孤独なロシアよ何処へ行く

横井技術士事務所
技術士 横井和夫


 ドイツ国営テレビの記者がロシアが支配するマリウポリに招かれ、「ここでは着実に復興している」とか何とか、ロシア寄りの報道をしたので批判が集まった。しかし当人は「別の角度から見るのも重要だ」と知らん顔。はっきり言って湖沖者は「アホ」だ。少なくともプーチンのやりかたについて認識がナイーヴ過ぎる。
 共産党支配下の1930年代ソ連。各地に思想犯を収容する強制収容所が作られた。この収容所の中で虐待が行なわれているのではないかと疑われ、西側のジャーナリストが視察に訪れた。この中には、当時最大のジャーナリストと呼ばれたバーナード・ショーも含まれていた。ところがこの視察団、スターリンとソ連共産党にすっかり丸め込まれ「収容所の環境は全く問題なく、収容者は快適な暮らしをしていた」などと惚けた報告をやった。
 そしてその数年後、今度はドイツでユダヤ人迫害が始まり、ユダヤ人は強制収容所に送られた。そして又同じようなジャーナリストの視察団が訪れ、た。今度は共産党ではなく、ナチに丸め込まれ、同じようなことを発表した。いずれも西側ジャーナリズムが、敵対する共産党やナチのプロパガンダに利用されただけである。今度のドイツ人記者も同じで、プーチンの術中に嵌っただけ。アホとしか言いようがない。或いはロシアFSBに何か弱みを握られたか。
 さてまもなくアメリカのトランプに近い有力保守系ジャーナリスト・・・元FOXテレビのカールソンという人物。次のトランプ政権で国務長官のポストを狙っているともっぱらの噂・・・が、プーチンの招きで訪ロするらしい。跳んで火にいる夏の虫で、プーチンに歓待され上手い話を吹き込まれ、ついでにモスクワで怪しい接待を受けて、それを写真にとられて弱みを握られ、トランプと同じで、アメリカに帰ってからプーチンのプロパガンダをまき散らすだろう。トランプ自身、過去のモスクワでの不品行が元で弱みをプーチンに握られているから、プーチンには頭が上がらないのだ。
(24/02/07)

 今年夏にロシアはウクライナに対し大攻勢を掛けるという情報がある。ネタ元はアメリカのファイナンシャルタイムズという保守系メデイア。このところアメリカメデイアはウクライナ不利的報道が多い。秋の大統領選でトランプが勝つとみているのか、それともロシアから秘密資金が流れているのか?果たして今のロシアに大攻勢を掛けるだけの力があるのか?大攻勢をかけてもそれが成功するのか?大攻勢といってもどの程度の規模なのか?どの問いにも甚だ曖昧な答えしか返ってこないだろう。
1、まず東部戦線を見てみよう。昨年10月ころから始まったドネツク州アウデイーウカ方面では、当初ロシア軍は4万という大軍をこの正面に集中した。対するウクライナ軍は数個旅団しかないから、全部合わせても1万数千がいいところ。大砲の数では比べものにならない。
 11月から攻勢を強化し、今にもアウデイーウカっは陥落するかとおもわれた。そしてプーチンは年内にこの地域の奪回を厳命したという。しかし現実はどうか。最早1月も下旬になっているというのに、この方面の戦線は殆ど動いていない。出来るのはロシア兵の死体の山だけ。アウデイーウカはロシア兵の吸血ポンプになってしまった。
2、南部ヘルソンでは、昨年秋ウクライナ海兵隊がドニプロ河南岸に橋頭堡を築き、クリンキという集落でロシア軍と交戦している。ウクライナ軍はせいぜい数100人。一方ロシア運は数倍の兵力を集めているが、ウクライナ軍を排除出来ていない。ここでもロシア軍の吸血ポンプ化が始まっている。
3、昨年末から年初にかけてロシア軍は、ウクライナ全土に対しミサイル及びドローンl攻撃を仕掛けた。しかしこれでウクライナが屈服しかけた様子はない。逆にロシア本土深部へのドローン攻撃を強化し始めている。なお、今年に入ってロシア軍は2機のAWACSを失った。これはロシア軍の防空システムだけでなく、ウクライナ軍の動静を探る上でも大損失だ。
4、大統領選を前にロシア国内での反プーチン運動が活発化している。無論当局による統制があって十分な情報は無いが、主に辺境地域では結構広がりを見せている可能性がある。今アメリカや欧州ではウクライナ支援に対する世論に分裂傾向が見られるが、ロシアでも分裂があると考えて不思議ではない。
 以上の様にウクライナも大変だが、ロシアだって負けず劣らず問題を抱えている。問題が無ければ、わざわざプーチン自ら北朝鮮を訪問する必要はない。北朝鮮の武器支援は量はともかく、質的には殆ど役に立たないだろう。
 8月に大反攻を行うとして、使うのはポンコツ戦車にボンクラ将軍、それにグウタラ兵士だ。ウクライがこの攻勢を防ぎきれば、プーチンの求心力は低下しする。それは今年70箇所で行われる選挙、中でもアメリカ大統領選に大きな影響をあたえるだろう。
(24/01/23)

 昨日BS-TBS「報道1930」、テーマの一つが現在のロシア人の民意。独立系調査機関レバダセンター調査によると、現在のロシア人の約8割が次の大統領選でプーチンに投票する、7割以上が23年は良い年だったと回答。その理由は物価は上がったが、それ以上に給料が上がった、(軍需産業を中心に)就職率もよくなった。治安もよくなった。
 この調査では今の戦争について、特に数10万に及ぶロシア軍戦死傷者についての設問はなかったようだ。上記の答えの理由として、給料が上がったのは、ロシア政府が契約兵や傭兵を釣り上げるために一般給与の数倍の報酬を提示して宣伝したため。民間企業もそれに引きずられたため。政府による軍需品発注のため、軍需産業を中心に雇用が拡大しているためだ。モスクワやサンクトペテルブルグなどの大都市ではスーパーに欧米禁輸製品が幾らでも並んでいる。これらは制裁の隙を縫って入ってくる密輸品とか、第三国経由の並行輸入品。
 現在のロシア人にとってウクライナの戦争は他国での騒動にすぎない。戦っているのはウクライナ人とロシア人でも囚人とか辺境の貧乏人・異民族、」それに外国傭兵、我々には関係はない。それよりお陰で我々は経済的に潤っている。これもプーチンのお陰だ、今のロシアに蔓延するのは、今をただ楽しめばよい、という刹那主義、ロシア的精神アナキズム。
 よく考えると、この状況朝鮮戦争とかベトナム戦争下での日本とよく似ている。朝鮮特需、ベトナム特需で日本経済は大いに潤った。戦っているのは朝鮮戦争では韓国人とアメリカ兵、ベトナムではやはりベトナム人とアメリカ兵。日本人には関係はない。日本は朝鮮特需で戦後の復興、ベトナム戦争では高度成長を成し遂げた。只ロシアと違うのは、日本は戦争特需で得た利潤を経済の拡大再生産に振り向け、気が付けば世界第二位の経済大国になった。
 しかし今のロシアにそのような計画性があるとは見えない。戦争特需の利潤はそのまま戦争という消費に溶解され、後には国家財政赤字、バラマキによって膨張した政府債務残高、戦争による戦死傷者による労働人口減少等の負債が残る。仮に東部4州の併合という戦果を得たとして、21世紀の新自由主義資本主義、高度情報化社会においては、19世紀の植民地時代と違って広大な領土や過剰な人口は固定負債に過ぎず、国家の重荷になって滅亡の原因となる。
 そもそも将来の世界は人間を必要としないAI社会だ。そこに領土をふやしたり、人口を増やすのはナンセンスそのもの。19世紀的アナクロ以外の何者でもない。19世紀の欧州列強は地球陸上の6割近くを支配したが、みんなその重みに耐えかねて全ての利権を手放さざるを得なくなった。戦争の長期化は一時的にロシアの戦術的勝利をもたらすかもしれないが、更に長期化すれば次はロシアの内部破綻とい結果に終わるだろう。
 なお昨日モスクワで反プーチン派の詩人が交通事故で死亡した。当局は事故の犯人を発表していない。選挙を控えロシアではますますこの種の事故・・・というよりプーチンの指図による殺人・・・が増えるだろう。
(24/01/16)

 ウクライナ戦争で、このところとみに目立つのがロシア軍有利、ウクライナ軍不利という報道。これらの報道はどうも事実に基づかず、一部の保守系メデイアによる誘導のような気がする。或いは背後にロシアの情報工作があるのか?客観的に見て今ロシアが有利だといえる根拠は何もない。
 昨年11月、プーチンは年内の東部2州(ザボロージェ、ドネツク)の完全占領を厳命したとされる。その結果起こったのがアウデイウカ、マリンカ戦だ。アウデーウカに関してはロシア軍は次第に包囲の輪を縮めているにも拘わらず、未だに完全占領には至っていない。昨秋には10万の兵力を東部戦線に送りこんだと云われるが、戦線は殆ど動かず、出来たのはロシア兵の死体の山とロシア軍戦車と戦闘車の大量のスクラップだけだ。昨年末からロシアはウクライナ全土にミサイル攻撃を行った。しかしその効果はあまりない。それどころか、ミサイルの中に北朝鮮製が見つかって、ロシアはミサイルでも品不足に陥っているようだ。
 経済的にはどうか。よくテレビにはモスクワなど大都市のスーパーなどの映像が映し出されr、市民生活は全く問題がない様に見える。しかしこれは飽くまでモスクワなどの話である。現在ロシアでは西側メデイアの坑道は禁止もしくは厳しく制限されている。正しい映像とは思えない。多分政府のプロパガンダだろう。地方ではどうか、という点が重要だ。
 現在ロシア国家予算は赤字が続いている。赤字の原因は無論軍事費である。軍事費のうち最大のものは武器調達費だが、馬鹿にならないのが人件費。ロシア政府は兵力不足を補うため大枚の金を払って契約兵や外人傭兵を集めている。あんなに大盤振る舞いして懐が大丈夫なのか疑問。本当に給料を払っているのか?例えば戦死しても行方不明にしてしまえば、家族への支払いはせずに済む。というわけでウクライナも大変だが、ロシアも負けず劣らず大変なのだ。
 プーチンは未だドンパス地域には68万の兵力があると号gしているが、彼らは何をしているのか?殆ど役に立っていない。ショイグは200万の」予備兵力があるというが、だったらさっさとその兵力を前線に投入すればよい。それが出来ないのは何故か?ロシアは確かに人口は大きいが、戦争に回せる人間はそれほどいないということだ。モスクワなど大都市住民を動員したら、再び1991年のあの騒動が起きるのが怖いのである。
(24/01/15)

 まもなく2023年も終わりますがウクライナでは未だ激戦が続いています。特に激戦区はドネツク州アウデーフカ。この地区の戦闘は14年クリミヤ併合後に始まるといわれるが、最近特に注目されるようになった。23年6月に始まったウクライナ反転攻勢は9月には頓挫、膠着状態に入る。替わって激しくなったのがここアウデイーフカである。当初ロシア軍はここに4万人の兵力を集めているとされた。そこで始まったのが23年春のバフムト戦を彷彿させる歩兵の肉弾突撃人家作戦。この作戦でロシア軍は毎日1000人の犠牲者を出していると云われる。
 戦闘が激化したのが10月始め頃だから既に3カ月近くを経過している。すると6万人が消えてしまったはずだ。しかし報道では相変わらずロシア軍4万人という数字が出ている。話半分としても少なくともアウデイーフカでは数万人規模の戦死傷者が出て居るはずだ。確かにある報道映像では数人単位のロシア兵のグループが幾つか展開して突撃している。まるっきり第一次大戦か日露戦争のような戦法。まるっきり作戦と云えたものではない。ウクライナ軍も消耗しているが、ロシア軍の損耗はそれ以上だ。
 それにもかかわらず何故ロシア兵は無為な突撃を繰り返すのか?その理由は、プーチンが年末までにアウデーフカ、マリンかを制約せよと、ショイグとゲラシモフに命令したからだ。マヌケを絵にかいたよぷなこの2人にとって、プリゴジンの真似をする以外に方法がなかったのだろう。しかしアウデーフカ方面では未だ戦闘は継続しており、プーチンの命令は又も破られることになった。
 ロシア軍はウクライナ軍の数倍の兵力・戦力を持っているはずである。その最重点地区がドネツク州中でもアウデイーフカ方面。ロシア軍有利の情報は伝わるが、二カ月以上三カ月近くになっても戦線は殆ど動いていない。増えるのはロシア兵の戦死者数のみである。これで本当にロシアは勝ったと云えるのか?懲りないプーチンは次の命令を出すだろう。三月には大統領選がある。それまで、つまり二月中にドンパス地方の未占領地域を解放せよ。ということは少なくともドネツクで全面的な攻勢が始まるはずである。今のロシア軍にそんな力が残っているとも思えない。
(23/12/31)

 壮大なプロパガンダセレモニーに終わったロシアの国民対話・大記者会見。その前にプーチンはドネツクを訪れドネツク親ロ派民兵の歓迎を受けて事実上の来年の大統領選出馬宣言。この時民兵たちは「貴方が大統領になるべきです」とヨイショの連発。プーチンは満更でもない笑顔を浮かべ、明言を避ける。いかにも「自分は大統領になりたくはないのだが、君たちがそういうのなら」と勿体をつけるヤラセである。
 これ当に過去の中国王朝交代劇そのもの。クーデター或いは内戦を制した英雄は部下や人民代表を集め、今後如何ににすべきかを答申する。すると代表達は「是非貴方に皇帝になっていただきたい」と懇願する。英雄はこれを三度断り、その後嫌々ながらみんながそういうからという形で即位する。これがヤラセということは誰でもわかる。もし英雄が断ったとき「はいそうですか、じゃ止めてください」なんてこと云ったものがいたとすれば、そいつとその一族は皆殺しだ。
 プーチンの場合も同じで、「じゃ立候補を止めてください」なんてことを云うのがいれば、そいつはある日突然行く不明になる。そういう意味でプーチンのやり方は、実にアジア的なのである。ところが西欧やアメリカ人はそこのところが分かっていない。肌の色が白いとか金髪という外見だけで、自分達と同じ歴史価値観を持っていると勘違いしている。ロシア人とは半アジア人。中世モンゴル支配下やトルコ人との戦いの中で、アジア的手法を身に着けているのだ。
(23/12/17)

 久しぶりにウクライナの戦況。6月に開始された反攻作戦はあまり上手くいかず、やっと9月にザボロージェ、バフムトで反攻が開始され、ロシア占領地内に食い込んだが10月に入ると、それも頓挫。特にイスラエルガザ事件で欧米の関心が中東に移ったこと、アメリカ議会の混乱でウクライナ支援が滞り、欧米に厭戦気分が漂いだしたのが大きい。
 何故南部戦線での反転攻勢が頓挫したかというと、それはウクライナの攻勢開始が約一カ月程遅れ、その間にロシアは防御を強化できたためである。何故遅れたかというと、西側特にアメリカバイデン政権が支援を躊躇したためである。特に昨年からウクライナが要求していたF-16の供給がストップしたため制空権を確保できないまま、地上攻撃を開始せざるを得なくなったことが大きい。更に砲弾その他の支援物資についても、国務省の何処かに頑固な課長がいて、それがなかなかサインしなかったためだ、という説もある。8月になって、そいつが退職したから支援が再開された。
 西側では、最早戦闘の主導権はロシアに移ったとか、これ以上ウクライナを支援しても無駄だ、というような悲観的な見方が広がっている。特に酷いのはアメリカ共和党である。それに比べ、ロシアは折からの原油高を背景に強気を崩さない。果たして戦争はこのままロシア優位で進むのか?
 その中でウクライナ戦争で注目をあびているのは、ドネツク州アウデーウカ攻防戦。この戦いは筆者は先月下旬に着目している。この町はどうやらかつての炭鉱町だったようだ。ボタ山があるなど、日本では九州の筑豊とか、北海道では大夕張とか砂川のようなところなのだろう。とすれば街の地下には炭鉱の坑道がハチの巣の様に巡らされていると予想される。当にガザの地下トンネルと同じだ。
 今年9月にロシア軍は東部戦線に10万人の兵力を集め、反攻作戦を行うと報道された。一方南部戦線では8月から9月にかけて、ウクライナ軍はメリトポリ方面で第一防衛線を突破し、前哨であるトクマク方面に攻勢をかけ、戦局を有利に進めていた。しかし10月下旬には、攻勢もそこまでで、ウクライナ軍トップも長期戦の可能性を示唆しだした。そこへアウデイーフカ戦である。
 この戦いを見ると、アウデーフカの街にたてこもるウクライナ軍に対し、ロシア軍は南北から迫り街を包囲する構え。又、戦法は犠牲をいとわない人海戦術である。ウクライナ軍はロシア軍は一日5~6000人の損害を出していると発表。これに対しロシア側は「損害はあるが桁が違っている」と反論。かりに一桁違っていたとしても1日5・600人だから、十日すれば5・6千人にはなる。ということはアウデイーフカ戦が始まって1カ月以上経っているから、既に2万人オーダーの損害を出していることになる。これなど春のバフムト戦そっくりである。
 一方、最近ロシアの技術特に電子戦やドローン戦の技術は向上し、ウクライナに並ぶまでになっていると云われる。それにも拘わらず当地域の戦線は一向に動く気配がない。ロシア軍は質的にはウクライナに追いつき、数では圧倒している。それにもかかわらず反攻に出られない、というのが現状である。つまり両軍は膠着しているのではなく,拮抗しているのであり、必ずしもウクライナ不利という状態ではない。西側の速やかな支援があれば、この拮抗を打破することができる。それができなのは西側の指導者達が、この戦争の意味を理解できず、飽くまで東方の一地域紛争とみなしているか、或いはそれで済ませると淡い期待を抱いているからである。西欧は常にそのような、自分本位の淡い期待で失敗を続けて来た。未だ目が覚めないようだ。
(23/11/1
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 昨日久しぶりにクレムリンで演説するプーチンをテレビで見た。果たしてこれはホンモノか? ホンモノのプーチンは右手が少し不自由で、歩いているときは右手をだらりと下げている。今年春クリミア大橋が開通したとき、プーチンは自ら車を運転していた。これが影武者ということは、専門家の中では常識らしい。又歩き方にも特徴があり、片足を少し引きずる。
 昨日の映像は椅子に座っての演説だから、歩き方は分からないが右手をやたら細かく振り上げ、とても不自由に見えない。又、カミさんは「急にやせた、前はもっと太っていた」と云う。更に報道官のペスコフがいきなりプーチン健康不安説を打ち消す声明を出したり、記者の質問に対し「プーチンは一人だ」と答えたり。これも怪しい。以上の点から、昨日テレビに現れたプーチンは影武者の可能性が高い。プーチンには少なくとも2人の影武者がいることは確かだ(TBS「報道1930)。昨日のプーチンが影武者なら、ホンモノは何処だ?
 昨日のプーチンがホンモノかどうかはともかく、テレビに映る度に無関係な東洋人から「あれはホンモノか、にせものか」と無責任な疑いをかけられるのだから、独裁者も楽じゃない。
(23/11/04)

 ガザ侵攻を前に連日強化されるイスラエルの空爆、それと並んで世界中で広がる反イスラエルデモ。某TV番組で、司会者の「この動きがイスラエルの行動に影響を与えるでしょうか?」という質問に、専門家がイスラエル人は「どうせ俺たちは嫌われ者だから」と、気にしないでしょうと回答。成程、自分で嫌われ者と自覚しているものにいくら悪口を云っても、それこそ「カエルの面にナントカ」で何の影響もないだろう。それはロシアのプーチンにとっても同じだ。
 連日のガザ空爆は地上侵攻に効果的でしょうか?私は殆ど影響はないと考えています。元々、ガザ特に北部は、これまでの空爆や事件後の空爆で殆ど瓦礫化している。瓦礫の山にいくら爆弾やミサイルを打ち込んでも、新しい瓦礫をつくるだけ。それどころか瓦礫によって爆撃の衝撃は吸収されるから、地下のトンネルは返って安全になる。又地上では瓦礫の隙間が返って安全空間になるから、そこに狙撃手を忍ばせれば侵攻部隊に反撃を加えることができる。これはかつての第二次大戦のスターリングラード戦や、スペイン内戦でのマドリードの戦いでも繰り返された事実である。
 そこで注目はウクライナのアウデイーウカ攻防戦。ドネツク州都ドネツク市北方に位置するこの工業都市で、今激しい攻防戦が繰り広げられている。この地域でロシア軍の反攻が始まったのはここ数週間の間。ところが動画などでは街中が瓦礫の山になっている。何故かというとこの街、14年のクリミヤ併合直後から始まったドネツク州の内戦で、あらかた廃墟と化したらしい。その瓦礫の山にウクライナ軍が浸透し、瓦礫を要塞に変えてしまったのである。結果としてロシア軍の空爆やミサイル攻撃は殆ど効果を上げることはできず、逆に瓦礫に隠れたウクライナ兵からドローンやジャベリンで反撃を受け、いたずらに損害を出すだけになっている。アウデーウカは、ロシア軍にとっての吸血ポンプになってしまった。そしてここにロシア軍を引き付けることによって、南部ヘルソンやザポリージェで反撃を加える。
 なおこの地域のロシア軍は、損害も顧みず歩兵による反復攻撃を繰り返している。今年春のバフムト戦の復活みたいだ。そのはず、23年に入ってロシアが挙げた勝利はバフムト攻略戦だけだ。但し攻略したのはロシア軍ではなく、プリゴジンのワグネル。ゲラシモフは他に打つ手が無くなったので、ワグネルの手法を真似ただけか。下手をするとイスラエルのガザ侵攻も、スターリングラードやアウデイーウカの二の舞を踏むことになりかねない。
(23/10/24)

 今世界の話題はパレスチナ ガザ問題。ウクライナ問題は何処かに行ったみたいだ。プーチンはしめしめと、安心して北京に行ったのだろう。さて何時まで安心していられだろうか?今月に入ってロシア軍は東部戦線で反撃を開始したと発表。作戦正面はドネツク市北方のアウデイーフカという町。ドネツク工業地帯に属する工業都市である。ザポロージェとバフムトの丁度中間点に位置する。
 ウクライナ軍は今、トコマク方面に主力を傾注しているからロシア軍は今月始めから攻勢を強め、ウクライナ軍も厳しい状況と伝えている。その割には戦線は動かない。それどころか最近では、この方面でロシア軍装甲車両・・・戦車を含む・・・数10両を破壊し、2000人のロシア兵を無力化したと発表した。これが本当なら、おおよそ2/3個旅団が壊滅したことになる。
 何故こんなことになったのか?幾つか理由は考えられるが、一つは昨年から作られた強固な防衛線、中でも濃密な地雷原が攻撃前進を阻んでいる可能性である。つまりスロビキンが作った防衛線が邪魔になって攻勢に出られないのである。スロビキンが作った防御線は、対戦車壕・「竜の歯」と称するコンクリートブロック、地雷原の三者の組み合わせからなる。ウクライナ軍はこれらを越えて攻撃しなくてはならない。ロシア軍はそれを待ち構えていればよいだけだ。
 しかしロシア軍が反撃攻勢に出ようとすると、同じようにこれら障害物を越えて行かなければならない。中でも厄介なのが地雷原だ。スロビキンが濃密に埋めたので、ロシア軍でも何処に地雷が埋まっているか分からなくなっている。仮に中に前進路を作っても、そこを使って前進すればウクライナ側から直ぐに察知される。ドローンや偵察衛星からの情報だ。そこをドローンや迫撃砲で狙い撃ちにされれば、前進出来なくなる。ウクライナ軍の前進阻止のためのs防御線が、今度はロシア軍の反転攻勢の邪魔になっているのだ。つまり自分が綯った縄で、自分の首を絞めている。
 無論今年春の、ワグネルによるバフムト攻撃のように、犠牲を顧みない突撃を繰り返せば何とかなりそうだが、その前に自分で撒いた地雷でやられてしまう。誰が責任を執るんだ、でマタマタ起こるのがロシア軍内部の責任転嫁と仲間割れ。そんなことを繰り返しているから、この戦争は何時まで経っても終わらない。
(23/10/19)

 ウクライナザポリージェ州トクマクで学校等公共機関の閉鎖や住民の避難が始まり、駐屯しているロシア運にも混乱が生じている、更にトクマク北方で激戦が続いている、という報道がある。この報道が本当なら、ウクライナ軍はトクマク戦線でロシア軍第二防衛線を突破したか突破しかけているということである。
 ロシア軍の混乱とは具体的にどういうことか?指揮官不在で兵士が勝手に行動しているということか、或いは舞台を離れた兵士が民家から略奪を働いておれば、これは逃げ出す準備だ。昨年9月のヘルソンのような状態だ。
 第二防衛線の南はロシア軍防衛力は低下するとされるので、トクマクを含む第三防衛線突破は、今までより楽になるから、一気にメリトポリ攻略も可能。メリトポリまで進出出来れば、年内アゾフ海進出も夢ではなくなる。
 そうなれば、来年のロシア大統領選挙戦、西側の支援体制、ひいては秋のアメリカ大統領選にも影響する。クリミアを奪還すれば、プーチンの息の根を止められる。宗男には悪夢かもしれないが。
(23/10/05)

 ウクライナが死亡したと発表した、ロシア黒海艦隊司令官ソコロフ大将は生きていて、オンライン会議に集積していると、ロシア側は発表。動画も公開されている。しかし、ここに写っている人物がソコロフ本人か、又公開された動画が何時何処で撮られたものか、何も分かっていない。
 事件が起こったのは、現地時間で9/22、生存が発表されたのは同9/26。この4日間の空白は何か。ウクライナは翌日には多数の将官を含む幹部軍人を殺害したと発表している。もそこれが虚偽なら、ロシアも直ちに反証に値する証拠を指し示すべきだ.。又ソコロフ以外の幹部軍人の映像も同時に公開すべきである。
 そもそも事件から映像公開まで時間が空きすぎる。4日間もあれば色々出来る。ざっと考えただけで次のような手がある。過去の映像を繋ぎ合わせる。別の映像にソコロフをはめ込む。ソコロフに「似た人間を探し出してきて特殊メイクを施す(プーチンの偽物を作れるのだから、こんなことは簡単だろう)。
 ウクライナの発表もいささか風呂敷を広げすぎている感はあるが、それに対するロシア側の反論も根拠薄弱。なお、誰がどうなったかは別にして、セヴァストポリもウクライナによるミサイル攻撃に無事ではいられなくなったのは事実。クリミア沖の石油掘削施設と合わせると、黒海艦隊は何処か別の場所に移動する必要がある。そうなれば黒海の制海権はウクライナに移ることになる。黒海ルートの穀物輸出がj自由になる。そうなれば、世界の穀物価格が影響を受けることに穴る。
(23/09/27)

 今月23日に起こったウクライナによるロシア黒海艦隊司令部ミサイル攻撃で、不思議な点が一つあります。何故黒海艦隊幹部は、あんな丘の上にある不用心な司令部に集まって会議をしようと思ったのか?そもそも、黒海艦隊司令部という重要施設が、あんな丘の上のホテル・・・・一見宮殿風だが、日本じゃラブホテルにああいうのが多い・・・まがいの建物にあるというのも不思議千万。
 旧ソ連以来、ロシアは西側の核攻撃に対し、異常なほどの警戒心を持っていた。有名なものは、地下100mという深さに作られているモスクワの地下鉄だ。又、ソ連崩壊後公開された、クレムリンと地下鉄を結ぶ秘密の通路というのもある。これらは西側の核攻撃に備えてのものだ。北朝鮮のピョンヤン地下鉄駅も深いので有名だが、これも同じ発想である。
 昨年春に繰り広げられたマリウポリ製鉄所の戦いでは、ウクライナ軍は何層もある深い地下室に立てこもりロシア軍に抵抗した。通常製鉄所にそんな深い地下施設は必要ない。これも又核攻撃に備えてのものだろう。ウクライナのゼレンスキーは大統領府の執務室から発信する、この部屋が大統領府ビルの何階にあるかわからない。
 このように旧ソ連時代に作られた重要施設は、核攻撃に耐えられるよう、深い地下室に設けられるのが普通である。黒海艦隊司令部も重要度は政府施設と変わらない。であれば会議室などは地下に設置している筈である。そんな初歩的な対策も取らず、大勢の幹部を集めるなど、常識外れである。これが事実なら、現在のロシア軍には重大な危機管理能力の欠如があるといえる。つまり油断だ。この危機管理能力欠如がロシア軍中央にまで蔓延していたら、この戦争の行方は、ロシア軍にとって破滅的な状況になるだろう。
(23/09/26)

 ウクライナによるセヴァストポリのロシア黒海艦隊司令部へのドローン攻撃で、司令官級の上位将官を含む幹部9名が死亡、他26名が負傷。この作戦はアメリカによる衛星情報の提供とか、ウクライナ製ドローンの性能といったハード面ばかりが指摘されていますが、間違いなくロシア軍の相当上部のレベルまで、ウクライナ情報網が浸透していることを意味している。要するに少なくともクリミアのロシア軍司令部の内部周辺は、ウクライナのスパイだらけということだ。ひょっとすると、クレムリンの中も?
(23/09/24)

 ラジオストックでの「東方経済フォーラム」に先だって、ロシアと北朝鮮との同盟強化に関する文書が公開されました。それによるとそれぞれは次のような要望を示している。
1、ロシア
 〇砲弾、対戦車ミサイル
 〇人員(兵士又は労働者)
2、北朝鮮
 〇人工衛星技術 
 〇原子力潜水艦技術
 〇食糧
 誰がどう見ても不釣り合いである。圧倒的に北朝鮮が有利だ。しかしプーチンは既に一部…人工衛星技術・・・について同意したという報道もある。無論それがどのレベルのものか今後を見てみなければわからないが、プーチンは相当追いつめられていると考えられる。
 それは弾薬の供給不足である。昨年から今年の春までは、ロシア軍は圧倒的な火力を誇っていた。一日当たりウクライナ軍が1万発なのにロシア軍は6万発を打つとまで云われた。ところが最近はそれが逆転して、ロシア軍1万発に対し、ウクライナ軍2万発と云われる。
 明らかに供給が不足している。供給不足ということは生産力低下を意味する。要するに労働力が不足しているのだ。労働力低下の現任として考えられるのは、無論ウクライナ戦争の所為。現在ウクライナにはロシア軍は42万人が展開しているといわれる。このうち約半分の20万人は、昨年秋から今年春に掛けての動員兵だ。これでは足りないからショイグは今後更に30万人を動員すると云っている。
 兵士で最も使い勝手の良いのは、20代から30代の健康な男性である。しかしこれは工場労働者として最も有効な世代と被る。つまり、優れた兵士を動員すれば、逆に優れた労働者を失うことになる。
 この矛盾を解決するために、プーチン/ショイグが考え出したのが、外国からの調達だ。そして狙われたのが北朝鮮である。北朝鮮にも弱みがある。ここ数年打ち続く異常気象で、北朝鮮農業は壊滅状態。この原因は異常気象という自然要因もあるが、それに対応でき中田農業政策の失敗が大きい。なかでも分かってもいないのに、現場に一々口を出す金正恩の責任が最大だ。
 又兵員不足を補うために、辺境地帯や海外で通常の3倍の給料で志願兵を募っている。本当に払うかどうか分からないが、そうでもしなければならないのが、プーチンの現状。
 上にあげた北朝鮮の要望も、ロシア側から見れば厚かましいのにも程がる。特に軍部には不満が貯まる。さてこのような対北朝鮮下手外交が、軍部や国内保守派、中でもロシア民族主義者の理解が得られるか?
(23/09/14)

ウクライナの反攻作戦がいよいよ本格化しているようですが、この間テレビに出てくる所謂”軍事評論家”の話を聞いていると、はっきり言うとオタクの域を出ていない、モノを知らないという感を受ける。
1、第一にウクライナ軍は諸兵科連合作戦に慣れておらず、それでロシア軍の防御線を突破出来ていない、という見方が、主に欧米から出ている。また、日本でも某元陸將の様に諸兵科連合作戦を絶対視するものもいる。しかしこれらは、ないものをねだる小児病的見方である。
 諸兵科連合作戦とは、空陸が一体となり、航空支援の下に、装甲化された歩兵、戦車、歩兵戦闘車が一体になって、敵防禦陣を破壊・突破して、突入路を拡大するものである。これが最も成功した例は、第二次大戦中のポーランド戦、対フランス戦、独ソ戦の初期(バルバロッサ)である。これらの戦いでは、開戦と同時にドイツは圧倒的な航空戦力で、敵空軍基地を叩き、敵空軍力を無力化した上で、戦車を先頭にした地上戦力が突入する。その後も、地上部隊の要請で敵の拠点を空軍で叩く。つまり、十分な空軍力が備わなければ出来ない戦法である。その証拠に、独ソ戦では戦線がロシア内陸に進むにつれて、構造距離の短いドイツの航空機では地上軍への十分な支援ができなくなり、制空権を奪われた43年以降では、ドイツ軍に勝ち目はなくなった。
 戦車・装甲車等地上装備もロシア軍に比べ圧倒的にすくなく、まして航空兵力が完全に劣るウクライナ軍に、諸兵科連合作戦など、要求したり期待したりすることが間違っている。もし諸兵科連合作戦を要求するなら、米欧はもっと早く、戦車・航空機の供与を行うべきである。何かといえばF16の供与を引き延ばしに掛かるアメリカが、偉そうなことを云うべきではない。
2、「選択と集中」の問題点。先日、ポーランド某所で米英とウクライナの軍トップの会談がもたれ、5時間の激論の末、ウクライナの主張が通った。アメリカは現在三方面で行われている反攻作戦を、一方向に集約すべきと主張。つまり「選択と集中」である。これに対し、ウクライナは航空支援も期待出来ない中での大軍の集中は、ロシア軍に標的を与えるだけだと反論。
 ウクライナの戦法は歩兵が匍匐して、手探りで地雷を探知し破壊した上で、ジワリと前進するというもの。ところが最近これが功を奏し始めた。それはウクライナの高校生が発明したといわれる赤外線ドローンの活用。ドローンに赤外線センサーを積んで夜間に飛ばし、地雷と周辺の土の温度差をキャッチし、地雷の位置を捜索する。その後、クラスター爆弾や地雷除去弾で地雷を破壊し、地上部隊が前進する。一種の「浸透戦法」である。これなら多数の小部隊を広範囲に展開できるので、ロシア軍に揺さぶりを掛ける効果がある。つまり「選択と集中」に対する「分散と機動」である。
3、周辺技術の知識。ウクライナ軍がザポリージェ方面ロボテイネで、ロシア軍第一防衛線を突破したというニュースが流れたとき、某テレビ番組では軍事評論家達は、その次の第二防衛線の突破が困難だろう、と述べていた。その理由が「竜の歯」と呼ばれる対戦車構造贓物や対戦車壕の存在。筆者はこんなもの今の土木技術ならイチコロだと云っている。
 丁度テレビでは、ロシア軍が作った「竜の歯」効果の宣伝動画が映っていた。そこでは、戦車が「竜の歯」の一つにしょうめんから突進し、乗り上げてバタバタしている様子。ロシア軍はこれが「竜の歯」効果と云いたいのだろうが、障害物に真正面から突進するアホなど、今のロシア軍でもない限りあり得ない。現代戦車は前に排土版を付けられるから、それで「竜の歯」を押して、先の対戦車壕に放り込めば良い。これを何回か繰り返すと、歩兵の突撃路が出来る。また、このようにして塹壕を閉塞していけば、塹壕内のロシア兵の移動を拘束できる。
 10月か11月には雨が降り出し、所謂泥濘期に入る。この間は一瞬の停戦期になる。しかしある工夫をすれば、泥濘期にも活動はできる。それはジオテキスタイル(土木用ネット、シート)の活用である。これは軽量なので人間で簡単に運べる。これを前方に広げていけば、泥濘地でも歩兵や軽火機の移動が可能な路が簡単に作れる。更にこれを数層にわたって分厚くしきつめると、地雷への圧力が激減するので、踏んでも爆発しないか、爆発しても被害はズーッと小さくできる。
 ジオテキスタイルの本家本元はイギリスのネトロン社。昔ネトロン主催の補強土セミナーに出席したことがあるが、ネトロンの営業がイギリス陸軍にも売り込んでいる、と云っていた。何故イギリス軍はジオテキスタイルの戦場での活用を諮らないのか?単に不勉強なだけか、それとも新しい技術が理解出来ないほど、頭が悪いのか?
(23/09/06)

プリゴジン暗殺から1週間。これはプリゴジンの抹殺と同時にワグネルの解体を狙ったものだ。果たしてそれは狙い通りに行くのか?現在ワグネルは大きく次の4箇所に散在していると考えられる。
   1、ロシア国内
   2、ベラルーシ
   3、北アフリカ及びシリア
   4,中部から南アフリカ
1、ロシア国内のワグネル;主に北方サンクトペテルブルグ周辺と、南部ロストフ周辺に多いと考えられる。彼らはロシア正規軍に吸収されるか、除隊するはずである。正規軍に吸収されたグループはおそらくウクライナ南部の激戦区に送られ、時間を掛けて始末されるだろう。除隊したグループでも無事に社会復帰出来るとは思えない。もとの犯罪者に戻って、刑務所行きだろう。
2、ベラルーシのワグネル;上手くいけばルカシェンコの親衛隊として、ベラルーシ政府に再就職できるだろう。
3、北アフリカ及びシリアのワグネル;つい先日、ロシア国防省はリビアに対しワグネルの追放を、シリアに対しワグネルを(ロシア)国防省傘下に入れるよう要求した。さて、リビア、シリア両政府とも、ロシア国防省の要求に素直に従うでしょうか?両国とも、政権にとって、ワグネルは大変便利な存在だ。それどころかワグネルなしでは政権が、維持出来なくなる恐れがある。その点をロシアはどう担保してくれるのか?それが無い限りはいそうですか、とはいかない。
4、中部及び南アフリカ;この地域の2/3位の国は、軍事・経済援助、治安、資源の点で、既にロシア勢力圏に入っていると考えられる。そしてそれは殆ど全て独裁国家だ。誰がロシアとの間を取り持ったのか?それがワグネルというのは周知の事実。そして独裁者と直接接触し、関係を築いたのが、誰あろうプリゴジンだ。
 プリゴジン亡き後、プーチンやその代理人、ワグネルに変わったロシア軍に対し、アフリカの独裁者達がどう思うか?あれだけロシアに貢献した人物でも、一旦プーチンの気に入らないことをすれば、最も残酷な方法で始末されるのである。独裁者は常に暗殺を恐れる。プリゴジンも乱暴だったが、裏切者ではなかった。果たしてプーチンは?自分もプリゴジンと同じ目に合わない保障はない。
 ということで、ワグネルは姿かたちを変えても、生き残るだろう。その一部はプリゴジンの復讐を誓っているかもしれない。プーチンはプリゴジンとワグネルを始末したことで、やれ安心と思っているかもしれないが、この先再び混乱が始まるかもしれない。中国訪問どころではなくなるか。
 さて2013年第二次アベ政権が発足すると、アベ晋三は「地球儀を俯瞰した外交」と称して、これまで手薄だったアフリカ外交の梃入れとアフリカ各国を歴訪し、莫大な経済援助を薬草してきた。その提灯持ちをやったのが、外相の岸田文雄。果たしてその効果はあったのか?アベと岸田があわただしく駆けずり回っていた裏で、アフリカにはロシアとワグネルが浸透していったのである。一体全体、あの当時のアベー岸田外交は何だったのかね。
(23/08/30)

 先日テレビでプリゴジンの死を報告したプーチン。いささか疑問の点がある。それは両手を前につき、右手を頻繁に動かしている点だ。プーチンは右手が不自由で、あまり動かさない。それにしてはこの時のプーチンは、まるで右腕が利き腕のような状態だった。間違いなく、これは偽物のプーチン・・・影武者の一人・・・です。
 先月に、CIS首脳を集めた会議の時、会場に入って来るプーチンを見ると、右手をだらりと下げたままだ。これは本物です。右手をどう使っているかは、画面上のプーチンが偽物か本物を見分ける第一のポイントです。是非皆さんもやってみてください。習近平の場合は、頭が左に傾いているかどうかが決め手です。キムジョンウンも影武者を使っている可能性はあるが、未だ明らかにはなっていない。
(23/08/27)

本日、プーチンはロシア当局が未だプリゴジン死亡を確認する前に「プリゴジンの死に哀悼を捧げる」といったり、「彼は優秀なビジネスマンだったが、数々の過ちを犯した」などと、如何にも今回の事件が「プリゴジンの乱」の復讐だったような発言をくりかえした。これではまるっきり、プリゴジン暗殺の真犯人は自分だ、といわんばかりである。
 昨日には未だジェットに乗っていたプリゴジンは偽物説があったが、今日のニュースでは、みんなプリゴジン死亡で一致している。そして話題は誰がプリゴジン暗殺を指示し、誰が実行したかに興味が移っている。誰がプリゴジン暗殺を指示したか?プーチンに決まっている。では何故プーチンはプリゴジンを消そうとしたのか?これにも色々説があって一致していない。しかし上で挙げたプーチン発言で結論が出た。
 しかし原因はそれだけではあるまい。いろんな説の中に、一つ興味ある説があった。それはプーチンは自分を弱く見せようとした人物を許さない、というものである。「プリゴジンの乱」では、最終的にはルカシェンコの仲介で、プーチンとプリゴジンとの会談が持たれたが、こういう場合どっちが会談に呼びつけたかで勝敗が決まる。反乱中、プーチンは行方不明で、何処かに逃げ隠れしたんじゃないか、という噂まで流れた。そして24時間後にのこのこと現れた。その後を見ても、プリゴジンはアフリカとロシアを行ったり来たり、やり放題だ。誰が見てもプーチンの負けだ。
 民俗学の父と云われるフレーザーによると、古代(未開)社会では、王(神)は霊力がなくなると、犠牲となって殺され、肉体は生贄として解体されて田畑に撒かれ、そして次の王(神)を迎える。柳田国男の云う、王(神)殺しの所以である。これは人間の基層(集合無意識)に深く刻まれている。通常は理性によって封印されているが、何かスイッチが入ったとき(例えば強い社会ストレス)に、いきなり表面に出る。
 プリゴジンが犯した過ちとは、プーチンの弱点をあからさまにしたことだ。プーチンはこれに脅えたのである。弱い王(神)は民衆によって殺される。これを防ぐには、自分の弱さをあからさまにした人物を殺して、自分がより強いことを示さなければならない。プリゴジンは自分に替わって神になろうとした。それは許されない。
 殆どオカルトの世界だが、ここ10年程のプーチンの言動を見れば、彼の意識は既に理性の世界から逸脱している。しかしプーチンの意識は、誰でも多かれ少なかれ持っている。王殺しとは即ち父殺しでもある。これは若者が大人に脱皮するために必要な通過儀礼でもある。ギリシア神話のオイデイプス王の物語、ドストエフスキーの「カラマゾフの兄弟」のテーマもそれだ。
 今度のプリゴジン殺しが、今のロシア権力構造にどう影響するか?プーチンによる恐怖支配は更に進むだろう。これにみんな脅えて従順になるか?一時的には表面上はそうなるだろう。しかしプーチンの怒りが何時何処に跳んで来るかわからないようでは、我慢にも限界がある。逆のケースも十分あり得る。例えば韓国の朴チョンヒは強権で反対派を抑え込んだが、窮鼠猫をかむで、大統領に最も忠実であるべき大統領警護室長の李康落に銃殺された。プーチンもそうなるか。
(23/08/25)

 なんと今朝いきなり飛び込んできたニュースが、プリゴジン死亡事件。今朝・・・ということは現地時間では未だ夜中・・・プリゴジンを載せたプライベートジェットが、サンクトペテルブルグに向かう途中、モスクワ北方のトヴェリ州上空で、急速な上昇下降を繰り返し、残骸が発見されたというもの。あるニュースではプリゴジンの遺体も確認された、といわれる。
 さてこの事件何を意味するのか?
1、単なる事故
2、ウクライナ情報当局によるテロ・・・バックにアメリカCIAかイギリスMI6が絡んでいる可能性もある。
3、ロシア反プーチン派によるテロ
4、プーチン自身の指示による暗殺・・・バックに国家親衛隊の陰も。
5、ワグネルの内輪もめ 
 プリゴジンといえば、つい最近、アフリカにいるという動画を公開して、みんなアフリカにいるとばかり思っていたのに、いきなりロシアでこのような形で現れるとは、真に予測のつかない国だ。バイデンは早速プーチン関与の可能性を匂わせる発言をしている。これは西側情報機関(CIAかMI6)が、そのような情報を事前に掴んでいた可能性を示唆する。
 以上5ケースの可能性のうち、誰でも思いつくのが「4、プーチン自身の指示による暗殺」、である。暗殺で必要なアイテムは動機と方法である。方法はどうにでもなるが、動機は一概には言えない。特にプリゴジンとプーチンとの、これまでの関係を見るとそうだ。「プリゴジンの乱」で一時は悪くなったかに見えたが、その後プーチンはプリゴジンの行動を、半ば容認しているようだった。それがいきなり暗殺とは、いささか納得できない。
 一つ可能性として考えられるのが、一カ月ほど前から行方不明になったスロビキンである。当局に拘束されていると云われていたが、ほんの数日前、正式の解任が発表された。ロシアや旧ソ連だけでなく、中国もそうだが、この種の特殊な独裁国家では、何か異常な高官人事があるときは、直ぐには発表されずことが済んでから遅れて発表されることが多い。中には有耶無耶になってしまうこともある。
 スロビキンの解任はずっと前に行われ、この間取り調べが行われてきた。その中で、プーチンがとても許せないような内容があり、その中にプリゴジンの名前があった。その時にプリゴジン抹殺を決定したが、なかなかガードが硬くてタイミングが掴めない。今回やっとそのチャンスがやってきたので、殺ってしまえということになったのか。スロビキンは今頃、消されてしまっているだろう。この結果が、ショイグやゲラシモフ他軍部にどういう影響を与えるか注目の的。
(23/08/24)

 昨日はロシア南部ダゲスタン共和国でガソリンスタンド爆破事件が起こり、死傷者が出ている。その他原因不明の爆破事件やドローンによる攻撃も頻繁に起こっている。ダゲスタン共和国といえば、「プリゴジンの乱」終結後、プーチンが真っ先に訪れた共和国で、プーチンを歓迎するヤラセ映像で有名になった。元々独立志向が強く、更に今のウクライナ戦争でも戦死勝率はロシア国内で最も高い。これに「プリゴジンの乱」の影響が加われば、更に独立指向を高める。これは来年の大統領選にとってマイナスだ。プーチンもそれが気になって跳んで行ったのだろう。
 謎の爆破事件がダゲスタンだけに留まればよいが、実態はロシア各地に広がっており、ウクライナの第5列だけの仕業とは言えない。先日、東京で自由ロシア同盟という反ロシア団体の総会が開かれた。彼らが連携して、ロシア国内騒擾活動を始めた可能性もある。ロシア革命の前にも、ボリシェビキによるテロ活動が頻発した。国内反帝国主義者が増えてきた証拠だ。それにもかかわらず、ツアーリはドイツとの戦争に踏み切って国力を毀損消耗して、遂に革命を導いてしまった。プーチンがツアーリの二の舞を踏む可能性は大いにある。
(23/08/16)

注目のニジェール情勢。西アフリカ15カ国ECOWASは前大統領の復帰を要求し、待機部隊の終結を始めた。これに対し、クーデター側は、もしECOWASが軍事介入すれば前大統領とその家族を殺す、と恫喝。殆ど政治紛争というより、アメリカ30年代のギャングの抗争のようだ。
 これまで、ある国で革命がおこったとき、他国が介入して革命政権追放に成功したためしは無い。もしあったとすれば、それは黙って秘密裡に政権を転覆したときだけだ。例えば60年インドネシアで、インドネシア共産党がスカルノを担いでクーデターを計画したとき、アメリカCIAはスハルトを使って逆クーデターに成功した。
 今度の場合はどうなるだろうか?ポイントはバジル前大統領の確保である。アメリカかフランスがバジルの救出に成功すれば、状勢はECOWASに有利になる。一気に西アフリカに於けるワグネル掃討に弾みがつく。但しランボーのようなスーパーマンが居ればの話だ。
(23/08/12)

 昨日夜、偶々テレビを見てチャンネルを回すと、出てきたのが鈴木宗男。暫く見ぬ内に随分年を取ったなあ、と思った。フジテレビBSの某討論番組である。テーマは無論、現在の日露関係。宗男の言い分はいつもの通りだから特に取り上げないが、一つだけ取り上げておこう。
 「現在の日露関係を、日本のメデイアや評論家は入口のところでばかり議論しているが、私は出口の議論をしている。それが政治家の務めだからだ。」というのが宗男の言い分。では宗男が描く出口とはどういうものか?果たしてそれは現実的なものか、みんなに納得できるものか?
 これまでの言動から推すと、宗男の描く出口ビジョンとはこんなものではなかろうか?
1、西欧諸国は支援に疲れ、結果としてウクライナは戦争を継続できずロシアに降伏する。
2、ロシアはウクライナに対し寛大な措置をとる。但しウクライナはベラルーシと同じ、ロシアとの兄弟国としてのみ存続が認められる。ネオナチ勢力(親欧米自由主義者、民主主義者、反ロシア、反プーチン派)は排除される。
3、ロシアに対し制裁を加えた諸国は、資源・食糧・エネルギー諸分野で報復を受ける。日本もその例外ではない。そうならないためにロシアにパイプを作り、アメリカ依存から抜け出すべきである。
 しかしその過程で、ウクライナで膨大な虐殺・虐待・暴行・伝統・文化・言語・宗教の破壊等非人道的行為がロシア人によって行われる。今の戦争はそういう残虐行為をウクライナだけでなく、世界に広げないための戦いなのだ。鈴木宗男はそういうことを想像できないらしい。
 一方西欧や反ロシア系諸国・諸勢力は別の出口も描いている。これには色々あって、どれがまともなものか分からないが、幾つか例を上げる。
1、ロシアは内部崩壊し、28(あるいは41)の共和国に分裂する。・・・最も極端な例、最近東京で開かれた自由ロシアフォーラム。
2、ロシア軍が全ウクライナから撤退したうえで停戦協議に応じる。・・・ウクライナ、ゼレンスキー政権やバルト諸国
3、22/2/24開戦時の線まで、ロシアが撤退したうえで停戦協議を行う。・・・中国、インド
4、これらの様々なバリエーション。
 アメリカやNATO諸国がどのケースを出口と考えているのかは、未だ明らかではない。NATO 内でも東欧・バルト諸国と西欧諸国とでは温度差がある。宗男の出口はその中の一つに過ぎないが、ウクライナやロシアの脅威にさらされている東欧諸国が、到底飲めるものではない。
 宗男は盛んに岸田政権のアメリカ一遍同を非難するが、岸田を宗男に置き換えればどうなるか?ロシア一遍同政権になるのではないか。そうなれば益々北方領土返還はあり得なくなる。17年だったか、プーチンが訪日し、下関でアベとフグを食ったその日、ロシア議会は「政府は領土を他国に譲ってはならない」という義務を憲法に加えることを決議した。鈴木宗男はよく歴史的経緯云々を主張するが、彼の言う歴史的経緯はロシアに都合の良い経緯だけだ。ロシアについてもっとよく勉強しなくてはならない。
(23/08/11)

 毎年8月になると、反原爆運動が盛んになる。特に今年は原爆開発を描いた映画「オッペンハイマー」が公開されるなど、アメリカでも注目度が高くなっている。オッペンハイマー自身はマンハッタン計画の直接指導者ではなく、その人脈知己を生かして、エンリコ・フェルミやフォン・ノイマンのような大勢の物理学者や技術者を集め、その調整を諮ったいわば映画のプロデユーサーのような役割だった。このチームの末端に未だ大学院生だったユーリー・ガモフがいて、最初の核爆発を見て、ビッグバン仮説を思いついたというのは有名な話である。但し、この仮説は当初アインシュタインからは全く無視されていた。
 それはともかく、今世界の核問題で最も関心を集めているのは、ウクライナ戦争でのロシアの核使用だろう。以前からメドベージェフ何かが核使用をちらつかせていた。最近は極右政治家や軍事ブロガーだけでなく、高名な政治学者まで核使用の必要性を広言しだした。理由はウクライナでの戦いに一向目途が立たず、逆に周縁諸国のロシア離反が顕著になりだしたからである。ここで核を使用することにより、戦局を一気に打開するとともに、世界にロシアの実力を示し、恐怖を与え、恐怖と力による支配を再現するためである。なんとも19世紀か20世紀の発想だ。
 しかし筆者は今のところ、その可能性は殆どないと考えている。その理由は、ロシアの核使用の権限は今もプーチンが握っており、誰にも渡す気はないことが一つ。プーチンが最も恐れるのは、「暗殺」、「コロナ」そして「放射能」である。ロシアが戦術核を使用するとすると、対象は人口密集地である首都キーウか南のオデーサ、そしてリビウが考えられる。
 ウクライナの風は、夏は暖かい黒海から北へ吹く。チェルノブイリ事故の時、風は北北西に吹いていた。だから放射能雲の最大の被害者はベラルーシだった。もし風が北北東に吹いていたら、モスクワも汚染域に入る。リビウは国境の街だ。汚染はウクライナだけでなくポーランドにも及ぶ。これをNATOが核攻撃と受け留めると、戦争を早く終わらせるどころではない。オデーサを潰せば、季節によっては黒海が汚染される。汚染水は海流に乗って、クリミア半島に到達する。黒海はロシアだけの海ではない。トルコも重要なステークホルダーだ。黒海が汚染されれば、トルコを敵に回すことになりかねないから、これも戦争早期終結には繋がらない。
 つまりどっちに転んでも、核使用は戦争の早期終結の根拠にはならない。ならないどころか、戦争終結を遅らせるのみである。あるロシアの民族派国際政治学者は、開戦当初のバイデン発言を踏まえて、ロシアが核を使ってもアメリカは核を使用しないから構わない、と小学生並みの稚拙で乱暴な意見を述べるが、人の考えはしばしば簡単に変わるものだ。そして今のところロシアの最大の支援者である中国、理解者であるインドが核使用に反対している。うっかり使うと核でウクライナを屈服させるどころか、その所為で、ロシアは分裂・崩壊しかねないのだ。
(23/08/07)

 ニジェールクーデターのバックにロシアとワグネルの存在があるのは分かっていたが、思わぬ展開に。昨日、西アフリカ15カ国が連名で、旧政権の1週間以内の復帰を要求し、要求に従わない場合には武力行使も辞さないと宣言。これら西アフリカ諸国には、ロシアと良好な関係を有したり、ワグネルが活動する国も多い。それにもかかわらず、こんな声明が出るということは、ロシアやワグネルを自分の都合の良いように利用するが、それ以上の干渉は許さないというのが、本音ということだ。ここでもプーチンは事態を甘く見誤ったようだ。
 ロシアがよく言うのは、「ロシアはアフリカには帝国主義を持ち込んでいない。常に西欧帝国主義からの解放を支援してきている」というフレーズである。一見本当だが、これには大嘘が隠されている。帝国主義華やかりし19世紀後半、確かにロシアはアフリカには進出していない。その理由は、まずロシアからアフリカは遠い。又アフリカは英仏両国の草刈り場で、ロシアは割って入ることが出来なかった。特にフランスとは古くからの付き合いがあって、フランスには遠慮せざるを得なかった。更にロシアは南部のカフカス、ザバイカル地方の植民地化、ウクライナ・ポーランド・バルト諸国のロシア化が忙しくてアフリカどころではなかったのである。
 ところが戦後、英仏両国は大戦で体力を使い果たし、かつてのように植民地経営に力を注げなくなった。その結果発生したのが植民地解放運動と独立戦争。ここに付け入ったの旧ソ連。今のアフリカとロシアの腐れ縁はこの時に始まる。このソ連のアフリカ介入はソ連のアフガニスタン侵攻やそれに続く、東欧・ソ連崩壊、ロシア連邦の成立で一旦下火になったが、2014年クリミア侵攻後、俄かに活発化した。その尖兵となったのがワグネル。その背後にプーチンやロシアFSBがいるのは、云うまでもない。
 さて今のアフリカ独立国の多くは、未だに部族社会を引きずっているものが多い。かつての帝国主義時代は英仏のような宗主国は、部族間対立を利用して間接支配を行った。その結果、統一中央政府による一元国家というものが育たなかった。部族間対立が解消できないままの、いきなりの独立である。当然独立政府は部族の寄せ集めとなり、その対立が政府や議会に持ち込まれる。その結果政情は常に不安定となり、内戦やクーデターの危険は消えない。
 そこの目を付けたのが、ロシアとワグネル。「我々にまかせてくれれば、万事上手くやってあげますよ」とすり寄る。ロシアは経済・軍事援助、ワグネルはフェイクニュースを中心にしたメデイア対策と、実力。それだけで収めておれば良かったのに、ニジェールでは、一線を越えてしまった。その結果が15カ国声明である。
 15カ国声明の前にアフリカ諸国には、大きくなるロシア・ワグネルの影響力に、警戒感も産まれていたのではないか?先日のサンクトペテルブルグでのロシア・アフリカ会議では、ロシアの穀物無償援助案に対し南アフリカ大統領が我々は物乞いに来たのではない」と7プーチンに言い返す場面があった。かつてない状況である。プーチンもビックリしただろう。
 なお、ニジェールではクーデター後、フランス大使館前に群衆が集まり、反仏デモをやっていたが、これが日当ナンボの動員・・・サクラ・・・であることは明らか。その中にロシア国旗があったのが、このクーデターが誰の仕業であることを、よく物語っている。
(23/08/01)

 アフリカニジェールのクーデターのバックには、やっぱりワグネルとプリゴジンの存在があることが分かった。一方サンクトペテルブルグでは、何事も無かったようにロシア・アフリカ会議が開催。但し参加43カ国のうち、首脳が参加したのは、たったの17カ国。みんなロシアと西側の二股を掛けているのだ。
 ここでプーチンは、ロシアは途上国に対しロシア産穀物を無料又は低価格で供給する用意があると宣言、その手始めがマリ等6カ国に小麦5万トンを供給すると声明。本当でしょうか?供給するするといって実は何もしない。そこで文句を言うと、実は船積みしているが西側の妨害で出航できないのだ、悪いのは西側の帝国主義者達だ!てなことを言って誤魔化すのだろう。そもそもたった小麦の5万トン位で、6カ国を買収しようというのだから厚かましいにも程がある。
(23/07/29)

 アフリカ、ニジェールでクーデター勃発、大統領は軍に拘束された。このクーデターの背後にいるのは誰か?プリゴジンは最後のSNSで、「我々は西へ行く、もっとデッカイ出来ごとが起こるだろう」と不気味な予言。西とはアフリカで、でっかい仕事とは今回のクーデターか?但しこのクーデターがロシアの指示によるものか、ワグネル単独のものかは、未だ不明。
 ニジェールは現政権は西側寄りだが、元々ワグネル汚染国で、ロシアとも関係が深い集団はいる。今回のようなことが起こっても不思議ではない。これがアフリカ各国へ広がっていくようなことがあれば、アフリカとロシアとの関係も変わらざるを得ない。只今日からはロシア・アフリカ会合、来月にはBRICSがある。プーチンもうっかりしたことは言えず、当面は知らぬ顔だろう。
(23/07/27)

 ロシアでプリゴジンの失脚に続いて、極右活動家のギルキンが拘束されたという情報。理由は不明だが、プーチンの弱腰批判をしたり、大統領選への出馬をほのめかしたところから、プーチンが早めに芽を摘んだ、という見方が有力。つまりプーチンにとって、自分に逆らたtり、追い越そうという奴は、右だろうと左だろうと許せないのだ。 
 この件について、アメリカ情報筋は、ギルキンの背後に「正体不明のシロビキがいる」と述べる。「正体不明のシロビキ」とは一体何者か?シロビキとはプーチン体制を支える権力集団のうち、FSB(旧KGB)の流れを組むもの、軍や軍産複合体の幹部、国営企業のトップらを含むグループで、中でもFSB出身者は、プーチンがかつてKGB職員だった所為もあって有力である。
 今度の戦争も、FSBが強力に進め、プーチンや軍はそれに引っ張られた面もある。従ってFSBは何が何でも戦争をやり抜かねばならない。途中で止めれば、それは組織の存続に拘わる。と考えれば、ギルキンなどの極右のバックにFSBが絡んでいても不思議ではない。FSBはKGBの後身だから、クレムリン内に組織を作っている。そしてその性格上、決して正体はあかさない。おそらくプーチンですら把握していないだろう。
 そして現在、FSBのドンは国家安全保障委員会書記のパトルシェフ。彼はかつてプーチンの上司だった。それだったからギルキンはこれまで云いたいことを言っても、とがめられなかった。しかし大統領選がマジかに迫ってきた今、甘やかしておくわけにはいかない。
 プリゴジンは飽くまで民間人で、パトルシェフのような官僚ではない。つまりクレムリンに隠れた組織を持たない。ある意味プーチンにとって安全パイでもある。だから生かしておく。プーチンとパトルシェフはスパイ同士。スパイが仲良くてを携えてなど、おとぎ話の世界だ。筆者の考えでは、アメリカ情報筋の云う「正体不明のシロビキ」とは、即ちセルゲイ・パトルシェフである。
(23/07/26)

 ロシアが黒海をウクライナ方面に向かう船は、全て軍事用品を積んでいるとみなし、攻撃の可能性も示唆した。思い切った博打の様だが、なんとなく第一次世界大戦での、ドイツによる無制限潜水艦戦に似ている。イギリスの海上封鎖とアメリカによる対英軍事援助に手を焼いたドイツ海軍は、北大西洋をイギリスに向けて航行7する船舶に対し、国籍を問わず無制限に攻撃すると発表した。それによく似ている。「プリゴジンの乱」以来、何かと弱腰批判されるから、ここで思い切って一勝負にでたか。
結果として起こったのがルシタニア号事件。このイギリス船籍の乗客の中にアメリカ人がいたものだから、それまで中立だったアメリカ世論が沸騰し、遂にアメリカの参戦を招いた。ドイツは自らの手で自らの首を占めたのである。プーチンだってこの程度の歴史はわきまえているだろうが。もっともこの事件はチャーチルの陰謀だとする説もある、陰謀だろうが何だろうが、そんな陰謀を招きかねないことを始めたのが、間違いの基だ。
  これは世間の常識だが、船舶は所属国の主権の延長とみなされ、治外法権が適用される。もしある国が他国の船舶を攻撃すれば、それは船舶所有国への宣戦布告と同等である。仮にロシア海軍の艦船がある船舶を攻撃したとき、その船がNATO加盟国だったら、ロシアはNATOと全面戦争に入る。もっとやばいのは、この船が掲げる国旗が星条旗だった場合。この場合は、アメリカとの全面戦争に発展しかねない。歴史上アメリカは自国船が攻撃されると、如何に国内世論が分裂していても、一致団結する。太平洋戦争でも、真珠湾攻撃の前までは、アメリカ世論は戦争に介入するかどうか割れていた。ところが真珠湾攻撃で、一致してしまったのである。山本五十六はそこまで読めなかったのか。はたしてプーチンは如何に?なおロシアによる黒海封鎖解除の条件は制裁解除。言い換えれば、今の制裁がジワジワと効いてということだ。
(23/07/22)

 「プリゴジンの乱」の後、いきなりダゲスタン共和国に姿を現したプーチン。はたしてこれは本物か、影武者か?について昨日のTBS-BS「報道1930」が特集。筆者は元々、これは影武者だろうと思っていた。集まった群衆も、本物の民衆ではなく動員。
 番組ではコメンテーターがみんな、ダゲスタンにやってきたプーチンは偽物と思っていた。誰も考えることは同じだ。同定法で興味を惹いたのが、アメリカの研究機関が開発した「耳判定法」。耳の形は5才を越えると、全く変化しなくなり、個人によっても異なるので、箇人判定法としては素も優れている、というのが開発者の言い分。そういえば、プーチン影武者説が盛んになったとき、内のカミサンが「耳は変わらない」といっていた。アメリカの最先端科学者と、大阪高槻のオバハンとで、レベルはたいして変わらないことがわかった。
 結果は94%の確立で本物と判定。一方別の会議映像での音声データでは、本物とは別人と判定。どっちが本当か分からないが、ほんものと影武者がごっちゃになってしまって、本人も分からなくなっているのではあるまいか?
 もう一つ、何故プーチンはダゲスタンのような辺境に姿を現したのか?色々な理由はあるだろうが、ダゲスタンの位置を画面で見たとき、筆者が直感的に感じたのは、これはプーチンが亡命前に逃亡する下検分ではないか?ということだ。
 ダゲスタンはロシア西部の南端で、東はカスピ海、西はチェチェン、南はジョージアとアゼルバイジャン。つまり南の背後は安全、西のチェチェンのカデイロフはプーチンに絶対忠誠。カスピ海の向うはイランだ。国内で逃亡するには一番安全だ。中国の習など信用出来ない。ルカシェンコだって似たようなもの。
(23/07/22)

ロシア国防省がワグネルから押収した武器の一覧を公開した。その中には、2000両に及ぶ戦車・装甲車、2万丁の小銃。20万発の弾薬やミサイルも含まれるという。小銃、弾薬はヨーロッパには闇市場があるからそこからの購入も考えられるが、戦車、装甲車やミサイルは一般には市場では売られていない。政府の関与が必要だ。ズバリ、プーチンの許可がなくては入手出来ないはずだ。
 プーチンは表向きワグネルとは無関係と言い張るが、今回の武器押収でそれが嘘だということがばれた。もし本当にプーチンが無関係なら、これらの武器は軍産複合体か軍から横流しされたものだ。無論そのプロセスでは相当の利権が動いたはずだ。その一部がプーチン御殿やショイグ御殿に消えた、と考えても不思議ではない。

 個人的には、なんとなく煮え切らない結果で終わったように思えるリトワニアでのNATO理事会。岸田は喜び勇んで出かけたが、あんなの居てもいなくても同じ。何故煮え切らないと感じたかというと、NATO加盟国が対ウクライナ支援について足並みが揃わないことだ。このため無理やり結論を出そうとしても、各論併記で何を言いたいのかわからなくなる。
 何故ウクライナ支援について足並みが揃わないかというと、それは今のロシアに対する認識が一致していないからである。ヨーロッパ諸国の対ロ認識は大きく分ければ、次の三グループに分けられるだろう。
1、強度のロシア恐怖感
2、中程度のロシア恐怖感
3、あまり関心なし
 1、はかつての東欧圏及びソ連からの独立国。ポーランド、バルト三国、フインランドなど。ソ連の支配を身に染みて経験した諸国である。ウクライナ支援には最も積極的である。ノルウェーは直接ソ連支配を受けたことはないが、北海で常にソ連ーロシア艦隊に遭遇しているから強度の恐ロ感に襲われても不思議ではない。日本でも幕末ロシア軍艦が沖合にうようよしていた長州に、強い恐ロ主義が芽生えたのと同じ。
 2、はドイツ、オランダ、デンマークなど中北欧諸国。ロシアの軍事的脅威は認めるが、同時に経済的依存度も高い。
 3、はフランス、スペイン、イタリア等、地中海諸国。ロシアとは距離もあり、脅威がなかなか実感できない。フランスは歴史的にロシアとの結びつきが多く、それは文化・経済面にも及ぶ。
 無論各国ともそれぞれ問題点をかかえており、簡単に色分けできるものではないが、ロシアとの歴史的関係、地理的距離感が、ロシアに対する認識と対ウクライナ支援に微妙な差が出てくる所以である。
 その中で興味を引いたのが、トルコのエルドアンがスウェーデンのNATO加盟に、条件付きながら賛成の立場を取り出したこと。これを「プリゴジンの乱」始め、プーチンの威光が低下して、ろしあを見限った所為だ、と云われる。それもあるが、筆者は今年春のトルコ大統領選で、さすがのエルドアンもこれではやばいと思ったのではあるまいか。この選挙、現職はマスコミを抑え対立候補の選挙演説を制限したり、集会を解散させたりと選挙妨害は甚だしく、逆に支持地盤にはバラマキをやって買収を測る。無論プーチンもSNSを使ってフェイクニュースをばらまいてエルドアンを支援する。これだけやれば、最低でも70%以上の得票率はあるはずだ。ところが終わってみると、やっと50数%。あのバラマキは何だったのか?これでエルドアンはすっかり自信を亡くし、プーチンあてにならない、この際NATOにすり寄ろうと宗旨替えしたのかもしれない。
 もう一つ判ったのは、NATO 諸国の閣僚の中に、未だ今の戦争の意味が分かっていないのがいるということだ。意味が分かっていないどころではなく、余計なことを言って支援を遅らせる。特にイギリス、ドイツ、アメリカだ。具体的にはイギリス国防相のウオーレスという人物。「我々はアマゾンではない。ウクライナは支援に対し感謝の意を表したことがない」とウクライナに皮肉。これに対しゼレンスキイーは「イギリスの支援にはこれまで感謝している」と反論。謝意がどうとかより、ウオーレスという人物の、謝意を求めようとする人格の卑しさにあきれる。又、アメリカではある国防次官が支援物資の調達の邪魔をしているため、支援が遅れているとも云われる。ひょっとすると彼らは、実はロシアのスパイではあるまいか。ウクライナへの支援の遅れは、これら間抜けの閣僚達の所為といえるかもしてない。
(23/07/14)

 ロシアのゲラシモフがウクライナ方面軍総司令官を解任された、という噂。「プリゴジンの乱」以来3週間近く姿を表していないからである。元々参謀総長が現地軍の司令官を兼任すること自体異常なのである。只参謀総長も解任されたという情報もある。もしそうだとすると、何を意味するのか?只の人事異動か、ウクライナ戦線指導の不味さをプーチンに見切られたのか?それともプリゴジンの乱に伴う軍の粛清の始まりか?
 仮に軍を巻き込む反プーチン陰謀があったとしても、それが失敗すればプーチンの強権は更に強まるという見方がある。しかし独裁者の権力が強くなるということと、軍隊が強くなることは別問題だ。
 1944年10月、ドイツでヒトラー暗殺未遂事件があり、その後の調査から国防軍を中心とする大規模な反ナチクーデター計画が露見し、大規模粛清が行われた。その結果、大勢の将軍や将校が処刑されたり、逮捕投獄された。そして国防軍から反ナチ勢力は一掃され、軍の忠誠心は高まり戦闘力は強化されるはずだ。また、国防軍と親衛隊(W-SS)との力関係も逆転し、親衛隊軍団の中に国防軍部隊が所属するという事態まで発生した。だからといって、それでドイツ軍が強くなったという訳ではない。むしろ統帥の混乱が余計強まっただけだ。
 さて、プーチンは「プリゴジンの乱」が鎮まる「と、早速やったのが国家親衛隊の閲兵と演説。国家親衛隊は今度の騒ぎでよくやってくれた、素晴らしいと褒め称える。しかしこの組織が何か働きを見せたかと云うと、そんな情報は何処にもない。国家親衛隊は只動かなかっただけだ。つまり日和見を決め込んだのである。それは他の正規軍部隊も同じだ。彼らが日和見を決め込んだおかげで、プーチンは命拾いをした。
 さてゲラシモフに対するプーチンの評価はどうか?この騒ぎの中でゲラシモフが何処にいたか分かっていない。それがプーチンにとって気がかりな点だ。まだまだ分からないのが、「プリゴジンの乱」の行方。と思っていたらゲラシモフが突然現れた。これ本物でしょうか?そういえば、ベラルーシに行ったはずのプリゴジンも行方不明。時々姿を表すが、これも偽物かもしれない。それ以上に、プーチン自身、本物かどうか分からないのだ。
(23/07/10)

 ウクライナ軍の反転攻勢が、東部バフムト方面、南部ドネツク、ザポリージェ方面で進む中、暫く静かだった西部ヘルソン方面でも動きがった。それはヘルソン市坑外アントノフスキイ橋直下での、ウクライナ軍渡河作戦。これを次のとか作戦の前哨である橋頭堡確保のためとし、次に大規模攻勢を掛ける、というむきもあるが、筆者はそうは取らない。先ず参加人数が70人と少なく、こんな小兵力では橋頭堡の構築は出来ない。威力偵察に毛の生えたようなもので、ロシア軍の対応能力を試すのが目的だろう。
 大規模な渡河上陸作戦を行う上で不可欠なものは、制空権の確保である。前大戦でもアメリカは、太平洋でもヨーロッパ反攻作戦(ノルマデイー上陸作戦)でも、前線だけでなく胡適の後方基地まで徹底的に空爆を行い、制空権を確保した上で実施している。同じことは陸上での機甲戦でも云える。戦車の突撃うを中心とした機甲戦は、第二次大戦前半のドイツ電撃戦が有名だが、これが成功したのも制空権を確保していたからである。ポーランドでもフランスでもソ連でも、先ずドイツ空軍が敵の航空基地を叩き、敵の空軍力を奪ったのちに機甲部隊が突入するというパターンである。ところが大戦後半、米英の空爆でドイツ空軍力が低下すると、制空権は連合軍に奪われ、ドイツ機甲部隊はアフリカでもロシアでも敗北を続けざるを得なくなった。
 それは今のウクライナ戦線でも同じことが言える。ウクライナ反転攻勢に電撃的成果を期待していた西側メデイアや政治家は、ウクライナ軍の前進が遅いのに失望しているようだが、これはウクライナの空軍力が決定的にロシアに劣るため、制空権を握られているからである。
 ではなぜウクライナの空軍力が劣るのか、それはバイデンがウクライナの求めるF-16の供与をためらったためである。最近やっとF-16の供与を認めたが、それもやっと9月にはいってから訓練を始めるという。これでは遅すぎる。本格反転攻勢開始を7月と決めれば、遅くとも3月頃には訓練を開始し、6月には戦線に投入できる体制を整えておかなければならない。何につけても決定に躊躇し、タイミングを外す。そのくせ失言ばかり多い。これがバイデン政権の特徴だ。
(23/07/04)

