南極の新しい氷山の誕生(南極の巨大雪崩)


 これはNASAの地球観測衛星テラ搭載の日本製光学センサーASTERが捉えた、南極氷河に発生したクラックです(47ニュース)。画面中央やや左上から右下に掛けて延びる黒い線が、そのクラックです。
 画面上部の黒い山形の陰は雪崩です。画面上部に山地があり、斜面に積もった雪が雪崩を起こしたのでしょう。雪崩は大きく次の3箇所に分かれて発生しています。
1)クラック真上の左上から右下に発生するブロック(図のA)。これが最大。
2)その左脇に左下方向に、直接海に向かって崩壊したブロック(図のB)。
3)1)の右側に斜面に平行して発生したブロック(図のC)。
 斜面の末端に黒い固まりの列が延びています(図のD)。これは俗にデブリ(英語のdeblithが訛ったもの)と呼ばれる、氷河の末端に出来る氷や雪の固まりが潰れたもの。画面の下方にも似たようなものがありますが、これは氷堆石かも判りません。
 雪崩の発生は、まず斜面下方にCの崩壊が発生し、次いでA、同時にクラックが発生し、最後にBになります。CからAに発展するには若干時間があった可能性はありますが、A、クラック、Bの発生は殆ど同時でしょう。
 雪崩斜面の下方に、平行に幾筋も黒い線が見えますが、これは雪が融けた後です。南極は現在夏です。気温が上昇して雪崩が発生し、その衝撃で氷河に引っ張りクラックが発生したものと考えられます。クラックの長さが約30qと伝えられていますから、雪崩の規模も、もの凄いもので、おそらく大阪府か東京23区全部を飲み尽くすぐらいになるでしょう。固い岩石に一軸圧縮を加えると、引っ張りクラックが発生します。氷河は固い剛体ですから、反対側にも同じ様な山地があれば、引っ張りクラックは容易に発生します。
 問題はこのような雪崩が、通常起きているのか、特異なものなのかの区別です。特異なものであれば、その原因をつきとめることが重要になります。
 なお、雪崩と地すべり・崩壊とはメカニズムは殆ど同じです。地すべり・崩壊メカニズムを知っておれば、雪崩から身を守る方法が身に付きます。例えば、Cタイプの雪崩が見られたら、まず斜面の下方に近づかないことが賢明です。ズバリ逃げるが勝ち。逆に雪崩のメカニズムを解明すれば、地すべり・崩壊対策にも役に立つでしょう。
 この原因を所謂地球温暖化に持っていくのは、最も安易な方法です。しかし、昨年の降雪が平年に比べ多かったため、その重量に氷の強度が耐えきれず、雪崩を生じたと言う見方もあり得ます。何事も、複眼的に見ることが重要です。
(12/02/05)


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