リニア新幹線の真実

横井技術士事務所
技術士(応用理学) 横井和夫


 何時まで経っても場外乱闘が収まらないリニア新幹線南アルプス工区。今や戦場は地下水問題からトンネル残土土捨て場の安全性に移ってきました。土捨て場は大井川上流の静岡市葵区にあるツバクロ沢に決定していますが、この安定性について静岡県と静岡市の見解が真っ二つ。
 静岡県・・・といっても県知事・・・はツバクロ沢上流で深層崩壊が起これば、それが残土を巻き込むため被害が拡大すると主張。それに対し静岡市・・・これも静岡市長・・・は、深層崩壊があっても残土があるから返って被害は低減されると主張。この市長は東大土木出の土木屋らしい。
 両者に共通する言葉は「深層崩壊」である。この言葉は誰か・・・というより筆者も知っている人物・・が使いだし、特に有名になったのは2010年紀伊半島大洪水による大規模斜面崩壊からである。その後国交省が「深層崩壊」を深さ15m以上の崩壊と定義したが、科学的根拠があるものではない。
 山地の崩壊形態には大きく「崩壊」と「地すべり」とがある。前者は前者は山地の急速な崩壊で、所要速度はとんど秒単位。崩壊斜面は勾配が大きい凸型斜面が多い。又崩壊面の勾配も大きく、概ね30゜以上。これに対し「地すべり」は山地がゆっくりと移動・崩壊する現象で、要する時間は日或いは月単位。崩壊面角も緩く10゜前後となることが多い。斜面勾配も周囲に比べ著しく小さいので、容易に識別出来る。
 ここで問題になっているのは崩壊だが、これには「表層崩壊」と「深層崩壊」の2種類がある。前者は山地・丘陵斜面表層の風化や緩み部分が急速に移動する現象で、その地域の地質構造には無関係である。一方後者は山地斜面の深い部分が急速に移動する現象で、この時の移動の方向などはその地域の地質構造に拘束される。これを具体的に言えば、地下深部まで亀裂に沿う風化や緩みが進行している場合、流れ盤では深層j崩壊を生じやすく受け盤では起こりにくい。斜面が急な場合は、トップリングという現象になる。
 さて、ツバクロ沢ではどうか?ツバクロ沢は南アルプス大井川上流左岸斜面(西向き)中にある。南アルプスを構成する主な地質は四万十層群に属する付加体堆積物である。地質構造は複雑だが、概ね西傾斜。つまり西向きの左岸斜面は大きくは流れ版になるから「深層崩壊」が発生する可能性はある。又地形も「沢」と呼ばれるだけあって窪地であり、深層崩壊を起こしやすい凸型斜面と異なる。
 つまり元々ツバクロ沢は地形上、静岡県の主張する深層崩壊は起こりにくい。更に捨土で所謂抑え盛土をやるのだから更に起こりにくい。従って静岡市の主張のほうが分があると云える。
 しかし両者とも見逃している点がある。それは捨土本体の安定である。両者とも土なんてダンプで持ってきて捨てればそれでよいと思っているようだ。川の堤防とか道路のような数m程度の盛土ならそれで済むが、本件の様に、高さが60mにも70mにもなる盛土ではそうはいかない。施工途中、盛土終了後も大雨や地震で崩壊すれば、大量の土砂が大井川に流れ込み、下流に災害を及ぼしたり、或いは本流に土砂ダムを作ったりする。これに対しては、盛土自体の安全対策が必要で、それを担保する盛土構造がなければならない。それについては、これまであまり議論がされなかった様に思える。静岡県も静岡市も、共同でツバクロ沢盛土の防災計画をJR東海に請求すべきである。
 1、基礎処理法
 2、排水計画(長期、施工中)
 3、段切りを含む斜面対策
 4、転圧法、施工管理基準、施工中の計測計画
 5、安定解析結果(常時、地震時)
       等
 果たしてこんなことがJR東海という鉄道屋に出来るでしょうか?宅造屋が得意なのだ。
(23/12/07

 リニア新幹線JR東海vs静岡県バトル第二ラウンドの静岡市燕沢周辺の空中写真。燕沢は画面中央やや下の大井川から左岸(画面右)に入る沢。上流は既に土砂搬入が始まったようです。但し、砕石堰堤とか排水立て孔のような防災施設は見当たりません。所詮土捨てだから、防災はどうでもいいのでしょう。
 土捨て場の最上流に南北に走るリニアメントが見られます。これは断層かもしれない。燕沢上流の車屋沢は、地すべりの可能性はありますが、本件には無関係。対岸の大井川右岸斜面に多数の崩壊地が見られます。最近静岡県を襲った台風や豪雨によるものでしょうか。川勝が云う深層崩壊とはこのことを指すのか。この斜面は、燕沢とは地質構造が異なり、これが崩壊しても燕沢に影響を与えることはない。
 やはり、問題は平均65mという高盛土を、JR東日本とか静岡県業者がやっていけるかどうかです。熱海の例もあり、静岡県業者は信頼がおけるでしょうか?JRなんて高盛土にはシロウトだ*。全体の防災計画を見てみたいものだ。
 しかし静岡県にしてみれば、リニアは通ったものの残ったものといえば、廃道化した工事用道路と、雨が降れば何時崩壊するか分からない高さ65mのトンネル残土だ。誰が責任を持つんでしょうか?
*何故なら、昭和40年代に入ると、旧国鉄はメンテナンスフリーを掲げて、線路の新設には土工(切土・盛土)を止めてしまった。その結果、鉄道分野には官民問わず、土工が分かる技術者がいなくなってしまったのである。
(23/10/15)

北陸新幹線の敦賀延伸が完了しましたが、果たしてこのルート、将来性はあるのか?おそらく東京ー金沢間は何とかやっていけると思うが、その先が危うい。まず敦賀から先のルートが不安定。今の処、丹後廻り(網野経由)ルートが本命とされるが、こんなルート、採算性も何もあったもんじゃない。大阪・京都から北陸方面に行くのに、なんでわざわざ網野を経由しなければならないのか? 時間的ロスは今より遥かに大きくなり、料金も高くなる。消費者にとってメリットは何にもない。全く消費者を馬鹿にした、政治・選挙目当てルートだ。一番利便性が良いのは敦賀から比良山の裏を通り、京都に直結するルートである。実はこの案はあるのはあったが、何故か潰された。比叡山を通るから、延暦寺が邪魔をしたのかもしれない。
 又今回延伸が終わった敦賀ー金沢間も、京阪神からは一旦敦賀で下車して新幹線に乗り換えねばならない。その間38mの階段がある。高齢者や急ぎの客には負担だ。それだけ負担させて短くなるのは、たったの6分だ。何の意味があるのか?北陸新幹線は、今のままの発想では交通体系の改革ではなく、旧態以前とした我田引鉄の延長に過ぎず、JRの利益に貢献するどころか、赤字製造路線になるだろう。民営化以来40年。JRも遂に旧国鉄へ先祖帰りするか。
(23/08/31)

