずがない。22年度所得はゼロだから、税法上は非課税の貧困層になるが、これは税金の誤魔化し方が上手いからだけだ。
 ブラジルでも反ルラ派はトランプと同じ、富裕層とか白人自営業者。彼らが何故左翼政権に反対するかというと、税金を払いたくないのと、これまでの税金のごまかしがばれるからだ。ドイツのクーデター集団では、トップはハインリッヒ13世と称する元貴族。ほんとかどうかわからないが、ヒトラーのようなルンペン上りではなさそうだ。
 これら3者に共通するのは、どれも陰謀論との距離が極めて近く、少なからず影響を受けていることである。陰謀論というのはヨーロッパでは歴史が古く、中世のフリーメーソンとか薔薇十字団事件とか、近代では世界をユダヤ人の支配下に置くという「シオンの誓い」世界ユダヤ会議説などがある。ヒトラーはこれを本気にしていたらしい。どれも根拠に乏しい与太話で、暇つぶしにその手の本を読んでいるうちは罪が少ない。
 ところが最近の陰謀論、特にQアノン系はSNSを使ってフェイクネタをタレ流し、それを更に実力行使に訴えるなど質が悪くなっている。そしてこの有害陰謀論はどうもある時期から急増し始めた。それは2014年ロシアによるクリミア併合以来である。クリミア併合でロシアは、欧米からの経済制裁を受けることになった。これに対する対抗手段として、欧米の社会的分断をはかるために、それ以前から西側諸国で流行っていたサブカルとしての陰謀論を、情報戦略の一環として用いだした。それに最初に引き掛かったのが、アメリカのバノンやトランプ、ジュリアーニ等だ。そしてそれはブラジルのボルソナロに伝染した。
 先に述べたドイツのライヒスビュルガー事件では、一味の中に親ロ派がいて、その背景を調べると、ロシアの情報機関であるGRUとの関連が浮かび上がってきたと云われる。又、2016年アメリカ大統領選では、ロシアハッカーによる反ヒラリー情報操作がおこなわれた。プーチンとトランプの友好関係はいうまでもない。ということは今世界を席巻している政治的陰謀論(Qアノン系)は、実はロシア情報機関がその背後で操っている疑いがある。日本もその例外ではないはずだ。ズバリ「参政党」がそのカモだろう。参政党の中には反ワクチンを主張するヤマトQなる団体がいる。これもロシア情報機関の手先か?
(23/01/11)

 ツイッターを買収したイーロンマスクが、「日本はいずれ消滅する」と予言まがいに発言したから、日本の一部は大騒ぎ。根拠は多分、先日発表された、一昨年に比べ64万人減という昨年の人口統計だろう。この数字を単純に当てはめれば、100年後の日本の人口は今の半分の6600万人になり、200年後にはゼロになる。小学生の算数である。
 この種の人口問題は既に何10年も前から指摘されてきており、別にマスクに云われるまでもない。日本以上に深刻な国が中国とロシアである。一般に社会全体が豊かになれば人口は減少するといわれる。生産と消費との関係でいえば、その国の経済力が弱い場合、豊かになろうとして生産を上げる。生産力を担うのは人間だから、こういう時期には人口は必然的に増加する。経済力がピークに達すると、人々はそれに満足し守りに入る。この場合人口はコストに転化する。経済原理により、結果として人口は増えず減少する。これは古代ローマ帝国だけでなく、現代の日本やアメリカ、ヨーロッパに普遍的な現象である。
 実をいうと古代ローマ人や、漢民族も純粋種はとっくに滅亡している。今のイタリア人やフランス人は古代のラテン人をベースにゲルマン人やノルマン人のハイブリットである。中にはモンゴル系とのハイブリッドもある。中国大陸に多い所謂漢族もそうで、概ね南北朝時代に純粋漢族は滅亡し、在来種と鮮卑族や匈奴系、モンゴル系とのハイブリッドである、というのが現在の学説である。そもそも日本人そのものが縄文人他の数種の民族のハイブリッドなのだから、
