ニュージーランドの活断層地形

11/02/22朝の地震で、在留日本人も多くが犠牲になりました。ここではニュージーランドに見られる幾つかの活断層地形を眺めて見ましょう。

これが一昨日地震が発生したNZクライストチャーチ(画面中央の白い部分)とその周辺。日本で云うと宮城県太平洋岸に似ています。中央右下の半島が牡鹿半島で、その周辺の平野が仙北平野とか仙台平野。画面中央下に潟と砂嘴が見えます。その背後の平野はかつては全面湿地帯。軟弱地盤の典型です。クライストチャーチの街はこれの上にあり、これでは沈下や液状化が起こっても不思議ではない。
 本日夕、破壊したキングズエデユケーションが入っているビルの様子がテレビで放映。地震直後の垂直動で縦方向に圧壊したと見られる。コンクリート塊や壁にも、殆ど鉄筋が入っていない。構造的に問題が大きい。違法建築か?施工の手抜きか?
(11/02/24)

 

 ニュージーランドはオーストラリア大陸の東方に浮かぶ島国、位は誰でも知っている。ニュージーランドは、左図の様に左のオーストラリアプレート(A.PL)と右の太平洋プレート(P.PL)の境界上にあります。両者の境界がアルパイン断層(A.T.L)。ニュージーランドは北島と南島に分かれますが、北島ではオーストラリアプレートが太平洋プレートの上に、南島では逆に太平洋プレートがオーストラリアプレートの上に乗り上げるような形になります。しかし、一つのプレートで動きが逆になるのは変な話しです。基本的には、太平洋プレートがオーストラリアプレートの下に沈み込む。南島側のオーストラリアプレートへの乗り上げは、例えば太平洋プレートの上に乗って移動するミニプレートのようなもの(左図のm-PL?・・・日本で云えば山口県の「錦層群」のようなもの)とか、太平洋プレート沈み込み部での付加体の衝突が候補として挙げられます。
 いずれにせよ異地成のものがニュージーランドでぶつかって居ることには変わりはない。この点も日本列島とよく似ている。
ニュージーランドと言っても広いので、全部を見る訳にもいかないので、とりあえず南島の北部と北島の南部だけを見てみました。
 南島では北からL1、L2、L3、北島ではL1の延長と思われるL1´のリニアメントがそれぞれ、NEーSW又はNNE-SSW方向に配列しているのが判ります。この内、L2が場所から見て、アルパイン断層相当のようです。
まずL1リニアメントを見てみます。
 L1リニアメントは、川に沿って、直線状の崖や谷が連続することが特徴的です(P-1)。
 これの左端に何かドームのような地形が見えます(P-2)。これらをもう少し詳しく見てみましょう。
見事な直線状の断層崖です。川の対岸は段丘で長方形に農地が区画されています。段丘と南側の山地の境界も直線状で、これも断層の疑いはあります。もしこの付近で活断層に伴う地震活動があれば、その変動は、長方形の農地に記録されることになります。
ドームの様な地形に見えましたが、ドームではありません。川の曲流です。北方の山地から南に流れ降った川(図中破線)が、L1リニアメントの直ぐ北で河道をほぼ真反対に曲げ、逆に北流して海に注ぎます。この現象は河川争奪と云われるもので、活断層地形の特徴の一つです。断層の周辺で隆起活動が起こると、元々流れていた川のルートが突然変わってしまう現象です。
 日本では、紀伊半島和泉山脈西部にこれとそっくりの現象がみられます。これらの点から、L1リニアメントは活断層と見て間違い無いでしょう。
 写真右側の河川に若干右ズレオフセットが見られます。
 
L2も比較的はっきりしたリニアメントです。北東端で二つに枝分かれするように見えますが、はっきりしません。
L3は北西部の山地と南東部の海岸平野との境界に見られるリニアメントですが、拡大してみると、あまりはっきりしない。境界部になんとなくモヤモヤとしたものが見えるだけ。これは断層が古くて浸食が進んだせいか、それとも未だ若くてはっきりした断層地形を作れていないか、のどちらか思われます。
 写真中央の破線が、今回地震を起こした「未知の活断層」。
北島と南島の間の海峡には、断層とおぼしきN-S方向のリニアメントが多数見られるので、L1とL1´がすんなり続くとは限りません。
L1´リニアメントの地表トレースです。L1と同様、断層崖が直線状に延びています。断層の形成年代や形成過程が類似した者と云うことが判ります。L1が活断層であることは間違いないので、これも活断層になります。これの特徴は、北側にこれに斜交するNNE-SSW方向の枝断層が、多数発達する事です。これの方向から、L1´リニアメントは右横ズレ活断層になります。
 断層の南側には沖積平野と低い丘陵地が発達します。これもなんとなく、紀伊半島西部和歌山市周辺に似ています。
L1´リニアメントの拡大。断層に沿って幹線道路が奔り、更に人家が密集しています。この辺り、日本とよく似ています。

RETURN      一覧へ      TOPへ