日本は核武装出来るか

技術士(応用理学) 横井和夫
                                                                      


 数日前石破が日本の核装備は周辺紛争の抑止力になるなどと、妙なことを言い出した。そういえば数年前、河野太郎や石原シンタローが日本は三か月もあれば核兵器を作れる、などと訳の分からないことを言っている。
 さて最近この種ゲンキ発言の震源地が見つかりました。それは昨日、ネットでたまたま見た「原爆は3億で三か月で作れる」という記事です。記事の作者は名前は忘れたが、東京工大の先導原子力工学科の教授という人物。先導原子力工学とは何者かよくわからないが、今の文科省はネーミングに先端とか先進とか、とにかく先がつけば予算を付けるらしい。
 この教授の言い分をネットで読んでみたが、あまりのアホらしさナイーブさにコピーするのもやめた・・・紙とインクの無駄使いだから。ずばりこの教授は研究室学者の典型で、その内容も大学院生のレポートのレベル。それはともかくこの教授・・・とりあえずAと呼んでおこう・・・のアホらしさぶりを見てみよう。
 一般に、ある製品を市場に送り出すためには少なくとも
1、基礎技術
2、製造技術
3、材料の調達と性能評価
 の3段階をクリアーしなくてはならない。
1、基礎技術
 これは核開発においては核分裂とそれをコントロールする理論及びその装置の設計である。基礎理論そのものは100年以上も前に出来ており、設計技術も80年近く前にはできていた。今から30年ほど前に、アメリカのある学者が「原爆の設計など大学院生でもできる」と発言している。ことほど左様に核兵器理論は既に一般化成熟化しており、少し物理や化学に関心のある高校生なら直ぐに理解できる。難しいところは何もない。
2、製造技術
 Aは核兵器製造に関する技術及び運搬手段についても、日本は既に保有しているという。それは確かにその通りだ。例えばウラン濃縮に不可欠な遠心分離機とか、弾頭の製造も原発炉心格納容器製造技術を使えばそれほど難しくはない。運搬手段についてもイプシロンロケットを使えば可能だ、という。ただしイプシロンを開発したのは東大だ。東大は科学技術の軍事転用には慎重で、おまけにライバルの東工大があれこれ言うなとくぎを刺してくるだろう。
 Aがイメージしているのはプルトニウム型爆弾だ。このタイプの欠点は構造が複雑だということである。まず中心に核分裂の種となるラジウムを置きその周りをポロニウムで覆い、その外にプルトニウム、最外郭にTNT爆薬で覆う。しかもこれを真円球の形で整形しなくてはならない。至難の業と思うだろうが、実はこれサッカーボールを作る技術があればできるのである。北朝鮮やイランなどサッカーの強い国が核開発に取り組んだ理由ガわかる。つまり原爆は美津濃で作れるのである。
3、材料の調達と性能評価
 例えば製鉄所を大枚かけて作ったとしよう。しかし肝心の鉄鉱石が順調に購入できなければ、製鉄所は動かない。また、せっかく作っても、出てきた鉄がろくでないものだったら、ユーザーから見向きもされなくなる。
 後者の例は今の神戸製鋼だが、1950年代中国で行われた大躍進での土法高炉とか、その後北朝鮮で行われた千里馬運動、さらに古くはスターリン時代の計画経済などまさにこれで、製造者ファーストで品質など見向きもされなかった。
 さてA教授は日本には40tのプルトニウムがあるから原材料としては問題はないと述べる。Aが本当に原子力工学の専門家かといいたい。これにはAは次の2点で嘘をついている。