 リニア新幹線静岡工区のJR東海vs静岡川勝の戦場が、地下水から盛土に変わってきました。JR東海の計画では、リニア静岡工区で発生する370万m3の残土の内、360万m3を大井川j上流に土捨て場を作り、そこに処分するというもの。これに対し静岡川勝が、残土の安定性を理由に土捨て場変更を要求した。残土平均高さは65mということだから、処分場面積は5〜6ha。宅造としてはそう大きなものではない。問題はこれを盛土として扱うか、捨土として扱うか、である。おそらくJR側は捨土、静岡県は盛土と考えるだろう。捨土と盛土の違いは施工管理を行うかどうかである。
 盛土の場合は事前に土質試験を行い、施工時の含水比・密度の幅を決めておく。施工に当たっても、数1000m
3毎に土質試験を行って、基準値内におさまっているかどうかを確認する。捨土はそれにお構いなしに単純に土砂を捨てていくだけ。ゴミと同じ扱いである。但し施工単価は両者で倍以上になる。だからJR側は捨土に拘る。この場合、静岡県はRに対し、盛土並みの品質管理を要求し、指導すればよいだけの話である。あらゆる開発行為は、全て行政指導による。逆にJRは静岡県に「指導してください」とお願いすればよい。これによって、結果責任はJRから静岡県に移る。
 盛土(捨土)の安定を左右する要素は、大きく1、基礎地盤の強度、2、,盛土(捨土)の高さと形状・構造である。海上盛土や東日本に多い溺れ谷のような軟弱地盤では、1、基礎地盤の強度がものを言う。これが不足すれば、大規模な地盤改良が必要になってくる。
 一方河川の上流域の様に堆積物が薄く、あっても砂や礫質が主になる地盤では1、はあまり問題ではなく2、が効いてくる。但し中上流域でも山の斜面では地すべりや崩壊土砂(崖錐)が堆積していることがある。これらに対しては、逆に盛土を地すべり対策に利用する手もある。
 また、谷底に軟弱層が薄く堆積している場合(概ね2〜3m程度)には掘削除去するなり、浅層地盤改良などの簡易な対策を行えばよい。静岡の地場企業なのか、「サイエンス」という聞いたことのない会社の技師長というのが、処分地地下には、断層がメロンの様に走っているというが、メロンだろうがバナナだろうが、盛土(捨土)にとって、断層は問題にはならない。水抜きさえしっかりやっておけばよい。
 処分地の安定性を評価する方法に「安定解析」というものがある。方法は大井川上流工事だから河川協会「河川砂防技術基準」(設計編による方法を使えばよい。これによる結果は十分安全側だし、これ以外の方法を使っても河川管理者(国交省)がウンというわけがない。まして川勝が納得するはずがない。なお盛土の場合の安定解析では、土質試験値を使えるが、捨土の場合はそうはいかず、剪断強度はゼロにするかせいぜい、C=0、Φ=23゜とする(神戸市開発局)。結果(安全率)が基準値に入らない場合には、現在は補強土工法が発達しているので、これら新技術を援用すれば良い。
 65mという高さは道路盛土としても小さくはないが、それほどビックリするものではない。筆者はかつて本四連絡道路で80mの盛土の設計をやったことがある。これは当時、道路盛土の最高記録である。ポイントは、基礎処理と排水である。前者で有効なものは谷止め堰堤である。谷を幾つかに分割し、その境界に砕石の堰堤を構築し、これを抵抗体とする。谷沿いに排水ドレーン、また盛土内にも数mピッチで水平ドレーンを設け、雨水排水を円滑化する。排水孔の末端は施工中は沈砂池に繋ぐ。供用後、調整池を作るかどうかは県、国交省、JR東海間の協議次第。というわけで、盛土高が65mだろうが、処分量が360万m3だろうが、筆者の云うようにやれば問題はない。
 こうはいっても、一般に鉄道屋は土工に弱い。ましてJR東海がどの程度、高盛土の経験があるのか、そっちのほうが心配だ。また、施工するゼネコンも、高盛土に十分な経験を持つ業者を選ばないと、幾ら立派な図面を画いても、それこそ画にかいた餅になりかねない。大井川残土処分計画で、今後問題になりそうなのは、施工中及び供用後の土砂流出や水質汚染などの環境対策である。
(23/08/06)

 最近公開されたリニア新幹線新幹線静岡工区の切羽。静岡工区は静岡県知事の反対で未着工のはずだから、これは斜坑でしょう。工法はNATMで4連ブームジャンボとブームヘッダーによる機械掘削。現在は上半掘削か?
 見る通り水は全く出ていません。それは南アルプストンネルの大部分を占める秩父累帯〜四万十累帯は、海洋プレートが海溝下に沈み込む地帯に出来る付加体で、低角度の衝上断層が発達する。これが地表水の鉛直浸透を阻害する。だから断層の下には水は貯まらない。従ってトンネルを断層の下に設定すれば、水は出てこない。南アルプストンネルの土被りは数100mあるから、トンネルの上に低角度衝上断層が幾つもあって不思議ではない。つまり水は出てこない。
 但し、これら古い断層を斬る新しい(第四期)の断層・・・これらは概ね垂直・・・の周りには水が貯まっていて、一時的な出水はあり得るが、大したことはない。川勝が大騒ぎするようなことは起こらない。
(23/07/14)

 中央新幹線静岡工区で、トンネル地山確認の先進ボーリングが始まりました。早速出てきたのが、このボーリングで出てきた水は誰のものか・・・要するに山梨県のものか、静岡県のものか・・・という不毛の争い。仕掛けたのは、当然静岡の川勝でしょう、と思っていたら、山梨県だったらしい。 トンネルから湧いて出てきた水に所有権はあるのでしょうか?結論から言うと{ありません」。民法では表流水には、その権利・義務は細かく規定されていますが、地下水には一切触れていません。つまり地下水は誰のものでもない。
 これの解釈には2種類があります。第一は誰のものでもないということは、”公”のものである、従ってその採掘や利用は法律の規制を受ける、というものです。これはヨーロッパ流の社会主義思想に基づく。これを敷衍すると、自分の庭に井戸を掘りたくても勝手にはできない。もし井戸を掘って水が出れば、税金が掛かることになる。ではその井戸の保守管理は国の責任になる筈だが、国はそんな面倒なことをやるわけがない。従ってこの説は現実的には無意味である。
 もう一つは、法の規制がないのならその結果・・・利益も損失も・・・は、やったものに帰するという説。どちらかというとアングロサクソン流の解釈です。現在の我が国の地下水行政は、概ねこれを踏襲している。この説に従うと、地下水は掘った者のモノ。つまりトンネルやボーリング湧水は、山梨県のモノでも静岡県のモノでもなくJR東海のモノになります。
 但しJR東海が所有権を主張すれば、末端の排水の処分もJR東海の責任になります。従来のトンネル排水末端処理は、水質処理をした上で、河川放流となります。下水道放流なら、下水道料負担が生じますが、一般河川、特に一級河川であれば国との協議で済むから、県が口出し出来る筋合いのものではない。従来のトンネル湧水処理方法を踏襲すれば良いだけの話である。
 なお、掘った者のモノになるのは、何も地下水だけではありません。金でも銀でも、天然ガスでも、地下にあって金目になるものは、みんな掘った者のモノになります。これがアングロサクソン流のやり方です。
 この手の議論が出てくるたびに感じるのが、関係者がのトンネルや地質に関する無知である。これは専門家と称する土木屋も例外ではない。又、中央新幹線トンネル南アルプス区間では殆ど湧水は無いでしょう。全く無いわけではないが、たいしたことはない。通常の排水設備・・・例えば2t/分程度の水中ポンプ・・・を用いれば十分。
(23/04/28)