 既に逮捕尋問を受けていると云われるプリゴジンの盟友ソロビキン。彼の行方も又不明だ。生きているか死んでいるかを明かさないということは、今も軍とFSBとの暗闘が続き、プーチンはその狭間に挟まって身動きできない状態か?
 「プリゴジンの乱」の原因についてよく言われるのが「ワグネルが強大になりすぎ、軍をはじめとするシロビキがワグネルに警戒心を抱きだした」、或いは「プリゴジンが自分の力を過信し、勝手な行動を取り出した」、「軍が強大になったワグネルを吸収しようとして、それにプリゴジンが反発した」といった、権力闘争史観で語られることが多い。無論そういう要素もあるが、忘れてはならない点もある。
 プリゴジンは元々軍人でも政治家でもない只の商売人だ。普通の商売人なら、儲けにもならない商売をダラダラ続けるより、そんなものにはサッサと見切りをつけ、次のビジネスに移ることを考える。
 そもそもウクライナ戦争が始まったのは、パトリシェフらFSBやショイグ・ゲラシモフら軍部が、ウクライナの戦闘能力やアメリカ、NATOの危機感を甘く見積もり、直ぐに戦争は終わるとプーチンに焚きつけたのが発端だ。プリゴジンもウクライナで新たなビジネスが展開出来ると思って投資した。これがバフムトへの攻撃だ。
 ところがウクライナの抵抗は強力で、おまけにショイグ、ゲラシモフら軍人トップがみんなウスノロ、ボンクラ、無能で、戦争は負けてばかり、一向にらちが明かない。これではビジネスが成り立たない。それがバフムトからの一方的撤退だ。おまけにショイグらは民間軍事会社を軍の支配下に置こうとした。これは利権の横取りだ。縄張り荒しは業界のご法度、許せない。当たり前といえば当たり前。
 事件後の捜査でワグネルの書類から、軍幹部30人がワグネルのVIPとして登録されていたという情報が出たが、これはパトリシェフやショイグ達シロビキがワグネルを潰すためにリークした情報。しかしワグネルの最大の得意先は軍なのだから、その幹部を7VIP 扱いするのは当然。ミコヤンやスホイ、ツポレフなど産軍複合体だってみんなやっている。欧米の投資銀行では大口預金者や投資家をVIP とする。それと同じだ。日本でいえば、談合メンバーリストのようなものだ。VIP登録されたからといって、みんなが反乱同調者という訳ではない。
 つまり「プリゴジンの乱」の種はパトリシェフやショイグ、ゲラシモフら自らが撒いたものだ。さてプーチンは彼らにどう処遇しようとしているのか?其の仕方によっては、軍や国民に強い反発を抱かせかねない。今のところプーチンの発言がイマイチ歯切れが悪いのは、結論が下せず、多分その頃合いを測っているのだろう。
(23/07/02)

 そうこうしているうちに、プーチンはいきなりロシア南部に現れ、民衆と握手をしたり抱き合ったりと、大衆サービスにこれ務める。ここに現れたプーチンが本物だとは誰も思わないだろう。集まった民衆も、本当にダゲスタンの住民かどうか分からない。仮にそうだとしても、州の上部からの動員があったに決まっている。何から何まで謎に包まれた国がロシアなのだ。
 そもそもプーチンはコロナと暗殺を何よりも恐れる。そんな人物が警戒も十分ではないなか、民衆の中に入っていくわけはない。ロシア人は何よりも強い指導者を望む。従って目的は、プリゴジンより俺のほうが強い、ということを民衆に見せつけることだ。この光景をテレビで全国にばらまけば、政権支持率は上がり、大統領選に有利に働く。さてこの先、そう都合の良い思惑通りに行くでしょうか?
 プーチンはこの後、ワグネル資金について、これまで国庫からワグネルに対し1000数100億ルーブルの資金が注ぎ込まれてきた、この資金がまともに使われているかどうかを調べると発表した。つまりプリゴジンが国によるワグネル援助金をネコババしている可能性を匂わせ、如何にも奴が悪党だ、と印象付ける意図が伺える。
 ワグネルの親会社のコンコルドの系列に、主に軍に被服・食糧など後方物品を供給する会社がある。これを通じた取引の一部がワグネル、ひいてはプリゴジンの利権になったと云われる。これも量が多いと相当になるが、それ以上の利権が、銃砲弾薬やミサイル・航空機・戦車・装甲車等の正面装備。これらのメーカーと軍が結びついて産軍複合体を作る。この中にはミコヤン社やスホイ社、カラシニコフ社などミリオタにはおなじみのメンバーがいる。ツポレフなどはこの戦争で大儲けだ。この複合体利権を取り仕切っているのが、ショイグ、ゲラシモフらシロビキに属する軍幹部達。そしてその先にいるのが、プーチン一族。プーチンの家族は今スイスで優雅な生活を楽しんでいる。ショイグの娘もそうだ。ン10兆円ともン100兆円とも云われるプーチンの個人資産の形成過程こそが明らかにされるべきだ。プリゴジンがネズミとすれば、プーチンはテイラノザウルスだ。始めから勝負にならない。しかし小惑星衝突で、テイラノザウルスはあっという間に絶滅したが、ネズミは生き残った。巨悪より小悪のほうが息は長いのである。
(23/07/01)

 「久遠にとどろく、ヴォルガの流れ・・・今も聞こえるステンカラージンの唄」。日本じゃ小学校で習う、ご存じロシア歌謡「ステンカラージン」。ステンカラージンとは17世紀後期に現れたヴォルガコザックのアタマン。1660年代末から1670年代始めにかけて、南ロシアヴォルガ河流域で大規模な農民反乱をおこしたが、最後は帝国軍に捉えられ、モスクワ中心広場で車裂きという、キリスト教文明国とは考えられない古代中世的方法で処刑された。
 コザックといえば、なんとなく騎馬遊牧民族のイメージがあるが、それは彼らが後に帝国の傭兵となり、騎兵に転化したからで、元々の生業は漁業、つまり漁師である。漁師といっても海ではなく、河を漁場とする内水面漁業。だからロシアやウクライナの大きな川の中下流域に集団を作って住む。ドンコザックとかヴォルガコザックというように、彼らの集団名が河の名前に由来するのはその所為である。
 ヴォルガ河はバルト海とカスピ海を繋ぐ重要な交易路。ロシア・ペルシア、トルコ等の各国交易船が行き交う。漁師と海賊が紙一重なのは何処の国でも同じ。ヴォルガコザックは交易船目当ての海賊をやるようになった。そのボスがステンカラージンというわけ。
 ヴォルガ河は儲かるというので、あちこちからコザック達がやってきて、大勢力になった。襲撃の相手がペルシアやトルコ船の内はロシア帝国も見逃していたが、コサック側は集団が大きくなると、それだけでは食っていけない。そこでロシア船や貴族領も襲うようになった。そうなれば帝国も黙っていられないからコサック退治に乗り出す。帝国は組織を持った軍隊。ラージン側は戦略も何もない寄せ集め集団。そのうち仲間割れが始まり、反乱軍はバラバラ。ラージンらは捉えられ、哀れモスクワで処刑された。そして伝説となった。失敗の原因は前衛と呼ばれる革命的知識階層・・・つまり共産党・・・の指導がなかったからだ、などといわれるが、後世でこれは取ってつけたマルクス主義的解釈。計画が粗雑で乱暴だったからこそ、民衆の心に響き、今も伝説として残っているのだ。
 「プリゴジンの乱」も、計画の粗雑さ乱暴さではステンカラージンに負けない。逆にそれだから民衆の心に響く・・・ある報道では、今もプリゴジンの行動を支持するロシア国民が30%程度はいる。プーチン・・・そして習近平も金正恩も・・・が最も恐れるのが、プリゴジンがステンカラージンになってしまうことだ。
(23/06/30
)

 世間が「プリゴジンの乱」で大騒ぎしている間に、ウクライナ東部戦線では動きがあった。ドネツク州ではウクライナ部隊がクラスノホリスカまで進出したという報道。ここから州都ドネツクまでは直ぐだ。果たしてドネツク攻略に向かうのか?それとも方向を転換してマリウポリ目指して南下するのか?
 又、バフムト方面でもウクライナ軍の進出が伝えられている。バフムトを逆包囲するのか、それともルハンスクに向かうのか?ワグネル抜きのロシア軍の実力が試される時だ。更に南部ヘルソン州では、昨年破壊されたアントノフスキー橋の周辺でウクライナ兵の動きがあり、、対岸に陣地を構築したと伝えられる。この方面では、ノヴォカホフカダム破壊により、ロシア軍防御陣地が流出し、丸裸状態になっている。これを利用してヘルソン州ドニプロ河左岸に圧力を加えることができる。
 現在ロシア軍はザポロージェ州メリトポリ防衛に主力を集中している。ヘルソン或いはドネツク方面の防衛に兵力を割けば、メリトポリ方面の防衛が手薄になり、ウクライナ軍に中央突破の機会を与えることになる。逆にメリトポリ防衛に拘ると、東西から背後を包囲される恐れがある。
 これを打開する方法が、ベラルーシからのキーウ攻撃である。多分ワグネル投降兵のベラルーシ移送が始まっているだろう。昨日プーチンは軍幹部や国家親衛隊兵士を前に約5分の短い演説を行った。例によって修辞句を沢山並べ立てた金魚・・・見てくれは華やかだが中身のない・・・演説だったが、ワタクシが着目したのは次の二点。
1、この反乱は私の直接の指示で終了された
2、投降したワグネル兵には次の選択肢が与えられる。1)国軍、治安部隊との契約。2)家庭への帰還、3)ベラルーシへの移動。約束は私が保障する。
 1、について;7プーチンは何故わざわざ直接の指示にという言葉に拘ったのか?まともな政府ならボスが直接指示しなくても、自動的に防衛システムが働くはずだ。プーチンが直接指示したということは、そうしなければならなかったほど、政府が混乱していたということだ。政府高官の一部は専用機でモスクワを脱出する準備をしていたという噂さえある。最早政府の態をなしていない状態だったのだろう。
 もう一つは、プーチンと他の幹部との力の差を際立させ、独裁制を強化する狙い。自分の指示で反乱を終わらせた、お前たちは何も出来ていない。従ってその手柄は自分一人のもの、お前たちには口出しさせないというマウント行為である。
 2、について;一見優しい表現だが、これが本当に実行される保障はない。特に注目されるのが3)ベラルーシへの移動である。仮に海外への移住の自由を保障するなら、何もベラルーシに限定する必要はない。演説では任意だが、実際は強制だろう。その本意は、プーチンはワグネルを信用していない。彼らをロシア国内に留めておけば、何時また反乱を起こすかもしれない。この際、まとめて海外に閉じ込めておく、それにはベラルーシが一番便利だ。
 もう一つが、キーウ再侵攻作戦の尖兵に使う。当然ウクライナ側の猛抵抗に合うだろうが、ワグネルに幾ら犠牲が出ても腹は痛まない。これでワグネルが消えてくれれば勿怪の幸いだ。というわけで、今のところプーチンの独り勝ちだが、その勝利は際どいもので、プリゴジンにもう少し粘りと根性があれば、どうなっていたのか分からない。それがすこし脅されると直ぐにヘナヘナになってしまう。つまり、今のロシアで権力を握っているのは、このレベルの人間達だということが露見したのが、この三日間だった。なおプリゴジンはそのままモスクワに突進し、プーチンを追放すれば国家を揺るがした英雄として歴史に名を刻めたかもしれない。それがプーチンの脅しに屈してヘナヘナになったので、只のお騒がせ屋、歴史の屑になってしまった。
(23/06/28)

プリゴジンが行動を起こして20時間以上経って行われた、プーチンのテレビ演説。ここで彼は名指しこそしなかったがプリゴジンとワグネルを裏切者、犯罪者と断罪した。さて、この時のプーチンは本物でしょうか?以前からプーチン影武者説はあり、最近のTBS(「報道1930」)調査では、少なくとも2人いることが確認されている。そういう目で見ると、この時テレビに現れたプーチンも、甚だ怪しい。この時のプーチンの顔は頬がやや細い。本物は永年の薬物の所為かむくんでもっと丸顔だ。本物は何処に居たのか?大方クレムリンの地下シェルターで震えていたのだろう。
 それより今の興味の的は、行方不明になったプリゴジンの行方だ。生きているのか死んでいるのか?後者ならFSBによる暗殺だが、自殺か何とか言って公表するだろう。それが無いということは未だ生きているということだ。プリゴジンはいきなりロストフナドヌーに現れ、そこから消えた。この町はドン河河口に近く、船で直ぐにアゾフ海に出られる。いざとなれば、アゾフ海から黒海に抜け、地中海に出れば、そこからシリア、アフリカは直ぐだ。特にアフリカでは、スーダン、マリ、南アフリカはいわばワグネルの縄張り。プリゴジンの手下は幾らでもいる。そしてワグネルはこの地域の石油、金等の地下資源利権を握っている。これを梃に、更に新ワグネルを作り、ショイグ、ゲラシモフに脅しをかけることもできる。私ならそうする。なんとなく始めからこの逃亡劇を予測していたようだ。
 ワグネルはこれまでプーチン政権の汚れ仕事をやってきた。ワグネルがなくなれば、汚れ仕事もなくなる、などとタワケタことを云う評論家がいる。汚れ仕事屋は汚れがあるから成り立つ。ロシアにおける汚れの素は何か、というとクレムリンの腐敗である。クレムリンを腐敗させているのは、プリゴジンに云わせれば、ショイグ、ゲラシモフのような腐敗無能軍人である。プーチンはそれに担がれているだけだ、となる。しかし筆者の見方は少し違っている。クレムリン腐敗のど真ん中にいるのが、プーチンその人なのだ。クレムリンの腐敗はワグネルがなくなれば、或いはプーチンがいなくなればなくなるか?答えはニエット。ロシア人がロシア人である限り、腐敗はなくならない。
 では外国の様子はどうだろうか?ロシアの南に隣接する中央アジアの旧ソ連圏諸国。これら諸国はこれまでもロシア離れが見られたが、今回の騒ぎで益々距離をおくようになるだろう。特に地域最大のカザフスタンは、プーチンが仲介を要請したとき大統領のトカエフは「これはロシアの国内問題だ」といってけんもほろろ。確実にロシアの威信は低下している。
 中国・北朝鮮は表向きプーチン政権支持を打ち出したが、腹の中は分からない。 習は個人的にはプーチンを支持したいだろうが、軍や国務院がどう考えるかは別だ。この騒ぎが自国に飛び火されては困るからだ。北朝鮮は、飢饉とそれに軍事偵察衛星打ち上げ失敗が重なって、金政権にとって危機状態。アメリカには金正男の息子が自由朝鮮なる組織を率いている。これがプリゴジン化するのが最も怖い。
 なお「日本維新の会」の鈴木宗男は、早速「たった一日で反乱を抑え込んだ。プーチン政権は強力だ、政権は盤石だ」と相変わらずプーチンヨイショ発言をするが、そもそもこんな反乱を起こさせたことこそが政権基盤がぐらついている証拠なのである。その原因を作ったのは、プーチンとその側近達の権力集中と腐敗である。こんな腐敗政権と関係を持ちたがる元収賄受刑者鈴木宗男と「日本維新の会」こそが、日本次世代腐敗政党になるだろう。「類は類を呼ぶ」だ。
(23/06/27)

 ルカシェンコの仲介がなく、プリゴジンにもうちょっと根性があってモスクワまでの進軍を続けたらどうなったか? モスクワにいるのは警察部隊と若干の予備部隊だけ。実戦になれば歴戦のワグネルの敵ではない。モスクワに侵攻し制圧することも不可能ではなかったはずだ。その時点でプーチンと直接交渉し、ショイグ・ゲラシモフら軍幹部の追放を要求することもできた。私だったら、この2人のような無能、ボンクラなどとっくに解任し、軍法会議にかけて、シベリア送りだ。何故そうしなかったのか?やっぱりヤラセか、という疑念が残る「プリゴジンの乱」。
 大体、革命というものは二度起こる。最初は大したことはなく、直ぐに収束する。しかしそれでいい気になって対策を怠っていると、大きな揺り戻しがあり、旧政権の崩壊どころか国家の崩壊に繋がることがある。例えばロシアでは1917年2月革命がおこり、帝政は崩壊した。しかしその後のケレンスキー政権は対独戦を継続したため、ウクライナ、バルト地方をドイツ軍に占領されてしまった。その結果、10月ボリシェビキが蜂起し、内戦となった。日本では、昭和7年5.15事件の処分を、世論・マスコミの圧力で穏便に済ませたため、11年2.26事件となり、その結果軍部が力を持ちすぎ、20年の敗戦に繋がった。というわけで、今回の「プリゴジンの乱」で全てが終わるわけではない。むしろプーチン政権「終わりの始まり」となるかもしれない。
 それをうかがわせる要素が未だある。それはプーチンと手打ちしたはずのブリゴジンが、行方不明になっていることだ。彼自身海千山千の元アウトロー。プーチンの約束をそのまま信用するほどの馬鹿ではあるまい。ルカシェンコは亡命受け入れを表明したが、ベラルーシへ行く途中、行ってからどうなるかわからない。私なら亡命先にウクライナを選ぶ。ウクライナなら刑務所に入れても殺しはしない。ゼレンスキーと交渉して亡命ロシア人部隊を指揮して、プーチンに一泡吹かせることもできる。また、プリゴジン生存となれば、元ワグネル戦闘員も集まってくる。敵の敵は味方だ。プーチンにとっては悪夢だろうが。
 なおプリゴジンの命を狙っているのはプーチンだけではない。むしろショイグ、ゲラシモフら国防軍、パトリシェフ、ボドルニコフらFSB幹部のほうが、より反ワグネル感情が強い。それはプリゴジンが本当のことを云ったからだ。つまり今のウクライナ戦争をプーチンに唆したのが彼ら自身だからだ。彼らはウクライナ軍の実力、アメリカやNATOの危機意識を甘く見積もり、短期間でウクライナ全土を制圧できると吹き込んだ。一年以上たって、結果は今のざまだ。
(23/06/26)

 あっけなくたった一日で終わったプリゴジンの乱。もうちょっと根性があるかと思ったが、大したことはなかった。しかしこれは表向きのことで、裏でどういう取引が行われていたのか分からない。ここでも置いてけぼりにされるのは、一般のロシア国民である。
 さて今のところの結末は
1、プリゴジンは投降し、ベラルーシへの出国が認められる。
2、ワグネル戦闘員は軍と契約する。
3、プリゴジンへの刑事訴追は停止される。投降した戦闘員の罪は問わない。
 である。果たしてこれはプーチンにとって勝利といえるのか?
1、プラス点
1)プーチンはこの騒ぎに断固たる姿勢を見せて、事態をほぼ無血で収束させた。
2)プリゴジンを国外に追い出すことによって、大統領選のライバルを一人消すことができた。
3)ワグネル戦闘員を国防軍に吸収することによって、国防軍は焼け太り。ショイグ、ゲラシモフらの支持と忠誠を取り付けることができた。
 これらの点から外目にはプーチンは、危機に当たって動じない優れた指導者だ、という評判が生まれる。そしてそれは大統領にふさわしい、という評価に繋がる。これは来年の大統領選に追い風だ、プリゴジンよ有難う。やっぱりヤラセか。
2、マイナス点
 そんなに上手い話で済めば、誰も苦労しない。プーチンのいわば妥協的ともいえる解決策は、FSBやパトリシェフ、メドベージェフ等の強硬派に不満を残す。海外的にもロシアはこれで大丈夫かという疑念を、イラン、シリア等ロシア支持派諸国や中国・インド等の西側と両天秤掛けている国に抱かせる。更に旧ソ連圏中央アジア諸国のロシア離れを加速するだろう。
 そもそも戦争という緊急事態下で、こんな騒ぎを起こすのは、国家の統制・秩序が取れていないからだ。全く国家の態をなしていない。沢山の権力亡者グループがあって、それぞれがボスの関心を買おうと足の引っ張り合いをやっている。だから何時まで経っても、戦争を終わらせられないのだ。それはトップであるプーチンの指導力が衰え、権力亡者共の独走を制御出来ないからだ。まるっきり動物園の猿山だ。
 この騒ぎを起こした張本人は誰か?それはショイグや、ゲラシモフのような無能軍人、そしてその背後にいるシロビキと呼ばれる利権エリートと産軍複合体、そして何よりもプーチンを頂点とするかれら権力機構の腐敗ではないか?プーチンはその口車に載ってしまった責任はある。
 プリゴジンがSNSで発信した、「この戦争の前にはNATOやウクライナからの侵攻などなかった。戦争を始めたのは、ショイグやエリートの私腹を肥やすため、ショイグが元帥になりたかったからだ」、「この戦争は嘘の戦争だ」という言葉は、結構説得力を持ち、既に全世界に拡散している。ロシア人はみんな内心そう思っているのだ。だからロストフナドヌーでもボロジノでも、ワグネルが進駐しても何も混乱は起こらず、むしろ市民はワグネルを歓迎している。ロシアの一般市民にとってワグネルは英雄なのだ。知らないのはプーチン只一人かもしれない。これが今後どのように戦局に影響するのかは、未だ分からない。
 ということで、このクーデター未遂事件は、本当のところどっちが勝ったのか分からないのだ。
 なお、プーチンは投降したワグネル戦闘員の罪は問わないといっているが、そんなことは信用できない。刑務所に放り込まれることはないだろうが、激戦区に貧弱な装備で送り込まれ、給料は結局支払われず、地獄の苦しみを経験することになるだろう。
(23/06/25)

 何処まで信用していいのか分からないのが最近のロシア/ウクライナ情勢。本日ネットを見てみるといきなり飛び込んできたのが、ワグネルのプリゴジンがロシア軍に対し、公然と反旗を翻したというニュースで溢れかえっている。更にプリゴジンはワグネルを率いてロストフに入り、SNSを使ってロシア国民に武装蜂起を煽る投稿をしている、という報道まである。
 プリゴジンとロシア軍部、特にショイグ、ゲラシモフとの不仲は、以前から伝えられていたが、ワグネルに向かってロシア軍に対し武器をもって戦えとまでは考え難かった。果たしてこれが本当か、それとも大統領選に向けての宣伝なのか?
 と思っていたら、ワグネル部隊がロストフ・ナ・ドヌー政府庁舎を占領したという報道や、ロシア政府がワグネルの武装蜂起を認める声明を出したりと、本物らしい。
 プリゴジンの反乱が本当なら、ロシア/ウクライナ情勢はロシアーウクライナーワグネルの三角関係になり、当に三國志の時代。当面はロシア軍vsワグネルの戦いがあり、次にその勝者とウクライナとの対決になる。
 プリゴジンは更に、今の戦争はウクライナやNATOには元々侵攻の意図はなく、ネオナチはでっち上げでショイグやゲラシモフが、偽の情報をプーチンに吹き込んで始めた偽物の戦争だ。その本意はショイグが元帥になるためだ、とまで云っている。これがSNSで国内に拡散すると、プーチン政権にとって大きな痛手。何故プリゴジンがこんな行動に出たのか?考えられるのは
1、ショイグ・ゲラシモフら、政権中枢にいるシロビキと云われるエリート達への、積もろ積もった反感・恨み。
2、ウクライナに買収された。*1
3、プーチンが今の戦争の責任をショイグらに転嫁するために、プリゴジンを焚きつけた。つまりプーチン、プリゴジンによるヤラセ。*2
 筆者個人としては2、が一番面白く、次が3。1、はテレビ評論家の云いそうなことだから面白くない。まだまだ続きます。

*1;この可能性は筆者はすでに本稿「孤独なロシアよ何処へ行く(23/06/03)」で指摘しています。06/01にはワグネルはバフムトから撤退し、プリゴジンはSNSでロシア軍批判演説を行っています。このときの背景が、下は黄色、上が青というウクライナ国旗に似た敷物。
 筆者はこの時、ウクライナはプリゴジンに、大きな騒ぎを起こしてくれれば、ロストフ州ぐらいはやるよ、てな提案を持ち掛けたのではないかと、思ったのだが、本当にロストフを奪うつもりらしい。ロストフ・ナド・ヌーを奪われれば、ロシアはアゾフ海、ひいては黒海の制海権を奪われ、クリミアは孤立することになる。更に南部ザポロージェ、ヘルソン両州も孤立する。両州守備のロシア軍への補給は途絶え壊滅するのみ。
*2;今のところプリゴジンが攻撃するのはショイグ、ゲラシモフら側近のみでプーチンへの攻撃はない。むしろプーチンは騙された側となっている。この点が、プーチン、プリゴジンによるヤラセではないかと疑われる所以である。但しこの先、攻撃の矛先がプーチンに向かえば、話は変わってくる。
(23/06/24)

 ウクライナ軍による本格反転攻勢が始まったようです。最初はモタモタしていたが、なんとなく波に乗れそうな気配だ。しかし油断は禁物。未だ不安定要はある。それは対空能力の不足である。その結果が前回に指摘したように、制空権を確保できていない。その典型がザポロージェ方面に進行したウクライナ軍がロシア軍の戦闘ヘリの攻撃にあって、レオポルト2戦車3両、ブラッドレー歩兵戦闘車17両その他を失う損害を出したことである。この戦闘でのウクライナ軍の過ちは、戦車を密集しすぎている、細い道路を一列縦隊で進軍していることなどである。これは昨年三月キーウ攻略に向かったが、ウクライナ軍の反撃にあって立往生したロシア軍と全く同じパターンである。
 戦車を先頭にした機甲戦は制空権が前提である。第二次大戦前半でドイツ軍は制空権を確保した上で、機甲電撃戦を行っている。しかし後半、連合軍に制空権を奪われると、ドイツ機甲軍団は、その実力を発揮出来ないまま殲滅されてしまった。今回の反攻作戦では、ウクライナ軍はそもそも航空戦力がないのだから、制空権を確保できることはない。従って反攻当初は制空権を必要としない戦法を中心に、制圧地域を広げるようにした王が良い。つまり筆者が言う「浸透作戦」を中心に、機甲戦が行える領域を広げ、ロシア軍の機甲部隊が終結したタイミングで機甲部隊を前進させる。そのとき、戦車部隊の周りにsテインガー対空ミサイルを装備した歩兵を協働させる。また、ロシア軍背防衛線背後のウクライナ人レジスタンスとの連携も重要である。これが上手くいけば、それこそロシア軍防衛線は「ドアの一蹴り」で崩壊する。
 総体的に言えば、反攻作戦開始は諸般の外交日程を考えれば、今しか無いかもしれないが、機甲部隊の投入はいささか時期尚早だった。むしろ歩兵による「浸透作戦」を先行させ、地元のレジスタンスと連携をとって、機甲部隊が実力を発揮出来る条件を整えた上で投入すれば、より少ない損害で大きな戦果を挙げられたと思われる。
(23/06/13)

 昨日夜8時頃(現地時間では朝の10時頃か)、ウクライナ南部ザボロージェ方面で、全面反攻と見られるウクライナ軍の大きな動きがあった(報道1930)。そして本日ロシア軍部はこの動きを認め撃退したと発表。
 本当に全面反攻とすれば、筆者が予想していたより随分早い。ロシア軍がいう通り、本当に直ぐに引き返したのなら、これは全面反攻ではなく、只の威力偵察の可能性もある。但し場所は以前から概ね予想されていたザボリージェ東部だから、メリトポリ奪還に向かうのだろう。「竜の歯」とか塹壕戦等は大して防御能力はないが、航空戦力に乏しいから、何時まで攻勢を維持できるかが問題だ。
(23/06/09)

今は何処のチャンネルでもノヴォカホフカダム決壊ニュースで溢れかえっている。そしていろんな専門家?が真らしい解説をやっている。彼らの解説は概ね次のような点が共通している。
1、決壊は爆破によるものだ。
2、決壊は堤体で生じた
3、事件はロシアによる疑いが強い。
 本当にそうでしょうか?
1、について;事故は爆破によるとしているが、今のところ爆破を証明する映像は確認されていない。轟音があったといわれるが、この辺りはウ/ロ両軍が砲撃の応酬をやっているから、それがダムの爆破の根拠にはならない。公開されている映像は破壊前後の様子だけである。つまり事故原因が爆破かどうかわからない。
2、について; ノヴォカホフカダムはロックフイルと鋼製ゲートからなる複合ダムである。ロックフイル部は堤対幅が100m以上に及ぶような巨大なもので、こんな巨大な土構造物を吹き飛ばすには莫大な爆薬が必要だ。こんな大工事を秘密裡に行うことはまず不可能である。
 実際の決壊は左岸ゲート部で生じている。ゲートは鋼製で、両脇はコンクリートのアバット。それぞれで剛性が異なるから、その接続部はダムの構造的弱点になりやすい。何らかの原因で応力が集中すれば、そこから破壊が発生する。
3、について;このダムを破壊しても、ロシアにとってメリットは何もない。ウクライナには若干有利に働く。
 つまり上記1から3の要因は全て思い込みに過ぎない。ところがここで思いがけない情報が出てきた。それはこの破堤を「単なる事故」とみなすものである。昨年秋のヘルソン奪回戦で、ウクライナ軍はこのダム橋をハイマースで砲撃し、橋桁にダメージを与えた。その衝撃は橋桁だけでなく、これを支える下部構造物にも及ぶ。その結果、ゲートとアバットの間、ゲート間に隙間が出来、構造的弱点ができる。その後冬になるとダム湖水位は下がるので問題は無かったが、春になって雪が解け、更に今年春は例年にない大雨で、6月に入ると水位が急上昇した。それによる水門への急激な水圧上昇が決壊の原因になったというものである。これは水工学的にも納得出来る。つまり、ダム決壊の直接犯人は、ロシアでもウクライナでもなく雨だったというわけだ。要するに、お互いもっと頭を冷やして考え直せということだ。
(23/06/08)

 一昨日ロシア国防省が「ウクライナが反転攻勢を始め、東部ドネツク州の5箇所で攻撃を始めたが全て撃退した。ウクライナ軍は戦車を含む100数10両の戦闘車両と250人の戦闘員を失った、と発表。更に今日にはウクライナ軍が再度襲来したが、ロシア軍はレオポルト2戦車を含む数10両の戦車を破壊し、1500人のウクライナ兵を殺害して撃退した」と発表した。
 さてこれ本当でしょうか?動画も公開されていますが、画質が悪く、これが本当にウクライナでの出来事なのかどうかわからない。何処か他で撮った写真を挙げているだけかもしれない。この発表に対しウクライナ側は論評せず、逆にバフムトで攻勢前進に出たと発表。又ワグネルのプリゴジンはSNSに「バフムトでロシア軍が逃げ出している」とウクライナ政府発表に合う投稿をしている。なんとなく、最近はロシア政府や軍より、プリゴジンのいうことのほうが本当らしく聞こえるから不思議だ。ロシア軍の発表は自分達の責任を糊塗するための大本営発表、或いはそろそろ始まるロシア大統領選挙戦に向けてのプロパガンダだろう。
 ウクライナ東部ドンパス地欧で、ロシア/ウクライナ両軍の小競り合いが発生しているのは事実らしいが、今度は南部ヘルソン州で、何者かがノヴォハホフカダムを爆破*した。ロシア、ウクライナ双方とも、これは相手の仕業だと非難しあうが本当のところは分からない。何故なら、このダムの破壊は長期的に見ればロシア/ウクライナ双方にとってメリットはない。
 先ずロシアについてだが、メリットとしては(1)下流のドニエプル河の川幅が広がる、(2)ダムを破壊することによって、ウクライナ軍のドニプロ渡河を遅延させることが出来る。しかしデメリットは、クリミア半島唯一の水源を失うことである。ノヴォカホフカダムの水は、クリミヤ水路を通じて半島に供給される。他にも小さなダムはあるが、水量の点で桁が違う。この水源を失えば、ロシアはクリミア防御どころではなくなる。幾らショイグやゲラシモフがアホでも、それ位は分かっているはずだ。
 一方ウクライナにとってメリットは何か。無論クリミアへの給水を遮断することで、クリミアを孤立させることができる。しかしそれだけなら、上流の取水設備を奪取すれば事足りるので、なにも堤体を爆破する必要はない。重要なことは水路を遮断することで、ダムを破壊することではない。堤体を破壊すればダムの再建が困難になる。これは戦後の復興事業にとって大きな障害になる。但しクリミア方面のロシア人やロシア軍を浮足立たせる効果はある。
 また、ドニプロ河渡河作戦の障害になると云われるが、狭いダム道路を大型車両が一列で渡れば敵に狙い撃ちされるだけ。無意味である。昨年三月、キーウウを目指したロシア軍が、狭い道路で立ち往生し、そこをウクライナ軍に狙い撃ちされた過ちを繰り返してはならない。大兵力の渡河作戦なら、上陸用舟艇を並べて強襲上陸にした方がマシである。近くのオデッサには造船所があるから、上陸用舟艇など幾らでも量産できる。つまりダム破壊はウクライナにとっても大してメリットはない。どちらかというとウクライナのほうにメリットが大きい感はする。 敢えて言うなら、ウクライナの反撃に脅えた在ヘルソンロシア軍や親ロシア派のヘルソン州知事とか、或いはヘルソンのウクライナレジスタンスが勝手にやったのかもしれない。
*ダムというから、堤体かと思ったが、爆破前後の空中写真を見ると、堤体ではなく、水門(ゲート)の様だ。これならプラスチック爆弾を張り付けるだけだから、素人でも爆破出来る。又将来の再建もそれほど難しくはない。構造物だから、結構カネにはなる。日本も立候補してみますか?
(23/06/07)

 6/01にはバフムトからワグネルは完全撤退したはずだ。その所為か、プリゴジンはロシア国内各地を廻って、プーチン批判演説を繰り返している。さてはやっぱり大統領選出馬の準備か。それともウクライナに買収されてしまっているのか?その線は、筆者は無いとは言えないと思う。例えば突然のバフムト撤退も奇妙だが、最近ネットで明らかになった、プリゴジンの演説風景。背景に見える床の敷物は黄色と青。ウクライナの国旗だ。
 それに比べ、このところプーチンはすっかり元気がない。ことの始まりは5/09未明のクレムリンドローン攻撃。その前後からロシア西部各地で破壊工作や、在外反プーチン武装勢力の越境攻撃が相次ぐ。それに対し殆ど有効な手を打てていない。こんなことでウクライナに勝てるか!というのがプリゴジンの言い分。
 なお最近解任された戦争批判派のロシア正教司教が、解任三日後に不審死を遂げた。まず暗殺だが、これはプーチンの指示というより、パトリシェフのような強硬派シロビキの仕業と見たほうが良い。何故なら彼らは戦争でしこたま儲けられるが、プーチンは持つものは十分手に入れたので、それほど戦争にはこだわらない。しかしシロビキ達はここで戦争を終わられると、それだけ失うものが大きいのだ。
 それに対し、ウクライナ側はゼレンスキイー以下幹部が、入れ替わり立ち代わり、対ロシア挑発言動を繰り返す。これはロシア側の不安感を煽りイラつかせる情報工作。既に反攻作戦は始まっていると考えるべきである。
 今は初期段階の情報戦、心理戦に留まっているが、この先戦線各地でウクライナ側の挑発的戦闘行為がはじまる。それは小兵力によるゲリラ的浸透作戦や、ロシアのより深部へのドローン攻撃やパルチザン兵力による攪乱工作。これでロシア指導部や国民に揺さぶりを掛ける。それが6月から1カ月程度続くのではないか。その間西側供与の戦車等兵備を整え、本格的作戦は7月以降となるだろう。
 こういうことをやられると、長期間防衛待機を続けているウクライナ占領ロシア軍、特に下級将校や兵士に疲労が貯まりそれは精神にも影響し、士気は衰える。それがピークに達したときが、ドアを蹴破るときである。それが7月初旬、というのが筆者の予測。
(23/06/03)

5.09対独戦勝記念日から噂されていたベラルーシのルカシェンコ重病説。一時持ち直したかのようだったが、昨日あたりからネット上で出てくるのが、ルカシェンコ重篤説。中にはプーチンによる毒殺説まで出てきた。ルカシェンコがプーチンと密室で会談していた直後に、病院に緊急搬送されたからだ。
 イワン雷帝以来、暗殺大国のロシアで、何時何処で誰が毒殺されても別に驚く必要はない。プーチンは当に現役JGB将校時代、そんな仕事をやってきたわけ・・・無論自分では手は出さない・・・で、やっぱりと思ってしまうのである。
 さてルカシェンコがどうなるかは未だ分からないが、仮にルカシェンコがいなくなればどうなるかを考えると、やっぱり毒殺説は可能性は低い。
(23/05/29)

 いつ始まるか、何時始まるかと世界中が注目していたウクライナ大反攻。先日ウクライナ国防次官が「大反攻は既に始まっている」と明言。では何時から始まったのか?そんな大きな動きはみられなかった、と不思議に思う人が多いだろう。しかし世の中、お祭りじゃあるまいし、これから大反攻を始めますなどと宣言する馬鹿はいない。軍事行動というものは、全て常に隠密裏に進めるものなのだ。
 筆者は、5月9日のクレムリン、ドローン攻撃がそのシグナルではないかと指摘している。事実この頃から、東部国境近くのロシア領内で反ロ、反プーチン武装勢力の動きが活発になっている。それだけではなく、南部ではヘルソン対岸にウクライナ軍が橋頭堡を確保したという報道もある。
 ところが大反攻という割には、大規模な地上戦は行われておらず、欧米が供与した戦車や戦闘車両も表には出ていない。これで大反攻といえるのか、と思う人が多いでしょう。
 しかしウクライナ軍が、筆者が推奨する「浸透戦法」を採っているとすると、不思議ではない。「浸透戦法」とは第一次大戦末期にドイツ軍が採用した戦法である。これは軽機関銃、大型手りゅう弾、火炎放射器を装備した少人数の戦闘部隊を、夜中のうちに、敵陣内に密かに侵入させ、夜明けと同時に蜂起して、敵の指揮所、通信線、補給所を破壊し、指揮系統を混乱させる。これと同時に後方から砲兵が敵陣背後に火砲を集中させる。同時に歩兵を突撃させて、敵の防御線を突破し、味方主力の突入を援護する。ざっとそういうものである。
 この戦法は20年後に毛沢東によって人民戦争理論に取り入れられ(機動戦論)、朝鮮戦争では林彪麾下の中国人民義勇軍が用いた。1973年ベトナム戦争テト攻勢もこの一例である。この戦法は数量において劣る小国が、大国相手に戦うのに有効である。ウクライナが浸透戦法を使っているかどうかは知らないが、似たような戦法を使っているのだろう。
 なおロシアはウクライナの反攻に備えて、全長1000㎞に及ぶ塹壕他の防御線を構築したが、これは殆ど役に立たないだろう。歴史的に見ても、長い防御線で領土を守り切れた例はない。5世紀半ば、ゲルマン人が突如ライン川を越えてローマ領ガリアに侵攻してきた。当時ローマは北は北海から、南はアルプスに至る長大な防御線を構築していたが、忽ち破られてしまった。中国の「万里の長城」も似たようなものだ。
 筆者が思うに、今のロシア軍で本当に頼りになる部隊がどれほどあるのか、プーチンのために命を投げ出す兵士がどれほどいるのか。5月中旬のバフムト戦線を見ても、ウクライナ軍の反撃に対し、中央のワグネル部隊は持ちこたえたが、両翼のロシア軍部隊は後退してしまい、数平方㎞の領土を奪還されてしまった。つまり幾ら数を揃えても、頼りにならないということだ。何処か弱いところに圧力を加えれば、たちまち兵士は逃げ出しかねない。そうなると軍隊は内部から崩壊してしまう。
 ワグネルのプリゴジンは「ウクライナ兵は強い。ウクライナが反攻に出るとロシア兵士は逃げ出し、政府に刃向かう。次に兵士の母親達が立ち上がる。そうなると革命だ。ロシアは滅亡する。ショイグやゲラシモフ、それとクレムリンの奥に座っているおじいちゃん(プーチンのこと)の所為だ」。今のロシアの最大の弱点は、ヘルソンやザポリージェではなく、モスクワ、中でもクレムリンのプーチンとその周辺だ。
 そして世界でこうなる事態を最も恐れているのは誰か?それは中国の習近平である。中国にとって、とりあえず誰も勝者になれず有耶無耶で終わってくれるのが、一番望ましいのだ。今回中国がロシアに提案した、占領地維持の停戦案こそ、中国の望みなのだ。中国は何時どんな場合でも、客観的で中立公平であったことはない。
(23/05/28)

 世界がG7で浮かれている間に、ワグネルとロシア国防省がバフムトの完全制圧を発表した。但しよく見ると、制圧したのはバフムト市街地だけで、周辺地域にはウクライナ軍支配地帯がある。特に重要な点は、バフムト北西と南西部のロシア軍突出部を、ウクライナが回復したことである。
 ということは、ロシア軍のバフムト制圧は十分なものではなく、ウクライナ軍が市街地の南北から東に進撃し、バフムトを逆包囲することが出来る。ウクライナ側がそういう戦術を取るかどうかは分からないが、少なくとも不可能ではない。但しこれはやはり全面反攻との関連で考えるべきである。
 少なくともバフムト完全制圧というロシア国防省、ワグネルの発表は今のところ「大本営発表」レベルで、それほど重視する必要はない。
(23/05/24)

 ロシア国防省とワグネルのプリゴジンが、並んでバフムト制圧を宣言。これがG7、特にG7にサプライズ参加したゼレンスキーへの牽制、当てつけプロパガンダであることは顕か。
そもそもこれまで押されっぱなしのロシア側が、いきなりバフムトを制圧出来ることが不自然だし、プリゴジンは・・・用事が終わったから・・バフムトから撤収するといっている。これも不思議である。普通敵地を奪えば、そこから撤収するのではなく、前進するのが当たり前だ。そうしないのは実は逃げ出しているのではあるまいか?
(23/05/21)

 G7広島サミットで何が話し合われるのか?筆者が興味を持つのは、1)戦争後のウクライナ復興支援策と、2)ポストプーチン時代の対ロシア政策が話し合われるのかどうかである。この二つは互いに関連しあっている。
 1)どんな戦争も何時かは終わる。問題は終わった後の後始末である。ある情報によれば、既に昨年夏には欧米で復興策が検討されたという。これがある民放報道番組で紹介されると、司会者が「・・・エー日本は金がないというのに又金を出すんですか」とビックリ。これだから今のジャーナリストは駄目なのだ。
 災害にしろ戦争にしろ、社会が破壊されたとき、復興は必ず必要である。この時復興を負担と考えるのか、ビジネスと捉えるのかで違いが出てくる。日本人は復興を元に戻すことと考えるから負担と捉える。その結果やることがみみっちい。典型的なのは災害復旧予算だが、これを握っているのは国交省河川局。ここに巣くう木っ端役人の肝っ玉が小さいから、何時までも古臭い構造物が残ってしまい、それが合理的な国土開発や広域防災事業の邪魔をする。日本がウクライナ復興事業に参入しようと思えば、何よりも国交省河川屋発想を抜け出さなければならない。
 一方欧米その他はどう捉えているか。彼らはこれをビジネスと捉え、既に様々なプラン・アイデアを練っているだろう。中でも要注意は中国である。おそらく中国は復興事業には臆面もなく参加を要求してくるだろう。各国はこれに対する歯止めを用意しなくてはならない。例えば復興事業参加国からは、ロシア支援国、国連のロシア非難決議に反対もしくは棄権した国、開戦後もロシアと何らかの経済関係を維持した国は排除すべきである。
2)ポストプーチンのロシア対策。プーチンが失脚又は死亡で、いなくなったとき、確実にロシアは分裂を起こす。「分裂」には(1)権力の分裂と、(2)地域の分裂の2種類がある。90年のソ連崩壊時には、まず(1)が生じて政治的求心力が失われ(2)が続いた。今回もそうなるのか?なる可能性は非常に高いと考えられる。
(1)はとりあえずは現状の権力構造・・・旧FSB系+保守系政治家(パトリシェフ、メドベージェフら)、プーチン系オリガルヒ、プリゴジン・カデイロフら民間武装勢力・・・を反映したものになると思われるが、其のうち彼らは共食いをはじめる。その中から後継者が現れる可能性も無くはないが、ロシア国民はいくら何でもそんなことは許さないだろう。既存権力と無関係な、例えばナワリヌイのような民主化勢力が出てくる可能性もある。
 ここで重要な点は軍部の思惑である。ロシア)(旧ソ連)軍部は基本的に政治にはノータッチである。しかし必ず勝ち馬に乗る。誰か極めて有力な勢力が現れれば、それに乗っかり大勢を決めるかもしれない。
 このような混乱の中で、モスクワの求心力は急速に低下し、ロシア連邦を構成する共和国に独立の気運が高まる。これが(2)地域分裂の引き金となる。中でもロシアからの分離独立を求める動きは、チェチェンなどのカフカスイスラム共和国、ロシア南部、シベリア東部、そして極東州が考えられる。筆者が注目するのはモスクワ南部、ヴォルガ河とウラル河の合流点に位置するタタールスタン共和国である。これは中世はカザン王国と称し、ヴォルガ河の水運を約する重要拠点だった。そのため、ツアーリになったばっかりのイワン四世(雷帝)に目を付けられ、遂に征服された。その所為か、独立の機運は高い。
 極東州は日本にも隣接しており地政学上重要である。経済的に見れば、最早落日のロシア共和国と結ぶより、日本と結んだほうが得だ。何よりも極東は中国の脅威に直接さらされている。中国にペコペコへつらうしか能がないモスクワ政府など宛てにできない。更に民族的にはウクライナ系住民が多い。日本との関係強化はお互いにプラス面が多い。
 最終的にはロシアは、始めて「ロシア帝国」と名乗ったイワン雷帝の昔・・・モスクワ盆地を中心とし、東はウラル山脈、南はカザン、西はベラルーシ北はせいぜい、バルト三国国境までの地域に押し込まれ、他の地域は四分五裂するだろう。結果として起こるのは内戦だ。その中で、再び大ロシアの復活を夢見る、第二のプーチンが現れる可能性もないではない。
(23/05/17)

 今年4月末に、ワグネルのプリゴジンは「5月15日までにバフムトで大きな戦いが始まるだろう、それまでに弾薬供給が無ければ、我々は10日にバフムトから撤退する」と警告した。事態はどうもその通りに動いているようだ。しかしプーチンはプリゴジンの警告に耳を貸さず、事態を放置したままだった。筆者は5/09に合わせて何か始まると予想したが、それは全面反攻ではなく、飽くまでプーチンに対する揺さぶりである。ウクライナが行動を始めた理由は何か?元々計画はあったはずだ。そのタイミングを諮っていただけだ。
 きっかけは5/05のクレムリンドローン攻撃事件。この二日後の7日、クレムリンは国家安全保障会議を開いたが、その結論は明らかにされていない。明らかにしないというより、出来なかったのだろう。理由は一致した結論が出せなかったからだ。だから、9日の演説でも、プーチンはこの件について一言も触れなかった。唯一下院議長が「戦術核兵器を使え」と主張したらしいが、これは否決された。その腹いせに下院議長が外部にリークした。これは保守強硬派への個人的アピールでもある。
 こう考えれば、今のロシア指導部は軍だけでなく政治も含めて混乱していることが分かる。混乱するのは、最高指導者であるプーチンの指導力が衰えている証拠でもある。気候も良くなり、重車両の機動も可能になった。おまけに軍とワグネルが揉めている。もめ事の中心はバフムトである。ここを叩けばもめ事はさらに拡大する。今がチャンスだ、やってしまえ、ということか。ゼレンスキーは全面反攻は「未だその時期ではない」といっているが、当たり前で「何時から全面反攻を始めます」というようなアホは世の中にはいない。
 なお全面反攻というと、何か大部隊が戦車を先頭に押し寄せるというイメージを持つ人もいるだろうが、それは素人である。数100㎞に及ぶ長大な戦線に、そんなことはできない。こういう場合、古典的な戦法では何処か敵の弱点を見つけ、そこに火力を集中して突破孔を開き、機械化部隊を投入して戦果を拡大する、というものだ。しかし今のウクライナ軍にそんな実力はあるだろうか?戦車は欧米供与を含めても、せいぜい数100両。戦闘車両も1000両程度。むしろ戦線全体に広く薄く、軽武装の小部隊を浸透させ、ロシア軍の通信系や兵站基地を破壊した上で、火力を集中させ、機甲部隊と歩兵を突入させる「浸透戦法」の方が有効と考えられる。今はその準備段階ではないか。
 なお5.09の後、中国は5カ国に特使を派遣し、仲介の労を採るポーズを見せているが、そんなものお構いなしのウクライナの反撃。習近平のメンツ丸潰れだ。
(23/05/15)

 バフムトでウクライナ軍の本格反攻が開始されたみたいです。というのはバフムトは政治的価値は別として、軍事戦略上の価値はあまりない。本格反攻の正面は、あくまでメリトポリ、或いはマリウポリ方面。だから今回のバフムト反攻はその陽動作戦と見たほうが良い。ロシア軍の作戦を混乱させるため、今後各地で似たような反攻作戦が発生するでしょう。
 今回のバフムト反攻で明らかになったのは、ワグネルとロシア正規軍との軋轢、ロシア軍の作戦統帥の混乱です。例を挙げるときりがないが、5月5日にプリゴジンが、弾薬を送らないと10日に撤退する、とショイグを脅すと、直ぐに供給の約束があった。ところが三日もしない内に・・・つまり5.09祝賀パレードが終わると・・・たちまち約束は反故にされる。又、今年に入って、東部戦線はゲラシモフ直轄になったはずだが、三月攻勢が失敗に終わると、またまた新司令官が任命される。
 バフムトでロシア軍が撤退しているとロシア軍事ブロガーが書き立てると「あれは撤退ではなく、より有利な場所への移動だ」と下手ないいわけ。旧大戦でも、日本陸軍は「退却」を「転進」といったり、「全滅」を「玉砕」と言い換えた。似たようなものだ。
 このように事実を事実と認めず、言葉の言い換えで済まそうとするのは、組織崩壊の前ぶれ。そういえば、前のアベ政権も似たような言葉の誤魔化しが多かった。多すぎてみんな忘れてしまったが。
(23/05/13)

 バフムト方面でワグネル部隊が撤退を始め、ロシア正規軍も後退し、ウクライナ軍が前進を開始したという情報がある。はたしてこれがウクライナ春季反攻の前ぶれなのか、それともロシア側が勝手に分裂・崩壊を始めたのか?注視が必要。
(23/05/11)

 注目のロシア対独戦勝記念日でのプーチン演説。ズバリ言えば、誰彼構わぬ「感謝」という名の美辞麗句のバラマキと、戦争失敗の言い訳の羅列という中身のないスカスカ演説だった。
 筆者が注目したのは約1週間前に起こったクレムリンドローン攻撃について、一言も触れなかったこと。更に核による報復にも触れなかった。事件二日後の5/05には国家安全保障会議が開かれた。その詳細は明らかではないが、下院議長はウクライナに対する核報復を主張したといわれる。又民間ではチェチェンのカヴァロフとか、他の極右ブロガー等も核報復を主張している。彼らはプーチンにとって無視できない勢力である。
 それにも拘わらず核による報復の一言も触れなかった。ということは、プーチンの頭にはクレムリンドローン事件だけでなく、この戦争自体核による解決という選択肢は無いということだ。演説の中身といい、如何にもショボイ軍事パレードといい、今のプーチンはすっかり自信を亡くしているようだ。精神病理的には鬱状態にある。こういう場合、なにかきっかけがあると自殺衝動にかられることがある。今後のプーチンの行動・言動には精神病理学的観察が必要である。
 なお当日、ウラジオストックで行われた軍事パレードでは、モスクワでは1台しか登場しなかったT-34が6、7台登場している。極東のほうが旧式兵器のストックが多いということなのだろう。舐められた話だが、逆にいえば極東ロシア軍のレベルはその程度ともいえる。
(23/05/10)

 05/03クレムリンドローン攻撃以来、プーチンが姿を表さないことに一部のクレムリンウオッチャーが注目しています。5日に国家安全保障会議を開き、その時の映像が一部公開されていますが、これも本物かどうか分からない。少なくともプーチンは今はモスクワでなく、国内数か所あるといわれる秘密執務室の何処かに隠れていることは間違いない。
 そして9日の対独戦勝記念日に姿を表すかどうかも注目の的ですが、姿を表すでしょう。何故なら、もし姿を表せないような状態なら、戦勝記念日の無期延期等の異常な措置が採られるはずだが、その様子はない。式典は、少なくともモスクワでは平常通り行われ、プーチンはその時に現れる筈である。只、現れ方や、何を喋るかが重要なのである。
 それと、仮にプーチンが現れても、世間にはこれが本物かどうか、てな噂話が忽ち溢れかえるだろうし、当日にどんな騒ぎが起こるか、それも興味津々。
 なおプリゴジンが「もし弾薬を送ってこないなら、10日にバフムトから撤退する」とショイグを脅したら、忽ち弾薬を送ると約束。この指示変更は果たしてショイグから出たものか?プーチンかその側近から、ショイグの頭ごなしに出たものなら、約束はしたが実行はされないというロシア式有耶無耶主義で終わる可能性もある。
 当たり前だが、目前のウクライナ軍大反攻に際して、軍事戦略上重要でもないバフムトに、人員・弾薬を割く余裕はロシア軍にはない。もしバフムトに弾薬を送り、それが他戦線での弾薬不足を招いて弱点ができ、そこをウクライナ軍に突破されれば、その責任はだれが取るのか?
(23/05/08)

 ワグネルのプリゴジンが、弾薬の供給がなければ10日にもワグネルはバフムトから撤退すると、ショイグらを脅す。これ本当でしょうか?撤退するぞと云って、ウクライナ側を油断させ、逆襲に出てきたウクライナ軍を叩く偽旗作戦かもしれない。実際に撤退しない限り、信用できない。その証拠か、プリゴジンの脅しにも拘わらず、ショイグが視察に向かったのは、バフムトではなくザポロージェ州。ショイグらにとって、バフムトは軍事戦略上重要ではない、ワグネルが勝手にやっているだけだ。そんなものに貴重な弾薬を渡すわけにはいかない、てなところでプリゴジンの要求は無視。おそらくロシア軍中央は、ウクライナ軍の反攻は、ザポロージェーメリトポリと睨んでいる。その防衛のためには、バフムトなど無視しても構わないということなんだろう。

 今月三日深夜(モスクワ)でのドローン襲撃事件。ロシア政府はその時、プーチンは執務中でけがはなかったと説明。もしこれが本当なら、プーチンの生活サイクルは夜型になっているということだ。独裁者にはこのタイプが多い。スターリンは典型的夜型で、深夜に部下を呼びつけ指示を出す。ヒトラーも始めはそうでもなかったが、戦局が思わしくなくなった43年頃から昼夜逆転現象が酷くなった。
 このように独裁者の生活サイクルが逆転すると、被害を被るのは部下であり、国民全体だ。つまり独裁者は休憩のため、昼は眠るか少なくとも面会を拒否する。しかし前線での戦闘は、朝に始まり昼間にピークを向かえ、その間戦局が急転換することが多い。そこで部下が状況を報告し、指示を仰ごうにも、ボスは眠ってるか、目会謝絶。かくて作戦は後手に回り、ドイツ軍は東部でも西部でもまともな戦争ができなくなった。今のロシア軍の作戦の混乱ぶりを見ても、プーチンがヒトラーの末期のような精神状態になってしまって、軍がそれに振り回されている可能性が考えられる。
 また、生活サイクルの夜昼逆転減現象は統合失調症患者によく見られる。これが進行すると、精神が別人格に乗っ取られ、幻聴・幻覚が発生する。つまり聞こえないものが聞こえたり、ありもしないものがあると思ってしまう。更に進むと、別人格の指示により、自殺してしまう。今のプーチンの異常な用心深さは・・・例えばショイグ・ゲラシモフとの会議、マクロンとの会談に数mもの距離を明ける・・・その表れかもしれない。こういう人物が核のボタンを握っていると思うとゾッとする。
 このような人格障害が後天的に現れる主な原因は、極度のストレスである。もし責任ある立場の人間に、このような障害があらわれ、それが全体的な組織・・・例えば企業や国家・・・の運営にマイナスの影響を与えると判断されれば、その人間を配置転換などでストレスのない環境に移すか、最後は解雇・解任すべきである。さて、今のプーチンはどのレベルで、他のロシア人はプーチンをどう評価しているのか?
(23/05/06)

 突然のクレムリンドローン攻撃。以前からウクライナ国防次官は、「何かサプライズがある」と云っていたから、これがそれかと思ったが、どうもそうでもないみたいだ。ロシア当局は、これはプーチンの命を狙ったウクライナのテロと発表しているが、今のところこの事件の背景は闇の中。果たしてプーチンを狙ったテロでしょうか。果たして動画を見ても、ドローン撃墜時にもロシア防空システムの航跡は映っていない。
 プーチンは残酷で冷酷であることは間違いない。しかしこれはプーチン一人の特性ではない。彼はKGBのスパイ上がりの独裁者だ。残酷な独裁者ほど臆病で、用心深い。臆病さに付け込むなら、こういう個人テロを繰り返して心理的に追いつめ、破綻に導くのも一法である。しかしそれが行き過ぎると、逆襲に転じる。アメリカの銃乱射事件に見られる無差別殺人などが良い例だ。プーチンの場合、彼は核という最終兵器を持っているからうっかりしたことはできない。
 用心深さといえば、彼は居所をなかなか明かさない。一説によると、彼は国内に数か所の執務室を持ち、それが皆そっくりに内装されている。つまりモスクワで執務をしていると報道されても、実はソチの別荘かもしれないのだ。
 クレムリンは歴史ある公共財だから、これを破壊することはロシア国民のプライドを傷つけることになる。しかしソチのプーチン御殿は、彼が国家財産を着服して立てたものだ。そこで一案。彼を追いつめるには、モスクワよりソチにあると云われる、所謂プーチン御殿を狙ったほうが良い。この施設の存在はロシア国民には秘密とされる。そこを狙って襲撃し、リアルタイムで画像をSNSで流せば、ロシア国民に真実の一部を知らせることができる。それよりプーチンにとってクレムリンよりソチをやられるほうがダメージが大きい。何故なら、クレムリンは国家財産だから、幾らやられてもプーチンの懐は痛まないが、プーチン御殿は私物だから、修理費は自己負担になる。
(23/05/04)
 
 最近よくメデイアで報道されるのが、ロシア国内で頻発に発生する謎の火災・爆発事件。以前にもあったが、ロシア当局はこれをウクライナによるテロ行為と発表していた。中にはいかにもわざとらしいのもあるので、ロシアによる偽旗作戦ではないか、と疑う向きもある。
 しかしこれほど立て続けに発生するのは、ロシア当局によるヤラセと考えるのは難しい。何故なら一度や二度なら、国民の団結心を誘う効果もあるが、何度も起こると、逆に政府に対する信頼性が失われる。
 そう思えば、1944年第二次大戦、ノルマンデイー上陸作戦でも、数日前からレジスタンスの活動が活発化し、謎の爆発事件や列車妨害等が発生した。それと同じと考えれば、ウクライナによる全面反攻は間近と考えてよい。それが何時かだが、ワグネルのプリゴジンは5.15前と予言する。筆者はもっと早く5/09対独戦勝記念日に合わせるのではないかと思っている。プーチンに恥をかかせるには、これ程よいタイミングはない。
(23/05/03)

 刻々近づく(とされる、いや既に始まっているとされる)ウクライナ春季反攻。この帰結を固唾を呑んで見守っているのが、誰あろう中国の習近平。当たり前だがこの結果如何によっては、その結果は自分に跳ね返って来るからだ。もし、ロシア軍が防衛線を突破され、仮にウクライナ軍の一部がアゾフ海かロシア国境に達すれば、ロシア軍は総崩れとなり、プーチン政権崩壊の引き金になりかねない。そうなれば自分の政権基盤も揺るがされかねない。
 ウクライナ軍春季反攻の攻撃主軸はサボロージェーメリトポリ方面とする見方が最有力である。しかし最近。西部ヘルソン対岸にウクライナ軍が橋頭堡を確保したという報道がある。このため、攻撃主軸はヘルソン州西方ではないかという見方も出ている。果たしてどうでしょうか?ヘルソン正面の突破にはドニプロ川渡河という難しい課題がある。反攻の主力は西側供与の重戦車である。果たして今のウクライナにこのような重戦車を渡河させるだけの水上輸送能力があるのか?また、渡河作戦に必須なのは制空権の確保である。そのためウクライナはF-16の供与を要求しているが、バイデンはウンと云わない。又最近ウクライナ軍にアゾフ連隊という部隊が新設された。これは昨年のマリウポリ防衛戦で一旦壊滅した部隊である。これを再建したというのには何か意味があるのだろう。
 筆者の見方は、やはり攻撃主軸はメリトポリ正面。ヘルソンでの橋頭堡確保は、それを支援するための陽動作戦。更に北部ルハンスク州方面で更に攻勢をかけ、ロシア軍を東西に分断する。或いは、ワグネルとロシア軍との不和に付け込んで、バフムト方面で逆襲に出る手もある。
 いずれもメリトポリ正面攻撃のための、陽動作戦である。そして手薄になったザポロージェ方面を突破してメリトポリを奪取する。その先何処に行くかは、その時点での判断だが、アゾフ連隊を先鋒にしてマリウポリを奪取すれば、戦略的にも政治的にも効果は大きい。 
(23/04/29)

 「プーチンより愛をこめて」という、2000年プーチンがロシア大統領になった年の、プーチンの行動・言動を記録したドキュメンタリー映画が話題になっている。無論ロシアでは上映できないので、西側海外でのみだ。昨日某TV番組でその一部が公開された。それから得た感想を幾つか。
1、2000年と2022年とでは顔つきが全く異なっている。前者では頬はもっと痩せ、顔つきは彫りが深く、目つきも鋭い。しかし22年では、顔は丸く太り、むくんだ様子だ。この違いについて、筆者の家族は、この二人は別人で、本物のプーチンは既に死んで、今のは替え玉だ、と陰謀説。筆者の見解は、あの違いはやっぱり薬物・・・ステロイド系筋肉増強剤・・・の所為だ。
2、プーチンは元々民主派だった?映画のラスト近く・・・プーチン大統領1年目の終わり近く・・・自動車の中で、映画監督にプーチンが「私は民主主義を理解している・・・、人は誰でも交替する、それが民主主義だ」と呟くシーンがある。これを捉えて、番組のゲスト解説者達は、プーチンは元々民主主義を理解していた。それが変わったのは、①政権を取って一年で,
こうも簡単に権力が手に入れられることが分かった。②08年チェチェン紛争で西側が何もできないことが分かったこと、と2ケースを挙げている。
 この場合は、今のプーチンの強権政治は後天的なもの、或いは外部からの刺激によるものということになる。
 しかし筆者はそうはとらない。番組のまとめフリップでは無視されていたが、プーチンは大統領就任直後に重要な発言をしている。それは彼の恩師筋に当たる人が、大統領就任したてのプーチンに「国家を統治するということは、庭を管理するようなもので、綺麗な花を育てるには雑草を摘みとらなければならない」と云うと、プーチンは「その通り」と大きくうなづいた。これこそが元KGB将校ウラジーミル・プーチンの本質である。
 エリツインを実質追放した後、ロシアという庭で、ひと際輝くのは自分とその支持者だけ。その他の雑草、たとえば西欧かぶれの腐った民主主義者や自由主義者、金儲けしか目がないオリガルヒ達は当に雑草だ。しかし彼らは国内や欧米に支持者を持っている。急いではならない。時間をかけて雑草を摘んでゆけば良いのである。
 そしてその先に何が待っているか?そんなことは今考えても意味はない。今の問題を解決し、理屈は結果から作り出せばよい。これがKGBで教わったやり方だ。このやり方で今までは上手くいったが、今回・・・ウクライナ侵攻・・・はしくじった。誰かに責任を負わせなければならない。そうだそれは無知で従順なロシア国民だ。KGBはソ連崩壊まで、これでうまくやってこれた。今度もそれで行こう、てなところか。
(23/04/20) 

 もう四月も中旬。予期されたウクライナ軍反転攻勢は何時始まるのか?いやもう既に始まっているという説もある。ここにきて興味を引くのが、ワグネルのドン、プリゴジンの言動。やれウクライナに即時停戦を呼びかけたり、ウクライナ人捕虜100人を解放したり、一々プーチンの癇に障ることばかりだ。
 この背景に何があるのか?やはり世間に噂されるとおり、プリゴジンが来年大統領選に出馬するため、世間の注目を集め、プーチンを牽制しようという作戦か?もしそうだとすると、プーチンが黙って見逃しておくわけがない。日本のテロは、万延元年「桜田門外の変」から去年のアベ銃撃事件、一昨日の岸田襲撃事件を始め、人が見ている前で実行するケースが多いが、ロシアや中国では誰も見ていないところで実行される。プーチンはむしろそのプロともいえる。プリゴジンもあんまりやりすぎると、誰も知らないうちに突然行方不明なんてこともあり得る。無論、プーチンにも、その危険はつねにある。そう考えれば、日本の総理大臣などマシなほうだ。
 さて、ウクライナ戦争の今後の行方はどうなるでしょうか?5月反転攻勢はどうもなさそうで、夏にずれ込むんじゃないか、というのが大方の見方。今のところ、未だなんとも言えませんねえ。
(23/04/17)

 プーチン直々の厳命「三月攻勢」に失敗して、ロシア軍は東部軍を管轄するムラドフ将軍を解任。理由はドネツク州南部の攻勢で、ウグレダル地域の制圧に失敗し、莫大な損害を出したというもの。こんなことはこの地域だけでなく、他の地域でも起こっている。三月攻勢失敗と甚大な損害の責任は、ムラドフ一人が背負うべきものではないはずだ。その責任は、ショイグ、ゲラシモフという、プーチンにゴマをすることしか能がない、無能ボンクラ軍人にある。
 近現代史を見ても、こんな無能・ボンクラは見たことがない。おそらく今回のムラドフ解任も、責任が自分に及ぶ前に手を打ったのだろう。そういう責任逃れだけは、手早く上手い。一刻も早くこの2人を解任し、逮捕して軍法会議にかけなくては、ロシア軍の再建はおぼつかない。しかし真の責任者は、この2人の背後にいるプーチンその人なのである。何故プーチンは、このボンクラコンビを使い続けるのだろうか?
(23/04/07)

 なんとなくモヤモヤ感が漂うのが、去る4/2サンクトペテルブルグで起きた、親プーチンブロガー爆殺事件。ロシア政府は早速、犯人を拘束し、その素性も明らかにしています。しかし、なんとなく怪しい陰がちらつく。更に翌日には、自由ロシア軍という組織が犯行声明を出していますが、これもなんとなく怪しい。
 怪しいと思われる理由は、概ね次のとおりです。
1、事件から犯人拘束まで早すぎる。予め事件を予測していたのではないか、と思いたくなるスピードである。このスピードは、クリミヤ大橋破壊事件、ドウーギン娘爆殺事件と並ぶ。
2、犯人の女性は以前反戦運動に加わり、一時拘束されたこともある。そんな前科のある人間なら、必ず治安当局が監視しているはずだ。そんな人間が何故、親プーチン派ブロガーに近づけたのか?当局から彼女は安全だ、とでも云われていたのかもしれない。
3、自由ロシア軍という組織自体、実態が良くわからない。ロシア軍の第5列ではないか、という説があるくらいだ。その後「国民共和国軍」という組織が犯行声明を出したが、この組織もよく分からない。
 そこで早速出てくるのが、これはプーチン(又はFSB)によるヤラセではないか?。つまり陰謀説。では何故プーチンに、彼を暗殺する必要があったのか?考えられる要因は幾つかある。
1、三月中のドンパス地方完全制圧という方針が脆くも崩れたこと。これによってプーチンの求心力は急速に減退する。その結果、国民の戦意が低下し、今後の政局に影響を与えかねない。この際何かショックを与えて国民の気持ちを引き締める必要がある。
2、5月には対独戦勝記念式典、6月には第二次大戦戦勝式典と大型イベントが待ち構えている。それに合わせて何か大きなショックが必要だ。
3、殺されたブロガーは人気が高い。戦争がこのままダラダラ続けば、プリゴジンのように大統領選の目玉になりかねない。今のうち芽は摘んで置いたほうが良い。
 てなところだが、こんな説が出てくるということは、プーチンの評判がよっぽど悪い証拠。
(23/04/05)

 独裁者にとって最も重要な仕事は、部下の仕事に対する論功行賞である。これは公正で、誰でも理解納得できるものでなくてはならない。チンギスハーンはこれを厳格に行ったので、部将の信頼を集め、モンゴル高原を統一し、欧亜に跨る大帝国を作る礎を築いた。逆に日本の建武の中興では、恩賞が公家権門に偏り、武士に薄かったので武家の離反を招き、建武政権の崩壊を招いた。
 さてもう四月。プーチンが厳命した三月中のドンパス地方完全制圧は、バフムト周辺での限定的な占領地拡大に留まった。実質的には完敗である。この直接的責任は、プーチンにヘーコラするしか能のない、ショイグ・ゲラシモフというボンクラゴマすり将軍にあることは、明らかである。だったらプーチンはこの二人を軍法会議に懸けるなりして責任をとらすべきである。プーチンが尊敬するスターリンならそうした。
 しかもこの二人、今回だけでなく戦争が始まって以来失敗の連続である。それでもプーチンは解任せず、2人を重用し続けている。何故か?一つには、軍のトップを解任すれば軍に動揺が広がり、自分の地位も危うくなるというもの。或いはこの二人を解任すれば、プリゴジンなど外部勢力が強くなり、権力バランスが崩れるというもの。或いは他に禄なのがいなくて、この二人に頼らざるを得ないというもの。他に、この二人能力は別にして、プーチンに対する忠誠心だけは人一倍強く、安心できるというもの。
 様々あるが、ヨーロッパには「王様は将軍を嫉妬する」という諺がある。つまり将軍があまりに優秀だと、国民の人気が王様より将軍の方に傾き、自分の地位が危うくなる。だから王様は、常に自分より能力の低い者を将軍に据える、というものである。
 又「パーキンソンの第二法則」に「副社長の資格」というものがある。これによれば、副社長は常に間違った判断をする者が適任である。何故なら、社長は彼の意見の反対をやればよいからだ。ショイグもゲラシモフも、その能力がプーチンにとって、丁度良いレベルのものだから、替えないのだ。
 ということは、プーチンーショイグーゲラシモフトライアングルが続く限り、ロシアは同じ失敗を繰り返すことになる。ウクライナや西側にとっては、この三人がいてくれる方が戦争がやりやすい。何故なら、全部相手の手の内が読めるからである。
(23/04/01)

 プーチン政権を支える若手エリートテクノクラートの存在が、今注目されています。18年からプーチンはエリート官僚発掘キャンペーンを始めた。毎年20万人の応募者から100人が選ばれ、最終的にはプーチン自らが面接して10数人が残るという狭き門。いわばプーチンチルドレンだ。
 彼らは合格時点で、政府高官への道が約束され、更に大統領直結というポジションも得られる。採用時の平均年齢は30代前半だから、今でも40前。若手官僚としては自信満々、脂の乗り切った年代だ。又、彼らに共通するものは、高学歴海外留学経験者で、欧米有名大学で学位を取り、なかにはアメリカの大手投資銀行でキャリアを積んだものも多い。
 では彼らの実力はどの程度のものか?昨日TBS-BS「報道1930」でその一部が紹介された。番組で取り上げられたのが、ソローキンという資源・エネルギー担当大統領補佐官。彼が現在進行中のロシア財政悪化に対する対策として、番組では次の二つを紹介している。
 一つは、1)国営ガス・石油会社からの税収の根拠となる原油価格を、ロシア国内価格ではなく北海プレントに固定するというもの。もう一つが2)現在ロシア産天然ガス・原油の主な購入先は中国・インド・トルコだが、これをアフガニスタン、パキスタン、コンゴまで拡大する、というもの。
 1、現在ロシア産原油買取価格はバーレル60ドル以下に抑えられている。一方北海プレントやWTI価格は10ドルから20ドル高い。これを基準に売上高を産出すれば、実質60ドルより20~30%売り上げを上げられから、その分税収が増える。しかし企業側にとってみれば、その分税金を巻き上げられることになり、簡単に納得できるものではない。実質的な粉飾である。はっきり云って、メチャクチャ出鱈目経済である。
 粉飾された分は消費者価格に転嫁されるが、それはガソリンや電力料金アップに繋がる。当然国民の不満が高まるから、補助金を出して価格を抑え込む。ということは幾ら税収を上げても、それがぐるぐる廻るだけで、結果として国庫収入の改善には繋がらない。
2、ここで挙げられた国は、ずばりハイリスク国家で、まともな国なら投資対象に選ばない。つまり投資しても・・・原油やガスを売っても・・・投資がまともに回収される保証はない、ということだ。誰だって、タリバンに支配されている国と商売しようとは思わないでしょう。
 何故こんなハイリスクなことを考えついたのでしょうか?それは新自由主義という罠の所為です。新自由主義経済とは、所謂「ゼロサム理論」をベースにした経済理論。これは地球上のあらゆる資本の移動が、トータルではゼロになる、というもの。物理学の「エネルギー保存の法則」の経済版と思えばよい。この法則がなり立つにはその系に物理法則が成り立っていることが前提である。しかし宇宙を作る系の内、ある特定の系・・・例えばブラックホールの中の特異点・・・では物理法則が成り立たない。
 新自由主義経済が成り立つには、世界のあらゆる場所でヒト、モノ、金、資本の自由な移動が保証されなければならない。それがこれまでの経験から培われてきた国際的な条約であり、契約である。ところが、ウクライナ戦争が始まって以来、ロシアはこの条約や契約を一方的に破棄する政策を次々と行っている。例えばいきなり原油買取価格をルーブルで支払えといってみたり、ロシア国内で運行する航空機を全て押収してみたり、まずまともな国ならやらないことを平然とやってのける。これは他国からすれば、ロシアそのものがハイリスクだ、ということだ。
 1で述べた国営原油企業税収策では、北海プレント価格がウラル原油価格より高ければ、ロシア政府の税収は高水準が期待できる。しかし原油価格は暴騰もあれば暴落もある。08年のリーマンショックでは、夏にバーレル140ドルをつけていたWTI価格がドンドン下がって12月のは30ドル割れ。20ドル割れも目前と思っていたら、イスラエルが突然ガザに侵攻して、WTIも40ドルに戻した。アメリカ政府、イスラエル政府、石油メジャーが仕組んだヤラセは見え見え。このように原油価格は時の政治的思惑で幾らでも左右できる。そしてそれを握っているのは、主にアメリカだ。
 国際価格が暴落すれば、税収は途端に落ち込み、ロシア財政は悪化する。又、2でも販売する途上国に内紛や政権交代が起これば、投資が焦げ付くリスクが高まる。それでは企業は投資に二の足を踏む。それでは何にもならないので、国が保証をつける。保証といえば聞こえは良いが、実質は国家資本主義、統制経済のアバターに過ぎない。
 歴史の示すところでは、統制経済の行き着く先は財政破綻である。そしてその先に待っているのが戦争である。ロシアの場合、戦争が先に来てしまった。欧米資本主義に学んだ、プーチンを支えるロシア型新自由主義者の実力は、早くも行き詰まっているようだ。
(23/03//30)