1)日本が保有しているプルトニウムはIAEAの監察を受けている。何よりもアメリカ政府による監視下にある。つまり、わずか1グラムでも日本政府の勝手には使えないのである。もし自由に使いたければSALT(核不拡散条約)から脱退しなければならない。ところがSALTはもともと日本が主導してきたいきさつもあり、今更脱退では日本はダブルスタンダードと国際的非難を受けるだろう
2)A教授は日本のプルトニウムの爆発性は軍事用のそれの5割りから6割りしかないから不発の可能性があるとする。ここまでは本当だ。核兵器の爆発とは短時間における持続的核分裂である。これは中性子の供給と二次生産が不可欠である。プルトニウムの生産は原子炉(原発)で行われる。日本の原発はほとんどが軽水炉で減速材に水を使う。そのため中性子吸収量が少なくなり、いわゆる”軽いプルトニウム”しかできないのである。ということは、現実は不発の可能性があるどころか、スカスカの安物ばっかりで全く役に立たない。
 そもそも兵器というものは戦場で確実に機能するものでなければならない。種子島の火縄銃ではあるまいし、不発の可能性がありますよと言われて核兵器を使う馬鹿軍人はいない。種子島に火縄銃が到来しても、なかなか日本には普及しなかった。それは当初ポルトガル人が持ち込んだ銃が、中国南部でコピーされた粗製乱造製品だったから、命中率は悪く不発が頻発したからである。
 もう一つA教授が誤魔化しているのは、3億、三か月でできる核兵器とはどの程度のものか明確にしていない。唯一仄めかしているのは、北朝鮮の核一発に対し百発ぐらいいるでしょうねえ、といっていることである。これまでの核実験から見ると、北朝鮮保有核爆弾は概ねTNT換算で30〜40Ktである。ということは東工大製核爆弾は概ね0.3〜0.4Kt。核兵器としてはおもちゃのレベルである。ということは北朝鮮保有核兵器に対抗するには数100発が必要で、かつ運搬手段も数100基は必要だということだ。少なくとも1000億以上のコストがかかる。その結果が不発が必至のおもちゃでは話にならない。
 おもちゃと云っても問題がないとはいえない。それが核実験の件である。プルトニウム型の場合、避けて通れないのが核実験である。日本の問題は核実験をどこで行うかである。A教授は日本列島を見渡し適当な実験場はないとし・・・ここまでは正しい・・・小笠原諸島南端の南鳥島を挙げた。ここなら反対派もやってこれないだろうということか。
 しかしA教授は南鳥島を淡路島とか他の普通の島と勘違いしている。南鳥島は伊豆ー小笠原−マリアナ島弧に属すれっきとしたる生きた火山島である。A教授はこの島でどのような核実験を行おうとしているのかよくわからないが、通常は竪坑を掘って核実験材料を設置し、爆破するというものだろう。ところが火山島ということで深くなると、高温と火山ガスの噴出で掘れなくなる。その限度はよく明からないが、最悪で数10m、良くても200〜300mが限界だろう。この程度の浅さで核実験をやるとどういうことになるか。南鳥島を作っている岩石は玄武岩質のハイアロクラスタイト(水冷破砕岩)と呼ばれる岩石である。海底火山活動で盛り上がってきた玄武岩質マグマが海水で急速に冷やされ、ばらばらになった状態のものが海水中の有機物や石灰分で固まっただけのものだ。
 こんなところに例えおもちゃと云ってもTNT爆薬300〜400tを爆発させればどうなるか。海中の山体はばらばらになり放射性汚染物質が海中に拡散する。北朝鮮核実験場は先カンブリア紀の花崗岩または片麻岩で、第四紀のハイアロとはわけが違う。それだけではない。鳥島がバラバラになって、なくなってしまえば、「島」として認定できず、日本は周辺の膨大なEEZを失ってしまうのである。鳥島周辺に漁業権をもっている漁業組合にとっては大問題、管轄する東京都だって黙っていられない。それより鳥島に隣接する米領マリアナ諸島は観光で食っている。問題は東京都だけでなくアメリカワシントンまで波及するおそれがある。