 しかしこれらの国は人口は減っても社会は絶滅しない。その原因と考えられるのは、移民による人口流入及びそれによる人種の交替である。人口減少が極度に達すると、何故か逆に人口増に転じることがある。但しその時の民族は、以前の民族とは似ても似つかぬ様になっているかもしれない。つまり200年後の日本列島には、今我々が日本人と意識している人達はいないかもしれないが、見た目には全く異なる人達が日本人として生きているかもしれないのだ。マスクのような出来損ないのたわ言など気にする必要はない。
 なこおの男、南アフリカ出身だそうだから、根っからの人種差別主義者かもしれない。だから日本人を例に挙げたのだろう。
(22/05/13)

一昨日の経済学賞でノーベル賞の季節は終わりました。ノーベル賞はたくさん種類がありますが、経済学賞は中でも異質です。他の賞はノーベルの遺言によるもので、それなりの権威を持っています。例えばノーベル物理学賞受賞者の言葉は多くの人々の共感を産み、説得力も持っている。しかし経済学賞に限れば受賞者の言葉は,、しばしば冷笑で迎えられることが多い。
 何故か?ノーベル経済学賞が出来たのは1968年。ノーベルの遺言によるものではなく、アメリカ・・・多分IMF・・・の要求によるもの。つまりノーベル賞ファミリーでの正当性はなく、いわば庶子・・・庶民的に言えば妾の子・・・のようなもの。
 その所為か、取り巻きつまり推薦者の世界も、資本主義中でも新自由主義諸国に偏る。特にアメリカがダントツ。賞金額も少なく、自然科学系の1/10程度。審査はスウエーデン王立科学アカデミーだが、ノーベル財団とは無関係。確かリーマンショックのときだと思うが、ノーベルの曾孫にあたる人物が経済学賞にノーベルの名前を使うのを辞めろ、と云った。しかし何故ノーベル賞を名乗るのか?やっぱりアメリカの圧力だろう。ということは、ノーベル経済学賞など貰っても、学者としての価値が上がるわけではないのだ。
 なお、「死の商人」と呼ばれたのはノーベルだけではなく、もう一人いる。それはフランス人のデュポンである。ノーベルが「死の商人」と呼ばれたのは、1978・9年の普仏戦争で、プロイセンとフランスの双方に弾薬を売ったため。デュポンの場合は南北戦争で南軍と北軍の両方に弾薬を売ったため。ノーベルはその後ノーベル基金を創立して全世界に恩返ししたが、デユポンは金儲けだけで何もしなかった。
(21/10/13)

 最近の海外政治で興味を覚えるのは、これまで猛威を振るってきた右派ポピュリズムに対する反動が表れだしたことだ。
1、先月行われたイスラエル総選挙では与党リクードが敗北。中道右派と連立を組まざるを得なくなった。これまでの強硬派ネタニヤフの求心力は急速に弱まっている。
2,同じくオーストリア総選挙では極右政党が大敗し、党首が辞任する始末。
3、イギリスではジョンソンに逆らって保守党脱退者が続出。
4、ブラジルでは国際批判を恐れてアマゾン焼却作戦が沈静化。ボルサリオもがっくり。
5、更に極めつけはトランプのウクライナゲート事件。もし大統領弾劾となれば右派は大ショック。
 などです。この動きが更に大きなうねりになるかどうか未だ分かりませんが、過ぎたるは及ばざるがごとしで、いよいよ右翼ポピュリズムの終わりも見えてきたようだ。
(19/10/03)

最近のテレビ報道番組ではとにかく日韓問題だらけ。これをテーマにすれば視聴率が稼げるとばかり、地上波もBSもこれだらけだ。そして出てくるのは、やれ韓国や文大統領は外交を知っていない、あるいは日本の主張やその背景にある国際法の取り決めを理解していない、このままいけば韓国経済にとってマイナスしかない、等々の批判である。
 この批判はその通りなのだがまるっきり韓国に届いていない。その原因は日韓両国で現状の認識法に大きなずれがあるからである。そしてこの認識法の違いは今に始まったことではなく、1000数100年越のことなのである。現在の韓国民の認識をリードしているのは大統領である。現在の日韓関係を理解するためには文在寅の人格を理解しなくてはならない。