 最近話題になるのが、JR赤字路線の存廃問題。今のところ対象になるのは地方ローカル線だ。その中には台風被害で橋梁が流されてほったらかしになっているのもある。予算がないとか何とか云ってるが、本心は全部廃線にしたいから、わざとほったらかしているのではあるまいか。
 今はローカル線だけで済んでいるが、将来同じようなことになりかねないのがある。それは現在建設もしくは計画中の整備新幹線である。そしてここで取り上げたいのは北陸新幹線敦賀延伸である。そもそもこの区間、計画が始まったのは今からおおよそ半世紀以上前。その間ああでもないこうでもないと計画をいじくり回していたが、なかなかルートも決まらない。元々の案は丹後廻り亀岡から新大阪直進だったが、その後、京都タッチ案とか琵琶湖廻り案とか色々あった。急に動き出したのが北陸新幹線東京ー金沢間の開業。これに慌てた大阪維新の会とか、関西財界が敦賀ー新大阪早期開業を言い出した。
 ではどのルートなのか?これがイマイチはっきりしない。本命案は丹後網野廻りだが、こんなルートを作って何の経済効果があるのか。敦賀ー網野ー大阪を三角形と考えると、網野ルートは三角形の2辺を通るものだから、一番距離が長い。つまり一番時間がかかるルートである。一方三角形の長辺を通る琵琶湖周りは一番距離が短い。現在このルートのはJR湖西線があり、特急雷鳥(サンダーバード)が運行している。これは結構便利で利用効率も高い。網野周りの新幹線を作ったところで、誰も乗らない。その結果出てくるのが、湖西線特急の廃止だ。それだけでなく、湖西線を並行在来線とみなして分離だ。湖西線は都市近郊線で、周辺人口も増え優良路線でもある。折角儲かっている湖西線を切り離して儲からないのは分かっている、網野周り新幹線の整備など、とんだタワケごとだ。
 琵琶湖周りには2案考えられる。現在の湖西線はミニ新幹線と云われるように、線形や規格は新幹線並みに作ってある。これを利用し、在来線と共用する。もう一つは別線とし、比良山系の裏側を通って京都に向かう。湖西線利用は大津市内は人口増加で用地・環境問題が無づかしい。後者のほうが現実的だ。比良山系に沿って花折断層という活断層が走っているが、これはルートを北側n寄せればクリアー出来る。網野周りでもルートに直交・斜交する断層は幾らでもある。
 整備新幹線はみんな不採算路線だということは前から分かっている。それに加え、こんな不採算ルートを選べば赤字は更に増加する。いずれみんな新幹線とは名ばかりの赤字ローカル路線に転落し…北海道が既にそうだ・・・新幹線の廃線議論が出てくるだろう。その原因は一部の国会議員・・・無論自民党・・・の選挙区事情が、事業採算性に優先するからである。かつて原敬は、鉄道を自分の選挙区に強引に持ってきて「我田引鉄」と呼ばれたが、今も全く変わっていない。かくてこの国は凋落の一途を辿るのみだ。
(22/12/04) 

 途中で巨岩に出くわして掘れなくなり、迂回トンネルに8カ月を費やした北海道新幹線「羊蹄トンネル」。みっともないったらありはしない。青函・中山に次ぐお粗末トンネルだ。

 工事遅延の原因は工法をシールド(画面)にしたこと。新幹線整備機構は、NATMでは掘削困難と判断したというが、坑口両側の斜面を見ても地山の自立性は十分ある。NATMで何の問題もない。右側の斜面などコンクリートを打っているがこんなのは贅沢。せいぜい法枠+ロックボルトで十分。
 トンネル区間は羊蹄山の山麓。羊蹄山はれっきとした活火山。火山地帯の問題は、地表面はなだらかでも地下に入れば、地山の変化が激しく容易に予測がつかないことである。無論、家ほどもある巨岩・転石があるのは当たり前。岩盤の起伏も激しい。従って工法は地山の変化に対する適応性が高いものが望ましい。
 その点でシールドは最悪である。山岳工法が妥当。又水が出るのは当然。これらの点を踏まえれば筆者なら、切羽はアンブレラ、後方はECL+ロックボルトを推奨する。無論、出水区間については、ウレタン注入などの補助工法*を併用する。
 しかしこの程度の事ならちょっとしたトンネル屋なら誰でも思いつく。何故敢えてシールドにしたのか?摩訶不思議。ひょっとして永田町のどこかから「天の声」でも出たのか?一般ピープルは知らないかも知らないが、工法選定には政治的圧力が加わることは多い。工事発注前にゼネコンを飛び越えて、メーカーが決まっていることなどざらだ。
 これを抑えるためには十分かつ入念な地質調査に基づくデータ・・・最近はやりの言葉でいえば科学的エビデンス・・・で対抗すべきである。機構には火山地質に経験のある地質屋はいないのか?それとも肝心な時に役立たずか。
*昨夜寝ている間に、未固結で湧水のある切羽崩壊対策として、名付けて「水平CCP工法」というのを思いついた。
(22/02/12)

 本日、ネットで奇妙な図を見た。それは静岡新聞が作成したリニア新幹線静岡工区の断面図。JR東海の資料に基づいて作成したものらしい。実際の作成者は元請けである新幹線整備機構、かつての鉄建公団だ。この断面図で、山梨県側から静岡県側へ800mの斜めボーリングをやっていおり、そのうち500mが破砕帯とされている。そしてこのボーリングはコアなしとなっているのだ。
 コアも取らずに何故破砕帯があるといえるのか?そもそもトンネルの調査ボーリングでコアを取らないということはあり得ない。コアを取り、地山を確認することがボーリングの目的だ。コアがないのではない、隠しているのだ。しかし破砕帯があるといっているのだからコアを隠す必要もない。そういえば原発でも、ボーリングコアはコア箱を釘で打って誰でも見えないようにしている。何故こんなものを隠すのか?その理由どころか神経も理解できない。トンネルでも原発でも、掘削すればみんな分かってしまうのだ。隠すから余計に周りから疑いの目を向けられ、余計な手間をかけ嘘をつかなけりゃならなくなる。何時頃からこんな事実隠蔽工作がまかり通るようになったか?それはアベ政権からではないか?あの小賢しいが脳のない長州のイタチが政権を取ってから、みんな何から何まで目先のことしか考えなくなってしまった。一億総忖度社会になった。
(21/12/12)

 リニア新幹線南アルプス工区のどこかの導坑切羽での崩壊。地山岩盤は領家帯の花崗岩だろう。切羽に斜交する節理(画面右上から左下へ)、それに直交する節理、それとトンネルに直交(あるいはやや斜交し切羽面に垂直)する節理があり、この三者が組み合わさって楔を作り・・・切羽左上の崩壊部・・・、それが応力開放で崩壊したと考えられる。
 ポイントは三番目のトンネルに直交する節理である。写真では切羽面ほぼ垂直にたっているが、この面がトンネルに直交する節理である。この表面に何かKい物質が見えるが、これはこの節理に沿う変質物かもしれない。何か熱水活動でもあったのだろうか?崩壊ブロックはKく変色しているが、これも同じ変質物だろう。三番目の節理に平行して、変質帯を伴う断層の存在の可能性がある。
 この先、断層が出てくるかもしれない。もう一度、空中写真を見直した方が良い。地形判読はトンネル調査の基本中の基本だが、誰にでも出来るというものではない。経験とセンスが必要だ。しかしそれに対する評価対価は極めて低い、殆どサービスだ。目に見えない技術への低評価。これが全ての問題の根源だ。
(21/11/10)


 昨日落盤事故を起こしたリニア新幹線瀬戸トンネル斜坑の切りは状態(JR東日本発表)の写真。しかしこの写真、よく見ると疑問点が多い。まず他のテレビ局の映像では全断面で掘削しており、崩壊土砂の量も少ない。
 一方この写真に写っているのは導坑で、テレビ映像と異なる。又土砂の量も多すぎる。別現場の写真を持ってきたのではないか、という疑いが残る。もしこの写真が本物なら、奥にもっと大規模な崩壊(空洞)が生じているはずだ。とすれば、ほおっておくと、いずれ地表に陥没を起こすかもしれない。
 又「肌落ち」という言葉が出ていますが、「肌落ち」は大崩壊の前ぶれで、これが始まれば大崩壊まではあっという間です。直ぐに逃げなくてはならない。
 それとは別に、本件事故の所見は後ほど。
(21/10/29)