 以上述べたように、東京工大発核爆弾は性能的にはおもちゃのレベルにすぎない。この教授のような学者・技術者をいわゆる実験室研究者あるいはTextBook Like Engineeerあるいは世間を見ないInner Site Engineerとよぶ。この種の人物はいつの世もどの世界にもいる。問題は現在日本の政治家やその近傍にいる人間が、この程度のまやかし人間にたぶらかされて可能性があるということだ。
(17/11/16)

明日8月8日は、64年前ソ連の対日宣戦記念日。このことを、政府もマスコミも何も云いませんねえ。なお、本日ロシアは、北方4島への日本側人道支援拒否を通告。第二の対日宣戦布告のようなものです。
(09/08/07)


昔「マンハッタン計画」という実録映画があった。日本で劇場公開されたかどうかは知りません。筆者は20年ぐらい前にTVで見たことがある。おそらく、原爆開発と日本投下までの内幕を、最も忠実に描いた描いた作品と考えられる。
映画の後半、果たして原爆を日本に投下すべきかどうかを議論する会議が開かれる(ドイツは既に降伏していた)。参加者は大統領のトルーマンと、今次大戦を主導した8人の将軍・提督。賛否の分布は次の通り。
賛成 反対
陸軍 アーノルド(陸軍航空隊司令官) 史上初の原爆投下は陸軍航空隊にとって名誉である アイゼンハウワー(陸軍参謀総長)
ブラッドレー(同次長)
マッカーサー(米極東軍総司令官)
マッカーサーを除く三人は、日本の経戦能力は限界に達しており、これ以上の破壊は無意味である。
マッカーサーは原爆の助けを借りて戦勝を得るのは自分にとって不名誉である。
海軍 リーヒ(統合参謀会議議長)
キング(海軍作戦部長)
ニミッツ(太平洋艦隊司令長官)
本土上陸作戦にはなお日本軍の
抵抗が予想される。これ以上の米軍犠牲者の増加は容認出来ない。
スプルアンス(機動部隊司令長官)
4人 4人
 賛否同数だから最終判断はトルーマンに委ねられる。ここに意外な電報がロンドンから入った。発信人は前参謀総長で、今は駐英大使になったG.マーシャル将軍。当時、ヨーロッパ正面では深刻な事態が進行中だった。同盟国だったソ連がヤルタ協定を無視して、旧ドイツ占領地域にソ連軍を進駐させ、勝手に親ソ政権を樹立しだした。これをソ連による新たな侵略として、例えばパットンなどは対ソ予防戦争の必要性を広言する始末(これで彼は陸軍をクビになって、元帥になりそこねた)。更にチャーチルも対ソ脅威論を展開する。戦後の米ソ冷戦が既にヨーロッパでは始まっていたのである。マーシャルという人物は、作戦を純軍事的意義より、政治的効果を優先して考えるタイプである。マーシャル書簡の結論は、「ソ連のこれ以上の西欧への拡大を牽制するために、原爆を有効利用すべき」。これでトルーマンの腹は決まり、日本への原爆投下が決定された。
 では果たして効果はあったでしょうか?広島投下翌々日、8月8日にソ連は対日宣戦布告、一ヶ月で満州と千島・樺太を占領し、9月には朝鮮北部を抑えてしまった。更に翌年にはベルリンを封鎖し、対決姿勢を強めてきた。ソ連の様な、全体主義独裁体制下の国では、資本主義・民主主義国家に比べ、国民の値段が安い。つまり、大量破壊兵器で人民を幾ら殺したところで、大して牽制効果はない。人民など幾らでも沸いてくるからだ。