 彼の人格理解のヒントになったのは、南北が統一し力を合わせれば、経済・国力で日本を凌駕出来るという過日の演説である。この演説が何の根拠もなく只のスローガンで、仮に南北が今の状態で統一したところで、韓国経済にとってマイナスにしかならないだということは、肝心の韓国民が一番よく知っている。確かに北朝鮮には地下資源は豊富だが、それを開発するためのインフラが未整備、最も大事なことは開発を行う人民が永年の官僚主義支配で、上からの指示が無ければ何も動かないという悪弊に陥っていることである。この結果、韓国が北挑戦を併合したところで経済はマイナス方向にしか動かず、再び半島は分裂に向かう。しかもそれは南の韓国から始まるであろう。てなところは少し国際情勢をかじった人間なら誰でも分かる。ところが文在寅はそれらの不確定要因を無視して単純にGDPの足し算とかそんな単純な話で将来を語ろうとする。
 ということで筆者が彼に下した結論は、文韓国大統領は理数系科目が苦手な文系、いわゆる儒学系官僚人間。王朝時代であれば体制に忠実だが頑固で正義感が強い正論派官僚。権力者側には嫌われるが部下や民衆には結構人気がある。だから政府も簡単に首に出来ない。頃合いを見て国王が肩を叩いて故郷に隠居。両班として読書でもして余生を過ごす、てな人生を送っただろう。
 儒学にも色々あって、文が学んだのは多分李氏王朝時代主流だった朱子学。これはいわば王朝原理主義思想で、国家のあるべき姿がまずあって、これに反するものはすべて排除するというもの。韓国司法の特徴である法理より民族意識を重視する正義論もこの延長にある。
 儒教の根本思想は北極星(年間を通して動かない)にある天帝の意が地上の皇に伝わり、地皇はそれから生まれる徳をもって人民を支配する(出来る)というものである。地皇の徳は周囲に伝わるがそれも限界があり、届かない地域に棲む蛮族は夷荻とされ差別される。
 儒学で重要な思想に”虚実”がある。人間に例えると”実”はその人間の能力のような実体である。”虚”はそれを覆う衣類や飾りのようなもの。これを如実に表す言葉が「メンツ」である。我々日本人は実態を重視するからあまりメンツにはこだわらない。敢えて拘るとすれば、政治家、やくざ、芸人といった表街道を歩けない連中である。中国や韓国・北朝鮮と云った旧儒教国でメンツが重視されるのも、もっともなのである。
 実の極端が力である。儒学では力が軽視されるから逆に弁舌が重視されるようになる。中国戦国時代では弁舌をもって君主に使える「弁士」というものが登場する。彼らが駆使したのが相手を如何に言いくるめるかの技術である。その結果生まれたのが黒も白に(その逆も可)言いくるめる詭弁という技術である。これは日本にも輸入され、現在日本でも猛威を振るっている。典型がアベ晋三首相が駆使する御飯は食べておりません、パンを食べていますという「御飯論法」である。
 一方明代に朱子学のような形式学に対し、王陽明による言行一致の陽明学が起こった。これが日本にm輸入され江戸時代後半に陽明学派というものが産まれた。それが大塩平八郎、佐久間象山、横井小楠、中江藤樹らの陽明学の系統である。しかし当時幕府や朝廷の主流を作っていたのが朱子学派だったから大きな勢力にはなれなかった。しかし幕府革新官僚に影響を及ぼし、幕政改革・明治維新の原動力の役割もつくったのである。
 さて文大統領だが彼の言動を考えると、どうしても原理的朱子学者の系統だろう。だから”実”を重んじる日本人とはどうしても理解し合えないのは致し方ない。
1、韓国の言う「礼」; 儒教というのはとかく礼儀を重んじる。なぜなら儒教が重視するのは外面に出る虚像であり、それが行動に現れるのが「礼儀」なのである。この礼儀は長幼、序列関係で特に重視される。先に述べたように、儒教では天帝の威が地上(中国)の皇に伝わり、それが徳になって周囲に伝わる。ということは皇に近いものほど大きい徳を得るから周囲に対し上位にある。