 これは今度の豪雨で崩壊したリニア新幹線南アルプス工区の工事用道路(らしい)。急斜面を桟道でとおり谷側が崩壊した模様。崩壊斜面の土質は盛土ではなく崖錐と思われる。2tダンプが止まっているがこれでも怪しい。せいぜい軽トラ級の道路だ。まさか工事用道路としてこんなのを作ったとは思えない。多分以前からあった林道を転用しようと考えたのだろう。JR東海や鉄道整備機構が工事用道路をどのように捉えていたかは興味津々だが、ズバリ言って何も考えていなかったと思われる。
 一般に工事用道路の設計は線形は林道基準を使う。しかし幅員構成や舗装やのり面工など道路構造は別問題で、将来の利用や必要な安全性を鑑み、関連機関と協議の上で作っていくのが当たり前。果たしてどのような協議を行なったのか?
 なおこの林道の所有者は多分静岡県。だから補修義務は静岡県にあるが、何時どのような形でやるかは静岡県次第。それでは間に合わんというのなら、その分JR東海さんが出しなさい、ということになる。世の中そんなものだ。
(20/08/07)

 リニア新幹線が静岡県で揉めて立ち往生している隙を狙って、大阪の吉村が東京ー名古屋間の前に大阪ー名古屋間の先行着手を、ぶち上げた。多分誰もまともには聞いていないでしょう。東京ー名古屋が未通の内に大阪ー名古屋を着手したところで経済効果は全くない。大阪府が全額金を出してくれるなら別だが、てなところだ。そもそも名古屋以西ではルートすらまともに決っていない。それは当時の大阪財界が新幹線計画に無関心だったからである。
 名古屋以西の事業主体はJR西日本になるだろうが、JR西にとってリニア以前に片づけなくてはならないのが北陸新幹線。これも敦賀までは施工中だがその先が微妙。網野ルートになるだろうが、亀岡タッチか二条タッチかで京都/大阪の駆け引きがある。こんな状態でリニア先行着手なんて誰からも相手にされない。これこそ国政とか全国的経済バランスに未経験で目先の利益しか目に見えない大阪維新の政治オンチ、幼稚さのあらわれである。
(20/07/18)

 リニア新幹線の着工が大幅に遅れ、これでは2027年開業は無理とされる。理由は静岡県が静岡県内での着工を認めないから。認めない理由は、リニアトンネル工事で大井川の水量が減少すると考えられる、という一点。ワタクシなどから見れば、@大井川の流域から見ればリニアの影響などほんの僅かで問題にならない、A毎秒2〜3t程度の湧水量など、大井川全体の流量に比べればゴミみたいなもの。それどころか、南アルプスの地質構造を考えれば、湧水は殆ど起こらずJRによる試算は過大値である、となるが、静岡県始め地元がこんな意見に耳を貸すことはないでしょう。
 それはともかく、静岡県始め地元がトンネルを忌避するのには理由があって、それはどうも1984年にこの付近で行われた導水路トンネルで大井川が渇水したことが原因らしい。1980年にイラン/イラク戦争が始まってこれでホルムズ海峡が封鎖されれば日本には石油は入ってこなくなる、さあ大変だあ!と叫んだ連中がいる。誰かというと、竹村健一(故人)*というゴミ人間や文藝春秋というクズ雑誌連中。田原総一郎だって一緒になって吠えていた。この圧力に押されて通産省(当時)と電力業界が進めた事業が原発推進、新エネルギー開発、そして中小水力発電。
 これらの内前2者については説明するまでもないでしょう。三番目について少し説明します。中小水力発電とは出力数万Kwh程度の水力発電所。通常は川の上流に隻を作り、そこから導水路トンネルを通して下流の発電所に遠し、水は本流にもどすというやりかた。
 これだけなら問題はなかったのだが、この時の通産省のやり方は、水を本流に戻さず更に下流に発電所を作り、それを繰り返すというもの。この方式だと当然中間区間での河川流量は減少する。そしてそれは河床低下をもたらし、鉄道や道路の橋脚や河川構造物の基礎がむき出しになってしまった。このため建設省や運輸省の反発を招き、結局取りやめになってしまった。この事業の時も、通産省の役人や電力会社が、地元に対し妙な説明をしていたのではないか、という疑いは残る。これが地元の記憶となって残り、おまけにJR側の説明がヘタクソだから余計混乱を招いたのだ。
 なお事の発端となったイラン/イラク戦争だが、この戦争を通じて、大勢の狼野郎の脅しにも拘わらず、石油の供給は減らず、かえって増加しガソリン価格は下がってしまった。何故ならどっちも石油を売らなけりゃ戦争を続けていけないからだ。
*実はこれにも裏があって、竹村の友人に芦屋に住む石油ブローカーがいた。そのブローカーの肩を持つために竹村がテレビを使って石油危機を煽ったと云われる。その石油ブローカーの娘が現東京都知事小池百合子なのだ。
(20/06/29)

 大阪府の吉村がリニア延伸に関する財界人とのシンポジウムで、南アルプスと違って、三重・奈良ルートは水の心配はありませんと胸を張った。素人とは幸せなものだ。全く想像力というものを持ち合わせていない。これは何となく6年前の東京五輪招致大会で、日本のアベ首相が「・・・8月の日本は最も良い季節です、福島の汚染は完璧にコントロールされている・・・」と大見得を切ったのとよく似ている。
1、中央リニアは今南アルプスでの湧水ー地下水枯渇でもめている。最近静岡県知事が「・・・JRは出てきた水を元に戻せないほど技術がない・・・」とJRを批判。これは静岡県知事が水問題について素人であると同時に、これを説得できない鉄道整備機構の技術力の問題でもある。
 結論を言うと、地質構造上南アルプストンネルでは水は出てこないか、出てきても大したことはないということだ。問題になっているのは大井川の水量低下だろうが、大井川の地下水供給源は膨大なもので、そこにリニアのトンネルを掘ったところで、ラクダのこぶに針孔を空けるようなもの。坑内で水が出ても簡単に止められる。局所的な地下水位低下はあっても直ぐに元に戻る。
2、一方三重・奈良ルートはそうはいかない。このルートは伊勢平野、奈良盆地、河内平野という三つの第四紀堆積盆地とそれぞれを画する鈴鹿、生駒という第四紀隆起山塊を通過する。それぞれの境界は断層、それも第四紀活断層である。
 これら堆積盆地を埋める堆積層や断層破砕帯の透水係数は、南アルプス山地の100倍以上になる。また南アルプストンネルで大量の湧水が予想されるのは、山脈を横切る断層とか小さな割れ目ぐらいだが、三重奈良ルートでの堆積盆地ではほぼ全域に、空隙の多く地下水が豊富な被圧帯水層が分布する。更に盆地と山地との境界を作る断層帯でも、高被圧帯水層が分布する。このルートで最も重要なことは水対策なのである。
 では具体的にどういう問題が発生するでしょうか、奈良盆地を例に取り上げて考えてみます。奈良盆地は東を大和高原、西を生駒山地に挟まれた沖積平野です。盆地内部地下には軟弱な沖積層が、おおよそ厚さ10〜20mに渡って分布する。盆地周辺には標高200m位の丘陵地が発達します。この丘陵は「大阪層群」と呼ばれる第四紀の未固結堆積層からなり、更にこれは盆地地下にも広く分布する。一方大和高原や生駒山地は白亜紀花崗岩からなります。トンネル工法としては生駒山地は山岳工法(NATM)、盆地側はシールド、中間の大阪層群などの丘陵地は補助工法・・・例えばアンブレラ・・・併用のNATMになるでしょう。生駒や鈴鹿花崗岩と大阪層群等周辺地層との関係は「断層」です。これらの断層は盆地東縁では「奈良盆地東縁活断層帯」、西縁では「生駒山地東縁活断層帯」と呼ばれる活断層が発します。これら活断層の周囲には広く断層破砕帯が形成され、そこは高被圧帯水層となっています。
 こういうところに何も考えずに従来通りのやり方でトンネルを掘れば、まず発生するのが陥没です。三年前の福岡市博多駅前陥没事故を思い出してください。それだけでなく、30数年前、北大阪急行生駒トンネル瓢箪山方で、大陥没を起こしています。現地は生駒山地西縁活断層帯の中の生駒断層の破砕帯。よくある話です。
 生駒山地を始めリニア三重奈良ルートには似たような箇所が幾つもあります。無論少々高くつきますが、それを突破する工法・技術はあります。しかしどんな工法を使うにしても、現地の地質・地下水の状況を十分把握しておかなければ只の絵にかいた餅。博多陥没事故がその良い例だ。
 事業主体である新幹線整備機構やゼネコンがこの点を十分理解しておればよいが、昨今よく報道されるトンネル事故を見ると甚だ怪しい。愚かな工法優先主義が代事故を招く可能性は高い。現に名古屋でのリニア発進立て坑掘削工事では、連壁で施工したものの被圧水圧対策を怠ったため、大量の湧水が発生している。これなど地下水を無視し工法優先でやったツケだ。
 何よりも事業誘致者である大阪府知事が、吉村のようなノー天気頭では、危なくて仕方がないのだ。
(19/12/28)