 さて三月も終盤。今年始めプーチンは三月中のドンパス(ルハンスク、ドネツク州)地域の完全制圧を厳命したが、実態はその期待とは大違い。バフムト方面では多少の前進を見たが、莫大な損害を生じている。戦死傷者数は正規軍・ワグネル合わせて、おそらく数万に上るだろう。その他の戦線では、殆ど動きが見られない。つまりプーチンが思う三月中のドンパス制圧は、夢物語となる公算が大。
 何故プーチンは三月中というタイムリミットに拘ったのか?そして何故この作戦が失敗に終わったのか?プーチンの腹積もりとしては、五月「対独戦勝記念日」に合わせてなんらかの勝利を納め、その勢いで一気に大統領選へ、というシナリオだろう。それなら四月でも良さそうだが、あまり時間を置くとだれてしまうので、気を引き締めるため、わざと期限を短く区切ったとも考えられる。
 何故失敗したのか?幾つか原因考えられる。一つは作戦が単調で、砲撃と衆を頼んだ小グループの突撃の繰り返し。これをウクライナ側に見抜かれ、決定打を欠いた。又、ワグネルは砲弾などはロシア軍から供給を受けることになっているはずだが、プリゴジンとショイグら軍幹部との折り合いが悪く、十分な補給が受けられなかった。
 報道によれば、バフムト戦線では、このところロシア軍の攻勢が弱まっていると云われる。岸田が帰国すると、ゼレンスキーは突然、バフムト、ハルキウ、ヘルソンを歴訪。それはこれらの地域でのロシア軍攻勢が弱まっていると同時に、これらの地域で春季反攻を企図している予告か。
 岸田訪問に合わせたかのように、習近平がモスクワを訪問した。ここで何が話し合われたか詳細は分からないが、この会談がプーチンの要請によるものだから、三月攻勢の頓挫を切り開くため、中国に何らかの支援を要請したと考えるのが普通。しかし結果は思わしくなかった。会談後の声明でも、プーチンと習は別方向を向いていることが分かった.。プーチンはこの声明で、NATOを名指しで批判したが、習はそれは慎重に避けた。また、その後の外交でも、従来の戦狼路線は抑え、ソフト外交にシフトしだした。但し台湾問題は別である。
 ではどの方向を見ているのか?プーチンは目先の問題、つまり差し迫った大統領選への対策。一方習はポストプーチンの世界戦略だ。プーチンがいなくなったとき、ロシアをどうすべきか。まさかアメリカと分割てなことはないとは思うが、世の中何が起こるか分からない。
(23/03/25)

 さて注目の習近平モスクワ訪問。ここで何が話し合われるかは別にして、これまでのロシアの歴史を見ても、今ほどロシアの力と権威が低下した時期はなかった。普通のロシア人にとって、聖なるロシア、偉大なロシア人が東洋人の訪問にひざまづくなど、考えもしなかった。それが現実となっているのである。
 そもそもプーチンは今のウクライナ戦争を、飽くまで国内紛争であるとして、戦争とは言わず「特別軍事作戦」と呼んでいた。それなら他国の干渉はおろか、仲裁も受けずに自国で解決するのが筋である。ところが軍事作戦は、思いがけないウクライナの抵抗によって頓挫し、軍事的以外の何らかの解決を模索せざるを得なくなった。そこで頼りにしたのが中国である。
 ここで明らかになったのは、ロシアと中国との力関係の逆転である。ロシア革命以後、ソ連共産党は各国共産党の指導者として君臨した。それは中国共産党も例外ではない。かつてソ連は中国の先輩だったのである。その関係が怪しくなったのが、スターリンの死に伴うフルシチョフのスターリン批判である。これに最も反発したのが中国の毛沢東。これから約45年に及ぶ中ソ対立が始まる。
 プーチンはロシアは西側によって包囲されているというが、実際はどうか?ロシアの国境線は、北は北極海でアメリカ、カナダと西はヨーロッパ、南は中央アジアのザバイカル国家群。そして東が中国、日本だ。この中で最大の国境線が南のザバイカル国家群。これらの国家群は「一帯一路」政策で、実質中国経済圏に組みこまれてしまっている。ということは、ロシア周縁部の2/3程は中国経済圏であり、即ちロシアを包囲しているのは、最早中国ということだ。GDPで比較してもロシアは中国の1/5か、1/6に過ぎない。
 もしロシアが中国の支持・援助を得て、有利な形で停戦に持ち込めたとしても、その時にはロシアは中国に経済的に吞み込まれている。プーチンが思っているように、この戦争を長期戦に持ちこめば持ち込むほど、ロシアの政治・経済に於ける中国の比率は大きくなり、ロシアの持つ自由度は小さくなる。プーチンとその取り巻きのような既得権益層にとってはそれでも構わないだろうが、プリゴジンやカデイロフのような極右・民族主義者、地方に多い冒頭にあげた保守層にとって、そういう「状況が許されるだろうか? 権力者が最も7注意すべきは、彼らロシアナロードニキの深層心理に組みこまれているロシア選民思想である。過度の中国接近は、ロシア選民思想に火を点け、再び中ロ(ソ)対立を招くだろう。これはロシアの体制変換を迫りかねない。
(23/03/21)

 ガーシーに次いでプーチンも国際指名手配。大概の人は、ガーシーとプーチンを一緒にするのは可笑しいと思うだろう。しかし嘘か本当か分からないことを世間にまき散らし、世間に迷惑を懸けている点では同じだ。
 さてそのプーチンだが、彼の頭の中にあるのは来年の大統領選。これに勝利するためには、ウクライナで何らかの勝利を納めなくてはならない。それが三月中の東部4州、中でもルハンスク・ドネツク両州の完全制圧だ。そしてその要となっているのが、バフムト戦線。そしてバフムト攻略戦の中心になっているのがワグネル。
 今年5月には大統領選挙戦が始まる。国内与党始め保守派はプーチン支持。反プーチン派も立候補できるが、彼らはあれこれ理由をつけられて拘束され、事実上選挙活動は出来ない。
 しかし、保守派・右翼も必ずしも一致しているわけではない。極右の中には、プーチンのやり方に不満を持っている者もいる。その代表がワグネルのプリゴジンだ。ひょっとすると彼が立候補する可能性もある。
 このところのウクライナ戦線の状況を見ると、バフムトではロシア軍は前進を続けているが、他の戦線では殆ど動きは見られない。バフムト戦に於けるロシア軍の中心はワグネルだ。そしてこのところワグネル創始者プリゴジンのネットへの露出が目立っている。そしてプリゴジンがネットで繰り返すのが、ロシア正規軍への批判。それが更にエスカレーションして、クレムリン内部への批判にまで及んでいる。
 彼の言い分はこうだ。「我々はバフムトで莫大な犠牲を払って勝利した。何故こんなに大きな犠牲を払わねばならなかったのか?それはモスクワにいる保守派が、我々が必要とする武器弾薬を送らず、途中でネコババしていたからだ」てなことを云って、ガーシーのようにネットで暴露する。証拠はないが、プリゴジンの云うことは本当かもしれない、てな風評が口コミで広がる。かくてプリゴジンが選挙戦の台風の目になりかねない。
 今のクレムリンに巣食う権力者達、プーチン始めパトリシェフ、メドベージェフらが、麗しい友情で結ばれているなんて思っている者は、世の中に誰もいない。みんな物欲、権力欲で手を握っているだけだ。プーチンはその微妙なバランスに上に載っているだけ。何か揺らぎが発生すると忽ちこの権力バランスは崩壊する。その揺らぎの元を作るのがプリゴジンだ。ガーシーと立花がいがみ合うように、いずれプーチンとプリゴジンがいがみ合うようになるだろう。いや既に始まっていると見るべきかもしれない。
(23/03/19)

 退却か抗戦か、緊迫度が増すウクライナバフムト戦線。筆者はこのまま行けばロシア軍は自壊するのではないか、と思っている。その理由はワグネルと正規軍との不和もさることながら、ロシア軍側に武器枯渇現象が見えだしたことだ。昨年11月ロシア軍ウクライナ東部戦線の総司令官に、空軍出身のスロビキンが任命された。彼が採った戦法は、ミサイル・ドローンによる民間インフラ攻撃を、ウクライナ全土に渉って展開し、ウクライナ国民の継戦意欲を低下させ、ウクライナ政権転覆を狙うものだった。その間、発射されたミサイルは一回につき70から80発。これをほぼ10日置きに繰り返していた。
 ところで、昨年2月戦争が始まったころのロシア軍のミサイル保有数は薬2000発とされる。そして11月攻撃が始まったころには1/3程度に減っていたとされる。すると残量は700から800発だ。これを10日置きに70発も80発も打っておれば、10回つまり約3カ月ちょっとで終わってしまうことになる。
 さて最近の状況はどうか。先月からの春季攻勢で、ロシア軍は連日の空爆を繰り返している。しかしその内訳は空爆と多連装ロケット砲攻撃が大部分で、ミサイル攻撃は一家につき4、5発しかない。つまりミサイルは既に枯渇してしまい、それをを空爆とロケット砲で補っていいる勘定だ。昨年末には、英米のシンクタンクは、来年2月にはロシア運のミサイルは枯渇するだろうと予測していたが、それが的中したようだ。
 また、ミサイルの不足を空爆とロケット砲撃で補うとしても、意味は全くことなる。まず空爆だが、これは爆撃機が敵地深く侵入し、戦術・戦略目標に爆弾を投下するという戦法だが、ロシア軍は開戦以来殆どこれを行っていない。それはウクライナ空軍が未だ無傷だということと、キーウ他の重要拠点の対空防御システムが強固で、これをなかなか突破出来ないためだ。
 次に多連装ロケット砲だが、これの射程はせいぜい20~30㎞。これも最前線に配備出来ないから、射程は現在の最前線から10~20㎞。これでは劇的な効果は望めず、戦線は今のままの膠着状態が続くことになる。そのロケット砲弾も枯渇すればどうするか。後は肉弾しかない。馬鹿馬鹿しいと思うだろうが、プーチンの頭の中にはその選択肢もあるはずだ。最近ロシア国内で目立つのおはスターリンの再評価運動。今のボルゴグラードをスターリングラードに変えようなんて運動もある。プーチン自身スターリン再評価論を繰り返している。ということは、この運動の背後にプーチンの意図があるのは間違いない。そして戦法もスターリンに倣ったものになるだろう。つまり、退却は何があっても許されない。兵士はひたすら前に進むのみ。それが出来なくなった兵士は、只死ぬのみ。

(23/03/08)

 突如の中国訪問で注目を浴びたのが、ベラルーシのルカシェンコ。さて彼の狙いは何だったのか?それはともかく、ルカシェンコに最もよく似た人物と云えば、筆者は20世紀スペインの独裁者ドン・ファン・フランコを挙げる。ルカシェンコもフランコも反民主主義の独裁者として、左翼リベラル系のインテリにはすこぶる評判が悪い。しかし両方とも、超大国に挟まれた小国の指導者として、あの手この手で渡り合わなくてはならない点は共通している。
 フランコはスペインの名門貴族の生まれ。熱心なカトリックで元々政治性はない。たまたま1931年のスペイン総選挙で、左翼人民戦線が地すべり的勝利を収めたのが、彼の運命を決めるきっかけになった。この選挙の結果、スペインは共和制を宣言、国王は南米に亡命。更に急進的な社会主義化政策で、鉄道・炭鉱等主要産業の国有化が進んだため、富裕層や企業が海外に逃亡し、スペインは深刻な資金不足に陥った。当然インフレが発生する。これに対しスペイン政府は教会財産に課税しようとした。何時でもどこでもそうだが、坊主に税金を懸けた政府にろくなことはない。当然カトリック教会は、信者の農民に反政府運動をけしかける。
 当時フランコはモロッコに駐屯する植民地軍の司令官だった。祖国の混乱に手をこまねいているわけにもいかず、36年軍を率いて海を渡り政府軍と対立する。これがスペイン内戦である。この内戦で左翼政権を支持したのがソ連。方や反乱軍を支援したのがイタリア・ドイツファシスト政権。内戦は1939年、マドリードの陥落で終結。ドイツ・イタリアをバックにしたフランコ独裁政権が誕生した。
 さて39年第二次世界大戦が勃発。翌40年にはフランスが降伏し、ヨーロッパはドイツのものになるかと思われた。ここでイタリアのムッソリーニは「バスに乗り遅れるな」とドイツ側に立って、対英参戦。しかしフランコは動かなっか。何故か?フランコにとって、ヒトラーやムッソリーニなど下層民、一緒にしてくれるな、と云いたい。それ以上に重要なことはスペインの地政学的位置である。
 スペインはヨーロッパ大陸だけでなく地中海の西端にある。しかも南端のジブラルタルには英国海軍基地がある。もしスペインがドイツ側に立って参戦すれば、当然英軍がスペインを攻撃しスペインが戦場になる。当時のスペインの軍事力ではイギリス軍に対抗出来ない。ではドイツやイタリアの助けを求めればよいではないかと思うだろうが、当時のドイツは対ソ戦で手一杯でスペインどころではない。頼りにならないイタリアに助けを求めるなど、狂気の沙汰だ。
 実際43年以降アフリカで枢軸軍が劣勢になったとき、ヒトラーはフランコにジブラルタル攻撃を要求したが、フランコはそれにはドイツ軍10数個師団の支援が必要だ、といってしらばくれる。ただそれだけではヒトラーの報復を受ける恐れがあるので、義勇兵二個師団を東部戦線に送っただけで誤魔化してしまった。こうしておけば、ドイツが勝った場合には恩を着せて独立が維持できる。逆にイギリスが勝った場合は、対ソ派兵は本人達が勝手に行ったもので、スペイン政府は無関係と言い逃れできる。結局両強国を手玉に取って、独立を維持できた。
 ルカシェンコも似たようなもので、彼はプーチンが目論見通り勝てるとは、これっぽっちも思っていない。それどころか、戦争がどんな形で終わるにしろ、その時はロシアは中国に飲み込まれている。うっかりロシアばっかりに肩入れしていると、こっちまで飲み込まれてしまう。それではイカン。今のうちにナントカ独立を維持出来る方法を、と考えたのが中国接近。とりあえずは、ロシアと中国の間を蝙蝠のように飛び回るしかない。しかしプーチンがそれを何時までも黙って見逃すかどうか。
(23/03/04)


  ウクライナ戦争が始まって1年が経過しました。その前から注目されていたのがロシアの春季大攻勢。これはプーチンの「3月末までにドネツク・ルガンスク両州の完全確保を」という絶対命令に基づくものだから、誰も逆らうことができない。ではこれがいつ頃から始まったかと云うと、はっきりしない。ある人は先月10日ころには既に始まっているというし、NATOが正式に認めたのは20日すぎだ。しかしそのころには誰の目にもはっきりと、そのことは分かっていた。
 戦争が始まって以来、テレビには連日ウクライナ東部の戦況地図が報道されている。これを見ていると先月中旬から激戦マーク(局によって表示は異なる)がロシア制圧地西境界に沿って、北はクレミヤンナから南はドネツク正面まで、横方向には広がっているが、縦深方向には殆ど動いていないことが分かる。あのバフムト方面でもほとんど動いていない。つまり具体的な戦果が得られていない。
 大反攻が先月半ばに開始されたとしても、2週間経って殆ど戦果を得られていないということは、既に作戦が頓挫してしまったということだ。その理由はまず第一に作戦の失敗、次いで)兵員の未熟、それに加え補給不足が挙げられるが、筆者はそれに情報戦での敗北を付け加える。
 筆者はロシア大反攻作戦のベースに旧ソ連軍「作戦術」があるのではないか、と考えていた。それは長大な戦線に予備的な砲撃を加え、敵の防御力の弱点を見つけ、そこに重点的に砲撃を加え通信網、補給基地、sk指揮系統を破壊・麻痺させたうえで、突撃部隊を投入させる。この攻撃は休みなく敵に立ち直る余裕を与える暇もなく継続される。
 今年に入って連日行われたウクライナ全土へのミサイル・ドローン攻撃は当にその予備段階である。又東部戦線全面に広がった激戦マークは、作戦術の前半である敵の弱点の探索戦である。おそらく何処かで突破路は開けたはずだ。しかしそれが長続きしない。その理由は予備兵力の不足と補給の混乱である。つまり何処かでウクライナ軍の弱点を見つけてそこを一時的に突破しても、予備兵力が続かないから突破路を確保できないままウクライナ軍に突破路を封鎖されてしまう。この連続で、一向に戦線が動かないのである。
 ではなぜウクライナ軍がロシア軍に先回りできるのか?それが情報戦の結果である。アメリカは20個以上の偵察衛星をこの地域上空に飛ばしている。その他スペースXなどの民間衛星からも情報が得られる。これらの情報をある企業に集め、AIを使ってロシア軍の行動を予測し、それを米軍を通じてウクライナ軍に提供している。この結果、ロシア軍が何か行動を起こせば、直ちに偵察衛星に察知されウクライナ軍の先回りを許してしまう。そのため折角先人が作った作戦術も効果が発揮できない。
 ではどうすればよいか?いまのところロシア軍が使える有効な手段は核を除けば、殆ど残っていない。三月末までの2州確保に失敗すれば、プーチンは急激に求心力を薄なう。又ショイグ・ゲラシモフら軍部とメドベージェフ・パトリシェフら右派政治家やプリゴジンなど傭兵勢力との確執が極度に高まる。ここでプーチンが彼らの統制に失敗すれば、早ければ夏頃プーチン失脚もないではない。
(23/02/28)

 何が飛び出すかと興味津々だった昨日のプーチン年次教書演説。蓋を開けてみると、現状をなぞるだけで新味なし。意地悪く言えば、過去1年の戦略的失敗を隠すためだけの言い訳演説。但しその中で戦争の長期戦覚悟という面も見えている。要点は
1、これまでの戦況や戦果などについて具体的な説明がない。
2、開戦の責任は西側勢力中でもNATOにある。
3、西側の経済制裁は失敗した。
4、西側はロシアを戦場で打ち負かすことはできない。
 全体sとして愛国主義、民族主義と戦争遂行の国民の義務が強調された愛国演説と云えよう。1、2、はここ1年の戦争で、ロシアは当初の目的を達成できなかったことを認めたと同時にその言い訳。3、4、は長期戦の構えを見せたようにみえるが、実態は今後の展望は何もないことの裏返し。
 そもそも旧ソ連、ロシアは長期戦に弱い。その典型が79年から始まったアフガン侵攻である。10年間戦って何の成果も得られなかった。シリアにも10年以上派兵を続けているが、これも成果を得られていない。更に現在アフリカ諸国への軍事援助を活発化しているが、これはロシアの国益というより、ワグネルの利益、更に言い換えればプーチンの利権拡大
策のようなもの。いずれ破綻し、その影響はロシア経済に跳ね返って来るだろう。だからV長期戦こそ、ロシアを敗北に追い込む最善策だ。
 それは別に筆者が注目したのは参列者のメンツ。最前列中央つまりプーチンの真正面に座ったのが、ロシア正教モスクワ教会のキリル大司教。元KGB職員で、プーチンとはとかくの噂のある人物。その隣が前大統領のメドベージェフ。キリルが真正面にいるということは、プーチンがこの戦争を精神的・宗教的なものと捉え、国民の愛国心を刺激することが狙い。プーチンは死んで聖人に列せられることを夢見ているのかもしれない。
 その他最前列にはパトリシェフとか、ワグネル「のプリゴジンの顔も見えた。又場所は分からないが、チェチェンのカヴァロフと思しき長髭のカフカス人らしき人物もいた。しかし戦争の直接の責任者であるショイグは数列後ろの目立たない場所に、それも背広で座っている。プリゴジンとは顕かな差がある。最前列のキリル、メドベージェフ、パトリシェフ、プリゴジンらが今のプーチン政権主流をなすと考えられる。すると彼らから距離を取ったショイグつまりロシア軍部の位置づけはどうなるのか?
 さてロシア軍の春期大攻勢。これは今月0日頃には既に始まっていると云う説もあれば、いや未だだという説もあり混乱しているが、ウクライナ全土への連日のミサイル攻撃や東部戦線での砲撃を見れば、既に開始されていると見るべきである。その割に戦線は大きく動いていない。つまり春季大反撃は思ったような成果をあげられていないということだ。これがプーチン演説で、戦況報告がカットされたり、ショイグの座る位置が前列から遠ざけられている理由だろう。
 よく言われるのがワグネルとロシア正規軍との確執。プリゴジンとショイグとの待遇の差を見れば、プーチンはワグネルによりスタンスを置いたように見える。無論両者に忠誠心合戦をやらせているのだろうが、その犠牲になるのは、何も知らないロシアの動員兵だ。ワグネルはバフムト・ソグタル戦線で壊滅的損害を受けた。正規軍も負けずにやってみろというわけだ。元々プーチンの性格にあった冷酷性に、今回の戦争で残虐性が加わった。更にそれに精神性、宗教性が加わり、戦争はその目的を失って単なる・・・プーチン流に云えば聖なる・・・虐殺に変わっていくのである。
(23/02/22)

(太陽王 プーチン  その3)
 レニングラード大学を卒業したプーチンはKGBに就職。念願のスパイになることができた。それからソ連崩壊までの20年近くをKGB諜報員として過ごすのだが、その後半10年近くを東欧で勤務する。この20年近くの後半は、ソ連が混乱し崩壊に向かう過程だった。その原因は1979年に始まったアフガニスタン侵攻。これも当初ソ連政府は簡単に片付くと踏んでいたのだが、思いがけずイスラム勢力の抵抗に会う。更にアメリカがイスラム勢力を陰で支援し出したため泥沼化し、89年遂に撤退を余儀なくされた。
 この間も国内政治は混乱する。80年代後半にはレーガンが仕掛けた軍拡競争で、ソ連経済は疲弊し国民の不満が高まる。その中でゴルバチョフら改革派が台頭する。89年、25年間独裁政治を行ったブレジネフが死去するが、後継政権も安定しない。更にベルリンの壁崩壊を契機に始まった東欧崩壊、ゴルバチョフによる共産党独裁廃止とソ連民主化。そして91年遂にソ連解体。プーチンはこの混乱を東ドイツドレスデンで見ていた。
 この時プーチンはどう思ったろうか?一つは共産党はもう駄目だ。もう一つは西側資本主義への恐れだ。一般のロシア人なら西側資本主義に憧れを抱くだろうが、彼は筋金入りのKGB諜報員である。何事も東西の力関係で考える。ソ連末期の混乱を、アメリカを始めとする西側勢力の陰謀と捉えても不思議ではない。
 ソ連解体と同時にレニングラードに帰任し、政治活動に入る。レニングラードはサンクトペレルスブルグとなる。プーチンはその副市長として治安の回復をもたらし、その功績を買われてモスクワ入り。エリツエン政権の閣僚として辣腕を振るうこといなる。このモスクワ移住が、後にプーチンがペテルブルグ派からモスクワ派に変貌するきっかけになったのか?心理学者のユングによれば、征服者は心理的に被征服者に征服される、という。簡単に言えば「ミイラ取りがミイラになる」ということだ。
 2000年プーチンは大統領になった。その時の西側の見方はどうっだたかというと、大方はプーチンは合理的で現実主義、交渉の相手になる、というものだったろう。特にドイツのメリケルは・・・彼女自身東独の出身だったから・・・プーチン贔屓。実際最初はそう見えた。しかしその残虐性が現れたのが08年チェチェン紛争。ここでプーチンはチェチェンの街を徹底的に破壊し、住民を何処かに追放し、親ロ派住民を移住させた。当に今ウクライナでやっていることを実験したのである。しかし西側はこれを不問にした。
 しかし旧東欧諸国にとって、チェチェンの実験は他人ごとではない。この後旧東欧諸国のNATO加盟が始まる。これがプーチンの言うNATOの東方拡大である。これにプーチンが警戒感を抱きだしたのも無理はないが、その原因を作ったのは自分自身である。
 そして10年頃にドウーギンの論文に接し、これ以降プーチンは西側に対し強硬姿勢を取るようになった。更に興味深いのは、この頃からプーチンが教会で礼拝する姿や、モスクワ河での寒中沐浴など宗教的パフォーマンスがやたらメデイアに登場するようになる。急に信心深くなったのか、それとも保守派の支持を得るための選挙用パフォーマンスか分からないが、何でもやっているうちに精神的に目覚めてしまうというのはよくあることだ。カルトはその点を突いてくる。そして元々ロシアはカルトの多い国でもある。あのオウム真理教も、海外布教の重要拠点はロシアだった。
 このようなプーチンの政治手法の変化は、活動の本拠をモスクワに移してから始まった。そもそも親西欧的で進取のサンクトペテルスブルグと、保守的で反西欧的なモスクワとは、単にものの考え方が異なるだけではなく、矛盾・対立する存在である。ピョートルがバルト海に面すネヴァ河口に新首都を建設したのも、保守的なモスクワにいてはロシアの近代化は果たせないと考えたからである。その矛盾・対立が整理されないまま、プーチンの心理に混在し、それが彼の混乱、ひいては今のロシアの混乱を招いているように思われる。
(23/02/21) 

(太陽王プーチン その2)
 しかし15世紀に入るとモンゴルの大帝国も次第に衰退し、14世紀末に、ロシアは独立を取り戻した。1453年コンスタンチノポリスの陥落で東ローマ帝国は滅亡する。しかし「我こそはローマの後継者」というのもいて、その一つに黒海南岸にトレビザンド王国というのがあった。15世紀末、トレビザンドの王女ソフィアがローマに旅行した折、丁度ローマに嫁とりに来ていたモスクワ大公イワン三世に見染められ、モスクワに向かう。両者の孫が雷帝イワン四世だ。
 イワン四世は即位すると、自分は祖母のソフィアが東ローマ皇帝の縁者だったことを盾に、我こそはローマの後継者つまり皇帝(ツアーリ)と称し、モスクワ第三のローマ説を唱えた。かくてモスクワは聖地となり、モスクワ大公国はロシア帝国となった。これがロシアの対外領土拡大の始まりである。といっても雷帝の時代はあまり大したことはなく、成功したのはカスピ海への入口に繋がるカザンの攻略ぐらい。バルト海への「出口を探ってラトヴィアのリガを攻撃するが、最も信頼していた部下の裏切りにあったり、ウクライナのクリミア汗国の攻撃にあったりで散々。雷帝の死後、後を継いだ息子のウラジミールが出来損ないで、叔父のボリス・ゴドノフに殺され、数100年続いたリューリック朝は絶え、さらのその後数10年間にわたって、首都モスクワはポーランドに占領される始末。その後独立運動があって貴族の中からロマノフが選ばれてツアーリとなった。ロマノフ朝の始まりである。
 この駄目なロシア帝国を再生させ、発展させたのがイワン雷帝からおよそ100年後のツアーリ大帝ピョートル一世である。ピョートルは根っからの欧化主義者で、自らヨーロッパに出向いてヨーロッパの技術を学び、帰国後も積極的に欧化政策を進めた。ピョートルの領土拡張政策はまず南から始まり、オリョールからアゾフ海まで達するが、その先はまだまだ強大なオスマントルコ帝国の支配地。そこで方向を北に変えてバルト海方面に向かう。当時沿バルト地方を支配していたスウェーデンとの戦いに勝利すると、ネヴァ河河口の三角州に新都市サンクトペテルスブルグを建設した。ペテルブルグ建設の目的は明らかに、これまでバルト海経済圏を支配していたドイツ系ハンザ同盟都市と独立した、西欧との独自交易ルートを確立することである。
 この結果、ロシアの政治・経済の中心はペテルブルグに移った。当然ながらペテルブルグという街の性格は西に向き、西欧的開化的となる。一方内陸のモスクワはこの流れから取り残され、保守的伝統主義的となる。これは単に政治・経済だけの問題だけでなく、文化・宗教の点にも及ぶ。
 17世紀半ば、ツアーリの命を受けたサンクトペテルブルグ司教ニコンによる宗教改革が行われたが、これに最も強く反発したのがモスクワ大司教アヴァクームである。彼は何度も投獄やシベリア流罪になったが、最後まで古い伝統儀式を捨てなかった。又同じ反対派のモローゾワ公爵夫人は捉えられ、地下牢で餓死させられた。反対者を弾圧する方もやりかたはひどいが、抵抗する側の抵抗もすさまじく、ちょっと日本人の感覚ではついていけないところがある。宗教改革に反対するアヴァクームの抵抗心は、彼が信じる神への絶対服従精神の現れだが、同時に改革を進めるニコンの側にも改革を進めなくてはならないという、絶対的使命感もあったはずである。
 このような絶対服従精神は何処から来るのか。それはロシア人の集合無意識を形作るロシアの大地から来ると考えられる。ロシアの大地は、ヨーロッパや日本のような変動帯と異なり、氷河期に削られた平坦な平原が延々と連なる。変化はなく多様性に乏しい。しかも冬には極寒となる厳しい自然が支配している。そういうところに住む人々は、何かを信じていなければ精神の安定を保てない。更にそこにキリスト教という、これも多様性を否定する選民思想が入ってきた。その結果ロシア人は排外的となり、他から圧力を受けると一致して抵抗する。逆に外に向かっては強圧的になり、これは神から与えられた権利であり義務であるとして、周辺に領土を拡張する。
 さて問題のプーチンだが、彼は生まれも育ちもレニングラード(今と帝政時代のサンクトペテルスブルグ)。またKGB時代は諜報員としてヨーロッパに勤務していた。その経歴からみて、生粋のペテルスブルグ派だ。つまりドウーギンに云わせれば月(陰)のプーチン、西欧かぶれの軟派、不信心者となる。事実ソ連崩壊後は改革派の旗手としてサンクトペテルスブルグ副市長として辣腕を振るまい、それを同じく改革派のエリツエンに認められて首相ー大統領代理、更には大統領まで上り詰めた。(続く)

(太陽王プーチン その 1)
 ウクライナ戦争が始まって以来、日本人・・・鈴木宗男や森喜朗などを除いて・・・や西側諸国の人々の多くには、ロシア人は悪、残虐というイメージが刷り込まれたようだ。しかしこれは日本にもファンの多いトルストイの人道主義や、チェーホフ、ドストエフスキーなどの近代ロシア文学のイメージとは矛盾する。
 ロシア人には、基本的に矛盾する二つの心理要素があると考えられ。それは西欧文明への憧れと、その反動としての民族主義、愛国主義、反西欧主義である。先週BS^TBS某番組で、後者の代表的イデオローグであり、プーチンの理論的指導者とも云われるアレクサンドル・ドウーギンの単独インタビューが紹介された。ドウーギンの主張に、ロシア人の矛盾した心理的二面性が現れている。
 その典型的な例としてドウーギンはプーチンに対し、太陽(光)のプーチンと月(陰)のプーチンの二面性があるとする。太陽のプーチンとは1)伝統的な価値観を有し、愛国的、民族的である。2)西欧的一極主義に対し、多極主義を支持する。3)反西欧的でNATOの侵略に対し敢然と立ち向かう。
 一方月(陰)のプーチンは1)親西欧的で、自由主義の存在も否定しない。2)経済重視でオリガルヒと癒着している。3)NATOに対しても妥協的である。等々。以前は月(陰)のプーチンが強かったが、最近は太陽(光)のプーチンが力を増している。これは良いことだ。
 ドウーギンが挙げた太陽(光)と月(陰)はプーチンになぞられえているが、実はロシア人そのもに向けられた言葉でもある。ロシアといっても広義のロシアと狭義のロシアがある。広義のロシアは概ね19世紀前半まで広がった、東はシベリア・カムチャッカから西はポーランド国境まで、今のロシア・ベラルーシを含む地域。狭義のロシアとは、古代中世のキエフールーシ国家のロシア部分である。(これを古ロシアと呼ぶことにする)。これは東はウラル山脈、西はピリチャピ湿原、北はノブゴロド、南はヴォルガ河中流のカザンの辺りまでの地域。その中心がモスクワである。
 古ロシアは10世紀末にキリスト教を受け入れ、正教国家となった。中世ここに大変動が起こった。13世紀半ばのモンゴルの来襲である。10世紀末にロシアはキリスト教を受け入れたが、当時のヨーロッパキリスト教社会は、南方からのアラブーイスラム勢力の圧迫によって危機的状態にあった。こういう時には、愛国主義、民族主義が高まると同時に、宗教もより原理主義的に且つ過激化する。ロシアが受け入れたキリスト教は、こういう状態だった。その結果、ロシアのキリスト教は君主・・・帝政時代は皇帝(ツアーリ)・・・と一体化し、人民に絶対的な服従と献身を要求する専制君主制の確立に大きな役割を担った。それがロシア人に元々あった大地信仰と結びついて愛国主義・民族主義、更には独特の選民思想を産んだ。
 ところがそんなロシア人の伝統は、異教徒であるモンゴルには全く通用しなかった。中央アジアの草原で遊牧生活を送る騎馬民族にとって、重要なことは来世の平穏などより現世の利益であり、それを得るためには手段は選ばない。謀略・暗殺何でもありだ。抵抗するものは徹底的に破壊する。無機的に機械的に殺戮し、民族の拉致浄化もいとわない。この結果、キエフ・モスクワ・バグダードは徹底的にはかいされた。ロシア人はこのような現世的手法をモンゴルから学んだ。その最大の後継者が、モンゴル帝国の最も忠実な僕であったモスクワ大公だった。
(23/02/13)

 昨日ウクライナ国防省は、10日以内にロシアの大反攻が始まると発表。イギリス戦争研究所も、2/20か2/21に大反攻が始まると予測。両者とも大体似た数字だから今月下旬にはロシア軍反攻が始まると見てよいだろう。ではどの方面から、どのようにしてか問題になる。この反攻は先月始めに、「三月末までにドンパス地方を制圧せよ」というプーチンの支持によるものとすれば、ドネツク、ルハンスク州方面ということは容易に想像できる。
 このような攻勢の場合、旧ソ連やロシア軍は、事前に十分な兵力を蓄積しておいて、三方面から侵攻するというのが伝統的手法である。例えば、1938年から始まった対フィンランド戦では一旦は退いたがソ連軍は、兵力を蓄え翌年冬に北・東・南の三方面からカレリアに侵攻し占領した。又チェチェン紛争では、99年の第一次紛争では撤退したが、プーチン時代の08年第二次紛争では、やはり北、東、西の三方面から侵攻し、チェチェンを徹底的に破壊した。この一旦退いてから兵力を貯え、十分な準備の後三方面から侵攻する、というのは古代ローマからの伝統的戦法。中世モンゴルもこの手を使っている。
 ということで、今回の反攻も三方向からの同時侵攻が予想される。これにも幾つかパターンが考えられる。今のところ、次の2パターンが考えられる。
(1)ハルキウ-バフムトードネツク方面
(2)ソレダル・バフムトードネツクーザポロジェ方面
 但し2)のサボロジェ方面は陽動作戦の可能性がある。1)の可能性の方が高いとみる。このような三方面同時侵攻作戦は、彼我に決定的な兵力差がある時に有効であって、そうでなければどうか分からない。通常兵力では、この方面のロシア軍とウクライナ軍との間に、それほど大きな差はない。無論、ロシア軍が更に30万とも50万との云われる動員をかければ、兵員数ではロシア軍が圧倒する。しかし中世戦国時代じゃあるまいし、勝敗を兵力差で占うのはナンセンスである。ウクライナには、ロシアにはない情報戦能力がある。
 次にどのようにして行うかだが、これには第二次大戦中に出来たソ連軍作戦術が参考になる。
 ソ連軍作戦術とは簡単に言うと次のようなものである。
1)戦略目標を明確にし、それによって作戦を立てる。
2)敵の弱点に対し、立て直しを諮る暇もないよう間断無き砲爆撃を加え、兵站線・通信網・補給基地を破壊する。
3)これによって敵の防御線を破壊すれば、空陸からの諸兵科混合兵力で破壊戦を突破し拡大する。この時も休みなく突撃を繰り返す。
 さてこのような作戦を可能にしようとすれば、敵に対し圧倒的な兵力を保有していなければならない。つまり反復攻撃を可能にできる無限の補給能力である。では今のロシア軍にこのような作戦を実施できる余裕があるだろうか。今年に入って行われた関係閣僚会議での、兵器生産担当副首相へのプーチンの叱責は、今のロシア軍兵器が枯渇していることの現れであり、これに対する副首相の曖昧な返事は、今のロシア兵器生産能力が軍や政権の要求に応えられない証拠でもある。
 戦車も新式のものは開戦時の半分に減り、後は旧式で補うだけ。残るは歩兵による反復攻撃のみ。今のショイグやゲラシモフの頭にあるのは、バフムトやソレダルで一定の効果を見せた、犠牲を顧みない歩兵の集団波状攻撃ではないか。その結果発生するのは莫大な犠牲である。ショイグが言う30万とも50万とも云う追加動員はこのことを予定しているのではないか?
 しかし30万の動員を掛ければ労働力が30万人減るわけで、それは工業生産力の低下を意味する。1月始めの関係閣僚会議で、軍備担当副首相が当初曖昧な返事をしたのは、このことを考えたからである。しかしプーチンはそれを無視し、増産を指示した。現実がわかっていないのである。ということで、この春季大攻勢が何時まで続けられるか分からない。もし三月末までにドンパス制圧に失敗すれば、下手すれば政権崩壊に繋がる大混乱が発生するだろう。
(23/02/09)

 24年パリオリンピックに、ウクライナはロシア・ベラルーシが参加するならボイコットを表明。これにエストニアも追随する動き。状況によってはポーランドやリトワニア、ラトヴィア、フィンランドも倣うかもしれない。これに対しIOCのバッハは、IOCの政治的中立を盾に、ロシア・ベラルーシ参加を容認する構え。一方フランスのマクロンは中立性が保証されるなら選手の参加は認めると、なんとも中途半端な態度。中途半端さはアメリカのバイデンも負けていない。選手が政治的な言動をしなければ容認すると表明。
 果たしてロシア選手の行動が完全に中立であると保証される担保はあるか。ウクライナ戦争開始以来、ロシアスポーツ選手の中には、プーチンの戦争を公然と支持する者もいる。又、オリンピックを口実に亡命を諮る選手もいるに違いない。従って、ロシア・ベラルーシ選手は事前に体制に忠実なものだけが選ばれ、且つ大会中も厳重な監視が付く。中には確信犯的にプーチン支持を表明する選手も出てくるだろう。これに対する反発も生じる。予想されるのは混乱だけだ。
 西欧諸国やアメリカ・日本などは、ロシア周辺国が如何にロシアに対し不信感と恐怖心を抱いているかを理解していない。ロシアのポーランド、バルト地方への拡大が始まったのは17世紀から19世紀後半にかけて。まず国王や貴族の姻戚関係を利用して統治権を得、ロシア人を入植させる。ロシア人の増加を理由に領土割譲を要求し、最後は国ごと乗っ取る。宗教、法制、言語をロシア化し、住民をロシアに拉致・移住させて民族の伝統を破壊し、民族浄化を進める。無論その背景には軍事力もあるが、西欧諸国の無関心も大きかった。特にフランスは貿易で、ドイツはその領土的野心からロシアの拡大を容認してきた。
 ウクライナでは19世紀からロシア人の流入が著しく、気が付いたら土地はみんなロシア人に奪われ、ロシア人の使用人になってしまった。土地を失ったウクライナ人は海外に流出し、一部はアメリカへ、一部は極東へ移住した。ここでも土地を奪われた非ロシア人の悲劇がある。
 ロシア帝国の領土拡大政策は革命後も終わらず、スターリン治政下の1930年代、ソ連はバルト地方からウクライナ、果てはドイツと組んでポーランドの一部まで併合した。第二次大戦中はドイツに占領されただけではなく、反ソ(ロ)感情からドイツに協力した住民も少なくない。その結果、大戦末期バルト地方だけでなく、ハンガリーや東欧地域はソ連による過酷な報復を受けることになった。更に第二次大戦後は、この地域はソ連の対ヨーロッパ戦線の最前線として扱われ、事実上主権を奪われることになった。
 ロシアは仮に一旦敗北し占領地を追われることはあっても、それで諦めるわけではない。必ず準備を整えて再び来襲する。それは1939年の対フインランド冬戦争。90年代末のチェチェン紛争がその例である。この領土への執着心は、日本人のような島国人には理解し難いものがある。だからロシア周辺国は常にロシアの領土的執着心に脅えているのである。
 仮にウクライナが敗北し、ロシアとの国境が西に移動した場合、バルト地方「始め東欧諸国は、再び旧ソ連支配の悪夢にさらされることになる。これが旧東欧諸国の対ロ不信・恐怖心の基になっている。この歴史に対し、未だアメリカや西欧諸国にはナイーブなところがある。日本の鈴木宗男・森喜朗に至っては論外だが、岸田だってどの程度理解しているか甚だ疑問。JOCの山下など、何も分かっていないから、何も言えない。体育馬鹿の典型だ。
(23/02/06)

 ロシア国防軍の存在意義は
1、周辺諸国にロシアへの無条件の服従を了承させることである。
2、外交交渉を有利に進めるためである。
 これは今年に入って、ロシア国防省が発表した、ロシア国防軍の新ドクトリンである(23/01/25「TBS報道1930」)。まるっきり19世紀帝国主義そのままで、時代が150年以上遡ったアナクロぶりである。これがロシア国防省単独の声明とは思えない。背後にプーチンがいて、プーチンが国防省に「そう書け」と命じたに違いない。
 さてこんなことを聞かされたら、鈴木宗男や森喜朗はどう思うでしょうか?日本は間違いなくロシアの周辺国である。ロシアへの無条件の服従を了承するのか?北方領土交渉にしても、鈴木一押しのロシア産原油交渉でも、ロシア側代表団の背後には、ロシア軍が武器を構えて待機している。こんな状態で対等の交渉が出来るでしょうか?
 18、19世紀のロシア領土拡張期には、ロシアは常に上の2点を使って周辺諸国を脅し、最後は武力にものを云わせて来た。革命後一時収まったが、スターリン時代の1930年代には再び復活し、一旦独立した旧帝国領土を再征服した。ウクライナもバルト三国もフィンランドもその犠牲となった。又やるのかね。プーチンの狙い、次は何処だ!なお北朝鮮も周辺国。あの国の立ち位置は結構ビミョーだ。
(23/01/28)

 今ロシアで医薬品が不足しているらしい。中国でもゼロコロナ政策を止めた途端に、コロナ患者が爆発的に増え、その結果解熱剤やその他の医薬品不足となった。これは中国人が自国産ワクチンを信のしていないからである。ロシアでも同じで、国産ワクチンスプートニクの効果を誰も信用していないから、ワクチン接種は進まないはずである。只ロシア国内でのコロナ患者の実数は全く公表されていないので、どの程度広がっているのかさっぱり分からない。
 医薬品不足がコロナ原因でないとすれば、やはりウクライナ戦争の影響が疑われる。戦争で需要が高まるのは、抗生物質のような一般の外傷治療薬の他、モルヒネなどの鎮痛剤(手術に使う)、ステロイドのような興奮剤や向精神薬も多い。戦場という強烈なストレス下では、兵士はしばしば精神的にダメージを受けて鬱状態となる。すると兵士として使い物にならないから、向精神薬を投与する。或いは死を賭する過酷な任務の前でも、これら薬物を使って精神を奮い立たせる。
 何を言いたいかというと、ワグネルの戦いぶりに少なからず薬物の影響が考えられるからである。仲間の死体を乗り越えて犠牲を顧みず突撃するワグネル傭兵。プーチンやプーチン崇拝の記者にとって、彼らは崇高な英雄に見えるかもしれない。しかし筆者が思い起こすのは、第二次大戦独ソ戦でのナチスドイツ武装親衛隊(W-SS)の戦いぶりである。
 それこそ味方の死体を乗り越えて、死に物狂いに突撃するその姿。ドイツ軍にも相当ショックを与えたようで、中央軍集団のある司令官は、陸軍総司令部に「彼ら(W-SS)の戦い方は、国防軍の一般兵士に悪影響を与えるから禁止するよう」という要請を出した位である。ドイツの-SSも薬物を使用していたという疑いはある。ましてドーピング大国のロシアが、薬物(ステロイドやアンフェタミン系)を使用していないと考える方がおかしい。プーチン自身がやっている疑いがあるのだから。
(23/01/25)

 なかなかウンと云わないドイツ戦車供与。一説にはかつての独ソ戦の経験から、ロシアに対し強硬に出るのは気が咎める、てなウェットな説明もある。果たしてそうでしょうか?
ドイツ国内に親ロシア的別勢力があって、それがショルツの足を引っ張っている疑いがある。その別勢力とは何者か?ずばりドイツ財界です。彼らは未だロシアビジネスに未練を持っている。とわけ原油・天然ガスビジネスへの再参入は魅力的だ。戦後のロシア経済への参入に、有利なポジションを得たいと思っているのだろう。
 しかしそうは問屋は卸さない。仮に戦争が終わっても、政治体制が今と同じ非民主的なものであれば、経済制裁は引き続く。ビジネスにはならないのだ。それより確実なものはウクライナの復興ビジネスである。これにはアメリカ始め西側各国から巨額の投資が見込まれる。当然各国企業のビジネスチャンスだ。しかしドイツには大したものは廻ってこないだろう。それはドイツがウクライナが最も欲しがったものを、出し渋ったからだ。
 日本も鈴木宗男の云うように、親ロシア路線に舵を切ればウクライナ戦後復興ビジネスから取り残されるのは必定。アホの云うことをきいてはならない。
(23/01/22)

 年が明けて10日ほどして、プーチンが主要閣僚を集めての会議を行い、その様子がテレビで公開された。その中でひと際目を引いたのが、兵器生産担当副首相へのプーチンの叱責。武器調達の遅れをなじり、兵器産業への契約まで幾ら掛かるのかと質問。副首相は「なんとか三カ月程度で契約できるよう頑張ります」と返答。それに対しプーチンは「それでは話にならない。一カ月で片づけろ」と云うと、副首相は力なく「ハイ」と返答。この顛末で分かったことは、ロシアの兵器生産能力が最早限界に近づいているkことだ。その原因は作戦の失敗による兵器の過剰消耗、それと西側経済制裁による部品の供給が絶えていることだ。
 さてこんな返事をして、この副首相大丈夫でしょうか?もあい一カ月で契約が達成できなければ当然責任が問われる。責任の取り方が只の更迭ぐらいならよいが、プーチンのことだ、それで済むはずがない。いずれ行方不明になるのは顕か。そうなる前に、この副首相の亡命もあり得る。
 仮に形だけの契約ができても、今のロシア産軍複合体に契約内容を履行できる能力があるかどうかは別問題。今のロシア軍事産業で決定的に不足しているのは次の2点だ。
     1)青壮年労働者不足。
     2)部品不足
    
1)青壮年労働者不足;何処の企業でも20代から40代にかけての兵役適齢世代は、一番の稼ぎ頭、企業のバックボーンのような存在で、この世代が少なくなると企業の生産性は著しく低下する。戦争が始まって以来、兵力の損耗が激しいのでロシアは徴兵期間を延長した。その結果、22年9月には職場復帰するはずの若者がそのまま戦地にとどめ置かれたりした。特に9月以降の部分動員令の結果、大量の若者の国外脱出を促してしまった。その結果生じたのは、深刻な労働力不足である。特に兵役適齢層の不足は、企業にとって生産性低下を及ぼす。
 それにもかかわらず、国防省は3年後までに正規軍定員を今の35万人増の150万人とすると発表した。つまり労働力は今から更に35万人減少するのである。一方軍の定員を増やすということは、それだけの軍需品生産が必要だ。そのためには労働力を今より増やさなければならない。しかし戦争が続けば戦死勝者も増えるから労働力は減少する。一方で消費量を増やし、もう一方で生産力を削る。こんな矛盾した政策が何時までも続けられるわけがない。実際かつての日本も生産力確保をないがしろしたため、需要と供給のバランスが崩れ敗北したのである。
2、部品不足;開戦当初から、ロシア軍の兵器供給能力には疑問が持たれていた。それがこのところ明らかになっている。その理由は西側各国の経済制裁で、半導体は勿論その他の高精度の部品も供給が途絶えつつある。労働者や素材が幾らあっても、それらを繋いで動かす部品がなければ、製品は作れない。
 例えば戦車を見てみると、新鋭のT-90やアルマアタなどは電子化が進んでいるが、半導体他の電子部品の供給が滞れば只の箱だ。逆に旧式のT-62やT-72などは在庫もあり、部品の外国依存度も低いが、今後ウクライナに供与されるであろう、イギリスのチャレンジャーやレオポルト2には全く歯が立たない。部品供給の確保がロシアの命運を握るだろう。
 そして上記の問題が解決されても、計画を達成するのに必要なものは、やはり産軍複合体経営者や従業員のモラルである。これが実は甚だ疑わしい。例え契約予算のネコババとか、部品の横流し、数量や検査データの偽造・捏造である。早くもロシア国防省は、軍事産業への囚人労働の可能性を認めている。つまりワグネルという犯罪者集団と、プリゴジンという犯罪者のボスが、ロシア軍事産業を牛耳ろうとしているのだ。もはやプーチンはプリゴジンの操り人形になったかのようだ。このような矛盾に満ち、実現不可能と見える計画を部下に押し付けるということは、プーチンが現実に無知か、盲目になってしまっているということだ。
(23/01/19)

 年が明けてもなかなか姿を見せないプーチン。その中で早くもプーチン失権説まで現れた。この手のネタはプーチン健康異常説と並んで、昔からある話。実際に根拠があるわけではなく、むしろこうであってほしいという願望の裏返しのことが多い。
 しかしどんな強力な独裁者でも、ある時期が来ると権力を失うのも運命である。独裁者が権力を失うパターンは大きく1)本人の死又は新権力者による追放である。本人の死にも病気または老衰による自然死と、2)反対者による暗殺、処刑がある。後者の場合、最も重要なことは、独裁者の情報力である。独裁者が情報機関をしっかり握っておれば、2)のケースは考え難い。むしろ危ないのは反対者の側である。
 ある識者の意見によれば、現在ロシアではポストプーチンの座を狙う権力闘争が進行中で、それはメドベージェフとプリゴジンの間で争われている。筆者もこの2人が主プレーヤーということは認めるが、他に重要なのがいる。それはFSBである。FSBはプーチンの直系組織であり、権力奪取に無関心であるわけがない。このボスがパトリシェフ。おそらくポストプーチン権力闘争はこの三者の三つ巴で争われることになるだろう。他にもあるかもしれない。例えば昨年対ドイツ戦勝記念日で、プーチンの脇に寄り添っていた若者。彼の背景は全く分かっていない。
 プレーヤーが2人か三人以上かでは、勝敗の行方は全く異なる。2人の場合は敵味方ははっきり分かれるが、三人以上となると互いに足の引っ張り合いになり、最後は共食いとなる。当に昨日の敵が今日の友となったりするため、抗争は長期化する。そこで現れるのが「何時までこんなことをやっているのだ、いいかげんにしろ」という人民の声。これが大きくなると、モスクワで小さい権力闘争をやっている連中は、最終的に追放されることになる。そしてその声はモスクワを中心とするロシア地方より辺境、特に極東から始まる可能性が考えられる。
 元々、シベリア・極東や辺境地域は帝政ロシア以来流刑地だった。最初にロシア人がウラルの東を目指したのは16世紀、150人のウラルコザックの一団がシベリア征服に乗り出した。その後ピョートル大帝の時代にはバイカル・イルクーツクまで、18世紀後半のエカテリーナ二世のときには極東まで、更にその後アラスカまで植民範囲を広げた。
 シベリア・極東を目指したのは、金鉱掘りや黑てんの毛皮目当ての猟師、それとコザックなど、自立しているが非正規的人民。19世紀末の産業革命で土地を奪われた農民、特にウクライナ人の移住、そして革命後、スターリンの粛清、第二次大戦中の捕虜や反革命とされた流刑者である。それもあって、極東はロシア本土からは疎外された地域だった。それでもソ連時代は社会主義的平等の原則でロシア中央並みの生活保障や公共投資はあったが、ソ連崩壊後は、その保障もなくなり、経済格差は広がる一方。今回のウクライナ戦争でも、ロシア正規軍の戦死者分布は辺境特に極東地域のそれがモスクワなど大都市の数倍に及ぶこと、追加動員も辺境地区中心に行われていることなどから、これらの地域に於ける反クレムリン感情は高まっていると考えられる。
 数年前極東州知事が業を煮やして、今後は日本との交流を深めると宣言すると。プーチンは慌てて極東への投資拡大を約束した。シベリアにしても、原油・天然ガスの生産でロシア経済の屋台骨を支えているにも拘わらず、ロシア中央との経済格差は大きい。もしプーチンやその後継者が、相変わらず極東や軽視政策を取れば、極東・辺境方面からの反クレムリン運動が起きるかもしれない。
(23/01/13)

 ブラジルでルラ新政権が誕生すると、ボルソナロ支持者が道路を封鎖したり大統領府を占領するなど、やりたい放題の抗議活動。これは2年前のアメリカワシントンでのトランプ支持者による連邦議会占拠事件とそっくりである。また、」昨年末には、ドイツでライヒスビュルガーという右翼団体を中心とする集団のクーデター未遂事件が摘発された。
 これらの右翼的運動の背景には、新自由主義経済による所得格差とか、低賃金で働く移民で職を失った白人労働者の不満だとか、主に経済的側面が強調されてきた。つまり白人貧困層の反乱だ、と。
 しかしよくよく考えてみると、今迄の説明は実態を全く反映していないことがわかる。アメリカのトランプ支持者の多くは白人富裕層である。トランプ自身、多くの不動産を所有する富裕層である。第一フロリダにゴルフ場付き別荘を持つ貧困層などあるはずがない。22年度所得はゼロだから、税法上は非課税の貧困層になるが、これは税金の誤魔化し方が上手いからだけだ。
 ブラジルでも反ルラ派はトランプと同じ、富裕層とか白人自営業者。彼らが何故左翼政権に反対するかというと、税金を払いたくないのと、これまでの税金のごまかしがばれるからだ。ドイツのクーデター集団では、トップはハインリッヒ13世と称する元貴族。ほんとかどうかわからないが、ヒトラーのようなルンペン上りではなさそうだ。
 これら3者に共通するのは、どれも陰謀論との距離が極めて近く、少なからず影響を受けていることである。陰謀論というのはヨーロッパでは歴史が古く、中世のフリーメーソンとか薔薇十字団事件とか、近代では世界をユダヤ人の支配下に置くという「シオンの誓い」世界ユダヤ会議説などがある。ヒトラーはこれを本気にしていたらしい。どれも根拠に乏しい与太話で、暇つぶしにその手の本を読んでいるうちは罪が少ない。
 ところが最近の陰謀論、特にQアノン系はSNSを使ってフェイクネタをタレ流し、それを更に実力行使に訴えるなど質が悪くなっている。そしてこの有害陰謀論はどうもある時期から急増し始めた。それは2014年ロシアによるクリミア併合以来である。クリミア併合でロシアは、欧米からの経済制裁を受けることになった。これに対する対抗手段として、欧米の社会的分断をはかるために、それ以前から西側諸国で流行っていたサブカルとしての陰謀論を、情報戦略の一環として用いだした。それに最初に引き掛かったのが、アメリカのバノンやトランプ、ジュリアーニ等だ。そしてそれはブラジルのボルソナロに伝染した。
 先に述べたドイツのライヒスビュルガー事件では、一味の中に親ロ派がいて、その背景を調べると、ロシアの情報機関であるGRUとの関連が浮かび上がってきたと云われる。又、2016年アメリカ大統領選では、ロシアハッカーによる反ヒラリー情報操作がおこなわれた。プーチンとトランプの友好関係はいうまでもない。ということは今世界を席巻している政治的陰謀論(Qアノン系)は、実はロシア情報機関がその背後で操っている疑いがある。日本もその例外ではないはずだ。ズバリ「参政党」がそのカモだろう。参政党の中には反ワクチンを主張するヤマトQなる団体がいる。これもロシア情報機関の手先か?
(23/01/11)

 クリスマスの夜、一人ミサにたたずむプーチン。1.07公開のロシア国営テレビ映像。なにか頬がこけ、やつれた雰囲気だ。1年前、ウクライナ侵攻が始まった時のプーチンの映像も、顔がまん丸に太りむくんだ表情で、筆者は一目でこれは薬物、特にステロイド系薬物の副作用と考えた。それが今回は打って変わって、やつれた印象が濃い。
 このやつれた表情は、今のプーチンの置かれた状態を表しているのかもしれない。
1、折角始めた戦争も、当初の目論見と違って一向にらちが明かない。軍隊がだらしないので、今やロシアが押され気味だ。
2、同盟国の支援も期待外れ。イランや北朝鮮のように、何時潰れてもおかしくないバラック国家に支援を頼まなくてはならないざまだ。
3、原油・天然ガスで西欧の分断を期待したが、このところの暖冬でその目論見も外れ、原油は逆に値下がりしている有様だ。
 プーチンの動静は、昨年末12/26サンクトペテルブルグでのCIS非公式首脳会合以来、明らかではない。毎年恒例のテレビ集会も、大記者会見も中止。新年のあいさつも、例年のクレムリン前というオープンな場ではなく、何処か分からない別室で兵士を招いてのセレモニー。ところがその後、ここに集まった兵士はみんな偽物で、会見そのものがヤラセ疑惑が発生。つまり時も処もわからないのである。そして01/06クリスマスの独りぼっちミサ。プーチンが本当に正義の戦争の勝利、国民の団結を神に祈りたいなら、大勢の大衆とともに神に祈りを捧げるべきだろう。何故そうしなかったのか?このボッチミサそのものが、別に作られたでっち上げの可能性がある。そもそも今のロシア正教会のキリル大司教は元KGBエージェントで、プーチンとの腐れ縁で今の地位を獲得しただけ。プーチンの頼みなら何でも引き受ける。
 そこに今度はウクライナ国防省が、ロシア政府内部の情報として「プーチンはガンで死期は近い」、という情報を流す。無論ウクライナ側の情報で、プーチン重病説は昔からあった話だから、真に受ける訳にはいかないが、そういうこともあり得るという可能は無視してはならない。果たして日本の政治家・官僚・経営者はその点に留意しているだろうか?何時までもプーチンは生きていて、その実権は衰えないとでも勘違いしているのではあるまいか。
 つまり今のプーチンの地位は非常に不安定だ。それがあの不安そうな表情に現れているのだろう。
(23/01/10)

 さて年も2023年となりましたが、今年も世界に大きな影響を与えそうなのが、中国の習近平とロシアのヴォジーミル・プーチンの2人ということは・・・・両人ともこの世にいてほしくないのだが・・・認めざるを得ないでしょう。この二人に共通することは、どちらも核を所有する大国の独裁者だということですが、もう一つ2人とも今年は71才ということです。
 70才というのは人生の大きな節目。古来「古希」と云われている。現代日本では、70才というのは未だ若い部類に入るが、場所によっては異なることもある。
 まず習近平ですが、ある時うちのカミさんがテレビを見て「この人永くない」と云った。理由は右の耳に深い筋が入っていることです。これがあると後何年もない。心臓をやられるらしい。
 プーチンについては、彼は既にロシア人男性平均寿命を、とっくに越えている。筆者が以前から云っていることだが、薬物特にステロイド系興奮剤の疑いが濃い。この場合も急な心臓発作の危険性が高い。その他肝臓障害とか色々考えられる。だから、中国・ロシア二か国の将来を占ううえで忘れてならないことは、指導者がある日突然いなくなる確率がゼロではないことである。地震のようなものだ。地震と同様、常時観測を怠らないことが肝要。今年一年はこの2人の健康状態に注目したらどうでしょうか?
(23/01/01)、

 今年ももう終わり。一つ今年起こった出来事を総括してみます。2022年最大の出来事はなんといっても「ウクライナ戦争」です。開戦から10カ月、未だに解決の糸口が見えません。しかしその中で明らかになった事実もあります。
1、ロシア軍の実力は実際は大したものではなかった。これは兵士の士気、練度、司令官の指揮・作戦能力だけでなく兵器の性能、生産能力も含めてだ。
2、戦法がドローンや情報戦を駆使した新たなパラダイムに入った。
3、NATOを含む西側諸国の資源・エネルギー防衛が、如何に脆弱だったか、つまり鈍感だったかが明らかになった。
 などであるが、今一つ分からないのが、何故プーチンが戦争を始めたのか、である。これがわからないから、戦争の終決点がなかなか見通せない。
 まず、プーチンは戦争の目的をコロコロ変えている。
1、最初はウクライナ全土の非ナチ化、非軍事化だった。、つまりウクライナ全土を占領し、親ロシア傀儡政権を樹立することである。これはプーチン自身やFSB幹部の目論見もあるが、背後で13年バイダン革命で追放されロシアに逃亡したヤヌコヴィッチ他の旧ウクライナ政治家の要望もみてとれる。
2、3月「キーウ攻略に失敗すると、矛先を南部及び東部に変えこの地域の保全を目的にしだした。守勢に廻ったのである。
3、更に形勢が不利になった夏ごろには、ウクライナの背後にはアメリカとNATOがいて、ウクライナはそれに踊らされているだけだと責任転嫁。
4、秋にハルキウ、序でヘルソンを奪還されると、この戦争はロシアとアメリカ・NATO との闘いだと、戦争の相手をすり替える。
5、12/26サンクトペテルブルグでのCIS非公式首脳会議では、プーチンはCIS各国にアメリカ・NATOの攻撃に対しCIS各国の団結を呼びかけた。但しこれに応じたのはベラルーシのルカシェンコだけで、他は知らん顔。ここでもロシアの孤立化が浮き彫りになった。
6、その後、ロシアのラブロフは戦争の目的をウクライナの非ナチ化・非軍事化をウクライナ全土に広めることだ、と一番最初に逆戻り。これは逆に言うと、もうこれしかいう言葉がなくなったということかもしれない。
 又、報道官のペスコフはアメリカがプーチンの命を狙っているとか、ロシアを滅亡させようとたくらんでいるとか、根拠なき憶測を語る。こうなるとまるっきり「陰謀論」の世界だ。
 三カ月以上の戦争を通じて云えるのは、ロシアの孤立化がますます深まったということだ。頼りにしていたインド・中国・・・習近平はコロナ対策で手一杯、ロシアどころではない・・・は、明らかにロシアから距離を置いている。頼りになるのはイラン・北朝鮮位だ。これとても工業生産力は乏しく、何時まで支援を期待できるか分からない。
 こんなに戦争目的が時と次第でコロコロ変わるということは、元々プーチンにはまともな戦争目的も戦略もなく、背後にいる利益集団に突き動かされていただけ、という疑いが残る。どういう集団かというと、先にあげたヤヌコヴィッチらウクライナ旧支配層、旧「KGB、メドヴェージェフら右翼保守政治家、軍部らシロビキと呼ばれる集団、プリゴジンやカヴァロフといった傭兵集団。
 ロシアの形勢が不利になると、これらが勝手なことを言ってプーチンをせっつくから、プーチンも混乱して長期的な戦略が立てられなくなる。すると世論を宥めるためには、とりあえずミサイル攻撃を繰り返してお茶を濁すしか手がないのだ。これを繰り返すことによってウクライナ国民の士気をくじき、停戦に持ち込む筈だった。それにもかかわらず、ウクライナ国民の士気は下がらず、対ロ抗戦論は95%に達する。これでは逆効果だ。だから9月にCSTO会議を開いたと思ったら、もう年末というのに慌ててCIS府公式会議を開かなくてはならなくなったのだ。
 ということで、ロシアの抗戦は早ければ来年春まで、遅くとも夏ごろまでだろう。
(22/12/30)



 一昨日ドローン攻撃を受けたロシア南部エンゲルス空軍基地と、駐機する「死の白鳥」ことTu160NATOコード名「ブラックジャック」超音速戦略爆撃機。アメリカのB-1-Bに対抗して作られたものだが、コンセプトとしては最早時代遅れ。
 ロシア当局はドローンは防空システムで破壊したが、破片で3名が死亡と発表。そんな都合よく破片が三人に衝突するわけがない。防空システムに欠陥があり、ドローンの侵入を許したのです。プーチンはショック。
(22/12/27)

 昨日ゼレンスキーがワシントンを訪問し、アメリカ議会で演説した。それに合わせたのようにプーチンもクレムリンで演説。やれ「パトリオットはもう旧式だ」とか「、欧米の経済制裁は失敗した、戦費は無限にある」とか、色々云っていますが、その中で筆者が注目したのが「旧ソ連から離脱した国の、迫害されたロシア人をロシアは救済する」という部分。
 旧ソ連から離脱した国とは何処か?一つは北西のバルト三国、一つはカザフスタン、ウズベキスタン、キルギスタンなどの中央アジアの所謂ザバイカル国家群。そしてジョージア、アルメニアなどのカフカス国家。これらの国家は確かに旧ソ連邦を攻勢していたが、その前にはロシア帝国に組み込まれていた。つまりプーチンの狙いは旧ソ連の回復というより、旧ロシア帝国の復興にあると考えたほうが良い。その手始めがウクライナなのである。
 こんなことをプーチンから云われたら、周辺諸国は気が気ではないでしょう。更にNATO 加盟国が増えるかもしれない。そこまで行かなくても、中央アジアザバイカル国家群はどうでしょうか?この地域は中国の一帯一路構想の中核部。ここがロシア帝国化で紛争地域・・・つまり今のウクライナのような状態・・・になることを中国が認めるわけがない。新たな中露対立の火種になりかねない。プーチンは少し喋りすぎた。
 迫害されたロシア人を救うといえば、戦争勃発直後、ロシア極東州のある議員が「日本の北海道にいる先住民はシベリアの先住民と同じである。彼らは(杉田水脈という国会銀やそれと同調する極右勢力によって)迫害されている。彼らを救うために北海道を占領すべきだ」と云ったことがある。確かに日本のマスコミから袋叩きにあっている鈴木宗男を救出するため北海道を、逆にシベリア先住民と同じアイヌを差別する杉田水脈という議員を懲罰するため山口県をロシアが占領するかもしれません。
(22/12/23)

 激戦続くウクライナ東部バフムト戦線。このほど、バフムト北方のロシア軍防衛線の空中映像が公開されました(12/19 [報道1930」)。それによると、①最前線には「竜の歯」と呼ばれるコンクリート三角錐が数列、②その背後に塹壕、③最後列にはジグザグ状の塹壕の三重配列。一般に過去の戦例で云えることは、突破できなかった防御線はないということだ。筆者の見解ではこんな防御線など、現代の土木技術をもってすれば、いちころだ。
①最前線の「竜の歯」など、コマツ355とか三菱G-9のような50t級のブルドーザーで簡単に排除できる。これらのクラスの排土版は物凄く頑丈にできているから、機関銃どころか対戦車砲弾だって弾き返せる。
②③その背後の塹壕は、「竜の歯」のコンクリートブロックをブルで押して埋めてしまう。それで足りなければ、72t級ダンプで、バフムト市街で出てきた瓦礫をを運んで埋め立てる。このクラスのダンプは物凄く頑丈に出来ているから、下手な対戦車ミサイルなど問題ではない。その上をブルで敷きならせば、戦車が通れる道は簡単につくれる。
 施工の安全性は当然軍が担保しなければならないが、現在ではこれら大型重機は殆どがGPS誘導で動く無人操縦式になっている。問題は戦場までどうやって運ぶかだけだ。現代では軍用器材より民間器材のほうが安全で頑丈にできているのである。 

 「前線の兵士達の声と国防相の説明が違っている。私達はどちらを信頼すれば良いのですか?」という記者の質問に、「誰も信用するな。私だけを信じよ」とプーチン(12/19 「報道1930」)。遂にプーチンは神になった。
 果たしてプーチンはどういうつもりでこのような返事をしたのか?記者の鋭い突っ込みに、我を忘れて思わず口走ったのか、それとも本気でそう語ったのか?これを聞いていたロシア人はどう思ったでしょうか?日本のような多神教の国で、首相がこんなことを口走ったら、八百万の神々が「なに生意気云ってるんだ」と怒って大混乱だが、一神教の国では意外に受け入れられるのかもしれない。
 只プーチンはその後で「・・・事態は改善されている」と続けた.。このような抽象的な説明でみんなが納得するとは思えない。軍や強硬派から都合の良い報告だけを聞いている可能性もある。その証拠が先日発表された前線への芸能人やサーカス芸人部隊の派遣。戦争中の日本軍慰問団を思い起こさせる。ベトナム戦争や朝鮮戦争でも、米軍はこのような芸能人部隊を派遣している。このような芸能人の戦争協力事業をやるのは、決まって戦争が膠着し、士気が低下し兵士の中に厭戦気分が発生したときである。ということは、ロシア軍がそういう状態にあるという証拠だ。
 来年年明け或いは2月中にも、ロシア軍は大攻勢を掛けるというが、軍の士気がこんな状態では成功はおぼつかない。なんとなく1918年春、第一次大戦最後のドイツ軍春季大攻勢(所謂ルーデンドルフ攻勢)を思い出す。この攻勢の直接の原因は、ルーデンドルフの作戦の粗雑もあったが、兵士レベルでは食糧不足である。やっぱり連合国の経済封鎖が最後にモノを言った。
 なお来年はロシア大統領選挙戦の年。プーチンはこのセリフの受けが良いと思うと、選挙期間中「私だけを信じよ」と連呼しまくるだろう。勿論戦争を理由に対立候補の出馬はみんな妨害するから、独り勝ちは間違いない。但しそれは戦況が、悪くても今の状態で留まっている場合の話。
(22/12/20)

 プーチンが作戦本部・・・参謀本部のことか?・・・に出向いて、今後の作戦方針について司令官たちの意見・・・提案という報道もある・・・を募ったという報道。これに対し、西側筋はプーチンが最早打つ手を失ったという見方をする人もいる。
 作戦の節目に総司令官が軍幹部に意見を求めることは不思議ではない。1940年独仏戦の前に、ヒトラーは軍の幹部会議を開き、意見を聴取することにした。既に参謀本部案はあったがヒトラーはそれが気に入らない。その時、ある軍の参謀長だったマンシュタインが出したのがアルデンヌ突破作戦だった。ヒトラーはこれが気に入り、これをベースに対仏戦作戦計画が練られた。
 この場合は総司令官側にオプションがあり、そこに欠陥がないか、或いはよりよい方法はないか、という課題を解決するための会議である。プーチンの場合はどうか?戦争開始以来ロシア側は誤算続き。思いがけないウクライナ側の反撃に会い、それどころか占領地の1/4ほどを奪い返される始末。そこでウクライナ全土を対象とするミサイルの波状攻撃をやったが、これも思わしい成果を挙げていない。それどころか、ドローンでロシア国内空軍基地を急襲される。更にアメリカがパトリオットや更に長射程砲を供給する。ウクライナがパトリオットを保有すると事実上核攻撃は無理だ。
 通常戦争オプションを選択するのは、飽くまで政府・軍内部で秘密裡に行われるものである。それがこんな風に外部に報道されるということ自身が面妖。やっぱりプーチンが打つ手をなくしたのか?あるいはミサイルの在庫が尽きてきて今のような波状攻撃ができなくなったのか?或いはプリゴジンやカヴァロフのような外部の人間が、軍・政府の無能を言い立てるためにわざとリークしているのか?
 なかなかロシア内部の様子は見えてこない。一つのポイントは、ウクライナが主張する来年1月末から2月に掛けて始まるとされるロシアの大規模攻勢。通常大きな作戦の前には、①作戦の基本計画、②それに基づく兵棋演習を含むシミュレーション、③基本計画の修正と実施計画、④それに基づく兵力配置といった手順を踏む。それがどの程度の期間を要するかは作戦規模にもよるが、かつてない規模というからには少なくとも数カ月を要する。それを今頃になってアイデア募集というのでは話にならない。
 年明け大規模攻勢が本当にあるのか、あったとしてどのようなレベルのものなのかで明らかになるだろう。今回の報道が真実とすれば、来年春季攻勢の具体案は未だできていないことになる。もしこのまま進めば、発生するのは前線の混乱だけ。失敗は目に見えている。プーチンの求心力は急速に低下し、夏まで政権が持ちこたえられるかどうか分からない。
(22/12/18)

 最近時々ネットでお目にかかるのが「プーチン亡命説」。これにもいろいろあるが、最近見たので面白いのが、強硬派がプーチンの生緩い戦争に反発しクーデターを起こす、そして亡命先はベネズエラ、という説。まず筆者は以前プーチン失脚亡命を考えたことがあった。今でも将来全くないとは云えないと考えている。その中で亡命先の一つにベネズエラもあり得ると考えた。しかしこれは現実には非常に難しい。亡命路には空路、海路の二つが考えられる。
 空路の場合は、一旦イランを経由してシリアに逃れる。さてそこからだ。地中海、大西洋を如何に横断するか?地中海はNATOの海。大西洋は米艦隊が張り込んでいる。更に常に人工衛星で監視されている。むしろシリアからカタールかサウジに逃亡し、ベネズエラの外交特権を利用して空路逃亡を図る。ゴーンがやったような手だ。
 海路は、ムルマンスクから潜水艦で逃亡するルートである。相当の長期間が必要だから、予め既存の潜水艦を逃亡用に改装しておけばよい。無論大西洋には英米艦隊が監視網を張り巡らしているが、それを上手くかいくぐれれば、成功の見通しは高い。
 ではプーチンがいなくなった場合ロシアはどうなるか?プーチンの後釜を狙っているのが、パトリシェフ、ドボルニコフという旧KGB仲間と、ブリゴジン、メドベージェフといった民間人や政治家。しかし彼らが結びついていたのはプーチンという接着剤があったからで、それがなくなるとたちまち分裂、権力抗争が始まる。プーチンは悪党だったが、カリスマ性もあり、それなりに大衆人気もあった。しかしこの4人には、カリスマ性も人気も全くない。あるのはただの悪役キャラだけだ。
 こんなのが権力闘争を幾らやっても長続きせず、挙句な果ては共食いが始まる。さてその先に何があるか?誰が現れるか?それがさっぱり見えてこない.。あるのは只の混乱だけ。
 アベ亡きアベ派の後釜が一向に見えないのと同じだ。アベ派は今のところアベが残した遺産を食い潰しながらナントカやっているが、それは岸田が弱いから出来るだけの話。ロシアもプーチンの遺産で暫くナントカやっていけるが、そのうちあとが続かなくなる。それが今のロシアの最大の問題だろう。
(22/12/14)

 ウクライナ軍が南部サボロージェ州メリトポリで攻勢を強化。マリオポリ奪還攻勢の前ぶれか?仮にメリトポリが奪還されたり、防衛が困難になったりすれば、ウクライナには次の二つの効果がある。
1、メリトポリが制圧できれば、クリミアへの道が大きく開ける。即ちヘルソン州南部ドニプロ河左岸に展開するロシア軍は左翼をウクライナ軍にさらして孤立するから、クリミアへ撤退せざるをえなくなる。
2、これをさけるためにメリトポリ防衛、或いはヘルソン州南部の防衛を固めようとすると、東部から兵力を割かざるをえなくなる。するとバフムトースバトベ方面での攻勢が鈍化し、ウクライナ軍に反撃のチャンスを与える。
 要はプーチンがメリトポリとバフムトのどっちを選ぶかだ。もしバフムトを犠牲にしてメリトポリを重視すれば、プーチンとプリゴジンの間に隙間が発生する。これはやがて対立に発展するだろう。
 逆にメリトポリを失い更に、サボリージェからヘルソン全体を失えば、プーチンの求心力は急速に低下し、失脚の恐れも出てくる。それを避けるためにウクライナ空爆を更に強化しなければならないが、これは逆にミサイル・ドローンの消耗を促すことになる。つまり継戦能力が急速に失われることになる。方向性の結論は年内に出るかもしれない。
(22/12/13)