 韓国(朝鮮)は中国と陸続きであり且つ最も早く儒教を受け入れた。日本は韓国より中国から遠く、更に海を隔て儒教の受け入れも遅かった。従って韓国(朝鮮)が中国文化において長兄であり、日本は弟である。従って弟(日本)は無条件に兄(韓国)に従わなければならない、というのが韓国文政権の主張だろう。
 しかし日本では虚より実の文化が優先していた。中世では貴族は神道・儒教だったが武士は仏教だった。近世(江戸時代)では幕府は武士は儒教、庶民は仏教と定めた。しかし武士も真面目に儒教を学んだとは言い難い。当たり前だが武士の役目は領土を護ることで、虚である儒教的建前に関わりあってはいられない。それが江戸期後半に於ける実学重視政策につながり、その結果が明治維新となり西欧志向の近代化になった。しかし儒教を重視した中国(清)や韓王国はその流れに乗り遅れてしまって日本の圧力を招いてしまった。
 ホワイト国騒動では、日本は条約・規則通りにやっているだけで何も韓国に遠慮することはない、と考えている。しかし文始め韓国左派政治家はしきりに日本に対し「無礼である。礼儀をわきまえない」と説教する。その理由は、韓国は弟である日本が(中国に対し)長兄である韓国と対等に振る舞うこと自体が礼に反すると考えるからである。
 だからと云って日本人が礼儀をわきまえないということではない。但し日本人の礼儀は相手をむやみに蔑んだり服従を強要することではない。身分上下の隔てなく相手を対等に扱うことが最上の礼儀とされる。例えば大相撲は大変な階級社会だが、一旦土俵の上ではそれは問題ではない。たとえ自分が横綱で相手が平幕でも、勝負が終われば対等に礼をする。外交協議も同じで、どちらが上下ということはない。一旦協議がまとまり条約が締結されれば、不満があってもそれに従うというのが日本流の「礼」なのである。(続く)

 ノートルダム寺院消失によって300tの鉛が溶け出して環境汚染が大変だという。しかし我々地質屋の眼でみれば、ほぼ同量の金や銀も溶け出しているはず。これらの貴金属を回収すれば、聖堂復活費用問題は簡単に解決する。おりしも金も値上がりしている。鉛も使いようによってはハイテク材料になる。例えば原発炉体の遮蔽材とか*。
 さて、我が国では天正元年(1615)4月大阪夏の陣で大阪城は落城。金・・・瓦・屏風・天井あらゆるところに金が使われていた・・・に包まれた天守閣は燃え落ちた。果たして家康の本当の狙いは何処にあったのか?一般には、家康は豊臣家を滅ぼすことによって戦国混乱の再来を防いだなどという説が多い。司馬遼太郎のような歴史のシロートはこれに引っかかる。しかし私のような複眼思考人間にはとてもそんな単純な話には乗らない。
 筆者は家康の狙いは、今後徳川幕府就中徳川家の長期的安定を担保するための原資として、豊臣家財宝を確保活用することにあったと考える。豊臣家資産の塊が大阪城天守閣で、これを焼き落とせば、秀吉が貯めこんだ金が黙って手に入るのである。その額およそ600万両**ともいわれる。
 ところが孫の家光が寺社の新築修復再建に殆どを費消・・・「売り家と書く三代目」の典型・・・し、五代将軍綱吉晩年には幕府財政は大赤字になってしまった。これこそ秀吉(=豊国大明神)の祟りだ。家康は東照大権現になったが、権現(仏教)より明神(古神道=国津神)の方が強かったのだ。
*このあたり、中国が目をつけている可能性あり。
**豊臣家財宝はこれだけで済まず未だあったという説がある。それが豊臣埋蔵金説で、それは今の大阪城天守閣直下にあるという。昔ある人物がそれを電磁波(MT)探査で探そうとしたが、大阪市が邪魔して探査させよらんとぼやいていた。今話題のミュー粒子探査を使えばどうか?それこそ大阪街おこしの話題にはなる。こういうところに大阪市大が頑張らなきゃならん。
(19/04/20)

 パリノートルダム寺院が炎上して、これは世界人類の財産の被害だと、世界中から義援金が殺到。それはそうだろうし、義援金の募集も当然だと思う。しかしここでまたひねくれものの芽が開いてくる。
