大地表面のさざ波・・・リップルマーク

 これは今年8月始め、兵庫県南部から大阪府北部に発生した局地集中豪雨(これで甲子園は試合が中止になった)で、我が家の近所の水路(写真左上の黒い部分)が溢れ、それにより隣の道路上に作られたリップルマーク(漣痕)です。写真上から下に並ぶ、平行な筋がリップルです。洪水の翌朝の写真なので、自転車によって幾分乱されています。写真上が上流になります。
 水の流れの方向がリップルに刻まれています。リップルに直行するのが水の流れ。水路脇と道路とでリップルに段差が出来ていますが、これは水路部分と道路とで流速が変わっているためです。
 リップルは非対称の山型地形を作ります。このとき、下流側に急勾配、上流側に緩勾配斜面は発生します。
 
図ー1  これは上のリップルマークを側面から見た写真です。写真右上が上流、左下が下流になります。確かに、上流側に緩斜面が、下流側に急斜面が出来ていることが判ります。又、一つのリップルで末端部分に、比較的粗粒の粒子が集まっていることに注目してください。これもコンピューターで強調処理を行っています。


 この現象はしばしば、古い地層中に保存されることがあります。これを利用すれば、何千万年もの昔の、古い川や海流の方向を復元することが出来ます。

 

 上で挙げたリップルは波長がせいぜい数p、波高が1p未満の小さなものです。では世の中にはどのようなリップルが有るのでしょうか?

この写真はアフリカ南部、ナミビア西部のナミブ砂漠です。左の黒い部分は大西洋。縦に走る筋はいわゆる砂丘列ですが、実態は大西洋から吹き付ける西風で出来たリップルです。この場合、波長は数100m、波高は数10mに達する巨大な物になります。
 大西洋岸に沿って白い帯が見られます。ここでは、内陸部の砂丘列に対し急角度で交差する、東西方向のリップルが見られます。これは何故でしょう?
 大西洋の沿岸流はコリオリ力により、ここでは反時計回り、つまり写真の左下から上方向になります。この結果、アフリカ大陸南部の西海岸では、沿岸流に直交する方向のリップルが発達することになるのです。
 図はコンピューターで、若干の強調処理を行っているので、砂丘の発達状況がより鮮明になっています。グーグルアースでも赤外線映像が公開されるようになると、もっと鮮明な映像が得られるでしょう。
 なお、写真右に見られる白い塊は概ね塩の海。そういえば、その周りの砂丘の谷は白くなっていますが、これも塩の塊でしょう。

 さて、上のちっぽけなリップルと、ナミブ砂漠で見られるような巨大リップルとは、作られ型が違うのでしょうか?"NO"、全く同じメカニズムで作られるのです。基本的には地球表面と、地球表面を覆う流体(空気の場合もあれば水の場合もある。そしてその中には、図-1に見られるように、様々な粒子が含まれている)との摩擦、それから発生する振動が、このような地球表面の模様を作り出すのです。ということは、我々の日常生活の中で起こっている小さな出来事から、地球という大きな世界の出来事を見ることが出来るということです。勿論、火星にも空気がありますから、火星表面にも同じ様なリップルが形成されているはずです。


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