 12月5、6日と二日続けてのウクライナによるロシア内部への攻撃。5日は空軍基地、6日は燃料貯蔵庫。弾着位置からみると、ウクライナは国内から十分モスクワを攻撃できる能力を持っていることが分かる。
 ロシア国防省はこの攻撃を、旧ソ連製の無人機によるものとしている。とすればこの無人機は30年以上前に作られたものになる。30年以上前のものがそのまま使えるのか?と疑問に思うでしょうが、マサカ。30年以上前の無人機を倉庫から引っ張り出して、それに改良を加えたものでしょう。
 ウクライナの工業技術力、中でも航空宇宙技術力を馬鹿にしてはならない。旧ソ連時代はソ連邦内ではロシアに次ぐ工業国。通常兵器でもそうで、旧ソ連の輸出用戦車の大部分はウクライナで生産された。だから今度の戦争でも、ロシアは最初に軍需工場にミサイル攻撃を仕掛け武器生産能力を破壊した。今それが完全とは言えないが、徐々に回復しつつあるということだろう。
 今後これが続くと、少なくとも通常兵器ではロシアとウクライナとで優位性が逆転する可能性があるということだ。それが何時かというと、今のロシアのミサイルが来年三月頃に枯渇する。だからその頃か。そうなればウクライナは欧米の支援を100%当てにしなくて済むようになる。これはウクライナにとっても欧米にとっても楽だ。しかしプーチンにとっては重荷。双方ともそこまで戦争を引っ張っていけるかが焦点。
(22/12/08)

 今朝のネットニュースに、ヘルソン市のドニプロ河に既に大型の舟艇橋が設置されている映像があった。これは戦車のような重車両も通過できる規模である。ということはウクライナ軍はヘルソン州南部で本格的な反攻作戦を企図していると考えられる。
 その目標は何か?快速部隊・・・持っていればの話だが・・・を使って一気に南下し、クリミア半島を約するクリル地峡を制圧するのか、それともドニプロ河左岸を東進してノバカホスカダムを制圧し、クリミア水道を遮断するとともに、ダム道路を制圧して、西岸に待機している予備兵力を渡河させるためか?ところがこの映像、その後さっぱり出てこず、日本のメデイアも全く取り上げない。その所為かテレビによく出てくる軍事評論家という素人達の解説も、前日の渡河映像だけを根拠にしているからピントが外れる。
 一方東部戦線では相変わらずバフムトでの戦闘が続いている。ロシア軍・・・といっても実態はワグネル私兵やドネツク人民共和国私兵が中心・・・は北東と南東から攻勢を強めているが、バフムト市の西部にはウクライナ軍が待機している。諸葛孔明「空城の計」でウクライナ軍は一旦バフムトから退去し、ロシア軍を市内に誘い込んだ上で、バフムトを逆包囲する方法もある。
 また、サボリージェ州やドネツク州の一部でロシア軍が撤退準備を始めているという情報もあるが、仮にそうだとしてその意図が明確につかめない以上、拙速は禁物。所謂「吸引作戦」の可能性もある。これは一旦敵を叩いて徴発しておき、退却と見せかけて敵を誘い込み、予め忍ばせておいた伏兵と同時に反撃に移るという戦法である。これはフン族以来ユーラシア騎馬民族の常套手段。ロシアは1812年対ナポレオン「冬の戦争」でもこの戦法を使った。しかしこの戦法は懐が深いロシア本土なら効果はあるが、サボリージェ州では少し後退すると背後はアゾフ海だ。という点を考えると「吸引作戦」の可能性も少ない。やっぱり戦線を整理しコンパクトにして、持久戦に持ち込もうという作戦か。
(22/12/05)

 ウクライナ軍の特殊部隊がヘルソン州でドニプロ河を渡河し橋頭保を築いたと発表。ドニプロ河の東岸でも広いから何処かと思えば、ヘルソン市の対岸というから、アンドルフスキー橋の近辺か。渡河地点は船着き場のようで、10月下旬から始まったロシア軍の撤退に使った施設と思われる。ロシア軍はこれを破壊せずに撤退したのだろう。
 動画からは作戦は白昼堂々と行われたようだ。ロシア軍の隙をついたのだろうが、これを見てもロシア軍の防御能力に疑問符が付く。
(22/12/04)

 ヘルソン陥落以来、ウクライナ戦争は奇妙な静寂を保っている。静寂といっても、それぞれの前線がなかなか動かないだけで、実際は各地で激戦が繰り広げられている。逆にそのため、戦線が動かないのである。しかし何時までもこうしていてはいられない。特にロシアにとって、戦争の長期化・膠着は人員・兵器等戦争資源をくいつぶだけ、逆にウクライナは西側の援助を期待できる。そのためか、最近ロシアが全面反攻を開始するという見方が多い。
 筆者も以前からなんとなくそんな気はしていた。何故なら、戦争を始めてはみたものの、地上戦は負け続き、将軍どころか兵隊もピリッとしない。ミサイルやドローンでインフラを潰してみたものの、直ぐに復旧されてしまう。ウクライナ人の中に厭戦気分が広まるかと思ったらそうではなく、返って反抗心を煽っただけ。周りを見ても、支持してくれるのは北朝鮮とかキューバのような三等国だけ。あんな連中、何の役にも立たない。頼りにしていた中国やベラルーシ、インドもいざとなると知らん顔だ。それどころか、これまでロシアのl子分と思っていたカフカスや中央アジア諸国(CSTO)まで、なめた真似をしだす。このままではいずれじり貧だ。再来年には大統領選。何が何でも成果を挙げなくてはならない。
 そこで乾坤一擲、空陸総力を挙げての反攻作戦を実施する。但し当初のウクライナ全土制圧は無理なので、ドネツク、ルハンスクの未制圧地域を制圧した上でNATO と交渉7に入る。さてそれが何時か?(1)年内か年明けの冬季か、それとも(2)春の雪解けを7待ってか?(1)の場合は兵力が未だ十分回復していない。動員兵も訓練不足だし、何よりもミサイル、ドローンが足りない。(2)の場合、兵力の回復はあるが、同時にウクライナも兵力を回復してくる。英米や独仏から最新兵器が到着しているかもしれない。
 どちらにせよいずれロシアの反攻作戦は始まる。場所はルハンスク南部からドネツク州にかけて。使用兵力は20万人規模。過去最大の攻勢になるだろう。ウクライナがこれに耐えきれれば、その後、5月か、7、8月頃に戦局の大きな変化が起こるだろう。
(22/11/28)

 報道では現在ウクライナ軍がドニプロ河河口のキンブロ半島上陸を目指し作戦中、これに対しロシア軍は兵力を増強している。これは筆者が11/12に示した、ヘルソン州南部反攻作戦2案の内の第2案である。但し筆者は、この案は魅力的だが十分な上陸資材が必要であり、ウクライナ軍の現状では無理だろう。それより小規模なコマンド部隊を上陸させ、ロシア軍の後方攪乱を狙うのが有効、としている。
 果たしてウクライナ軍の意図がどのあたりにあるかわからないが、仮にキンブロ半島を拠点として南部反攻を図るなら、まず上陸用資材の確保、次にドニプロ河河口周辺の制海権の確保、そしてNATO諸国、中でもアメリカの了解が必要である。やるならアメリカ議会議員が交代する来年1月まで、つまり年内に一定以上の戦果を挙げ、アメリカ下院共和党議員を黙らせる事実を積み上げておくことである。
(22/11/20)

 「日本維新の会」の鈴木宗男が15日のポーランドへのミサイル落下事件について、自身のブログでミサイルをロシアによる攻撃だとするゼレンスキイーの主張をフェイクだと非難した。すると今度は宗男のパーテイーで、自民党アベ派(清和会)森喜朗が「プーチンを説得できるのは鈴木宗男しかいない」と持ち上げ、ついでに「叱られるのはプーチンばかりで、何故ゼレンスキーは叱られないんだ」と、今の戦争を子供の喧嘩に例え、更に「岸田内閣はいつの間にかアメリカ一遍同になってしまった」と反米演説。おまけに「ほおっておくと核戦争になる」と、責任をウクライナにすり替える。
 アメリカ一遍同は、森が属する清和会の、その原点岸信介以来の伝統。それが嫌なら清和会を離脱しなけりゃならない。森の発言は、例の葉梨と同様、その時だけの受け狙いだろうが、現下の状勢が分かっていない。そのうち、うっかり統一教会擁護失言でもやらかすんじゃないかと、自民執行部も気が気じゃないだろう。
 鈴木宗男は自他ともに認める親ロシアマフィアのドン。これには評論家の佐藤優も含まれる。日本人の多くに見られる特徴に、対象に過度に思い入れる現象がある。例えばある国に長期滞在すると、いつの間にか気分的にその国の国民になってしまうのである。明治ではドイツに学んだ森鴎外がその例である。昭和では同じくドイツ贔屓の大島浩が挙げられる。陸軍出身だが、昭和13年ドイツ大使となり、すっかりドイツ贔屓となり、ナチに傾倒して、ナチ式敬礼をやったり、ナチ式軍服を着こんで、三国同盟締結に奔走。ドイツ人以上のドイツ人と呼ばれ、日本の道を誤らせた。
 何故こうなるかというと、日本人は相手国へ行くとチヤホヤされ、そのきになってしまうからだ。何故チヤホヤするかというと、日本人はお人好しで気前が良く、外国人の言うことをよく聞くからだ。鈴木も森もその口。すこし利権の匂いをかがせば、あとはこっちの言う通り動いてくれる。こんなやりやすい人間はいない。それにしてもアベ晋三は惜しかった。あれは相当手なずけたので、これから先もこっちの言う通り動いてくれた筈だったのに。というのはプーチンの独り言か。
(22/11/19)

インドネシアでのG20首脳会議共同声明発表前に、ロシア非難決議を牽制するためか、ウクライナに向かって、対規模なミサイル攻撃。そのうちの一発が逸れたか、ポーランドに着地し民家に衝突して犠牲者を出した。当初これはロシアによる意図的な攻撃(ポーランド外務省)とか、ウクライナに撃墜されたロシアミサイルの破片とか云われていましたが、筆者は始めからこれはロシアが発射したミサイルのトラブルと思っていました。
 根拠は昼頃発表されたミサイル着地点の様子です。地面はえぐられた様に深い穴が空き、家屋の破片のようなものも散乱している。飛行機のような巨大な物体ならいざ知らず、たかがミサイルでこんな大きな損壊や、まして民家を破壊するような破壊力などあるはずがない。
 ではミサイルのトラブルとはどういうものがあるでしょうか?
1、ミサイルが予定軌道を外れ、ポーランド領に入ってしまった。
 この戦争が始まって以来、ロシア軍ミサイルの軌道の不正確さは明らかだ。元々製造工程に問題があるが、特に半導体不足で制御系の信頼度が落ちていると思われる。開戦一か月後の英国戦争研究所の発表では、ロシア軍ミサイルの着地率は40%程度と見積もられている。つまり発射したミサイルのうち、60%がが何処へとんでいったのか分からないのだ。現在ロシア軍の状況が春から改善したとは思えない。返って劣化しているかもしれない。
2、誤射、
 これも似たようなものだが、発射前にミサイルに導入した軌道制御データが間違っていた可能性だ。今回のミサイルが本当にロシア製なのか、ロシア製に偽装したイラン製なのか分からない。もし後者なら、ソフトのトラブルで誤作動を起こす可能性は大きい。
(22/11/16)

 例のロシア右派イデオローグ、ドウーギンがプーチンを「雨の王」と評した。「雨の王」とはイギリスの民俗学者・・・物好きで金持の只の暇人という人もいるが・・・フレーザーが紹介した「王(神)殺し」のことである。古代・・・近現代では未開社会も含まれる・・・社会では、力(霊力)を失った王は人民によって殺されるというものである。
 ヘルソン陥落でプーチンの霊力は最早尽きた。霊力のない王に従っていては一族は滅びる。今の王・・・つまりプーチン・・・を殺し、新しい王を迎えよう、とでも云いたいのだろうか。こんなことまともに言えば、プーチンの怒りをかうのは当たり前。だからその後直ぐ撤回した。
 しかし今のロシア国民の中に、このような雰囲気が広まっていないとは言えない。実際9月にハリキウ州からリマンを失って以来、ロシア軍の攻勢は途絶え防戦一方。10月のクリミア大橋爆破事件後、ウクライナ全土へもミサイル・ドローン攻撃をやったがそれも長続きせず、部分動員を掛けたもののトラブル続き。ボルゴジンやカデイロフのような民間人からまで批判される始末。国民の中にプーチンの手腕に疑問が沸いても不思議ではない。ドウーギンはそれを婉曲的に表現したまでだ。但しそれを古代の風習に例えるところが、いかにもロシア的オカルテイックなところだ。
 この話には未だ続きがあって、王は殺されたのち食べられたりする。フレーザーはあるオランダ人船員の話として、18世紀末のパプアニューギニアでは、年を取って霊力が衰えた酋長が、殺されて食べられたという話を紹介している。これは前の酋長が持っていた霊力を、次に伝える儀式と解釈している。
 日本に「雨の王」というものがいたかどうか分からない。王殺しには別に仮王というのもある。これは特定の家系の誰か又は旅人を選んで、その年齢に達すると仮の王(神)とし、一年後に生贄として殺すというものである。柳田邦夫は信州の「御頭蔡」という鹿の頭を使う祭りを例に、どうもいたという説らしいが、定説にはなっていない*。只内閣支持率が下がると総理降ろしの声が高まる自民党政局などを見ると、やっぱり現代日本にも「雨の王」はいるようだ。
*筆者個人としては、神皇二代綏靖から9代までの欠史8代がそれに相当するのではないか、と考えている。
(22/11/14)

 ヘルソン市上流のドニプロ河に架かるアントノフスキー橋の爆破前の映像。ロシア軍撤退直前にロシア軍によって橋桁が爆破された。この橋、見る通り構造は非常にシンプルである。破壊されたのが桁だけで、橋脚と支承が残っておれば、応急復旧はそれほど難しくはない。オデッサの造船所で鋼製桁を造り、クレーン船で運んで仮設するような方法が考えられる。
(22/11/13)

 ヘルソン市が事実上陥落した様だ。これが世界の株価にどう影響するのか未だ分からないが、プーチン株・・・例えば石油・天然ガス・武器関連株・・・に何らかの影響を与えるのは避けられない。トランプは不満だろうが、バイデンは大喜びだろう。 しかしほんの数日前にはロシアは撤退は止むを得ないとやや余裕の構えを見せていたが、たちまちのうちに陥落だ。只未だ先遣隊が入ったばかりの状態なので、この先不安定な状態は続く。
 仮にヘルソンを奪還出来ても前にはドニプロ河という自然の障壁があるので、正面からの突破は無理である。ヘルソン州での今後の展開としては、地上からの攻撃は引き続きノバカホフカダムへの圧力を加えてロシア軍をひきつけ、(1)東方でサボロージェ方面から突破を諮る。(2)ヘルソンからドニプロ河河口を迂回して、ヘルソン東部のロシア軍背面に上陸作戦を行う、の2案が考えられる。
 戦略的には(2)の方が魅力的で、成功すればヘルソン州東部のロシア軍を一掃できる。しかしこれには十分な海軍力と、上陸装備が必要である。今のウクライナにそれを期待するには無理がある。夜間に乗じて少人数のコマンド部隊を送り込む位なら可能かもしれない。それでも東部にいるパルチザン部隊と協働すれば、ロシア軍の背面を脅かす効果はある。やってみますかあ?
 なお未だ予断を許さないのがアメリカ中間選挙。南部ジョージア他の結果次第では、民主党の逆転勝利の芽も出てきた。そうなれば、プーチンは踏んだり蹴ったりだ。プリゴジンの云うことなど全く信用出来ない、何処を向いても役立たずだらけだ!
(22/11/12)
 

 ヘルソン地区防衛に関するロシア軍幹部の会議が国営テレビで公開されました(11/10 BS-TBS「報道1930」)。会議はまずショイグが「ヘルソンから撤退すべきか」と総司令官のスロビキンに問うと、待ってましたとばかり「そうすべき」と返答。ショイグも納得。かくてヘルソン撤退が決定された。まるっきり下手な芝居バリの出来レース。更にこれに加え、強硬派で知られるワグネルのプロゴジンやチェチェンのカデイロフは揃ってスロビキンに賛意を表明。これまた見え見えの出来レース。
 筆者の勘では、この会議の背後にプーチンがいて、両者はその意向を代弁しただけではないか。そしてこの会談の前にクレムリン内で権力闘争があり、それにある程度決着がついたので、会談を公開しただけではないか、と思われる。
 ではどういう権力闘争か?無論ショイグ・ゲラシモフら軍部vsブリゴジンら民間人の抗争で、それはプーチン以後を見据えてのことかもしれない。プーチンももう70を越えた。老化の早いロシア人で70才過ぎはしんどい。果たして次の24年大統領選まで健康が維持できるか?本人だけでなく、周囲だって無関心ではいられない。プーチンにもしものことがあった時、未だこの戦争が続いていたらどうするのか?ヘルソン撤退はその時の予行演習か?
(2211/11)


 現在ウクライナ、ルハンスク州で、ロシア傭兵会社ワグネルが敷設している「竜の歯」と呼ばれる対戦車障害物。パッと見て、こんなもの何の役に立つのだ、というのが筆者の見解。戦車の突進は防げるが、間隔が結構あるから歩兵の浸透は防げない。むしろ歩兵にとって有効な遮蔽物になるからウクライナ側にとって有難い。
(22/11/10)

 20年程前、仕事もないので家で朝からテレビを見ていると、アメリカABC放送の国際ニュースで、クレムリンでのプーチンの朝の会議に、ロシア正教の大主教が出席しているので驚いたことがある。つまりプーチン政権下では、政治と宗教の垣根がなくなってしまったのである。現代において、政治とは究極のプラグマテイズムである。それの正反対である宗教と一体化するということはどういうことか?古代・中世社会への回帰ということに他ならない。 
 報道によるとロシア正教のキリル大主教がこのほど、プーチンを首席エクソシストに任命したらしい。首席というからには、他にも何人かエクソシストがいるのかもしれない。キリルによると、今のウクライナはサターンに支配されている。そのサターンと戦っているのがプーチンというわけだ。この論理、今のアメリカトランプ支持者が主張する「陰謀論」とそっくりだ。今のアメリカは「闇の政府Deep States」に乗っ取られている。その代表がクリントンであり、ペロシだ。「闇の政府」と戦っているのがトランプだ。或いは日本をサタンの国、それと戦う分鮮明をキリストとする統一教会にも同じような論理が見られる。
 普通の人間は、エクソシストなんてハリウッド映画じゃあるまいし、夢でも見ているんじゃないかと思うが、本人たちは至って真面目なのである。そもそもキリスト教に「サターンと、それと戦うイエス」なんて黙示禄的概念が生まれたのは、新約の時代。旧約聖書にはサターンなど出てこないから、新約時代に創作されたと思ったほうが良い。
 サターンとキリストとの戦いが強調されるようになったのは、イスラム勢力に押されるようになった7世紀以降のことだ。それまでにもあったが、この時のサターンはキリスト教を弾圧したローマのこと。その後宗教改革後の16~17世紀に、主にプロテスタント諸国で復活した。これが魔女裁判の横行や宗教戦争を呼んだ。この時期は丁度全地球的寒冷化の真っ只中、疫病・飢饉が頻発する。人々はこれをサターンと魔女の仕業と考えたのだ。17世紀以降、これは沈静化するが、それは地球が温暖化したというより、産業革命を始めとする技術革新で、寒冷気候を克服できるようになったからである。その後技術は爆発的に進歩し、サターンは一旦地に潜るが21世紀の今にまたまた復活。
 30年前ソ連が崩壊したとき、世界中はこれで共産主義の脅威はなくなった、民主主義の勝利だと有頂天になり、ロシア・東欧に新自由主義流資本主義を売り込んだ。その結果は経済的混乱だ。しかし筆者は世界最大の資源大国である、必ず復活する。そのためにはロシア人を理解する必要がある。これまで世界は、ロシア人をロシア人ではなくソ連人としてみていたのである。
 ある民族を理解しようと思えば、その宗教を理解するのが一番である。ところが日本にはロシア正教に関する適当な参考書がなかった。たまたま、本屋でロシア正教に関するエピソードを幾つかまとめた本を見つけたのでそれを買って読んで見た。そして感じたのは、ロシア人の精神の基盤を作るものは、まず耐える、待つ、信じるである。それを統合するのが心霊主義つまりスピリチュアリズムである。
 スピリチュアリズムはカトリック世界では公式には否定されているが、プロテスタントの一部のセクトではこれを容認する。正教社会でも本来は否定されているはずである。しかし人間はしばしば、非合理なもの人智を越えた力を信じたがるものである。ロシア人スピリチュアリズムの根底には精霊信仰を含めた大地信仰がある。これはあらゆる民族に共通でロシア人特有のものではない。
 そういう中で10世紀末、いきなりキリスト教という強烈な選民宗教を受け入れた。これが元々の大地信仰と結びついて、「聖なるロシア」「偉大なロシア」という、ロシア人の選民意識を形成した。これが時間とともに深化し、ロシア人の集合無意識となった。それを宗教的に体現したのがロシア正教である。
 キリスト教教団には多くの流派(セクト)があるが、その中でもロシア正教は民族性が強く、神秘主義的なことが特徴である。帝政時代は皇帝と一体化してロシアの領土拡張政策に貢献してきた。共産党時代はさすがに大人しくしていたが、ソ連崩壊とともに次第に力を回復し、プーチン時代には政策も左右するまでになった。又ロシア正教の修行者の中には、真冬に真っ裸で街を歩くのがいたらしい。日本じゃわいせつ物陳列罪で即逮捕だが、ロシアでは返って尊敬されていた。これなどは一般人が出来ないことをするのは神の思し召しだ、という信仰があるからである。プーチンも真冬のモスクワ川で沐浴をやって人を驚かせるが、これなどロシア正教に伝わるスピリチュアリズムの影響である。
 この得体のしれないロシア正教スピリチュアリズムが、今回のウクライナ侵攻の背景にあることを、図らずもキリル大主教が示した。なおこれまで出てきたエクソシストというのは、かのラスプーチン始めみんなインチキ手品師である。
(22/10/29)

 ヘルソン攻防戦が大詰めを迎えつつあります。時期は秋から冬。筆者は以前から、ロシア軍はヘルソン市を第二のスターリングラードにしようとしているのではないか、と考えている。第二次大戦独ソ戦、スターリングラードの戦いこそが、ソ連軍大反撃のきっかけを作った戦い。
 1942年夏季攻勢でヴォルガ河方面奪取を任務としたドイツ第6軍は、同8月にはスターリングラードの占領を宣言した。しかしソ連軍の反撃はこれからで、チュイコフ将軍のソ連第62軍は市内の瓦礫やビルの地下に立てこもり、ドイツ軍の側面や背後から襲撃するという都市ゲリラ戦を展開した。11月にはスターリングラードはほぼ包囲されていた。これにより、ドイツ第6軍はスターリングラード完全制圧どころか、他方面への展開も出来ず、スターリングラードに孤立することになった。その間ソ連軍は周辺に兵力を集中し、翌1943年1月19日包囲を完了し、1月31日、ドイツ第6軍は降伏することになる。
 報道では現在ロシア軍は民間人の退避を進め、動員兵による防備を固めているという。スターリングラードの戦訓を踏まえれば、早期のヘルソン市内への突入は、凄惨な市街戦に巻き込まれ、ウクライナ側にも大きな損害が発生する危険がある。筆者なら,ヘルソン市を遠巻きに包囲し、補給路を遮断して持久戦に持ち込む。補給が途絶えれば何が起こるだろうか?まず備蓄食料が少なくなる。そうなれば、それを巡っての争いが起こる。軍規・軍律は崩壊し、互いに殺しあうか、一部は投降する。そして内部から崩壊する。それでもヘルソン市の占領は暫く待ったほうが良い。なぜならヘルソンが完全にウクライナに奪還されれば、怒り狂ったプーチンが核攻撃をやる恐れがあるからだ。
 さてここで核攻撃の問題だが、最近話題になっているのが「汚い爆弾Dirty Bomb」である。核爆弾とDBは同じ核兵器であるが、似て非なるものである。核爆弾は自発核分裂で発生するエネルギーを破壊力に転換する。一方DBは弾頭に劣化ウランなどの放射性物質を混入したもので核分裂は伴わない。米軍がイラク戦争で使用した劣化ウラン弾も、この一種である。しかしウランは重いので、通常弾頭に比べ貫通力や破壊力は格段に増加する。更に放射性物質が周辺に巻き散らかされるので、二次的な放射線傷害が発生するのは避けられない。
 プーチンが何故核に拘るのか?それは第二次大戦で、日本が無条件降伏したのは、広島・長崎原爆の所為だと信じ込んでいるからだろう。つまり核で脅せば、みんな日本と同じように手を挙げると思い込んだのだ*。これはブッシュがイラクに対し、独裁者を倒せば、日本と同じように民主化すると勘違いしたのとよく似ている。
*実際に日本がポツダム宣言受諾に直接動いたのは、ソ連が日ソ不可侵条約を破って満州、北方領土に侵攻したからである。
((22/10/28)

 昨日ロシア軍が爆破準備を始めたというヘルソン上流のノバカホフカダム。日本人はダムというと直ぐに黒四のような巨大ダムを連想し、これを破壊すると大惨事という発想になるが、そんなことはない。ロシアではそんな高いダムは作れない。このダムもダム高はせいぜい10数m。日本の基準なら「堰」に毛が生えたようなものだ。但し河床勾配が小さいことと流域が広いから貯水量は多い。しかしそれが惨事になるわけではない。
 堤体が破壊されると、下流の河川内水位は上昇するが、ヘルソン市街は段丘上にあるから、浸水被害はない。上流の水位は下がるが、これは同時に河床幅が小さくなることを意味するので、ウクライナ軍にとって、渡河作戦に有利になる。
 それどころか、これに伴って本流水位が低下するので、クリミア水路流量が減少する。結果としてロシア側への被害のほうが大きい。
(22/10/21)

 15日には、暫く大規模攻撃は行わないといっていた舌の根も乾かない内の、大規模空爆。但し攻撃は最初はミサイルを使ったものの、その後はイラン製ドローン。いよいよ武器が足らなくなってきた証拠だ。又ベラルーシのルカシェンコを脅してロシアとの合同軍を作らせ、ウクライナへの圧力を加えようとする。 これプーチンの戦略だろうか?
 ウクライナ全土へのドローン攻撃は新任のスロビキンの発案。ベラルーシへの派兵はロシア強硬派、中でもFSBの要求に沿ったものではないか、と考えられる。その素は、東部および南部戦線、中でもヘルソン戦線の危機的状態にある。州都ヘルソンへは北及び、北東からウクライナ軍が迫り、ヘルソンの運命は風前の灯。ヘルソン州請願を奪取され、更にノーバカホフカを奪われると、クリミアへの水の供給源が断たれる*。そうなるとクリミアの運命は風前の灯。
 これを防ぐためには第二戦線を作り、そこにウクライナ軍を誘導して挽回のための時間稼ぎが必要。それがドローンによる全土爆撃であり、ベラルーシへの派兵である。但し、ベラルーシ軍はたった5万人しかなく、しかもこれまで戦争をしたことがない。ロシア国内の新規徴集兵と同様、戦力としては全く役にたたない。こんなのと共同戦線を張っても邪魔になるだけだ。
 元々ベラルーシ人は自分をヨーロパ人と思っているから、プーチンが何と言おうと、ロシア人と一緒にはされたくない。ただでさえ強い反ロ、反ルカシェンコ感情に火をつけるだけだ。NATO としては、ベラルーシとエストニア、ポーランド国境に軍を終結してベラルーシに圧力を加えれば、ルカシェンコは身動きが出来なくなる。
 ロシアは既にまともな兵員不足に陥り、ワグネルやチェチェン人、シリア人傭兵などに加え、囚人部隊までつくり、更にベラルーシの支援まで頼っている。武器にしても今や反攻の主兵器はイラン製だ。それに対し、ウクライナは最新兵器は欧米供与に頼るが、兵士は自前だ。日本の衆院議員鈴木宗男は自身のブログで、ウクライナに対し、武器を作れない国は降伏すべきだと主張するが、ロシアは武器どころか兵士すら自前で賄えない。どちらが降伏すべきか、鈴木の論法で云えば明らかである。
*筆者はクリミア水路の遮断の重要性を主張してきた。最近になってやっと一部の評論家・専門家がそれに気付いて、発言するようになった。遅すぎる。
(22/10/18)

 9.14、カザフスタンの首都アスタナで行われたCICA会議後の記者会見で、プーチンがウクライナに対し「当面攻撃は行わない」と回答。これは当初の目的・・・クリミア大橋破壊に対する報復と称する、ウクライナのインフラ破壊、それに伴うウクライナ国民の戦意喪失・・・が達成出来たというより、最早使えるミサイルの在庫がなくなった、というのが本音だろう。攻撃をやりたくても出来なくなったのだ。
 一方ウクライナは戦意喪失どころか、ますます戦意は高揚しヘルソンへの圧力を強めている。既にヘルソンはハイマースや長距離砲の射程に入っているので、これで補給路や物資集積地、前線指揮所などを砲撃すれば、ヘルソンのロシア軍は孤立する。親ロ派ヘルソン市長は市民の後方への避難を申請している。つまりクリミア大橋偽旗作戦も、その報復と称する攻撃も失敗した、ということだ。
 ロシア軍は後退しているが、その分戦線が狭くなるので抵抗力は大きくなり、ウクライナ軍の前進は遅くなるだろう、という見方がある。しかしこれは統制が取れ、士気が高い軍隊の場合で、今のロシア軍に期待するのは甘すぎる。何処かで突破孔ができれば、一気に崩壊するだろう。進撃速度が遅くなっているのは、秋の泥濘化の影響も考えられる。そうであれば、筆者が進めるジオテキスタイルが有効な補助手段になる。
 それに対しプーチンは死守命令を出すかもしれないが、宣戦布告もない特別軍事作戦で、一般兵にこんな命令を出せるわけがない。もし出せば軍の反乱を招くだけだ。結局最期まで抵抗するのはワグネル傭兵とか、チェチェン、シリアからの傭兵だけになる。
 なお上記の記者会見では、プーチンに対し「今回の戦争に後悔していないか」という質問があった。これに対し、プーチンは「後悔はしていないが、不愉快な状況だ」と回答。それはともかく、外国の記者というのは、随分と相手が応えにくい質問を直球でぶつけるものだと感心。それに引き換え日本の記者は、アベー菅にすっかり背骨を抜かれ、相手が喜ぶような忖度質問しかしない。こういう内向き後ろ向き態度が周囲に伝染し、政治家の甘えを招き、今のような日本売り円安状態を産んだのだ。
(22/10/15)

 クリミア大橋で破壊事件が起こって、二日目にウクライナ全土への組織的ミサイル・ドローン攻撃。次いで4日目にはプーチンはこれをテロと断定。ウクライナへのミサイル攻撃はその報復と明言。またロシアFSBは犯行に関わる12人を、内8人を拘束。少し上手くできすぎている。
 事件発生当初、1)ウクライナ犯行説、2)ロシア陰謀説(偽旗作戦)の二通りの見方があったが、最近では1)が優勢になっている。その理由としてあげられるのが、クリミア大橋を破壊してもロシアにとって戦略上のメリットがない、というもの。しかしメリットがあろうがなかろうが、そのための犠牲が幾ら大きかろうが、やるといえばやるのがロシア人なのだ。
 筆者は当初どちらか迷っていたが、今は2)ロシア(FSB)陰謀説を採る。プーチンも知らされなかった可能性もある。
1、報道によると事件の三日前に、クリミアでパトリシェフ他情報機関や国家安全保障会議メンバーによる秘密会議がもたれた。この内容は公開されていない。
2、部分動員令発令後の9月末、ウクライナ戦線を統括する総司令官に、空軍・宇宙軍総司令官だったスロビキンが任命された。スロビキンにとって、任命後初仕事としてなにかやらねばならない。それは今後の作戦を頼りない地上軍に任せるのではなく、自分の勢力下にある航空戦力を用いる反攻である。それには何かきっかけが必要だ。
3、ロシアが偽旗作戦でクリミア大橋を爆破するメリットは、これをウクライナによるテロ或いは侵略と宣伝し、日和見を決め込むロシア国民を戦争派に引き込むことができる。また、報復として無制限航空攻撃を正当化できる。
4、一方ウクライナにとって、橋を破壊したところで戦略的メリットはない。むしろロシアによるクリミア防衛強化を促進させることになるからデメリットのほうが大きい。戦略的勝利を考えるなら、相手を警戒させるより油断させるべきだ。
5、また、橋の破壊も中途半端だ。4車線の内片側2車線しか破壊していない。これでは流通に大きな影響を与えられない。事実、翌日には片側で通行が再開されている。また、橋桁も単純床版橋だ。こんなものの復旧は簡単で、仮復旧なら日本のゼネコンに任せば1,2週間でやってしまう。
6、(動機)ロシア当局は爆破直前に事故現場に入った大型トラックに積んだ爆薬によるものと発表した。それなら自爆テロだ。一方FSBが拘束した協力者はロシア人、ウクライナ人、アルメニア人。みんなキリスト教徒だ。キリスト教徒に自爆は考えにくい。
 自爆テロというものは犯人側がよっぽど追い込まれてからの手段である。戦況はウクライナ優勢に進んでおり、ウクライナが追い込まれているという状態ではない。また、プーチン誕生日に合わせた侮辱・挑発という見方もあるが、その程度では自爆テロの動機rとしては弱すぎる。
 一方、ロシア側には、このところの敗戦続きで国民のプーチン批判が進む。これを引き締めるために何かが必要だ、そこでウクライナによるテロ事件を起こすという動機はある。但しそれに自国民を自爆を使うことはあり得ない。この場合はトラック爆弾ではなく、別の方法を使うはずだ。
7、(実行)トラック爆弾による爆発なら、これは「明かり爆発」である。この場合、爆破エネルギーの殆どは空中に発散する。構造物を破壊しようと思えば、爆薬を構造物に密着させる。中でも最も効果的なのは、橋梁の構造的弱点である橋桁と橋脚との接合部である。これぐらいは誰でも思いつく。プロの爆破犯ならそれを知らないはずがない。
 口絵の解説で述べたように、橋脚の一部を破壊しただけで、今回の事件は可能である。トラック爆発説は理論的にあり得ず、これを主因としたプーチン・・・つまりFSB他強硬派・・・の発表は嘘である。つまりプーチンは自ら犯人はロシアであると云っているようなものだ。
 ということで、クリミア大橋破壊事件は次のようにまとめられる。
1、ロシア、特に軍部やFSB内の強硬派には様々なメリットが考えられる。中でも新任のスロビキンにとって、報復攻撃に航空戦力を多用するメリットをプーチンに売りこめるし、空軍予算を獲得できるメリットがある。
2、それに比べ、橋を爆破してもウクライナ側には何のメリットもない。
3、ロシアが発表したトラック爆破による橋梁破壊というのは、理論的にはあり得ない。つまりロシアによる自作自演(偽旗作戦)である。
(22/10/14) 


 クリミア橋爆破事件について、様々な意見が飛び交っていますが、みんな橋梁の構造が分かっていない。ここでは一つ構造力学的にこの事件のメカニズムを考えてみよう。
1、この破壊に関係する構造物は、中央及び左右の3基の橋脚と2基の橋桁である。
2、形態から見て構造はラーメン構造ではなく、単純桁の連続である。この場合、支点結合はピン又はローラーの連続となる。
3、どちらか一つ(例えば、写真で左側の橋脚)が爆破され、桁が落下する。但し反対側は中央橋脚にピンで固定されているので落下はしない。
4、桁の落下により重心が移動する。中央橋脚はピン結合だから橋軸方向に移動できないので、橋脚は橋桁に引きずられる形で傾く。すると、反対側の橋桁も移動するが反対側はローラーだから、そのまま移動して落橋する。
 つまり、橋梁の弱点である支点を一か所破壊するだけで、他の部分に損害を与えることは可能である。なおこのような支点の爆破は、路上を走行するトラック爆弾では起こり得ません。従って犯行をウクライナ当局の指示による、トラック爆弾というロシア当局の発表は嘘です。爆破前の謎のボートといい、報復爆撃のタイミングといい、ロシアFSBによる陰謀説が力を持ってきます。
(22/10/12)

 クリミア大橋爆破事件とか、国内各層からの軍部批判とか、このところプーチンは頭が痛いことだらけ。中でもウクライナ戦線は一向に回復の兆しが見えない。東部戦線では今月初めに要衝リマンを奪われ、更にウクライナ軍はルガンスク州奪回の動きを見せている。また、南部戦線では、ウクライナ軍はヘルソン市へ北西及び北東方面から圧力を加えている。
 さてこの後どうすべきか? 筆者ならヘルソン市へ北西から圧力を加えてヘルソン方面ロシア軍を牽制し、北東方面から進出してノバカホフカダムを奪取する。その上でダムの水門を開けてドニプロ河を放流する。そうすればヘルソンは水で囲まれ、南岸からの補給が途絶える。そして重要なことは、続いてノバカホフカダムからクリミア半島に給水する水路の水門を抑える。これを抑えられればクリミアへの水の補給は途絶える。また、今回の爆破事件で、クリミア大橋も安全ではないことが分かった。クリミア大橋が再度攻撃を受ければ、北と東を封鎖され、クリミアは孤立することになる。当然ロシア側も分かっているから、相当の兵力を集中して防衛を固めているに違いない。クリミア解放は簡単にはいかない。第二次大戦独ソ戦でも、マンシュタインは一度では攻め落とせなかった。
 なお今ウクライナ軍が主に相手にしているのは、士気が低く統制も取れていないロシア軍である。ウクライナ軍の攻勢が続くとロシア軍は次第に衰退していく。その後残るのは親ロ派民兵である。彼らにとって今のウクライナは父祖の土地である。これを奪われることは、自分の存在価値を失う。従って死に物狂いの抵抗を続けるだろう。それはロシア軍によって土地を追われたウクライナ人にとっても同じである。簡単に退くわけにはいかない。本当の抵抗はロシア軍がいなくなってからだ。
 それにしても、この期に及んで未だロシアの肩を持つ日本人がいる。それは鈴木宗男という、日本維新の会所属の国会議員だ。
(22/10/10)




 クリミア大橋爆破事件。その後新しく、事故直後現場の下をボートらしきものが通ったという情報が入りました(10/10 BS-TBS「報道1930」)。これについて水上ドローンという説もありますが、橋脚に大きな損傷を与えるには相当量の爆薬(少なくとも数10~100数10㎏)が必要ということ、爆破点が橋桁の固定部付近と見られることから、この可能性はないと考えられる。
 道路橋橋脚の高さは海面から数mしかないので、ボートで近づいて簡単な梯子を懸ければ、爆薬の装着は難しくはない。何故近づけたかというと、ロシア軍の警備が杜撰だったからだ。多分警備兵はウオッカ飲んで、酔っぱらって寝ていたのだろう。ロシア軍ならあり得る話だ。
(22/10/11)

 昨日起こったクリミア大橋破壊現場。大きな被害は、下の道路橋の落橋と、上の鉄道橋上の列車火災である。後者は細かいメカニズムはよくわからないが、道路橋上の爆発による二次被害と考えられる。
 道路橋破壊部は左ー中央ー右の三か所に橋脚があり、これらは無傷である。橋げたは中央橋脚を支点に逆V字状に折れ曲がっている。又、道路は上下線が一体ではなく、海側だけが落下し、接合部に損傷は見当たらない。更に落下した道路の路面にも損傷した後が見られない。これらから右、左橋脚の支持シューに爆薬を仕掛け、同時に爆発させた。その結果バランスを失った橋桁が自重で落下したものと考えられる。
 ロシア当局はトラック爆弾と云うがそれだけで橋げたが同時に2枚も落ちない。もしそうだとしたらこの橋、狸が作った泥の橋か?尤も中国援助で中国企業が作った橋だ。
(22/10/09) 

 大阪も昨日からすっかり涼しくなって最早晩秋の気配。ウクライナはもっと寒いでしょう。ウクライナは今は秋の降雨が始まり、泥濘期と呼ばれる季節に近づいている。。泥濘期に入ると地面が泥濘化し、戦車等の軍用車両の通行が困難になり、迅速な作戦行動がとれず、ウクライナ軍の進撃が遅延するだろう、というのが大方の見方である。しかし80年前の第二次大戦ではあるまいし、現代では幹線道路は舗装され、高速道路も発達している。問題になるのはこれから外れた地域での短距離の移動だろう。
 メデイアに出てくる所謂軍事専門家と云われる評論家達は、車両は車輪や履帯を泥にすくわれ身動きが取れなくなる、と悲観的な見方だけだが、技術者はそれでは駄目だ。問題解決の方法を考えなくてはならない。
 問題は泥濘化地盤上に如何に早く車両走行路や歩兵の進撃路を築造するか、その方法はなにか、である。これには大きくは次の二つが考えられる。
   1)土質改良 
   2)人工地盤
1)土質改良;よく使われるのは生石灰を巻きだして地盤と混合し、改良土に仕上げる方法である。簡単だが、専用のスタビライザーなどの作業機器が必要。又ウクライナの黒土は有機質土だから改良効果が劣る。戦車のような重量物の走行に耐えられるかどうかが問題。
 これに対しセメントやコンクリートを用いる方法もある。早強セメントを使えば硬化時間を短縮出来、高い強度が得られる。RCD工法を使うのも一法。但し専用プラントが必要とか、改良効果が出るまで幾ら早くても数日程度は必要、といった時間的な短所がある。つまり施工して直ぐに使えない。
2)人工地盤;人工材料を使って、簡易的道路を築造する方法である。これにも色々あるが、代表的なものとして2例を挙げる。
   (1)敷網工法
   (2)EPS工法
(1)敷網工法;地面にネットやシートを張ってその上を車両通行路とするものである。通常は上に土を盛るが急いでいる場合は省略してもよい。これにはネット状のポリマーグリッドと、シート上のジオテキスタイルの2種類がある。どれも人間(戦場では歩兵や工兵)が手で広げていくので特別な技術はいらない。
(2)EPS工法;発泡スチロールのブロックを単純に並べていくだけでこれも特別な技術はいらない。軽いから人力で簡単に運べる。既に寒冷地のカナダやノルウェーで施工実績は多いから冬季にも使える。但し石油化学製品だから今は高価だということと、ミサイル攻撃を受けると延焼する恐れがある。
 ざっと以上だが、現場が戦場という特殊な環境だということを考えると、1)軽量で人力で運搬できる、2)特別な設備が不要、3)施工後直ぐに使える、3)加工も簡単で現場の変化への適応性が高い、といった点から2)-(1)敷網工法が最適と考える。無論、他にも色々工法・材料はあるので、実際に現場で使って試してみるのが良いだろう。
 ロシア軍の最大の弱点は補給・兵站である。これからの泥濘期・冬季はそれが最も弱る時である。ウクライナはこれを利用して、長距離砲を利用してロシア軍補給路にダメージを与えると同時に、上記の土木技術を多用して、従来なら通れない場所に補給路・進撃路を拡大し、次の攻撃に備える。
(22/10/06)

 昨日10.01にウクライナがドネツク州東部のリマン奪回を発表。リマンの確保は先月のイジウム奪回に並ぶ戦略的勝利。リマンからドン河沿いに南東に下ってルビヤンスクを奪回すれば、リマンールビヤンスクの線でルハンスク州を南北に分断できる。又南に下って、ドネツクからマリオポリを攻略する。そうすれば、西のサボロージェ、ヘルソン両州はウクライナ南部で孤立する。どちらを優先するか、或いは同時並行で進めるかは、ウクライナの現有兵力如何である。新規徴兵が無計画に前線に送り込まれ、補給・兵站・部隊編成が混乱している今がチャンスといえる。
 又ウクライナはNATO加盟を正式申請し、NATO事務局は迅速な審査を進めると回答。もしウクライナの加盟が今月中にも認められれば、プーチンは打つ手・・・無論核攻撃のこと・・・を失う。何故ならNATOは加盟国が攻撃を受けた場合、一致して反撃することになっている。仮にロシアがウクライナに対し戦術核を使用すれば、報復としてNATO 側からのロシア核攻撃が可能になる。
 ウクライナは既に秋である。ロシアは冬将軍を利用して西側に圧力を加え、分断を諮るという戦略とされる。しかし冬将軍はウクライナに展開するロシア軍にも襲いかかる。ウクライナ軍は既に準備を整えているだろうが、ロシア軍にそれを期待することはできない。
 元々ロシア軍は・・・帝政・ソ連以来・・・補給・兵站に弱い。しかも前線では軍規・士気が低い。そんなところにろくに訓練も受けていない新兵だ。前線の統制は混乱する一方。そこへ冬将軍がやってくればどうなるのか。そもそも後方からの物資が無事前線に届くとは限らない。補給物資の半分以上は途中でネコババされて、軍幹部の利権に化けているだろう。仮に少量の物資が届いても、指揮統制の取れていない集団で始まるのは物資の取り合いだ。ウクライナの冬はウクライナで餓死したロシア兵の墓場になるだろう。これというのもプーチンの浅はかな思いつきの所為。ショイグやゲラシモフのようなボンクラには、手が付けられない。
(22/10/02)

 先月の26日にプーチンとベラルーシのルカシェンコとの会談があって、その一部が昨晩のBS-TBS「報道1930」で取り上げられました。そこではプーチンは何か力なくうつむき加減。一方ルカシェンコはプーチンに対し「ロシアは2500万人の動員能力があるのだから、3万人や5万人逃げ出しても大丈夫だろう」とショイグの無責任なホラを逆手に取って逆襲。プーチンもなめられたものだ。
 多分この会談の前にプーチンはルカシェンコに援軍を要請したのではあるまいか。その背景には部分動員令と同時に始まったロシア若者の国外脱出があり、それにプーチンはいたく傷ついたか危機感を感じたのだろう。 それでルカシェンコにそれとなく援軍を頼んだが結果はご覧のとおり。
 それだけではない。カザフスタンのトカエフは今回のウクライナ東部4州住民投票を認めない、と宣言。実はカザフスタンは第一次大戦後、ロシア帝国から独立し、独自政権を樹立した。しかし1930年代、スターリンはコミンテルンから工作員を送り込み、今回と同じような手口・・・つまり作られた住民投票・・・で、カザフスタンを併合してしまった。1939年バルト三国の併合も同じ手口である。
 このような歴史があるから、ロシア周辺諸国は本能的にロシアを信用していない。それに気が付いていないのが、ロシア国内ではプーチンとその側近、一般国民内の国家主義者、民族主義者、なかでもロシア正教会である。海外でもロシア宥和派にその例が見られる。例えばイタリアの新政権、フランスの極右、アメリカのトランプ。日本では自民アベ派と鈴木宗男だ。
(22/10/01)

 ロシアの予備役部分動員令についてテレビなどの専門家の解説は、概ね1)訓練に数カ月を要するので、予備役投入は数か月後になる、2)熟練した志願兵に比べ、経験に劣るので、戦力的には大して効果はない、というような評価が一般的です。常識的には確かにその通りなのだが、常識を無視するのがロシア人の常識。プーチンがその例外であるはずがない。
 この措置に対するウクライナ側の評価は「ロシアは既に戦力的に崩壊している。ロシアが優れているのは数だけだ」。実は過去の戦例を見るとその通りなのである。ロシア軍は元々弱い軍隊である。弱い敵には強いが、強い敵には弱い。弱い敵とは、例えば中央アジアの遊牧民とか、ウクライナのコザックとか、武器も旧式で、統制が取れない部族集団とか、国家が腐敗して士気も下がりやるきなしの末期のオスマントルコ軍のような敵には強い。しかし武器も近代化され、士気も高く統制がとれた敵には弱い。その例が日露戦争だ。これを補うのが、犠牲を顧みない突撃主義だ。
 第二次大戦独ソ戦。41年開戦当初、ドイツ側の奇襲に圧倒されソ連軍は退却に次ぐ退却。42年冬将軍の援護もあって、ソ連軍は反撃に転じるが、その時スターリンが取った手は、後方から送られてきた補充兵をろくな訓練もせずに次から次へと投入することだった。つまり数で敵を圧倒しようというわけだ。ろくな訓練を受けていないから、兵士は事実上ドイツ軍の標的になるだけだ。その結果、戦後の集計ではドイツ軍の戦死傷者440~530万人に対し、ソ連軍1100万~1200万人以上と、倍以上の損害を受けている。これだけ見るとどちらが勝ったのか分からない。
 これを見ると、当時のスターリンが人間の生命をどう考えていたかがよくわかる。そしてそれはレーニン型共産主義やロシア人の深層心理に深く関係する。むしろ西欧型合理主義を否定する宗教的行為とさえ云える。プーチンがこのロシア的メンタリテイと無関係とはいえない。もしそうなら、今後ウクライナ東南部では、途方もないロシア人生命の浪費が行われるだろう。彼らは祖国のために犠牲となり、その魂は浄められ永遠の命を与えられるであろう、というプロパガンダが、プーチンの愚行を隠すために流される。
(22/09/24)

 9.21プーチン演説。ポイントは1)、部分動員令の発令、2)、東部及び南部4州の住民投票の実施、3)、今後の戦局によっては核使用を否定しなかったこと。
1)、について;プーチンの「部分動員令」発表に続いて、ショイグ国防相は30万人の予備役動員を発表した。但し対象は30才以上のプロフェッソナルな技量を持つ予備役登録員だけで、勤務は後方支援に限るとした。これが嘘なのは誰でも分かる。ロシア人なら誰でも、政府の発表が二枚舌なのは知っている。だから若者中心に出国申請が増えているのだ。
 部分だろうが総だろうが、動員令が出るということは、前線での戦闘員が不足していることに他ならない。だから上手いことを言って人数を集め、気が付いたら最前線ということになる。しかしそんなことで投入した兵士が役に立つだろうか?
(1))30才以上の訓練を受けた予備役兵というが、彼らが受けた訓練はレベルでいえば30年前の旧いモデル。現在ウクライナで実施されている情報と精密爆撃を中心とするハイテク戦場では役に立たない。第一30万人もの予備役兵に渡すほどの最新式兵器をロシアは持っていない。兵器も旧式で訓練経験も不足な兵隊を前線に持って行っても、射的場の鳩のようなもの。棺桶と十字架の数が増えるだけだ。
(2)03~40代の訓練された人材といえば、企業でもベテラン。一番の稼ぎ手だ。それを30万人も兵隊にとられれば企業もダメージは大きい。ロシアのGDP低下は避けられない。
(3) ズバリ云えばso slowliyso smollだ。やるならもっと早く計画的にやるべきだった。それに対し今回の決定は、泥縄式小出し後出し。90年代日本、橋本内閣の円高対策のようなものだ。あんなことだったから、2000年代になってからの円高不況を招いたのだ。
 なお国防相のショイグは「ロシアは潜在的には2500万もの動員能力をもっている。今回はほんの一部だ」と豪語した。この男、相変わらず戦力を兵士の数でしか考えられない。発想が19世紀的、日露戦争の亡霊だ。そのアナクロぶりに驚かされる。
2)住民投票で国家の貴族を決めるというのは、何もプーチンが最初ではない。ロシア革命後、レーニンはかつてロシア帝国が吸収した周縁色の独立を認めた。一方レーニンの死後政権を奪取したスターリンはかつてのロシア帝国の復活を企図して、というより周囲の資本主義国家の侵略を恐れて、周辺に軍事的緩衝帯を儲けるため、旧領土の回復に乗り出した。
 といってもいきなり武力を使うのではない。まずボリシャビキの工作員を周縁各国の各層に送り込み、ソビエトを作って世論工作を行う。ソビエト支持者が一定以上に達したとき住民投票を要求して、ソ連邦参加を承認させる。無論国境にはソ連軍が待機して圧力を加える。
 更に住民投票を使った領土拡張法には先輩がいる。それはアメリカである。南北戦争後アメリカは西部開拓に力を入れ、アリゾナ、ニューメキシコなど周辺諸地域に開拓民や白人移民政策を進めた。彼らが一定数に達すると、住民投票による合衆国編入を要求し、先住民や先住のメキシコ人やスペイン系を追い出した。その最たるものが19世紀末のハワイ王国編入である。カリフォルニアへの移民が飽和状態に達すると、アメリカの野心は太平洋に向かい、最初のターゲットがハワイ王国だった。アメリカはハワイに実業家と称する白人を送り込んだ。彼らは一定数に達すると議会開設を要求した。当たり前だが議会多数派は白人が占める。彼らは合衆国への編入を国王に要求した。これに危機を感じた大王カメハメハは周辺諸国に援助を求めた。日本もその一つだった。日本政府は大王の要請を受け入れ、軍艦一隻を派遣した。その艦長が東郷平八郎である。東郷がハワイ沖に達したときには既に遅く、合衆国編入は議会でぎけつされ、大王は日本に亡命することになった。
 だから世界がいくら投票の無効を叫んでも、プーチンは過去の例を挙げて反論し、正当化するだろう。世界はそれに対抗する理論を構築する必要がある。
3)、これらの中で世界的に最も関心が高かったのは、無論3)、核使用の可能性だろう。
 何故プーチンがこの時点でこんな強硬な発言をしたのか?一つは国内強硬派・・・議会内の右派、民族主義者、ロシア正教会など・・・の圧力を交し政権を維持するため。更にメドベージェフはこれに加え、ロシアはあらゆる兵器を使用できる、それには最終兵器も含まれる、と戦略核の使用もちらつかせる。メドはこれまでも過激な発言を売り返しているので、これもそのジャンルに人ると考えられる・。
 さて今プーチンは「ロシアはあらゆる兵器を使用できる権利を有する」と主張するが、権利を持っていても、使用できるかどうかは別問題である。ポイントは中国とインドの出方だ。先日のサマルカンド会議で見られたように、両国とも、今のプーチンの戦争には乗り気ではない。それはカザフスタンやキルギスのような周縁国・・・ザバイカル国家・・・にも伝染する。
 プーチンが核を使用したければ、国内強硬派より中印両国の了解を得なければならないが、両国ともウンというわけがない。もしウンといえば、これを前例にプーチンの核が自国に向かってくるかもしれないからだ。また、了解なしに核を使用すれば両国とも対ロシア関係を見直すことになるだろう。理由は先と同じだ。ロシアの孤立は更に深まる。
 従って今のプーチンは国内強硬派と周縁大国の思惑の板挟みになっているところだ。果たしてこの結果がどうなるか?やっぱりプーチン亡命論が現実味を帯びてくる。  
(22/09/23)

 ウクライナ軍が東部戦線で、イジウム奪回後オシキル川を渡河してルガンスク州に突入。オシキル川とはイジウム東方を南北に流れるドン河の支流。又南部でもヘルソンまで後10㎞という地点まで迫っており、ドニプロ河右岸の解放も真近だ。
 さてこの後どうするか?。「兵は勢いなり」、つまり勢いに乗った兵は止めてはならない。旧ソ連の「作戦術」でも、大火力を集中して突破孔を開き、歩兵を突入させて戦果を拡大し、更にそれを反復し、敵の継戦意欲を粉砕する。ウクライナにとって今がそのチャンスである。
 筆者なら、東部戦線と南部戦線の中間点、つまりドネツ州とサボロージェ州の境界に圧力を加える。すると、ロシア軍は中央突破されるのを恐れて、東部ルハンシクと南部ヘルソンから兵を割いて中央の補強に掛かる。その結果東部南部に隙ができ、更に中央の補強にも手間取るから、三か所の弱点ができる。そこを一気につけば、ロシア軍は分断され、各個撃破が可能だ。目標はマリウポリ。但しウクライナにそれだけの兵力の余裕があればの話だが。一気に打撃を得られなくても、特殊部隊を潜入させ、後方を脅かすだけでも、十分効果はある。
 なお先日の「上海協力機構」サマルカンド会議での、中ロ、印ロ会談の様子では、ロシア少なくともプーチンは核使用をあきらめざるを得なくなった。ロシアは核を使用したくても出来ないのが、今の状況である。。
(22/09/20) 

 中国の習近平には鼻であしらわれ、インドのモデイには説教される。まじかのキルギスとタジキスタンでは国境紛争が始まる。日を合わせたようにウクライナがハリキウ州を奪回し、更に南部戦線はじめ各地で攻勢を強化する。おまけに国内では統一地方選をチャンスとばかりプーチン批判が高まる。
 8月末からの苦戦については「計画したのは参謀本部だ」と、責任を軍部におっ被せる始末。そんなに軍が頼りないなら、ショイグとゲラシモフをクビにすれば良いのにそれもできない。それどころか、カデイロフのようなチェチェン人のゴロツキ傭兵隊長が「軍を俺に任せろ」と、言いたい放題。軍部批判が高まると軍部の反発を招き、思わぬ報復を受けることがある。ヒトラーも1943年スターリングラド陥落以後、軍部との対立が深まり、44年秋のヒトラー暗殺、反ナチクーデター未遂事件を招いた。その後はつるべを落とすようにドイツ軍は敗北を重ねた。
 内外ともに踏んだり蹴ったりのプーチンだが、その極めつけが、最近イギリスのタブロイド紙に載った、某軍事専門家という人物のプーチン亡命説。もうロシア国内に支援勢力がなくなって、居場所がなくなったプーチンが、暗殺や逮捕を恐れて海外に亡命する、そしてその準備が既に始まっている、というもの。そして、その専門家の予測では、亡命先はシリア。
 筆者はプーチン亡命の可能性までは否定しないが、亡命先がシリアというのはどうかと思う。そもそもシリアに行くにはトルコ上空を飛ばなくてはならない。そこで思い起こすのが1973年第一次天安門事件。反毛沢東クーデターに失敗した四人組の一人、林彪は飛行機でソ連へ脱出しようとしたが、モンゴル上空で行方不明。ソ連国境警備軍か、中国軍の対空ミサイルで撃墜されたとされる。ソ連も面倒は引き受けたくなかったのだろう。プーチンも同じ目に合わない保障はない。
 更にシリアはアラブ人の国だ。アラブが負け犬を拾って餌を与えるほど、お人よしとは思えない。利用する価値があるならその間は面倒を見るが、用事がなくなりゃそれで終わりだ。他にあるとすればキューバ、ニカラグア、ベネズエラと云った中南米の反米左派政権国。彼らだって手ぶらのプーチンなど引き受けても意味はない。必ず見返りを要求する。プーチンが亡命を与儀されるのだから、ロシアが見返りを出すわけがない。それはン1000億ドルとも云われる、プーチンの隠し資産。その大部分は暗号化されているはずだが、その暗号コードの一部を教えるから、といって自分を高く売りつけることも可能。そこで興味が沸くのが、ロシアの暗号技術、特に量子暗号技術。これがどのレベルまで到達しているかが問題。もしプーチン資産の暗号が量子化されていれば、それを解くための量子コンピューター開発競争が一段と加速するでしょう。殆ど007かゴルゴ13の世界ですが。
(22/09/18)

 昨日から中央アジア、ウズベキスタンのサマルカンドで「上海協力機構」の総会が開かれ、プーチン/習近平会談が行われました。元々この組織はソ連崩壊後、西側資本の浸透を防止するために中国・ロシア主導で作られたもの。参加国も中露を除けば、アジア地域の旧ソ連圏の国が殆ど。今回も大多数はそうだが、ここにインド、トルコ、イランがオブザーバーとして加わってきたのが注目されている。
 さて参加国の顔ぶれを見た途端、筆者が感じたのが「こりゃ駄目だ、いずれバラバラになる。経済的にも軍事的にも西側の脅威にはなり得ない」というもの。まず参加15か国の半数近くを占めるのが、中央アジア所謂ザバイカル地方諸国だ。これらの国はカザフスタンとかトルクメニスタンとか語尾に〇〇スタンと付く国が多いが、これはかつての〇〇汗国がロシア風に転じたもの。これらのザバイカル諸国は、中世のキプチャク汗国の末裔。キプチャク汗国はその後チムール帝国・・・その首都が奇しくも今回「上海協力機構」総会が開かれたサマルカンド・・・に吸収され、18世紀以降ロシアに征服された。みんな腹の底では、今のロシアの苦境を「ざまあ見ろ」と、思っているのではあるまいか。
 これらザバイカル国家のルーツはみんなトルコ系騎馬遊牧民。今回新たにオブザーバーとして参加した、イラン、トルコも元は騎馬民族。モンゴルはれっきとした騎馬民族。又北朝鮮、中国も古代では騎馬民族の血が入っている。そしてロシア自身、中世の200数10年に渉りモンゴルの支配を受けている。その間、モンゴルから国家統治法を学んだ。プーチン得意の暗殺技など、如何にもモンゴル的だ。
 騎馬民族の習性というか、欠点は団結出来ないことである。それと権力闘争を好み、買収に弱い特徴がある。アラブは典型的な遊牧民だが、部族間・地域間の対立抗争が激しく、共通の敵に対し共同して戦うことができない。そのかわり共通の利益には手を結ぶ。しかしそのうち利益の分け前を巡って抗争が始まり分裂する。口先では団結を叫ぶが、いざとなると自分の利益優先で足の引っ張り合いばかりする。何よりも重視されるのは、勝ち馬に乗ることである。中世の十字軍戦争が200年も続いたのはこの所為だ。現代の中東の混乱も、アラブ世界の足の引っ張り合いが原因だ。今の「上海協力機構」もいずれ同じ轍を踏むだろう。
 そしてプーチンが何故今頃、この総会を呼びかけたのか?当然ウクライナ情勢を巡ってのことだ。この種の国際会議を実行するには、少なくとも2カ月ぐらい前から準備する必要がある。2カ月前のウクライナ情勢はどうだったかというと、東部・南部戦線ともロシアが制圧し、大きな動きはなかった。又ロシアによる石油・ガス供給停止の脅しが効いて欧米では物価が上昇し、ウクライナへの支援疲れも見え始め、ドイツ・フランス・イタリアなどでは反EU極右政党への支持が拡大した。この結果、プーチンはこの戦争は勝ったと思い込んだフシがある。そして周辺諸国もプーチンに引きずられ、ロシアを「勝ち馬」と見た。
 さてその後の展開はどうか?ウクライナ戦線では、9.10に開始された東部ハリコフ戦線では、ウクライナ軍はたった二日でハリコフ州全域を解放し、更にルハンシク州への侵攻を進めている。同時に南部ヘルソンやサボロジェでも反撃を開始している。また、プーチンの第二の兵器石油も、ニューヨークでは6月始めをピークにその後は下落を続けている。ヨーロッパの石油・ガス備蓄も、既に予定の80から90%を確保していると云われる。これではロシアは、下手すると「勝ち馬」どころか「負け犬」だ。こんなはずじゃなかったのに、とサマルカンド会議参加国の多くは悔やんでいるのではあるまいか。それでも我が国は同志ロシアを助けるというのは、北朝鮮位だろう。
 北朝鮮にも都合がある。打ち続く天災で農業生産は最悪レベル。このままでは体制崩壊の危険がある。そこに天から降ってきたのが、ロシアからの弾薬数100万発、労働者10万人の支援要請。労働者10万人というのは、実は兵士のこと。これで大枚の外資が確保できるとともに軍部の不満を解消出来る。サマルカンド会議参加国の中でも、北朝鮮が特にロシア支持を強く打ち出している理由がこれである。
(22/09/16)

 首都キーウでゼレンスキイーの乗る車に別の車が衝突。これプーチンの指示によるテロではあるまいか。プーチンもこんな手を使うようでは、いよいよ切羽詰まってきた。今ロシアでは統一地方選の真っ最中。その所為かどうか、又も実業家が不審死。これで8月以来の実業家不審死は10人を超える。果たしてこれは何を意味するのか?ドウーギンを狙ったテロと関係があるのか?
 電光石火のハルキウ奪回作戦!マスコミ流にいうとそうなるのだろうが、その気配は少し前からあった。また、この作戦は史上稀な大規模な陽動作戦の成功例だ、という意見もある。つまり、南部ヘルソン地区への攻撃を強化し、ロシア軍主力を南部に移動させ、手薄になった北部ハルキウで反攻作戦を行うというものである。
 これは所謂戦術というものである。戦術とは、ある地域の制圧を目的とする軍隊の運用である。これを成功させるためには、それを支える戦闘法が無くてはならない。筆者はこれにウクライナ軍は「浸透戦法」を使ったのではないかと考えている。
 「浸透戦法」というのは、第一次大戦末期、ドイツ軍が開発した戦法。自主的に判断行動できる将校に指揮された複合兵科からなる多数の小部隊を、夜中に敵前線後方に浸透させる。夜明けとともに後方からの長距離砲射撃を開始し、それと同時に、敵の通信線や司令部、弾薬集積所などを襲撃する。これによって敵の防衛線に穴をあけ、そこに後続部隊が侵入して戦果を拡大するというものである。
 これは後に毛沢東が人民戦争理論の中の機動戦論に取り入れている。この戦法が威力を発揮したのが朝鮮戦争。林彪麾下の中国人民義勇軍が採用し、1951年国連軍の反攻を食い止めた。またベトナム戦争でも北ベトナム軍が採用。1972年テト攻勢が典型例。
 ウクライナ大学の某教授曰く、ハリキウ地方は森や丘が多く、部隊の隠蔽に都合がよい。これは浸透作戦にもってこい。逆にロシア軍得意の大規模な戦車軍の突進は不向きである。ウクライナは5日頃から準備を始め、10日に作戦開始。11日には50~60㎞前進、翌日には70㎞前進している。前述のウクライナの地勢では、例え機械化部隊でもこんな急速な前進は難しい。やはり敵後方の重要部分まで支援兵力を浸透させ、補給線や通信線を遮断して指揮命令系統を混乱させたと考えた方が合理的である。
(22/09/15)

 ウクライナ国防省が、ウクライナ軍が東部ハルキウ方面で反撃に転じ既に3000平方㎞を奪還したと発表。奪還した面積より、イジウム、クピャンスクという戦略拠点を確保したことの方
が重要。おそらく戦局の一大転換点になるだろう。
(22/09/12)

 南部と同時に東部ハルキウ州でも始まったウクライナ軍の反撃。左図の戦車はウクライナ軍の多分T-72戦車。ウクライナは旧ソ連時代はソ連圏最大・・・つまり世界最大・・・の戦車生産国。その中心はここハルキウ。ここに当時世界最大の戦車工場があった。
 今回ロシアがウクライナに侵攻した原因の一つが、仮にウクライナがNATOに加盟すればこの工場を西側に奪われてしまう。同じように14年クリミア侵攻はセヴァストポリ軍港を西側に奪われないため。その点はプーチンもロシア軍部も意見は一致する。
(22/09/10)、

 昨日テレ朝某時事番組を見ていると、司会の池上彰が「ウクライナはヨーロッパ一の最貧国で、そのためヨーロッパ諸国はウクライナを支援しても、膨大な負債を抱えかねないことを恐れている。その結果が支援疲れになっている」と解説。池上が解説すると如何にも本当に聞こえてしまう。ここで重要なことはそれこそ「ファクトチェック」である。
 ウクライナは本当にヨーロパの最貧国か?。これは統計上も為替レートもその通りである。近代経済学の基準ではそうなる。しかしより重要なことは、その国の経済ポテンシャルである。ウクライナの経済ポテンシャルは結構高く、見方によればロシアを上回り、それを上手く使えば先進国仲間入りは十分可能である。
1、農業資源;ウクライナはロシア侵攻前は世界最大の小麦生産国だった。但しその小麦は一般に牛・豚の飼料用で価格が低いため、付加価値が低かった。そこに日本の品種改良技術を加えれば、より付加価値の高い商品が作れる。ウクライナ産の農産物として有名なものに「ひまわり油」がある。これなど日欧米や中国の健康に敏感な先進国消費者には大いに受ける。
2、鉱物資源;今争奪戦が栗比遂げられるドンパス地方は、ドネツ炭田始めヨーロッパ有数の炭田地帯だ。脱炭素社会で石炭など時代遅れと思うだろうが、炭田地帯にはシェールガス、シェールオイルの可能性がある。今中国でもシェール資源の開発が盛んにおこなわれている。中国大陸というのは一枚岩で出来ているのではなく、幾つかの先カンブリア系のクラトンと呼ばれる安定地塊の集合体である。各クラトンの境界には厚い陸成層が堆積している。この中に石炭層が形成されている。この石炭層に伴うシェールに賦存しているガスやオイルを採掘しているのである。アメリカでもシェール資源の開発は、アパラチア周辺の炭鉱地帯だ。ドネツ炭田地帯でも堆積物が2000m位以上あれば、シェールオイルやガスが期待できるから、化石燃料資源についてはロシアを気にしなくて済むようになる。とりあえず西側が資金を出して1万m位のボーリングをやれば、シェール資源があるかどうかが分かる。
3、水資源;ウクライナは東西国境にドン川、ドニエステル川、中央にドニプロ川という大河川を持っている。だから水資源にはふそくしない。更にこれらの河川は中世以来、南北交易路として栄えてきた。これを利用すれば、黒海とベラルーシ、更にはポーランド、バルト三国を結ぶ南北交易路が出来るので、物流コストが安くなる。それを邪魔しているのが、プーチンとその子分のルカシェンコだ。
4、工業生産力;旧ソ連時代、ソ連は連邦や周辺国にそれぞれ役割を分担させていた。例えば工業生産特に機械製品はチェコやウクライナ、造船はポーランドやウクライナ。ウクライナは只の工業製品だけではなく航空宇宙産業も担っていたし、中でも半導体生産の殆どはウクライナ製である。ところがプーチンが戦争を始めたので、ウクライナ産半導体が入ってこなくなり、新型兵器が消耗すると半導体不足で、半世紀前の旧式兵器まで動員しなくてはならなくなった。それだけでなくITやソフトウェア産業でも進んでおり、その実力は今度のウクライナ戦争での情報戦でいかんなく発揮されている。
 では問題は何故それだけ高いポテンシャルを持っている国が、ヨーロッパ最貧国になったのか?一つは上で上げたように、統計上の数字の取り方。もう一つが経済である。独立前はソ連型社会主義経済だったが、そこにいきなり欧米型新自由主義経済が入り込んできた。そもそも西側先進国でさえ新自由主義経済は十分に使いこなせていない。そんな先端技術をいきなり持ち込んだのだから、経済的混乱が起こるのは当たり前。その結果腐敗と汚職がはびこり、資産・資本の海外流出が始まった。それを促したのは実は西側特にドイツ資本だ。ドレスデンやロンドン、ニューヨークに巣くうキツネやイタチ達が、ウクライナの資産を食い物にしてきたのである。
 ヨーロッパとアジア特に中国・インドとの陸上交易路は必ず7ウクライナを通る。この利権を求めて古代からフン族、モンゴル、近世ではオスマントルコ、ポーランド、リトワニアがウクライナに侵攻し交易利権を独り占めしようとした。18世紀以降、ロシアの一属州になってしまった。そして最近は中国が一帯一路ルートとして影響力を強めようとしている。このように、周辺諸民族や国家がウクライナの交易利権を独占しようとしてきた。これがこの地域の不安定化の一因となってきた。今ではそれをロシアがやっている。
 ユーラシア東西交易の安定化にとって、ウクライナの安定は必須条件ともいえる。ところがドウーギンのようなロシア極右派は、それをロシアが独占することが安定の条件と考える。それが間違いであることは、今回のウクライナ侵攻で証明されている。本当に必要なことは、ウクライナに独立した主権国家を認め、それをk周辺各国が保障することである。要するに利権の独り占めは許されない、ということだ。もし一部の国がそれを侵す兆しを見せれば、ウクライナが別の軍事同盟に参加することも止むを得ない。
(22/09/11)

 ヘルソンのドニプロ河右岸から左岸(ロシア軍支配地域)へ脱出しようとするロシア系市民を載せたフェリー。対岸の台地と河床との高低差を利用して作ったのが、ヘルソン上流のノバカホフカダム。このダムを制圧すれば、クリミアへの水の補給を切断できるので、ウクライナはサボロージャ原発以上の戦略的優位に立てる。そういうことを、何故国際政治評論家とか、軍事専門家は云わないのか?極めて面妖。
(22/09/04)

 ここ連日クリミア半島で発生する爆発事故。ウクライナのミサイル攻撃だ、とかウクライナ特殊部隊の仕業とか、ウクライナ政府の指示を受けた反ロ派パルチザンのしわざとか、色々噂は飛び交っていますが、イマイチこれだという決め手はない。
 それよりショッキング・・・プーチン政権にとって・・・なのは、20日モスクワで起こった、プーチンの盟友ドーギンの娘が車で爆殺されたこと。この事件で不思議なのは、元々親子で載るはずだったのが、突然親父が予定を変更して別の車に移ったこと。これだけ見ると、親父が娘を殺そうとしたように見える。親子に何があったのか?という話になる。
 逆に親父が車を乗り換えたのが、只のまぐれだったとすると、この事件は親父を狙ったテロだ。ドーギンは有名なプーチンの思想的指導者。プーチンが信奉する大ユーラシア主義の創始者ともいわれる。思想家とも、宗教学博士とも云われるが、その言い分は我々から見ると支離滅裂、我田引水の羅列で、只の酔っ払いのたわ言にすぎないが、旧いロシア民族主義者・・・日本でいえば日本会議とか、アベ復古主義者・・・の耳には心地よい。
 そのドーギンが、なんと首都モスクワの近くで暗殺されかかったのだから、ただごとではない。犯人は誰か?ウクライナの工作員か?はたまたロシア国内の反プーチン派か?意外にすぐ側に居たりする。例えばオリガルヒだ。最近反プーチン派と見られるオリガルヒに自殺や行方不明が相次いでいる。無論プーチンの息がかかったFSBの仕業だ。これに危機感を感じたオリガルヒが殺し屋を雇って、プーチンに近い人物の暗殺を狙ったのかもしれない。ロシアにはそんなのは幾らでもいる。例えばFSBやGRUの元エージェントなど。プーチンだって安全ではない、という警告だ*。
 最も信頼した人物に裏切られるということは、歴史上稀ではない。本当はゼレンスキーをそういう立場に追い込みたかったが、逆に自分がそうなってしまった。プーチンも当分は、おちおち寝ていられないだろう。
*と思っていたら、ロシア国内の反プーチン派が犯行声明。何処まで本当かは分かりませんが、ロシア国内も少しづつ騒がしくくなってきたようだ。
(22/08/22)

 戦争真っ盛りなのにモスクワで兵器見本市。ロシアはこのイベントで1兆ン千億円からの受注があったと豪語。金額から見て、相当数に上る。受注したからには、製品を作って発注者に届けなければならない。
 一方ウクライナでの戦争は終わりを見せていない。まだまだ兵器は必要だ。しかし戦局は思うように行っていない。兵器弾薬が欠乏し始めたからだ。それにもかかわらず、大統領は兵器を外国に売ろうとしている。外国に売る余裕があれば前線に回すべきではないか?というのが普通の国の考え。まして軍や前線の兵士はそう思う。そうではないのが、今のロシアの不思議なところ。
 買う方も買う方である。今ロシアが売ろうとしているのは、20世紀型の攻撃力重視兵器。戦車を採ってみても、ロシア的には最新鋭のT90でも、ウクライナ軍のドローンとジャベリンミサイルでボロボロにされた。これは武器の情報化力の差である。このレベルの兵器が使えるのは、国内での反政府暴動の鎮圧とか、内戦、隣国との国境紛争レベル。つまりロシア製兵器の輸出は国内紛争を増やすだけの意味しかない。
 この兵器展でロシア兵器にオプションを出した国は、おそらく大部分が途上国だろう。途上国の最大の難点は資源はあっても産業基盤力が乏しい。現代兵器は高度テクノロジーの塊である。この機能・性能を維持するためには、不断の整備が何よりも重要だが、産業基盤力に乏しい途上国にそれを期待するのは難しい。何よりも製造者のロシア自体が整備力については甚だ疑わしいのである。
 そしてもう一つ、オプションを出しても本当に注文した兵器が無事納入されるだろうか?現在ロシアは様々な点で制裁を受けている。武器輸出もその一つだ。ロシアから武器を購入すれば、アメリカから制裁を受ける可能性がある。そもそも武器を何処から搬出してどういうルートで納入するのか?黒海経由、バルト海経由はほぼ無理なので、極東か、或いは中国経由の三角取引か?
 ロシアと購入国との契約がどういうものか分からないが、ロシアは購入国に期限付き製品受け取り義務を課しているかもしれない。例えば完成通告後一カ月までに受け取りに来なければ契約を解除するというような手だ。これならロシアは兵器を相手国に送る義務から免除される。代金は先に仮想通貨で受け取っておく。これだとモノは無くても金は手に入るから丸儲けだ。四の五の言うと、ロシア得意の暗殺力で黙らせる。プーチンならやりかねない。
(22/08/18)