 トンネルズリからヒ素が出てきて大慌ての北陸新幹線中池見トンネル敦賀方坑口。ヒ素発生源のことはよく知らないが、この坑口何か妙なことをやっています。わざわざ大きく掘削して大規模なのり面工をやっている。黒い点はアンカーかロックボルトか。そんなことをするとはこの坑口、もともと問題があった」ように思える。ルート計画のミスか?
 なおこの中池見湿地、昔々大阪ガスが天然ガスプラントにしようと思って手を付けようとしたところ、ラムサール条約該当種が見つかって撤退という曰く付きの場所。鉄建公団もその程度のことは知っていたはずだが、環境アセスをやっていたコンサルがアホだったのか、それとも公団との出来レースか。
(19/07/31)

今週もバカバカしいニュースが一杯出てきましたが、中でもとびきりバカバカしいのを一つ。それは佐賀県内でのJR九州線で、地下水調査のための予備調査としてボーリングをやったところ、それが既設のトンネルを突き抜けてしまったというもの。これだけでもバカバカしいが、JR九州はその言い訳に国土地理院の地形図が間違っていたと、トンデモ理由を言い立てた。何となくこの事件、秋田でのイージスアショア測量事件と同質のものを感じた。
 ここで国土地理院の地図を使った理由だが、そもそもJRにまともな地図が無かった。地元自治体の地図にもトンネル区間は図化されてなかった。そこで国土地理院の地図を使った。多分これは1/25000地形図だろう。1/25000では図上の1pが250m、1mmが2.5mの誤差になる。これは馬鹿にならない。
 まず地形図の有無だが、一般にトンネルでは坑口部地形は実測するが、一般部は実測しない。しかし航空測量は必ず行う。それをしておかなければトンネルをどう通してよいのやら分からないからだ。更に施工中は必ずセンター測量を行う。そうしておかなければトンネルが正しい方向に進んでいるかどうか分からないからである。
 そしてこの結果は必ず保管される。。何故ならセンター位置は供用後の保線作業の基準になるからである。保線屋はこの座標を基準にそれこそミリ単位で軌道を維持管理するのである。つまり軌道の各距離程ごとの座標は正確に記録される
 仮にトンネル区間の地形図が無くても、距離程ごとの座標は分かるから白地図上にトンネル線形を再現することは別に無づかしくはない。そこからセンターから80m離れた位置の座標を読み取り、現地でGPSアンテナを使って位置を決めれば良いだけである。但しJR保有の座標系は古い国家座標系で、GPSが使う国際座標系とは異なるので、その分の補正は必要。しかしこんなことは土木に携わる人間なら基本中の基本。それすらもできていないのがJR九州で、これは秋田イージスアショアの断面を間違えた防衛省とレベルは同じなのである。
 JR九州は責任を国土地理院に持っていきたいようだがこれはとんでもない。国土地理院は地表に露出し目で見えることについてはある程度責任はあるが、・・・ただしこれも限度があって、地図も読めないアホには通用しない。今回のJR九州は当にそれだろう・・・国土地理院地図を読むにはそれ相応の熟練が必要なのである。そういう基礎技術すら、今のJRにはないようだ。
 ここで見られるのはJR九州に見られるように、現代日本土木技術の恐るべき劣化である。こんなことでリニア新幹線は無事に作れるでしょうか?ワタクシには多分無理で、おそらく何処かで引っかかってストップしてしまうのではないかという気がする。それは何処か?多すぎてここだ、といえないのが困る。そもそも名古屋の発進立て坑が湧水で水没しちゃってるから、無事に発進できるかどうかもわからない。品川地下駅など何が起こるか分からないのが実態でしょう。
それだけでなく途中で測量を間違ってとんでもない方向に行ってしまったが、それをチェック出来る人間が誰もいなかったとか。いやいやそれはAIで管理します、というだろうがそのAIがイマイチ信用できない、となればどうする?
(19/07/26)


これはリニア新幹線中央アルプス工区斜坑で発生した陥没孔。これだけ見るとさぞかし難しい工事だなあと思えそうですがちょっと待て。これひょっとすると、ゼネコンが工事費を吊り上げるためにわざと天井を落としたかもしれない。更に工事を請け負っている鉄道建設ナントカ機構(旧鉄建公団か?)もグルになっている可能性もある。昔からよくある手だ。
 あまり信用しないように。
(19/04/10)

 これは名古屋のリニア新幹線名城立て坑・・・非常口と云われていますが、実態はシールドの発進基地・・・の写真です。どっちみちゼネコン(大林組)のPR写真。たまたまネットを見ていると、この立て坑で湧水が発生し、掘削高50mの半分ぐらいが水没し、ここ数カ月間工事がストップしたという報道があったのでDLしてみました。
 原因は要するに設計が無能か施工が下手なのです。2年程前、ここから2qほど離れた押切公園内でも、名古屋市上下水道局が施工した下水道立て坑工事で陥没事故を起こしています。また他にも推進工事で陥没をおこしている。名古屋市の地下は地下水位が高く、深部では高い被圧水圧が作用していることを官民共に理解していないようだ。特に名古屋大学土木が駄目だ。
 写真から判断すると工法は地中連続壁。大林組だから多分OWSだろう。縦型カッターで地盤を溝状に掘削し、その中にRC壁体をつくるものである。既に施工実績も多く成熟した工法である。
 それが何故湧水で止まってしまったのか?多分連壁の先端が不透水層に十分根入れされていなかったか、底盤薬注を怠ったため、地盤のパイイピグを起こしたかです。なおパイピングが起こるかどうかの計算は、地盤の被圧水圧分布*を正確に把握しておけば、後は小学生の算数です。
 事前の地盤調査(地下水調査を含む)を十分にやらなかったか、やっても設計・施工の段階でそれを無視したのでしょう。大林組は過去にこんな失敗を何度も経験しているので、やり方は分かっているはずだが何故繰り返すのでしょうか?リストラのやり過ぎでベテランがいなくなり、技術の継承が出来なくなったのでしょう。その代わり女子大生に手を出す技だけは身についた。
 地盤調査などやってもやらなくても施工で全部カバーできるわい、という思い上がりがこういう事故を招いたのです。リニア新幹線は名古屋市内でも大部分はトンネル(シールド工法)で通過するが、発進部でこれでは先が思いやられる。施工業者を変えてはどうか?
 では果たしてづいう対策が望ましいでしょうか?なんでもそうだが問題が生じた時大事なことは、その問題が周辺に波及することを防止することである。この件の場合、原因は連壁先端地盤でパイピングをおこしたことで、その原因は先端の地下水流速が限界を超えたことである。この状態を放置したり、ましてポンプでくみ上げたりすると、更に地盤を緩め、最後は周辺地盤の陥没を起こすことになりかねない。とりあえずやらなくてはならないのは地下水の流速を抑えることである。つまり何処からでもよいから土を持ってきて立て坑に放り込む。この荷重で地下水を流速を抑え、詳細な対策工法はそれから考えればよい。まずは現場を落ち着かせることが重要だ。つまり対策は、通常は坑内に土砂を投入して一旦湧水を抑え、地下水の流れを安定化した上で、薬液注入を行うか、立て坑周辺に深井戸を掘って被圧水圧を低下させるかです。
*この測定は結構難しく、金もかかる。何よりも地下水に関する土木屋の認識の甘さが邪魔をする。
(19/03/16)