 今から10年前9.11事件の報復として、翌年ブッシュ=アメリカはアフガンに侵攻した。これに対しアフガン反米勢力(=タリバンと称する盗賊集団)はガンダーラ仏の頭部を爆破し、中にあった宝石を盗み出した。この暴挙に対し全世界は何も反応せず、未だにほったらかしだ。
 ノートルダム寺院の復旧に日本政府は支援を惜しまないと声明したが、ガンダーラ仏にはノーコメント。キリスト教の聖地は重要だが、仏教なら構わないのか?それともヨーロッパ人の遺産だから重要で、アジア人のそれは格下とみているのか?これなら人種差別*だ。
 間もなくアベはヨーロッパ歴訪の旅・・・何のために行くのかさっぱり分からない・・・に出る。そして最初の面会相手がフランスのマクロン。そのための手土産とすれば、元号だけでなく人類遺産の自己政治利用だ。
*戦前の日本右翼・・・例えば大川周明とか岸信介・・・には明らかにアジア人に対する人種差別意識があった。アベもその血を引いているのだろう。
(19/04/18)

 世界中・・・と云っても米欧だけだが・・・巨大プラットフォーム企業(要するにGAFAのこと)に関する規制。日本でもたかまりつつある。これに関する討論が過日BS-TBSの某番組で行われた。ゲストスピーカーは自民党競争政策委員会の議員、もう一人が元グーグルジャパン取締役社長の辻野という人物。
 番組は、まず欧米で始まっているGAFAに対する規制強化について解。自民議員は規制派、辻野は当たり前だが規制反対派。規制派が主張するGAFAの問題点は概ね次の3点に要約される。
1、広告業界における圧倒的な資本力により競争が阻害される。これはIT業界の資本の移動を妨げ、ひいてはIT業界でのイノベーションの成長を阻害する。
2、莫大な個人情報の取得方法、並びにその使用法について透明性が確保されていない。例として16年アメリカ大統領選挙で、フェイスブックからイギリスのIT企業を介して大量の個人情報がトランプ陣営に流れ、結果として選挙結果に影響した疑惑があ。その他GAFA の端末を利用することによって、個人情報がGAFAのサーバーに蓄積され、それが今後商売目的で利用される可能性が高い・・・これは筆者だけでなくみんな、既にそういうことをやっているだろうと思っている・・・。
3、まともに税金を払っていないのではないか?つまり経営が不透明である。
 これに対し擁護派の辻野は次のように反論した。
1,GAFA規制は社会主義だ
2、GAFAの社員は優秀で物凄く働く。モラルも高く、倫理性では問題はない。そもそも透明度の高くない政府が透明性を言うのはおこがましい。
3、いくら規制を強化しても、GAFAは常にその先を行く。
 さてこの反論、皆さんはどう評価するでしょうか?私の感想ではこの辻野という男、頭は良いのだろうが、知性という点では高校生並み・・・ただし中学2年生並みと云われるトランプよりはマシだが・・・、あるいは確信的アナキストだ。
 まずあらゆる企業活動を規制するということを、社会主義ととらえること自体アナクロである。そもそも巨大企業の暴走を防ぐための反カルテルトラスト法・・・わが国では独占禁止法として用いられている・・・を最初に成立させたのは、自由資本主義のメッカ、アメリカである。
 その理由は現在のGAFA同様、ロックフェラーやモルガン財閥といった巨大財閥がアメリカの資本主義市場を牛耳り、存在を歪め誰も対抗できなくなったからである。つまり現在の資本主義はかつての巨大資本規制の上に成り立っているのである。自由な競争と巨大企業の暴走とは全く次元が異なる。
 GAFAの社員は優秀でモラルも高いかもしれない。しかし彼らが作る組織や企業の行動が倫理的とは限らない。元々GAFAの透明性に疑問を投げかけてきたのは欧米の消費者や中小企業主。EUやEU加盟各国政府が規制に乗り出したのは彼らの主張に逆らえなくなったから。日本でも今の日本政府や自民党が自ら規制に乗り出したのではない。EUと歩調を合わせなくて、対EU貿易交渉の妨げになるからである。