 黒沢年男という俳優がいて、これがブログに「日本はウクライナ支援をやめるべきだ。支援を続けるから戦争が終わらない。支援金を日本の防衛に回すべきだ」と主張。
 世の中にこういう馬鹿がいるから、プーチンの笑いが止まらないのだ。
1、西側全体のウクライナ支援額の中で、日本が占める割合は数%にしか過ぎない。この程度を惜しんだ処で戦争が終わるわけがない。
 仮に西側援助を全てストップしてもプーチンが戦争を止める保障はない。それどころか、今こそチャンスとばかり攻勢を強め、ウクライナ全土を占領するだろう。その結果何が起こるか?黒沢とか橋下のような即時停戦論者は想像すらできないだろう。彼らは停戦が行われると、直ぐに元の生活に戻れると勘違いしているようだ。とんでもない話で、実際は真逆の状態が発生する。
 まず考えられるのはウクライナ人の親ロシア度での選別。親ロシア度の低い順に処刑(ジェノサイド)、シベリアへの移住、ウクライナ国内での奴隷労働等に振り分けられ、ウクライナ民族・文化そのものを抹殺する。第二次大戦ではドイツが降伏したにもかかわらず、ソ連は東欧諸国に軍を進め、これらを衛星国家化した。又バルトやウクライナ、カフカス地方では、大戦中反ソ運動が活発化したが、戦後スターリンの報復は過酷を怖めた。
 極東では、東欧程ではないが、戦後英米によるBC級戦犯訴追があり、多くの理不尽な処刑が行われた。最も多く死刑判決の主な理由になったのは捕虜処刑、華僑殺害。この命令の多くは、日本軍の辻政信という参謀の独断で行われた。日本BC級戦犯の多くは辻の功名心の犠牲だったのである。
 更に戦後満州・北方領土では、ソ連によるシベリア抑留という法規を無視した蛮行が行われている。これに対し連合国は何も云っていない、無視しているのである。これと同じことがウクライナで行われるだろう。即時停戦など、プーチンにとってはただの紙切れの交換だ。悲劇はそれから始まるのである。
2、現代のウクライナに対する支援など微々たるものである。そんなものをけちっても中ロ相手には何の役にも立たない。今の世の中、単独で長期戦を戦い抜けるのはアメリカと中国位しかない。日本一国で中露相手に戦える訳がないので、そこに集団安全保障という概念が発生する。
 今のところそれを担保するものは日米安保条約だが、これがあるといって安心するのはお目出たいとしか言いようがない。条約があると云ったところで、それを実行するのはアメリカ国民である。しかも議会の承認を必要とする。他国が困っているときに、支援もしないような国を助けるためにアメリカ人を犠牲にする必要があるのか、という意見が出てくる可能性もある。そうならないようにするために、目に見えた形でのウクライナ支援は必要なのである。
 しかしながら今の岸田政権のやり方は如何にも中途半端ぬゑ的である。例えばサハリン2でも、アメリカはさっさと撤退したが、日本は「権益を維持する」といってダラダラ先延ばし。これではプーチンに足元を見られるだけだ。又、ミャンマー国軍・・・という名の軍閥・・・が反政府派囚人を死刑にした。これによってアセアン諸国も動揺している。それにもかかわらず、日本政府は経済使節団をミャンマーに派遣している。人権や正義より経済を優先する今の日本岸田政権は、かつて世界から「エコノミックアニマル」とさげすまれた7時代に逆戻りしている。
(22/08/16)

 なかなか進展が見えないロシア/ウクライナ戦争。6月はロシアが東部戦線で盛り返し、ルガンスク州の主要部を制圧したが、反攻もそこまで。7月に入ると南部ヘルソンでウクライナの反攻が始まった。ロシアがウクライナからの小麦の輸出を認めたのも、トルコや国連の仲介というより、オデーサ封鎖を続ける能力が限界に近づいたからかもしれない。
 ロシアの継戦能力が限界に近づいたと考えられる証拠は他にも1)囚人兵の投入とか、2)イランからのドローン導入というのもある。1)は法律上はともかく、犯罪者を解放するということだから、例えば彼らがロシアに帰還したとき、ロシアの治安が著しく低下する。モスクワがニューヨークのダウンタウンになるわけだ。
 そして2)イランからのドローン導入だが、これは逆だろうと思うのが普通。イランはそもそも武器生産国ではないし、武器は従来ロシアから輸入していた。それをどうやってイランでドローンを生産するのか?
 一つ考えられるのは、北朝鮮の介在である。北朝鮮がイラン国内にドローン製造工場を造り、北朝鮮技術者が製造に当たる。従来も北朝鮮の武器輸出はそうして行われていた。北朝鮮は国連制裁下にあるから、完成品を北朝鮮から輸出すると、途中で拿捕される。それを避けるために、相手国に工場を造り、技術者を現地に派遣し、部品は密輸ルートを通じて供給する。いずれにせよ、ロシアは国内での最早最新兵器生産能力が限界に達しているということだ。
 そしてロシアにとって不安要素がもう一つある。それはアメリカ供与の新兵器がいよいよ能力を発揮しだしたのではないかということだ。それが最近起こったクリミアロシア軍航空基地での爆発事故である。この事故でイギリス情報当局は、ロシア軍戦闘機8機が破壊されたと発表した。この事故原因を、ロシア軍は弾薬庫事故と説明するが本当か?通常、弾薬庫は戦闘機駐機エプロンとは離れた場所に設置される。それは弾薬庫が爆発しても誘爆を避けるためである。
 ところが衛星写真では破壊された戦闘機の間に、破壊を免れた機体もあり、戦闘機は個別に破壊されたように見える。それとも爆弾を積んだ戦闘機が、同時に爆発したのだろうか?それなら事故ではなくテロである。つまりロシア軍の中にパルチザンが紛れ込んでいるということだ。
 そうでなければ、アメリカ供与の精密誘導弾による砲撃ということになる。この事件についてウクライナもアメリカも何も言わないが、高度の軍事機密に関するものなら、黙っているのが当たり前。さて問題の8月。はたしてウクライナの本格反転攻勢が始まるか?
 と書いた直後に別のネットを見ると、・・・ニューズウイークだったと思うが・・・あるメデイアが、今回の爆発事故にはアメリカがウクライナに供与した新兵器(対レーダー誘導ミサイル)の可能性がある、と報道。何処にも色々考えるヒマ人がいるものです。
(22/08/13)

 アメリカ供与のハイマースで破壊された云うドニエプル河に掛かるアントノフ橋の破壊部分。、これを見ると この橋はRC橋のようだ。地震がないからRCでも構わないということなのか? 日本ではこのような重要度の高い一等橋にRCはあり得ない。PCかメタルだ。そうだったら、ロケット弾如きで、こんなボロボロにはならないだろう。
(22/07/28)

 EUのウクライナ支援総会で、ウクライナが戦後復興資金の見積もりと、負担案を示したところ、皆さんウーンといって知らん顔。特に冷淡なのがスイス。何故か?一つは、スイスは厳格なカルバン派プロテスタントの国で、政治とビジネスを厳格に分ける。特に顧客の秘密厳守は国是でもある。もう一つ考えられるのが、スイスの銀行に貯蓄されている秘密資金である。中でも都市伝説化されているのがヒトラー秘密資金である。
 ヒトラーは、ドイツ連邦共和国大統領、首相、国防大臣、国防軍総司令官、陸軍総司令官を兼任した。またナチ党党首でもあった。それらの給与を合わせると膨大なものになる。その他各地での講演料収入などの雑所得、中でもドイツ人家庭各戸一冊を義務付けられた「我が闘争」の印税収入は莫大なものである。しかしヒトラーはこれらについて一切税務申告していない。トランプが税金を誤魔化しているのと同じパターンである。
 そして戦後、このヒトラー隠し財産がスイス銀行の金庫に眠っているのではないか、という疑いがでてきたが、この点についてスイス政府もスイスの銀行も黙ったままである。さて、ウクライナの主張は、復興資金の一部をプーチンとプーチン派オルガルヒの闇資金で補え、と要求した。しかしスイス側の反応は今のところ、ナインである。もしウクライナの要求を受け入れれば、プーチンとその周辺のマネーロンダリングのプロセスがみんな明らかになる。 関係者にはウオール街の紳士もいるだろう。トランプもいるかもしれない。大変なスキャンダルがあきらかになる。その結果これまで培ってきたスイス銀行の信用は地に落ち、世界の闇資金を引き受けられなくなる。無論、ゴルゴ13も振込先を変え、これからは仮想通貨で、中国人民銀行のほうがましだ、と思うかもしれない。但し最近、中国もセキュリテイの点で当てにならないことが分かった。習近平始めチャイナマフィアも無関係ではない。ゼレンスキーはそれを狙っているのか?
 なお、ゼレンスキーの要求は無茶だ、とても受け入れられない、と西側が値切ると、ゼレンスキーは最後の手段にでるかもしれない。それは身の安全を保証した上で、プーチンと手を握ることだ。ウクライナにとって、西欧諸国のために犠牲になるいわれはない。最期はロシアと手を握る選択肢だってある。
 もしそうなれば、西側諸国はロシアと直接向かい合うことになる。それこそ恐怖の現れである。それどころか、世界秩序そして文明が、ロシア・中国という古代専制国家に飲み込まれる可能性が出てくる。まさしく文明の危機である。かつてチャーチルは、ナチスドイツとの戦争を、文明を守る戦いと呼んだ。西側諸国は、何時までもキリギリスを決め込んでいるのではなく、この危機を十分認識べきだ。そして日本にも巣くう自称リベラルと称する反戦派知識人、逆にリアリストと称してロシアとの和解を説く政治家や評論家にも同じことが言える。彼らはもっと歴史を学ぶべきだ。
(22/07/08)

 

 ロシアで企業が労働規制を緩和し、残業を自由に出来るようにする法令ができた。旧ソ連時代から、ロシアの労働者は厳しい労働規制で守られてきた。多分その伝統は現在のロシアにも残っていると考えられる。それがプーチンに対する手堅い支持の理由かもしれない。
 今になって労働規制を緩和し、残業を命令できるようにするのには、主に二つの理由が考えられる。
1、要するに武器・弾薬その他軍事用品が不足してきたから。
 どの分野の武器が不足しているのか?精密誘導型のミサイルとかT-90戦車といった最新鋭兵器の不足は既に指摘されていた。セヴェルドネツクを中心とした東部戦線では、旧式のT-62まで駆り出してきた。このような旧式兵器はロシアは、うなる程持っている。80年代では戦車はNATO 軍5000両に対し、ソ連始めワルシャワ条約機構軍は20000両とも云われていた。桁が違うのである。ところが今になって労働規制の緩和・・・言い換えれば労働時間の拡大・・・を言い出すのは、これら旧式兵器すら不足しだしてきたということだ。
 例え旧式であっても、20000両ともいわれる戦車をはじめとする莫大な量の兵器が、たった一カ月の局地戦で損耗するわけがない。問題は整備である。いくら在庫はたくさんあっても、整備が不良なら稼働率は下がる。ロシアという国の特性を考えれば、ろくな整備が行われておらず、整備費用が誰かさんの利権に消えてしまっていたというケースは十分考えられる。
2、前線での正規兵の消耗が激しく、補充する必要がある。それを労働市場から賄う。
 この軍事作戦は戦争ではないので動員令はだせない。そこで企業に志願兵のノルマを課す。当然企業は労働者不足に陥る。それを埋め合わせるために残業を強制する。労働組合が反発しそうなものだが、ロシアの労働組合など日本の連合、特に同盟系と同じで、会社ともたれあっている。
 なお労働時間の延長は企業側が決められるとするが、残業手当はキチンと支払われるのでしょうか?残業分の給与は国家が補償するとして、一部を企業側がネコババする恐れはないだろうか?この点の確認は、今のロシア国会では無理だ。ずばり新たな利権の誕生だ。なおロシアの労働力が不足しだしてきたのは、やっぱり経済制裁がじわっと効いてきたからだ。
(22/07/03)

 トルコがいきなり、フィンラン、スウェーデン二か国のNATO加盟を了承。引き換えに同国のクルド人支援やトルコ向け武器輸出禁止の停止が約束されたらしい。それだけではあるまい。
 ウクライナに次いで緊迫の度を強めるのがバルト地方。いよいよロシアの本性が出てきた。元々ロシアとトルコは不倶戴天の中。過去400年に渡って戦争をくりかえし、その都度ロシアに領土をうばわれてきた。トルコは人権問題を重視するバイデンを嫌ってプーチンに接近したが、国民の中に浸透している反ロ感情はそう簡単に消えるものではない。
 ロシア/ウクライナ戦争ではっきりしたのは、今のロシアはロシアの利益になるなら、旧来のルールを平気で破ること。しかも核をちらつかせながら、核で脅しをかけることである。ロシアが大西洋に出るための出口としては、デンマーク/ノルウエー間のヘルゴランド海峡。両国とも既にNATO加盟国だから、ロシアがバルト三国に侵攻した段階で封鎖される。
 もう一つがボスフォラス・ダーダネルス海峡。この海峡の通行権はトルコが握っている。しかしバルト海が封鎖されれば、ロシアが苦し紛れにボスフォラス・ダーダネルス海峡を占領するかもしれない。それどころか、トルコのヨーロッパ側まで手を伸ばす可能性がある。ウクライナからトルコヨーロッパ地域までは、ルーマニア、ブルガリアなどのNATO加盟諸国があるが、いかんせん軍事力が弱い。NATOもバルト地域で手一杯だ。そうなると北欧二か国のNATO加盟を認めて、ロシアを牽制したほうがトルコにとって得だ。
(22/06/30)

 ロシア的にみれば、東部戦線はひとまず片が付いた。但しこれは軍事的に占領が終わっただけで、安定にはほど遠い。これからは永い都市ゲリラ戦が待っている。一方別方面が騒がしくなってきている。一つは南部のヘルソン方面。もう一つが北西バルト方面、特にカリーニングラード。プーチンの長期戦略・・・ピョートル大帝の大ロシア帝国復活を目指すノーボロシア構想・・・では、ウクライナと同時に、バルト三国の奪回が最重要課題である。ウクライナの次はバルトだ。
 先日リトワニアが国内を通ってカリーニングラードとベラルーシ、ロシアを結ぶ鉄道の運航制限を行った。これに対し、ロシアはリトワニアに対し、「国民に悪影響を与える措置を取る」と脅し、送電の一部停止を行った。リトワニアは、これを「EUによる制裁の一部である」「準備はできている」と応酬。第二のウクライナになりかねない状勢。
 一部の評論家は、ベラルーシとカリーニングラードを結ぶ鉄道と、ポーランド/リトワニア国境間の地峡をロシアが占領し、バルト三国とヨーロッパとの分断を諮るという説を唱える。プーチンの狙いはバルト三国を第二のウクライナにすることだ。さてそう上手くいくでしょうか?ウクライナとバルト三国では、地政学的位置は似ている点もあるが、根本的に異なる点も多い。
1、ウクライナはNATO 未加盟だから、NATO諸国は武器や経済援助以外の直接支援はできない。しかしリトワニア始めバルト三国はれっきとしたNATO加盟国だから、直接的軍事介入は可能である。
2、仮にロシアが先の地峡地帯に侵攻しても、長続きはしない。両脇からリトワニア、ポーランドから挟まれ、逆に地峡を分断されれば、侵攻したロシア軍どころかカリーニングラードも孤立する。
3、ウクライナは北はベラルーシ、東はロシア、南は黒海に挟まれ、特に黒海の制海権をロシアに奪われているので、小麦の積み出しや、武器の輸入もできない。その原因は黒海の出入口であるボスフォラスーダーダネルス海峡の通行権をトルコが握っているからである。トルコはNATO加盟国だが、大統領のエルドアンが親プーチンで反欧米。これがあれこれ駄々をこねて、NATO 軍の黒海侵入を阻んでいる。
4、一方バルト海は逆だ。バルト海の出入口はヘルゴランド海峡だが、これの両サイドにあるデンマーク、スウェーデンは、いずれも親ロではなく、ウクライナ支援国家。デンマークは古くからのNATO加盟国であり、スウェーデンも近々加盟する見通し。両国ともトルコのような両てんびんにかける蝙蝠国家ではない。つまり、いざとなれば英米艦隊がバルト海に侵入してくる。バルト海は既にロシアの海ではなくなっているのだ。
5、つまりバルト三国に圧力を加えれば、孤立するのはカリーニングラードである。それを防ぐためにプーチンはカリーニングラードに中距離弾道ミサイルを配備している。しかしNATO がその気になれば、カリーニングラードやサンクトペテルブルク封鎖をすることは簡単だ。ポーランド、リトワニア国境を封鎖したうえで、カリーニングラードへの上陸作戦だって可能だ。重要なことは、西側諸国がこの軍事的優位性に気付かず、プーチンの脅しに屈することを防ぐことである。やくざやアウトローとのイザコザで重要なことは、決して頭を下げないこと、こっちの言い分を主張することである。ゼレンスキーのやり方が当にそれである。
(22/06/26)

東部セヴェルドネツク戦線の一応の収束を見て、今後注目されるのが南部ヘルソンの攻防。以前からウクライナ軍はヘルソンへの圧力を強めている。攻防のポイントはヘルソン東方ドニエプル河左岸のノーバカホフカという街と、ドニエプル河に掛かるダムの争奪戦。
 何故重要かというと、このダムがクリミア半島の唯一の水源だからだ。写真中央がそのダムで、右岸やや上流から下に伸びる細い水路がクリミアの生命線となる。ウクライナとしては、このダムを破壊するか占拠してゲートを開ければ、クリミアへの水を制御できる。又下流のヘルソン市を水浸しにできる
 ロシアが海路を封鎖して兵糧攻めで来るなら、水攻めで対抗する。なお右岸にはコザックという地名がある。かつてのドニエプルコザックの故地か?上流にはサボロージェという地名がある。これはかつてのサボロージェコザックの故地だろう。
(22/06/25)


  ロシアは新式兵器が足りなくなったので、旧式戦車まで駆り出した。そのうち小銃も旧式のAK47でももちだすんじゃないか、と冗談で笑っていたら、本当だった。写真は旧式AKを抱えるロシア兵。
 但しこの兵士、顔つきから見て若い正規兵ではない。ベテランの志願兵か、ドンパス地域の親ロ派武装勢力民兵か。こういうのが国際法違反の残虐行為を働く。如何にもやりそうな顔をしている。
(22/06/23)

 サンクトペテルブルク国際経済フォーラム。東部ドンパス地域の軍事的優勢を背景に、プーチンは余裕の表情。しかしよく見ると、頬は若干こけ、演説中も時々体を震わせる。参加者は旧ソ連圏始めアジアアフリカの途上国。全体で57か国とされる。インドは現れず、注目の中国習近平はオンライン参加のみ。プーチンはまず現在の西側による経済制裁を失敗とこき下ろし、経済は順調と強調。経済戦でもロシアは西欧に勝利していると主張する。更に、ロシアはこれまでの西側経済圏・・・ドル・ユーロ経済圏・・・とは別に新たな経済圏を作ると述べる。更にこの経済圏は自由で、将来性は大きいと、各国からの投資を呼びかける。
 聞いていればバラ色づくめだが、本当でしょうか?参加国の大部分はアフリカ・中南米の発展途上国。他国への投資どころか、他国からの援助に頼っているのが現状。投資の担保としてプーチンが挙げるのが、原油や天然ガスのような地下資源。途上国の中にはベネズエラやカザフスタンのように原油市場でロシアとライバル関係にある国も少なくない。これらの資源国は、地下資源は持っているが、それを開発し有効利用するノウハウがない。
 それをほぼ独占しているのが西側メジャーである。このノウハウとそれに伴う基幹技術は経済制裁で今後ロシアには入ってこない。今ロシアが持っている石油・天然ガス施設は次第に老朽化し、生産効率は低下し産業は停滞する。当にかつての旧ソ連末期状態の再現である。
 プーチンが狙っているのは、言葉とは裏腹に中露が主導する、西側旧経済圏に対抗する東側新経済圏の創出である。いわばルーブルー元経済圏だ。ではこの経済圏は持続可能だろうか?西側旧経済圏の基盤は政治的には民主主義、経済は自由主義である。色々問題はあって、これがパーフェクトとは云えないが、少なくとも技術的なイノベーションは起こり、問題があればそれを修正する機能は持っている。つまり持続可能性はある。但し何でもありの新自由主義と、それに乗っかるアベノミクスは駄目だ。あんなの続けて行くと、最後は資本主義そのものを潰してしまう。一時的効果はあっても、持続可能性はない。
 一方東側新経済圏の特徴は強権主義、専制主義国家が多く、その政治的思想的基盤は権威主義、民族主義、反西欧主義である。官僚主義とネポテイズム・・・・縁故主義・・・がはびこり、イノベーションは起こらず、やがて経済は停滞し、腐敗と堕落が支配する。唯一有利なことは、地下資源がこれらの国に偏在していることである。これこそ、19~20世紀帝国主義をもたらした原因であり、ロシアが今も強気に出られるのは、この資源環境がロシアに有利に働いているからだけだ。しかし西側旧経済圏が資源エネルギーの転換に成功すれば、たちまち立場は逆転する。それが脱炭素である。
 既に答えはソ連崩壊という事実で出ている。問題は西側がそれに気が付いていないことだ。一番馬鹿なのはドイツ、ついでフランス、イタリアこれら三か国首脳の頭が、相変わらず20世紀冷戦時代から抜け出せないのが、プーチンに付け込まれる隙を作っているのである。
 それはともかく、今回のサンクトペテルブルク国際フォーラムで分かったことは、プーチンは核使用を考えていないということだ。もしうっかり核兵器を使用すれば、たちまちアメリカ、NATOの報復を受ける。ロシアは焼野原だ。そんな国に投資しようというお人よしは、そうはいない。
(22/06/22)

 近日中に独仏伊三国首脳がウクライナを訪問する予定。何しに行くのでしょうか?これを牽制するためか、プーチンと習近平が電話会談をしたという情報。そもそもこの三国、戦争が始まって以来、ウクライナの足を引っ張る発言はするが、その逆は聞いたことがない。
 例えばマクロンは「ロシアに屈辱を与える停戦は好ましくない」と発言。ではウクライナ人は幾ら辱めを受けても構わないというのか?ショルツはなんとかウクライナ支持は表明したが、ロシア批判はしていない。それどころか、ドイツ経済界は戦争長期化によるドイツ経済への不安発言ばっかりだ。ドイツ人の本音は、ウクライナ人はどうなってもよいが、自分達の利益だけは守りたい、てなところだろう。かつてユダヤ人の虐殺を知っていながら知らなかった振りをしていたドイツ人らしい。イタリア人・・・そもそもイタリアの首相が誰だかも知らない・・・は、開戦以来何も発言していない。
 この三国の駄目な点は、ロシアの脅威はウクライナで止まり、それ以上西には及ばないだろうと錯覚或いは期待していることと、不必要なプーチンへの忖度である。ウクライナへの軍事支援でも、自発的というよりアメリカに尻を叩かれてしぶしぶのように見える。この甘い期待と忖度は、かつてナチスドイツにミュンヘンで見せた英仏伊三国の態度とそっくりである。その結果、世界がどうなったか、みんな知っているが今の西欧人は忘れたふりをしている。
 もう一つ決定的に駄目な点は、資源・エネルギー危機に対する備えがまるっきり出来ていない。ソ連崩壊以後、もう危機の時代は過ぎ去った、これからは連日パーテイーだ、というわけで、経済優先のキリギリスj状態を続けてきた。その付けが今に来ているのである。だからプーチン如きに脅されてペコペコしなくてはならないのだ。
 いみじくもプーチンは云った。「世の中には主権を持った国とその他だけだ」。主権とは何か?プーチンの定義では、それは軍事力、中でも重要なものは核で、それを自分の意志で使える国が主権国家だ。その他の国とは何か。植民地か或いは従属国である。今の世界には米・ロ・中の三大主権国家がある。いずれこの三国間で覇権争いが始まり、ロシアは神の恩寵を得て、最終勝者となるだろう。これが現在のプーチンの世界観である。この背景にあるものはキリスト教的終末論である。なんとなく石原莞爾の「世界最終戦論」に近いが、これも結構宗教性を帯びているので、似たようなものかもしれない。 
 さて仏独伊三人の俗物が、プーチンというスピリチュアル人間に対する処方箋を描くことができるか、それをゼレンスキイーが呑むことが出来るか。
(22/06/16)

1、6.12「ロシアの日」のプーチン演説の一部がネットに出ていました。中身は何にもなく、ただただ愛国心の協調と領土回復の主張だけ。「無能な政治家の最期の隠れ家は愛国心だ」という言葉があるが、プーチンも遂にその段階に達したか、という感である。要するに愛国心以外に売るものがなくなったのだ。
1)演説の様子を見ると、両手をテーブルについて、若干前かがみ。両脚は踏ん張り、上体はしばしば激しく揺れる。何か必死に痛みを堪えているようだ。やっぱり癌か?そうすると、もうあまり後はない。悪ければ後一月ぐらいか。
2)ウクライナに関する文言がなかった。12日はセヴェルドネツク攻防戦の山場。ロシア軍有利な状態だ。そうならこの点について触れてよいはずだが、それがなかった。
3) この演説、室内での撮影。演説内容・・・ウクライナ情勢に触れていない・・・や、身体の状態から、ライブではなくビデオの可能性がある。何時ビデオが撮られたかは分からない。するとプーチンの健康は、既に表に出られない位悪化しているか、何処かに軟禁状態にあるか、なんて憶測が直ぐに出てくる。
 仮にプーチンに何かあったとしても、戦争は直ぐには終わらない。何故ならこれまでボスの周りに、戦争関連の利権構造が出来てしまっている。これを構成するグループにとって、戦争を止めるということは、これまでの利権を失うことだ。かといって永久に続ける訳にもいかない。手じまいの時間稼ぎに代理人を立て、なんやかや理屈を点けて戦争を長引かせ、財産をもって何処かに逃亡する。その間、迷惑するのはロシア・ウクライナ国民だけでなく、全世界の人民だ。
2、ロシアが黒海を封鎖しているので、ウクライナ産小麦の輸出が滞っている。その結果、世界中に食物や関連商品の値上げが続いている。この状態が続けば、今年中に世界で7500万人の餓死者が出るという試算もある。
 ラブロフはこれはアメリカによる経済制裁の所為だ、と言いふらしている。要するにアメリカの経済制裁でロシアが輸出できないのだ、アメリカが制裁をやめれば輸出はスムーズに行く。しかしアメリカが経済制裁をしたのは、ロシアのウクライナ侵攻が理由だ。ロシアがウクライナから手を引けば、アメリカは制裁を止めるだろう。
 もしどこかで数100万人規模の餓死者が出れば、アメリカは人道上の問題を理由に、軍事介入に踏み切る可能性がある。オデッサからへルソン付近までの黒海沿岸を確保し、小麦輸出ルートを確保する。この時、アメリカが核を脅しに使うかもしれない。バイデンは実はそのタイミングを見ているのではないか?
3、セヴェロドネツクを巡る膠着戦。ある報道では、ロシアは既に市域の98%を制圧し、完全制圧もまじかという。また別の報道では、ロシア兵の士気低下が顕著ともいう。一体全体どっちが本当なのか、と云いたい。これまでの敬意を見ると、ウクライナ軍の粘りもさることながら、ロシア軍の攻勢も半端じゃない。3週間程度であきらめたキーウ戦線とは一味違う。
 戦争のやり方を変えたのだろう。犠牲をいとわず次々と新兵力を繰り出したかつての独ソ戦が復活したのか。とすればロシア軍は自軍後方に督戦隊を置いているのか?これならロシア兵は有無を言わず前に突進せざるを得ない。スターリンを再評価するプーチンならやりかねない。
4、ロシアがいきなり北方領土周辺の漁業権剥奪を示唆。これに一番影響されるのが北海道、特に北見地方の漁業者。北見は鈴木宗男の選挙区で漁民は重要な支持者。ロシアは読んでいるのだ。漁業権で宗男を揺さぶれば、それは「日本維新の会」を揺さぶることになる。「日本維新の会」は、自民党の準協力者。更に自民党最保守のアベ派にも近い。これによって、自民党を揺さぶることができる。やっぱりロシアは日本の経済制裁もこたえているのだ。問題は宗男や維新が、どれだけロシアのゆさぶりに耐えられるかだ。宗男など、直ぐにヘナヘナになって、「プーチンさんの言い分を受け入れて制裁をやめよう」、なんて言い出しかねない。
(22/06/13)

 相変わらずネット上に吹き荒れるのがプーチン健康不安説。今日見たイギリスの某紙では、「プーチンはもう死んでいる」とトンでも情報。私も内心、そうではないかと疑っているが。そして健康不安の要因を幾つか挙げていたが、その中にステロイド系薬物の影響、というものがあった。これは今のウクライナ戦争が始まった直後の2月下旬に、筆者が指摘している。イギリス情報機関もやっと私に追いついてきたようだ。
 また、その情報では、プーチンの寿命は後持って2年と見ている。そんなに永く生きていられるのか、年内持つのが精一杯ではないか、というのが筆者の見解。その所為か、昨今メデイアで取りざたされているのがプーチン後継者問題。一般に独裁者が死ぬ時は、長期間事実は伏せられるものである。スターリンもそうだったし、毛沢東もそうだった。期間は一般には数週間から数カ月。何故そんなに必要かというと、後継者決定の権力闘争が決着するのにそれ位の時間が必要だということだ。
 ではポストプーチンの権力闘争に参加するプレーヤーがどういうメンバーか、というのが現在の国際政治学者や評論家、ジャーナリストの興味の的になっているのである。ではどういうのが候補に挙がるかというと、個人よりはバックの利権団体が重要。これには経済界からはオリガルヒ、FSB、産軍官複合体、さらにはプーチン直系の国家親衛隊とかロシア正教会の中でもモスクワ派、チェチェン武装組織とかモスクワアイスホッケーチームなどがあげられる。後継者候補はこれら利権集団のバランスを上手く取らなければならない。
 スターリンや毛沢東の時は、少しはイデオロギー要素もあったが、プーチンの場合はそんなものこれっぽっちもない。それはプーチン自身がイデオロギーに無関心だったからである。後継者候補もプーチン似で、イデオロギーなど無関心のはず。その目的は、ひたすら50兆円とも云われるプーチン闇資産と、そのもとになった利権を手に入れること。結構生臭い話になるだろう。
 なお本日に予定されていたセヴェルドネツクの制圧は数日延期された模様。ウクライナ軍の抵抗が予想より強かったか、後方からの兵器の補給が遅れたかのどちらかだろう。ひょっとしてまた、将軍の誰かが戦死したりしたからかもしれない。
(22/06/12)

 6.12「ロシアの日」とは、はて何の日かとネットで調べてみたら、旧ソ連が崩壊し「ロシア・ソヴィエト連邦共和国」つまり現在のロシア連邦の前身が成立した日だ。初代大統領はボリス・エリツイン。プーチンは未だレニングラードにいたはずだ。プーチンはこの記念すべき日までに、何が何でも何か戦果を残しておかねばと、今セヴェルドネツク猛攻を掛けている。これに失敗すれば、東部戦線のロシア軍は、一気に崩壊の道をすすみかねない。
 それはそうと、今ロシアの周辺で、ロシアにとって頭が痛いい話が起こっている。一つはジョージアでロシアが実効支配している南オセチアの大統領選挙で、ロシア併合反対派候補が勝利したこと。ロシアが南オセチアに進行したのはソチ五輪の2010年。あれからの12年はいったい何だったのか?
 もう一つがカザフスタンで新憲法が発布されたこと。この憲法、前任の親ロ派独裁者ナザルバエフの復活阻止を目的とし、多数党による議会制度を導入するなど、従来に比べリベラルで欧米寄り。
 今年始め、ロシアはナザルバエフの要請でカザフに派兵した。その時担ぎだしたのがトカエフで、プーチンはこれを傀儡にするはずだったが、一人歩きをはじめだした。プーチンはこんなはずじゃなかったと思っただろうがもう遅い。
 プーチン以上に神経質になるのが習近平。旧ソ連南部周辺諸国で、カザフスタンはウクライナに次ぐ大国である。それに石油・天然ガスやウランなど地下資源にも恵まれている。カザフの近くには、トルクメスタンとかタジキスタンのようなイスラム系で強権主義的政権が多い。これらがカザフの影響を受けて民主化に進めば、中国の一帯一路構想が影響を「受けるだけでなく、新疆ウイグル自治区にも飛び火しかねない。これはやばい。こんな時に、呑気にどうでもよいような南太平洋に手を出して大丈夫でしょうか?おまけに秋には全人代がある。カザフを引き金に、中央アジア方面に動揺が広がれば、台湾解放どころではなくなる。つまり台湾問題など幽霊の枯れ尾花かもしれないのだ。
(22/06/08)

 ウクライナ東部戦線の戦況がなんだか流動的になってきました。先月下旬から東部ルガンスク州でロシアは攻勢を強め、特に2、3日前まではロシア軍は州都セヴェルドネツクの7割を占領し、陥落寸前と見られていた。処が一転今日になると、ルガンスク州知事はロシア軍を押し戻し市街の5割を回復したと発表。また、南部へルソン州でもウクライナ側の反撃が続いています。
 いったい何が起こったのでしょうか? 今月初めにはウクライナ政府もイギリス情報機関も、ロシア軍はルガンスク州で最大限の攻勢をかけていると発表していました。最大限の攻撃など永く続けることはできない。せいぜい1週間か10日だ。既に攻勢が始まってから5日位経っているから、攻勢を続けられるのは後数日。ここ2、3日持ちこたえられれば、何とかなるかもしれない、というのが筆者の印象。つまりこれまでの1週間の攻撃が、今のロシア軍の限界なのである。其のせいかどうか、ロシア側から、色々停戦交渉に向けてと思われる発言が出ている。
1、アフリカでのラブロフ発言・・・経済制裁を止めれば小麦の輸出に問題はなくなる。
2、小麦輸出に関するプーチン発言・・・ウクライナがオデーサの機雷を除去すれば、小麦輸出に障害はない。但しこれは機雷を除去させたうえでオデーサに上陸作戦を行う魂胆かもしれないから、あまり信用できない。
3、小麦輸出に関するベラルーシのルカシェンコ発言・・・経済制裁をやめれば、ベラルーシ経由の小麦輸出に問題はない。
 いずれも小麦という西側の弱点をついてきているが、引き換えに経済制裁停止をもちだしていることから、結構経済制裁は効いているのだ。
 その他「一定の結果が出たから・・・」と云って、東部戦線総司令官のドヴォルニコフを更迭してみたり、どうもやることが後ろ向き。この「一定の成果が得られたので」という言葉は、権力者が担当者を首にするときに使う常用語。アベ内閣だって散々使っていた。プーチンは最早やる手を失ってきたのか?そして現在西側メデイアを賑合わせて居るのが、プーチン後継者問題。様々な説が飛び交っていますが、これはというのがいない。
 後継者が取りざたされるのは、独裁者の健康が不安視される時だ。スターリンもそうだったし、毛沢東もそうだった。必ず奪権闘争が始まり、思いがけない人物が権力を握る。今のところプーチン後継本命はパドルシェフと云われている。プーチンと同じKGB出身。今も国家の保安部門をおさえている。
 そこで思い出されるのがスターリン時代末期。この時期スターリン後継者本命とされていたのはGPU長官として、ソ連の治安・情報を抑えていたべリア。ところがスターリンが死ぬと、まさかと思っていたフルシチョフ他のクーデターで、べリアは逮捕・処刑された。これと同じことが起こらないと云えないのがロシアである。
(22/06/06)

近々プーチンがトルコを訪問し、ウクライナ十停戦協議について話し合うという報道。何故トルコなのか?そして今のウクライナ戦争に於けるトルコのスタンスは如何なるものか?
1、トルコとロシアとの関係
 今の中東情勢などを見ると、如何にもロシアとトルコは上手くいっているように見える。但しこれはそう見えるだけの蜃気楼の可能性の方が強い。そもそもロシアとトルコとはオスマントルコ以来、不倶戴天の中だった。17世紀、黒海北岸つまりウクライナ南部からクリミア半島にかけてはトルコの領土だった。それだけでなく、カフカス地方も同じイスラム圏ということで、トルコの影響下にあった。18世紀以降強大化したモスクワ大公国が急膨張しロシア帝国と称して、19世紀前半にかけてウクライナ、クリミア、カフカスを征服していった・・・10度に及ぶ露土戦争。更に20世紀に入ると二度のバルカン戦争で、トルコはバルカン地域の領土の殆どをロシアやセルビアに奪われてしまった。
つまりトルコにとって、ロシアは数100年かけて築いてきた領土を、武力で奪い取った仇敵なのである。それにも拘わらず今トルコがロシアに接近するのは何故か?それは西欧との関係が影響している。
2、トルコと西欧との関係
 18世紀までは西欧社会の最大の脅威はオスマントルコ帝国だった。しかし19世紀になるとこれにとって代わったのがロシア帝国。トルコにとって敵の敵は見方。そこで19世紀以降トルコは西欧接近、ヨーロッパ化政策をとる。19世紀以降、軍備も西欧型を取り入れたり、後半には議会制度を取りれたりする。無論反西欧派の巻き返しもあるから簡単にはいかない。しかし西欧の反応は冷たく、オリエンタリズムといういかがわしい芸術運動の所為もあって、西欧はトルコをヨーロッパの一部とはみなさなかった。
 第一次大戦後、クーデターで政権を奪ったケマル・パシャは大胆な西欧化政策をとった。それは議会制民主主義の採用、政教分離、男女平等、教育の義務化の他に、アラビア語、男性のトルコ帽、女性のスカーフの禁止等である。範を取ったのは「日本の明治維新。
 さらに重要なことはヨーロッパの紛争に対する不介入原則である。この結果、第二次大戦でも中立を守ったので、戦後も独立を維持できた。一方トルコの中立維持は連合国にとっても極めて重要だった。何故ならもしトルコがドイツ側について参戦すれば、ドイツは対ソ戦では、ボスフォラスーダーダネルス海峡を経て、ウクライナ南岸に補給路を作れる。又ドイツ軍の領内通過を認めれば、ドイツは中東に北から進行できる。これと西から迫るロンメル軍と合わせれば、イギリス軍をイラクで挟撃できる。そうなれば、第二次大戦の様相もかなり変わった者になった可能性はある。というわけでトルコの中立政策は第二次大戦の帰趨にも大きく影響しているのである。
 戦後トルコはソ連の脅威に対抗するため、NATOに加盟する。また、80年代以降、EUができるとトルコは何度もEU加盟申請を行っている。ところがEUの反応は冷淡で、やれ死刑制度が残っているとか、イスラム国家だとか色々難癖をつけてEU加盟を拒否し続けてきた。この根本原因は西欧社会に根強いアジア蔑視が残っているからである。これはロシアに対する西欧の見方にも共通する。
3、ロシアとトルコの接近
 90年代になると、従来世俗主義だったトルコのイスラム社会にも原理主義傾向が強くなってきた。この風潮をバックに政権を取ったのが現在の大統領エルドアンである。彼は首相となって、西欧型の新自由主義政策を取って経済を急成長させた。その後大統領になると、大統領権限を強め、更にイスラム原理主義を取りこみ保守的傾向を強めた。これに反発したのが国防軍の一部で、反エルドアンクーデターを計画したが、事前に発覚。全員逮捕となった。
 エルドアンはこのバックに欧米がいると睨み、反欧米色を強め、ロシアとの接近を諮る。元々ロシア人には西欧から軽く見られているという劣等感・・・特にプーチンはそれが強い・・・があ、それが反西欧感情を産む。そこにトルコも同じような目にあっていると思えば、これはいいチャンスとばかり、接近するのは当たり前。つまりトルコを手先に使って西欧を振り回すことができる。あわよくばNATOの分裂だ。先月のフインランド、スウェーデンNATO 加盟にトルコが頑強に反対したのも、プーチンの入れ知恵かもしれない。
 さて物事、なんでもプーチンの思ったように動くでしょうか?1、で述べたようにロシアとトルコとは400年以上に及ぶ永い対立関係にある。それは常にトルコが負け、領土を奪われる歴史だ。これは国家・民族の記憶に深く刻まれている。現在のロシア/トルコ友好関係は、もとを糺せばプーチン、エルドアン2人の思惑が一致しただけで、状況が変われば何時でもひっくり返る危ういものだ。
 問題は西欧が、トルコが何故反西欧にシフトし、ロシアに接近したか、その原因を作ったのはだれか、その関係を理解していないことである。。
(22/06/04)

 ウクライナ東部に於けるロシアの攻勢が激化を見せています。要衝セヴェルドネツクの陥落は間もないでしょう。私はウクライナ軍は戦闘能力が残っている限り、後退して戦力の回復を図り、ロシア軍を深く、長距離砲の射程内まで誘い込むことが得策と思います。
 そこで重要なことは射程300㎞と云われるアメリカ製長距離砲や長距離多連装ロケット砲の供与。これは当初からウクライナから要求されていたが、バイデン政権が第三次大戦を恐れて供与を躊躇したもの。これだからバイデンは駄目なのだ。
 第三次大戦など、枯れ尾花に過ぎない幽霊だ。この戦争が始まった頃は、筆者もその可能性を考えていたが、いまやフェイズが変わり、第三次大戦など起こりえない、と断言する。そもそもロシアには、第三次世界大戦を戦えるだけの力はない。世界大戦というからには、戦場は世界的に広がり、それぞれが連合・同盟を組んで戦うものだ。
 ウクライナ対ロシアとの戦いを第三次大戦の起点とすると、三か月後の世界情勢はどうなったか。ウクライナ側には、西部では米英を始めとするNATO諸国が武器供給による軍事支援、東部では日本、韓国、台湾がウクライナ連携、経済支援を表明している。
 一方ロシア側では、今のところロシアに兵士どころか、武器すら供与する国は現れていない。先日開かれたCSTO首脳会議でも、みんな口先だけはロシア支持を打ち出すが、武器や兵士供与のような具体策は一切触れない。最大の支援国であるはずの中国も、習近平は最大限の協力を、などといってプーチンを喜ばせるが、なにもしない。それどころか、ロシア批判のSNS投稿を黙認するケースが増えてきている。そろそろ逃げ時を探っているのか? つまり幾らプーチンが世界戦争に持ち込もうとしても、それに付き合う国は世界にいないのである。
 又、ロシア自身の軍事資源も枯渇しつつある。兵力不足のため志願兵の年齢制限を取っ払ったり、半世紀以上前のポンコツT62を倉庫から引き出し兵器を補充したりする始末。こんなの本当に動くのでしょうか?ろくな整備がなされているはずがない。今のロシア軍にとって、まともに戦える戦場はウクライナ東部ドンパス地方だけだ。つまり世界戦争に発展するわけはない。
 従ってここでロシアを徹底的にたたけば、戦争は思ったより早く終結する。戦争を早く終わらせたければ、兵力を思いきって集中することである。ここでまたバイデンの悪い癖が出た。アフガニスタンの時もそうだったが、やるべき時に何もせず、苦い決定を避ける癖である。
(22/05/31)

 昨日プーチンが病院でウクライナの戦闘での負傷兵を見舞う様子が公開されました。某民放BS報道番組でも放映されたので筆者も見ましたが、負傷兵といってもみんな元気で、何処も怪我をした様子は見られない。何処を怪我したんだ!保険金目当ての仮病ではないか?と、思ってしまうのである。番組キャスターも「みんな元気そうですねえ、怪我した様には見えません」と云ってましたが、誰が見ても同じことを思うのだ。
 つまりあれはプーチン支持率を上げるためのプロパガンダ映像。即ちヤラセだ。そういえば巡洋艦モスクワが沈められた後の勲章授与式でも、あの映像はヤラセだという批判情報がロシアネットにも現れた。
 番組の主テーマはプーチン後のロシア。多分、世界的にこのテーマへの関心が高くなっているのだろう。ロシア大統領選挙まで後1年あまり。こういう時期にこういうプロパンが映像を公開するということは、プーチンはまだまだ大統領職に意欲を持っているということだ。その番組ではポストプーチンのパターンとして、次の4類型を挙げていた。
1)任期の延長
2)戒厳令
3)傀儡を作って院政
4)任期内での退陣
 番組では1)から3)については、具体的に解説していたが、何故か4)はスルー。4)は病死、クーデター、暗殺のようなケースが考えられる。筆者としては、これが一番興味があるし、ありそうな気もする。おそらくプーチンが最も恐れるのがこのケースだ。これを避けるためにはドンパス地方の確保は至上命題。無論プーチン運命共同体のシロビキや、それに一蓮托生のショイグら軍幹部も同じだ。現在のウクライナ東部の戦いは、プーチン・シロビキの生き残り作戦だ。それを一番わかっていないのがキッシンジャーのような意気地なし保守派や新自由主義者達。しかしこんなの未だ生きていたんですねえ。本人自身も生きた化石だが、云ってることも化石のような理屈。さっさとあの世に行くべきだ。
 キッシンジャーの立ち位置は、常に事の善悪、モラル、人権は別にしておいて、現状固定で安定を諮るというもの。しかし自分の利益だけは手放さない。だから毛沢東とも手を握り、ベトナムをソ連に売り渡した。プラグマティズムといえばそれまでだが、悪の存在を認めるという点で、カインの子孫、無思想・無節操の典型。それはイーロンマスクやジョンべゾスなどIT長者、日本では橋下徹、堀江、竹中平蔵、麻生太郎などの新自由主義者と共通する。新自由主義経済が望み、前提とする世界とは、中に汚職、暴力、縁故・依怙贔屓、不平等、差別等あらゆる悪が渦巻いていても、それは無視され表面上は何事もなく、昨日も今日も同じ日常が続く世界である。
 プーチンも一見愛国者・民族主義者を気取るが、実態は彼ら新自由主義者と同類だ。何故なら今の戦争でロシアや世界の富は次々と消えていくが、消えた富は廻りまわってプーチンとその周りに集まってくる様になっている。そう仕向けているのはプーチンだが、背後にキッシンジャーが居て、指南しているのではないか。
(22/05/27)

 ウクライナ東部ルガンスク州でのロシア軍の攻勢が熾烈を極めているという報道。そりゃそうだろう。キーウ攻略に失敗し、ハルキウからも撤退。マリオポリは攻略したが、三カ月近く掛かっている。今度の攻勢が、いわば最後のチャンスだ。これに失敗すれば、プーチンの求心力は一気に低下し、支持率にも影響する。
 戦争の局面はイジュームーセヴェロドネツク三角地帯を巡る攻防戦。ロシア軍はこの三角地帯に対し、北西、東、南東の三方から圧力をかけ、立てこもるウクライナ軍を包囲する構え。一方ウクライナ軍は、北方でドン川を渡河し、ロシア軍補給路を断つ構え。後方補給に難点を抱えるロシア軍としては、なんとしてでも早期にこの三角帯を奪取し、ルガンスク州を確保した段階で、講和に持ち込みたいというのが・・・軍部の・・・本音。しかしプーチンがそれだけで満足するかどうかは、わからない。
 逆にウクライナがこの地域を守り切れれば、天秤の針は大きくウクライナ側に傾く。そうなればこれまで日和見を決め込んできた、中国やインド、ベラルーシ他のCSTO諸国も、態度を明らかにせざるをえなくなる。従って、現在のウクライナ東部戦線の帰趨は重要である。
 筆者が考えているのは戦略的撤退案である。イジューム三角帯のウクライナ軍を一旦後方に引き揚げる。セヴェロドネツク正面が開けば、ロシア軍はウクライナが撤退したと勘違いし、攻撃前進に移る。すると後方が手薄になる。元々後方兵站を軽視し、その確保防衛が苦手なロシア軍では、前進した後を埋めようという発想もないし、埋められるだけの兵力も残っていない。
 仕方がないから、両翼の部隊を正面軍の後方に振り向けると、その後方に又隙間ができる。そこに集中して攻撃を加えればれば、ロシア軍端部は崩壊しウクライナ軍による二重包囲が完成できる。21世紀版「タンネンベルグ」である。やってみますか?
(22/05/23)

 暫く姿をくらまし、ひょっとしたらあの世に行ったのかと思っていたゲラシモフが、突然姿を現しました。但しアメリカのミリーとの電話会談なので、本当の姿は見えていない。それでも生きていたのは間違いないようだし、アメリカの統合参謀会議議長と会談するのだから、参謀総長のポストは維持されているようだ。
 ウクライナ戦争開始以来、ロシア軍はチョンボ続き。キーウは結局落せず撤退。局面打開で東部に戦線を移したはいいものの、ハルキウも結局落せず撤退。ドネツク地方でもなかなからちが明かない。マリオポリ攻略には3カ月近く掛かっている。この原因の一つに数えられるのが、当初の作戦計画の杜撰さ、その後の作戦指導のお粗末ぶり。通常この責任は軍トップである7ゲラシモフとショイグが負うべきだが、2人とも未だにプーチンのそばにいる。何故か?
 ショイグもゲラシモフも、プーチンを取り巻くシロビキのメンバーである。シロビキを構成するものは、旧KGBの血を引くFSBのメンバー、産軍官複合体、プーチン派オリガルヒら。
 シロビキとはロシアを食い物にする、白蟻ともいうべき利権集団。彼らは利権を分かち合う同盟であるが、一方で互いの弱みを握り、握られの三すくみ状態。つまりショイグもゲラシモフも、何らかのプーチンの弱み・・・つまり利権スキャンダル・・・を握っているはずだ。彼らに手を出すということは、巨大な産軍官複合体を敵に回すことになる。だからプーチンは内心では腸が煮えくり返ってるが、手を出せない。いわばプーチンも又脅されているのだ。
 今のロシア権力構造は、プーチンとその側近、FSB、産軍官複合体のバランスで保たれていると云ってよい。もしそのどれかが崩れれば、ロシア権力構造は一挙に流動化し、それこそ何が起こるかわからない。三番目の革命になるかもしれない。そして今クレムリン内部で繰り広げられているのが、シロビキ同士の権力闘争だ。
(22/05/21)

 マリウポリのウクライナ残存兵が降伏しました。これでロシアはマリウポリを制圧したと発表しましたが、これまでマリオポリ制圧声明は何度も出ており、いわば失敗を繰り返してきた挙句というわけだ。マリウポリ戦は結果としてアゾフ大隊の降伏で終わったが、この間の戦闘は北方ハリキウ奪還の時間を稼いだわけで、戦略的意義は大きい。この間ロシアはハリキウを失い、ひたすらウクライナ東部への・・・軍事的脅威にはならない学校や病院目当ての・・・ミサイル攻撃を繰り返すのみ。その間ロシアは貴重なミサイルを浪費し続けている。ウクライナは戦略的勝利を得たが、プーチンは戦術的勝利は得たものの、戦略的勝利を逃した。
 マリウポリ陥落により、戦闘の焦点は当然北方のイジウム方面に移る。勝敗の鍵は、両軍ともこの地域にどれだけの兵力を集中できるかである。兵力集中のポイントを握るのは兵站補給能力。ロシアは背後に本国を控えているため、補給路も短く運搬過程での安全も確保される。逆にウクライナの主要武器補給は欧米に頼っており、その入り口はポーランドとルーマニア国境。そこから東部の前線まで2000㎞近い距離がある。ロシアはその経路を自由にミサイルや空爆で攻撃できる。従って、誰が見てもロシアが有利なのは当たり前だ。
 しかし今世界の大方の専門家の見方は、ウクライナ有利である。何故か?ロシア軍側で挙げられるのは(1)指揮官の作戦・指揮能力の拙劣sさ、(2)兵士の士気・練度の低さ、(3)個々の兵器の性能の悪さ・・・・T90戦車など、もうちょっとマシかと思ったが、あれではまるで鉄の棺桶だ・・・などである。
 ここでもうひとつ筆者が加えておきたいのは、4、本国で調達された物資が、どれだけ無事前線に届くか、という問題である。幾ら本国で作っても、その半分しか届かなければ、戦争にならない。こういう問題がロシア軍では発生しかねないのである。
1)ロシア軍は伝統的に後方兵站を軽視する。18~19世紀にかけて、ロシアは軍事力を使って領土を大幅に拡張したが、必要な食料・燃料は原則現地調達、つまり略奪で賄った。20世紀最大の戦争、第二次大戦での独ソ戦でも、武器弾薬はアメリカの援助に頼り、食料衣料は略奪だ。
2)今の日本で宅配業者を使ば、期日指定しておけば、何処にモノを送るのでも期日までには間違いなく届く。それは宅配業者の配送システムがコンピューターでシステム化されており、配送情報が即時に伝達されるからである。また、宅配業者も拠点ごとに配送センターを作って、荷物の仕訳を自動化しているため無駄が生じない。
 さてロシアでこんな細かい芸当が期待できるでしょうか?配送の合理化を阻む要因は、長年続く硬直した官僚主義、自己中心主義である。おそらく本国の後方から送られてきた膨大な資材は、前線からの要求を無視して何処かの集積地に滞留し、そのままになるでしょう。
3)、折角の資材が中間のどこかで行方不明になることがある。つまり資材の横流しである。横流しされる資材は食料、医薬品、自動車とかエンジンなどの機械製品などが考えられる。横流しされた資材は闇のマーケットに流れ、誰かの利権に消える。
 そして上記の体質はロシア軍及びロシア社会に深く根付いたもので、トップを変えたところで容易に変わるつものではない。というわけで、今後戦線がドンパス方面に移行しても、ロシア軍の戦法はこれまでと何ら変わらず、同じ失敗を繰り返すだろう、というのが筆者の見方。
(22/05/19)

 本日ウクライナ政府がハリコフの制圧と解放を発表しました。三月から四月上旬にかけては首都キーウ攻防戦がメインでしたが、これが四月初めに型が付き、次の戦局がどうなるかに話題が移りました。  この時期、筆者は(1)第1段階としてハリコフ奪還。第2段階としてドンパス地方をドローンで叩いて、ロシア軍の補給路を分断し、ロシア軍を混乱に導く、というシナリオを考えました(孤独なロシアよ何処へ行く4/10).。なんだか第一段階までは筆者の考えた通りになっています。
 更にドネツ河渡河地点で、ウクライナ軍の待ち伏せにあったロシア軍一個大隊戦闘団、車両数10両と兵員約1000人が壊滅したという情報。ウクライナ国防省は東部ルガンスク方面でのロシア軍が一斉後退を始めていると発表。これまた嘘か本当か分からないが、ロシアで反プーチンクーデター計画が進行中と発表*。
 少なくともこれらの情報から推測されるのは、現在のロシア軍は相当レベルの混乱に陥っていることだ。ひょっとすると最前線では、兵士達のサボタージュが始まっているかもしれない。これが拡大すると、反乱・革命となる。
 戦争が始まって以来、ロシア軍は陸海合わせ20人近い将官が戦死又は解任されている。参謀総長のゲラシモフまで解任の噂がある。実戦を指揮する中堅若手将校の損害はこれをはるかに上回り、おそらく数1000人規模に上るだろう。幾ら臨時に兵士を動員したところで、指揮官がいなければ戦争はできない。
 プロの軍人が払底してくると、考えられるのはプーチンが信頼する・・・最早軍人は信用出来ない・・・情報機関(FSB)や他のセクションが替わって指揮を取る、という変則ケースである。これは全く例外がないではない。第二次大戦末期には、親衛隊が国防軍を指揮下に置いたケースがある。又独ソ戦初期には、赤軍の指揮官が戦死したので、政治委員が指揮をとった例がある。しかしそのどれも例外的措置であり、軍隊としては末期症状と云ってよい。こうなればクーデターもやむを得なくなる。そうなる前にプーチンは癌で倒れれば、将来彼は英雄として称えられるかもしれない。
*これは少し怪しい。クーデター計画は極秘中の極秘。仮にクーデター首謀者側が第三国の支援・了解をyるために計画を伝えたとしても、伝えられた側は公表しない。何故ならこういう家核があると知ると、政権側はより用心深くなり、クーデター側に被害が及ぶ可能性があるからだ。従って、これは今のところウクライナ側が仕掛けたプーチンゆさぶり作戦の一環と見たほうが良い。
(22/05/15)

 5.09前後から巷間に拡散しているのが、6月ロシア軍崩壊説。武器・弾薬・兵員等軍事資源の枯渇から、6月にはロシア軍は戦闘を継続できないだろうと云う予測だ。実はこの予測は3月半ばころから出ていた。出所はイギリス国防省とかアメリカCIAである。三月以降の戦局展開を見てみると、全部が全部ではないが、これらから出てきた情報が結構当たっている。多分ロシア政府中でもFSBや、軍部内に確実な情報源があって、それを基にしていることは容易に想像できる。ということは。6月崩壊説も、それなりに信憑性があると見てもよい。
 では本当に6月にロシア軍が崩壊したらどうなるでしょうか?いろんなケースが考えられます。その中の一つに政権が転覆し、プーチンが亡命するケースがある。実は既に亡命の準備をしているのではないかと考えられる節がある。それが一つは5.09演説である。あの何の展望もない、言い訳だらけの演説の中にロシアへの絶望感が込められている。
 もう一つが早くも出てきたプーチン後継者候補。政府系ネットテレグラムに出てきた情報だ。これにはパトリシェフ以下4人の名前が挙がっている。この4人、プーチンへの忠誠心だけでのし上がってきただけで能力は不明。国防相のショイグの名前もあるが、これの無能ぶりはこれまでの戦績で実証済みだ。間違った情報を鵜呑みにして、プーチンに届けた他のFSB長官も同様。こういうろくでもないのに後事を委ねなくならないとすると、後は亡命しかない。
 筆者はこの戦争が始まったときから、いざとなればプーチンはロシアを後にするのではないかとおもっていた。それはスイスにいる2番目の嫁と娘。彼女らはプーチンから莫大な資産を与えられている。それとヨットをはじめ海外に隠匿されている莫大なプーチン資産。これなどは明らかに亡命準備。
 では何処に亡命するのか?そもそも彼の亡命を受け入れる国などあるのか?彼が隠匿しているはずの個人資産も一緒なら話は別だが、着の身着のままならこんな面倒な人間を引き受ける国はない。脱出ルートが確保されれば、アフリカ特にエチオピアやスーダン当たりに身を潜める可能性はある。結局、地獄の沙汰もマネー次第なのである。
(22/05/11)

 何が飛び出すか?世界中が注目した5.09プーチン演説。期待に反して何も飛び出さなかった。筆者は次の2点で、プーチンは最早弱気になっていると考える。一つは戦争宣言も、総動員令も無かったこと。もう一つは、終末機(Ilu80)やブラックジャックが出てこなかったことである。
1、世間では、5.09に何らかの勝利宣言或いは対ウクライナ宣戦布告や総動員令を出すのではないかとみていたが、結局何も出なかった。むしろ出せなかったと云った方が実情に近いだろう。
 演説冒頭の現在戦況報告の中で、プーチンは現在の戦闘の意義を、ドンパス地方をネオナチからの解放と意義付け、ウクライナのウの字も出さなかった。これはドンパス地方をロシア領とし、今の戦闘をドンパスへのNATOに支援されたネオナチから防衛するため、或いはウクライナ全体をロシアの一部とし、ロシア国内での紛争にすり替え、西側諸国の対ウクライナ支援をロシア内政への干渉とする狙いだろう。
 国内の紛争処理なら、宣戦布告も総動員令も必要ない。もしこれをやれば、ウクライナを正式な独立国と認めることになり、これまでのクリミヤ併合やドンパス紛争介入の正当性を失うからだ。
2、終末機も大型爆撃機(Tu160ブラックジャック)も登場しなかった。ロシア側は天候不順を理由に挙げているが、そんなに強い風が吹いていたようには見えない。この理由については、誰からも未だ合理的な説明が出来ていない。唯一あるとすれば、プーチンの頭に何か神のお告げがあっったのかもしれない。そういえば、開会の時、入場してきたショイグ国防相が十字を切っていたのが印象深かった。つまり5.09対独戦勝記念日は、プーチン=ロシアにとって、最早宗教行事になっているのだ。
 では何が彼を弱気にさせたのか?神のお告げは何か?一つは想いもよらなかった戦死傷の数だ。イギリスやウクライナ国防省の推計では戦死23000人前後。負傷者を含めれば、おそらく6万とか7万人オーダーの損害になるだろう。これが明らかになれば、今のプーチン支持票がどう動くか分からない。そして明らかにならない保障はない。
 二つ目は経済制裁が効果を発揮しだしたことである。戦車・装甲車・艦艇などの正面装備も、馬鹿にならない損害を受けている。更にミサイルを打ちまくったため、補充が効かなくなっている。つまり継戦能力が次第に低下してきている。
 ロシアの継戦能力については諸説あって、早ければ今年5月末か6月、遅くとも年内とバラバラだが、少なくとも今年の夏か秋ころには、何らかの形で傾向が明らかになると考えられる。そしてこのロシアの崩壊シナリオを最も気にしているのが、中国の習近平。プーチンが思惑通りウクライナを屈服させることができれば、台湾開放への追い風になる。逆の場合は戦略を見直さなければならない。そして日本も、これまでの重火器中心の硬直した防衛政策ではなく、軽火器とITを駆使したハイテク防衛に舵を切らねばならない。
(22/05/10)

 明日5.09はロシアの対独戦勝記念日で、これを成功させるために、ロシア軍は攻勢を強めるという観測が強かった。しかしそれはウクライナ軍も同様で、戦勝記念日を失敗させプーチンに恥を掻かせるために攻勢を強める。
 その証拠が昨日発表された、黒海艦隊のフリゲート「アドミラル マカロフ」の撃沈*。又東北戦線ハリコフ、イジューム方面で反撃が強化。マカロフは日露戦争当時のロシア旅順艦隊司令官。司馬遼太郎が「坂の上の雲」で誉めた、数少ないロシア軍人の一人。ロシア海軍の栄光でもある。それを撃沈されたのだからロシア海軍は大恥だ。プーチンはカンカンだろう。”モスクワ”沈没に続く失態だ。こんなことで、ロシア海軍軍人は戦勝式典に招待されるだろうか?
 また、戦勝式典には、大型の核戦争指揮機Il80と並んで、戦略爆撃機Tu140、通称ブラックジャックが登場する予定。この爆撃機、アメリカのB-1ランサーの対抗馬として開発されたのだろうが、最早時代遅れ。開発思想が20世紀そのまま。機体の印象は例のTuコンコルドスキーそのままだ。ステルス性もなく、アメリカ本土爆撃に向かっても、アメリカに到着するまでにみんな撃墜されてしまう。
 戦勝式典でプーチンが戦争宣言をし、予備役100万を動員するなんて説もあるが、そんなことできるわけがない。やった処で、持たせる武器がない。中古品を引っ張り出してきても、欧米製最新兵器で武装しているウクライナ軍の餌食になるだけだ。プーチンが攻勢を強めれば強めるほど、ロシア兵の犠牲は増え、ウクライナ東部、南部はロシア兵の墓場と化すだろう。
*なおその後、これは誤報の可能性が出てきた。
(22/05/08)

 プーチンが頼りにするのが同盟国CSTO6か国。中でもベラルーシとカザフスタンの存在感は大きい。この中で筆者が興味を持つのが、ベラルーシの独裁者ルカシェンコである。昨日BS-TBS番組で、ゲストスピーカーの元統幕議長河野が「ルカシェンコはしたたかだから、プーチンと心中する気はサラサラない」と解説。筆者も同意見だ。
 ルカシェンコの置かれた立場は、第二次大戦中のスペインフランコのそれに重なる。この時スペインはドイツと英米連合国に挟まれ、極めてデリケートな立場にあった。38年スペイン内戦でフランコが勝利できたのは、ドイツ・イタリアの支援の御かげ。ヒトラーに対して足を向けて眠れない。しかし国の独立と国家の利益は別問題だ。
 41年独ソ戦が始まった。この時スペインは「青師団」という部隊をドイツ軍に参加させた。ところがこの師団、建前は義勇兵で、スペイン政府は無関係。この大戦でドイツが勝てば、義勇兵を送ったということで、ヒトラーに恩を着せられる。逆に連合国が勝てば、あれは任意の義勇兵で、スペイン政府は無関係と言い逃れができる。典型的二股膏薬である。関ケ原の時の真田一族の戦略とそっくりである。
 43年北アフリカ戦線は緊急を極める。要するにイタリアからの輸送が、ジブラルタルに居るイギリス海軍によって邪魔されるからだ。そこでヒトラーはフランコをピレネーに呼び出して、ジブラルタル攻略を要請した。それに対するフランコの答えは、「今のスペインの実力では攻略は不可能だ。ドイツ軍10個師団の支援が必要だ」というもの。ドイツは東部戦線でも苦戦が続いている。とても10個師団なんて出せない。後でヒトラーはフランコを評して「あいつと話をしているくらいなら、歯医者で虫歯を抜かれたほうがましだ」。つまりフランコがやったことは、ドイツと連合国の間で如何に上手く立ち回って、戦争に拘わらないことだけだ。
 ルカシェンコも同じで、彼がやっているのはプーチンとNATO の間に挟まれて、如何に独立を維持するかである。うっかりプーチンに刃向かえば、たちまちロシア軍の侵攻を受ける。かといってウクライナに派兵すれば、経済制裁は更にきつくなる。そこでルカシェンコがやったことと言えば、開戦後一カ月ほど経ってから国境近くに軍を派遣したが、そのまま。ベラルーシ国内に核配備を認める国民投票を実施した。プーチンはベラルーシからの派兵を要請したが、未だに実現していない。つまりルカシェンコはロシアとNATO を天秤にかけ、間を立ち回る作戦を続けているだけ。プーチンも内心ムカついているだろう。
 カザフスタンのトカエフはルカシェンコに比べ、有利である。何故なら、カザフは今の戦場から遠く、直ぐに派兵できない。またカザフスタンは中国にとって一帯一路の中心にあり、その重要度はウクライナ以上である。ロシアがカザフに対し、一元的影響力を及ぼすことを中国は認める訳はない。つまり中国の力を利用してロシアを牽制することができる。皆さんそれぞれに大変だ。一番気楽なのは、ひょっとして日本の総理大臣かもしれない。
(22/05/06)

  アラブやトルコなど遊牧民の商人は、最初に高値を吹っ掛け、相手の出方を見て少しづつ値段を下げ、折り合いをつける。一方ナニワ商人は、最初安い値段で相手を喜ばせ、相手の懐に飛び込む。それからゆっくり値段を釣り上げて、最期は相手を思い通りの商売に引きずり込む。
 ウクライナ戦争の停戦条件について、ロシアは最初からウクライナが飲めないような条件を突きつけた。例えば政権の非ナチ化とか、ウクライナの非武装化など、ウクライナの主権を認めない条件である。これなどステップ地帯の遊牧民の交渉方法である。そういえばロシアは中世13世紀から16世紀にかけて、およそ200年以上についえモンゴルの支配を受けた。その後もトルコとの戦争でステップ流の交渉術を身に着けたのだろう。
 そして先般、外相のラブロフは停戦合意の条件として対ロ経済制裁の停止、西側からの武器援助の停止を要求した。値段を更に釣り上げた訳である。これでは商売にはならない。さすがのナニワ商人もユダヤ商人も手を引くだろう。当にモンゴルのカーンのやり方だ。
 交渉における要求項目は、実は自分の弱みをさらけ出しているとも云える。つまりラブロフは、現在のロシアの弱点を明らかにしてくれたわけだ。それは対ロ経済制裁、対ウクライナ武器援助は、徐々に効いてきていることを認めたわけだ。やっぱりロシア人は交渉が下手なのだ。もっと下手なのが、鈴木宗男や橋下徹、杉村大蔵のような、対ロ宥和、早期停戦論者だろう。
(22/05/05)

 ロシア国防省が、ロシア南西部ウクライナ国境近くの燃料集積場をウクライナ空軍が爆撃したと発表。先月もウクライナのヘリがロシア軍燃料庫を爆撃したと発表した。これはウクライナ側が否定し、ロシアの自作自演とみられている。 しかし今回はウクライナは未だ否定も肯定もしていない。ひょっとすると本当かもしれない。もしそうなら、ロシアの防空システムは穴だらけということになる。先月の巡洋艦モスクワ撃沈事件でも、ロシア軍の防御に対する認識の甘さ、システムの能力不足が指摘されている。
 更に前線に作戦指導に出た参謀総長のゲラシモフが負傷したというニュース。更に少し前には東部戦線で将官一人が戦死している。これらを見ると、今やロシア軍の高級幹部の行動は、ピンポイントで見張られているといってよい。一番ビビったのはプーチンだろう。プーチンの行動だって、アメリカの偵察衛星で見張られているかもしれないのだ。ロシア軍はキーウ戦線での戦訓から、何も学んでいないとしか考えられない。ハイテクと情報を駆使した21世紀型戦争に、第二次大戦型の力押し作戦で立ち向かおうとしている。
 翻って我が日本はどうか?発想そのもはロシアと大差ないのではないか?最も遅れているのが、防衛省と自民党防衛族である。中でも噴飯は石破茂である。今更になって、やれもう一度イージスアショアの適地を探せとか、核シェルターの普及率が0.02%というのは異様だ、とか自分の責任はおっぽり出して大慌て。たかがプーチン如き二流人間の脅しにうろたえるな、と云いたい。こういう政治家のうろたえこそが、プーチンの狙いということが分かっていない。
 イージスアショアなど時代遅れの役立たず。筆者の言うレーザー防衛システムに切り替えるべきだ。核シェルターにしても、民間に丸投げで政府はなにもしない。それどころか東京都など、何も考えないで地下鉄や下水道を掘りまくったものだから、公共で整備しようにも場所がない。ビルやマンションを新築するときに核シェルターを義務付け、それに政府が補助金を出すようにすれば、もっと整備率は上がったろう。そういう政策を進めるのが政治家の役割だが、本人何もせずにプラモいじりだけ。それで防衛の専門家気取りなのだから、防衛大臣など小学生でも務まる。幼児性を脱却出来ぬまま、最早老外の域に達したと云えよう。
(22/05/02)

 四月に入って、ロシアでは東部戦線で総司令官を新任したり、マリオポリの攻勢を強めるなど、大きな進展が見られると思っていたが、実態はそれほどでもない。プーチンは相変わらず強気姿勢だが、現実には東部戦線のロシア軍の動きは鈍く停滞気味だ。これに対しアメリカ国防総省などは、ウクライナ軍の抵抗が強いとか、ロシア軍の士気低下などが影響していると見ている。ロシア軍中央・・・参謀本部・・・と現地軍との意思疎通が上手くいっていないかもしれない。
 ゲラシモフ参謀総長が現地に作戦指導に行っているという報道もあったが、これが本当なら、これは戦争で最もやってはならないことである。何故なら現地軍司令官・・・これはドボルニコフのこと・・・にとって最大の侮辱になるからだ。「おれが信用できないのか!おれはプーチンに信任されてきたのだ、テメエのいうことなんか聞けねえ」、というわけで現地軍と参謀本部が対立し、軍はバラバラになる。
 それはそうと、ロシア軍の進撃が今のままなら、5.09対独戦勝式典での対ウクライナ勝利宣言は不可能となる。そもそも対独戦勝記念式典とは何か?旧ソ連時代、最大の国家行事はいうまでもなく、10月の革命記念日で、この日には大規模な軍事パレードと合わせて最新式兵器も公開された。それに比べ対独戦勝記念日という日は聞いたことがない。全くやらなかったわけでもないだろうが、少なくとも西側情報機関やメデイアは革命記念日を重視していた。
 91年のソ連崩壊で、革命記念日は行われなくなった。エリツイン時代は経済的困難もあって、このような記念式典はあまり行われなかった。おまけに当時最大の対ロシア投資国はドイツだったから、反ドイツ的イベントは遠慮したのだろう。しかしどんな国でも、国民が一体化するイベントは欲しがるものである。特に強権的独裁国家はその傾向が強い。プーチンが目を付けたのが対独戦勝記念日で、それが大々的になったのはむしろプーチン政権下である。つまりこの日は、プーチンによるプーチンのための記念日なのだ。
 今の戦争そのものが、プーチンのための戦争なのだから、プーチンのための記念日に戦勝宣言ができなければ、様にならない。俺に恥を掛けやがって、コノヤローといいたいだろうが、軍隊が弱いのだから仕方がない。誰がこんな弱い軍隊にしたのかというとプーチン本人でもある。弱い軍隊に共通するのは、給料の中抜き、武器・弾薬の横流し、命令無視等軍律の乱れ、その背後にあるのが腐敗、特に軍・産・官複合体による構造的腐敗である。旧ソ連時代にその原型が出来上がり、エリツインの無責任がこれを放置し、プーチンの独裁がこれを拡大再生産した。その結果が今のロシア軍の惨状である。
 ところがこの弱いロシア軍が、いきなり精強な軍隊に変身することがある。それは敵がロシアの地・・・スラーヴィア ルーシ・・・に踏み込んできたときである。この時ロシア人民の基層にある愛国民族主義に火が付き、猛烈な抵抗を繰り広げる。これに気が付かなかったのが、ナポレオンとヒトラー。モスクワさえ落とせばあとは何とかなると、甘く見たのが大間違い。これがあるからアメリカもNATOもロシア本国には手を出さないのである。
(22/05/01)