 逮捕された大成元常務の後任が談合を認識していたという報道(本日毎日新聞)。但しこれは検察からのリークだから、どこまで本当かは分からない。ネットの書き込みなどを見ると、このような巨大プロジェクトは高度な技術力を持つ四大ゼネコンでなければ出来ないとか、民間工事なんだから談合には当たらないとか、一般ピープルはゼネコンに対し随分甘いと思う。
 ここで技術力云々だが、皆さんは彼らが凄いノウハウを持っていると思っているようだが、中身は大したことはない。四大ゼネコンの内、少し具合が悪くなると大林は直ぐに泣きを入れる。鹿島・大成は政治家を使って脅しを掛ける。まともなのは清水ぐらいで、その清水が談合だと云っているのだから、やっぱり談合なのだろう。トンネルに関して言えば、間・熊谷・飛島・奥村といったいわゆるトンネル屋の方が上だ。
 JR東海が何故4社に限って施工検討を依頼したかというと、JRにはもはやこんなプロジェクトをこなせる人材がおらず、そこで技術力・資金力に優れた4社を選んだという。しかしこの4社もバブル崩壊後、経験のある土木屋・・・特にトンネル部門の技術者中心・・・を狙い撃ちにしてリストラした。だからJRと同じように彼らも劣化していったのである。だから当初談合ではなく技術情報の交換だと言い張ったのは、自社だけでは要求に応えることがことが出来なかったからである。
 トンネルの施工技術はみんなオープンにされ、且つ成熟している。今度のような大工事であればあるほど、実績のあるオーソドックスな工法が選ばれる。海のものとも山のものとも分からない新奇な工法を使って、事故でも起こされれば元も子もない。だから大勢集まって、あれこれ言う必要があるとも思えない。
 一番勘違いしているのは、JR東海ではないかと思われる。この会社、何でもかんでもゼネコンに持ち込めば、なんでもやってもらえると思い込んでいる節がある。 更にゼネコンが、発注者の”お願い”をなんでもペコペコひきうけてしまうことが問題である。その一例が南アルプストンネルの地質調査である。
 あろうことかJR東海はこれを大成に委託したらしい。しかし大成は土建屋であって地質調査には素人である。どうするかというと、三割ほどはねて、出入りのコンサルあたりに丸投げする。これも素人だから、やっぱり三割はねて専門業者に丸投げ。この会社が大手の調査会社ならまだマシだが、中には聞いたこともない会社が請け負うことがある。金額も末端では当初予算の1/3ぐらいになってしまう。つまりみんなで寄ってたかって、予算を食い物にしているのである。これでは手を抜かざるを得ない。これを避けるために公共事業では、設計・調査は施工(ゼネコン)と切り離して発注するのである。このように自分の領分でもないことまで引き受けてしまうには、何らかの下心があるに違いないと疑われてしまう。
 このように甲乙のけじめがついていないことが、現代日本土建業界の最大の病根である。今回の談合事件の背景には、発注者であるJR東海の責任も大きい。そういう体質を作ったのは経営者である。東海の経営トップの葛西はアベ晋三の最大のタニマチ。アベのけじめの無さは森友・加計問題でも明らかだが、リニアにも現れてきた。
(18/03/05)

 

 リニア新幹線談合疑惑で、大成の常務とカジマの部長が逮捕されたが、この程度で終われば事実上の指揮権発動だ。そもそも国費3兆円を投入する巨大プロジェクトの談合が、たかが常務と部長だけで仕切れるわけがない。談合の指示はズーット上から、おそらくはJR東海のトップあたりからだ。
 そういえばJR東海トップの葛西は、人も知るアベの取り巻き。無論、葛西がこんな汚れ仕事を直接指示するわけはない。JR東海幹部にそれとなく匂わせる。ゼネコン連中は幹部の言の葉から葛西の意向そしてその背景にあるアベ政権の意向を忖度して、ことに奔ったのだろう。どちらかというこういうことにやや疎い大林が、早くも脱落したのが予定外だった。
(18/03/02)

 東京地検が大成建設本社から、常務私邸更に社員寮まで家宅捜索し、隠匿資料を押収。常務は「罰金を伴う守秘義務にかんする技術的資料」と説明するが、常識的に考えて、こんなことはあり得ない。
1、民民の契約で「罰金を伴う守秘義務」とは穏やかではない。工事契約で罰金(ペナルテイー)を科すケースはあるが、大抵それは工期の遅延とか、事業者の承諾を得ない設計変更で当初予定されていた機能が発言できなかった場合である。
 又守秘義務とは誰に課したものか?この常務個人か、それとも大成建設に対してか?常識的には前者はあり得ない。後者ならそうい重要書類は本社内の別室の金庫か何処かに格納しておくものだ。ところが地検の捜査が及ぶという情報が入ると、最初は常務私邸、次いで社員寮へ移すなど、中身は見られては困る内容が含まれていると考えて当たり前。
2、技術的秘密情報とは
 トンネル工事(だけでなく土木工事全般)に、技術的秘密など存在しない。技術的には「トンネル標準仕方書(トンネル技術協会)に従わなければならない。そうでなければ国交省の認可どころか労災認定もうけられない。つまり何処にも技術上の秘密が存在する余地はない。従って、大勢常務の説明は嘘である。つまり大成は限りなくクロに近いグレーである。
 検察が押収した資料の中には、落札に至る経緯やゼネコンだけでなくJR東海側の様々な要望も含まれているはずである。中には公に出来ないこともある。
 総額ン兆という大事業の談合がゼネコン4社だけで出来るわけがない。おそらくはJR東海、それもトップクラスからの指示があったはずだ。問題発覚後のJR東海側の妙な落ち着きぶりも気にかかる。
 筆者が推測するに、この談合事件はJR東海トップの示唆による一種の官製談合で、鹿島・大成が主導し、大林・清水はそれに追随しただけではないか。
(18/02/08)

