白屋地すべりは止まるでしょうか?

 昨日偶々、「白屋地区」のサイトを見ていると、下図の様な対策工の画が見つかりました。何年か前に設計プロポーザルを募集し、その中で選ばれた3案の内、建設技研案(抑え盛土+鋼管グイ工)が採用されたようです。フムフムなるほど。建技ー土研ー国交省河川局のつながりを考えると、なんだか始めから出来レースのような気もします。それ以上に、当初に事業予算があって、それに合わせた設計のようにも思えるのです。建技なら始めから事業予算を掴んでいた可能性はあります。建設企画さん、がっかりしないで下さい。


 

まずこの案の特徴を見てみると
(1)白屋地区の現況地形を一切動かさない。
(2)対策工の主体を斜面末端に集中している。
ことが挙げられます。(1)については、白屋地区住民の強い要望を反映した結果と考えられます。(2)については、抑え盛土は良いとして、鋼管グイの位置がこれで良いのか、そもそも抑止工に鋼管グイが妥当か、と云った点に疑問が残ります。
(1)鋼管グイの頭部を越えるすべり(下図のA)に対し安全か?又、現在の対策工は変動域だけを対象としているように見える。背後のゆるみ域に対する対処は十分か?
(2)鋼管グイという部材は強度は大きいが撓みも大きい。湛水してすべり面の有効応力が減少し、剪断応力が増加すると、鋼管グイに強い地すべり力が作用する。その結果、鋼管グイ背面にゆるみが生じ、鋼管グイに予想以上の応力が作用する可能性がある。
(3)このゆるみが永年の内に背後のゆるみ域に影響するおそれはないか?
 筆者なら、抑止工位置を下図の様にセットバックし(下図のB付近)、工法も鋼管ではなくRCの深礎(φ4〜5m)にします。深礎は鋼管より剛性が大きいので、撓みによるゆるみの発生を極小化出来ます。


 勿論、直接工事費は鋼管グイよりは高くなりますが、その分は背後の集水工の省略で相殺します。何故なら、今回の地すべり騒動はダムの湛水によって起こった物で、背後の地下水位変動によるものではないからです。集水工設置位置が、湛水面以下なら湛水によって生じた残留水圧を早期に排除出来るが、湛水面より高い背後斜面に、幾ら地下水位低下工法を行っても効果は大したことはない。もし、湛水後背後斜面で変動が生じ、地下水位排除が必要と判断されたなら、その時点で追加対策を行っても遅くない。というわけで、おそらく来年に行われるであろう、試験湛水が楽しみです。
(08/09.22)
 


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