 なんだかんだ云ってロシアーウクライナ戦争も、とうとう三か月目に入りました。この二カ月余りの戦闘で、ロシアは一体何を得たのでしょうか?得たとすればウクライナ東部国境からアゾフ海、クリミヤ北西部に接する狭い帯状地帯だけ。得たと云っても未だ安定しているわけではない。局所的な戦闘は未だ続いているし、何よりも開戦前に、ドンパス地域からロシアに避難したと云われる70万人のロシア系住民が、戻ったという話は聞いたことはない。失ったものは、1万とも2万ともいわれる兵士の生命、何百発のミサイル、1000両ともいわれる戦車・装甲車両、巡洋艦「モスクワ」。それと通貨ルーブルの価値とロシアという国の国際的信用。ロシア産ガス・石油の販売先。
 翻って対抗するウクライナはどうか?国民の生命やインフラを含む国家資産の損害は、遥かにロシアより大きい。しかしこの二カ月余の戦闘で見せた粘りは、欧米を含む自由主義陣営の信頼を勝ち取り、スウェーデン、フィンランドという伝統的中立国をNATO陣営に引き摺り込めた。これでバルト海はNATOの海となった。何よりもフランス大統領選で極右=一国孤立主義の拡大を食い止めた。プーチンはがっくりだ。
 さてここで漁夫の利を得たのがインド。この国は最初から日和見を決め込み、国連での対ロ制裁決議は棄権、G20でも日和見主義でロシアに恩を売り、何の支援もしないで格安値段で、ロシア産原油輸入に成功した。モデイの支持率は上がり、長期政権も間違いない。さすがインド商人、といいたいところだが、これは外交術としては最も幼稚な手法である。
 何故かというと、はじめから狙いが見え見えだからである。ロシアもアメリカもそれはとっくに見抜いている。今はロシアvsウクライナが拮抗しているから、どっちも何も云わないが、振り子の針がどちらかに傾いたとき、大きな揺り戻しがやってくるだろう。そうなればこんな二股外交は、直ぐに馬脚が現れる。
 それと他国のことだからどうでもよいのだが、はるか遠いロシアの原油を、どうやってインドまで運ぶのだろうか?陸上ルートの場合、今ロシアとインドを直接結ぶ鉄道やパイプラインはない。新たにt苦労とすると、どうしても中国やパキスタンを通らなくてはならない。両国ともインドとは国境問題で紛争を抱えている。おいそれと通してくれるわけはない。
 海上ルートとして黒海ー地中海ルートと太平洋ルートが考えられるが、前者はボスフォラスーダーダネルス海峡を通らなくてはならないが、海峡幅が狭く・・・・明石海峡位しかない・・・現在の標準である20万t級大型タンカーの通行は不可能。
 太平洋ルートは、ウラジョストックかナホトカでタンカーに積み替え、日本海を南下して南シナ海を経てマラッカ海峡に出るか、千島沖から太平洋に出、ロンボク海峡からスマトラ海に出る案が考えられる。太平洋も南シナ海もこれから台風シーズンに入る。航海が難しいだけでなく、アメリカの妨害が入ってくるのは当然。簡単には輸送できない。幾ら契約できても、モノが入ってこなければないのと同じ。これがモデイ政権の命取りにもなりかねない。二兎を追うものは一兎をも得ずだ。
 日本はどうかというと、まあまあ上手くやっているほうだと思う。橋下のような自分安全の日和見主義では、プーチンからは喜ばれるだろうが、欧米的には受け入れられない。相手から無条件停戦論が出てくることこそ、プーチンの狙いなのだ。そこが橋下なんかは分かっていないのだ。アホだから。
(22/04/27
)

 昔、東欧に続いてソ連が崩壊しロシアが登場したとき、ロシアは今は経済的にも政治的にもボロボロだが、なんといっても世界最大の資源大国。その資源は石油・天然ガスだけでなく金やダイヤ、さらにはレアメタルにも及ぶ。従ってロシアは将来必ず大国として復興すると考え、ロシアについて少し勉強してみようと思った。
 丁度娘が大学に入り第二外国語をどうしょうか、と云うので「これからはロシアや、フランス語など大勢いるから十パひとからげ。それに比べロシア語なら少人数教育やからサービスもええ。」といってロシア語を奨めたら「そうやな」、と云ってロシア語を選び、4年の時に、留年してモスクワ大学に行ってしまった。
 それはそうと、当時・・・今でもそうだが・・・ロシアというかロシア人に関する本は、一部の研究者向けを除いて一般向けには殆どなかった。ある国を理解するには、その国の政治や経済のような表向きのことより、その国民性を知るべきである。そしてそれを知るには、その宗教を知ることが有効である。
 そこで本屋を見ていると、近世から現代にかけての、ロシア正教徒の行動エピソードを幾つか紹介する本があった。それを読んだ感じでは、ロシア正教というのは我々が理解しているキリスト教とはかなり違っている、ということだ。そこに満ちているのは、非合理な神秘主義である。なんとなく異世界に来た感じがするのである。ひょっとすると、民族意識の基層では旧い異教信仰と習合しているのかもしれない。
 その非合理な精神が強い信仰心を作る。上に挙げた本では次のような例を紹介している。17世紀に皇帝の命令で宗教改革が行われたが、これに従わず、地下牢で餓死させられた公爵夫人。同じく命令に従わなかったために職を追われ、ウラルからシベリアまで流刑を重ねたモスクワ大司教。他には真冬のモスクワやサンクトペテルスブルグを素っ裸で徘徊する行者。どう見ても精神異常にしか見えないが、庶民どころかツアーリの尊敬まで集める始末。プーチンが毎年やる冬のモスクワ川での裸の洗礼儀式もその真似かもしれない。その他、中世から伝わる東方のキリスト教国・・・何故かそれが日本になる・・・を求めて、幕末に皇帝の許可を得て、日本にやってきたウラルコサックのグループ、等。
 ここにみられるのは、こうと決めたら絶対に崩れない強い信仰心である。この信仰心が、何時どのようにして現れたかは、それ自身興味があるが、この強い信仰心にスヴェトラーナルーシとか、スラーヴィアルーシといった選民意識が結びつくと、強い排他的民族愛国主義となる。現在注目されている、プーチンが今嵌ったノーヴォユーラシズムは、当にその政治的実践と云えよう。誰がはめたかというと、いうまでもなく悪友のドーギンとKGB腐れ縁のキリル総主教である。
 又ツアーリと直接結びつく事によって、新たなツアーリ信仰が生まれる。開戦以来のプーチンの支持率アップは、このツアーリ信仰をプーチンに重ねたもの。そして重要なことは、その信仰心が過去のツアーリ権力の下支えになって、政治と教会が一体化してきたことである。これがカトリックやプロテスタントと異なる。又東方正教会の中でもロシア正教が特に政治権力と結びつきやすかった原因でもある。
 1917年ボリシェビキ革命によって、ツアーリ信仰は排除されたはずだが、どっこいしぶとく生き残っていた。その残渣をすくいとって、新たな命を吹き込み再生拡大させたのが、プーチンと今のキリル総主教。果たしてこの二人、KGB時代以来の腐れ縁らしいから、どっちもどれだけ信心深いか分からない。プーチンが権力亡者の俗物ということは顕かだが、キリルだってどうだかわからない。2人そろってロシアを食い物にしていることは間違いない。
 今後のロシア=プーチンの行動を予測する上では、過去における政治とロシア正教との関係を見直すとともに、プーチン政権との相互依存関係を見逃してはならない。
(22/04/25)

 ロシア国防省の発表に伴い、プーチンがマリオポリでの戦闘中止を指示。そのビデオ映像が公開されました。テーブルを挟んで、プーチンとショイグが向かい合い、ショイグの経過報告と、それに対するプーチンの指示。この会談で興味ある点が三つあります。
1、プーチンとショイグの距離
 以前話題になったのは、長さ5m近い長テーブルの上端にプーチンが、末端にショイグと参謀総長のゲラシモフが並んで座っていた映像である。これはいかにもプーチンが軍の最高幹部を威圧しているように見え、軍から不満が出たのではないか?その結果が兵士の士気低下に繋がり、キーウ戦線の失敗となったとすれば大問題だ。
 今回は小さいテーブルを囲んで、プーチンとショイグが対等の関係で話し合っているように見える。軍の不平を和らげる効果をねらたのではあるまいか。
2、ショイグが平服だった
 上述の映像でもそうだが、これまでショイグが表に出るときは必ず軍服だった。しかし今回は平服である。ショイグは元々文官だから当然といえば当然なのだが、やや唐突の感は否めない。プーチンに何か心境の変化が生じたのか?或いはショイグ解任の前ぶれか?
3、プーチンの指示に兵士への慰労に関する点が多かった
 ショイグへの指示は大きく4項目に分けられる。内先の2項目はマリオポリ戦の今後への指示である。ここで明確にマリオポリ作戦中止が指示された。
 筆者の興味を惹いたのは、後の2項目である。一つは作戦参加将兵への叙勲。もう一つが死傷兵とその家族への、上限を定めない補償・手当。これは明らかにバラマキ作戦。逆に言うとそれだけ軍内に不平不満が貯まっているということだ。おそらく、これまでの戦争での戦死傷者数、なかでも徴集兵の数を聞いてプーチンがびっくりし、これでは人民の支持を失う。特にやばいのは「兵士の母の会」だ。これの支持を失えば、次の大統領選どころか5.09戦勝式典で喋る言葉もなくなる。何が何でも支持を取り付けなくてはならない。その結果出てきた答えが、勲章と補償のバラマキである。
 プーチン/ショイグ会談の目的は、一つは海外向け、もう一つが国内向けである。上記の1)、2)はどちらかと言えば、海外向けのソフト演出。3)は国内向けに、如何にも寛大な指導者であることをアピールする演出。しかし兵士への叙勲は5.09に行われるはず。その数が余りに多いと、逆効果になる。また、マリオポリ戦の結果、プーチンがウクライナに対し融和的態度をとれば、国内強硬派の反発を受けかねない。強硬派として挙げられるのは、軍やFSB内の強硬派、政府や議会内での強硬派、なかでも気を付けなくてはならないのは、ノヴォルーシ主義を掲げる民族愛国主義者と彼らを扇動するロシア正教会である。
(22/04/22)

 ロシア国防省がマリオポリを解放(占領)と発表しましたが、はて何処まで信用してよいものやら。要するにウクライナ軍の抵抗が収まったということか?戦争はこれからかも分からない。マリオポリが、ロシア軍にとってスターリングラードになるかもしれない。
(22/04/21)

 連日のウクライナ状勢報道ですが、一つ気になるのは,主にテレビ、週刊誌、新聞、ネット等における保守系メデイアを中心に、やれウクライナは頑張っている、ロシア軍は弱い、プーチンは絶体絶命だ、と今にもロシアが崩壊しそうな報道や解説が氾濫していることである。
 確かにウクライナは頑張っているし、ロシア軍内部の指揮命令系統の混乱、兵員士気の低下などはその通りなのだが、全体を見ればロシアの軍事力はまだまだ強大で、そう簡単には潰れそうもない・・・ただし潰れるときはあっという間だが。世間に振り撒かれているロシア窮状論は、西側支援を遅らせウクライナに不利に働くことに注意しなければならない。
 キーウ防衛後、アメリカやNATO諸国は、ウクライナに対し追加軍事支援を発表した。これを見てウクライナの攻撃力は各段に増加した、などと甘い見通しを語る評論家もいるがとんでもない。戦車の200台とか、榴弾砲の15門など、戦線の広さに比べれば、焼け石に水。又援助物資が無事ウクライナに届いたとしても、それを前線に届ける手段・ルートが確保されているかが問題だ。もしこれが不十分な段階にロシア軍の総反撃が始まれば、事態は相当深刻になる。
 世間にはアメリカの直接介入を、という無責任な声があるが、これには乗り越えるのが困難なハードルが少なくとも三つはある。
1)プーチンに核のボタンを押させないこと。
2) アメリカ中間選挙への悪影響を避けること。
3)ロシア人の愛国民族主義に火をつけないこと。
 1)、2)は云うまでもないが、問題は3)である。アメリカよりヨーロッパ各国は、これを懸念しているのではあるまいか?
 これまでも何度か触れているが、プーチン含めロシア人の深層心理の中には、なにかスピリチュアルなものがある。これが外敵に向かって集団的に湧き上がるのが、ロシア人特有の民族愛国主義である。中でもナロードニキと呼ばれる、ロシア社会の基層を作る農民層に強い。これに火が付くと手が付けられなくなる。これに比べれば、アベ晋三始め日本の自称民族主義者の説く愛国心など、只の見せかけ・偽善に過ぎない。
 かつて第二次大戦独ソ戦では、初期はスターリンの誤判断、指揮官の無能、国民の中の反ボリシェビズムもあって、ソ連はぼろ負けだったが、その後スターリンはこの戦争を「大祖国戦争」と言い直し、イデオロギー性を薄めて国民戦争にすり替えた。その結果、ドイツは果てしない消耗戦に巻き込まれてしまった。今も同じで、うっかりロシアの消耗戦に巻き込まれると、こちらのほうが先に消耗してしまう。だからヨーロッパ各国は対ロシア戦に及び腰になるのである。プーチンはこれを見越して消耗戦に持っていこうとするのだろう。
 これを打ち破るのは、最期はアメリカの物量戦しかない。現在ではこれに金融経済戦、情報戦が加わる。これはアメリカが有利だが、残念ながら結果が目に見えない。人々の眼を奪うのは、どこそこ地域を奪ったとか、第二次大戦型のアナログ情報である。人々がこれに捉われている限り、明確な戦略は打ち出せない。戦争終結まで、まだまだ先は長い。
(22/04/21)

 沈没したロシア巡洋艦モスクワ乗組員で行方不明になったのがいて、その父親がSNSで「うちの息子は何処に行ったんだ?みんな救助されたと云ったのは嘘か?」と発信したところ、大統領府は「それは海軍に聞いてくれ」とつれない返事。
 戦争でなにか都合が悪いことが起こると、当事者をどこかに隔離することはよくあること。日本でもミッドウエー海戦の後、全兵員は内地に引き上げても、上陸が禁止され別部署や激戦区に配置換えされた。敗戦の事実が外部に漏れては困るからだ。
 それと同じで、おそらく巡洋艦モスクワには当局にとって、外部に漏れてはまずいことがあったのだろう。息子は気の毒だが、救助漏れになったか、どこかの隔離施設に収容されているのだろう。スターリン時代なら、沈没の責任を取らされて処刑されたかもしれない。プーチンはそこまでやるだろうか?では海軍総司令官の閲兵を受けた100人余は、どうして助かったのか?本人或いは親が海軍上層部にコネがあって、そのおかげかもしれない。ロシアのような超アナログコネ社会ではあり得ることです。
(22/04/20)

 黒海で沈没したロシア巡洋艦艦モスクワ。その生存者100人余が海軍総司令官の閲兵を受けた。この艦は排水量が13000t近い。昔の日本の基準で言えば重巡洋艦に相当する。このクラスの艦の搭乗員数は概ね500人前後。
 ロシア政府は当初乗員全員を救出下といっている。だったら総司令官閲兵を受けたのは500人余でなくてはならない。残り400人は何処へ行ったのだ?あの世かそれとも刑務所か?
(22/04/18)

 

 これは昨日爆発を伴う重大事故を起こしたロシア黒海艦隊旗艦”巡洋艦”モスクワ。先代のモスクワは空母型のヘリ,VSTOL搭載巡洋艦。二代目は通常型になっている。新鋭艦と思われるが、ステルス性はなくミサイル攻撃には弱い。
 さて重大事故の原因だが、ウクライナはミサイル攻撃によるものと主張する。そうだとすればロシアの対艦ミサイル防衛システムが機能しなかったということだ。一方ロシアは単なる火災で片づける。そうなら艦内の安全システムに重大な欠陥があったことになる。その原因として考えられるのが整備、点検、システム操作等基本動作の手抜き。旗艦がこれだから他は推して知るべしだ。その根本は、ロシア軍内に巣くう産軍官複合体の汚職、腐敗にある。
 沈没しなくても、この艦は当分使用不能。黒海艦隊はその頭脳を失うことになる。大型の新鋭艦一隻を失うことは、国家にとっても大打撃。下手すれば1都市を失うことに匹敵する。
(22/04/14)
その後、沈没が確認されました(04/15)

マリエポリ攻防が山場を迎えています。昨日ロシア国防省はマリエポリのウクライナ軍1000名余りが「自主的に」降伏したと発表。「自主的に」というのが曲者で、これは自らが敵の降伏を勝ち取ったのではない、ということを意味する。嘘か本当か分からないのである。
 それに水を差したのが、黒海艦隊旗艦の巡洋艦モスクワの重大事故。これはロシアも認めているからガセネタではない。しかし前述の「自主的降伏」というのは怪しい。少なくともウクライナ政府は確認していない。こういうレトリックは昔から共産党の常套手段。侵略を解放と言ったり、個人崇拝、党独裁を民主集中制といったり、組合の乗っ取りを民主化と言ったりだ。多分このような情報を流し、ウクライナ軍の分断を図る宣伝戦の一環だろう。
 重要なことはこの手の偽旗作戦にひっ掛からないよう注意することだ。これにはある程度経験が必要だが、共産党との対立に経験がないものはうっかり引っ掛かりやすい。ネットを見ていると、早速ロシアとの対話和解を進めよというのが出てきている。日本では大阪の橋下とか鈴木宗男あたりがロシアのいい鴨だ。フランスでは極右のルペンだろう。最早プーチンの使い走りだ。石原慎太郎など、生きていたらどういうでしょうか?
22/04/14)

 新任のロシアウクライナ方面軍総司令官のドボルニコフという人物。前任はシリア方面軍司令官で手段を択ばぬ強引手法で、反政府軍を抑え込んだ。残忍で強硬ともいわれる。それはそうだろうが、問題はその能力である。又、軍事思想は旧ソ連軍の思想を受け継ぐ保守派で、いわば力による解決を信奉する一派とも言われる。これはプーチンの気に入るだろうが、ロシアにとって命取りになりかねない。
 シリア戦線で実績を挙げたといっても、相手は組織らしい組織もないISや反政府軍、せいぜいクルド人程度だ。彼らは西側の武器援助も殆どない。それに対しサリンのような毒物を使用するのだから、戦術という点では余り大したことはないのかもしれない。
 19世紀以降、ロシア軍は世界最強と言われた。しかしその実態はどうかというと、かなり眉唾。18、9世紀以降、ロシア軍が戦ってきた相手は主に辺境の遊牧民。組織もなにもなく、武装も前時代的で貧弱。ところが組織・規律を持った近代軍に対しては負け続き。質的劣性を兵士の数と、武器の量で補っただけなのだ。
 例えば19世紀半ばのクリミア戦争、後半の第二次アフガン戦争では英・仏に敗れ、20世紀初頭の日露戦争では日本に敗れ、第一次大戦ではドイツに降伏。つまり弱い相手には強いが、強い相手には弱い。その理由は古い戦法を頑固に墨守し、新しい戦法に切り替えることが出来ないからだろう。革命後、ソ連軍にもトハチェフスキーらの戦法改革派が現れたが、スターリンは彼らを反革命として処刑してしまった。ドボルニコフは、どうもこの粛清に生き残った守旧派、体制ベッタリ派に属すると思われる。そんな人間が、これまでウクライナ軍が展開してきた、情報・IT戦を理解出来る・・・この点はテレビによく登場する、日本の軍事専門家と称する素人集団にも共通している・・・でしょうか?。
 今のロシア軍の最大の問題は、兵士・将校の士気の低さ、武器の信頼度の低さ、補給、後方支援のお粗末ぶり。これらの背後にあるのは、プーチンをトップとする産軍官複合体の腐敗である。ドボルニコフもその一味なんだから改善は期待できない。それを隠すためには相変わらず力押し戦法で押しまくらなければならない。つまりこれまでの失敗を繰り返すだけだ。
(22/04/13)

(ロシア軍の略奪について・・・追記)
 キーウ周辺から撤退したロシア軍が、大規模な略奪をおこなっていたことが話題になっています。又マリオポリからの避難民を拘束して、彼らからも略奪を行っている。両者に共通するのは、ケータイ、スマホの略奪です。これを難民にロシア軍を撮影させないためとか、内部の記録から情報を盗み出すためとかといった類の説明がありますが、筆者は別の見方をしています。
 果たしてこの戦争はいつまで続くのか?それはプーチンの寿命と、ロシアの継戦能力にかかっています。ということはプーチンがあと何年生きていられるか、ロシア軍の装備があと何カ月維持できるかが問題になります。
1、プーチンの寿命
  世間では・・・例えばアホの舛添のように・・・この戦争は後10年は続くという人もいます。それはプーチンが後10年は生きているということが前提です。筆者は彼はあとせいぜい5年、下手すると今年の夏か秋にはこの世にいないかもしれないと思っている。理由はクーデターか暗殺です。
 このほどウクライナ戦線に新任司令官(ドボルニコフ)が着任した。彼は肩書上総司令官だ。ということは、プーチンはこれまでのショイグーグラシモフ路線を転換し、プーチンードウボルニコフ路線に切り替えたということだ。ショイグらが解任もしくは粛清されれば、それに連なるFSB幹部も粛清される。これが軍や政府内反プーチン派を刺激して、政変となるかもしれない。起こるとすれば早ければ5月初めか。
2、ロシア軍の継戦能力
 もう一つがロシア軍の兵備状況。これまでの戦闘でロシア軍自慢のT72、T90戦車のお粗末振りが分かった。それと同時に分かったのがミサイルの命中率の悪さだ。命中率僅か40%という驚くべき数字も上がっている。
 命中率が悪いのは別に安心でもない。何処に飛んでいくかわからないから余計厄介なのである。しかも開戦以来打ちまくっているから段々在庫が乏しくなる。だったら作れないいじゃないかと思うだろうが、ミサイルのような精密機器は、鉄工所で「はいそうですか」で作れるものではない。特に問題は半導体である。
 従来、ロシアに半導体を供給していたのはウクライナ。無論ウクライナからの供給はあり得ない。中国はどうか。中国も半導体を自給できない。それどころか自分自身半導体不足で困っている。現在世界の半導体生産の大部分を占めているのが、台湾と韓国。今後日本、アメリカも半導体生産国に加わる予定だが、まだ先の話。そしてこの四か国は皆ロシア制裁国である。
 ではロシア自身が自家生産できないか、というとこれまた難しい。半導体の素材は金属シリコン。その原材料は石英。石英という鉱物は何処にでもあるが、筆者が昔三菱マテリアルのある人に聞くと、少なくとも幅が3mぐらいある石英脈でないと採算が合わないらしい。ロシアならその程度の石英脈はありそうだが、そのあとが大変で、まず電気分解で99.7%ていどの金属シリコンを作り、さらにそれをイレブンナインまで精製しなければならない。実はこの技術を持っているのは日本だけなのだ。
 つまりロシアには原材料は豊富にあるが、それを最終製品にする技術ノウハウがない。そこで目を付けたのが占領地のケータイ、スマホ。これをミサイル部品に転用しようというわけだ。ウクライナから帰還する場合は、ケータイ、スマホを持って帰れ、当に21世紀版「総統小包」である。但し、こんな木に竹継ぐやり方が上手くいくわけがない。そのうち化けの皮がはがれるでしょう。ロシア軍のまともな継戦能力は、せいぜい今年一杯か。そのために戦闘がより過酷いなるかもしれない。
5月初めか。
 なにはともあれ、プーチンにとって絶対譲れないのが、5.09での勝利宣言。このためにありったけの軍事資源を注ぎ込んで来るでしょう。これに失敗すれば、プーチンの求心力は急低下。軍の支持は期待できない。だから尋常ではない攻撃をしかけてくる。ウクライナ軍としては、これに正面から立ち向かっても損害が増えるだけ。そこで筆者が考えるのが、ハリコフ方面に陽動作戦を行い、ドンパス方面ロシア軍の力を削ぐこと。そしてロシア軍戦略を混乱に導き、出来た間隙に攻勢をかけることである。ちょっと上手すぎる感もするが、出来なくはないと思うが。
(22/04/11)

 かつて「総統(ヒトラー)小包」というものがあった(大木 毅;「独ソ戦」)。これは1943年以降、東部戦線のドイツ兵に下された命令で、休暇等で帰還する場合は持てるだけの荷物(食料、日用品)を持って帰る事、というもの。手段は選ばず各自が考えよ。当然発生するのは略奪である。略奪された物品がどうなったか分からない。大部分は国家に上納され、残りは闇市場へ。そして最終的にはナチ党幹部や政府関係者への利権に消えたのだろう。
 何故こんなことを考え出したのか?それは戦争が長引き、英米の経済封鎖が効果を発揮しだして、国内には食料や日用品不足が予想されだした。ヒトラー政権の基盤はドイツ中産階級、労働者である。食糧不足は彼らの支持を失いかねない。これを恐れたヒトラーは領土外からの収奪を推し進めた。「総統小包」はその一環、つまり目的はバラマキである。
 それと似た現象が今ウクライナで発生している。ロシア兵による冷蔵庫からテレビ、酒・煙草に至るまでの日用品の略奪である。この略奪品は何処へ行くのか?一般に考えられるのは闇市場である。兵隊の給料は安い、不足分を略奪品で補え。そしてその一部がプーチンとその側近のポケットへ。あり得る話である。
 これは今に始まったことではなく古代ローマ帝国以来の伝統である。ユーラシア遊牧社会、ギリシア、ローマ、中世ヨーロッパでは、兵士には三日間の略奪が認められた。古のトロイ戦争では、降伏したトロイに10日間の略奪が行われ、トロイの街は灰燼と化した。 近世ロシア帝国でも同じで、コザックは帝国の外征に従軍を義務づけられたが、略奪の権利を与えられた。
 というわけで、ロシアに屈服すれば、そのあとにはジェノサイドと並んで略奪が行われるのである。このことを、橋下や玉川、宗男のような降伏論者は知らなかったようだ。只の勉強不足。本も読まず、仕事仲間や女子アナと遊び惚けておるから、そうなるのだ。それはトランプやベルルスコーニも同じである。
(22/04/10)

 チェコとスロバキアがウクライナに戦車供与を発表。供与する戦車は旧ソ連時代のT72。多分その代わり、アメリカから新式戦車を導入するのだろう。戦車を保有することで、ウクライナ軍は局所的にはロシア軍と対等に渡り合えることになる。対するロシア軍も同じT72を装備している。一般に海外生産品は本国仕様より性能を落としていることが普通。つまりこの状態でロシア軍と正面で戦っても勝てないはずだ。しかしチェコ製戦車は昔から優秀なことが有名。又整備の問題もある。ロシアにおける武器の製造・整備過程での構造的手抜きは、産軍官複合体ひいてはプーチン自身の利権になっている。一方チェコは中世以来の工業国家、手抜きはしない。この差が実戦で現れるだろう。従って、ロシア製に打ち勝つ可能性は十分ある。
 ではウクライナは戦車等大型兵器を貰って、それをどう使うのだろうか?当然目的は反転攻勢に打って出ることである。只反転攻勢でもただ単に攻勢を仕掛けるだけでは意味はない。明確な戦略が必要である。これを旧ソ連軍の作戦術を敷衍して考えてみる。
1、戦略目的の設定
 これは全ての作戦の根底をなすものである.。無論最終目標はプーチン政権の退陣だが、それはかなり先の話。とりあえずは5/09に予定されている、対ドイツ戦勝記念式典を中止又は延期に追い込むことである。プーチンはこの式典前に東部ドンパス地域を確保し、これを対ウクライナ(=ナチスト)戦争の戦勝記念と宣言するはずである。
2、戦略目標の設定
 プーチンの勝利宣言を覆すにはドンパス地方の奪還が最も効果的だが、ロシアもこの地域には兵力を集中しているから容易ではない。一方戦略的要衝の奪還は、宣伝効果も大きく戦略的意義も大きい。その点で考えられるのはハリコフの奪還である。ハリコフはウクライナ第二の都市だから、その意義は大きい。また、ドンパス地方の北に接近しているから、ドンパス方面ロシア軍は右側面をあらわにすることになる。即ち、これはドンパス地方の不安定化を示すことになる。
3、戦術目標と戦法
 以上が第一段階の作戦である。これまでの諸戦闘、特にキーウ攻防戦で明らかになったロシア軍の戦術的弱点は、補給路を始めとする後方補給システムの脆弱さ、情報管理、指揮系統の混乱である。戦法としては、これまで以上にこの弱点をたたき、ロシア軍を個別に分断・孤立させる事が重要である。
1)偵察衛星や偵察ドローンを使って、ロシア軍の補給基地、補給路を確認し、防御の脆弱部を狙って攻撃ドローンで叩く。無論妨害電波工作も重要。
2)後方の混乱でできた前線の隙に、戦車や装甲化された歩兵を突入して戦果を拡大する。これは少人数の団隊で行い、ロシア軍と混在させる。理由はロシア本国からのミサイル攻撃を避けるためである。つまり敵味方の境界を分からなくするのだ。
3)そして戦術的有利性「を確保できれば、反復攻撃に移り、敵の戦闘意欲を消滅させる。
 以上は実際スターリングラードや、その後の独ソ戦でソ連軍がやった戦法である.。しかし今のロシア軍はそれから何も学んでいないことが、今回の戦争で分かった。ハリコフ攻略に失敗し、更に奪還されればドンパスどころではなくなる。呑気に戦勝パレードをやっている場合ではなくなるのだ。
(22/04/10)

 連日ウクライナでのロシア軍の残虐行為が報道されていますが、筆者はロシア軍なら、これぐらいのことはやりかねないと既に指摘しています。一方開戦当初、日本では橋下徹とか、テレ朝の玉川徹、あるいは鈴木宗男や鳩山由紀夫などが降伏論、妥協論をネットでぶちまくっていました。宗男に悪乗りしたのが田原総一郎。もし彼らの言うように、降伏したりうっかり妥協していれば、ウクライナ中がああいう状態になっていたのだ。
 さてああいう残虐行為をやったのが誰か?ということだ。筆者はその残忍な手口からみて、例えばかつてのナチスドイツSD麾下の特別行動隊(アインザッツグルッペ)のような、特別に訓練された処刑部隊が実行したのではないかと考えている。或いは残忍性でいえば負けるとも劣らない、チェチェン人私兵部隊の可能性もある。
 第二次大戦独ソ戦の例から見ても、経験不足の徴集兵では、自分自身が怖がってとても手が出せない。それはSD隊員でも同じで、銃殺だと隊員に不健全な影響を与えるという理由で、処分法が銃殺からガス殺に切りかえられたという説がある。
 このような残虐行為はドイツ人や外国人の仕業でロシア人ではない、という人がいるかもしれないが、ロシア人だって負けていない。1940年から1941年にかけて、ポーランド人捕虜20000人以上がソ連政府によって殺された。所謂「カチンの森事件」である。「カチンの森」は今のベラルーシにあるが、同様の大量虐殺は、ウクライナやラトヴィアでも行われた。ロシア養護論者はこの事実をもっと学ぶべきである。
 この件に対してウクライナ政府は実行部隊名(第64自動車化狙撃旅団)と、隊員1600名のリストを明らかにした。このリスト、どうやって手に入れたのでしょうか?隊員名簿が敵の手に渡るなど、前代未聞。ロシア軍の情報管理がずたずたになっている証拠だ。これを盾に、ウクライナは「知っているのは隊員の名前だけじゃない。なんでも分かっているぞ」とロシア側に脅しをかけるでしょう。
 今回の戦争の特徴に、デジタル(ウクライナ)VSアナログ(ロシア)の対決という要素がある。この件に関しては完全にデジタルがアナログを上回っている。果たして我が自衛隊のデジタル化は、十分進んでいるだろうか。
(22/04/06)

 先月本欄で、「プーチンの背後には謎の祈祷師*がいる、という噂がある」と書きましたが、どうやら本人の素性が明らかになったようだ。その名はA.ドーギンという自称思想家・政治学博士。この人物、90年代の終わりころから、怪しげな学説をオカルト系の雑誌に投稿し、独自の学説をふりまいていたらしい。
 それはいずれロシアがヨーロッパとアジアを統合し、ユーラシア帝国を作る。ロシア人の住む地域が帝国で、西欧諸国はその周辺の従属国家、ウクライナは存続を認められない。ロシア人とはロシア語を日常的に話す人々のことで、現在の国境は無関係。彼はこういうのをノボルーシイーと呼ぶ。なおこの理論ではアメリカやイギリス、日本は触れらていない。日本は近隣の友好国という位置付けらしい。
 こういう思想はこれが初めてではない。ロシアをドイツに、ロシア語をドイツ語に直せば、ヒトラーが着想し、ナチスドイツが奨めた東方政策とそっくりである。なんとなくーギンはナチの東方政策を、そのままパクったのではないか、という疑いが残る。なお、当時の7日本でも八紘一宇理論があった。
 発表当時はこの理論は、学会では歯牙にも掛けられなかったが、10年ほど前にプーチンの眼にとまり、むしろプーチンがこれに嵌ってしまったらしい。彼の政治学博士という学位もプーチンの圧力で出したのではあるまいか?
 以上は昨日テレ朝昼の情報番組の受け売りだが、解説者はさらに続けて、こういう思想・・・つまりロシア人は偉大で、聖なるロシアはいずれ復活するという・・・はロシア人の心理の根っこの部分にあると指摘する。それはそうだが、問題はそれが何時頃から始まったかだ。その起源は意外に新しく、古くても15世紀頃。ビザンチン帝国の滅亡が大きく関係している。
 当時ビザンチン帝国の植民都市だったトレビゾンド王国の王女がローマに遊び、嫁とりにやってきたモスクワ大公妃となった。当時トレビゾンドは東ローマ帝国の後継者を主張していた。ローマ帝国後継者の王女を嫁にしたのだからおれが皇帝だ、というわけでその後大公は皇帝(ツアーリイ)を名乗り、モスクワ大公国はロシア帝国を名乗るようになっただけである。
 更にその孫の雷帝イワン4世が「モスクワ第三のローマ」という説を唱えだす。これは「第一のローマは堕落した、第二のローマ(コンスタンテイノポリス)は滅びた。モスクワこそ第三のローマである」というmの。これにより、ロシアとモスクワの神聖化、神・キリストの権威のもとに皇帝が君臨する世界帝国という思想が完成した。これが18、9世紀以降の帝国拡張時代に強化されたと考えるべきである。一旦火が付くと手に負えなくなる、ロシア民族愛国主義も、この時代に始まった。
 日本でも最近流行っている日本優秀民族説とか、なんでも日本起源説というのも、実は大正末期が始まり。又アベやそのた自民党保守派やネトウヨが主張する日本の伝統というものの殆どは明治以降がルーツ。男系天皇説も本当はせいぜい大正期に始まったものだ。
*もう一度本欄を読み返すと、筆者は15/10に、プーチンの背後に怪しい人物がいるのではないか、と予想しています。
(22/04/06)

プーチンの話題(その1)。プロエクトというロシア独立系メデイアが、プーチンに甲状腺癌の疑いありと発表、というネット情報。ネット情報だから何処まで信用できるか分からない。根拠はこのところ大勢の医師を引き連れて歩いているとか、表情がどうとかという程度で、何故甲状腺癌と言えるのか分からない。
 しかし筆者はこの戦争が始まったときから、プーチンに精神的、肉体的異常があると見ている。その原因として挙げたのが、ステロイド系筋肉増強剤。これは甲状腺に作用し、服用者を興奮状態にする。元気が出てバリバリ働く。周りから見れば頼もしい限りだ。筋肉もついてくるから、60代とは思えない筋肉が付き、アイスホッケーでシュートを決めるのも可能。
 しかしその陰で肉体は蝕まれ、突然の心臓発作のよう副作用がある。永年服用しておれば、甲状腺が癌化することもあるだろう。彼は70才というロシア人としては高齢が、癌の転移を遅らせているのかもしれない。最近見られるむくんだような顔は、抗がん剤の副作用かもしれない。
 それでも後何年も生きられない。ウクライナ戦争の将来を見る上でみんなが間違っているのは、プーチンが何時までも生きていることを前提としていることだ。これは中国の習近平や北朝鮮のジョンウンについても言える。彼らこそ何時なんどきあの世に行くかも分からないのだ。だから世界は彼らがいつ何時あの世に行っても大丈夫なように備えをしておかねばならな。むしろ彼ら自身がその事実を知っている。だから周囲に対し強硬に出るのである。
プーチンの話題(その2)。プーチンはSNSもPCも使えない情報オンチ。先週からイギリス情報部が流している情報に「プーチンには正しい情報が入っていない、それは側近たちがプーチンを恐れ、プーチンが気に入る情報しか入れないからだ」というのがある。
 先週土曜夜9時からのNHK情報番組で、アンカーの香取慎吾がゲストの軍事専門家に「プーチンはSNSかなんかで独自で情報をとれないのですか?」と質問すると、出てきた答えが冒頭に挙げた情報オンチぶり。この時筆者が感じたのは、こんな情報オンチでスパイが務まるのか?という疑問を超えた驚き。KGBは永年こんな情報オンチを雇ってきたわけだ。
 何故こうなったかというと、彼が現役スパイを務めていた80年代の情報伝達手段は、せいぜい電話かFAX。90年代に入ってインターネットが普及したが、その時彼は既に40代。給料の安いスパイよりもっと儲かるビジネスに手を出し、そして政治活動にのめりこむ。こういう時こそネットを始めとするデジタル情報が重要と思うだろうが、ロシアという国はそれより個人的コネがモノを言う超アナログ社会。そのため、ここで彼はデジタルに乗り遅れた。世紀が変わると彼はもう大統領。デジタルとかアナログを超えた存在になってしまったのである。
 要するに日本では最早使い物にならなくなった昭和のオッサンが、ロシアでは何時までも権力を握っている。これを考えると、今後のロシア対策のヒントが見えてくるだろう。
(22/04/04)

昨日ウクライナ軍ヘリが、ロシア西部の民間石油貯蔵施設を爆撃と、ロシアが発表。動画も公開している。これに対しウクライナはそんな事実はないと反論。さてどちらが本当でしょうか?
1、ウクライナが言うように、そんな事実がないとすれば、この事件は停戦交渉を有利に運ぶ・・・停戦合意の値段を釣り上げるための・・・ロシアの自作自演の可能性が高い。爆撃などそもそもなかった。動画はフェイクだ。
2、本当に爆撃があったとすれば、ロシアの防空システムに重大な欠陥があったことになる。ロシア防空軍或いは国境警備軍の落ち度となり、プーチン政権と軍部との対立・確執の新たな火種になる。
 或いはプーチンは知っていたが、わざと軍には伝えなかったのかもしれない。ロシア版エデンバラ爆撃*だ。これは停戦交渉対策もあるが、もう一つ軍に責任を負わせ、粛清の口実にする。もしそうだとすると、軍とプーチンとの対立は決定的なものになる。
 さて、英米はこの事件をどのように見ているのでしょうか。
*第二次大戦中、イギリス諜報部はドイツの最強暗号エニグマの解読に成功した。これにより、ドイツ空軍のエデンバラ爆撃を察知したが、首相チャーチルはそれを隠蔽した。もし知らせるとドイツにエニグマ解読を察知され、より高度な暗号に変更されるからである。結果、エデンバラ市民は莫大な犠牲を払うことになった。
(22/04/02)

 今トルコで進展中のロシアーウクライナ停戦交渉・・・トルコというのが微妙で、ベラルーシより安全という意味だろう・・・、これはこの期間を利用してロシア軍再配置のための時間稼ぎという見方が大勢。それはそうだろうが、逆に言えばウクライナにとっても反転攻勢のための準備期間でもある。
 考え方としては、ロシアはキーウ攻略を目指す北方戦線は、攻勢はあきらめ主として防御体制に入る。これで浮いた部隊を東部及び南方戦線に移動し、兵力をドネツ地域に集中し、東部地域を確保するということだろう。つまり選択と集中という作戦だ。
 もしそうなら、筆者はウクライナは”分散と機動”で対抗すべきと考える。反攻正面は、チェリノブイリは戦略上の要衝であると同時に象徴的な意味もあるから、これの奪還は必須。そして東部ハリコフ、東南部マリウポリ、南部クリミア方面ヘルソンなどをターゲットにして、同時多発的局所作戦を挑む。
 現在テレビや新聞などでは、ロシア国境沿いにロシア制圧地域が広く描かれているが、実態は点と線を掌握しているに過ぎない。当たり前だが、たった20万そこそこの兵力であんな広い地域を制圧できるわけがない。かつての日中戦争における日本軍のようなものだ。
 ウクライナ軍は戦車や」航空といった正面兵器に不足しているので、正面作戦は」行わない。携帯式の対空ミサイル、対戦車ミサイル、迫撃砲等を装備した1小隊(3、40人程度)規模の戦闘チームをロシア軍制圧地帯内に潜行させ、主に物資集積地や道路結節点、前線戦闘指揮所を破壊して線を断ち切り、点を孤立化させる。又後方からのドローン攻撃を誘導する。目的が達成できたり、ロシア軍が反撃してくれば直ちに退避し別目標に移動する。決し1地点にとどまらない。押さば退け、退かば押せを繰り返し、ロシア軍の消耗・疲労をさせる。
 これは日中戦争時の中国軍、国共内戦での共産軍、そしてかつてのアフガン戦争のアフガンゲリラの戦法だ。ロシア軍には嫌な思い出がよみがえってくるだろう。こうしてロシア軍内、ロシア国内に反戦機運を高め、プーチン追放に向けてロシア国論を誘導する。最終的にはロシア軍をウクライナから追い出し、プーチン無きロシアと和平交渉に入る。大事なことはプーチンをロシアから追放することだ。
(22/04/01)

 日本や欧米ではウクライナ支持が圧倒的に多く、以前の国連安保理決議でも圧倒的多数がロシア非難に賛成した。一方、親ロシア派の国もあって、その代表的なものは中国とインド。その他キューバ、ベネズエラ、ブラジルなどもあるが、こんなのはゴミ・ゴキブリの類だから問題にしなくてよい。逆にロシア非難派はアメリカ、EU、日本、韓国、他に台湾やアフリカ諸国などもあるがこれは大したことはない。
 GDPでいうと、上にあげた主要国・地域が世界の80%以上を占めている。その中でどちらが多いかというと、これがいい勝負。鍵を握るのがインド。インドは今のところ親ロとまではいかないが、”中立”という名で日和見を決め込んでいる。
 何故インドが親ロシアに傾くかというと、インドはカシミール帰属問題を巡ってパキスタンと対立している。パキスタンに接近したのが中国。かつて中ソ対立時代、インドはこの関係を利用してソ連に接近した。ところが今は中露蜜月状態。ロシアとインドを結びつけるものは、武器と原油・ガスである。ロシアにとって、インドは武器・資源輸出のいいお得意さんだ。インドにとって欧米製武器は性能はよいが、高価で複雑。使い勝手が悪い。それに比べロシア製武器は安くて使い勝手が良い。では問題はロシア製武器の信頼性だ。
 既にメデイアで散々取り上げられているが、ロシア軍苦戦の理由の一つに挙げられるのが、武器の性能である。以前取り上げたが、60%というミサイルの着地率。またアメリカ供与の対戦車ミサイルやドローンによる戦車の破壊。この中にはロシア最新鋭のT90も含まれる。今回の戦争でロシア製兵器のお粗末振りが露呈された。
 地上兵器でこれだから核兵器に至ってはどうなるかわからない。ロシア国内で核ミサイルを発射しても、ウクライナに届く前にロシア国内に落下するかもしれないのだ。そんな物騒なものをはいそうですかと買えるでしょうか?大枚払ってロシア製兵器を買っても、肝心な時に役に立たなければ政変だ。
 昔第五次中東戦争の時、エジプト軍とイスラエル軍がシナイ半島で激突した。兵力とくに戦車はエジプト軍が圧倒していた。エジプト軍が装備していたのはソ連製のT57戦車。これに対しイスラエルはアメリカ供与のM48を改造したスーパーパットン戦車。ところが、T57は砂丘が連続する砂漠戦に全く役に立たず、M48改にコテンパンにやられ、エジプト第三軍はシナイで孤立。このときOPECが二度目の石油減産を実施して、やっとエジプト軍はイスラエル軍の包囲を脱出できた。それにも抱え割らず、ソ連はエジプトに戦車代金の請求書を回してきたので、エジプト大統領のサダトが激怒し、エジプトはソ連と手を切り、アメリカ製戦車M60A1を導入した。インドもそうならないように気を付けるべきである。
 ソ連は朝鮮戦争のとき、中国を迂回して北朝鮮に武器援助を行った。戦後その代金を中国に請求したのので、毛沢東がカンカンになり、それがその後の中ソ対立の原因となった、という説がある。このようにソ連ーロシアとの契約は、忘れた頃に経費請求してくる恐れがあるから要注意。特に鈴木宗男と三井物産は危ない。
(22/03/31)

 開戦一カ月でロシア側は将官級高級指揮官が7人戦死、一人が解任という体たらく。三月上旬に将官死亡が4人という報道があって、これは異常、まともではない.。情報が駄々洩れになっているのではないかと思ったら、そういう観測が主流になってきた。
 高級指揮官死亡とともに興味があるのが、ロシア軍ミサイルの着地率。最近NATOはロシア軍ミサイルの着地率を60%程度と発表した。これが本当としたら、これまたとんでもない数字だ。要するに10発発射しても、そのうち相手に着弾するのが6発で後4発は行方不明ということだ。
 何故こんなことになるのか?一つは元々ミサイルの性能に問題があった。つまり設計と完成品性能が一致しなかった。もう一つ考えられるのは整備不良である。双方に共通するのは手抜きである。
 製造過程では段階ごとにチェックが入るが、検査・整備ではチェックの目も緩くなる。ミサイルのような複雑なシステムでは、常時整備を行っていなければ、いざというときに故障を起こす確率が高くなる。しかし整備など、やっていなくてもやりましたと言って、書類さえ整えればOKだ。どこかの国のメーカーのデータ捏造と同じだ。どっちみち整備といってもウオッカ吞みながらなのだから、してもしなくても結果は同じ。
 整備工程や部品を手抜きして出てきた利益が、軍産官複合体の利権に化ける。その一部がプーチンとその周辺に還流される。そもそもこんなに故障率が高いのは、製造整備過程で組織的に手抜きが行われていたのではあるまいか。見てきたわけではないが、かつてのソ連、今のロシアという官僚社会では十分あり得る話である。ソ連は唯物論の国。そしてロシアはその延長である。唯物論社会では、将軍も兵士も、武器も革命闘争の一部、消耗品に過ぎない。
(22/03/28)

 ロシア国防省が、作戦の第一段階がほぼ終わった、今後は東部ドネツ地帯に主力を移す、と発表。典型的「大本営発表」である。亡き愛国少女田辺聖子なら「一カ月もたって『第一段階はほぼ・・・』とは何事ぞ」と怒り心頭だろう。要するにキエフ攻略はもう無理だ、この先は東部の自軍の有利な場所で戦って戦果を増やそう、という作戦。無能役人の考えそうなことだ。
 戦争が始まって以来、戦況を見ていると、三月上旬キエフ攻略に手詰まり感が出てきた頃から、ロシア軍の作戦に混乱が見られるようになった。当初は東部ドネツク地方から始まり、ついでハリコフ方面、キエフ方面へと侵攻地点が変化した。これは過去のソ連ーロシア軍、更にはモンゴル伝統の三方面作戦に倣ったもので、それなりに合理性はある。
 ところがその後の展開が悪い。どの方面でも二週間経っても完全制圧に至らない。そこで南部のマウリポリに新正面を作り、更には西部のオデッサにもちょっかいを出しそうな気配。西部国境付近のリビウにもミサイルを打ち込むなど、右往左往行き当たりばったり。作戦目標が二転三転。昔「東京がだめなら名古屋があるさ・・・」という人生なおざり演歌があったが、それとおんなじだ。これではまともに戦争はできない。
 最近話題になっている核兵器や生物化学兵器使用問題となど、今のロシア政権と軍部が完全に手詰まりになり、混乱している証拠である。最近モスクワで開かれたプーチン支持集会や、東部占領地での1万ルーブルバラマキ作戦も、軍事作戦が上手くいっていないことをプーチン自身が認めている証拠。支持率アップのためには、戦争が駄目なら買収だ。何故こうなったかというと、やっぱり開戦までのプロトコルに問題があったのだろう。この点は政治家・軍人だけでなく、企業経営者も十分学ばなくてはならない。そういえば日本の元首相アベ晋三も、当初経済再建、北方領土問題、北朝鮮拉致問題、憲法改正等あれこれ風呂敷を広げたが、どれ一つ解決したものはない。
(22/03/26)

 またまた妙なことを言うのがいる。ロシアが生物化学兵器を使うのなら、その前にロシアとの交渉が必要だ。この人、自分が何を言っているのか分かっているのだろうか。NATOやウクライナが交渉を提案してくることこそ、プーチンの思う壺。
 ユーラシア騎馬民族・・・ロシアは彼らから様々な交渉術を学んでいる・・・相手にこんなことを言えば、みずから自分の弱みを明らかにすることである。騎馬民族相手に交渉条件を明らかにすれば、彼らそれを相手の弱みと捉え、それをカードに使って更に交渉のハードルを高くする。つまり折り合う値段を釣り上げるのである。
 プーチン/ロシアも同じで、NATO 側が交渉を促しても、とても飲めないような条件を出してくる。その結果、戦争は何時まで経っても終わらない。そして終わらないのをNATO側の責任とし、結局は生物化学兵器を使うだろう。
 交渉で一番大事なことは、決して相手の土俵に載らない事である。今のウクライナ状勢を見ると、勝敗の天秤は戻りつつある。こんな時期にわざわざプーチンに交渉をお願いする必要はない。そんなことをすれば、自らプーチンの土俵に上がるようなものだ。今、本当に交渉したがっているのはプーチン当人ではあるまいか。
 さて、生物化学兵器使用の前にプーチンとの交渉を、というう珍妙なことを言いだしたのは誰か?それは大阪維新の会の橋下徹である。大阪維新の兄弟政党である日本維新の会の鈴木宗男は、誰も認めるプーチン派。ということは維新は揃ってプーチン派ということだ。
(22/03/25)

 ロシアが非友好国への原油・天然ガス代金の支払いを、ルーブルで行うことを義務付ける法案が成立。プーチン=ロシアのやることは、何時も的外れで自ら墓穴を掘る事ばかり。その心は、原油.・ガス決済のために市場でルーブル買いを誘い、低落したルーブル価値を立て直そうというもの。
 非友好国でロシア産原油・ガス依存度の高い国は、ドイツ・フランス始めEU諸国と旧東欧諸国。特にドイツ・オランダ・デンマークは、依存度が高いのと同時に購入量も多い。ロシアにとって一番のお得意さんだ。それに比べ日本など大したことはない。ところが一番のお得意さんであるEU諸国が、今後資源のロシア離れを決定している。ということは、ルーブルは一時的には上昇しても、長期的には必ず下落することを意味する。そんな通貨をわざわざ買うアホが何処の世界にいるでしょうか?
 この決定で一番損害を受けるのは、ユコスやガスブロムなどの国営企業を食い物にしてきたオルガルヒ達*。幾ら原油・天然ガスを売っても、貰うのが世界的に通用せず、将来的に下落することが当然のルーブルなら、やる気は失せるどころか、プーチンに対する反感が増すばかり。またオルガルヒ利権は、軍やFSBなどの利権集団の食い物になっている。日本ではロシア利権にしがみついている鈴木宗男とかアベ・森ら親ロ派が被害を受けるだけ。つまりこの決定は回りまわって、プーチン権力構造にひびを入れ、それを拡大し、当のプーチンの首を絞めるだけなのだ。誰がこんな姑息な手段をプーチンに入れ知恵したのだろうか?
*プーチン自身、その一味
(22/03/24)

 ウクライナ戦争が始まって早一カ月。筆者は開戦して4日目の02/27に、ウクライナが1週間か10日持ちこたえれば局面は大きく変化する、と書きましたがその通りになってきました。その間、世間では戦争の原因や収束方向などについてあれこれ聞いた風なことを言う、自称専門家や評論家が多い。軍事評論家といっても、もとを糺せば只のミリオタが浅薄な知識を広めているだけ。それを有難く拝聴しているのが、より不勉強なマスコミやタレントだ。
 それは別にして開戦後日本で巻き散らかされた妄説・暴論の内、筆者が気になった説を取り上げて批判してみる。
1、戦争原因についてウクライナにも一半の責任あり、とする説。
 これは当初プーチンが言いふらしたNATO密約説に基づくものである。東欧崩壊時にアメリカのベーカーとソ連のゴルバチョフが交わした、「NATOは今後1インチも東方に拡大しない」という口約束である。これに同調するのが、日本では鈴木宗男(日本「維新の会」)とか鳩山由紀夫、大前研一更に舛添要一などに見られるプーチン擁護論*である。
 例え口約束でも約束は約束だ、としよう。しかしこの約束はアメリカとソ連との約束でウクライナや、アメリカ以外のNATO加盟国は加わっていない。プーチンが約束違反だというなら、まずアメリカを攻撃すべきであって、ウクライナを標的にするのは筋が通らない。
 こんなくだらない口約束よりもっと重要な条約が、1991年、独立後のウクライナとロシアとの間に交わされている。それはクリミア半島の帰属と、その先端にあるセヴァストポリ軍港の租借権に関する条約。ここではクリミア半島はウクライナに帰属するとされ、セヴァストポリ租借権は25年間とするものだ。これは主権国家間の正式な条約だから、双方に遵守義務がある。
 ではそれはどうなったか。1991年から25年後といえば2015年。前年の2014年、この年1月にはウクライナではヤヌコヴィッチが革命で追放(ロシアに亡命)され、ウクライナ状勢は西部の親米派と東部の親ロ派に分かれ混とんとした。これを利用して、プーチンはいきなりクリミアに兵力を送り、元居たウクライナ住民を追い出した上で住民投票を行い、クリミアを無血占領してしまった。結果としてセヴァストポリはロシアのものになった。プーチンの本当の狙いはこれだったのではないか。
 セヴァストポリを失えば、ロシアは黒海の制海権を失う。そこにアメリカ艦隊が進出してくれば大変だ。そこでプーチンは大統領になって以後、ウクライナとの条約を無視し続けてきた。それはセヴァストポリを確保しておくためである。更に東部ロシアに接続するドネツク、ルガンスク地域にロシア側工作員や外国傭兵を送り込んで騒擾状態を作り、ロシア系住民保護を名目にロシア軍を送り、事実上占領状態を作る。これは19世紀から20世紀にかけて散々行われた帝国主義領土拡張の常套手段である。日本の満州事変もその例の一つだ。
 ではこの結果何が起こったかというと、周辺諸国のNATO加盟が増えたこと、そしてロシア景気の低迷である。第二次大戦後NATOが発足したときの加盟国はたったの10か国。それが東欧ソ連崩壊以後14か国に増え、ボスニアヘルツエゴヴィナ紛争後更に増え、クリミア併合後30か国に増えた。おまけにこれまで10%台だったロシアの経済成長率が激減、4%以下になってしまった。
 問題はNATO加盟国が何故こんなに増えたかだ。プーチンはこれを西側の謀略と決めつけるが、NATO加盟条件は結構厳しいのと、権利と同じ義務も生じる。だれでもはいそうですか、と加盟できるものではないのだ。それは周辺の旧東欧諸国が、ボスニア問題更にクリミア併合でプーチン=ロシアの強引な領土拡張主義に恐れをなしたからである。少なくともこの現象はウクライナの責任ではない。
 更にウクライナ東部の混乱の背後に、プーチン=ロシアが介在しているのは明らかだ。クリミア併合以後ウクライナの政局も混乱していたが、19年ゼレンスキーが大統領になった。彼とライバル候補もNATO加盟を掲げて立候補し当選したのだから、ウクライナ国民の大部分がNATO加盟に賛成していたことになる。
 これに苛立ちを覚えたのがプーチン、結果としてウクライナへの政治・軍事的圧力を強めることになる。舛添のような国際政治学者と自称するヘボ評論家は、あれこれ手練手管でプーチンを宥めるべきだ、などと他人事のようにいうが、そもそもプーチンが舛添如きの手管に乗るような人物(タマ)ではないこと、そしてゼレンスキーもウクライナ国民も妥協する気はないことを考えれば、融和論など机上の空論に過ぎないことがわかる。プーチンは、遅くとも昨年11月、早ければ1年前には、ウクライナ侵攻を決意していたはずである。
 クリミア併合後、欧米の経済制裁でロシア経済は失速し、インフレが発生した。この間、世界の趨勢に背を向け、ロシアとの経済関係を維持拡大しようとした国と、プーチンにエールを送った政治家がいる。それは日本という国とその首相であったアベ晋三である。NATOの弱腰と、アベのプーチン媚び外交がプーチンをつけあがらせたのである。

2、ウクライナも何時までも抵抗を続けるのではなく、早期講和をはかるべきという意見。
 この説を挙げる人は、その理由としてこれ以上戦争を続けると死者が増えるだけだ、要するに戦争をここまで拡大させのには、ウクライナにも責任があるのだからロシアと妥協せよ、というわけだ。これには玉川徹のような降伏論から維新の橋下や田原総一郎、鈴木宗男のように交渉で妥結を図るべきと色々あるが、これまでのロシア/ウクライナ関係・・・それは中世まで遡る・・・の歴史を無視した、全く無責任な暴論、妄論である。 こういうことを言う人達は、人は良いのだろうが、残念ながら頭が悪く不勉強である。知的レベルは小学生並み。算数は出来るが数学が出来ない。そもそもプーチンが何時までも生きていると思い込んでいるのだろう。これこそ「根拠なき楽観論」である。
 まず降伏論だが、これの支持者は降伏を1945年の日本の降伏のように思っているのかもしれない。だからこんなのんきなことが言えるのだ。確かにアメリカによる占領では大規模なジェノサイドは起きなかった。連合軍も出来るだけ紳士的にふるまった。それは既に東西対立構造が顕在化しており、アメリカにとって日本を味方につけておくことが必須の要件だったからである。しかし基地地域では、米兵による強盗、暴力、強姦は日常的に行われていた。日本政府はそれに目をつむっていただけである。
 しかしソ連兵は違った。それはソ連に占領された満州でも、更に東欧諸国でも行われたソ連兵の蛮行によって明らかである。ウクライナが安易に降伏した場合、報復としてロシアによる数10万人単位のジェノサイド、エスニックロンダリング、そして国土の徹底的破壊が行われることは容易に想像できる。降伏などあり得ない選択である。
 交渉による打開。これも甘っちょろい素人考えだ。プーチンという人間を全く理解出来ていない。橋下はNATOとの交渉、話し合い解決を主張した。彼は民事専門の弁護士だ。日本の民事訴訟は原被告双方の話し合いによる和解を原則とする。しかし国際政治は倒産整理や借金取り立てのような甘い世界ではない。もしアメリカやNATOがウクライナに交渉を奨めれば、プーチン=ロシアは更に交渉のハードル(値段)を釣り上げてくる。いずれは戦争に導くためだ。これはフン族以来、東方の騎馬民族が使った常套手段。中世ロシアは約200年間に渉ってモンゴルの支配下に置かれた。その間、騎馬民族の手法を十分学んだはずだ。
 19世紀の帝国主義以来、国際紛争は最期は実力で解決されてきた。第二次大戦後、国際紛争調停機関として国連が作られ、その頂点に位置する5常任理事国が平和を担保するものとされたが、肝心の彼ら自身が国益を優先して国際紛争にのめりこんだ例は、ベトナムやイラク、アフガニスタンなど数えきれない。最期は大国の国益がものをいうのである。
 仮に第三者の調停で一時的に停戦が成立したとして、プーチンにとってこれは飽くまで一時的なものに過ぎない。この間兵力の再建をはかり、十分と見たとき、どこかで騒乱を起こし、停戦協定違反として再び侵攻を試みるのは、火を見るより明らか。スターリンいやイワン雷帝の後継者であるプーチンが、停戦文書を真面目に守ることなどあり得ない。
 それと交渉(話し合い)解決で最低必要なことは、相手がこっちと同等の知性なり価値観を有していること、つまり合理的交渉が可能であることだ。20世紀では、日露戦争や第一次大戦まではこれが可能だった。しかし第二次大戦では、ヨーロッパでも極東でもこれができなくなった。それは開戦要因に単なる政治的理由だけでなく、イデオロギー要素が大きなウェイトを占めるようになったからである。その結果、ドイツも日本も国家そのものを破綻させてしまった。
 開戦以降のプーチンの発言、特に停戦条件を見ると当に彼自身の歴史観、イデオロギーが前面に出てきている。つまりこの戦争はプーチンの想い、執念、妄念から始まったもので、それが達成されるまで終わらない。彼はおそらく目的達成までとことんやる決意を持っているはずだ。こんなの相手に合理的な交渉・話し合いなど出来るわけがない。橋下などはそういうことすらわからずに、空論を述べ立てているだけだ。
 ではどうすれば戦争を終わらせることができるか?先に述べたように、この戦争はプーチンの妄念から始まったものだから、プーチンがいなくならなければ終わらない。プーチンを排除するにはどうすればよいか、おそらく英米情報機関はそれの具体策を練っているだろう。それには、暗殺、処刑、クーデター、民衆蜂起などがあげられる。しかし筆者は新型コロナウイルス自壊説と同じで、プーチンが勝手に自滅するのではないか、と予想する。
 一つは前途に悲観して、発作的に自殺を図るケース。前から筆者は、最近のプーチンは薬物(ステロイド系興奮剤或いは抗うつ剤)依存ではないかと疑っている。この場合副作用による甲状腺ホルモン過剰分泌で、精神に異常をきたすことがある。しばしば彼は意味不明の現実を認識していない発言をする。これはこの結果だろう。
 これも薬物依存の結果ではないかと思われるケースがある。最近のプーチンの映像と,過去のそれを比較すると、明らかに異なっている点が二つある。一つは顔の形である。最近のプーチンの顔は下半分が膨れむくんだ感じで、過去の精悍さが見られなくなった。もうひとつは顔色である。以前のプーチンの顔は、ノルマン系スラヴらしく白皙だった。ところが最近、とくに開戦前後からピンクがかってきた。これは高血圧の証拠である。70才というロシア人としては十分な高齢に加え、戦争というストレスが加わり血圧が上がるのは当然かもしれないが、薬物依存の影響も捨てがたい。この結果、心臓発作や脳出血による突然死という可能性が考えられる。これがプーチン自壊説の根拠である。
 プーチンが死んでも後継者はプーチンと変わらないので、事態は急速に変化しないという人もいるが、見逃してならないのはそのカリスマ性である。プーチンはソ連崩壊後の混乱の中で、殆ど徒手空拳で権力の座を上り詰めた。これがプーチンのカリスマを作り、保守層にプーチン支持者が多いという理由である。彼らは権力者に対し、何よりも強さを期待する。そして強さは、民衆に与える恐怖で表される。強くて怖くなければ、ロシアでは尊敬されないのである。
 今後継者とみなされる人物は、みなプーチンの傘の下で階段を上ってきただけ。プーチンがいなくなれば只の人だ。スターリンが死んだとき、後継をねらっていたのは秘密情報機関をにぎっていたべリア。しかし彼はほんの少し隙を見せただけでフルシチョフらに逮捕され、ルビヤンカ刑務所地下の廊下で射殺された。これが繰り返さないとは限らないのが、ロシアの歴史である。
*彼らがよく使うのは、ロシアはナポレオンやヒトラーに侵略されたことはあるが、自ら侵略したことはない、という妄論である。不勉強この上もない。16世紀イワン雷帝以降、ロシアがどれだけ周辺諸国・諸地域を侵略してきたかという事実を、全く無視している。ナポレオンがロシアに侵攻したのも、ロシアがポーランドの東半分を占領したことがきっかけだ。
(22/03/23)

 昨日ローマで米中高官会議が開かれ、アメリカ側は中国に対しロシア支援を強く牽制。これに対し中国の楊外相は、アメリカは中国の政策に口出しすべきではないと強く反発。しかし中国がロシアに軍事経済支援を行ったのか、行おうとしているのかは不明。但しロシアが中国に対し、軍事経済支援を要請したのは事実らしい。これをロシアが中露一体を海外にアピールするための情報戦略とみる向きもあるが、素直に考えれば最早ロシアは軍事経済的に行き詰まっていると見るべきである。
 例えば開戦以来以来、ロシアはミサイルを打ちまくっているから、在庫が尽きたので中国に支援を依頼したのかもしれない。だったら国内で生産すればよいと思うだろうが、そうはいかない。問題は半導体である。ウクライナは世界的な半導体生産国だ。従来ロシア兵器の制御部分に使う半導体は大部分ウクライナに依存していた。ところが今回の戦争でウクライナから半導体が入って来なくなった。南部戦線で無誘導弾が使われた云われるが。これはロシア国内の半導体が不足したため、精密誘導弾が作れなくなったのだ。今や戦車でも半導体が無ければ動かない時代なのである。
 昨年アメリカは、台湾国営半導体企業による巨大半導体工場を誘致した。これは台湾有事の際、台湾の半導体工場が中国によって破壊されても、大丈夫なようにだ。それに引き換え、日本の半導体政策はどうか?危機感もなければ緊張感もない。失敗の連続だ。これは政府が半導体政策を経済産業省という、目先の事しか考えない口先官庁に任せてきたからである。
 経済的にもほぼ限界に近づいてきている、というより最早限界を超えたというべきだろう。ロシア政府は非友好国へのロシア債務をルーブル建てで支払うと発表した。しかし今時ロシア国債を持っている国などあるでしょうか?みんな売り払っているか、損切処理でガードを固めている。いまさら何をしようと効果はない。但しドイツ、フランスは分からない。なおロシアが差し押さえた外国リース航空機だって、大抵は損害保険に入っているから、リース会社の損害は思うほど大きくはない。但しリース料を安くするため保険に入っていなかった会社は丸損だ。
 原油・ガスについてはこれまで最大の顧客だったEUが、資源確保の多様化に乗り出した。中国・インドが新たな顧客となるが、どっちもEUのような良い鴨ではない。相当叩かれるから、原油価格は下落するだろう。但しもうひとつ、ロシアはとっておきの資源を持っている。それは金とダイヤである。しかし両方ともプーチンとその仲間の重要資金源。これを手放したら、プーチンは存在価値を失う。お国のために差し出す気はない。
 なお最終手段としてありそうなのが人質である。現在ロシアには非友好国国民が多数存在している。日本人も60人ほどいるらしい。彼らにスパイ容疑をかけ、身代金を要求する手段である。まるっきり山賊か海賊だが、これは中世騎馬民族世界では当たり前だった。プーチンだったらやりかねない。
(22/03/15)

 先週、キエフ包囲が近づいたころ、キエフから脱出する市民が川を木橋で渉っている映像がありました。川は相当の急流です。何故ウクライナという平原に、あんな急な川があるのか、それに気が付いた人は知的感度良です。ロシアーウクライナ平原はかつての氷河が大地を削り取ったもので、殆ど起伏のない平原が続きます。この中をドン川やドニエプル川といった大河川が流れてていますが、それらの河川縦断は、真っ平で勾配というものが殆どない。そんな処に報道で見られるような急流が出来るはずがない。
 あの急流は雪解けが既に・・・おそらく二月下旬には・・・始まったことを意味しています。これは多分ロシア軍も予想していなかったでしょう。雪解けはまず地表に積もった雪から始まります。これはあるて程度進むと、地表直下の凍土の融解が始まります。凍土は土の空隙に貯まった水が凍ったものです。日本のように、表土が浅く空隙率も小さいと凍土は出来にくいか出来ても大したことはない。この凍土が解けて河川流量をふやしているのです。
 では氷が解けた後の黒土はどうなるでしょうか?水浸しの軟弱な土の塊になります。こんなところに戦車や装甲車が突っ込むと、たちまち足回りの土は泥に変わり進むことも引くこともできない。キエフに北西から迫ったロシア軍車列が道路上で立往生し、そこをウクライナ軍対戦車ミサイル攻撃を受けている映像が公開されましたが、これはロシア軍が道路外の平地に展開出来ないからです。その場合は歩兵が外部に展開しなければならないが、そうすると今度はウクライナの狙撃兵から狙われる。だから道路上に立往生するのです。
 今年しの雪解けは例年より早かったのかもしれない。そのためロシア軍の侵攻が遅延してしまった。それは北京冬季五輪で習近平からウクライナ侵攻を遅らせてくれと頼まれたのと、地球温暖化の所為です。
(22/03/14)

 米欧日の経済制裁に対し、プーチンは様々な対抗手段を打ち出していますが、やればやるほどロシア経済の傷口を広げ、プーチンは断崖に向かっているように見えます。例えばロシアから撤退した企業の工場や事務所を押収するというのがあります。トヨタはサンクトペテルブルクに工場を持っていました。戦争勃発後1週間ぐらいで、ロシアからの撤退を発表しました。トヨタサンクトペテルブルク工場はロシア政府に接収される事になります。失業者を出さないために工場は国有化され操業を続ける。
 しかし問題はマネージメントと販売です。これらを中央から来た・ロシア人無能役人が握ることになる。ここで繰り返されるのは、ロシア特有の非効率と官僚う主義。これらは企業の腐敗に直結する。
 またこれまで作っていた車は主にEU向けだった。しかし今回の経済制裁でEUはロシア製製品の輸入を禁止又は規制する。つまり幾ら自動車を作っても売れないのだ。しかしそれでも作り続ける。そして莫大な在庫、つまり価値のない屑鉄の山。ここに見えるのは旧ソ連時代の無意味な官僚社会主義・・・つまりスターニズム・・・の繰り返しです。これがソ連崩壊の根本原因です。
 ロシア国内航空会社が非友好国のリース会社からリースしている飛行機を押収し、費用は払わないかルーブルで支払うというのがある。押収した飛行機は企業に売却される。殆ど居直り強盗のようなものだが、海外のリース会社は保険に入っているから、損害は限定される。リース機を使っていた航空会社は損失を受けるが、ロシア/ウクライナ問題がこじれる前からロシア便は減らしておくべきなので、今更悔やんでも仕方がない。
 そもそも例えトヨタの工場を差し押さえても、部品は日本からの空輸だから、部品の在庫がなくなれば工場は操業できない。リースした飛行機も同じで、整備用部品がなくなれば飛行機は飛べない。コカ・コーラの店舗を差し押さえても、コカ・コーラ本社は原液を渡さないからコーラは作れない。つまり経済的には全く成り立たない事を、プーチンはやろうとしている。
 では何故プーチンはこんなに次々と、非友好国に対するいやがらせをするのか?無論欧米日の経済制裁に対する報復という面もあるが、もう一つ接収資産を現金化し、戦費の埋め合わせを狙っていると考えられる。現在のロシアの戦費ははっきりとは分からないが、一説には一日当たり1000億から2000億円と云われる。これにこれからシリアからの民兵約16000人が加わる。これも無料ではない。無論、これにはプーチンとその仲間・・・シリア民兵にはアサドも含まれる・・・達の中抜きも含まれる。
 ロシアの外貨準備はほぼ底をついているのだろう。この場合、戦費調達は戦時の臨時増税か戦時国債の発行である。ところがプーチンは、これは戦争ではないと云っている。だから増税も国債発行もできない。そこで思いついたのが外国資産の接収と、それを企業に売却することによって戦費をひねり出す。誰が思いついたのか知らないが、稚拙といえば稚拙すぎる。
 まともな経営者なら、上にあげた理由で既にガラクタと化した外国資産にてはださない。そこで仲間のオルガルヒに売りつけ、彼らの隠し財産を巻き上げる算段だ。しかしオルガルヒだって、「はいそうですか」という訳はいかない。最近噂されるオルガルヒの資産逃亡は、実は経済制裁による目減りをかいひするのではなく、プーチンにまきあげられるのを恐れてのことだと思えば納得できる。どっちみちプーチングループは、愛国心や義侠心で結ばれているのではなく、欲得でくっついているだけ。金の切れ目が縁の切れ目で、プーチンがうっかり動けば、それこそ血の雨降る殺し合いになるだろう。そうしてみんないなくなってくれれば、世界にとって、こんな有難いことはない。
(22/03/13)

ロシアウクライナ戦争、今後の戦局の展開だが、世間に氾濫するのはやれロシアが悪い、プーチンが悪い、ウクライナは可哀そうだ、といったエモーショナルな言論が飛び交っているが、果たしてどっちが勝つかという点については、冷静な吟味がなされていない。大雑把に言うと多くの軍事専門家は、最終的にはロシア勝利と見ているようだ。その理由は兵力・装備の圧倒的な違い。
 しかし戦争に勝つか負けるかは、兵力・装備だけで決まるものではない。勝利には「戦術的勝利」と「戦略的勝利」の2種類がある。戦術的勝利とは、ある局所的な作戦地域での勝利である。モルトケ流のプロイセンードイツ帝国参謀本部の考えは、戦術的勝利の積み重ねが戦略的勝利を導くとし、個々の戦場での勝利を重視した。その結果、第一次大戦では作戦の重点目標を見失い、兵力の分散や作戦の混乱を招き破滅した。
 一方戦略的勝利は個々の戦場での勝利には拘らず、最終的な勝利を目指すものである。同じく第一次大戦では、イギリスは殆どの戦場ではドイツには敗れたが、優勢な海上戦力を利用して、ドイツを海上封鎖し屈服させた。
 プーチンはゼレンスキーを攻めあぐねているのが現状だ。これが長続きすると、プーチンは最終的・・・・戦略的・・・勝利を納められなくなる。そして撤退すれば、それこそプーチンの戦略的敗北になる。プーチンとゼレンスキーを中国古代史に重ねると、プーチンは楚の項羽、ゼレンスキーは漢の劉邦といったところ。項羽は常に勝利を重ね向かうところ敵なしだったが、勝つ度に味方は減っていく。一方の劉邦は、負けてばかりだが不思議に勢力は増えていく。最終的には劉邦の圧勝に終わった。
 今ロシアは局地戦では勝利を納めているものの、国外に目を移すと、従来中立だったスウェーデン、フィンランドがNATO加盟を検討しだし、ジョージア、モルドバがEU加盟申請を申請した。国内でも反戦デモの広がりは収まりを見せていない。デモ参加拘束者は段々増えている。これは反戦活動が拡大している証拠である。つまりプーチンは返って敵を増やしている。むしろプーチン=ロシアは、わざと敵を増やすようにふるまっているようだ。
 反対にウクライナに対しては従来慎重だったドイツも積極支援に踏み切ったり、石油やit産業など従来ロシアと縁遠かった業界もロシア市場からの撤退を決めるなど、ウクライナ支援の輪は官民を超えて広がっている。つまり負けていても味方は増えているのだ。これの行きつくところ、ロシアは戦術的には勝利を納めるが、戦略的勝利に失敗し、かつてのロシア帝国のように内部崩壊に至るだろう。筆者の結論はウクライナは勝てないが、ロシアも勝てない、双方が傷ついて有耶無耶だ。最期に笑うのは、果たしてアメリカか中国か?
(22/03/11)

 今回のウクライナ戦争で、西側諸国にとってプラスになったこと言えば、エネルギー安全保障に多少気がついた事か。しかし未だ十分とは言えない。気は付いたが行動が伴わない。特にドイツが酷い。
 1976年第二次オイルショックで、先進国は石油が一滴も入って来なくても大丈夫なように、三カ月間の石油備蓄が義務付けられた。これは国際協約である。日本は今では7カ月(国家備蓄三カ月、民間備蓄4カ月)を確保している。筆者の眼ではこれでも不足で、9乃至12カ月の備蓄が必要と考える。EU諸国中でもドイツは、プーチンの甘い言葉に騙されて、国際協約を破ったため今になってあたふたしているの過ぎない」。アホとしか言いようがない。

 それはそうと、ロシアとウクライナとの間で96時間(4日間)の停戦が成立した。これは表向き市民の避難に要する時間とされるが、実態はロシア軍の戦線整理と兵力補充のための時間稼ぎ。それが済めば96時間以内でも、何らかの理由をつけて攻撃を再開するだろう。無論ウクライナ側も察知しているから兵力増強は怠らない。お互いである。

(22/03/08)