 現在の日本にとって最大の脅威は云うまでもなく北朝鮮である。あの国の人民の値段は日本に比べ幾らでしょうか?現在、日本にも対北核保有を主張する勢力が増えている(例えば田母神のように)。しかし、上で述べた理由から、北朝鮮のような国に対し、核には核をという理論は通用しない。コストと時間ばかり懸かって、全く効果が期待出来ないからである。それよりも、高精度巡航ミサイルで北朝鮮の産業インフラを破壊し、経戦能力を奪う方がより現実的である。核による報復はアメリカに任せておけばよい。日本もドイツも、結局戦争を続けられなくなった最大の原因は、原爆なんかではなく連合軍による戦略爆撃だったのだ。そういえば、朝鮮戦争の2年目、ソウルを再占領した中朝連合軍を撤退させたのは、後方への絨毯爆撃で中国からの補給線を破壊したからである。古い将軍達の中には、このことを記憶しているものもいるかもしれない。
(09/08/06)



 平成15年11月総選挙後のアンケートで、与野党含めて若手政治家のおおよそ26%近くが日本の核武装を考慮すべきと考えていると云われる。まあ誰がどう考えても構わないのだが、政治家ならもっと責任ある判断をしなければならない。核武装というものはやりたいと思ってできるものではなく、核兵器も…子供の玩具じゃないんだから…欲しいと思って持てるものではない。政治家というものはその辺りを十分考慮して回答すべきだろう。  
 筆者は観念的な核反対論者ではない。それどころかエネルギーの確保には核エネルギー開発は必要だと考えている位だ。しかし、核武装は別問題である。何故なら、これは持つべきか否かという以前に、技術的に非現実と考えられるからである。非現実的なものを「作れる、作れる」と煽り、最後には「作れ、作れ」と強要する。これは、かつての「無駄な公共事業」と同じパターンである。そして、その裏側を見ると、当に同じ構造が透けて見える。ここでは、日本核武装の問題を次の4段階に分けて検討する。
 1、核兵器の製造
 2、核兵器の運搬手段
 3、核兵器の保管
 4、採算性

1、核兵器の製造
 核兵器には幾つかの種類・段階があるが、最も基本となるものは原子爆弾である。原爆が作れなくては次のステップに入れない。つまり原爆の製造技術をマスターしているかどうかで核兵器製造能力が決まると言ってよい。原爆理論はそれほど難しくはなく、国公立理系進学コースなら高校生でも十分理解できる。
 日本の場合、これには、(1)材料、(2)生産主体、(3)核実験といった課題がある。
(1)原爆の材料
 原爆には、ウラン型とプルトニウム型の2種類があるが、日本の場合、ウラン型原爆の開発は非現実的なので、当然プルトニウム型になる。プルトニウムは、現在の原発から大量に出るから問題無いじゃないか、とマヌケなことを考える人も多いだろうが、そうはいかない。よく、「濃縮」という言葉が出て、原発から出てくるプルトニウムの濃度を高くすれば、原爆型プルトニウムが出来ると錯覚している人が多いようだ。濃縮して臨界に達するのは分裂性の235Uだけ。非分裂性の238Uを使って、原爆に転用出来るプルトニウムを作るには、238Uに大量の中性子を吸収させなければならないが、我が国原発の主流である軽水炉では、中性子の吸収量に限界があり、そのままでは原爆型プルトニウムにはならない。これが、日米原子力協定の根幹で、アメリカは日本に核技術を供与するに当たって、日本に核兵器開発をさせないため、軽水炉以外の原子炉を認めなかったのである。
 従って、原爆型プルトニウムを作るには特別の装置が必要である。一般には黒鉛型原子炉(チェルノブイリ原発がそれ)を用いる。我が国ではこのタイプの原子炉の製造・建設経験がなく、運転のノウハウもない。非常に危険な代物と思っておいたほうがよい。こんなものを一体、何処に作るのか?。民生用原発でも、出来るまでに20年も30年もかかっている。まして、こんな危ないものを、ハイ構いません、と受け入れる自治体が、簡単に現れるとは思えない。原爆製造用原子炉は簡単には作れないのだ。
 ・・・・KEDOが北朝鮮に対し、黒鉛型原子炉凍結の換わりに軽水炉型を支援することにしたのが何よりの証拠。軽水炉からは原爆型プルトニウムは作れない・・・・・
