日本のダムは何故こんなに高くつくのか?

白屋のことをぼんやり考えている内に「何故日本のダムはこんなに高くなるのか、もっといい方法はないものか!」ということになった。高くなる理由は沢山ある。最大のものはダム関連事業に、政治家が眼を付けだしたことである。これは新幹線も高速道路も同じ。しかし、政治家が眼を付けるには理由があるわけで、関連投資額が小さければ鼻も引っかけない。関連投資額が多くなるのは、ダム規模が大きいからである。何故、ダム規模が大きくなるかというと、下図のAのように、河川の利水・制水機能を一つのダムで賄おうとするからである。これらの機能を分散すればもっと良い方法が産まれるかもしれない、というのがB案である。

A B

 本川の途中からバイパス河川により、河積が洪水時流出量を呑み込める位置まで分流する。上図で云えば、A点でトンネルにより分流し、B点で合流させる。そうするとAB間の河川の負担は少なくなる。しかしそう上手くはいかない。B点より下流の河川が未整備の場合は、B点はどんどん下流に行くので、トンネル延長は延々と長くなり、計画として成り立たないケースもある。その場合には、@A点に堰(ダム)を設ける、このダムは利水用にも転用出来る、Aトンネルに調整池機能を付加する、といった対策を施す。つまり、@通常は本川を通して流下させる、A洪水時のみゲートを開けて、オーバー分をトンネルに導き、ピーク流量をカットする、B導入された水は直ちに流下させず、一旦トンネル内に貯留し、下流の水位が下がった時点で下流に放流する。
 この方式であれば
@仮に分水点にダムが必要となっても、規模はA案にくらべ小さくなる。
A従って、本体工事費が削減され、その結果関連事業費も縮減される。
B流域の環境負荷が低減される
 と言ったメリットが期待される。しかし、バイパストンネル工事費が付加されるではないか、という疑問が発生するだろう。その通り。では大滝ダムを例にして、この点を検討して見ましょう。大滝ダム計画は下図のとおりです。


 上の図で大滝から大和上市まで約7.0qのバイパス河川をトンネル方式で築造する。D=15.0m級の大断面トンネルを考える。但し河川だから二次覆工は不用。150万/mとして
                                      7000m*150万=105億円
ゲート、地下貯水池等付帯設備を45億程度と考えても計150億円
 一方、ダム本体は100m級のものは不要で、せいぜい数10m級ですむ。更に関連の道路改良費、用地費、補償費等もやすくなるが、これがどの程度になるか、皆目検討がつかないのでとりあえず無視しておこう。最も肝心なのは、ダム高が小さくなったため、水位が低くなるので、白屋地区が地すべりを起こさなかった可能性があるということである。全くないとは云えないが、少なくとも変状はもっと少なくなるだろうし、地すべり土塊内の残留水位が小さくなるので、地すべり対策費が270億などという、巨額なものになるはずがない。せいぜい抑え盛土程度で片が付く。そうすると10億位で済んでしまう。単純に地すべり対策費と比較しただけでも、バイパストンネル案の方が安くなってしまうのである。これに上に挙げた、ダム規模低減によるコスト縮減効果を合わせると、どちらが有利かは一目である。



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