 辻野の主張は例えば、ラスベガスや最近のNZ大量殺人事件でも「銃に罪はない、悪いのは人間が」という全米ライフル協会や、NZ政府の銃規制について、「一人の狂人のために趣味の狩猟が出来なくなるのはおかしい」というハンター達の身勝手、自己責任放棄と同列のものである。それどころが、他とは悪いが暴力団や暴走族仲間の論理と変わらない。
 GAFA の透明性はデータ取得だけではなく税金の問題にも絡む。各国政府がGAFAに対し抱いている最大の懸念はこれである。GAFAの本社は一体どこにあるのか?これがさっぱり分からない。各国に分社化してそれぞれがインターネトで繋がっている。このネットを使えば、ある国の本社で発生したコストを次々に付け替えていけば、払うべき税金を極小化できる。全く払わないわけではない。しかし節税テクニックを最大限に活用すれば、数分の一に節約できるのである。
 辻野はいみじくも最後に云った。いくら規制を強化してもGAFAは常に先を行く。つまりいくら各国政府が税金を獲ろうとしても、GAFAは常にその抜け道を探し裏をかくということだ。さてこの思想、右翼でも左翼でもない。むしろ合法的アナキズムであり、何か16~17世紀に世界を股にかけて暴れまくった海賊の思想に似ている感がする。海賊は庶民に結構人気があったのだ。各国政府も海賊を利用していた。しかし近世に入り資本家(ブルジョアジー)の力が強くなると、各国政府は彼らの要求に屈して海賊退治にのりだした。そして海賊は見つけ次第縛り首となった。いずれGAFAもそうなるのではないか?
(19/03/30)

 女優のカトリーヌ・ドヌーヴ他のフランス芸術家が、アメリカでのセクハラ反対運動(MeeToo)を「男性にも女性を口説く権利がある、あれは清教徒主義だ」と批判。ということはドヌーヴらは女性にも男性を誘惑する権利があると、主張しているのである。至極まっとうで、非難するいわれはない。
 ここで彼女らの云う口説き・誘惑とは、中世騎士道以来フランス上流社会で洗練されてきたフランス流エスプリの効いた知的ゲームである。このゲームには誰でも参加できるわけではない。ドヌーヴやオランド元大統領級の知性が必要である。まして昨今日本マスコミネタになっている、芸人や三流政治家の不倫とはわけが違う。日本のそれは、サル山のサルの野合のようなものだ。
 日本では今から数100年前の江戸時代では男女の口説き・誘惑は当たり前で、誰もそれを止めなかった。その点では日本の方が今のフランスよりズーット進んでいたのである。但しこれが一歩進んで不倫までいくと話は別で、場合によっては厳罰がまっていた。それは子供が生まれた場合、武士の場合は家督相続、町人では財産権相続などでトラブル・・・いわゆる御家騒動・・・が発生するからである。しかしそれも家督が世襲の武士とか財産をもっている農商民だけの話で、何も持たない裏長屋の八公熊さんには何の関係もない。そこでこれら庶民はやりたい放題だったのだ。
 明治になって民法が出来、そこにも不貞罪というものがあったが、明治の民法は当時のフランス民法の丸写し。つまりこれが出来た1970年代のフランスには、まだ前時代のキリスト教的制約が残っていたのである。
 近代絵画の始まりと云われるマネの「水辺にて」という名作がある。これは中央の裸婦とその左右の紳士が戯れるという大胆な構図で、当時のフランス社会に大きな衝撃を与えた。保守的なある大物は「これは私に卑猥な印象を与える」と云ったので印象派の語源となった作品である。
 当時のフランスは女性解放運動(それと並んで社会主義運動)が盛んだった。中央の裸婦は解放された女性。左右の紳士は、彼女達を相手にどうしてよいか分からなくてドギマギしている保守的な男性達。そして画面遠方の湖のほとりには、着衣の女性が戯れているが、これはフランスにそっぽを向く、イギリスやドイツなどの保守的プロテスタント諸国への皮肉か。
 今MeeTooの本場はアメリカで、イギリスにも影響している。みんなアングロサクソンだ。フランス人とアングロサクソンは未だに100年戦争をたたかっているのである。
(18/01/15)