 リニア談合事件で、大林を除く三社が談合を否定するという意外な展開。各社は4社による工区割りを、正常な営業活動の結果だと主張。この工区割りが4社による談合の結果でなかったとすると、上からの指示、つまり官製談合ということになる。誰が指示したのか?筆者はJR東海会長の葛西が一番怪しいとおもっている。何故なら、彼はこの問題が発覚してからも、一切表に出ていないからである。
 そもそもこの4社の営業担当者は、談合の意味を分かっていないのではないか?これら営業担当者はせいぜい執行役員部長級で、本人には談合の意識はなく、受注調整や工区割りなどの具体的な行為はなかったかもしれない。そもそもの発端はJR東海の某役員が大成の暴役員へ工事予算情報を流したという内部告発から始まったのである。
 これ自身公正取引法で禁止されている競争入札妨害に該当する。つまり入札予定価格が発注者から一部の受注者に伝わっておれば、その受注者は他の受注希望者に対し圧倒的に優位に立てる。これが公取法違反なのである。偶然かどうか知らないが、昨年度発注工事は全てゼネコン4社で決まってしまった。何故か?4社間での話し合いはなかったかもしれないが、JR東海トップと各社との話し合いがあったのではないか?それぞれの希望に沿って東海側が発注工区を調整したのなら、これもアウトである。
 それと不思議なのは、何故こんな原始的というか幼稚なやり方をしたのでしょうか?普通の公共事業なら公募制競争入札で、落札予定価格が公表される。その下で各社が競争するのである。ところが今回は公募制とは名ばかりで、現実には一社指名の随意契約。JR東海は落札予定価格を公表すると、それが他の工事価格に影響すると説明。こんなバカな話はない。世間では落札予定価格公表が普通。それで何の問題も起こっていない。単価など発注工事毎に変えればそれで済む。神戸市はある工事の最低落札価格を参考に、単価を変えていく・・・つまりどんどん安くなっていく・・・から、業者は油断できないのである。
 そもそもこんな簡単なことも分からないのは、JR東海という会社が技術力を失っているということである。その原因は旧国鉄の民営化である。特に土木系中でもトンネル屋はみんなリストラされてしまって、何も残っていない。こんな会社があんな長いトンネルを掘れるでしょうか?自分に自信がないから、結局はゼネコン頼みになってしまうのである。
 本来は中間にコンサルを置いて、コンサルによってゼネコンをコントロールするのが筋だが、何かあった時コンサルは弱小資本だから頼りにならない。記者会見から監督官庁への報告・地元説明等全部を発注者が被らなくてはならない。一方ゼネコンを絡ませておけば、そういうややこしい仕事はゼネコンがみんな引き受けてくれる。数年前のJX水島トンネル陥没事故でも、テレビにでてきたのは発注者であるJXではなく、受注者のカジマだ。JRはその手を考えて居るのだろう。それより工事区間の8割りがトンネルというのに、熊谷、間、奥村と云ったトンネル屋が外されているのはなぜか?技術は彼らの方が、いわゆるビッグ4より上だ。足りないのは政治力だけだ。
 但しゼネコンに任せておけば、JRはのんびり出来るだろうが、最終的にはものすごく高くつく。トンネル本体は概ねNATMでやるだろう。これの積算体系はすでに確立されているので、たいして遊びはない。その代わりゼネコンは補助工法で稼ぐのである。例えばやらなくてもよい薬液注入とか、無駄なロックボルトやパイプルーフなどである。その付けが設計変更の請求書で回ってくる。トータルとして1兆円ぐらいは目論んでいるのではあるまいか。当初から出ている大量湧水などの工事困難宣伝は、そのための伏線だ。問題は今のJR東海には、その適否を判断できる技術的ノウハウが残っていない可能性があるということだ。
(18/01/18)

 リニア談合が見つかって、JR東海の社長が会見。「今後工事発注方法を見直します。しかし基本は変えません」。この社長、事態の重要さが全く分かっていないようだ。その点では、貴ノ岩騒動での日本相撲協会と何もかわらない。
 もともとリニア東京ー名古屋間建設費はJR東海が全額負担でやるはずだった。ところがいつの間にか、政府資金でおおよそ1/3の3兆円がつぎ込まれることになった。これJRが要請したというより政府が無理やり押し込んだと云われる。いわゆる押し貸しという奴である。何故か?政府予算のあるところ利権あり。JR東海単独事業では政治・官僚利権にはならない。それでは困る。なんとかせねば、というわけで政治家が間に入って、3兆円分の利権がゼネコン並びにそれに関わる自民党利権に化けたのである。
 大雑把に言えば公共事業の場合、全体工事費の内土木にかかわるのが1/3、用地及び周辺整備費が1/3、設備に係るのが1/3という割り振りである。リニア建設費の内トンネル建設費が土木とすれば、国庫補助金枠と丁度一致する。つまり問題になっているトンネル工事費はまるっぽ国費だということだ。そこに談合が行われていたとすれば検察もだまっていられない。これだけの巨大利権、とてもJR東海という田舎会社のトップからだけとは思えない。おそらく官邸の奥深くからの意図によるものだろう。今回特捜が入ったのはそういう背景があるのだ。森・加計やスパコン汚職とは比べ物にならない、一大疑獄に発展してもおかしくない。
(18/01/02)

 昨年終盤に出てきたリニア新幹線談合。計画発表前にゼネコンが工区割りを決めていたという報道。しかしこんなの当たり前なのだ。工区割りから工法指定まで、全て整ってから計画発表なのである。そういえば今から20数年前、大阪JR東西線築造工事。ある時大林組本店土木設計部にいったら、設計部長は「工法検討どころかウチはどこ(の工区)を取ればもうかるかでもめとるよ.」と大笑い。世の中そういうものなのだ。無論その背景に大物政治家がいることは云うまでもない。
 今回のリニア談合、追いかければ間違いなく政権トップに行き着く。これが分からないようではジャーナリストではない。JR東海会長は永年アベ晋三の支援者だったのは有名な話。
(18/01/01)

 日本の四大ゼネコンが絡むリニア新幹線談合事件。当初JR東海の社員が、工事予算を大林組の誰かに渡していたことが発覚したことから始まった。JR東海の社員とは何者か?普通の人なら課長かせいぜい部長ぐらいと思うでしょう。しかしリニア談合に関わる巨大予算をこんな中堅や末端が知っているわけがない。おそらくはJR東海の相当上のレベルの人物と思っていた。そういえばJR東海の会長・・・名前は忘れた・・・はアベ晋三の強力な支援者。この辺りから情報が漏れたか?
 折も折、JR東海の元常務(故人)が大成の元常務に情報を漏らしたという疑惑。随分都合よく死んでくれたものだ。死人に口なしでこの世界、何か古い情報(大体ヤバイ)を貰おうとすると、本人はもう死にましたという返事が返ってくることが多い。もっともワタクシもその手を使ったことがあるから、他人のことは言えない。だからよく分かる。なお情報を受け取ったとされる大成元常務も、今は元がつくだけで受け取った時は現役のバリバリでしょう。
(17/12/26)

 これは先日公開された中央新幹線の山梨/長野工区の作業抗(斜坑)の状況。一見大丈夫そうに見えるが、良いところだけを見せているのだよ。一番手前は二次覆工コンクリート、その先に見えるのは一次覆工の鋼アーチ支保工。一番奥に見えるのはブームジャンボ。
 断面形状は道路屋の目からは今一.。ズリ出しを考えれば、幅員をもう少し広げ作業車の離合を円滑に出来るようにした方が坑内事故を防げる。そのかわり天を端もう少し下げなければならないが、これは天端補強でどうにでもなる。先受けボルトを入れる場合でも、その方がやりやすい。

(17/09/06)