 アメリカ情報筋によると、ロシアは既に動員兵力の95%をウクライナに注ぎ込んでいるという。この数字は兵力はもはや限界に達し、予備兵力も殆ど残っていないということを意味する。その裏付けか、シリアやチェチェンから傭兵や私兵団を募集あるいは投入しているという報道。彼らは無給ボランティアではない。給料や経費が掛かる。何で払うのでしょうか?下落が続くルーブルなんか鼻もひっかけられない。ドルやユーロはストップしたから、内部留保を取り崩すしかない。問題は何時まで続くかだ。
 では国内から徴兵すればよいじゃないかとなるが、そう簡単にはいかない。通常、徴兵とは事態が戦争状態になることが最低の条件になる。ところがプーチンは今の状態を特別軍事作戦と云っているだけで、戦争とは言っていない。それどころか、戦争と云えば逮捕され刑罰を受ける。自ら戦争ではないといっておきながら、戦争を前提とする徴兵を実施すれば、たちまち国内での反プーチン運動に火が付き態勢が危うくなる。だから徴兵は出来ない。
 プーチンと軍最高幹部との会談の模様の写真が公開されました。それによると、長さ5m程のテーブルを挟んで、一端にプーチン、反対側に国防相と参謀総長が肩を並べて座るという異様な配置。これに対しプーチンがコロナを恐れるからだ、とかわざと距離を置く事によってプーチンの威厳を示すためだ、という説明がなされています。しかし筆者の見解は、これは暗殺予防です。
 コロナ対策なら5mも距離を置かなくてもよいし、他の二人は肩を寄せ合っているのだからコロナ対策にはならない。威厳を示したいのなら、膝まつかせた方がもっと効果がるある。間隔が5mも空くとよっぽどのプロでない限り、ピストルはまず当たらない。一歩や二歩では近づけないからその間に逃げられる。暗殺を避ける最も効果的な距離が大体5mだ。
 無論本当の狙いはプーチンに聞かなければ分からないが、少なくともこの写真から読み取れるのは、最早プーチンと軍との間の信頼関係が薄れてきたということだ。最も信頼しなければならない軍トップと、こんな距離をおかなければならない、というのがその証拠である。戦争が長引けば犠牲者は増え、戦費もかさむ。おまけにプーチンの要求はますますエスカレートする。ウクライナやNATO諸国が納得するはずがない。このままいけばアフガニスタンの二の舞だ。
 近代軍は独裁者の私物ではなく、国民に立脚する。ロシア軍もその例外ではない。国民から見放された軍隊の最期は哀れだ。軍としてはウクライナのNATO 加盟は阻止したいのは当然。しかしそれは外交交渉で可能だ。何故こうなったのか?それはやっぱり14年のクリミアヤ併合だろう。あれでプーチンは味を占めたのだ。
 これは1935年、ドイツのラインラント併合に匹敵するターニングポイントだ。これに英仏は何もできずオタオタ。ドイツ軍部の中にはクーデター計画もあったが、余りに上手くいったのでぽしゃり。頭に乗ったヒトラーは続けて、オーストリア、チェコを併合し、ポーランドに侵攻して最期は破滅した。もしラインラント併合に英仏が強い態度で出れば、その時点でヒトラーを追放できたのだ。
(22/03/07)

 口絵に挙げた高速道路上でのロシア軍車列。今もロシア軍の先頭はキエフから25㎞付近で停滞しているらしい。これは何故か?ウクライナ軍の抵抗が激しいとか、停戦交渉に向けての時間稼ぎという説がありますが、これは怪しい。もし停戦交渉への影響を意図しておれば、更に攻勢を強めるはずです。
これに対し元自衛隊員で参院議員の佐藤正久は、後方補給の手段に疑問を投げかける・・・この点は筆者と同意見・・・も、戦車や装甲兵員輸送車などの装軌車なら何処でも走っていけるから、道路に拘る必要はないと解説する。しかしこの意見は未だ素人。ウクライナの大地の特性を見落としている。
 ウクライナの大地の特徴は、何処までも広がる平原とその表面を覆う”黒土”と呼ばれる肥沃な有機質土である。これはいずれも氷河の遺産である。今から2万年前のユーラシア大陸は広大な氷河で覆われていた。この氷河が削り取った跡が現在の広大な平原である。温暖化が進んだ1万年前には、全体が森林と草に覆われるようになった。その落ち葉や枯れ草が地表に堆積し、バクテリアの活動により、養分に富む有機質土(黒土)が形成された。更に人間が現れ農業や牧畜が行われるようになると、森林は刈り取られ一面の黒土大地となった。
 この黒土は養分に富むが含水比が高く、液性限界との差が小さい。つまりほんの僅か攪乱しても泥濘化してしまう。冬とか乾季は表面は凍結したり乾燥してカチカチだが、その下は柔らかい有機質土。つまり表面パリパリ中身ジューシーという餃子のような地盤だ。軍用車両は一般に接地圧が一般車両より大きい。仮に表面が凍結でカチカチでも、それが割れてしまえばその下の土は簡単に泥濘化する有機質土。だからうっかり道路の外には出られないのである。
 プーチンは中国の習から北京オリンピック期間中のウクライナ侵攻は止めてくれと釘を刺されたらしい。この2週間か10日の間に表面の凍結部分が薄くなって、黒土が現れるようになった。そのため車両通行が不可能になって、高速道路上の渋滞を招いた。「この習の野郎」とプーチンは息まいているのではあるまいか。
(22/03/05)

 昨日からロシア軍の攻勢は拡大し、熾烈を極めている。プーチンはこの攻勢を最後の攻撃と考えているのではないか?まず侵攻が始まったとき、使用されたのは動員兵力の1/3。これは多分二線級の部隊。これが駄目だったので更に先週末から1/3を追加。これは正規部隊。しかしこれでも埒が明かないので、今月に入って残り1/3を投入。これは訓練装備も十分な精鋭部隊。だから攻勢は以前より遥かに強くなっている。
 既に全体の9割が投入されている。もしこの攻勢が失敗に終われば、ロシア=プーチン政権軍に余力はなくなり、プーチンと軍との亀裂は決定的なものとなり、彼の命運は尽きる。だからここ数日の攻防が、勝敗の山になるだろう。それまでに欧米の支援と制裁が、効果を発揮できるかどうかが重要なポイント。
 筆者は以前、プーチンの精神状態について薬物依存による精神の不安定化を挙げたが、最近になってアメリカ上院議員からパーキンソン病説が出てきた。いずれにせよ今のプーチンの精神状態を異常と考えている人が、かなりいるということだ。
 昨日、テレビで先月27日に撮影されたというプーチンの動画が公開された。これによるとプーチンはまっすぐ歩いており、これだけならパーキンソン病説は消える。しかし画面には彼以外誰も映っていない。合成動画の可能性がある。
 また、プーチンはコロナを理由にクレムリンから姿を消している、という説がある。姿を消しているのが本当なら、それはコロナを恐れているのではなく、暗殺を恐れているのだ。古来、独裁者が最も恐れるものは、暗殺と民衆の蜂起である。プーチン自身、うっすらとそういう事態を感じているのではあるまいか?そうするとますます自分の殻に閉じこもり、誰も信用しなくなり、自分だけでなく周囲を破滅に導く。
 プーチンを操っている闇の組織がある、という説がある。この最有力候補として挙げられているのが、シロビキと呼ばれる、元KGB、オルガルヒと呼ばれる新興財閥、産軍複合体などからなるプーチン側近人脈である。彼らが最重要視するのは自分達の安全と利権である。しかしウクライナを軍事制圧したところで、西側の制裁を受けるのは当然。もし失敗すれば全ての特権を失う。そんなリスクを犯してまでプーチンにウクライナ侵攻を奨めるだろうか?
 もうひとつ、プーチンの背後に謎の祈祷師がいるという説がある。ロシア人の深層心理には結構スピリチュアルな部分がある。それはロシアの広大な自然、厳しい環境が産みだすのだろうか?そういえば・・・馬鹿馬鹿しいと思うだろうが・・・旧ソ連時代から、ソ連は超常現象や超能力研究の先進国だった。つまりそういう精神的基盤があって、強度のストレスが加わる独裁者にとっては祈禱者のお告げは唯一の慰め、あるいは指導指針となる。まるっきり120年前のラスプーチンの再来だ。
 フランスのマクロンとの電話会談の一部が公開されました。プーチンの言い分は、ウクライナの説明はみんなフェイク、ウクライナの民族主義者、ネオナチをせん滅するまで戦争を続ける、と支離滅裂。マクロンもあきれて、これでは話にならないと思っただろう。つまりプーチンの現状は・・・ヒトラーの末期がそうだったように・・・冷静な会話ができる状態ではない。多分この戦争はプーチンが生きている限り終わらない。但し彼の死が何時どのように訪れるかは誰もわからない。10年後かもしれないし、明日かもしれない。ベッドの上か、毒薬か、ピストルか、それとも反乱軍の機関銃か。
(22/03/04)

 これはキエフ北方の高速道路の状況。ロシア軍車列が続いています。一見莫大な兵力増強が行われているように見えますが、実態はどうでしょうか。車間間隔は小さく速度は上げられていない。一台故障すれば、たちまち大渋滞を起こし食料・武器の補給がストップする。ロシア軍は渋滞対策を考えているのでしょうか。これではキエフは攻略出来ない。この車列目掛けて迫撃砲を打ち込めば、ロシア軍の後方補給はたちまち大混乱。
(22/03/02)

 舛添が又バカバカしい浅知恵を開陳。ウクライナのゼレンスキーを無知、無能呼ばわりして私ならこうするとか、出来もしないことをペラペラしゃべる。アホとしか言いようがない。要するに手練手管を使ってプーチンを宥め、問題の引き延ばしを図るだけのことだ。いかにも私はなんでも知っています、なんでも出来ます、と自己宣伝する東大法学部出身の中途半端馬鹿のやりそうなことだ。
 プーチンが舛添ごときの浅知恵に載るタマと思っているのか。自分の意志を通すためには、ライバルを暗殺したり、果ては核まで持ち出す凶暴な人物だ。仮にそこで引き下がった処で、必ず切り口を変えて攻め込んでくる。今回の侵攻はずーっと前から慎重に計画されていたものだ。但し「失敗の本質」にあるように、「敵戦力の過小評価」「根拠なき楽観論」に侵されていたが。
 今日で侵攻後6日目だが、何故ここまでウクライナが持ちこたえられたのか?それは「ゼレンスキー効果」である。「ゼレンスキー効果」とは如何なるものか。具体的に見てみる。昨年8月首都カブールにタリバンが迫ると、大統領のガニは国民をほったらかして、イの一番に逃げ出した。トップを失った政府・軍・国民はバラバラになり、たった一日で首都は陥落した。
 これを見てプーチンも、これでいけると思ったのではないか?ゼレンスキーは元お笑い芸人で、外交どころか政治経験もない。こんなの少し脅かせば直ぐヘナヘナになると踏んだのだろう。だから昨年から周辺で軍事演習を繰り返した。プーチンらの読みではこの段階でゼレンスキーは降参するはずだった。ところが彼は降参どころか、むしろロシアに対し挑発的態度に出た。我慢できなくなったプーチンは2/24軍事侵攻を開始。ここでもゼレンスキーはガニと同様、逃げ出すはずだった。
 ところがゼレンスキーは逃げ出すどころか連日メデイアに登場。状況を説明し「私は逃げない」と云い続け、とうとう国際的英雄になってしまった。この結果、ウクライナ国民は団結し、圧倒的と思えたロシア軍の侵攻を食い止めた。これが更にメデイアを通じて海外に発信されることにより、これまでウクライナ支援に及び腰だったアメリカやEU諸国の支援取り付けに成功した。更に国際的な反戦活動が広がり、プーチンを孤立化させた。このように危機に当たって安全地帯に逃避せず、先頭に立って危機を救う、これが「ゼレンスキー効果」である。ハンニバルもそうだったかもしれない。
 舛添のような手練手管はその場しのぎだが、「ゼレンスキー効果」は永続性の可能性がある。それはルカシェンコや習近平などの権威主義独裁者の追放に結びつくからである。
(22/03/01)

 ベラルーシがウクライナへ兵士派遣を検討。カザフに断られたからベラルーシというわけだ。これは今やロシア=プーチン政権軍が深刻な兵力不足に陥った証拠。アメリカ発表によると、ロシアは既に当初動員兵力の2/3をつぎ込んでいるという。常識でいえばこれはもはや、動員が限界に達している事を意味する。相当の損害が出ているはずである。
 ベラルーシにしたってルカシェンコが勝手に請け負っただけで、肝心の国民はどうかわからない。ウクライナに派遣されたとして、この戦争は自分達の戦争ではないのだから、真剣に戦うかどうか分からない。菅義偉が座右の書とするマキャベッリ「君主論」では「傭兵は信用できず、援軍は当てにならない」とされる。下手すると前線でサボタージュが始まり、それが国内に伝染して、ルカシェンコの命取りになりかねない。
(22/02/28)

 プーチンが無条件で話し合いに応じると表明。ゼレンスキーはこれを拒否。当たり前だが、この程度でプーチンの口車に乗るのはよっぽどのアホ。プーチンシンパのアベやムネオなら分からないが。
 当たり前だが停戦の呼びかけは、態勢を整えるまでの時間稼ぎ。まずウクライナ側を油断させ、その間に部隊配置の整理と補給・休養を行う。そして覆面部隊とか工作員を潜入させ、頃合いを見て騒動を起こす。これを停戦協定違反とみなして再攻勢をかける。いつもの手だ。
 但しそういう手を使わなくなったとすれば、プーチン政権側に手詰まり感ができ、打つ手がなくなってきた証拠。もうしばらく持ちこたえれば、プーチン政権に亀裂が発生する。つまりプーチン、政府、軍部の責任のなすりあいだ。プーチンは軍に対し「お前らがドアの一蹴りでウクライナは崩壊する」と云ったからだというし、政府は「大統領の指示に従っただけ、悪いのは軍だ」と言い訳する。軍は軍で「永年軍予算が削られてきたから、兵士が弱体化した」と言い訳するだろう。
 そこで最近の国際政治状況を見てみよう。まずアメリカに続いて、ドイツもウクライナ軍事支援に乗り出した。これでウクライナの抵抗力が格段に増す。あのプーチンシンパの日本のウラジーミル・アベも、当初はだんまりで日和見を決め込んでいたが、プーチン不利と見るや、日本世論に乗っかって「ウクライナと連帯を」なんて腹にもないことを言う。大統領選で散々恩を売ったトランプも最初は「プーチンは天才だ」と持ち上げていたが、今や「侵攻には反対するなんて180度転換。どっちもプーチン後の政局にらみのアリバイ作り。
 日欧米による金融制裁について、中国の習近平はロシア支援を金融機関に指示したらしいが、果たしてどの程度銀行がいうことを聞くのか?今中国は恒大集団をはじめとする不動産問題を抱えている。ロシアにも相当貸し込んでいるはずだ。現在ルーブルは下落を続けている。もしウクライナ問題がロシアペースで解決しなければ、巨額の不良債権を抱えることになる。これがあるから、中国は嫌でもロシア金融を支え得なくてはならないのだ。
 かくて内外ともに手詰まりとなったプーチンがウクライナ征服に失敗すれば、支持率は急落。下手すれば軍部クーデター。プーチンはルビヤンカ刑務所の地下廊下で自殺・・・と見せかけた射殺。てなことになるかどうか、欧米が手を緩めなければそうなるし、甘い顔を見せれば、又復活してくる。復活するのは神だけではない。ルシファーこそ変身と復活の名人だ。
(22/02/28)

 開戦4日目にして欧米側にやっと団結の兆しが見えてきたのに対し、ロシア側にはほころびが出来始めたようだ。一つは先日の国連安保理に於けるロシア非難決議で中国は拒否ではなく棄権で応じたこと。つまり日和見を決め込んだ。
 次に、カザフスタンに兵力派遣を要請したが断られた。昨年のカザフ騒動で軍を派遣して恩を売ったのにもかかわらずこれだ。ベラルーシはどうだろう。これも微妙。開戦以来、隣のポーランドやバルト三国にはNATO軍が増強されている。うっかり動けない。つまりベラルーシは当てにならない。
 さてこれらはどういうことか?ロシアは最早手詰まり。それどころか兵力不足に陥っているのではあるまいか?マスコミなどではロシア軍で戦闘に参加しているのは、動員数の1/2か1/3、十分余力はある、という報道がなされているが、これはとんでもない認識不足。
 通常戦闘部隊は動員数の1/3当たりにとどめておく。全部を一度に使えば補充・休養が間に合わないからだ。前線部隊と後方部隊を順番に入れ替えて使うのが基本。動員数の1/2を前線に投入するのは、最早兵力が限界にきたしてきているということだ。
(22/02/27)


 ロシア侵攻後、4日目になります。ウクライナが1週間持ちこたえれば、局面はかなり変わってくると思われる。まずロシア側だが、ロシア軍が長期戦を覚悟していたとは思えない。軍部がプーチンにどう確約したかわからないが、多分長くて1週間、せいぜい2,、3日で叩き潰せるとでも云っていたかもしれない。それが1週間とか10日になり、損害も増えれば、政府からは「思った通りにならないじゃないか」と、政府/軍の間に亀裂・不信感が芽生える。
 また兵士へもそのような説明をしただろう。しかし戦闘が長引き、周辺に戦死傷者が出れば、「約束が違うじゃないか」と、自軍上層部への不信感が芽生える。特に口絵に挙げたシベリア東部から送られてきたアジア系兵士にとって、この戦争が何のためか分からない。そこに死者でも出れば軍への不信感が決定的になる。これが昂じると、前線でサボタージュが発生する。これが広がると、遂にはプーチン追放運動となる。
 次に海外だが、先日の国連安保理事会では、ロシア非難決議は反対意見があって成立できなかった。中露以外の反対国は、インド、サウジアラビア、カタール、UAEなどゴミみたいな国である。これらの国が何故反対したか?理由としてはサウジなどはロシアと同じ独裁専制国家で民主主義には反対とか、昔からの反西欧感情が挙げられるが、最大のものは彼らがロシアが勝利するものと見込んでいるからである。ロシア非難に賛成すれば、戦後のロシアによる報復が怖いからとりあえず日和見を決め込んでいるだけだ。
 これは世の東西を問わず昔からよくある出来事。幕末薩長と幕府との関係が険悪になったとき、殆どの大名は旗幟を鮮明にせず日和見を決め込んだ。ところが鳥羽伏見の戦いで獏軍が敗北し、おまけに将軍慶喜が江戸に逃げ帰ったのを見て、一斉に薩長についた。これと同じで、ウクライナが抵抗を続け、ロシアの攻勢が頓挫すれば、これら日和見国家はたちまちウクライナ寄りに寝返るだろう。
 つまり欧米にとって勝利を得るためには、直接間接にウクライナを支援し、戦争を長引かせること。昨日やっとアメリカとドイツが対ウクライナ武器援助を決定した。遅すぎるがやらないよりはまし。援助は武器だけでなく義勇兵という手もある。スペイン内戦時の国際旅団のようなものだ。更にロシアによる経済的報復や売り上げ減を懸念して制裁に反対する企業もあるが、そんな企業に対しては社名を公表し、不買運動を展開すればよい。
 そしてウクライナ支援の目的はロシアを敵視するのではなく、プーチン体制を覆すのだ、ということを明確にし、ロシア国論を分断し、更に海外におけるロシア支持国を分断して、プーチン政権を孤立させる。そのためには日欧米政府はマスコミへの発表でも「ロシアが・・・」ではなく「プーチン政権が・・」といったほうが良い。マスコミの報道でも然りである。
(22/02/27)

 昨日(02/25)BS-TBS某時事番組。テーマはウクライナ問題。ゲストスピーカーの女性プーチン研究家が面白いことを言っていた。「侵攻前のここ数カ月、プーチンは明らかに変化している。眼は座って、言葉も乱暴になり、発言も合理性を欠き予測不可能だ。同業の研究家もこういうことはかつてなかったことだ、と云っている」。政治家の発言が予測不可能というのは、通常は精神に異常をきたしたと考えるべきである。そう思って画面に映るプーチンの顔を見ると、額のしわも増え、頬も膨らんで何かむくんでいるようだ。薬物(ドラッグ)でもやっているんじゃないか、と思ってしまう。そういえば、プーチンが薬物をやっている可能性を裏付ける現象は多々ある。やっているとすれば、それはステロイド系の興奮剤だろう。
 彼は今70才だが、65才前後といわれるロシア人の平均寿命を突破している。そして昨年末にはモスクワでアイスホッケー大会に出場し、見事シュートを決めたと云われる。又よくメデイアに登場するのが筋肉ムキムキ写真。これもステロイド系(筋肉増強剤)効果と考えれば納得できる。つまりドーピングだ。ステロイドは永年服用すると甲状腺に作用する。すると甲状腺ホルモンの分泌が活発になり、疲労回復が早く、何事にも積極的になる。これが過ぎると他者に対し攻撃的になったり、言動に合理性一貫性を欠くようになる。最後は心臓発作を起こしてあの世行きだ。我が国の元首相アベ晋三も潰瘍性大腸炎治療にある薬剤をつかっているが、これにステロイドが含まれていれば、彼のライバルに対する攻撃性、モリカケ問題に代表される一貫性を欠く言動も納得できる。アベはプーチンと孤児的信頼関係があったというから、治療薬をプーチンに紹介されたのかもしれない。
 プーチンが薬物を受け入れる理由は何か?それはストレスである。ストレスの原因は大統領という職種から来るものと、彼自身の性格からくるものの2種類がある。筆者は後者がより大きいと考えている。彼はなんでも自分で決めなければ気が済まないタイプなのだろう。ロシアの人気番組に大統領に直接お願いというのがある。視聴者から大統領に手紙が送られる。それに対しプーチンが即決で稀有論を出すというもの。日本でいえば「暴れん坊将軍」のロシア版みたいなものだ。どっちみちプーチン寄りのテレビ局がプーチンを忖度して作ったヤラセ番組だ。馬鹿馬鹿しいが、庶民はそれで欲求不満が解消され、プーチンの人気と政権支持率もアップする。
 今度の冬季オリンピックで最も話題になったのは、ロシアのワリエワドーピング問題。これに対しプーチンはワリエワに7勲章を贈り、勝利をたたえた。これなどロシアにはドーピングなど取るに足らない問題とする風潮があるのだろう。だから大統領が薬物をやってドーピングをしても、誰もとがめない。メダルさえ取ればよい、戦争してでも勝てばよい精神が根っこにあるのだ。いずれにせよドラッグに支配されたような狂人の心など、推し量れるはずがない。
 では彼の最後はどうなるのか?上記の番組で女性研究者が言っていたのが、「一番気になるのが、彼がしばしば核を口走ること」。 つまり本気で核兵器を使うのではないかということだ。その時場合によっては軍部によるクーデターが起こり、プーチンが排除される可能性がある。ヒトラーは最後になってドイツ全土の破壊作戦を指示したが、これは国防軍によって阻止された。その結果、ヒトラーは自殺しナチは壊滅した。プーチンが核のことをどの程度理解しているかわからない。それはトランプも同じだ。しかし職業軍人はよくわかっている。人類最後の希望が軍人とは皮肉だが。
(22/02/26)

 ネットで面白い写真を見つけました。これは昨日キエフ近郊で捕虜になったロシア兵。よく見ると顔つきは我々がよく知っているロシア人(スラヴあるいはノルマン系のワリャーグとは似ても似つかない,、まるっきり日本人と同じです。おそらくシベリア東部に住むツングース系。
 背丈もバラバラで体格も貧弱。とても正規の訓練を受けているとは思えない。員数合わせて無理やり徴発してきたか、ひょっとしてロシア軍はこのようなアジア系兵士をロシア人兵士の盾に使っているのではあるまいか?
 では何故アジア系のツングースがロシア人なのか。これは少々長くなります。
(22/02/26)

 ウクライナ侵攻後、プーチンはあれこれ言い訳していますが,、どれもこれも苦しい。嘘ばっかりだから誰も信用しない。その中で少し興味がある文言、ひょっとしたら本音かと思わせる言葉がある。
1、ウクライナを占領する気はない。
 これはウクライナの独立を認めるのではなく、今のロシアにウクライナを占領する能力はない、ということを認めただけである。当たり前だが、たった19万の兵力であんな広い大地を占領できるわけがない。占領というのは単に軍隊を進めるだけでなく、占領地の治安の維持など複雑な任務がついて回る。占領が長引けば膨大なコストがかかる。かつての日本も中国各地を占領したはいいものの、占領コストに足を引っ張られて遂に対英米戦争に舵を切り、国を滅ぼした。せいぜい東部のルガンスク、ドネツ両州とウクライナ東部の主要都市の占領で終わりだ。
2、目指すはウクライナの非軍事化
 非軍事化とは、どの相手に対するものか、という点が重要。ウクライナ全土掌握は出来ないのでドニエプル河当たりで、ウクライナを東西に分割し、東側をロシア連邦内の自治共和国、西側にかつての東ドイツのような傀儡政権を樹立して、これを西側への緩衝帯として用いるのではないかと思われる。そうすれば幾ら西ウクライナが軍事力を持っていても、それは西側に対するものでロシアへではない。これがプーチンの云う、ウクライナの非軍事化である。
3、世界経済に影響を与えない。
 ロシアが石油・天然ガスを使って西欧に圧力をかけてくるのではないか、という懸念を払拭するための攪乱作戦だろう。要するに天然ガスは今まで通り供給します、心配ありませんよと安心させておいて、相手を分断する。結構これに引っかかるアホが多い。
 しかし逆に言うと、ロシア経済は世界経済に依存していることを認めたようなものだ。現在ロシア国家歳入の50%は化石燃料輸出。その大部分をヨーロッパ向けが占める。ヨーロッパがこの栓を占めればロシア経済は破綻する。ロシアは世界経済を必要とするが、世界経済はロシアを必要とはしていない。代替資源を見つければそれで済む。この事実を突きつけるべきだ。これは中国に対しても同じである。グローバル経済を最も上手く利用したのは中国である。ここで日米欧が連携して中国への経済依存を低下させれば、たちまち状況は変わってくる。無論それに対する抵抗も強い。最も強いのはドイツ、それとGAFAに代表される新自由主義の鬼っ子達。イーロンマスクなどその典型だ。
(22/02/25)

 今回のウクライナ侵攻に関するプーチン=ロシアのプロパガンダ作戦を見ていると、第二次大戦でのヒトラー=ナチのそれに、非常によく似ている事がわかる。まず相手が容易に飲めない要求を突きつける。ヒトラーの場合、1938年のミュンヘン会談で、英仏両国はヒトラーの要求を唯々諾々と飲んだ。アメリカは孤立主義の共和党が下院を制しているからヨーロッパには手出しできない。つまり英米仏民主主義国家はばらばらだ。その点に付け込んで、ポーランドにダンツイヒ回廊以北の割譲を要求。理由はこの地域は元々ドイツ騎士団領でドイツ系住民が多い。彼らはこれまでポーランド人から迫害を受けていたと、根も葉もない言いがかりをつける。きっかけはドイツ領内の放送局を攻撃し、これをポーランドの破壊工作と宣伝し、西、南、北から一気に攻め込む。
 プーチンの場合も同様で、ウクライナ東部ドネツ、ルビヤンスクの独立(=ロシアへの割譲)を要求。理由はロシア系住民がウクライナから迫害を受けているからだ。彼らをを救出するために軍事力を行使する。これは帝国主義時代、各国列強が使ったお決まりの言葉だ。日本だって、中国大陸での戦火拡大にも同じ理由を挙げている。
 これらの事変に共通しているのは、対抗する先進諸国の足並みが揃わないこと、それとアメリカが孤立主義に陥って、介入にためらったことである。中には足を引っ張る国もあった。ミュンヘンの時はフランス、今回はドイツである。どちらもその前の戦争で、多大な犠牲を払ったことがトラウマになっている。この場合、人間はどうしても楽観的な方向に期待したがるものである。悪魔は常にこの楽観論の隙間に付け込んでくる。
 さて今後の展開だが、欧米は更なる制裁を警告している。しかしプーチンはそんなもの屁とも思わないだろう。何故なら彼は純粋に政略人間だからである。しかも特権階級だから、物価がどうなろうと無頓着。経済は政治の後についてくると思っている。関心があるのは自分の支持率だけ。
 そんな人間に経済制裁をちらつかせても効果はない。だが経済制裁が続けば、その影響は社会の末端から始まる。クリミア併合前までは4~5%あった経済成長率は1%台まで低下した。それでもやってこれたのは、ここ10年来の原油高である。アメリカがトランプ時代に止めた国内原油生産を再開すれば、原油価格暴落もないとはいえない。それと制裁対象をロシアと関係のある国、更にロシアと取引のある企業にも広げなければならない。そうすればアメリカだけでなく、自由主義経済圏にも影響が及ぶではないか、と言われそうだが戦争だから仕方がない。
 より厳しい制裁とはこれぐらいしかないが、じわーっと効いてくる可能性はある。実は、このじわーっと来る効果のほうが、短期強烈制裁より大きい。プーチンやその側近のような特権階級より、社会の底辺を攻めるのである。そうすれば底辺にいる人間程影響は大きくなり、プーチンを中心とする特権階級との経済格差は広がる。これが限界に達すると革命だ。日本の敗戦もアメリカによる都市無差別爆撃で、庶民の住む下町が壊滅的打撃を受けたことを昭和天皇が知ったからだ。
 グローバル経済は各国が経済で結びついているから、お互い戦争できないと新自由主義経済学者は唱えるが、現実に戦争は起きてしまった。グローバル経済即ち新自由主義経済は、世界が安定でみんなが資本主義を理解しているという前提の下で成り立つ理論である。現実はそんな甘いものではなかったのである。たった一人の狂人の予測不可能な思い込みが、全てをぶち壊す。
(22/02/24)

 始まりそうで始まらないロシアのウクライナ侵攻。アメリカ情報では、最初は2/16に始まると言っていたがその後2/20の週に変更。しかし国境沿いの兵力増強や混乱はあるが、侵攻までは行っていない。この点をとらえてか、一部の親ロ派人からは、プーチンには元々侵攻の意図はなかった、といったプーチン擁護論まで出てくる始末。
 バイデンの話は嘘かもわからないし本当かもわからない。もしバイデンの言う通りに侵攻したら、「ああやっぱり」ということになり、アメリカの情報能力の高さを証明することになる。国内的には情報を握られていたのだからプーチン政権としては失態だ。だから動くに動けない。つまりバイデンに先手を取られているのである。
 バイデンとしてはこの手を使ってプーチンを引きずりまわすことも出来る。そのうち焦って妥協してくるだろう。その証拠がマクロンの仲介による米ロ会談だ。無論これで無事手打ちというわけにはいかない。うっかり相手に譲歩すれば、両者とも火種を抱えることに案る。
 ウクライナ抜きの解決であれば、ウクライナ国民は欧米に強い不信感を抱くことになり、返ってウクライナをロシアに近づける。逆にプーチンが譲歩すれば、ウクライナ東部のリロシア系、親ロ派住民、国内保守派の反発を招くことになる。更にせっかく盛り返したプーチン支持率が低下する。これはやばい。
 両方とも手詰まりなのだが、その原因を作ったのはやはりプーチンである。支持率を上げようと焦ったのが全ての間違いのもと。なおプーチンが一番恐れなくてはならないのは、ロシア国防軍の忠誠度だ。ロシア国防軍はかつてのソ連赤軍のような党の軍隊でもなく、大統領の私兵でもない。自分に不利となれば、大統領といえども、処分してしまう。
(22/02/22)

 ウクライナ問題で、今一番困っているのはロシアのプーチンではあるまいか?バイデンやマクロンは、ロシアがウクライナに侵攻すれば厳しい制裁を、と言っておけばよい。また何が起こっても、みんなプーチンの所為にできる。一方プーチンは、今更うっかり引き下がれない。国内には如何にウクライナ人が残忍で卑劣か、というプロパガンダ映像を垂れ流し、国民に戦争気分を煽っている。ということは、ここで軍を引き揚げれば、国民にはプーチンは欧米に屈したと映り、支持率は急落。
 逆にウクライナに侵攻した場合どうなるか?間違いないのは欧米の制裁。まずNS2は停止されその他の原油輸出もストップ。外貨が入ってこないから国内インフラは更に進行する。これが長引けばやっぱり政権支持率低下に繋がる。次にあるのはプーチンとその親族・側近達の銀行口座凍結。ロシアがこれまで軍事援助してきた国への制裁も加わるだろう。
 これまでロシアはチェチェンやジョージア南オセチアに軍事介入し成功してきた。それはこれらの国・地域が狭く弱小だったからである。しかしウクライナは大国だ。僅か10数万の兵力で、この広大な地域を制圧できるはずがない。仮にできたとしても一時的なもの。長期的な維持は不可能だ。ウクライナが持久戦に徹すれば、ロシア軍にも損害が生じる。それより前線からの棺が市民の眼に留まれば、厭戦気分が発生する。アフガンの二の舞だ。
 それを避けようとすれば、出来るだけ短期決戦で戦争を終わらせること。東部ドネツ地区の北部を占領し、既成事実を作って居座り、プーチンのメンツを保った形で欧米と交渉に持ち込む、てなところか。逆にウクライナとしてはロシア軍を内部に引き込み(戦略的撤退又は孫子の兵法に言う「空城の計」)、ロシア軍の兵站線が伸びきった時点で反撃に移る、あるいは持久戦に持ち込む、という戦略をとれば勝ち目はある。筆者はこれを奨める。
 なおロシア軍の最大の敵はウクライナ軍やNATO軍ではなく、コロナとウオッカだ。そういう意味で今は開戦には最悪の時期。
(22/02/15)

 緊迫度を増すウクライナ情勢。事ここに及んでバイデンが「・・・緊急時でもアメリカ政府は民間人を救出しない。自己責任で脱出するように」と余計なことを言った。こんなことを言えばトランプに「民主党政権はアメリカ人を助けない」と宣伝させるチャンスを作るだけ。到底中間選挙に勝てない。こういう時こそ「アメリカ人に危害が及べば、アメリカ政府は躊躇なく介入する」と言って、プーチンを牽制すべきである。
 それはともかくプーチンは何故今頃になって急にウクライナに対し強硬になったのか?プーチンはNATOの東方拡大反対とか、体制保障とか北朝鮮のようなことを言っていますが、どれも説得力はない。筆者が思うに、これはロシア内政問題ではないか。ズバリ言えばプーチンはロシア統治に自信を無くしているのだ。
 その理由は、このところのプーチン支持率の低下である。三年後には大統領選がある。それまでに立場を盤石なものにしておかねばならない。しかし問題も多い。
1、最大の問題は国内のインフレである。クリミヤ併合以来の欧米による経済制裁で国内にインフレが進行している。これは特にサンクトペテルスブルグのような都市生活者にダメージが大きい。
2、今年1月初めに起こったカザフスタンでのデモと政権交代。何とかこれは制圧したものの、隣接するベラルーシだって危ないもの。ルカシェンコなど今はペコペコしているが、あんな信用ならぬ奴はいない。つまり周辺諸国はかつてのソ連邦のように一枚岩ではない。何時潰れるかわからない「不安定の弧」なのである。
3、やっぱりコロナだ。ロシアの感染者数は正確な発表がないのでよくわからないが、国民の半数以上がロシア製ワクチンスプートニクを信用していないので、相当広がっているはずだ。それはウクライナ国境に展開する部隊も同じである。国民が政府を信用しない。これは由々しき事態である。
4、今は原油高でロシア政府の懐は潤っているが、これだって何時までも続くものではない。日欧米は今後化石燃料需要を確実に減らしてくる。今のロシア経済は余りにも石油に依存しすぎている。構造改革を図らねばならないが、政府も政治家も財界も腐敗と堕落が進み、無能と役立たずだらけ。これでは引退したくてもできない。ここらあたりでがツーンと一発食らわして、性根を叩き直さなければならない。そのためには緊張を高めることだ。上手くいけば支持率アップにつながる。てなところか。
(22/02/13)

 ロシアの脅しに驚いて、アメリカがEU向けLNG供与。そのとばっちりが日本に来て、EUへLNGを供与することになった。日本だって貴重な備蓄を取り崩すわけだから、まさか只ということではあるまい。そもそもヨーロッパ人はエネルギー資源についてナイーブだ。かつての帝国主義時代は、植民地から幾らでも資源が得られた。植民地が独立しても、資源利権は宗主国企業が握っていたから問題はなかった。ところが70年代以降、段々そうはいかなくなってきた。
 特にソ連東欧崩壊後は、ロシアが資源市場に殴り込みをかけてきたから、資源価格も欧米の思惑通りにならなくなった。それにもかかわらず、EU諸国はソ連がなくなったから、石油や天然ガスはロシアから幾らでも入ってくると勝手に思い込んで、エネルギー安保に全く無頓着になった。特にドイツ・フランスが酷い。2、3年前ヨーロッパでガソリン価格が急騰したことがあった。世界的にみてもヨーロッパの急騰は異常だった。何故かというと、ハリケーンでテキサスガルヴェストンの石油精製基地が被害を受け、ヨーロッパ向けガソリンが製造できなくなったという。
 つまりヨーロッパは海外で購入した原油を一旦アメリカに持ち込み、そこで精製したガソリンをヨーロッパへ輸入していたのである。ということはヨーロッパにはろくな石油精製基地がなかったということだ。おそらくユーロ高を見込んで、精製基地をみんなアメリカに移転してしまったのだろう。これは円高で、半導体からなにから生産設備をみんな中国に移転し、いまや何も作れなくなった日本とよく似ている。元々勤勉な蟻が一時の成功に目がくらんで、先のことも考えずキリギリスになってしまって浮かれている間に、冬がやってきて寒さに震えあがっているようなものだ。
(22/02/10)

ブルキナファソでクーデターが発生。その背景は現地のトウアレグ族に「食い込んだISゲリラの横行。どうもその背景にはロシアが介在している可能性あり、といわれる。ロシアが何故こんな西アフリカの不毛の貧困国に関心があるのか?確かにその南のナイジェリアには金や石油はあるが、そんなものはロシア本国に幾らでもあるので、わざわざ出向く必要はない。なんとなく最近のロシアープーチンはかつてのソ連ーブレジネフ時代に先祖返りしたようだ。
 ソ連ーブレジネフ時代とはどんな時代だったか。1964年事実上のクーデターで、それまで米ソ平和共存路線を掲げてきたフルシチョフ第一書記が追放され、ブレジネフが後任に座った。これからこの後80年代末のゴルバチョフによるペレストロイカ時代まで、長い東西冷戦時代が始まるのである。
 この時代、ソ連の国策とはどういうものだったか?結論を言えばやたら世界に騒ぎを起こす無定見だけといってよいだろう。その理由は党、国家の最高指導者であるブレジネフが、何の定見も持たず党内序列を上がってきただけの共産党官僚だったからである。
 そのブレジネフ政権を支えていたものはなにかというと、1)テクノクラートと呼ばれる共産党実務官僚、2)共産党を中心とする地方利権団体、3)軍を中心とする軍産複合体、そしてプーチンを産んだ4)KGBである。
 これらはそれぞれ利権を持っている。そして共通するのは、なんら定見を持たず、自分たちの利権を守ることだけを目的とする官僚的体質である。そして彼らが互いに自分達の利権の拡大、防衛のために勝手に動き回る。彼らにとって重要なことは、最高指導者に自分達が必要だと思い込ませることである。
 そのために最高指導者を常に不安感に陥れることが重要。その手段として編み出されたのが、世界に混乱を起こし、それを長続きさせることである。手法は様々で、途上国にクーデターを仕掛け、勢力の空白部に親ソ政権を作る。あるいは西側諸国に平和攻勢を仕掛け分断を誘う。無論アメリカも負けていないから、あれこれ手を打つのだが、KGBのほうがCIAより一枚上手のように見えてしまう。なおゴルゴ13が活躍するのはこの時代。
 ブレジネフ時代のソ連はこういう混乱創出を、東はベトナムからアフリカ、中東に無定見に広げ、最後はアフガニスタン。これが命取りとなって91年ロシア崩壊に至った。親ソ国家を各地で乱造したはよいが、これらの国は元々経済能力がない。そこでソ連はこれら親ソ途上国に経済・軍事支援を供給することになる。ところがこれがみんな失敗。勢力を伸ばせば伸ばすほど対外赤字は増える。その付けは本国に回って、ソ連国内ではインフレが起こり、深刻な食料不足となる。
 これを打破しようとしたのがゴルバチョフである。しかしそれでも追いつかず91年、ソ連は崩壊。その経緯をサンクトペテルブルクのKGB支部で見ていたのが、ウラジミール・プーチンKGB少佐。彼はサンクトペテルブルクでの混乱を沈静化した手腕を、当時のエリツイン大統領に認められ、大統領府で昇進を重ね、20世紀末には遂に首相の座を射止める。更にチェチェン紛争を抑え込んだので国内人気は上昇。2002年エリツインの後を襲って大統領となる。
 最初の間はおとなしくしていたが、2008年にはジョージアの東オセチア問題に介入、2011年に始まったシリア内戦に介入、そして2014年にはクリミア併合と、やりたい放題。そして今、ウクライナや西アフリカだけでなく、キューバやベネズエラ等反米国家にミサイル基地建設を示唆。かつてのキューバ危機の再来だ。
 そこに見えるプーチンの狙いは、アメリカと同盟国(NATO)、アメリカ国内の分断、世界中に混乱を作ってロシアには手出しできないようにする。そうしなければ安心できない。それともう一つ、プーチンは孤独な独裁者だ。かつての米ソ(ロ)関係には、レーガンーゴルバチョフ、ブッシュ(父)ーエリツインといった個人的信頼関係があったが、今のプーチンにはそれがない。メリケルとは腹を割って話せたが、彼女ももういない。日本でもプーチン氏との個人的関係を強調した政治家がいた。それは元総理のアベ晋三である。しかしプーチンにはその気はなかった。スパイは相手の気持ちを開かせるが、自分の気持ちは決して明かさない。そう訓練されている。かくて無定見な干渉が何時までも続く。
 プーチンのこの結果は、プーチンのブレジネフ化である。ブレジネフ政権末期では、共産党幹部や官僚の腐敗が進み、国民の信頼をなくし崩壊した。長期政権は必ず腐敗する。プーチンも最早67才だ。50台半ばといわれるロシア人男性の平均寿命をとっくに超えている。定見を持たない孤独な独裁者の寿命も後僅か。さて孤独なロシアよ何処へ行く。
(22/01/29)

 さて緊迫を強めるウクライナ情勢、プーチンの狙いは何か?1)ウクライナ東部に親ロ政権を作り、ウクライナを屈服させる、2)旧ソ連ひいては大ロシア帝国の復活、3)南西部での対西欧緩衝帯の確保等いろんな見方があります。筆者は以前、ウクライナ東部クラコフにある世界最大の戦車工場の確保が狙いではないかと考えた。
 最近佐藤・池上共著の「戦後左翼史」という本を読んでいると、佐藤優が「ロシア人は国境を線ではなく面で捉える」「必ず緩衝帯を設けなければ不安でしかたない」と述べていた。つまりウクライナ=緩衝帯論である。バルトーベラルーシーウクライナーカフカスーザバイカル地帯が親ロ化もしくは悪くても中立でなくては落ち着かれない、というのが本当のところかもしれない。
 これはロシア人固有ではなく、騎馬民族共通の特性でもある。古代フン帝国はドナウ川の北ハンガリー平原を主根拠地としていたが、アッチラはローマ帝国に対しドナウ川の南に非武装地帯を設けローマ軍が駐留しないよう要求した。更にもしローマがこれを拒否すると暴れまわるぞと脅したので、ローマは仕方なくアッチラの要求をのみ、おまけに賠償金まで差し出して宥めた。つまり騎馬民族にとって非武装地帯=緩衝帯とは、自分が好き勝手なことができる空間に過ぎない。
 ロシア人は農耕民族ではないか、という人がいるかもしえないが、中世ロシアは250年にわたってモンゴルの支配を受けた。その時にロシア支配階層はモンゴル流の外交術を学んだのだろう。
 似たようなケースは北朝鮮にも当てはまる。日本人は韓国人も北朝鮮人も皆同じ民族と思っているかもしれないが、実は微妙に異なる。半島南部に多いのはモンゴル系のフヨ族といわれる。BC5000年頃抽選半島に現れ南下して農耕生活に入った。古韓国人と呼ばれる。
 1世紀に入ると満州南部にいたツングース系遊牧民である高句麗族が南下しフヨ族を追って、3世紀ころには高句麗国を建国した。その後両者は統合・分裂を繰り返しながら現在に至っている。韓国はモンゴル系フヨ族、北朝鮮はツングース系高句麗といっても現在両者の境界は明確ではなく、どちらかといえばそれぞれの血統が多いだろというぐらいの差に過ぎない。
 それでもなんとなくジョンウンの発言には騎馬民族的要素が感じられるのである。例えばトランプとの米朝会談で、アメリカが北朝鮮が核放棄をすれば経済支援をする、といったのに対し、ジョンウンは朝鮮半島だけでなく在日米軍を含むグアムまでの地域の核放棄を要求し、結局は交渉決裂。つまりジョンウンはグアムまでの第一列島線までを緩衝帯にしたかったのである。これこそ佐藤優の言う面的国境主義。ということは、プーチンもジョンウンもおそらく習近平やベラルーシのルカシェンコ、も意識の上では、古代中世のアッチラやイワン雷帝とたいして変わらないことになる。であれば、重要なことはこれら過去の独裁者皇帝がどう行動したかを研究することである。
(22/01/26)

 現在進行形のカザフスタン暴動。何か妙な方向に動き出したようだ。元々は天然ガス料金値上げ反対デモだったのが、そのうち前大統領排斥運動に広がり、このまま行くと、かつての中国第二次天安門事件的民主化運動になるかと思いきや、前大統領は行方不明、拘束説も出る。
 そうこうする間にプーチン主導で、周辺諸国による軍事介入。ところが今度はカザフの国家安全保障会議議長とその側近拘束の報道。国家安全保障会議議長といえば、旧ソ連のKGB議長。中国では党の情報総局主任レベルの高官。政府や要人の秘密をみんな握っているポジション。それを拘束するということは、カザフ政府内に相当深刻な内部抗争、権力闘争があるということに他ならない。
 この事件にいち早く反応したのがロシア。そしていち早く支持したのが中国。ということは、ロシアや中国でも、同じような権力抗争の火種を抱えているということだ。古今の大陸国家の歴史を見ると、独裁者・・・皇帝や国王・・・は常に暗殺の恐怖に脅えていることが分かる。何10人もいるローマ皇帝の中で無事天命を全うできた皇帝はほんの一握り。これは中国やオスマントルコも同じ。過去にあったことは現在でも真実だし、未来でも繰り返される。現大統領のトカエフは反乱者には無警告で発砲せよと命じた。これは自分に対しても適用される。
 なお前大統領ナザルバエフは、その容貌から見て明らかにモンゴルタタール系。カザフスタンは中世はモンゴルキプチャク汗国。その後イスラム化し、カザフ汗国になり、19世紀にロシア領になった。
(22/01/09)

 たかが天然ガス料金値上げ反対デモに軍隊まで繰り出す騒ぎ。中央アジアカザフスタンの反政府デモ。これに対しカザフスタンは周辺諸国(CSTO)に軍事介入を要請。プーチンは平和維持軍の派遣を主張。この要請表向きはカザフスタンからになっているが、裏でプーチンが糸を引いているのではないか?。
 今ロシアはシリアに軍事介入し、ウクライナにもその姿勢を見せている。シリア問題は一向に解決の目途が建たない。何故目途が立たないかというと、ジャスミン革命で死に体だったアサド政権をロシアがテコ入れし、勢力を回復したものの、その勢力範囲は点と線にとどまり、却ってISなどのイスラム過激派の跋扈を許した。アフガニスタンの二の舞だ。
 反プーチン派のジャーナリストや政党・団体を弾圧しても、プーチンの支持率は年々低下し後がない。ここでカザフスタンに何か起こり、それが周辺諸国に拡大すれば、ロシアは国境で大変なリスクを抱えることになる。次の大統領選の前に何とかしなければならない。ここはなりふり構わず介入だ。
 カザフスタンはロシアの国防だけでなく、一帯一路の最重要地域。ここが民主化すれば習近平の壮大な計画も泡と消える。中露ともに黙って見過ごすわけにはいかないのだ。この件で一番肝を冷やしたのは、プーチンと習近平だろう。
(22/01/07)

 

 これはこのほどやっと配備が始まったロシアのT-90戦車。90年代から開発が始まってやっとだから、かれこれ30年近く要している。T-72/73戦車の後継機だが、砲塔が拡大されていることや赤外線暗視装置等の電子機器装備が充実しているらしい。しかし実力はどうか分からない。
 さてこの戦車を何処で製造しているかだが、実はウクライナのハリコフ。ハリコフには世界最大の戦車工場がある。19年ロシアがクリミアに続いてウクライナ東部を占領したのは、この戦車工場をウクライナから奪い返すため、と筆者は考えている。
(21/08/14)

 ロシア対外情報局(前身はKGB)創立100周年を祝う式典で演説するプーチン。プーチンは元KGB将校だったから、思いも特別。背景にも周囲にも誰もいません。当たり前だがこの組織はスパイの集まり。うっかり顔は出せない。ゲストにゴルゴ13のそっくりさんでも出せば、プーチンもユーモアが分かる人物だ、と評価される。
 なおベラルーシ反政府活動家が毒を盛られた事件で、プーチンはKGBなら最後までやっていると不気味なコメント。プーチンは眉一つ動かさず人を殺せる訓練を受けた人物だということを、菅も鈴木宗男も知っておくべきだ。
(20/12/22)

 ロシアのチェルキン駐国連大使が急死。死因は心臓発作と言われるが、実態は腹上死ではあるまいか。これでロシアの国際ゴロツキが一人消えたわけだが、未だ大物が一人残っている。それはプーチンだ。トランプもゴロツキの一人だ。このゴロツキ二人の間でペコペコ這いまわっているチンピラヤンキーが、我が日本国首相アベ晋三。
(17/02/22)

 トルコでロシア人大使が殺されたかと思えば、今度はドイツでトレーラーテロ。ワタクシはこれはプーチンが差し向けた刺客の仕業ではないかと思いました.。何故なら犯行に使われたトレーラーはポーランドで盗まれたもの。ポーランドはあまりアラブ人はいないのだ。事件後ISが犯行声明を出していますが、これもあんまり信用できない。ISはもはや組織が弱体化し、統一的な指揮系統がない。IS声明など、ロシア情報機関では幾らでもねつ造できる。
 一方、最近ヨーロッパでは二つの重要選挙が行われました。オーストラリア大統領選とフランス野党代表戦です。しかしいずれも極右が敗北しています。また、次にはドイツ・イタリアで総選挙がある。アメリカトランプの所為で、ヨーロッパでは極右に対する反感が強くなっている。これはイカン、なんとかせねば。手っ取り早いのは、イスラムテロを装って各国に民族主義を煽り、極右派を支援することだ。そこでイスラム系のルンペンを雇って、ことを起こさせる。古典的な謀略です。
 考えてみなさい。アサド政権派が攻撃しているのは、主に反アサド派で、対IS攻撃などついでみたいなものだ。つまり、ロシアはISに恩を売っている。ISがロシアにテロ要員を提供しても不思議ではない。プーチンは元KGB将校。顔色一つ変えずに人を殺せる訓練を受けているのだ。
 さてここで興味があるのは、先ほどのアベ/プーチン会談の中にアベが説明を拒否した点がある。ほぼそれと同時に、ロシアのプーチン側近が「日本のおかげでロシア制裁網に風穴を開けることが出来た」と語った。ウクライナ問題でのロシア制裁の中心はEU。ロシアにとってEUの分断こそ当面の目標。その中心にいるのがドイツのメルケルだ。彼女に揺さぶりをかけて、EU解体に持っていく。EUが解体すれば、ヨーロッパはロシアの思うがままだ。それがプーチンの最終目標だ。かつてのアッチラ、モンゴルのバツの野望の再現である。今回の事件がプーチンの指示だったと考えてもおかしくはない。そのお先棒を担ぐのが日本のアベ晋三だ。日本に来た価値はあった。
(16/12/21)

トルコでロシア大使が射殺されました。ザマあ見ろだ。この大使は、プーチンを頭目とするロシアギャングの一味。こんな悪党野郎は殺されて当然。ついでにエルドアンもプーチンも殺ってしまえば、世の中少しは明るくなる。トランプも大人しくなるだろう。
 これに対し菅が早速ロシアに弔電を送り、「お悔み申します」とさ。そもそも未だ正式な国交もない国の、それも一地方大使・・・言っておきますがこいつはギャングの一味・・・が死んだと云って、政府がわざわざ弔電を送ったり、官房長官が声明を出すなど、前代未聞。どっちみちアベの指示だろうが、この男そこまでプーチンにコケにされて、未だロシアに媚びを売る気か。未だあきらめきれてないようだ。あきらめの悪い男ほど、悪い女に手玉に取られるのだ。
(16/12/20)

   にこやかにシャンパンを酌み交わすプーチンと習近平。実はこれ、本日「パナマ文書」を報道したWSJ日本語版のパクリです。
 WSJが何を云いたいのか、云わなくても判るでしょう。「パナマ文書」の内容は、多くの人が「ああやっぱり」と思ってそれほど驚かないのが特徴。なお、今のところ日本人の名前は挙がっていないようだ。これは日本人がマジメというより、パナマ側が要求する富裕層のレベルが高すぎて、相手にされなかった可能性の方が高い。
(16/04/05)


 このところ際立つのがプーチンの反米姿勢。以前とは打って変わったようだ。その原因がウクライナ問題にあるというのは判るが、プーチンの論法は飽くまでアメリカ陰謀説が根拠だ。本当に陰謀があったのかどうか、よく調べれば判る。仮にアメリカの陰謀があったとしても、ロシアだって同じくらいやっているのだ。
 何かプーチンの背景に、ラスプーチンのような怪しい人物がいて、それに操られている可能性もある。馬鹿馬鹿しいと思うだろうが、ロシアではあり得るのだ。特にロシア正教は多くのセクトに分かれ、その中にカルトもいる。ロシアカルトの特徴は極端な反科学主義・反西欧主義・民族主義である。共産党政権時代はこういうカルトは弾圧されたが、ソ連崩壊でまた息を吹き返している。プーチンが反米・反西欧主義に傾くのは、これら反西欧宗教カルトの影響の可能性がある。
 なお、この手の民族宗教カルトが日本にいないかと言うとそうではない。「日本会議」という右翼民族主義カルトがある。その頭目は誰あろう安部晋三首相なのだ。その手先が稲田朋美とか櫻井よし子など、何故か女が多いのが特徴。アベが女性登用を声高に叫ぶのは、女性をカルトに取り込むこと、或いは既に洗脳された女を各界に送り込むことが目的か?
(15/10/02)

 中国景気減速で西側諸国は大慌て。一人そ知らぬ顔(のフリ)をしているいるのがロシア。1930年代の大恐慌でもソ連は資本主義国を尻目に我が道を行った。その続きでしょうか?あの国は旧ソ連時代以来、経済は・・・ソ連崩壊後の一時期を除けば・・・殆ど鎖国状態。特にウクライナ問題以後、西側資本が引き上げてしまったので何も判らない。しかし客観情勢から見ると、今の大国指導者の中で習近平・朴クネに次いで困っているのがプーチンだろうというのは容易に想像出来る。
 まずウクライナ以後の経済制裁で、それまで海外に逃避していた金融資産の大部分が凍結された。凍結されても価値は残るが、今回の株安で大打撃。株安の前に起こっていたのが原油安。原油・天然ガスはロシアの重要な外貨獲得源だが、これも打撃を受けた。兵器輸出はどうか?ロシア製兵器の主な購入先は中東・アフリカや中南米の反欧米国家。彼等の原資は主に石油だ。これも石油価格が下がれば購買意欲が低下する。国内的にはあの国はルーブルしか通用しないから、ルーブルを刷ってさえいれば当面はなんとかなる。しかしその裏で進行するのが悪性インフレ。特に外貨不足で政府がデフォルトに陥れば、民衆がルーブルに信用をなくし革命だ。
 現在ロシア最大の経済的・外交的パートナーは中国である。このところロシアが日本や欧米に対し強面に出るのは、中国をバックにしているから。ところが肝心の中国が現在の体たらく。例の対中天然ガス長期供給契約や第二シルクロードなど、中国関連でロシアにとって美味しい話が一杯あったが、これがみんなパーになりかねない。これはプーチン政権にとって大きな痛手だ。だから逆に日本と手を結びたくて、強面をやっている気もする。いやよいやよも好きの内という例のアレだ。これは3000年来ユーラシア騎馬遊牧民族特有の交渉術なのである。うっかり引っ掛からないように。
(15/08/26)

 ロシアがフランスに発注していた2隻の揚陸強襲艦が1隻12億ユーロの賠償金でチャンセルになった。メデタシメデタシ。何故ならこの内少なくとも1隻は極東に配備されることになっていたからだ。だからウクライナ問題でロシアとフランスが対立したとき、筆者は日本がこの2席にオプションをかけろ、と云ったのはそういう理由だからだ。
 さて日本はこの強襲艦を買うべきでしょうか?NOです。まず第一に日本がこんなものを買うと、東アジアに余計な軍事的緊張をつくるという政治リスクを産む。第二に運用システムが全てロシアスペックだから、日米運用指針に適合しない。管制システムでも日米共通システムにリンクしていないから役に立たない。それどころか艦内部品もロシアスペックにっているから、例えばタービンのネジが壊れてもJIS製品は絶対に合わないからフランスから取り寄せなければならない。だから現実には全く役に立たない。どうしてもというなら、内部儀装を全て撤去し、ガラケー状態で日本に輸送し、中身を全部日本製で入れ替えることだ。つまり中国がやったワりゃーグ方式だ。
(15/08/04) 

 プーチンが訪日に積極的姿勢を見せたので、アベ官邸は大喜び。ところがその本音を聞くととんでもない。この言葉の本音は馬の前にぶら下げた人参。これをぶら下げておけば、日本は何処までもついてくるだろうという読みだ。毎日新聞のプーチンインタビューに拠ると、まず彼は現在の日露関係を損ねている責任は日本にある、とジャブをかました。これはウクライナ問題での対ロ制裁に日本が参加していることと、アベのキエフ演説を意識したもの。
 次にロシアは「期限を限った交渉はしない」と述べた。これはプーチン年内訪日を半ば公約しているアベへの牽制。更に「成果が見通せない交渉はしない」と明言。成果とは何か?現在の対ロ制裁から抜け出して、対ロ投資を増やし、あわよくばアメリカと距離を取れということだ。
 プーチンの狙いは領土問題を人参にして、日米同盟にクサビを打ち込むこと。そして日本に跪け、そうすれば日本に行ってやってもいい、オバマに跪いたのだからオレにも出来るだろうというわけだ。その準備は着々と進んでいる。先日ロシア国防相が、極東での軍事基地整備拡張工事を、従来の2倍の速度で進めると表明。これがプーチンの対日交渉カードだ。しかし、日本側はアベのキエフ演説で対ロカードを失ってしまった。
(15/06/21)

 アベがウクライナに行って、ウクライナ支援を表明。なんとなく昨年カイロ演説の二の舞になりそうだ。これはサミット開催に当たって議長国として、ロシア制裁の引き締めを諮るという説がある。これにより、日本がロシアに対し優位に立てるという狙いだ。つまりウクライナ支援ーロシア制裁ーアベ/プーチン会談ー北方領土問題解決という道筋だというのだが、信じられますか?誰がこんな妄説をふりまいたのか?アベはアホだからこんな妄説を信じてしまったのだろう。
 この説の基には、最早ロシアは終わりだ、今日本はアメリカと同盟を強化し、世界に恐れるものは無い、だからいまロシアに対し強気で出ても問題はない、という思い込みがあるのではないか?
 こんな思い込みなど何の意味も無い。ロシアは相変わらず核大国だし、軍事大国でもある。日本の言うことなど聞く気も無い。おまけに最近は原油価格が回復基調にある。最早ロシアは西側にペコペコする必要もない。
 そしてもっと大事なことを教えておきましょう。プーチンは旧ソ連KGBのエリート将校だった。KGBのエリートなら、少なくともIQ140はある。それに比べ西側諸国指導者のIQは、あのセンスでは、せいぜい110から120程度。アベに至っては・・・成蹊裏口入学だから・・・100あるかどうかではないか?
 だから西側はプーチンに手玉に取られるのである。こんな状態でアベ/プーチン会談などやったところで、やらないほうがまし。第二次大戦中のピレネー会談の二の舞でしょう。
(15/06/07)

ロシアの衛星打ち上げロケットプロトンMが打ち上げに失敗。このところロシアロケットは立て続けに打ち上げを失敗している。3年ほど前だったか、ロシアが打ち上げた火星探査衛星が途中で行方不明になった。これに対しロシア当局は外国製の半導体の所為だと云った。しかしどの国の製品かは明らかにしていない。
 その後立て続けに起こる打ち上げ失敗。なんとなく背景にスキャンダルの存在が疑われます。ロケットを打ち上げるのは国営企業。これには当然プーチンの息がかかっている。部品の調達を高価格の先進国製ではなく、安上がりでリベートもしっかり払う新興国製に変更すれば、莫大な利益がプーチン側に転げ込む。その新興国とは何処?か皆さん言わなくても判りますねえ。
 今回プロトンMが搭載していたのはメキシコ製の衛星。メキシコとしては大変な努力の末の衛星だ。それがパーになったのでは黙っていられない。おそらくロシアは新興国に向けて安値受注をしかけたのだろう。それが裏目に出たわけだ。その結果が、宇宙産業からのロシア追放だ。
(15/05/17)

 昨日モスクワで行われた対独戦勝70周年軍事パレード。兵員16000人、車両数100両、航空機100数10畿。随分金が懸かったたろうねえ。この金を一体誰が出したのか。あのロシア人が額に汗して稼いだのか?NO。
 実は日欧米の対ロ援助が原資です。ソ連の後を引き継いだロシアをこちらの陣営に取り込もうと、一所懸命対ロ投資をやった結果が、ロシアの軍備増強に利用されただけ。中国でも同じ。日本からのODAとか欧米からの対中投資が軍拡資金に化けたのです。からくりは簡単。
 資本主義国家では、商売の相手がこちらが払った代金を、なんに使おうと文句はいわない。この傾向は現在主流の新自由主義経済下で顕著である。無論契約によって支払い代金の使途を制約することは可能ですが、あまりそれをやると相手から取引を断られたり、横から何も云わないライバルが入ってくるから、結局は何も出来ない。要するにロシア・中国が持つ広大な領地と人口に目がくらんで、尻尾を掴まれただけです。
(15/05/10)

  デンマークがアメリカ主導のMD訓練に軍艦一隻を派遣したところ、ロシアがデンマークに対し「そんなことをすれば核攻撃の対象だ」と脅迫。しかしこの種の脅迫は今回が初めてではない。日本もソ連崩壊時にソ連の核ミサイルは日本を標的としていたと云われて震え上がったことがある。ロシアというのは旧ソ連時代からのゴロツキ国家だったのだ。
 では何故ロシアがこんな脅迫をしたのでしょうか?ウクライナ問題後の西側による経済制裁、更に最近やっとまとまったEUの資源確保の多様化方針で、ロシアが使える資源カードの価値がなくなってしまった。そこで仕方なく核という恐怖カードを見せたのでしょう。このカードを切ればおしまいだぐらいはプーチンだって判っている。つまり、これをやるぞと云わざるを得ないほど、ロシア経済はピンチに陥っているということだ。
 さて問題はこれを受けての西側の対応。毛沢東のように、”水に落ちた犬おも打て”という強硬路線で突っぱねるか、チェンバレン流の宥和主義で問題先送りにするかだ。私ならプーチン辞任を担保に、経済支援を餌にロシアを西側に抱き込む作戦を取る。プーチンがいなくなればウクライナ親ロ派も弱体化するし、ウクライナも納得するだろう。クリミヤの処分はそれから考えればよい。ゴロツキにはそれ相応の対応法がある。
(15/03/23)

 ロシアがクリミアに核爆弾搭載可能の戦略爆撃機を配備した。さてどんな飛行機かとみればツポレフ22M-A3。実はバックファイア(NATOコード)爆撃機だ。これの初期型はベトナム戦争後に配備された。中国も導入している。A3はその改良型で80年代から配備されている旧式機だ。
 現在ロシアはこれの後継機であるブラックジャックを配備しつつあるが、資金不足でなかなか上手くいかないらしい。22Mは確かに超音速で核装備も可能だが、西側がバックファイア(逆噴射)と呼ぶように、機体工学的には失敗作なのだろう。無論ステルス性はないし、機体性能など重要情報は全て西側に筒抜けだ。旧ソ連製の旧式対空ミサイルでも撃墜可能。こういう旧式機を配備するということは、ロシアがクリミア防衛に真剣なのかどうか疑わしい。
(15/03/19)

 鳩山由紀夫のクリミア訪問が日米に物議をかもしだしています。ワタクシは別に鳩山の肩を持つわけではないが、鳩山という人間の人格形成に興味がある。鳩山由紀夫の専門は応用数学、特に統計力学である。この分野に限らず自然科学では、理論の正しさを証明するためには、如何にデータに客観性を持たせるかがポイントである。例えばあるデータが得られたとき、その反証となるべきデータがあるかどうかを調べなくてはならない。そういう意味で現在のロシア/ウクライナ問題で、クリミアを実地に調べるのは理念としては正しい。
 しかし、その理論と方法には問題があって、とてもじゃないが鳩山の結論は世間に受け入れられるものではない。
1、理論面で;通常の古典物理学の世界では因果律、つまり原因があって結果が生じるという法則が成立する。ここでは原因から結果にいたるプロセスが重要である。ところが、素粒子物理の世界ではそれが通用しない。どれが結果で何が原因かが判らない。それを説明するのが統計力学、全て確率で決まる、というわけだ。だから原因と結果のプロセスは意味をもたない。バクチになにか意味がもてますか?
 最初に述べたように鳩山の専門は統計力学。当然ながら因果律は無視する。と言うことで鳩山の頭には、何故クリミヤがロシアに編入されたかといういう原因とプロセスは存在しない。
 ところが現実の政治は鳩山のような高次数学の世界ではなく、もっとどろどろした算数の世界なのである。そもそも現在のウクライナ問題の発端は、昨年2月からの旧政権への反対デモが切っ掛けだった。原因は前大統領の腐敗と独裁。この結果前大統領はロシアに亡命した。この時プーチンはいきなりクリミヤのロシア帰属権を主張しだした。これはなにも前大統領を助けようなどと言う親切心からではない。
 この政変でウクライナに親西欧政権が生まれるのを阻止しなければならない。理由はセバストポリ軍港の使用権である。90年のウクライナ独立後も、セバストポリ軍港は25年間はロシアが借用できる条約を結んだ。しかしここに親西欧政権が生まれたらどうなるか?借用期限はあと1年しかない。新政権が今までどおりセバストポリを貸してくれる可能性は殆どない。だったら奪ってしまえということだ。別にクリミア住民を助けようなどと言う気持ちは微塵もない。利用できるものはみんな利用しようという発想である。つまり原因と結果には一次的連関がある。
2、方法について;自然科学はデータの信用性については、STAP細胞事件のように極めて敏感である。また、鳩山がやっていた統計学でもデータの客観性は重要である。しかしながら鳩山のクリミヤ訪問はデータ収集方法としては、小保方のように稚拙としかいいようがない。
 まず自分で誰にも知られずに潜り込んでの調査なら信用できるが、現実はロシア政府の招待であり、ロシア政府高官とも会談している。これでは鳩山が得たデータは事実上ロシア政府から与えられたもので、小保方STAP細胞と同様、客観性に欠け世間から信用されるものではない。無論彼はこれまで西側が伝える情報こそ客観性に欠けるというだろう。私もそういう気はするが、西側報道機関はロシア(や中国)ほど統制されていない。だからろくでもないクズ情報も紛れ込んでいる。しかしこういう無統制報道を繰り返せば、その内有意な情報が浮かび上がってくる。この手法を情報工学ではスタッキング*という。鳩山がこれを知らないはずがないだろう。
 つまり、鳩山のこれまでのロシア/ウクライナ問題へのアプローチは、理論面でも方法論でも未成熟である。もう少し考えなければならないだろう。30点!鳩山は東大まででているから知能はそこそこだろうが、知性が中学三年生並みということだ。所詮煮ても焼いても食えない土鳩か、あっち行けこっち行けの伝書鳩。もっともアベ晋三は知能も知性も中学三年生なみ、ロートルヤンキーだが。
*今、アップルやグーグルがやろうとしているネット戦略が当にこれなのだ。別に新しくともなんともない。30年前に開発された技術だ。
(15/03/15)

   鳩山がいきなりクリミヤに行って政府は大慌て。この男、前にも日中関係が揉めているさなかに中国を訪問したお騒がせマン。何しろ元祖宇宙人だから。鳩山家にはお騒がせDNAというものがあるのだろうか?
 本人が何を思ってこんなパフォーマンスをしたのか知る由もないが、これに対し自民副総裁の高村が、苦言を呈し最後民主党にもクレームをつけた。しかしこれは筋違い。鳩山はとっくの昔に民主党を離党し縁もゆかりもない存在。高村はそんなこともしらなかったのか?こういう現象は高齢化するとしばしば発生する老人性ボケというヤツである。彼も最早70代後半。ボケが発生してもおかしくない年齢。高齢化が進むと脳の記憶細胞がどんどん死滅し、空白化する。これがボケの原因だが、若い頃得た記憶は何時までも残ることがある。これが徘徊の原因になる。高村の場合、鳩山イコール民主党という等式が記憶にあって、それがつい出てしまったのだろう。つまり高村も既に老人性ボケ予備軍に入っているということだ。
(15/03/11)

 ロシア反プーチン派リーダーのネムチョフ殺害で、ロシア当局はチェチェン人活動家四人を拘束しましたが、これをそのまま信用する人は世界にどれだけいるでしょうか?第一、チェチェン人は反ロシア、ということは反プーチンのネムチェフとは理念は一致するわけだ。何故そんな人間を殺害する必要があったのでしょうか?
 一般には犯罪では、真犯人はその犯罪でも最も利益を得られる人物とされる。さてネムチェフがいなくなって、一番利益を得るのは誰でしょうか?
(15/03/08)

 昨日ロシアで反体制派リーダーのネプツオフ氏が射殺されました。犯人は誰か?当たり前だがプーチンだ。プーチンが直接手を下さなくても、やってしまう連中は幾らでもいる。例えば、旧KGB職員。彼等は暗殺のプロだ。プーチンは元KGB将校だったことを忘れないように。
 ロシアで陰謀や暗殺が当たり前なのはイワン雷帝以来の伝統。エイゼンシュタインの映画「イワン雷帝」を見ればよく判る。ではロシア人は元々こういう性格を持っていたのでしょうか?これは結構難しく俄かに答えは出せない。元々あったのが外部の影響で強化されたというケースもある。筆者が思うに、中世モンゴルに統治されていた250年間の間に、こういうやり方を身につけたのではあるまいか?
 そもそも騎馬民族と言うものは、定着生活をしない。常に必要物資・・・食料・衣料・武器・情報・・・を他民族から吸収奪取しなくてはならない。その結果、こういう荒っぽいやり方が身についたのだろう。考えてみれば、今話題のISのやり方も、ゴロツキ度と言う点でロシア人と大して変わりはない。それに追いつこうとしているのが中国人だ。国際ヤンキーグループである。誰でもそうだが、ゴロツキとの付き合いは大変だ。山口組OBにでも任せてみるか!
(15/03/01)

今、世界の話題は中東のIS問題とロシア/ウクライナ問題に集中していますが、もう一つ気がかりなのが、ハンガリーです。このところ現ハンガリー政権はロシア接近を強めており、国内ではメデイア規制を強めるなど反動的政策を採っています。理由はよく判らないが、このところのヨーロッパ景気の低迷で、かつてのようなヨーロッパへの期待が薄れたことや、天然ガス供給でプーチンから餌をばら撒かれたとか、そんなところではないでしょうか?
 しかしハンガリーという国は、もともと反ロ感情が強く、50年代には反ソ暴動も起こしている。宗教はカトリックでロシア正教とは犬猿の仲。従って現政権が必要以上に親ロ政策を採れば、昨年のウクライナのような反政府運動が起こり、与党政治家は国外脱出と言うことになりかねない。ただ、ウクライナと違うのは、ハンガリーはEUおよびNATOに加盟していることと、ロシアとの間にルーマニアやウクライナという緩衝地帯をもっていることである。
 だからプーチンも直ぐには手出し出来ない。何か別の手をうってくるでしょう。
それが何か俄かには判りませんが、元KGB将校が何も考えないはずはない。
(15/02/23)

 ウクライナ停戦協定が出来たと思ったら、早速協定破り。実態はプーチンの差し金。始めから協定など守る気はなく、親ロ派つまりロシア勢力圏確保が狙い。国境紛争など国際紛争では、普通の人は停戦協定が合意された段階で現状固定と思う。ところがユーラシア騎馬民族には、そんな理屈は通用しない。時間差を利用する。協定が結ばれたところで、それが実現するには時間が懸かる。その時間の間に既成事実をつくり、これが協定の結果だと主張するのである。これが騎馬民族時間差攻撃である。
 一番判りやすい例は太平洋戦争終結において、日本は8.15にポツダム宣言を受諾した。その結果日本は各地で武装解除に応じた。ところがそれから降伏調印まで20日近い時間差があった。それを利用して、ソ連は満州・千島に戦争を仕掛け、人為的に戦争状態を作り、これを既得権としたのである。ソ連はこれを合法だと主張する。確かにヤルタ協定の内容から見て、そうかもしれないが、これ自身ルーズベルトやチャーチルや蒋介石がスターリンに騙されただけの話なのだ。あのアホ三人プラス悪党一人のために、世界は酷いことになっているのだ。今回のウクライナ合意もそれにそっくりだ。
 実はこの時間差攻撃はアッチラも使い、モンゴルのバツも使った。ロシアは13世紀以来250年に渉ってモンゴルの支配を受けた。その間に、騎馬民族的遣り方を学んだのだろう。ヨーロッパは過去から何も学んでいない。日本以上の平和ボケだ。
(15/02/18)