 黒鉛型ではなく、今ある「軽い239Pu」を処理して、原爆型の「重い239Pu」に変換する研究もあるようだが、未だアイデアの段階であり、上手くいく保障はない。それを確認するためには、どうしても(3)核実験というプロセスを通らなければならない。
(2)生産主体
 原爆型原子炉を作るとして、それを一体どこが運用するのか?電力会社には、黒鉛型原子炉の製造・運転のノウハウはない。第一、兵器用物質の製造は、電力事業法違反だし、各社の定款にも反する。それに採算が判らない事業に進出することは、商法で禁止されている。下手すれば株主代表訴訟だ。従って、非現実的。
 では、国直轄で、防衛庁が生産主体になるか?防衛庁には黒鉛型どころか、原子炉そのものの製造・運転ノウハウがない。素人の集まりなのだ。核兵器の開発は、極めて機密性の高い事業である。しかるに、昨今多いのは、現職自衛官による、機密情報の漏出事故。ウイニーの扱いも判らないガキ同然の自衛隊に、核兵器開発という重大業務を任せられる訳がない。
(3)核実験
 プルトニウム型原爆が必ず通らなくてはならないのが、核実験というプロセスである。実際、国際的にも核実験に成功して、始めて核保有国と認められるのである。さて、狭い日本の何処で核実験を行うのでしょうか?いつぞやのTVトークで、自民党の河野が、シミュレーションでやればよい、と発言したが、これだから文系人間はいやなのだ。シミュレーション結果の信頼性確保に必要なのは、解析パラメーターである。パラメーターの取り方と、精度によっては、解析結果はいくらでも変わる。アメリカは、過去の膨大な核実験で、大量のデータを持っている。だから、シミュレーションや臨界前核実験も可能だし、その結果は説得力を持つ。ところが、日本には全くそのようなデータがない(アメリカが渡す筈がない)。そのようなあやふやな前提で行った、シミュレーションなど、その結果は全く信用できない。姉歯耐震ねつ造計算書みたいなものである。
 つまり、信頼出来るデータを得るためには、どうしても核実験をやらなくてはならないのだ。
2、核兵器の運搬手段
 国内で核実験が出来なくても、ひょっとするとウチでやってもよいよ、という奇特な国が現れるかもしれない。無論、見返りに莫大なODAが必要だが。そこでやっと念願の核兵器を持つことが出来た。問題はそれをどうやって使うか?。つまり、運搬手段の確立。これを解決しておかなければ、相手国から「張り子のトラ」と、馬鹿にされるだけ。あの北朝鮮だって、まず、ノドン、テポドンの実験をやってから、核開発を公にしている。運搬手段には、一般にはミサイルが用いられる。日本にも、無論この種ミサイルを作る能力はある。但し、固定式発射装置とすると、核物質製造と同じく、発射基地を何処にするか?という問題が発生する。日本人は、何でも小型化するのが得意だから、核兵器も思い切り小型化し、艦載式或いは機載式ミサイルタイプとし、イージス護衛艦やイーグルに搭載して発射する方が、大型の中距離弾道弾を開発するより、安上がりだろう。無論、これは核兵器開発と同時進行でやっておかねばならない。
3、核兵器の保管
 さて、せっかく開発した核兵器が、それを何処に保管するか、が問題になる。上のアイデアなら、当然ながら海上或いは航空自衛隊基地になる。北朝鮮に最も近い基地は、石川県小松基地。しかし、ここは官民供用なので、核兵器が置いてあるとなると、小松空港利用客は激減する。次は、北海道千歳基地。ここも直ぐ隣が、新千歳空港。石川県知事や北海道知事が直ぐに、ウンと云うか? むしろ、普段勇ましいことを云っている政治家が、自分の選挙区で、核兵器の保管・運用に責任を持つべきではないだろうか。例えば、核武装を言い出した麻生の選挙区は、北九州は筑豊。筑豊炭田の旧廃坑跡でも、保管場所にしますか。その場合、莫大な公共予算が、福岡県に注ぎ込まれることになる。フーム、それが狙いか?しかし、そういう人間に限って、いざとなると腰が引けるのですがね。
