平成22年鹿児島県豪雨   南おおすみ町での斜面崩壊

 平成22年南九州を襲った集中豪雨で、鹿児島県南おおすみ町で発生した斜面崩壊の映像(10/09毎日新聞より)。
 崩壊地の上は平坦な台地で、台地と斜面との境界部で崩壊が発生していることが判ります。崩壊部の地質は、図中点線より2層に分かれます。上部は岩塊状で、縦に節理が入っていることから、火砕流の一部、溶結凝灰岩の可能性が考えられます。その下がシラスでしょう。上部の節理に沿って雨水が浸透してくる。点線に沿って何らかの不透水層があれば、そこから水圧が発生し崩壊に至る、というストーリーは誰でも考えつきます。だから余り面白くない。
 写真左上に、今回と同じような崖が見えます。崖の中に樹木があるから、この崖は今回の豪雨で発生したものではないことは顕か。樹木の大きさから、せいぜい10〜20年前に生じたものでしょう。
 両者の中間に、なだらかな斜面があります。この頂部も切り立った崖が発達し、全体が古い崩壊跡と推察されます。斜面内樹木の高さから推して、崩壊は40〜50年前かそれ以前に起こったと考えられます。とすると、この斜面内では20〜30年毎に同じような崩壊を繰り返してきたことになります。おそらく今後も繰り返し崩壊を生じるでしょう。

 そこでワタクシがいいたいことは何でしょうか?それはグアテマラ陥没の原因です。これについてアメリカ人の学者は、現地人学者の石灰岩ドリーネ説を否定し、グアテマラ台地を火砕流台地とし、陥没の原因を大雨による火山灰の流出とした。もし、アメリカ人学者の言い分が正しければ、今回の豪雨で、南おおすみ町にも陥没が発生しておかしくない。何故なら、南おおすみ町も火砕流台地だからである。しかし実際に起こったのは台地の陥没ではなく、周辺の斜面崩壊なのである。従って、グアテマラでも洪水による周辺斜面崩壊が発生するはずだが、そのような報道はない。
 世の中には、地質屋といっても酸性凝灰岩と石灰岩、チャートの区別が出来ないのが結構いるのである。

 なお、下流にある砂防ダムについてせき止められなかったなどマスコミ筋からの批判はあるが、筆者の見るところ、ダム軸位置はこんなところ。ダム高は周囲の地形からこれもこの程度が限度。これの意味するところは、砂防ダムのような待ち受け工では防災機能には限度があるということだ。
 この崩壊でも判るが、崩壊の始まりは斜面の頂部にある。斜面頂部の補強、保全を確実に行えば被害を極小化できる。しかし、この考えは現在の国土交通省の基準から外れているのだ。 何故なら、急斜面補強は特殊工法を伴い、専門業者の独占。待ち受けなら地元業者でもなんとかなるからである。
(10/07/09)

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