 リニア新幹線の工事について色々問題点が指摘されています。今の所マスコミレベルで出ているのは次の2点です。
1)トンネル掘削で発生する残土処理
2)トンネル掘削による地下水位低下と環境への影響 
 ワタクシは他にも色々あると思うが、世間はあまりこれに注目していない。ここではとりあえず上記2点についての所見だけを述べておきましょう。
1)トンネル掘削で発生する残土処理
 トンネル掘削で出てくる残土量は約6700万m3。一般人は物凄い量と思うでしょうが、これは関空一期工事分の約半分に過ぎない。これをどう処理するかは当然JR東海が責任を持つはずなので、筆者のような部外者が口出しすべき課題ではない。
2)トンネル掘削による地下水位低下と環境への影響 
 マスコミレベルでは、南アルプス始め巨大山脈を通過することから、かなり大量の湧水が発生すると報道されている。JR東海の湧水量予測手法がどのようなものか明らかではないのでなんとも云えないが、多分旧国鉄方式ではないかと思われる。だとすれば相当の過大値を与えている可能性がある。この方法は地山地質を均質と考え、地下水位は地表面近くにあり、トンネル掘削後の地下水位はトンネルに対し放物線状に変化するものと考えるのである。又計算の前提値として比流量の正確な測定が必要である。トンネル掘削高(以下土被りと言う)が小さい局所的変化であればこれでも構わないが、土被りが大きくなったり地質構造が複雑な場合はこの方式は適用出来ない。
 リニアルート通過区間での大きな山脈といえば、南アルプスの赤石山系、次に中央アルプスを作る木曽山系である。この中でも赤石山系はこれまで大きなトンネル工事もなく、そこに土被り1000数100mというトンネルは、いわば未知の領域なのである。従って、湧水問題もこの山系の突破に集約されるだろう。
 筆者の結論は水は出ないとは云わないが、それは予測値を遥かに下まわるだろう。つまり殆ど水は出ず環境に与える影響は・・・・坑口近くの一部を除けば・・・殆ど無いということだ。何故こういう結論になるかというと、当該ルートの地質構造を考えればそうなるのである。赤石山系は所謂西南日本外帯に属し、それを作る地層は主に白亜系四万十層群および古第三系瀬戸川層群。これはいずれもプレート付加体であって、プレートがユーラシア大陸下に沈み込むところに出来た雑多な土砂の集積体(メランジ又はオリストストローム)である。プレートの押し込みによってこの中には低角度の逆断層(衝上断層)が発生する。南アルプスではこれは主に西傾斜の低角度断層となる。
 さてリニア新幹線は概ねこの構造に対し、直交或いは急角度で斜交する関係で交差する。この低角度断層は何本もあり、従って土被りが大きくなると、トンネルの上には幾つもこういう断層があることになる。さて、トンネルを掘ったときに発生する湧水の起源は何かと言うと、土被りが1000数100mぐらいであれば、殆どが雨水・降雪などの季節水です。これらの季節水は一旦低角度断層の上に滞留するがその後次第に側方に流出していき、直下には流出しないのである。つまり南アルプスほど土被りが大きければ、トンネルの上には幾つも低角度断層があり、それはあたかも傘が被っているようなものである。だから湧水は殆ど無いといってよいでしょう.。これは何も山勘でいっているのではない。筆者が関係した国道169号伯母谷第一トンネルとか四国の寒風山トンネルが当にそうだった。と言うことで外帯特に四万十帯では土被りが十分大きければ湧水はさほど気にしなくても良いというのが結論である。
 一方こういう断層は数千万前に出来た古い構造である。第四紀に入って南アルプスは急速に隆起を始めた。これは主にフィリピン海プレートの押し込みによるものである。この結果これによる新しい断層が発生する。これは赤石山系では主にN-S方向、垂直の断層である。これによる地表水の引き込みがあり、局所的な湧水が発生する可能性は大きい。上で例に挙げた伯母谷第一トンネルでは、低角度断層の下では湧水もなく工事も順調にはかどったが、一部に新しい高角度断層があり、そこからの湧水が見られた。これはトンネルルートの外側の沢水の引き込みと考えられる。この種の水は量的には大したことは無いが、土被りが大きいと高い圧力を持つ。この圧力によって切り羽が返るというケースはあり得る。この圧力をどうするか、抜くべきか抑えるべきかいろいろ議論はある。
 以上は本抗の話だが、距離から見て何箇所か斜坑を入れて工区分割をせざると得ないと思われる。上で述べた赤石山系の地質構造の特徴から、この斜坑やアクセス道路の仮設で、異常湧水や地すべりなど思わぬ事故が発生する可能性はある。こういう場面の対策こそ筆者の最も得意とするところだ。
3)問題は他に
 上で述べたように赤石山系を作る地質は白亜紀から古第三紀に懸けてのプレート付加体。この種の地質は主に泥質基質をベースに、砂岩やチャート・玄武岩など様々な異地成岩石が混入したランダムなもの。しかしプレート沈み込み方向で規制される一定の構造は持っている。こういうところに1000数100mと言う土被りで掘削すればどういう現象が発生するか?トンネル周辺には大きな応力集中が発生する。まず砂岩やチャートなど硬質塊状岩石には脆性破壊という現象が起こる。これは所謂「山はね」である。これが発生すると、収まるまで待っておくしか方法はない。次に泥岩および泥岩優勢オリストストロームの場合だが、ここでは「山はね」現象は起こらない。その替わり泥岩部分における箭断変形が大きくなり、内空変位がなかなか収束せず、これが工程の足を引っ張る可能性は大きい。対策としては切り羽の早期吹きつけが挙げられるが、場合によっては長尺ロックボルトによる切り羽補強も挙げられる。土被りが大きく岩盤強度も上がっているのに切り羽補強とは矛盾だが、工程確保という視点では止むを得ないかもしれない。
 付加体のオリストストローム中には、クラストと呼ばれる砂岩の塊が存在する。この中には直径が数10から数100mに及ぶものがある。これは塊状で硬質だから、土被りは数100m以上になると、「山はね」と呼ばれる脆性破壊を生じる可能性がある。これは一旦始まると、応力が再均衡するまで続くので切り刃はストップだ。対策としては@事前の地質調査で「山はね」が起きそうな区間を予測する。、AAEか何かで、地山の応力変化を計測する。B「山はね」区間の手前からケーブルボルトか何かで天端を引っ張っておいて(プレストレスを与える)その下を掘っていく、南アフリカのダイヤモンド鉱山ではこの手でキンバライトのなかを掘っている。
(15/06/30)

 
リニア決定で、日本中大騒ぎだ。ワタクシはバブル崩壊後の90年代不況の時こそ、リニアをやるべきだった、と考えている。それをやっておればその後のようなデフレは無かった。第一次大戦後バブルが潰れた昭和不況時こそ、満州などに行かずに列島改造をやるべきだった。そうすれば対中米戦争はやらずに済んだ。経済政策は同じことでも、タイミングを間違えば全く逆効果を生むという例。
(13/09/20)

 リニア大阪ルートでいまだに京都タッチ案が残っている。そもそもの中央新幹線ルートは奈良ルートだったのが、ある時京都タッチ案が出てきた。ワタクシがそれに気が付いたのは、未だダイヤコンサルタントにいた今から25年程前。隣の部署が北陸新幹線の地質調査を担当していたが、その中に、とってつけた様に琵琶湖南部地域が入っていた。そこでヒョットという気がしたのである。その後、ある会合でゼネコンに行っている大学先輩から、リニアのルートは判らンかと囁かれた。そこでワタクシは、ヒョットして京都タッチもあるかもしれん、と囁き返した。お互い技術士同士だから(守秘義務が懸かっている)、大きな声は出さない。
 段々生臭い話しが表に出てきそうな具合です。
(13/09/19)

 リニア新幹線東京ー名古屋間の駅候補地が発表されました。25年程昔、大林の本店土木設計部に行ったら、土木営業の誰やらがやってきて、「東京ー大阪間500qを50工区に分割して、そこへゼネコン50社を割り当てれば、リニアなど10年で出来る」と云ったものだから、設計部長が「もの凄い計算するなあ!」と吃驚したのを憶えている。
 それはともかく、リニア新幹線を長いアンテナと考えると、リニアが通る度に周囲に超低周波の地電流が流れる筈。これを観測する事により、中部日本特にフォッサマグナ周辺の深部地下地質構造、特に地熱構造がより詳しく判るようになる。無論、地震予知にも使えます。
(13/09/18)