 なお、今核兵器はドンドン小型化している。これは返って盗難リスクが高くなるので、保管コストは高くなる。しかも、核兵器の保管場所や、保管方法は国家の最重要機密事項である。しかしながら、上で述べたように、現職自衛官による、ウイニー経由の情報漏出が頻発している。これでは、現在のガキ同然自衛隊では、機密保持に関し、全く担保能力が無い、としか云いようがない。
4、採算性
 採算性とは、投資した経費に見合うだけの効果があるか、どうかで決まる。まず、莫大な費用が掛かる。アメリカでもマンハッタン計画に要した経費は、通常予算の1/3と云われ、戦争中でも無ければ、到底認められるレベルではなかった。それでも出来たのは、たった4発に過ぎない。現在では、製造コストは安くなっているだろうが、他のコストは返って高くなっているケースもあり、1発当たり単価は、それほど変わらないかもしれない。果たしてどれだけの効果が見込めるだろうか?上記3点を解決するには5年や10年では到底無理、下手をすると50年くらい懸かるかもしれない。その頃には、国際情勢も大きく変化し、当面のターゲットである北朝鮮では、金王朝は崩壊し、民主化が進んで、日本の友好国になっているかもしれない。そうなったら、何のための核兵器開発なのだ?ということになる。逆に今の同盟国アメリカと敵対関係になっているかもしれないので、それを睨んだ核装備なら遠大な計画というべきだろう。かつて、散々問題になった、無駄な公共事業と同じパターンなのだ。只、違うのは、公共事業は影響する幅が広く、それなりに地域経済発展に貢献したが、核兵器開発に関係出来る企業は、日本でも数社しかない。つまり、経済効果はその数社と、その周辺に留まるのみである。しかし、背景では莫大な金が動く。しかも、防衛機密の壁に囲まれ、会計検査の対象にもならず、中身は闇の中。莫大な裏資金が、森派の中にだけ吸い込まれることになる。

 以上から、我が国が早期に核装備をするなどということは、単に法律や国際条約の制約だけではなく、技術的にも殆ど不可能であり、しかもその背景には、莫大な開発予算を巡る怪しい動きが、見え隠れするのである。それでも、核武装をやりますか?
(06/03/10)

 以上述べたように、核兵器を全く自前で開発しようとする時には、様々な障害がある。これは、日本特有ではなく、韓国、台湾にも共通する障害である。つまり、
(1)国土が狭く、人口密度が高く、国民の人権意識と国民生産性が高い民主主義国家は、自前で核兵器は開発出来ない。
(2)核兵器を開発しようとすれば、数100q四方に渡って、殆ど人が住んでいないような、辺境を保有している必要がある。現在の核保有国は、全てそうである。いや、イギリスやフランスも核を持っているではないか、と云われるかもしれないが、彼等が核装備した時期は、何れも植民地大国だった。イギリスが核実験を行ったのは、オーストラリアの砂漠、フランスはサハラ砂漠だった。
(3)唯一の例外はイスラエルで、今例外になりたがっているのが、北朝鮮なのである。イスラエルの場合は、アメリカの承認の下、南アフリカの協力により、南アフリカ沖インド洋上で大気圏内核実験を行ったと云われる。大気圏なら、地下核実験探知システムを、かわすことが事が出来る。その替わり、地球環境にとっては、犯罪的行為である。やっぱり、ユダヤ人だからか、となってしまう。
 つまり、国際的に孤立しているか、強権独裁国家のみが、自前核装備が可能なのである。
(06/03/11)


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