横井調査設計のMT探査(4)

MT探査を、トンネル計画へ適用した例を紹介します。



 下の図は、トンネルルート計画に本格的にMT探査を利用した、日本で始めての例です。
(横井、梅原他「「MT探査を用いた長距離トンネルの地質調査」;平成7年度全国研究発表大会、日本応用地質学会)

兵庫県東部での下水道トンネル工事(φ2000o L≒4q 最大土被り 約350m 流体輸送式TBM (株)大林組神戸支店施工)に関し、MT探査による地質調査を実施しました。この結果に基づいて、トンネルルートを変更し、無事完工に導いています。
トンネルフォーメーションでの比抵抗平面図
トンネルルート上での比抵抗断面図

 元々のトンネルルートは図左下端を発進点とし、図右上に延びるものでした。発進してから暫くすると、坑内湧水が発生し、施工が困難な状態になりました。先ず、ゼネコンがクレームを付け、次いで発注者も、重い腰を上げ、筆者(横井)の提案に従って、ルート周辺全体の空中写真判読、地表踏査、そしてCSA-MT探査を実施しました(これを実施するまでには、現場事務所だけではなく、東京は「虎ノ門」まで行っているのですよ)。その結果、発進側(図の左側)では、ルートは低比抵抗帯(図左の赤色部分)を、斜めに横切るようになっていることが判りました。そこで、ルートを低比抵抗帯を直角に横切るようにショートカットし、上の高比抵抗帯(青色部)で右旋回し、直線に入って、原ルートにすりつけるようルート変更を行いました。

坑内の状況 解説
 低比抵抗帯での岩盤状況。地山は中生代有馬層群の凝灰角礫岩ですが、全体に白濁が進み、小さな割れ目が多く発達しています。白濁化は温泉化作用の結果。中に入ると温泉の臭いが強い。画面を斜めから見ると、割れ目の状態がよく見えます。
 この低比抵抗帯は、実は温泉帯なのです。Cl濃度が高い。六甲山の廻り、特に裏六甲には、何故か高食塩水が分布する。
TBM本体を後退させ、切り羽を閉塞したところ。
地質調査用の先進ボーリングマシン。これは、この工事のために、ゼネコンが特注したものです。
 特注するに当たっては、色々理由があります。私もその理由は納得出来ます。
 施工は、トンネルの坑夫が直接やるというので、「ボーリング工法としては、普通工法でビットはインプリ、D-10ダブルコアチューブ使用、回転数は60〜200rpm程度、送りは油圧のため、ロッドの切断が発生するかもしれないので、気を付けること」、を指示。コア採取率は良好で、素人がやったにしては上出来。但し、ロッド切断は頻繁だったらしい。


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