 2014年世界の最も重要なニュースはロシアのウクライナ介入でしょう。この騒ぎで一番馬鹿を見たのは、当の張本人のロシアです。これはわが国の安全保障、なかでも集団的自衛権の妥当性にとっても重要な意味を持っています。何故プーチンがウクライナにちょっかいを出したか?これには彼の重大な判断ミスがありました。
 ウクライナは何処とも軍事同盟を結んでいない。以前NATO加盟を希望したが、ロシアの機嫌を伺うヨーロッパ側から断られたという経緯がある。つまりウクライナは個別的自衛権はあるが、集団的自衛権は持てないのである。それを良いことに、プーチンはまずクリミアを併合し、次に東ウクライナ併合に乗り出した。この理由はセバストポリ軍港のウクライナ移管が間近に迫っていること、東ウクライナのハリコフには世界最大の戦車製造工場があり、ロシアの軍事産業も部品を東ウクライナの工業地帯から供給を受けなければならないが、新たに成立した親西欧派政権ではこれらが全てロシアの目論見どおりには行かなくなる恐れがあるからである。
 そこでウクライナが軍事同盟に加盟していないこと、アメリカではオバマはレームダック化を良いことに、ウクライナには軍事的脅迫、欧州には天然ガスをネタに脅しをかければ事態は思い通りに動くと読んだ。ところがあにはからんや、少々のもたつきやごたごたはあったものの、欧米はウクライナ支援に動き、対ロ経済制裁に踏み切った。
 お陰で、在外資産は凍結されるは、ルーブルは下がるは、G8から追い出されて国際影響力は低下し、中国からは足元見られるなど、いいところは一つもない。おまけにアメリカのシェールガス攻撃が追い討ちをかける。
 逆にウクライナは欧米から経済・軍事支援を受けられるなど、禍を転じて福をなした。この例は集団的自衛権を持たなくても行使しなくても、独立と民主主義の原則を断固護るという意志を持ち、それを対外に発信できれば、国の独立は護れるという例である。
 おそらくこの例をもっとも真剣に見守っているのが中国だろう。逆に何も学ばず古臭い冷戦構造安保論に寄りかかって思考停止に陥っているのが、日本の外務省・防衛相・自民党保守派である。防衛産業という既得権益が彼らの思考を麻痺させているのだろう。
(14/12/31)

 プーチンがアベに今年の対独戦勝式典に招待。どういう意図でしょうか?ドイツが連合軍に降伏したのは45年の6月。そのとき日本は未だ連合国と戦争中で、三国同盟は生きていた。つまり日本がソ連の対独戦勝式典に付き合う筋合いはない。それどころか、ソ連は8月9日にいきなり火事場泥棒的に日ソ不可侵条約を破って対日宣戦した。
 この意図には二つの狙いが考えられます。まず第一にはウクライナ問題を巡っての欧米日包囲網に風穴を開けること。第二にあわよくば、これにより日本からの経済援助を受け、現在の経済ピンチを切り抜けること。
 その担保が来秋予定されているプーチン訪日である。これによって日露関係が改善されれば、日本にとって対北朝鮮・対中国に圧力を加えることができるから、日本にも悪い話ではない。そもそもプーチン訪日は日本側の要請である。てな話をして、アベを天秤にかけているのだろう。
 さて困ったのはアベ。目の前に毒入りの甘い餌を投げつけられた。これをうっかり食らうと毒が全身に回りかねない。年末にいきなり出てきたとんでもない難題。
(14/12/29)

 ウクライナ騒動で注目されるのが、謎の覆面武装集団。彼等は一体何物でしょう?様々な見方があります。現地のロシア民族主義集団とか、ロシア情報省の代5列とかです。筆者はあれをコザックと見ています。ウクライナとロシアとの境界を流れるのはドニエプル河、これはドン河と合してアゾフ海に注ぎます。古くからドン河下流域に住み着いていたのがドンコザック。
 コザックの起源には色々説があるが、13世紀南ロシアに侵攻したモンゴルによって捕らえられた、ロシア人捕虜という説が有力である。15世紀以後、モンゴルの衰退に伴って北方ロシアが強大化する。その後、ロシア帝国の拡大に伴って発生した逃亡農奴や政治犯を吸収した。基本的には白人のキリスト教徒である。生活の糧は略奪と漁業である。ロシア帝国に何度も反乱を繰り返したが、その後ロシア帝国主義の尖兵となって各地に転戦することになる。
 20世紀に入って、1919年革命、1942年の独ソ戦でコザックの多くは反共産党に付き、その結果多くはシベリアやザバイカル地方に移住させられた。1990年ソ連崩壊とともに、コザックは故郷に戻ってきた。彼等の一部は、ロシア正規軍に吸収されたが、一部は昔ながらの私兵団を組織し、ロシアの敵と戦うと広言している。
 今回ウクライナで見られた、覆面武装集団の法や秩序を無視した狼藉は、当にかつてコザックがロシア帝国から許可された、略奪と無慈悲な戦闘行為そのものである。コザックは常に帝国に忠誠を誓ってきた。しかしその都度裏切られている。今回もそうなるかも知れない。
(14/06/28)


 欧米による経済制裁でルーブルが下落。お陰で来年末でのロシアのインフレ率は10%に達するそうだ。2%のインフレ目標さえ達成できずもたもたしている黒田日銀にとっては羨ましい限りだろう。ということは、日本も何処か外国と悶着を起こして、経済制裁を受けた方が手っ取り早いということだ。しかし日本はロシアと違って売るものが無いから、反対に猛烈なデフレになるでしょう。
(14/12/27)

   ロシアの注文でフランスが作ったミストラル級強襲揚陸艦ウラジオストック。艦名に注意してください。ウクライナ問題でフランスは今の所ロシアへの引渡しを拒否していますが、もしフランスが圧力に屈してロシアに引き渡せば、これは極東に配備されます。日本の安全に対する大いなる脅威になります。
 フランスとロシアがもめている間に、日本がオプションを出すべきだと言うのがワタクシの主張です。少なくとも中国が手を出してくる前に。
(14/11/26)

   これは昨日国境を越えてウクライナに侵攻したとされるロシア軍戦車。ロシア国旗をかかげているからそうなんだろう。しかしタイプはもはやロシア軍では使われていない旧式のT62戦車。これは正規軍部隊ではなく、ボランテイアの可能性もある。ロシアも原油価格下落で、内実は大変なのだ。
(14/11/08)

   これは昨日バルト地方を示威飛行したと伝えられるロシア空軍のTu95ベア爆撃機。独特の二重反転プロペラが特徴。核搭載能力はあるが、物凄く旧い機種で現在では全く使い物にならずせいぜい偵察機。冷戦初期の亡霊のようなものだ。それよりこんな旧式飛行機を操縦できるパイロットがいたのが不思議なくらいだ。日本でSLを動かそうとしたが運転士がいなくて、慌てて退職者を集めたというのと同じである。           ・・・・・・・・・・・(14/10/30)


 ウクライナ東部のマレーシア航空機撃墜事件。どうやら親ロシア派とロシア軍による共同事犯の疑いが濃厚になった。それにしてもマレーシア航空が、何故こんな危険な空域を飛んだのか?燃料費の節約のためか、それとも相当の平和ボケの所為か?マレーシアの平和ボケ気質は前のMH370便行方不明事件でもよく分かった。
 それはともかく、この事件の処理を誤ると、ロシアは西欧諸国だけでなくアジア新興国も敵に回すことになる。おまけにマレーシアはイスラム国家。G20にはサウジアラビアやトルコなどイスラム国家も多い。こんなことでBRICS銀行など出来るでしょうか?
 まあ、プーチンの知らないところで、誰かがやらかしたのだろうが、それを処理出来ないとプーチンの責任になってしまう。
(14/07/19)
NATOが公開したウクライナ武装勢力のT-64戦車。ベトナム戦争時代のポンコツで、ウクライナ軍が持つT-73戦車の敵ではない。国際モーターショーに旧式のダットサンが迷い込んだようなものだ。



親ロ派勢力を砲撃するウクライナ軍のT-73戦車(日本の10式中戦車もこれを念頭に置いている)。ロシアはこれと同型のT-72を装備していますが、T-72/73の主生産工場はウクライナ東部のハリコフ。
 ウクライナが西欧側に付き、NATOに加盟すれば大問題。ロシアが東ウクライナを手放さないのはおの所為です。ロシアは現在T-72改良型のT-90の生産と配備を急いでいますが、これがなかなか上手く行かない。T-90の配備が進めば話しは変わってきます。
 

(14/06/08)

 6/6はノルマンデー上陸作戦70周年記念日。それに合わせて関係国*が集まるらしい。しかし今頃何故こんなキワモノイベントをやるのか、その意図がよく判らない。それはともかく、これに本上陸作戦に全く関係のないロシアのプーチン**や、敵方のドイツメリケルが招待されるのが不思議。米軍の沖縄上陸作戦開始日に、何の関係もない韓国大統領がやってきたり、敗戦国の日本首相が祝詞を述べるようなものだ。徹底媚米のアベならやるかも知れないが。
 招待する方もされる方も、何を考えているのでしょう?
*上陸作戦参加国は、英・米・・カナダ・フランスの四カ国だけ。なおフランスはドゴールの臨時政府軍で、未だ正規軍とは認められていない。
**現在のウクライナ状勢を見ると、プーチンは最終的には招待されないかも知れないし、されても来ないかもしれない。
(14/06/04)

ウクライナ騒動で注目されるのが、謎の覆面武装集団。彼等は一体何物でしょう?様々な見方があります。現地のロシア民族主義集団とか、ロシア情報省の第5列とかです。筆者はあれをコザックと見ています。ウクライナとロシアとの境界を流れるのはドニエプル河、これはドン河と合してアゾフ海に注ぎます。古くからドン河下流域に住み着いていたのがドンコザック。
 コザックの起源には色々説があるが、13世紀南ロシアに侵攻したモンゴルによって捕らえられた、ロシア人捕虜という説が有力である。15世紀以後、モンゴルの衰退に伴って北方ロシアが強大化する。その後、ロシア帝国の拡大に伴って発生した逃亡農奴や政治犯を吸収した。基本的には白人のキリスト教徒である。生活の糧は略奪と漁業である。ロシア帝国に何度も反乱を繰り返したが、その後ロシア帝国主義の尖兵となって各地に転戦することになる。
 20世紀に入って、1919年革命、1942年の独ソ戦でコザックの多くは反共産党に付き、その結果多くはシベリアやザバイカル地方に移住させられた。1990年ソ連崩壊とともに、コザックは故郷に戻ってきた。彼等の一部は、ロシア正規軍に吸収されたが、一部は昔ながらの私兵団を組織し、ロシアの敵と戦うと広言している。
 今回ウクライナで見られた、覆面武装集団の法や秩序を無視した狼藉は、当にかつてコザックがロシア帝国から許可された、略奪と無慈悲な戦闘行為そのものである。コザックは常に帝国に忠誠を誓ってきた。しかしその都度裏切られている。今回もそうなるかも知れない。
(14/06/28)

 ロシア/中国の天然ガス取引は、一月前に決着が付いていたと思っていたら、事実はそうでなく、未だ価格や条件で折り合わず継続交渉らしい。30年4000億ドルと言われるプロジェクトに、プーチンは現在のEU向け価格を多少値引きした形で、先払いと融資を要求。一方中国は国際価格に連動した変動価格を要求。
 厚かましいのはプーチンの方だろう。供給実績もないのに先に金を払え、というのは資本主義の世界ではあり得ない。ーチンが云う料金先払い制は、一種の固定価格取引である。これなら一見供給側に有利に働くように見える。確かにプーチンを中心とするロシア資源エネルギーマフィアの利権は確保される。しかし、仮に将来ガスの国際価格が上昇したときには、ロシアは儲け損なってしまう。ロシア国民の不満は高まる。逆に低下したとき(シェールガスを考えるとその可能性は高い)、固定価格なら中国は逆ざやだ。逆に変動価格で契約すれば、中国側には有利だが、ロシア資源エネルギーマフィアの利権が無くなってしまう。と言うわけで、この手の話しはなかなか進まない。進まない理由は、一方(この場合はプーチン)が自分の都合を、相手に押しつけようするからである。交渉をまとめたければ、何事も国際慣行・国際ルールに従うことである。
(14/05/21)

 昨日ロシアと中国との間で、天然ガス供給契約が締結された。この案件はここ10年来あったものだが、価格の点で折り合わず、そのままになっていた。理由はロシアはEU並の高値で売りたいが、中国にはそんな気はない。叩けるだけ叩こうと言うわけだ。それがこんな短期間に決着したのは、ロシア経済がそれだけ厳しくなってきた、言い換えればプーチンは相当焦っていると云うことである。これはこれまで筆者が云っているとおりである。EUがガス調達先を変えれば、当然影響は国内ガス産業に及ぶ。相変わらずの生産を続けておけば、国内天然ガスは余ってしまい、価格低下と相俟って・・・プーチン政権の最大資金源である・・・ガス産業の経営が打撃を受ける。かといって生産調整をすれば、失業者が増大するので政治・国内事情が不安定になる。従って余った天然ガスは、闇市場で処分しなければならない。その最大の闇市場が中国と言うわけだ。EUのガス調達転換が進めば、ロシア経済は大打撃を受け、大ロシア語圏どころではなくなる。プーチンはそれを見越して、中国との契約締結を急いだのだろう。
 しかし、思ったほど上手く行くでしょうか?中国とどれぐらいの価格で折り合ったのかは判らないが、国際市場価格(或いはアメリカのシェールガス価格)より安いのは間違いない。これより安い価格で供給すると、下手すると逆ざやだ。これを埋め合わせるのは増税か、他産業から得た利益をガス産業に注入するしか方法はない。無論周辺諸国に戦争を仕掛けて、無理矢理ロシア産天然ガスを買わせる手はあるが、これは却って国際的反発を買うからそこまではやらないだろう。今のところ、中ロ両国は対欧米価値観で蜜月状態だが、いざここにガスというプラグマテイック材が介入すると、将来こじれる可能性もある。ガスは感情もイデオロギーもなく、只市場価格だけで動くからだ。
(14/04/24)

 久しぶりのウクライナ問題。これに関しロイターは、ロシアと欧米との関係では、依然ロシア(プーチン)が優位に立ち、欧米は混乱するだろうという見方を紹介している。理由はプーチンは後4年任期を残し、更に次の大統領選で勝てば更に任期を6年延ばせる。その永いタイムスパンで、ロシア/欧米の関係を戦略的に考え組み立てる事が出来る。プーチンは長期戦を覚悟し、それに備えている。それに引き替え欧米側は指導者がみんな短期的目的に縛られ、一貫的な対ロシア対策が築けない。最も強硬なのはアメリカだが、ヨーロッパは腰が引いている。最も弱腰なのはドイツである。このバラバラ部分に、老獪なプーチンが手を伸ばせば更に欧米を分断出来る。だから当分プーチンは好き勝手なことが出来る、という訳だ。
 更にロイターは続けて、プーチンの最終目標は「大ロシア語圏の再構築」にある、と指摘する。「大ロシア語圏」とは何かと云うと、ズバリロシア帝国のことである。このロシア帝国主義こそが周辺に騒乱を巻き起こし、ついには自分自身を滅ぼしてしまったのである。ロシア帝国主義とは何かと言うと、一般にはレーニンの定義による未成熟な資本主義の拡大という事になるが、実はそれにロシア民族主義及び正教的宗教情熱が合体したものである。ソ連崩壊後のエリツイン政権は、西欧への接近をはかるものだった。ところがこの政策は、国内的には新興財閥を作って経済格差を生み、対外的には欧米によるロシア蔑視を生んだ。結果は深刻な経済的・社会的混乱。
 エリツインの後を襲ったプーチンの方針は、混乱したロシアの立て直し。接近した相手が民族主義者で、中でも宗教指導者だ。プーチン政権になってからのロシア最高会議がしばしばCNNなどで報道されるが、特徴的なのはロシア正教会の大主教が参加していることである。日本で云えば、内閣閣議に靖国神社宮司が参加しているようなものだ(アベならやりかねないが)。これがロシア民族主義を扇動しプーチンの大ロシア主義にお墨付きを与えてしまうのである。それとクリントン以来の西側エネルギー無策政策が現在の石油・天然ガス高騰を招き、ロシアの経済的復活を誘い、プーチンとロシア人に欧米なしでもやっていける、という錯覚を植え付けてしまったのだろう。
 つまりウクライナ問題は、単なる政治問題を越えて宗教紛争になりかねない。これこそプーチンの思う壺である。問題を長期戦に誘い、西側の分裂と疲弊を誘い、ロシア帝国を復活させるということだ。これに対し西側は、今のところ殆ど有効な対応手段を持っていない。エネルギーで対抗することは出来るが、それが有効になるまで10年位懸かる。その間に、プーチンは周辺のロシア語圏を自分のものにしてしまうだろう。
(14/04/22)

 昨日の某民放BSニューストーク番組。テーマはウクライナ問題で、ロシアが天然ガス供給をストップすればどうなるか、という話し。ゲストコメンテーターは第一生命総研の、年で云えば40代の若手経済屋。彼曰く、「ロシアからのガス供給がなくなれば、EUはそれに耐えられず、ガス価格の高騰は避けられない」。何だか高校生か大学生向け試験の模範解答のようだ。この経済屋は、かつてのイラン・イラク戦争の教訓を全く勉強しておらず、現在のグローバル経済のなんたるかを理解出来ず、前時代的石油本位経済を信じているのである。こんなのがいるから、第一生命の株価は上がらないのだ。末端株主としてアホのシンクタンク研究員をクビにせよ、と云いたい。
(14/04/15)

 1938年5月、ドイツはチェコのズーデンラント併合を要求。これに対し英仏伊+独4カ国で開かれたのがミュンヘン会談。戦争はもうまっぴらだという世論に押されて、英仏両国はズデーデンの割譲を了承。処がこれの半年後には、ドイツはチェコの残り部分まで併合してしまった。これには英仏も我慢出来なくて対ドイツ経済制裁を発動。元々ナチス型統制経済は既に破綻に近かった*のだが、これに経済制裁が加わったものだから、ドイツも耐えられなくて遂にポーランドに対しダンツイヒ回廊割譲を要求。これをポーランドが拒否したから、第二次欧州戦争が始まった。開戦一ヶ月前の39年8月、ヒトラーはベルヒテスガルテンの山荘に党・軍・政府の幹部を集め、一連の講演を行った後「これ以上引き延ばしていてはドイツ経済が保たない。開戦は一ヶ月後」と締めくくった。経済制裁は、他人が思っている以上に効くのである。
*この破綻したナチス経済を6年遅れで導入したのが、我が大日本帝国。
 さてウクライナ問題。実に75年前の欧州状勢とよく似ている。ズデーデンには既にナチの第5列が潜入し、ドイツ系住民を扇動していた。クリミアや東ウクライナでも同じ事が行われていたはずである。さしずめヒトラーを演じているのがプーチン、チェンバリンはメリケルといった処だろう。オバマはチャーチルを演じたいのだろうが、チャーチルほどの迫力がない。そしてその結果がどうなったかぐらいは、お互いよく判っているはずだ。今や前大戦を知っている世代はほぼ絶滅した。戦後を知っている世代すら少数派になっている。果たしてその教訓を上手く生かしきれるのか、がプーチン・オバマら戦後世代の能力である。習近平は無能・無知だから全然ダメである。
(14/04/13)

 ロシアとイランがバーター取引で合意した。イランがロシア向けに石油、ロシアがイラン向けに工業製品を現物で取引する。西側の経済制裁で、両方ともよっぽど外貨が無くなったらしい。戦後1950年代、西側のココム規制に対し、ソ連はコメコンを作って対抗。要するに貿易を金融ではなく、バーターで行うもの。処がこれが見事に失敗し、80年代にはソ連自身がコメコン各国に外貨決済を要求する始末。これが89~90年にかけての、ソ連・東欧崩壊に繋がったのである。
 バーター取引の最大の問題は、正当な価格が設定されないまま、政府間で取引が決まってしまうことである。その結果何が起こるかと云うと、流通過程での横流し・闇経済の発生である。そもそもバーターでもやろか、という国の役人のモラルがまともであるはずがない。例えばロシアからイランに送られる工業商品が、全部まともに届く保障はない。下手すると半分くらい途中で行方不明になって、それが闇市場で高値で売買されたりするのだ。その差額が、中間に介在する政治家・役人・闇業者の懐に入る。このとき使われるのが闇ドルや闇ユーロ。何のことはない、対西側政策が逆に西側経済を潤すことになる。但し闇経済だが。結果は両国とも、物価は高くなり庶民の生活は貧窮。しかし汚職官僚や闇経済屋はボロ儲け。そして再び革命となる。ロシアにはまとも経済学者がいないのか?
(14/04/10)

 下の写真は昨日東部ウクライナドネツクで行われた、親ロ派の集会です(CNN)。ロシア国旗を中心に銅像と赤旗が並んでいます。銅像はレーニンです。手前の赤旗に注目しましょう。右の旗に描かれている人物は、オールド左翼にはお馴染みのゲバラです。左の人物はよく分からないが、多分毛沢東です。今頃何故こんな、アナクロ極左過激革命指導者が、ウクライナに現れたのでしょうか?おまけにこの集団は人民共和国成立を宣言している。


ゲバラと毛沢東の旗とレーニン像(CNN)

 今のプーチンの目的は、共産主義への回帰ではなく、偉大なロシア帝国の復活である。つまり右路線。まして、ゲバラやレーニンのような極左などとんでもない。と言うことは、今のロシア社会は結構複雑で、右から左まで様々なグループが混在し、何かことがあると過激派(右も左も)がふいと頭を出すのである。頭を出すだけなら良いが、その内腕も出てくるかも知れない。
 そもそも、人民共和国と今のプーチン政権とは相容れない概念である。ロシアの辺境に本当に人民共和国が出来れば大問題。プーチンはウクライナより先に、これを潰しにかかるだろう。極左路線が出てくると言うことは、経済格差がそれだけ広まっているということだ。東部ウクライナのロシア系住民は、現在のウクライナ政権の親西欧路線が経済格差を産み、生活が不安定になることを恐れてロシア回帰を望んでいるのだろうか?それが全人民の平等を訴えた、ゲバラや毛沢東に繋がったのでしょうか?これはとんでもない錯覚です。今のロシア経済とプーチン政権を支えているのは、莫大な資産を貯えたオルガルヒ達。しかも彼等は資産の大部分を、外国銀行やタックスヘヴンを通じて外国投資ファンドによって運用している。東部ウクライナのロシア系住民の生活のことなど、これっぽっちも考えたことはない。プーチンも同じだ。ただ国際政治ゲームの一環として、辺境住民を利用しているだけなのである。処が、ロシア辺境住民(これは地理的意味だけでなく、階級的意味もある)は、常にツアーリは人民のことを思っている、悪いのは貴族だ、という信仰に囚われている。それが現れたのが、ゲバラとロシア帝国旗が同居するという、なんとも奇妙なあり得ない上の写真になったのである。
 もし事態がこのまま進み、ロシア国内にも同じ様な極左派が産まれるとどうなるでしょうか?プーチンは当たり前だが徹底的に弾圧するだろう。しかし極左派だって負けていられない。経済格差を盾にとって勢力を伸ばせば、最悪の場合はロシア内戦の再現。或いはオルガルヒら資産家が海外に逃亡(ビットコインを使えば簡単に資産移動が出来る)する。そうなれば、ロシアは深刻な資本不足に見舞われ、破滅するしかないでしょう。
(14/04/08)

 やっぱり始まった東ウクライナでのロシア系住民の暴動。ロシア系住民が住民投票を求めて州の庁舎を占拠する騒ぎ。クリミアの再来である。果たしてこれがプーチンの指示によるものか、それともロシア国内の過激民族主義者の暴走によるものか、はっきりしない。おそらくプーチンとは無関係の処で動いたのではないかと思われる。 しかし、単なる民衆の暴動であっても、それに国家が引きずられることはよくある。19世紀末~20世紀始めの汎スラブ主義運動も似たようなものだったろう。
 今のところ欧米による経済制裁はジワジワと効いている。クリミアでは併合前は1000あった銀行窓口が、みんな無くなった。プーチンはロシアの銀行に対し、クリミアへの出店を促しているが、銀行は欧米の制裁を恐れてなかなか出店しない。ロシア軍兵士には本国から給料が送られるが、一般市民や年金生活者にとっては大変だ。本国から現金が送られるとしても、途中でネコババされたり、強盗に奪われるかも知れない(コザックなど、元は盗賊だから信用してはならない)。多分ロシアの事だから、年金受け取りにもの凄く手続きがかかり、下手すると1週間以上待たされるかも知れない。と言うわけで、ロシア系クリミア市民は後でしまった、と思うだろう。こういう場合、どこの世界でも一番先に現れるのは、闇金融業者である。ルーブルなんて元々なんの価値もないバーチャル紙幣だ。そこで登場するのが闇ドル。これによってルーブル価格は更に低下し、ロシアに進出した西側資本も逃げ出すだろう。
 東ウクライナ情勢によっては更に西側の制裁は強化されることになる。問題は、あの強突張りで自己本位で、時間を守ることしか頭にない臆病なドイツ人がどう反応するかだが、東ウクライナまでクリミアと同じになっては、しらん顔は出来ないだろう。経済制裁はジワジワと効いてくる。但しこの効果は対ロシアだけでなく、中国人やアメリカやアラブやインドなどの怪しい資産家に対しても効いてくるのである。それが楽しみだ。
(14/04/07)

 ロシアのG8追放が決まりましたが、ワタクシは元々このG8そのものに違和感を感じていた。異質なものが、単に何かの勢いで、くっついていただけなのだ。要するに木に竹接いだ偽装結婚が解消され、お互い元の鞘に収まっただけの話しである。
(14/03/26)

 世の中には危機屋とでも云うべき評論家やジャーナリストがいる。彼等は何か事が起こると、あれこれ危機を並べて世間の恐怖心を煽る、大川隆法的エセ占い師である。これが今幅を利かせているのが、EU諸国。だから対ロシア制裁に、なかなか足並みが揃わない。何故か?彼等ヨーロッパ人にはピンチをチャンスに変える知恵がないからである。
1、ドイツ・イタリア
 対ロシア天然ガス依存率は、ドイツで25%、イタリアで50%。両方ともガス禁輸に脅えている。しかし先進国には三ヶ月の戦略備蓄が義務付けられている(筈である)。これを取り崩せば、ドイツで1年、イタリアで半年は持ちこたえられる。その間に省エネ、資源調達の多様化を図ればよい。省エネでは日本企業に、資源調達多様化ではサウジやイラン・イラク・中央アジア各国にビジネスチャンスがある。これに脅える様では、独・伊は先進国の約束を守らなかったことである。結果は自己責任。
2、イギリス・ドイツ・ルクセンブルグ
 これらはロシアマネー依存度の高い金融国家。ロシアマネーなど、そもそもいかがわしい金で、それに頼っていたと云うことは、彼等自身いかがわしいことをやってきたと云うことだ。ズバリ、全てのロシアマネーを凍結する事によって、これらいかがわしい金融屋を、この世から追放出来る。一挙両得だ。
 ルクセンブルグなどという国は、国際投資屋にとって必要なだけで、他の人間には関係はない。世界地図から消し去っても良いのだ。
 なお、第二次大戦で、ドイツはベルギーの中立は犯したが、ルクセンブルグとスイスには侵攻しなかった。その理由は、これら二カ国が平和主義だったからでも何でもない、ナチの秘密資産を隠匿していたからである。
3、フランス
 この中に日本にとっても一石二鳥、ヒョットすると三鳥となるテーマがあります。
 フランスはロシアから揚陸強襲艦2隻を1600億円で受注し、ほぼ完成状態。処がロシアはこのキャンセルを言い出した。そこで慌てたのがフランス政府。上手く行けば追加発注を見込んでいたのが当てが外れた訳だ。
 さてどうする?筆者はキャンセルされた2隻を日本が買えば良い、と思う。そもそもこの2隻は、ロシアが極東配備に予定した者で、かつて日本がフランスに抗議していた代物。それが手に入れば、
1)ロシアの対日攻勢を牽制出来る。北方脅威が少なくなるから、南方に防衛力を傾注出来る。
2)フランスに恩を売ることが出来る。少なくとも、フランスや欧州左翼の親ロ姿勢は牽制出来る。それと欧州に於ける、中韓日本誹謗中傷外交を牽制するにも有効である。
3)この強襲艦の艦内管制系やウエポンシステムは、おそらくロシア仕様だろう。ロシア海軍の技術レベルを知るにはもってこいである。
 以上の三鳥に比べれば、1600億円など易い物だ、と思う人がいないことが問題なのである。日本がモタモタしていると、中国がオプションを出してくる可能性がある。やるべき事はさっさとやらねばならない。その点が出来ないのが、アベがオボッチャンである由縁である。
 但し、問題もある。果たしてフランス製軍艦が役に立つのか?という疑問である。近代以降、フランス海軍が実戦で勝利を収めた例はない。トラファルガー海戦の例を出すまでもなく、日露戦争対馬沖海戦では、ロシアバルチック艦隊主力艦の殆どはフランス製、一方日本連合艦隊のそれはイギリス製。結果は顕かである。要は1600億をドブに捨てるか、それともそれ以上の政治的勝利を収めるか、の見極めである。
(14/03/22)

 クリミアを手に入れたプーチンの次の狙いは?ウクライナは新クリミアに対し、食糧・ガス・電力・水道の供給を停止し、クリミアの孤立化を図る。ロシアは対抗上、これを供給しなければならない。当然ウクライナは妨害する。その結果、ロシアはクリミアへの自由通行権を主張し、その担保として、東ウクライナの割譲を要求するだろう。
 かつてヒトラーは、チェコを併合した後、東プロイセン(現カリーニングラード)への自由通行権確保のため、ダンツイヒ回廊(ポーランド回廊)の割譲を要求した。ポーランドがこれを拒否したため、第二次世界大戦が勃発した。
 現下の状勢はこれと非常によく似ています。ヒトラーが何故あそこまで強気に出られたかというと、当時世界最強国と思われていたイギリスが老大国化し、政府がすっかり弱気になってしまったからである。プーチンもアメリカは既に老大国であり、オバマは脅せば腰を引くだろうと思いこんでいるフシがある。しかしロシアとアメリカとでは、経済力は1:10くらいの差があり、愛国心はいざとなれば、ロシア以上だ。そういえば、39年当時の英独の経済力の差はそれぐらいあった。ヒトラーはそれに気が付かなかった。日本の東条やその他も同じだった。そして今のプーチンも、気が付いていないみたいだ。
 現在のウクライナ人口は4000万人ぐらいだが、在外ウクライナ系は1000万人ぐらいおり、その大部分はアメリカ人だ。幾らオバマでも、今年秋の中間選挙で、ウクライナ系住民を無視は出来ない。その点をプーチンは読み誤っている感がある。仮にロシア軍がウクライナに侵攻した場合、現在のウクライナ軍ではひとたまりもないが、戦争を長引かせば、ウクライナ系欧米人が義勇兵として参入する。これに欧米が武器支援を行えば、ロシアにとって第二のアフガン戦争であり、ボスニアヘルツエゴビナ紛争の二の舞である。
 そこまで行かなくても、欧米が経済制裁をやれば、ロシアには外貨が入ってこなくなる。ルーブルなど何の価値もないから、闇ドルが値上がりし、ルーブルは暴落。ロシア国内には猛インフレが発生する。これが命取りだ。革命以来久しく聞かなかったインフレが、ロシアを襲うのである。
 但しこれを実現するには、欧米の断固した結束と、明確なウクライナ支援メッセージが必要である。果たして可能か?一部の国が目先の欲に目がくらんで、団結を乱すおそれがある。その可能性が一番強いのは、ドイツではないだろうか?ここは一番、ドイツ人に泣いて貰わなければならない。
(14/03/19)

 住民投票でクリミアのロシア帰属が事実上決定。これに対し欧米は対ロシア経済制裁を発表。日本も追随・・・どっちみち追随しか出来ないのだが。さて原油価格は、と見ると昨日のNY-WTI価格終値はバーレル98.1ドル、先週末の99ドルより下がっている。つまり、市場はこんなことは、既に折り込み済みということだ。がっかりしたのはプーチンだろう。
 ポイントはシェールガスである。シェールガスは石炭と相性が良く、石油・天然ガスとは悪い。EU国家にはイギリス・北フランス・ドイツ・ポーランドなど産炭国が多い。これらの国にはシェールガスの可能性が高く、開発に取り組めば、十分ロシアの資源攻勢に対抗できる。第一ウクライナ自身が産炭国である。又、ウクライナ領ドン河、ドニエプル河などの河口沖合には、天然ガスの可能性もある。まず、自分の身の内を良く調べて、将来を考えるべきなのである。
 なお何度も云うが、クリミアはロシアにとっての「満州国」になるだろう。
(14/03/18)

 明日16日はクリミア住民投票。圧倒的多数でロシア併合が決まるでしょう。ロシア人もプーチンも、勝った勝ったと大喜び、万々歳。しかし、これでロシアは、クリミアという負債を背負い込むことになった、とは気づいていない。領土の拡大が国富の増大に繋がる、というのは19世紀帝国主義時代に作られた伝説。20世紀にはもはや通用しなくなった。それに気が付かなかったのが、日本・ドイツ・イタリア敗戦三カ国、それと旧ソ連。今、その轍を踏みつつあるのが、プーチンのロシア。
 戦前ナチスドイツは35年のラインラント進駐を始め、領土拡張を進めた。しかしポーランド侵攻の一ヶ月前、ヒトラーはベルヒテスガーデンの山荘に、党・政府・軍首脳を集め、現下状勢について講演し「これ以上(ポーランド侵攻を)待っては、ドイツ経済は持たない」、と結論付けた(シャイラー「第三帝国の興亡」)。つまりヒトラーが政権を獲って以来進めてきた領土拡大政策は、結局のところドイツ経済を破綻に追い込んだだけなのである。
 同じ事は、我が大日本帝国にも云える。帝国主義の夢に漬かれて、満州に手を出したが、それがとんでもない不良債権と化し、とうとう国を滅ぼした。
 どちらも欧米による経済制裁が決め手になっている*。気を付けた方がよい。グローバル時代の経済制裁のポイントは、相手が欲しい物を売らないのではなく、売りたいものを買わないことである。
*ミュンヘン会談でズデーデンランドを手に入れたドイツは、半年後にはチェコの残り部分も併合した。この結果が欧米による対ドイツ経済制裁で、上述のヒトラー発言に繋がる。
 昭和16年の三国同盟で、アメリカが対日経済制裁を発動。これが日米開戦のきっかけになった。
(14/03/16)


 昔イラン・イラク戦争の時、日本の評論家は皆、石油価格が上がってパニックになるだろう、と吹きまくった。しかし現実には、いつまで経っても原油価格は上がらず、ガソリン代など逆に値下がりする始末。何故か?と考えたら「ああそうか、これでは原油価格は下がっても、上がることはない」と合点がいった。それは両国とも石油を売り続けない限り、戦争を続けられないからである。
 今度のクリミア問題で、プーチンは欧米が経済制裁するならこちらも報復する、ブーメランは跳ね返ると応酬。しかし、ロシアが執れる報復手段は、1)ウクライナやEU向け石油天然ガスの供給遮断、2)ロシア国内の欧米資産没収ぐらいしかない。ロシアが強気に出られるのは、石油・天然ガス価格の高騰により、ロシア経済が回復したことと、欧州企業のロシア投資が進み、欧州経済のロシア依存度が高くなっているからである。つまりロシアは西側先進国の弱みを握っている、と考えている。このどちらかをやれば、西欧側は経済的にパニックを起こし、いずれツアーリ プーチン一世の下に跪かねばならない、と思っているのだろう。果たして思惑通りいくか?
1)ウクライナやEU向け石油天然ガスの供給遮断
 確かにロシアは、この面での生産大国の一つである。しかし全てを支配しているわけではない。石油天然ガスでは全世界の2~2.5割程度。天然ガスでは既にアメリカのシェールガスに追い抜かれている。ロシア産天然ガス依存度は、日本では1割程度、アメリカはゼロ、その他の新興国は対ロ制裁に参加しないから無関係。逆にウクライナやEU加盟国でもロシア産天然ガスに殆ど100%依存する国が幾つかある。これらの国々はロシア産天然ガスストップに恐怖を憶え、これがEU内部に不協和音を作る。それがプーチンの付け目である。
 一方、石油天然ガスはロシアにとって最重要の外貨獲得手段である。と言うことは、ロシア産ガスの主な外貨獲得先は、EUということになる。EUへの供給をストップすれば、その分外貨収入は減り、ロシア国内に在庫として積み上がる。プーチンは理解していないかもしれないが、現在世界的に原油・天然ガスは余っている。だからロシアが生産をストップしても、世界的な在庫調整が行われるだけ。逆にこれをチャンスと、サウジ他の産油国が増産に乗り出すかも知れない。それでは却って資源価格が低下するから何にもならない。そこで生産調整をすれば、資源関係財閥の収入が減り、廻り廻って政権に入る利権も減る。
更にこれは周辺産業にも影響するから、失業者の増大をもたらす。
 これはイカンと生産を続けても、国内消費量には限度があるから、結局は自由市場へのスポット売りか、闇市場へ行くしかない。しかしここへ廻しても、いきなりEU(+日本)市場に匹敵する新市場が産まれるわけはない。これらの資源は廻り廻って、結局は欧州に逆戻りするだろう。又、これら自由市場では、ロシア産資源は足下を見られて買いたたかれるのは必定。つまり、ロシアは対 EU逆制裁をやりながら赤字を増やしていくことになる。つまりこの報復は、ロシアにとって、マイナスになってもプラスになるものは何にもない。
 これに似た話が、自動車排ガスフィルター用パラジウムの、日米向け輸出の規制強化。これなどは以前あった、中国の対日レアアース輸出規制と同じ発想である。これで中国は日本の先端技術に大打撃を与えられると踏んだが、結果は逆で、3年後には日本はリサイクルと代替品開発で失地回復に成功し、逆に中国は日本向けレアアース輸出が6割減、関連企業の4割が倒産という大失敗に終わった。
2)ロシア国内の欧米資産没収
 これも似たような話しである。ソ連崩壊以後西欧からの対ロシア投資が激増した。ドイツだけで6000社が進出していると云われる。このとき、日本も、と散々投資話が持ちかけられたが、日本側はドブに金を捨てるような者だ、と拒否。これが幸いした。
 もしロシアが西欧資産を没収すればどうなるか?西欧では、無論進出した企業(特に中小企業)は大打撃だろうが、大企業はそうでもない。だからこれで国家が潰れるとかそういう話しにはならない。この危機を救うには、EU協調で内需拡大をすればよい。では資産を没収したロシアでは、当たり前だが、従業員は解雇されるので、逆に失業者が増大する。又、ベテランの企業管理者がいなくなる。ロシア人だけで、果たして西欧型企業を運営出来るか?今日本では、トヨタがサンクトペテルスブルグに欧州向け自動車組立工場をもっているが、仮にこれが没収されたとき、ロシア人で、トヨタ同じ品質管理ができるか、甚だ疑問である。仮に同じ物をを作れたとしても、経済制裁を受けているから、製品は日欧米向けには輸出出来ない。一番の儲けしろを自ら潰しているのである。
 逆に欧米によるロシアの在外資産凍結が進めば、ロシアにとって大打撃である。在外資産の最大保有者は、ユコスやガスブロムなど、プーチンに近い資源産業や、金融を支配するオルガルヒ達。彼等の在外資産が凍結・没収されれば、プーチンや権力者に集まる利権が減少する(ざっくばらんに云えば、賄賂が減る)。これはイカンと、増税や食料品・燃料費の値上げに踏み切れば、却ってプーチン支持率は低下し、権力抗争が激化し、ロシアが再び空中分解しかねない。
  
 以上から云えることは、跳ね返ったブーメランは再び自分に跳ね返って来ると云うことだ。
(14/03/11)

 ウクライナ問題についてアメリカとEUが共同でロシアに対し経済・外交制裁を加えると警告。今のところ、打つ手はそれくらいだ。これぐらいでプーチンが大人しく引き下がるとは思えない。しかし、この賭、最終的にはプーチンの負けになるような気がする。
 仮にクリミア・東ウクライナの分離独立を実現させたとしよう。当然新ウクライナも経済制裁の対象になるから、単独ではやっていけない。ということで、ロシアは自ら経済制裁を受けつつ、新ウクライナ経済を支えなければならない。これは大きな負担である。領土が広がった、などと浮かれている場合ではない。実際日本も満州国で同じ眼にあっているのである。
 そこでプーチンの腹づもりは、この負担を上海協力機構にも肩代わりさせること。しかしこれは、かつてのワルシャワ条約機構の失敗の轍を踏むことになる。プーチンは未だ、旧社会主義国はロシアに忠実だと錯覚しているのかも知れない。
 ブレジネフ時代にソ連はやれベトナムだ、やれアンゴラだ、やれエチオピアだと海外権益を増やした。処が実際に発生したのは、これら新興社会主義国への軍事・経済援助負担。これはソ連だけではとてもじゃないが負担しきれない。そこでそれを東欧ワルシャワ条約機構国にも肩代わりさせた。そこで起こったのが、東欧諸国の経済的疲弊。ふざけるな!というわけで、これが結局は東欧ソ連崩壊に繋がったのである。
 カザフスタンやタジキスタンなど中央アジア諸国にとって、ウクライナなど何の関係もない。ロシアとの付き合いで、欧米から経済制裁を受けたのでは割が合わない。中国はよくわからないが、したたかに計算するだろう。その結果がロシアとの経済摩擦に発展するかも知れない。これによって上海協力機構が分裂すれば、当にかつてのソ連東欧崩壊の二の舞になる。過去を学ばないものは、いやでも過去から学ばされることになる。
(14/03/04)


 よく言われるのは「平和ボケ日本」だ。しかし世間には日本以上の平和ボケ国家は沢山ある。かつてのクウェートとか、今では韓国やシンガポールがその口。さて中でも最大の平和ボケ国家がEU。いやとんでもない、これらの国はみんな軍隊も持っているし、国連平和維持軍にも戦闘部隊を派遣している。軍隊も持たず、紛争地での戦闘もしない日本とは大違いだ、と大概のアホはそういうだろう。軍隊を持つとか、それに戦闘能力を持たせるかは、危機対応としては枝葉末節、中学生レベルに過ぎない。大事なことは如何に危機を招かないか、危機が生じても動じない体制を作っておくか、ということだ。
 EUの平和ボケは次の2点で現される。
1、ソ連・東欧崩壊を中世モンゴル帝国の崩壊と同じと錯覚し、永遠の平和がやってくると信じた。ロシア人はヨーロッパ人と同じで、今後も友好関係が保てると錯覚したのである。処が、ロシア人はやっぱりヨーロッパ人ではなかったのだ。
2、資本及び資源を過度にロシアに依存した。現在ロシアでの海外投資資本の内、最大を占めるのはEUである。又、EUは石油・天然ガスの大部分をロシアに依存している。特にドイツ・オランダでは25%、旧東欧圏諸国は殆ど100%を依存している。ここには、金さえ出せばロシアは無尽蔵にガスを供給してくれる、という錯覚がある。しかし、冬になってプーチンがガスパイプラインのコックを閉めれば、ヨーロッパじゃ経済の混乱だけでなく、凍死者の続出だ。
 つまり、今のEUは資本・資源の両面で、ロシアに首根っこを押さえられているようなものだ。だから、今回のウクライナ騒動で、EUがうろたえて、プーチンに鼻も引っかけられないような声明しか出せないのは、その所為である。
 何故こんなことになったか?というと、EUの政府や資本家達が、グローバリズムに過度に反応したためである。東西冷戦時代は、ソ連からの脅威から身を守るために、何をするにもアメリカの顔色を伺わなくてはならなかった。処がソ連・東欧崩壊で、何でも出来るようになった、と錯覚した。それを後押ししたのがグローバリズムと新自由主義経済である。つまり錯覚の連鎖である。
 かつて自分達が餌を与えて、大きくなって主人に仕えろと育てたロシア犬が、今や主人の云うことを聞かず、主人も食い殺しかねない勢いだ。ロシア犬は昔からヨーロッパの主人になついたことはない。あれはロシアという大地でしか生きられない種族なのだ。何故こんな簡単ことに、昔から気が付かなかったのでしょうか?食い物の違いでしょうか?
 しかし、今回の軍事介入はプーチンにとって、千慮の一失の感がある。何故ならセバストポリの保全やロシア系住民の安全確保なら、今慌ててやる必要はなく、総選挙後の新政権と交渉すれば良い話しである。仮にウクライナ人によるロシア人迫害が発生すれば、逆に国際世論を味方に付けられる。何故それが出来なかったのか?おそらく、国内保守勢力(軍部、伝統派、宗教勢力、保守系マスコミ)の圧力が強く、プーチンも抵抗しきれなかったのだろう。
 やっぱり満州事変の事後処理に、日本がおかした失敗と大変似ている。
(14/03/03)


 プーチンがいよいよウクライナ介入に本腰を入れだした。手始めはクリミアへの派兵。これに欧米がどう反応するかを試しているのだろう。次はクリミアの分離独立、その大統領にヤヌコヴィッチを押し込む。これを梃子に東ウクライナを分離する。しかしこれ、まるっきり第二の満州国だ。日本も満州事変で張学良を追い出した後、国民党と交渉に入れば問題はなかった。処が土肥原賢二らが動いて(彼等のバックにいたのが永田鉄山ら新軍閥と、岸信介ら新官僚)、廃帝溥儀を担ぎ出して、満州国をでっち上げたのが運の尽き。とうとう日本の滅亡となった。
 うっかりしたことをすれば、ロシアにとって、第二のアフガン戦争になりかねない。
(14/03/02)


 ソチ五輪とウクライナ政変、ヤヌコヴィッチのロシア亡命。非常によく出来たシナリオ。作者はプーチンか?プーチンとしては何が何でも五輪は無事に終わらさねばならない。そこで問題はウクライナ状勢。ヤヌコヴィッチが少しでも弱気でも見せれば、全ては終わりだ。そこで五輪が終わるまではヤヌを支える。終わってしまえば用事はない。だから彼を見限る。彼が逃げ込んで来たところで、何が何でもヤヌを支えるわけでもない。とりあえず亡命を認め、情勢を眺める。
 ウクライナが完全西欧化する事は、プーチン(と彼を支えるロシア伝統主義者・・・日本で云えば維新とか自民党保守派層)にとって面白い話しではない。そこで彼を交渉のカードにとっておこう、ということだろう。まだまだウクライナ情勢は流動しますが、ヤヌが復活することはあり得ないでしょう。プーチンもそこまで馬鹿ではない。
(14/02/28)


 突然のウクライナ政変。早速アメリカは歓迎声明だが、微妙なのはアベ。まずウクライナ政情が、このまますんなりと新政権に移行するなんて、誰も期待していない。
 ウクライナは今後改革派vs保守派に分裂し、情勢は更に混沌とするだろう。前者に組みするのは西欧及びアメリカ、後者はロシアとその同調者である。仮にウクライナが西側陣営になれば、この騒動はベラルーシに波及する。ベラルーシは今も強権独裁体制だが、北のバルト諸国、西のポーランドは、脱ソ連民主化を果たした。ここに南のウクライナが加われば、ベラルーシ政権は風前の灯火。プーチンも安穏ではない。プーチン政権が不安定化すれば、それは中国にも波及する。最終目標は、共産党追放を含む中国の民主化だ。
 ロシアにとって、ウクライナ問題はどういう意味を持つか?ウクライナにはセバストポリ軍港があり、ハリコフには世界最大の戦車製造工場がある。これを西側に渡すわけには行かない。これはイカンという訳で、最も懸念されるのは、ロシア(+中国)による軍事介入である。最悪、第三次世界大戦の引き金になりかねない。さて、この場合、アベは集団的自衛権を発動するのか?積極的平和主義はどういう意味をもつのか?アベは明解に説明出来なくてはならない。
(14/02/23)


ロシアのグルジア侵攻で、ロシアの外貨準備高が164億ドル減少し、外資が70億ドル逃げ出した。又、ロシアの株式市場にも影響を与え、ロシア主要株価指数RTS(日経平均の様な物か?そもそも日経平均こそ当てにならない物だが)が下落し、グルジア侵攻はロシア経済に動揺・打撃を与えた、という論評がマスコミ各紙に流れている。要するに今回のグルジア侵攻は、ロシア経済にとってマイナス効果しかなかった、だからグルジア侵攻はプーチンの判断ミスだった、と云わんばかりである。本当でしょうか?実際のデータに基づいて検討してみましょう。
1、外貨、外資流出
 紛争開始前のロシアの外貨準備高は約5975億ドルで、終結後164億ドル減って5811億ドルになった。たった2.7%の減少である。これもその前後からの外貨準備の推移が不詳なので、原因がグルジア介入とは云えない。むしろ、RTSの下落と同様、原油価格の下落が主因と考えた方が良い。又、逃げ出した70億ドルの外資は何処へ行くのでしょうか?逃げ出すと云うことは、投資資金をロシア市場で処分し、何処かへ移すということである。処分によって得られた利益は所得と見なされるから、課税対象になる。一時的にタックスヘブンに逃避させることも考えられるが、そう何時までもということにはならない。来年には税務署から督促状がやってくる。放っておくと、最悪ロシア検察庁の捜査を受けることになる。だから何処かへ再投資しなければならないが、、サブプライムローン問題で冷え込んでいる今、どこへ投資すればよいのでしょうか?ベトナムはインフレだし、中国は先行き不透明、インドもそれにつられどうなるか判らない。西側の投資家がどうなろうが、ロシアは知ったことではない。損をするのは西側投資家なのである。
2、経済指標は何を物語っているか?
 RTSの変動(ネットか新聞を見てください)を見てみよう。7月上旬に最高値1960に達したが、その後下落を続け、ロシアのグルジア介入時(8/8)に1760迄低下したが、その後1800付近まで回復し、停戦合意後の8/19以降は1700レベルに低下している。実はこれは、NYマーカンタイル原油市場における原油価格の変動にピッタリ一致しているのである。まず7月上旬140ドルという最高値に達した原油価格は、その後下落を続け、8月初旬には111.3ドル台という最安値をつけた。ところがロシアのグルジア介入以来、一気に114ドル台まで回復し、08/20時点では121ドルまで達した。この間、ドルは売られっぱなし。ところが、ロシア・グルジア停戦協定が成立すると、たちまち113ドル台まで下落。今や111ドル台だ。これはRTSが、グルジア紛争ではなく、原油価格に完全に連動しているという証拠である。つまり、グルジア紛争はロシア経済に打撃を与えたのではなく、一時的にせよロシア経済を活性化させたのである。では、紛争中の一時的な原油価格とRTSの上昇で、誰が一番儲けたのでしょうか?当たり前ですが、ロシアとガスプロム及びユコスに影響を持つプーチンとその一派でしょう。しかし、イラク・アフガン戦争で一番儲けたのが、ブッシュとライス、チェイニーとそれに連なる、ベクテルやハリバートン、それに民間軍事会社。ブッシュ一派も今回のグルジア紛争で、人にはいえないが、儲けているはず。
 なお、今回の紛争での原油価格上昇の原因の一つに数えられるのが、アゼルベイジャンからグルジアを通る、鉄道輸送ルートの破壊である。グルジアはこれをロシアの所為だというし、ロシアは無関係と主張。無関係は無いでしょう。確かにロシア軍は無関係かもしれないが、事前にグルジアに潜入したロシアスパイの所為かもしれない。プーチンは元KGBの将校だったことをお忘れなく。この点で、ブッシュなど大学生と中学生の差がある。
(08/08/24)
 

 グルジア問題はどうやらロシア有利の状態で収束に向かいそう。今頃になってアメリカは、この騒ぎはロシアの軍・治安機関によって巧妙に仕組まれた謀略で、その背後にプーチンがいると主張しだした(CIA)。そんなこと、私はとっくに指摘しています。しかし、グルジアにロシアのスパイが潜り込んで、サーカシビリがその唆しに乗ったとしても、アメリカだってグルジアにCIAのエージェントを送り込んでいるはずだ。グルジアどころか、ウクライナやカザフスタン始め、旧ソ連圏の中央アジア諸国・・・かつてアメリカが「不安定の弧」と呼んだ地域・・・のアメリカ大使や大使館員は、みんなCIAのエージェントかその息の懸かった者でないはずがない。グルジアなどその典型。騒ぎの発端は8月9日のグルジア軍による、ツハンバリへの軍事侵攻。南オセチアでの戦闘停止と、ロシア軍による平和維持部隊の駐留は、国連安保理での決定事項。それを破る大胆な行為だから、常識的に見て事前にアメリカに対し通告するか、承認を求めているはず。アメリカ大使がボンクラで、事の重大性を理解出来ず、ただ黙っていただけでも、サーカシビリはこれを”YES”と錯覚した可能性もある。或いは、CIAエージェントは重要事項はワシントンより先にラングレーに報告し、その指示で動く癖がある。ラングレーが現地報告を無視した可能性もある。いずれにせよCIAの脳力が低下している証拠である。(なお、この件については事前に、グルジアからアメリカに南オセチア侵攻プランが示され、アメリカ政府はそれを押しとどめたが、グルジア政府がそれを無視して侵攻を開始したことが明らかになった。こんな人の云うことを聞かない身勝手な国を、仲間に引き入れてNATOは大丈夫なのか?08/08/20)
 そこで思い出すのは88年の湾岸戦争である。これのきっかけになったイラクのクウェート侵攻は、みんな突然の奇襲攻撃と思い込んでいるようだが、実はその1週間前の毎日新聞に、「クウェート国境にイラク軍が集結している」という記事があったのである。ベタ記事だったから、誰も気がつかなかったのかもしれない。だから、筆者はイラクのクウェート侵攻は、アメリカの承認済みだとばかり思っていた。それが証拠に、当時の駐イラク大使だったエイプリルは、開戦後直ちに帰国、そのまま行方不明になってしまった。ブッシュ(パパ)政権としては、彼女に喋って欲しくない部分が多々あったのだろう。エイプリルがラングレーのエージェントだったことは間違いない。
 それはともかく、現実は、グルジアの跳ね返りに対し、ロシア側の反応が思っていた以上に強硬だった。アメリカも西欧側も、ロシアがここまで強硬だとは予想しなかったのだろう。果たして、西側にロシアを屈服させる手だてが有るだろうか?プーチンが狙っているのは、そこの処にくさびを打ち込み、西側世論を分断し、あわよくば、NATOを分裂させることである。
1、西側がロシアに圧力を加えることが出来るか?
 ロシアに圧力を加えよ、と叫んでいるのはアメリカ(ブッシュ政権)とグルジア、ウクライナ、ポーランド、ラトヴィア等バルト三国。後のヨーロッパ諸国はどちらかといえば消極的。ニュートン力学の教えでは、圧力を加えると同じだけの反力が発生するが、政治力学の場では、圧力以上の反力が発生して、自分のクビを絞めることがあるから、圧力のかけ方には用心が必要である。政治圧力には経済圧力と軍事圧力の2種類がある。
1)経済圧力
 経済圧力の最もポピュラーなやり方は、経済制裁と云う経済封鎖である。これは相手国の経済や技術が未成熟で、資源活用能力に乏しい、要するに貧乏国の場合には効果はある。しかし、今やロシアは十分な金持ちになってしまった。ポーランドやその他の貧乏国など屁でもない。欧米が対ロ経済制裁を行うと、ロシアは逆に経済封鎖で報復するだろう。経済封鎖は一つは(1)天然ガス供給の制限、もう一つは(2)欧米資本のロシアへの投資制限である。
(1)天然ガス供給の制限
 現在西欧の天然ガスの大部分はロシアに依存している。このリスクを避ける為に計画されているのが、カザフスタンーアゼルベイジャンーグルジアー黒海ルートのいわゆるCBTラインで、これが今回の南オセチア紛争の発端になっている。このルートが南オセチアを通るためである。しかし、CBTラインが完成したとしても、それだけで全ヨーロッパの需要を賄えるわけがない。これは西欧資源政策の失敗のツケである。ソ連崩壊で、西欧は旧ソ連圏の地下資源を殆ど自由に使えるようになった。そのため、その他の地域での、資源確保を怠った。その隙に世界中の地下資源は中国に抑えられることになったのである。
 仮にロシアがヨーロッパへの天然ガスパイプラインのバルブを閉めたり、供給価格の値上げを要求すればどうなるか?たちまちユーロは下落し、ヨーロッパは深刻なインフレに見舞われることになる。それが怖いから、NATOの中でも、経済大国である独仏は対ロ制裁に慎重になり、経済よりイデオロギー偏重のアメリカや旧東欧圏諸国との間に溝が出来る。
(2)欧米資本のロシアへの投資制限
 ロシアの経済発展で、今や西欧とロシアの経済は一体化してしまっている。西欧に繋がっているのがアメリカ資本だから、アメリカも無関係ではない。従って、これは欧米の問題である。今や、中国市場は飽和しつつあり、又サブプライムローン問題でアメリカ経済も不透明感を増している。インド市場は中国への依存度が高いため、中国の経済成長が鈍化すれば、その影響を受けざるを得ない。従って、西欧資本の主な投資先として、最も有望なのはロシア市場である。そのロシアから閉め出されたら、西欧資本は行き場をなくす。生産は停滞し、失業者は増大する。企業や経営者からは対ロ関係改善圧力が強まり、若者からは、何で東欧のわがままで俺達が失業しなけりゃならないんだ、となる。これにネオナチのような右翼民族主義者がつけ込めば、各国に反政府、反東欧感情が生まれ、西欧全体の世論が分裂し、各国で対応はバラバラ。事態はロシアに有利に働く。
2)軍事圧力
 アメリカの核を除くヨーロッパ正面の通常軍事力では、ロシア軍がNATO軍を圧倒していると見るべきである。冷戦時代から通常戦力ではアメリカを加えてやっと東側と均衡がとれていた。そして今、アメリカはイラクとアフガンに兵力を割かれ、これ以上の海外派兵は無理な状態。第一、イラクやアフガンの状態を見ても判るように、アルカイダのようなたかがテロ組織や、タリバンのようなたかが地域武装組織相手に、あれだけ手こずっている。ロシア軍はかつて世界最強を誇ったナポレオンの大陸軍やドイツ軍を、パルチザン戦法でうち破った実績がある。妙なことをすればイラクやベトナム以上の長期戦になりかねない。
 今のグルジアやウクライナの目的は、自分達の反ロ闘争に自分達だけではロシアに叶わないから、全西欧(つまりNATO)を巻き込むことである。しかし、それ以上にNATOが結束出来るかどうかが疑わしい。かつてのNATOの目的は共産主義対民主主義の闘争の中で、西欧民主主義陣営の軍事部門をになうことだった。そこには、西欧民主主義の防衛という、誰でも理解出来る共通のテーゼがあった。しかし、今回の騒ぎはただの領土争いに過ぎない。極端に云えば、当事者以外に共感を呼びにくい案件である。今回のグルジア問題について、同じNATO加盟国の中でも、受け止め方に相当温度差があると考えられる。例えばポーランドとスペインやアイスランドが、同じレベルで問題を意識しているとは思えないのである。おまけにNATO理事会は、ソ連崩壊後旧東欧圏諸国のNATO加盟を急ぎすぎた。その結果同じNATO軍でも旧東欧諸国と西欧諸国とでは、装備も異なるし命令系統もバラバラ、統一軍事組織の態をなしていないのである。旧東欧圏の中には、未だに旧ソ連軍の装備のままの軍隊もある。
 こういう状態の下で、もしロシアとの軍事的緊張が高まれば、NATOの中で旧東欧と西欧、西欧の中でも反ロと反戦派というように世論・国論が分裂するだろう。要するに、グルジアやウクライナのような、見たことも行ったこともない国の為に、何で俺達が血を流さなくてはならないんだ!、というわけである。

 ポーランドが対ロシア防衛の為にMD配備を承認した。ところで、ロシアが対西欧向けに核ミサイルを発射し、それをポーランドのMDシステムが捕捉破壊したとしよう。そこでどういう事態が起こるかを考えなくてはならない。まず核弾頭がウラン型である場合、AMM爆発の衝撃で核分裂が生じる可能性が高い。高度数万mで核爆発が起こるのである。この結果、発生した放射性核分裂物質が周囲にばらまかれる。プルトニウム型の場合、AMMにより核爆発を起こす可能性は少ないが、猛毒のプルトニウム破片がばらまかれることになる。間違えてはいけないのは、核爆発と通常火薬爆発とは全く性質が異なることである。後者は急速な酸化作用であり、爆発後に出来る物質は、殆ど水と幾つかの無機元素に過ぎない。つまり、幾ら破壊力が大きくても、それは一過性の衝撃に過ぎない。しかし、核爆発の場合、爆発時の衝撃だけでなく、後に放射能を出す核分裂物質が残る。それが、多発性発癌などの放射線被害を発生させる。これらの核分裂物質やプルトニウムが、どの辺りにばらまかれるかと云うと、最終的には世界中なのだが、地域的に濃淡がある。東欧地域では季節にもよるが、南東から北西方向に風が吹くときがある(チェルノブイリ事故)。そのときは、ポーランドだけでなく、北欧(北ドイツからデンマーク、スカンジナヴィア地域)が汚染地域になる。逆に冬には北極寒気団が強くなり、北東から南西方向に風が吹く。そのときはルーマニア、チェコ、セルビア等バルカン地域が汚染地域になる。


 という訳で、対ロ圧力はあまりかけすぎると、返って西欧側の分裂を招き、やぶ蛇になる可能性が高い。むしろ、それがプーチンの付け目。西側世論が分裂するまで、圧力を加え続けるかもしれない。
2、ロシアはシカトされるか?
 ブッシュはロシアの行為は21世紀では許される者ではなく、ロシアは責任あるパートナーではなく、今後の関係を見直さざるを得ないと主張(ライス)。要するに、ロシアは国際的イジメに合うぞという警告。さて、米ロ間のこれまでの関係とはなんでしょう?責任あるパートナーとは何を意味するのでしょう?これらをどう見直すのか、具体的な話が無いので、俄に判断出来ません。しかし、プーチンとしては後四ヶ月しか寿命のない政権の話を、まともに聞く気はないでしょう。アメリカの次期大統領候補は色合いは少しずつ違うものの、少なくともブッシュの様な頑迷な原理主義者では無さそうである。ロシアとのより現実的妥協を目指すだろう。
3、アメリカの失敗とプーチンの狙い
 対ロ政策についてアメリカはこれまで、二つの決定的失敗を犯した。
1)自由と民主主義の拡大
 イラク戦争開始後、ブッシュ(=ネオコン)はいきなり、「自由と民主主義の拡大」というテーゼを掲げ、 ロシアの下腹に当たる中央アジア諸国にアメリカの援助を始めた。更に、NATO の東方拡大政策を進め、ポーランドを始めとする、旧東欧諸国が一斉にNATO加盟を果たした。これがロシアの対米、対西欧警戒心をかき立てたのは間違いない。「自由と民主主義の拡大」といえば聞こえは良いが、実態は十字軍そのもの。中世に十字軍の侵略を受けた経験のあるロシアが、この状況過敏にならないわけがない。アメリカが自ら喧嘩を仕掛けているようなものだ。
2)原油価格高騰の放置
 イラク戦争前、20~30ドルに過ぎなかった原油価格が、1年後には倍の40ドル台になった。その後原油価格はどんどん上昇し、今年の春には遂にバーレル100ドルを突破。その間ブッシュ政権は何もせず、原油価格高騰を放置したまま。イラク復興資金を原油売却益で補うという当初方針に照らせば、これは有り難い話だろうが、これで漁夫の利を得たのがロシア。自分は何もせずにドルがジャブジャブ入ってくるのだ。これでたちまちロシアは金持ち国の仲間入り。エリツイン時代にボロボロになった軍備の近代化・増強も可能になった。西欧なんかに頭を下げる必要はない。同じ石油成金でも、プーチンはチャベスやアフマデイネジャドほどマヌケ・ボンクラではない。
 ではプーチンの狙いは何処にあるか?元KGB将校だったプーチンは、旧ソ連の政策の間違いをつぶさに見てきた。旧ソ連の最大の政策的失敗とは、特にブレジネフ時代、ソ連圏の拡大という領土的野心と、アメリカとの軍拡競争にのめり込みすぎたことである。その結果、海外友好国に対する軍事的経済的支援が過大になり、結果として旧ソ連の経済的破綻とソ連圏崩壊という事態に達したのである。補助金漬けで国家予算が破産状態になっている東洋の某国とよく似ている。ソ連東欧崩壊は裏返して見れば、ロシアにとっては都合の良いリストラだったのである。これに原油高騰という僥倖が加わり、ロシアは空前の経済発展を実現した。今更、領土を拡大したところで、ロシアにとってはコストが掛かるだけである。だからそのような愚は二度と犯さない。彼の狙いは、グルジアやウクライナ・旧ソ連圏諸国を中立化すること、要するにNATOには加わるな、ということ。それとあわよくばNATOの分裂を誘って西方正面の安全を確保する事、そしてアメリカの野心を押しとどめることである。
(08/08/20)

 ブッシュがグルジアに軍事介入をほのめかす。本気かね?ブッシュの思惑は外交好みのマケインを援護射撃して、秋の大統領選挙で共和党有利に持ち込むこと。ついでに下がり続きの大統領支持率回復を狙うこと。そんなに都合良くいくでしょうか?ロシアの(現実の)実力者はメドベージェフではなくプーチン。プーチンが何を考えているか、が最大の問題。
 まず1)ブッシュ(ライス)は今のサーカシビリ政権支持を明確にし、2)ロシアを非難し、ロシアが国際的孤立を招くだろうとか、G8から追放するとか、と宣言する。これはソ連崩壊後のエリツン政権では十分な脅しになった。それから何年経ったと思います?エリツン時代のロシアはソ連崩壊後の経済破綻で、何が何でも外貨を稼ぎ、そのために外資を導入しなくてはならなかった。西側の頭を下げまくらなくてはならない。実にアメリカにとっては愉快な時代だったのである(しかし、その頃、筆者は年賀状に「ロシアは世界最大の資源国であり、無視してはならない」と警告してきた)。それもプーチン時代になって話しが変わってくる。エリツインープーチン時代に旧ソ連の最大の疫病神、国営企業の民営化と産軍複合体のリストラを実行した。その結果、ロシアの経済的負債は大幅に減少し、更に昨今の原油、金属資源価格高騰で、今やロシアの懐は膨れるばかり。では、このロシアの経済発展を指導したのは誰か、というと実にアメリカ(IMF)なのです。
1)国際的孤立とは何か?
 今ロシアを面と向かって非難しているのはアメリカと、EUの中でも旧東欧圏だけ。フランスは最初威勢が良かったが、その内腰砕け。ドイツは元々慎重派。イギリスは様子見状態。今国際情勢を語るに於いて無視出来ない中国、インド、ブラジル、中東産油国は何も云わない(日本は対米追従以外何もないのだから、何も云わない方がよい。うっかり何か云うと恥をかくだけ)。国際的に孤立して何が問題になるかというと、人、物、資本の流入が途絶え国内景気が悪くなり、物価が高くなり、社会が不安定化することである。ところで、今世界中の不安要因は原油や金属資源などの不足、価格高騰である。ところで、ロシアはこれらの生産国・輸出国である。又、ロシアはこれらの高騰を背景に西欧から旺盛に資本を導入している。今欧米がロシアを孤立化させれば、これらロシア産品が欧米に入ってこなくなる。ところが、中国、インド、イランなど買いたい国は幾らでもある。孤立化させたければ勝手にやりなさいよ、というわけで、ロシアにとっては屁でもない。
2)G8からの追放
 G8からお呼びが懸からなくなったとして、ロシアがなにか困ることがあるでしょうか?そもそもロシアがサミットに参加するようになったのは、エリツン時代。ブッシューエリツンの個人的関係からのこと。エリツンはG8に加われて有頂天だったが、プーチンは大して興味は無かった。それから10年。ライスというか、アメリカ自身サミットをそんなに重要視しているでしょうか?最早サミットは何も決められず、決めたことを誰も守らないただの猿芝居。その証拠が今回の洞爺湖サミット。日欧がほぼ合意していた二酸化炭素排出規制数値目標を、アメリカ自身が潰してしまったのである。そんなサミットに誰も興味を示さない。ましてプーチンのようなリアリストならなおさらだ。
 そもそもサミット構成国自体が、冷戦時代の空気を引きずっており最早時代遅れ。イタリアなんていい加減な国が何故サミットに加わるのか?GDPで云えば、カナダが東京都程度、オーストラリアに至っては大阪府程度しかない。つまり、アメリカとロシアを除けば、あとの5カ国のGDPを全部合わせて、日本に勝てるかどうかなのである。こんな事だから、力ををつけてきた新興国は誰もG8のいうことなど聞かない。あとを追いかけるアジア、アフリカ、中南米諸国も同じだ。私がプーチンなら、これら新興国を合わせた経済協力機構を作る。ついでに軍事協力も抱き合わせ。時代遅れのG8など置いてきぼりだ。
(08/08/15)

 ロシア、グルジア停戦に合意。新聞では「国際世論の圧力に屈して」などと報道しているが、本当でしょうか?そもそもあの国は、過去に一度も国際世論を考慮したことはない。考慮した振りをして一旦引き下がり、そのあと逆襲するのが常套手段。例えばかつての対フンランド戦争。最初(第一次カレリア戦争)はフンランド側の抵抗に屈して退却したが、翌年態勢を立て直して三方から侵攻し(第二次カレリア戦争)、カレリア地方を占領してしまった。最近のチェチェン紛争でもそうで、第一次紛争の時はロシア軍はチェチェン側の抵抗に屈して軍を引き上げたかに見えたが、翌年軍を増強し三方から侵攻してチェチェンを制圧してしまった。このやり方はかつてのノモンハン紛争とも共通しているのだ。これらの事例から引き出される結論は、①ロシア(=旧ソ連)は紛争解決を2段階に分ける。②第一段階は、相手と適当にやり合って、形勢不利と見ると兵力を引き上げる。一見ロシア側の敗北に見えるが、実はこれは単なる威力偵察に過ぎない。相手の実力及び、国際世論の動向を探っているのである。③国際情勢が自分に有利になったとき(有利という意味は、国際世論が事を忘れてしまったということでもある)、或いは相手が当初の勝利で有頂天になって油断しているとき、態勢を立て直して一気に侵攻する。
 これを今回のグルジア紛争に当てはめてみよう。
①紛争の引き金をどちらが引いたか?客観的に見ればグルジアでしょう。但し、グルジア政府中枢にロシアのスパイが入り込み、サーカシビリがその唆しに乗った可能性もある。イワン雷帝の子孫なんだからそれぐらいやりかねない。
②今回のロシア軍グルジア侵攻は単なる威力偵察に過ぎない。グルジア軍の実力と政府の統治能力、それと首都への進撃路の確認が目的だろう。
③一方、フランスの仲介でロシアは停戦に合意した。サーカシビリはこれこそ自分の外交的成功と宣伝し、グルジア国民も国際世論は自分達の味方と有頂天。ロシア何する物ぞ、と意気上がり民族主義は最高潮に達する。しかし、現実を見れば、ロシア軍の空爆や侵攻に、グルジア軍は殆ど抵抗らしい抵抗も出来なかったのだ。ところで国際世論とは何者か?だが、実は西欧の一部ジャーナリズムのことで、民衆がそれに悪乗りしているだけである。ブッシュやライスのような馬鹿もその片割れだが。しかし、それもあまりやりすぎると、ロシア国内に別の反西欧ナショナリズムが勃興する(プーチンとその手先が扇動する可能性もあるが、なにせイワン雷帝の子孫だから、何でもあり)。グルジア何する物ぞ、だ。それと、グルジア国内にも親西欧派もあれば親ロシア派もいるはずだ。サーカシビリがこれまでどんなことをやってきたか知らないが、おそらく日本のコイズミカイカクと同じで、都市中心、地方無視政策だろう。当然、グルジアには経済格差が生じている。その恩恵を受けるのは都市住民。彼らはサーカシビリ政権を支持するが、経済発展から取り残された地方には、反サーカシビリ雰囲気が有るはずである。
④この地方にある反サーカシビリ雰囲気(即ち親露雰囲気)を利用すれば、グルジアを分断出来る。従って、ロシアは再びグルジアに侵攻する。今度はロシア軍も十分態勢を整えているから、おそらく南オセチア、アブハジア、アゼルベイジャン方面からの三方面侵攻になるでしょう。時期は今年年末或いは来年早々でしょう。その時期は、丁度アメリカ大統領の交替時期であり、アメリカの影響・干渉を極力排除出来る。冬でヨーロッパも冷え切っている。ヨーロッパ向け天然ガスパイプラインの元栓を少し閉めれば、ヨーロッパなど何にも出来ない。今、EUがロシアに対し色々云えるのは、夏で天然ガス需要が減っているからで、冬になればどうひっくり返るか判らない。ヨーロッパ人特に西ヨーロッパ人というのは、自分に関係が無ければ、きれい事を云うが、もし危険が自分に迫れば、それを周辺諸国・民族に押しつけて、知らん顔を決め込むのである。例えば、キリスト教国のアルメニアがトルコに屈服したとき、コンスタンチノポリスがトルコに包囲されたとき、日本でキリシタンが火あぶりになったとき、フインランドがソ連に蹂躙されたとき、等々西欧の無責任は歴史上枚挙にいとまがない。
⑤グルジアを軍事的に制圧したとして、それだけではことは済まない。国際世論とか、国連安保理とかややこしいハードルが有るからだ。ロシアの目的は、グルジアを完全支配する事ではなく、グルジアに親ロシア(でなくても非親西欧型の民族主義)政権を作れればそれで済む。それが出来ればロシア軍はさっさと出ていく。今、ロシアは次期グルジア政権を誰にするかを吟味中なのだろう。それが決まれば、あとは外的条件が定まった時点(上の④)で、グルジア再侵攻に踏み切るでしょう。全体に必要な期間はおそらく一週間以内。そのとき西欧は何をするか?これまでの前例を見たとき、当初は 声高にロシアを非難するものの、具体的には何もせず、グルジアを見捨て、ロシアに屈服するでしょう。かつてトルコに何も出来なかったと同じようにだ。
(08/08/13)

 北京オリンピックに合わせたように、あちこちでテロや爆弾騒ぎが起こる。東トルキスタンとかウイグル自治区の場合は、ほぼ背後にイスラム原理主義が動いていると見て間違いないでしょう。イスラム原理主義のこの地域への浸透は、昨日今日に始まったのではなく、アフガン戦争の頃から有ったと見るべきである。それが判っていない人間・・・例えば保守イデオローグの中西輝正など・・・が多い。しかも、現在ではアルカイダの影響も無視出来ない。
 この騒ぎの中で最大の物・・・になるはず・・・が、グルジアによる南オセチア侵攻である。確か昨日、グルジア政府は戦争状態に入ったと宣言し、南オセチア州都に侵攻した。やる気十分かと思っていたら、ロシア軍の反撃にあって、たちまち降参。軍を南オセチアから引き上げると同時に、欧米に仲裁を依頼。自分で大見得を切って喧嘩をふっかけておいて、形勢不利と見ると周りの親分に泣きを入れる態である。グルジア大統領のサーカシビリという人物、どんな人間でしょうか?今回のいきさつを見ると、山師ペテン師の類、ろくな人間ではないでしょう。こんな人間に入れあげると、後で大変高い物につく。それぐらいのことは、アメリカやヨーロッパの政治家は判っていると思うが、判っていない可能性も高い。なお、共和党のマケインは、いち早くグルジア支持を打ち出したが、これはカザフスタンからの石油パイプライン(CBT)維持を狙ってのこと。そんなことはロシアはお見通しで、CBTを維持しようと思えばチェチェンを確保しなくてならない。チェチェンが不安定である限り、CBTも安定とは云えない。それと、カザフスタンも上海協力機構の一員で、ロシアの圧力を無視するわけにはいかないだろう。
(08/08/10)


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